以下、実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。但し、発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定されず、本明細書等において開示する発明の趣旨から逸脱することなく形態および詳細を様々に変更し得ることは当業者にとって自明である。また、異なる実施の形態に係る構成は、適宜組み合わせて実施することが可能である。なお、以下に説明する発明の構成において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号を用い、その繰り返しの説明は省略する。
(実施の形態1)
本実施の形態では、SOI基板の作製方法の一例、特に、ベース基板とボンド基板の貼り合わせ工程の一例に関して図1を参照して説明する。なお、図1(A1)、図1(B1)、図1(C1)、図1(D1)は、ベース基板及びボンド基板の貼り合わせ工程に係る断面図であり、図1(A2)、図1(B2)、図1(C2)、図1(D2)は、ベース基板及びボンド基板の貼り合わせ工程に係る平面図である。
まず、ボンド基板11を準備する(図1(A1)、図1(A2)参照)。ボンド基板11は、作製されるSOI基板における半導体層の元になるものである。つまり、ボンド基板11の性質が、作製されるSOI基板の性質を決定づけることになる。
ボンド基板11としては、例えば、単結晶シリコン基板、単結晶ゲルマニウム基板、単結晶シリコンゲルマニウム基板など、第14族元素でなる単結晶半導体基板を用いることができる。また、ガリウムヒ素やインジウムリン等の化合物半導体基板を用いることもできる。
ボンド基板の形状としては円形が代表的であるが、略四角形(矩形)等であっても良い。略四角形(矩形)等に加工されたボンド基板を用いる場合には、一のベース基板に対して複数のボンド基板を配置することが容易となり、SOI基板の大面積化を図ることができるなどのメリットがある。本実施の形態では、ボンド基板11の形状は略四角形状であるものとして説明する。なお、本明細書において、「略四角形」の用語は、厳密な四角形に限らないという趣旨で用いる。例えば、「略四角形」は、基板の方向などを判別するために角部に切り欠き部が設けられた形状や、面取り加工がなされた形状などを含む。
なお、ボンド基板として略四角形状のものを用いる場合であって、何らの制御も行わない場合には、貼り合わせ後の基板の角部においてエアボイドが発生しやすいことを確認している。この現象は、基板角部において貼り合わせに係る速度にばらつきが生じ、意図しない部位から貼り合わせが開始され、これによって複数の方向から同時に貼り合わせが進行して空気の閉じ込めが発生することに起因するものと考察される。一方で、角部が存在しない形状(例えば円形状など)の場合には、角部が存在する形状の基板を用いる場合と比較してこのような問題は生じにくい。このように、開示する発明の一態様の効果はエアボイドの発生防止であるから、開示する発明の一態様は、特に角部を有するボンド基板を用いるときに有効であるといえる。もちろん、角部が存在しない基板においてもエアボイドは生じうるから、この発生を十分に防ぐという意味では、開示する発明の一態様が、角部を有しない基板を用いる場合においても有効であることはいうまでもない。
なお、ボンド基板11の表面には、酸化膜等の絶縁膜が形成されていてもよい。
次に、ボンド基板11とベース基板10を対向させ、ボンド基板11およびベース基板10の一部に力をかけて、ボンド基板11を反らせると共に、ボンド基板11とベース基板10との貼り合わせを開始させる(図1(B1)、図1(B2)参照)。より具体的には、貼り合わせを開始させる時に、ボンド基板11(とベース基板10)の一部に力をかけて、ボンド基板11の貼り合わせの終了地点がベース基板から離れるように、ボンド基板11を反らせる。または、ボンド基板11(またはベース基板)表面の貼り合わせの開始地点における接平面を基準に、ボンド基板11の貼り合わせの終了地点がベース基板から離れるように、ボンド基板11(とベース基板10)の一部に力をかけてボンド基板11を反らせる。ベース基板10としては、絶縁体でなる基板を用いることができる。具体的には、アルミノシリケートガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラスのような電子工業用に使われる各種ガラス基板、石英基板、セラミック基板、サファイア基板などを用いることができる。また、ベース基板10として、単結晶シリコン基板、単結晶ゲルマニウム基板などの半導体基板を用いても良い。
ボンド基板11とベース基板10の貼り合わせを開始させると、貼り合わせは、その開始地点から同心円を描くように進行する。例えば、ボンド基板11とベース基板10の角部の一から貼り合わせを開始させる場合、貼り合わせは、該角部の対角に位置する角部に向かって同心円状に進行する。また、ボンド基板11とベース基板10の一辺から貼り合わせを開始させる場合、貼り合わせは、該辺に垂直な方向に向かって、該辺に略平行な態様で進行する。これは、平面波の伝播と同様の考え方で理解することができる。
なお、上述の貼り合わせは、ボンド基板11およびベース基板10の中央付近の領域から開始させることも可能であるが、エアボイドの発生を防止するという観点からは、角部の一または辺の一(一辺)からから開始させることが望ましい。貼り合わせの終了地点付近の角部では、貼り合わせに係る速度がばらつきやすく、エアボイドが発生しやすい傾向にあるためである。例えば、四角形状の基板を用い、基板の中央付近から貼り合わせを開始する場合には、貼り合わせの終了地点が基板の四隅となるため、これらの領域にエアボイドが生じやすくなる。一方で、角部の一から貼り合わせを開始させる場合には、貼り合わせの終了地点が、該角部の対角に位置する角部となるため、エアボイドが生じる可能性の高い領域を減らすことができる。また、辺の一から貼り合わせを開始する場合には、角部にエアが集まることがなく、エアボイドが生じる可能性を低減することができる。辺の一から貼り合わせを開始する場合には、特に、当該辺の中央の一点において開始させると、より好適な貼り合わせが実現できることが確認されている。
なお、ボンド基板11を反らせるタイミングは、貼り合わせを開始させる前であれば、貼り合わせを開始させる時のみに限られない。つまり、ボンド基板11を反らせるタイミングは、貼り合わせ開始以前であればよい。また、ここでは、ボンド基板11を反らせる例について説明しているが、ベース基板10を反らせても良い。また、ボンド基板11とベース基板10とを共に反らせても良い。
ボンド基板11とベース基板10の貼り合わせを開始させた後には、ボンド基板11の反り量を制御することにより、ボンド基板11とベース基板10の貼り合わせに係る速度を制御する(図1(C1)、図1(C2)参照)。具体的には、ボンド基板11およびベース基板10にかかる力を徐々に変化させることにより、ボンド基板11の反り量を変化させる。ボンド基板11の反り量を変化させることにより、ボンド基板11とベース基板10の貼り合わせに係る速度を制御することができる。
例えば、ボンド基板11およびベース基板10にかかる力を徐々に低下させることにより、ボンド基板11の反り量を低下させ、ボンド基板11とベース基板10の貼り合わせに係る速度を増加させることができる。また、ボンド基板11およびベース基板10にかかる力を徐々に増大させることにより、ボンド基板11の反り量を増大させ、ボンド基板11とベース基板10の貼り合わせに係る速度を低下させることができる。貼り合わせに係る速度が高すぎる場合には、エアボイドの発生確率が高まる傾向にあり、また、貼り合わせに係る速度が低すぎる場合には、貼り合わせが進行しなくなってしまうから、適切な貼り合わせ速度が実現されるように、基板の反り量を制御することが望ましい。
なお、制御性の面では、貼り合わせ以前に反らせた基板の反り量を制御するのが望ましいが、反り量の制御対象の基板は、貼り合わせ以前に反らせた基板でなくとも構わない。つまり、ボンド基板11を反らせておいた場合において、ベース基板10の反り量を制御して貼り合わせに係る速度を制御しても良い。もちろん、ボンド基板11の反り量と、ベース基板10の反り量の双方を制御しても良い。
以上により、ボンド基板11とベース基板10の貼り合わせを好適に完了させることができる(図1(D1)、図1(D2)参照)。
なお、本実施の形態では、一のベース基板に対して一のボンド基板を貼り合わせる場合を例に説明したが、一のベース基板に対して複数のボンド基板を貼り合わせる場合にも、同様の方法を用いることができる。
本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
(実施の形態2)
本実施の形態では、ベース基板とボンド基板の貼り合わせ工程の別の一例に関して図2を参照して説明する。本実施の形態に係る貼り合わせ工程と、実施の形態1に係る貼り合わせ工程との相違点は、基板を反らせるための力をかける領域が、貼り合わせの開始点近傍に存在するか、貼り合わせの終了地点近傍に存在するかである。つまり、実施の形態1においては、基板を反らせるための力を、貼り合わせ開始地点近傍にかけて基板の反り量を制御しているのに対して、本実施の形態では、基板を反らせるための力を、貼り合わせ終了地点近傍にかけて基板の反り量を制御している。このように、貼り合わせ開始地点近傍において基板の反り量を制御する場合には、貼り合わせ開始地点近傍における速度制御が容易になり、貼り合わせ終了地点近傍において基板の反り量を制御する場合には、貼り合わせ終了地点近傍における速度制御が容易になるというメリットがある。
なお、図2(A1)、図2(B1)、図2(C1)、図2(D1)は、ベース基板及びボンド基板の貼り合わせ工程に係る断面図であり、図2(A2)、図2(B2)、図2(C2)、図2(D2)は、ベース基板及びボンド基板の貼り合わせ工程に係る平面図である。
まず、ボンド基板11を準備する(図2(A1)、図2(A2)参照)。ボンド基板11は、作製されるSOI基板における半導体層の元になるものである。つまり、ボンド基板11の性質が、作製されるSOI基板の性質を決定づけることになる。詳細は、先の実施の形態におけるボンド基板11と同様である。
次に、ボンド基板11の一部に力をかけてボンド基板11を反らせると共に、ボンド基板11とベース基板10を対向させ、ボンド基板11およびベース基板10の別の一部に力をかけて、ボンド基板11とベース基板10との貼り合わせを開始させる(図2(B1)、図2(B2)参照)。より具体的には、貼り合わせを開始させる時、または貼り合わせを開始させる前に、ボンド基板11の一部に力をかけて、ボンド基板11の貼り合わせの終了地点がベース基板から離れるように、ボンド基板11を反らせる。または、ボンド基板11(またはベース基板)表面の貼り合わせの開始地点における接平面を基準に、ボンド基板11の貼り合わせの終了地点がベース基板から離れるように、ボンド基板11を反らせる。ベース基板10の詳細は、先の実施の形態と同様である。
なお、ボンド基板11を反らせるための力をかける領域は、貼り合わせ終了地点の近傍とすることが望ましい。このような構成を採用することで、貼り合わせ終了地点近傍における貼り合わせ速度の制御が容易になるためである。
なお、上述の貼り合わせは、ボンド基板11およびベース基板10の中央付近の領域から開始させることも可能であるが、エアボイドの発生を防止するという観点からは、ボンド基板11およびベース基板10の角部の一または一辺からから開始させることが望ましい。貼り合わせの終了地点付近の角部では、貼り合わせに係る速度がばらつきやすく、エアボイドが発生しやすい傾向にあるためである。例えば、四角形状の基板を用い、基板の中央付近から貼り合わせを開始する場合には、貼り合わせの終了地点が基板の四隅となるため、これらの領域にエアボイドが生じやすくなる。一方で、角部の一から貼り合わせを開始させる場合には、貼り合わせの終了地点が、該角部の対角に位置する角部となるため、エアボイドが生じる可能性の高い領域を減らすことができる。
なお、ここでは、ボンド基板11を反らせる例について説明しているが、ベース基板10を反らせても良い。また、ボンド基板11とベース基板10とを共に反らせても良い。
ボンド基板11とベース基板10の貼り合わせを開始させた後には、ボンド基板11の反り量を制御することにより、ボンド基板11とベース基板10の貼り合わせに係る速度を制御する(図2(C1)、図2(C2)参照)。具体的には、ボンド基板11にかかる力を徐々に変化させることにより、ボンド基板11の反り量を変化させる。ボンド基板11の反り量を変化させることにより、ボンド基板11とベース基板10の貼り合わせに係る速度を制御することができる。
例えば、ボンド基板11にかかる力を徐々に低下させることにより、ボンド基板11の反り量を低下させ、ボンド基板11とベース基板10の貼り合わせに係る速度を増加させることができる。また、ボンド基板11にかかる力を徐々に増大させることにより、ボンド基板11の反り量を増大させ、ボンド基板11とベース基板10の貼り合わせに係る速度を低下させることができる。貼り合わせに係る速度が高すぎる場合には、エアボイドの発生確率が高まる傾向にあり、また、貼り合わせに係る速度が低すぎる場合には、貼り合わせが進行しなくなってしまうから、適切な貼り合わせ速度が実現されるように、基板の反り量を制御することが望ましい。
基板の角部におけるエアボイドの発生のメカニズムは次のようなものと考えられる。ボンド基板とベース基板を貼り合わせると、角部の近傍においては、ボンド基板11およびベース基板10の周辺部の貼り合わせ速度が中央部の貼り合わせ速度より高くなることがある。この場合、貼り合わせの速度の低い部分は、貼り合わせ速度の高い部分に囲まれてしまう。このため、エアの抜けるパスが失われてしまい、エアボイドなどの欠陥が発生することになる。
この点、本実施の形態に示す方法では、ボンド基板11を反らせるための力を貼り合わせ終了地点の近傍にかけ、また、反り量の制御を貼り合わせ終了地点の近傍において行っていることから、貼り合わせ終了地点近傍における貼り合わせ速度の制御が容易になり、上述のメカニズムによるエアボイドの発生などを防止することが可能である。なお、例えば、貼り合わせ速度が平均30mm/秒以下(好ましくは、平均20mm/秒以下)であれば、角部の近傍におけるエアボイドの発生を防止し、好適な貼り合わせが実現できることを確認している。
なお、制御性の面では、貼り合わせ以前に反らせた基板の反り量を制御するのが望ましいが、反り量の制御対象の基板は、貼り合わせ以前に反らせた基板でなくとも構わない。つまり、ボンド基板11を反らせておいた場合において、ベース基板10の反り量を制御して貼り合わせに係る速度を制御しても良い。もちろん、ボンド基板11の反り量と、ベース基板10の反り量の双方を制御しても良い。
以上により、ボンド基板11とベース基板10の貼り合わせを好適に完了させることができる(図2(D1)、図2(D2)参照)。
なお、本実施の形態では、一のベース基板に対して一のボンド基板を貼り合わせる場合を例に説明したが、一のベース基板に対して複数のボンド基板を貼り合わせる場合にも、同様の方法を用いることができる。
本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
(実施の形態3)
本実施の形態では、ベース基板とボンド基板の貼り合わせ工程の別の一例に関して図3を参照して説明する。本実施の形態に係る貼り合わせ工程と、実施の形態2に係る貼り合わせ工程との相違点は、貼り合わせに係る二つの基板を共に反らせ、また、それらの反り量を制御している点である。なお、図3(A1)、図3(B1)、図3(C1)、図3(D1)は、ベース基板及びボンド基板の貼り合わせ工程に係る断面図であり、図3(A2)、図3(B2)、図3(C2)、図3(D2)は、ベース基板及びボンド基板の貼り合わせ工程に係る平面図である。
まず、ボンド基板11およびベース基板10を準備する(図3(A1)、図3(A2)参照)。ボンド基板11およびベース基板10の詳細は、先の実施の形態におけるボンド基板11およびベース基板10と同様である。
次に、ボンド基板11およびベース基板10の一部に力をかけてボンド基板11およびベース基板10を反らせると共に、ボンド基板11とベース基板10を対向させ、ボンド基板11およびベース基板10の別の一部に力をかけて、ボンド基板11とベース基板10との貼り合わせを開始させる(図3(B1)、図3(B2)参照)。より具体的には、貼り合わせを開始させる時、または貼り合わせを開始させる前に、ボンド基板11の一部に力をかけて、ボンド基板11の貼り合わせの終了地点がベース基板10から離れるように、ボンド基板11を反らせ、ベース基板10の一部に力をかけて、ベース基板10の貼り合わせの終了地点がボンド基板11から離れるように、ベース基板10を反らせる。または、ボンド基板11(またはベース基板10)表面の貼り合わせの開始地点における接平面を基準に、ボンド基板11の貼り合わせの終了地点がベース基板10から離れるように、ボンド基板11を反らせ、ベース基板10の貼り合わせの終了地点がボンド基板11から離れるように、ベース基板10を反らせる。他の詳細は、先の実施の形態と同様である。
ボンド基板11とベース基板10の貼り合わせを開始させた後には、ボンド基板11およびベース基板10の反り量を制御することにより、ボンド基板11とベース基板10の貼り合わせに係る速度を制御する(図3(C1)、図3(C2)参照)。具体的には、ボンド基板11およびベース基板10にかかる力を徐々に変化させることにより、ボンド基板11およびベース基板10の反り量を変化させる。ボンド基板11およびベース基板10の反り量を変化させることにより、ボンド基板11とベース基板10の貼り合わせに係る速度を制御することができる。詳細は、先の実施の形態と同様である。
以上により、ボンド基板11とベース基板10の貼り合わせを好適に完了させることができる(図3(D1)、図3(D2)参照)。
本実施の形態では、貼り合わせに係る二つの基板を共に反らせ、また、それらの反り量を制御している。このような構成を採用することで、貼り合わせに係る速度の制御をより適切に行うことができるようになるため、エアボイドなどの欠陥の発生をさらに抑制することができる。
なお、本実施の形態では、一のベース基板に対して一のボンド基板を貼り合わせる場合を例に説明したが、一のベース基板に対して複数のボンド基板を貼り合わせる場合にも、同様の方法を用いることができる。
本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
(実施の形態4)
本実施の形態では、ベース基板とボンド基板との貼り合わせ方法および貼り合わせ装置の例について、図4および図5を用いて説明する。
図4には貼り合わせ装置の例を示す。図4(A1)および図4(A2)は貼り合わせ装置の平面図、図4(B1)は断面図である。当該貼り合わせ装置において、基板支持台20には、真空吸着領域22が設けられている。基板支持台20に設けられた真空吸着領域22は、平坦面になっており、真空吸着領域22に対向する領域には緩やかな曲率で勾配がつけられている。緩やかな曲率は、少なくとも、基板が破損しない程度の曲率であれば良く、例えば、基板の対角方向に貼り合わせを進行させる場合には、曲率半径が、基板の対角線の長さの2倍以上、好ましくは3倍〜9倍となるような曲率とする。また、真空吸着領域22には、真空吸着穴が複数設けられており、真空ポンプ21が接続されている。
ベース基板とボンド基板との貼り合わせは、次のようにして行う。まず、基板支持台20上にボンド基板11を乗せ、その後、真空ポンプ21を用いて真空排気を行うことにより、ボンド基板11を真空吸着領域22に吸着して固定する(図4(A)及び図4(B1)参照)。次に、ボンド基板11にベース基板10を対向させ、ボンド基板11およびベース基板10の一部に、ボンドピン23を用いて力を加えて、ボンド基板11を反らせると共に、ボンド基板11とベース基板10との貼り合わせを開始させる(図4(B2)参照)。ボンド基板11とベース基板10の貼り合わせを開始させると、貼り合わせは、その開始地点から同心円を描くように進行する。ボンド基板およびベース基板10の一部に、ボンドピン23を用いて力を加えることにより、ボンド基板11は、基板支持台20に設けられた緩やかな曲率に沿って曲がるため、貼り合わせ開始位置が、図の下方に反った状態になる。
その後、ボンドピン23の力を徐々に低下させることにより、ボンド基板11の反り量を低下させ、ボンド基板11とベース基板10の貼り合わせに係る速度を制御することができる。
このように、図4に示す貼り合わせ装置を用いて、ボンド基板11とベース基板10との貼り合わせを行うことによって、ボンド基板11とベース基板10との貼り合わせ速度を制御することができるため、貼り合わせ界面においてエアボイドなどの欠陥の発生を抑制することができる。
図5には貼り合わせ装置の別の例を示す。図5(A)および図5(B)は貼り合わせ装置の平面図、図5(B1)は断面図である。当該貼り合わせ装置において、基板支持台30には、真空吸着領域32が設けられている。基板支持台30に設けられた真空吸着領域32は平坦面になっており、真空吸着領域32に対向する領域には真空吸着パッド33が設けられている。また、真空吸着領域32には、真空吸着穴が複数設けられており、該真空吸着領域32および真空吸着パッド33には、真空ポンプ31が接続されている。
ベース基板10とボンド基板11との貼り合わせは、次のようにして行う。まず、基板支持台20上にボンド基板11を乗せ、その後、真空ポンプ21を用いて真空排気を行うことにより、ボンド基板11を真空吸着領域32および真空吸着パッド33に吸着して固定する図5(A)及び図5(B1)参照。次に、真空吸着パッド33を引き下げることにより、ボンド基板11の一の角部(または一辺)を引き下げる力を加え、ボンド基板11を反らせる。なお、真空吸着パッド33における吸着力を変化させて、ボンド基板11の角部(または一辺)を引き下げる力を加えることも可能である。例えば、真空吸着パッド33における吸着力を高めることで、ボンド基板11の角部を引き下げることができる。
次に、ボンド基板11にベース基板10を対向させ、ボンド基板11およびベース基板10の一部に力を加えて、ボンド基板11とベース基板10との貼り合わせを開始させる。ボンド基板11とベース基板10の貼り合わせを開始させると、貼り合わせは、その開始地点から同心円を描くように進行する。ここで、貼り合わせ開始地点は、真空吸着パッド33によって吸着されている角部の対角に位置する角部とすることが望ましい。このとき、ボンド基板11の一の角部は真空吸着パッド33によって引き下げられているため、貼り合わせ終了地点が図の下方に反った状態となる。
その後、真空吸着パッド33の吸着力を徐々に弱めることにより、ボンド基板11の反り量を変化させ、ボンド基板11とベース基板10の貼り合わせに係る速度を制御することができる。
このように、図5に示す貼り合わせ装置を用いて、ボンド基板11とベース基板10との貼り合わせを行うことによって、ボンド基板11とベース基板10との貼り合わせ速度を制御することができるため、貼り合わせ界面においてエアボイドなどの欠陥の発生を抑制することができる。
図11に、一のベース基板に対して複数のボンド基板を貼り合わせる場合の貼り合わせ装置の一例を示す。図11(A)は貼り合わせ装置の平面図、図11(B)は断面図である。当該貼り合わせ装置において、基板支持台40には、真空吸着領域42が設けられており、真空吸着領域42には真空吸着穴が複数設けられている。また、真空吸着領域42には、真空ポンプ41が接続されている。
一のベース基板10と複数のボンド基板11との貼り合わせは、次のようにして行う。まず、基板支持台40上に一のボンド基板11を乗せ、その後、真空ポンプ41を用いて真空排気を行うことにより、ボンド基板11を真空吸着領域42に吸着して固定する。次に、ボンド基板11にベース基板10を対向させ、ボンド基板11およびベース基板10の一部に力を加えて、ボンド基板11を反らせると共に、ボンド基板11とベース基板10との貼り合わせを開始させる。ボンド基板11とベース基板10の貼り合わせを開始させると、貼り合わせはその開始地点から同心円を描くように進行する。
次に、真空吸着領域42の吸着力を徐々に弱めることにより、ボンド基板11の反り量を変化させ、ボンド基板11とベース基板10との貼り合わせに係る速度を制御することができる。その後、順次、複数のボンド基板11をベース基板10に貼り合わせることにより、一のベース基板10に対して複数のボンド基板11を貼り合わせることができる。
本実施の形態では、2つの貼り合わせ装置を用いて、二枚のボンド基板11を貼り合わせる様子を示したが、本発明の一態様はこれに限定されない。1つの貼り合わせ装置を用いて複数のボンド基板11を貼り合わせてもよいし、複数の貼り合わせ装置を用いて複数のボンド基板11を順次貼り合わせてもよい。また、複数の貼り合わせ装置を用いて、複数のボンド基板11を貼り合わせる場合には、一度に複数のボンド基板11を貼り合わせることもできる。
なお、本実施の形態では、一のベース基板に対して一のボンド基板を貼り合わせる場合に用いる貼り合わせ装置を例に説明したが、一のベース基板に対して複数のボンド基板を貼り合わせる場合には、同様の貼り合わせ装置を複数基板用に拡張して用いることができる。
本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
図12には貼り合わせ装置の別の例を示す。図12(A)は、貼り合わせ装置の平面図であり、図12(B)乃至図12(C)は断面図である。なお、図12(A)は、図12(B)に対応している。
当該貼り合わせ装置において、基板支持台30には、真空吸着領域22が設けられている。基板支持台20に設けられた真空吸着領域22は、平坦面になっており、真空吸着領域22に対向する領域には緩やかな曲率で勾配がつけられている。緩やかな曲率は、少なくとも、基板が破損しない程度の曲率であれば良く、例えば、基板の対角方向に貼り合わせを進行させる場合には、曲率半径が、基板の対角線の長さの2倍以上、好ましくは3倍〜9倍となるような曲率とする。また、真空吸着領域22には、真空吸着穴が複数設けられており、真空ポンプ21が接続されている。
図12に示す貼り合わせ装置には、基板支持台20の各辺に少なくとも一つずつ突起24が設けられている。基板支持台20の各辺に設けられた突起24によって、ボンド基板11と、ベース基板10との貼り合わせを行う際に、基板同士がずれて貼り合わされてしまうことを防止することができる。基板支持台20の各辺に設けられる突起24の個数は、基板の大きさに合わせて設ければよい。また、突起24が移動する手段を設けて突起24の位置を調節してもよい。
また、基板支持台30において、真空吸着領域22の近傍であり、基板支持台20の角部に、ストッパー25が設けられている。ストッパー25は、ボンド基板11とベース基板10との貼り合わせが角部から開始される場合、該角部の対向する角部に設けられることが好ましい。また、ストッパー25は、ストッパー25が上下する手段が設けられていることが好ましい。
図12の貼り合わせ装置を用いたベース基板10とボンド基板11の貼り合わせは、次のようにして行う。まず、基板支持台20上にボンド基板11を乗せ、その後、真空ポンプ21を用いて真空排気を行うことにより、ボンド基板11を真空吸着領域22に吸着して固定する。次に、ボンド基板11にベース基板10を対向させ、ボンド基板11及びベース基板10の一部に、ボンドピン23を用いて力を加えて、ボンド基板11を反らせると共に、ボンド基板11とベース基板10との貼り合わせを開始させる(図12(A)及び図12(B)参照)。ボンド基板およびベース基板10の一部に、ボンドピン23を用いて力を加えることにより、ボンド基板11は、基板支持台20に設けられた緩やかな曲率に沿って曲がるため、貼り合わせ開始位置が、図の下方に反った状態になる。ボンド基板11とベース基板10の貼り合わせを開始させると、貼り合わせは、その開始地点から同心円を描くように進行する。
その後、ボンドピン23の力を徐々に低下させることにより、ボンド基板11の反り量を低下させ、ボンド基板11とベース基板10の貼り合わせに係る速度を制御することができる。
ボンド基板11の反り量を低下させ、貼り合わせ開始地点における基板表面の接平面と、貼り合わせの終了地点における接平面とのなす角θがθ=0°となると、ボンド基板11とベース基板10との貼り合わせ終了地点、特にボンド基板11及びベース基板10の角部においては、ボンド基板11とベース基板10の貼り合わせ速度を制御することが困難となる。そのため、ボンド基板11とベース基板10との貼り合わせ終了地点においてエアボイドなどの欠陥が発生しやすくなるおそれがある。
そこで、図12に示すように、ボンド基板11とベース基板10の貼り合わせ終了地点となる角部に、ストッパー25を設ける。ストッパー25の位置は、ボンド基板11の表面の高さよりも、わずかに高い位置に設けられている。つまり、ストッパー25によってベース基板は、ボンド基板に対して反った状態となる。また、ストッパー25は、ボンド基板11のオリエンテーションフラット部と、平行となるように設けられているため、ベース基板10は、ボンド基板11との貼り合わせが停止した状態となる。その後、徐々にストッパー25を下降させ、ベース基板10の反り量を低下させることで、ベース基板10とボンド基板11の貼り合わせが再び開始される。ストッパー25の位置を、ボンド基板11の表面の高さと同じ位置にすることで、ボンド基板11とベース基板10の貼り合わせを完了させることができる。
ボンド基板11とベース基板10の貼り合わせ終了地点となる角部に、ストッパー25を設けることにより、貼り合わせ終了地点における貼り合わせ速度の制御性が向上するため、エアボイドなどの欠陥を低減することができる。
図12に示す貼り合わせ装置においては、基板支持台20の各辺に少なくとも一つの突起24が設けられているため、ボンド基板11とベース基板10の貼り合わせを行う際に、基板同士がずれて貼り合わされてしまうことを防止することができる。
本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
(実施の形態5)
<SOI基板の作製工程>
本実施の形態では、SOI基板の作製方法の一例について、図面を参照して説明する。
<第1の態様>
はじめに、図6を参照して、第1の態様に係る作製方法について説明する。
まず、ベース基板100を用意する(図6(A)参照)。ベース基板100としては、液晶表示装置などに使用されている透光性を有するガラス基板を用いることができる。ガラス基板としては、歪み点が580℃以上(好ましくは、600℃以上)であるものを用いると良い。また、ガラス基板は無アルカリガラス基板であることが好ましい。無アルカリガラス基板には、例えば、アルミノシリケートガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラスなどのガラス材料が用いられている。
なお、ベース基板100として、ガラス基板の他、セラミック基板、石英基板やサファイア基板などの絶縁体でなる基板、シリコンなどの半導体でなる基板、金属やステンレスなどの導電体でなる基板などを用いることもできる。
次に、ボンド基板110を用意する(図6(B−1)参照)。ボンド基板110としては、例えば、シリコン、ゲルマニウム、シリコンゲルマニウム、炭化シリコンなどの第14族元素でなる単結晶半導体基板を用いることができる。
ボンド基板110のサイズに制限は無いが、例えば、直径が8インチ(200mm)、12インチ(300mm)、18インチ(450mm)といったサイズの半導体基板を用いることができる。また、円形の半導体基板を、矩形に加工して用いても良い。
次に、ボンド基板110に絶縁層114を形成する(図6(B−2)参照)。
絶縁層114は、例えば、酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜等を用いることができる。これらの膜は、熱酸化法、CVD法又はスパッタリング法等を用いて形成することができる。また、CVD法を用いて絶縁層114を形成する場合には、テトラエトキシシラン(略称;TEOS:化学式Si(OC2H5)4)等の有機シランを用いて作製される酸化シリコン膜を絶縁層114に用いることが生産性の点から好ましい。
本実施の形態では、ボンド基板110に熱酸化処理を行うことにより絶縁層114(ここでは、酸化シリコン膜)を形成する。熱酸化処理は、酸化性雰囲気中にハロゲンを添加して行うことが好ましい。例えば、塩素(Cl)が添加された酸化性雰囲気中でボンド基板110に熱酸化処理を行うことによりHCl酸化された絶縁層114を形成する。従って、絶縁層114は、塩素原子を含有した膜となる。
なお、本実施の形態においては絶縁層114を単層構造としているが、積層構造としても良い。また、貼り合わせに際して特に問題がない場合など、絶縁層114を設ける必要がない場合には、絶縁層114を設けない構成としても良い。
次に、ボンド基板110にイオンを照射することにより、脆化領域112を形成する(図6(B−3)参照)。より具体的には、例えば、電界で加速されたイオンでなるイオンビームを照射して、ボンド基板110の表面から所定の深さの領域に脆化領域112を形成する。脆化領域112が形成される深さは、イオンビームの加速エネルギーやイオンビームの入射角によって制御される。つまり、脆化領域112は、イオンの平均侵入深さと同程度の深さの領域に形成されることになる。ここで、脆化領域112が形成される深さは、ボンド基板110の全面において均一であることが望ましい。
また、上述の脆化領域112が形成される深さにより、ボンド基板110から分離される半導体層の厚さが決定される。脆化領域112が形成される深さは、ボンド基板110の表面から50nm以上1μm以下であり、好ましくは50nm以上300nm以下である。
イオンをボンド基板110に添加する際には、イオン注入装置またはイオンドーピング装置を用いることができる。イオン注入装置は、ソースガスを励起してイオン種を生成し、生成されたイオン種を質量分離して、所定の質量を有するイオン種を被処理物に照射する。イオンドーピング装置は、プロセスガスを励起してイオン種を生成し、生成されたイオン種を質量分離せずに被処理物に照射する。なお、質量分離装置を備えているイオンドーピング装置では、イオン注入装置と同様に、質量分離を伴うイオンの照射を行うこともできる。
イオンドーピング装置を用いる場合の脆化領域112の形成工程は、例えば、以下の条件で行うことができる。
・加速電圧 10kV以上100kV以下(好ましくは30kV以上80kV以下)
・ドーズ量 1×1016/cm2以上4×1016/cm2以下
・ビーム電流密度 2μA/cm2以上(好ましくは5μA/cm2以上、より好ましくは10μA/cm2以上)
イオンドーピング装置を用いる場合、ソースガスとして水素を含むガスを用いることができる。該ガスを用いることによりイオン種としてH+、H2 +、H3 +を生成することができる。水素ガスをソースガスとして用いる場合には、H3 +を多く照射することが好ましい。具体的には、イオンビームに、H+、H2 +、H3 +の総量に対してH3 +イオンが70%以上含まれるようにすることが好ましい。また、H3 +イオンの割合を80%以上とすることがより好ましい。このようにH3 +の割合を高めておくことで、脆化領域112に1×1020atoms/cm3以上の濃度で水素を含ませることが可能である。これにより、脆化領域112における分離が容易になる。また、H3 +イオンを多く照射することで、H+、H2 +を照射する場合より短時間で脆化領域112を形成することができる。また、H3 +を用いることで、イオンの平均侵入深さを浅くすることができるため、脆化領域112を浅い領域に形成することが可能になる。
イオン注入装置を用いる場合には、質量分離により、H3 +イオンが照射されるようにすることが好ましい。もちろん、H+やH2 +を照射してもよい。ただし、イオン注入装置を用いる場合には、イオン種を選択して照射するため、イオンドーピング装置を用いる場合と比較して、イオン照射の効率が低下する場合がある。
イオン照射工程のソースガスには水素を含むガスの他に、ヘリウムやアルゴンなどの希ガス、フッ素ガスや塩素ガスに代表されるハロゲンガス、フッ素化合物ガス(例えば、BF3)などのハロゲン化合物ガスから選ばれた一種または複数種類のガスを用いることができる。ソースガスにヘリウムを用いる場合は、質量分離を行わないことで、He+イオンの割合が高いイオンビームを作り出すことができる。このようなイオンビームを用いることで、脆化領域112を効率よく形成することができる。
また、イオンの照射を複数回に分けて行うことで、脆化領域112を形成することもできる。この場合、ソースガスを異ならせてイオン照射を行っても良いし、同じソースガスを用いてもよい。例えば、ソースガスとして希ガスを用いてイオン照射を行った後、水素を含むガスをソースガスとして用いてイオン照射を行うことができる。また、初めにハロゲンガスまたはハロゲン化合物ガスを用いてイオン照射を行い、次に、水素を含むガスを用いてイオン照射を行うこともできる。
次に、ベース基板100とボンド基板110を貼り合わせる(図6(C)参照)。ベース基板100とボンド基板110とを貼り合わせる方法に関しては、実施の形態1乃至4の記載を参照することができる。実施の形態1乃至4の記載に係る貼り合わせの方法または貼り合わせ装置を用いることにより、エアボイドなどの欠陥の発生を抑制することができる。なお、貼り合わせのメカニズムとしては、ファン・デル・ワールス力が関与するメカニズムや、水素結合が関与するメカニズムなどが考えられている。
なお、ボンド基板110とベース基板100とを貼り合わせる前に、単結晶半導体基板上に形成された絶縁層114及びベース基板100上の少なくとも一方にプラズマ処理を行うことが好ましい。絶縁層114及びベース基板100の少なくとも一方にプラズマ処理行うことにより、親水基の増加や、平坦性を向上させることができる。その結果、ボンド基板110とベース基板100との接合強度を高めることができる。
ここで、プラズマ処理は、真空状態のチャンバーに不活性ガス(例えば、Arガス)を導入し、被処理面(例えば、ベース基板100)にバイアスを印加してプラズマ状態として行う。プラズマ中には電子とArの陽イオンが存在し、陰極方向(ベース基板100側)にArの陽イオンが加速される。加速されたArの陽イオンがベース基板100表面に衝突することによって、ベース基板100表面がスパッタエッチングされる。このとき、ベース基板100表面の凸部から優先的にスパッタエッチングされ、当該ベース基板100表面の平坦性を向上することができる。また、加速されたArの陽イオンによって、ベース基板100の有機物等の不純物を除去し、ベース基板を活性化することができる。また、真空状態のチャンバーに不活性ガスに加えて、反応性ガス(例えば、O2ガス、N2ガス)を導入し、被処理面にバイアス電圧を印加してプラズマ状態として行うこともできる。反応性ガスを導入する場合、ベース基板100表面がスパッタエッチングされることにより生じる欠損を、補修することができる。
本実施の形態では、アルゴンガスを用いて、誘導結合プラズマ(ICP:Inductively Coupled Plasma)方式のプラズマ処理で行う。アルゴンプラズマの具体的な条件としては、ICP電力100〜3000W、圧力0.1〜5.0Pa、ガス流量5〜2000sccm、RFバイアス電圧75〜300Wで行えばよい。より具体的には、ICP電力500W(0.11W/cm2)、圧力1.35Pa、ガス流量100sccm、RFバイアス電圧100W(0.61W/cm2)で行えばよい。
ボンド基板110とベース基板100とを貼り合わせた後に、貼り合わせられたベース基板100およびボンド基板110に対して熱処理を施して、貼り合わせを強固なものとすると良い。この際の加熱温度は、脆化領域112における分離が進行しない温度とする必要がある。例えば、400℃未満、好ましくは300℃以下とする。熱処理時間については特に限定されず、処理時間と貼り合わせ強度との関係から適切な条件を設定すればよい。例えば、200℃、2時間の熱処理を施すことができる。なお、貼り合わせに係る領域にマイクロ波などを照射して、該領域のみを局所的に加熱することも可能である。貼り合わせ強度に問題がない場合には、上記熱処理は省略すれば良い。
次に、ボンド基板110を、脆化領域112において、半導体層116とボンド基板110とに分離する(図6(D)参照)。ボンド基板110の分離は、熱処理により行うと良い。該熱処理の温度は、ベース基板100の耐熱温度を目安にすることができる。例えば、ベース基板100としてガラス基板を用いる場合には、熱処理の温度は400℃以上750℃以下とすることが好ましい。ただし、ガラス基板の耐熱性が許すのであればこの限りではない。なお、本実施の形態においては、600℃、2時間の熱処理を施すこととする。
上述のような熱処理を行うことにより、脆化領域112に形成された微小な空孔の体積変化が生じ、脆化領域112に亀裂が生ずる。その結果、脆化領域112に沿ってボンド基板110が分離する。これにより、ベース基板100上にはボンド基板110から分離された半導体層116が残存することになる。また、この熱処理で、貼り合わせに係る界面が加熱されるため、当該界面に共有結合が形成され、貼り合わせを一層強固なものとすることができる。
上述のようにして形成された半導体層116の表面には、分離工程やイオン照射工程に起因する欠陥が存在し、また、その平坦性は損なわれている。そのため、半導体層116の欠陥を低減させる処理、または、半導体層116の表面の平坦性を向上させる処理を行うと良い。
本実施の形態において、半導体層116の欠陥の低減、および平坦性の向上は、例えば、半導体層116にレーザー光を照射することで実現できる。レーザー光を半導体層116に照射することで、半導体層116が溶融し、その後の冷却、固化によって、欠陥が低減され、表面の平坦性が向上した単結晶半導体層が得られるのである。
また、単結晶半導体層の膜厚を小さくする薄膜化工程を行っても良い。半導体層の薄膜化には、ドライエッチング処理またはウエットエッチング処理の一方、または双方を組み合わせたエッチング処理を適用すればよい。例えば、半導体層がシリコンからなる場合、SF6とO2をプロセスガスに用いたドライエッチング処理で、半導体層を薄くすることができる。
以上により、ベース基板100上に、半導体層118を形成することができる(図6(E)参照)。
なお、本実施の形態では、レーザー光を照射した後に、エッチング処理を行う場合について説明したが、本発明の一態様はこれに限定されず、レーザー光を照射する前にエッチング処理を行ってもよいし、レーザー光の照射前後にエッチング処理を行ってもよい。
なお、本実施の形態においては、レーザー光を用いて欠陥の低減、および平坦性の向上を実現しているが、本発明の一態様はこれに限定されない。熱処理など、他の方法を用いて欠陥の低減、平坦性の向上を実現しても良い。また、欠陥低減処理が不要であれば、エッチング処理などの平坦性向上処理のみを適用しても良い。
<第2の態様>
次に、図7を参照して、第2の態様に係る作製方法を説明する。第2の態様と第1の態様の相違は、ベース基板に絶縁層101を形成する点にある。よって、以下ではこの点について主に説明する。
まず、ベース基板100を用意(図7(A−1)参照)し、該ベース基板上に絶縁層101を形成する(図7(A−2)参照)。ベース基板100については、図7(A−1)を参酌すればよい。
絶縁層101の形成方法は特に限定されないが、例えば、スパッタリング法、プラズマCVD法などを用いることができる。絶縁層101は、貼り合わせに係る表面を有する層であるから、その表面が、高い平坦性を有するように形成されることが好ましい。絶縁層101は、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウムなどから選ばれた一または複数の材料を用いて形成することができる。例えば、酸化シリコンを用いて絶縁層101を形成する場合には、有機シランガスを用いて化学気相成長法により形成することで極めて平坦性に優れた絶縁層101を得ることができる。なお、本実施の形態においては絶縁層101を単層構造としているが、積層構造としても良い。
次に、ボンド基板110を用意し、ボンド基板110の表面に絶縁層114を形成し、ボンド基板110に対してイオンを照射することにより脆化領域112を形成する(図7(B−1)、図7(B−2)、図7(B−3)参照)。図7(B−1)、図7(B−2)、図7(B−3)は、図6(B−1)、図6(B−2)、図6(B−3)と同様に行うことができるため、詳細な説明は省略する。
次に、ベース基板100とボンド基板110を貼り合わせる(図7(C)参照)。ベース基板100とボンド基板110とを貼り合わせる方法に関しては、実施の形態1乃至4の記載を参照することができる。実施の形態1乃至4の記載に係る貼り合わせの方法または貼り合わせ装置を用いることにより、エアボイドなどの欠陥の発生を抑制することができる。
なお、ボンド基板110とベース基板100を貼り合わせる前に、単結晶半導体基板若しくはボンド基板110上に形成された絶縁層114、又はベース基板100若しくはベース基板100上に形成された絶縁層101の表面処理を行うことが好ましい。表面処理を行うことで、ボンド基板110とベース基板100の接合界面での接合強度を向上させることができる。
表面処理としては、ウェット処理、ドライ処理、またはウェット処理及びドライ処理の組み合わせが挙げられる。また、異なるウェット処理を組み合わせる、または異なるドライ処理を組み合わせて行うことができる。
ウェット処理としては、オゾン水を用いたオゾン処理(オゾン水洗浄)、メガソニック洗浄、または2流体洗浄(純水や水素添加水等の機能水を窒素等のキャリアガスとともに吹き付ける方法)などが挙げられる。ドライ処理としては、紫外線処理、オゾン処理、プラズマ処理、バイアス印加プラズマ処理、またはラジカル処理などが挙げられる。被処理体(単結晶半導体基板、単結晶半導体基板上に形成された絶縁層、ベース基板またはベース基板上に形成された絶縁層)に対し、上記のような表面処理を行うことで、被処理体表面の親水性および清浄性を高める効果を奏する。その結果、基板同士の接合強度を向上させることができる。
ウェット処理は、被処理体表面に付着するマクロなゴミなどの除去に効果的である。ドライ処理は、被処理体表面に付着する有機物などミクロなゴミの除去または分解に効果的である。ここで、被処理体に対し、紫外線処理などのドライ処理を行った後、洗浄などのウェット処理を行うことで、被処理体表面を清浄化および親水化し、さらに被処理体表面のウォーターマークの発生を抑制できるため好ましい。
または一重項酸素などの活性状態にある酸素を用いた表面処理を行うことが好ましい。オゾンまたは一重項酸素などの活性状態にある酸素により、被処理体表面に付着する有機物を効果的に除去または分解することができる。また、オゾンまたは一重項酸素などの活性状態にある酸素に、紫外線のうち200nm未満の波長を含む光による処理を組み合わせることで、被処理体表面に付着する有機物をさらに効果的に除去することができる。以下、具体的に説明する。
例えば、酸素を含む雰囲気下で紫外線を照射することにより、被処理体の表面処理を行う。酸素を含む雰囲気下において、紫外線のうち200nm未満の波長を含む光と200nm以上の波長を含む光を照射することにより、オゾンを生成させるとともに一重項酸素を生成させることができる。また、紫外線のうち180nm未満の波長を含む光を照射することにより、オゾンを生成させるとともに一重項酸素を生成させることもできる。
酸素を含む雰囲気下で、200nm未満の波長を含む光および200nm以上の波長を含む光を照射することにより起きる反応例を示す。
O2+hν(λ1nm)→O(3P)+O(3P) ・・・ (1)
O(3P)+O2→O3 ・・・ (2)
O3+hν(λ2nm)→O(1D)+O2 ・・・ (3)
上記反応式(1)において、酸素(O2)を含む雰囲気下で200nm未満の波長(λ1nm)を含む光(hν)を照射することにより基底状態の酸素原子(O(3P))が生成する。次に、反応式(2)において、基底状態の酸素原子(O(3P))と酸素(O2)とが反応してオゾン(O3)が生成する。そして、反応式(3)において、生成されたオゾン(O3)を含む雰囲気下で200nm以上の波長(λ2nm)を含む光が照射されることにより、励起状態の一重項酸素O(1D)が生成される。酸素を含む雰囲気下において、紫外線のうち200nm未満の波長を含む光を照射することによりオゾンを生成させるとともに、200nm以上の波長を含む光を照射することによりオゾンを分解して一重項酸素を生成する。上記のような表面処理は、例えば、酸素を含む雰囲気下での低圧水銀ランプの照射(λ1=185nm、λ2=254nm)により行うことができる。
また、酸素を含む雰囲気下で、180nm未満の波長を含む光を照射して起きる反応例を示す。
O2+hν(λ3nm)→O(1D)+O(3P) ・・・ (4)
O(3P)+O2→O3 ・・・ (5)
O3+hν(λ3nm)→O(1D)+O2 ・・・ (6)
上記反応式(4)において、酸素(O2)を含む雰囲気下で180nm未満の波長(λ3nm)を含む光を照射することにより、励起状態の一重項酸素O(1D)と基底状態の酸素原子(O(3P))が生成する。次に、反応式(5)において、基底状態の酸素原子(O(3P))と酸素(O2)とが反応してオゾン(O3)が生成する。反応式(6)において、生成されたオゾン(O3)を含む雰囲気下で180nm未満の波長(λ3nm)を含む光が照射されることにより、励起状態の一重項酸素と酸素が生成される。酸素を含む雰囲気下において、紫外線のうち180nm未満の波長を含む光を照射することによりオゾンを生成させるとともにオゾンまたは酸素を分解して一重項酸素を生成する。上記のような表面処理は、例えば、酸素を含む雰囲気下でのXeエキシマUVランプの照射により行うことができる。
200nm未満の波長を含む光により被処理体表面に付着する有機物などの化学結合を切断し、オゾンまたは一重項酸素により被処理体表面に付着する有機物や化学結合を切断した有機物などを酸化分解して除去することができる。上記のような表面処理を行うことで、被処理体表面の親水性および清浄性をより高めることができ、接合を良好に行うことができる。
第2の態様においては、ベース基板100とボンド基板110とを貼り合わせる前に、表面処理を行う場合について説明したが、本発明の一態様はこれに限定されず、表面処理の代わりに第1の態様で説明したプラズマ処理を行ってもよいし、表面処理とプラズマ処理とを組み合わせて行ってもよい。なお、第1の態様において、プラズマ処理の代わりに第2の態様で説明した表面処理を行ってもよいし、表面処理とプラズマ処理とを組み合わせて行ってもよい。
次に、ボンド基板110を、脆化領域112において、半導体層116とボンド基板200とに分離する(図7(D)参照)。これにより、ベース基板100上には半導体層116が残存することになる。その後、半導体層116に欠陥低減処理や、表面の平坦性向上処理等を施すことにより、ベース基板100上に半導体層118を形成することができる(図7(E)参照)。なお、図7(D)及び図7(E)は、上記図6(D)及び図6(E)と同様に行うことができるため、詳細な説明は省略する。
開示する発明の一態様によって、エアボイドなどの貼り合わせに起因する欠陥を十分に低減したSOI基板を作製することができるため、これを用いた半導体装置の特性を向上させることができる。
このように、開示する発明の一態様によって、繰り返しの使用によってボンド基板に生じる不具合を抑制することが可能である。
(実施の形態6)
本実施の形態では、図8乃至図10を参照して、上記実施の形態における半導体装置の作製方法の詳細について説明する。ここでは、半導体装置の一例として複数のトランジスタからなる半導体装置の作製方法について説明する。以下において示すトランジスタを組み合わせて用いることで、様々な半導体装置を形成することができる。
図8(A)は、実施の形態5などに示す方法で作製したSOI基板の一部を示す断面図である(例えば、図6(E)等参照)。
半導体層700(図6(E)における半導体層118に対応)には、TFTのしきい値電圧を制御するために、硼素、アルミニウム、ガリウムなどのp型不純物や、リン、砒素などのn型不純物を添加しても良い。不純物を添加する領域、および添加する不純物の種類は、適宜変更することができる。例えば、nチャネル型TFTの形成領域にp型不純物を添加し、pチャネル型TFTの形成領域にn型不純物を添加する。上述の不純物を添加する際には、ドーズ量が1×1015/cm2以上1×1017/cm2以下程度となるように行えばよい。
その後、半導体層700を島状に分離して、半導体層702、および半導体層704を形成する(図8(B)参照)。
次に、半導体層702と半導体層704を覆うように、ゲート絶縁膜706を形成する(図8(C)参照)。ここでは、プラズマCVD法を用いて、酸化シリコン膜を単層で形成することとする。酸化シリコン以外にも、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化ハフニウム、酸化アルミニウム、酸化タンタル等を含む膜を、単層構造または積層構造で形成することによりゲート絶縁膜706としても良い。
プラズマCVD法以外の作製方法としては、スパッタリング法や、高密度プラズマ処理による酸化または窒化による方法が挙げられる。高密度プラズマ処理は、例えば、ヘリウム、アルゴン、クリプトン、キセノンなどの希ガスと、酸素、酸化窒素、アンモニア、窒素、水素などガスの混合ガスを用いて行う。この場合、プラズマの励起をマイクロ波の導入により行うことで、低電子温度で高密度のプラズマを生成することができる。このような高密度のプラズマで生成された酸素ラジカル(OHラジカルを含む場合もある)や窒素ラジカル(NHラジカルを含む場合もある)によって、半導体層の表面を酸化または窒化することにより、1nm以上20nm以下、望ましくは2nm以上10nm以下の絶縁膜を半導体層に接するように形成する。
上述した高密度プラズマ処理による半導体層の酸化または窒化は固相反応であるため、ゲート絶縁膜706と半導体層702、半導体層704との界面準位密度をきわめて低くすることができる。また、高密度プラズマ処理により半導体層を直接酸化または窒化することで、形成される絶縁膜の厚さのばらつきを抑えることが出来る。また、半導体層が単結晶であるため、高密度プラズマ処理を用いて半導体層の表面を固相反応で酸化させる場合であっても、均一性が良く、界面準位密度の低いゲート絶縁膜を形成することができる。このように、高密度プラズマ処理により形成された絶縁膜をトランジスタのゲート絶縁膜の一部または全部に用いることで、特性のばらつきを抑制することができる。
または、半導体層702と半導体層704を熱酸化させることで、ゲート絶縁膜706を形成するようにしても良い。このように、熱酸化を用いる場合には、ある程度の耐熱性を有するガラス基板を用いることが必要である。
なお、水素を含むゲート絶縁膜706を形成し、その後、350℃以上450℃以下の温度による加熱処理を行うことで、ゲート絶縁膜706中に含まれる水素を半導体層702および半導体層704中に拡散させるようにしても良い。この場合、ゲート絶縁膜706として、プラズマCVD法を用いた窒化シリコンまたは窒化酸化シリコンを用いるとことができる。なお、プロセス温度は350℃以下とすると良い。このように、半導体層702および半導体層704に水素を供給することで、半導体層702中、半導体層704中、ゲート絶縁膜706と半導体層702の界面、およびゲート絶縁膜706と半導体層704の界面における欠陥を効果的に低減することができる。
次に、ゲート絶縁膜706上に導電膜を形成した後、該導電膜を所定の形状に加工(パターニング)することで、半導体層702の上方に電極708を、半導体層704の上方に電極710を形成する(図8(D)参照)。導電膜の形成にはCVD法、スパッタリング法等を用いることができる。導電膜は、タンタル(Ta)、タングステン(W)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、クロム(Cr)、ニオブ(Nb)等の材料を用いて形成することができる。また、上記金属を主成分とする合金材料を用いても良いし、上記金属を含む化合物を用いても良い。または、半導体に導電性を付与する不純物元素をドーピングした多結晶シリコンなど、半導体材料を用いて形成しても良い。
本実施の形態では電極708および電極710を単層の導電膜で形成しているが、開示する発明の一態様に係る半導体装置は該構成に限定されない。電極708および電極710は積層された複数の導電膜で形成されていても良い。2層構造とする場合には、例えば、モリブデン膜、チタン膜、窒化チタン膜等を下層に用い、上層にはアルミニウム膜などを用いればよい。3層構造の場合には、モリブデン膜とアルミニウム膜とモリブデン膜の積層構造や、チタン膜とアルミニウム膜とチタン膜の積層構造などを採用するとよい。
なお、電極708および電極710を形成する際に用いるマスクは、酸化シリコンや窒化酸化シリコン等の材料を用いて形成してもよい。この場合、酸化シリコン膜や窒化酸化シリコン膜等をパターニングしてマスクを形成する工程が加わるが、これらの材料を用いたマスクでは、レジスト材料を用いたマスクと比較してエッチング時における膜減りが少ないため、より正確な形状の電極708および電極710を形成することができる。また、マスクを用いずに、液滴吐出法を用いて選択的に電極708および電極710を形成しても良い。ここで、液滴吐出法とは、所定の組成物を含む液滴を吐出または噴出することで所定のパターンを形成する方法を意味し、インクジェット法などがその範疇に含まれる。
また、ICP(Inductively Coupled Plasma:誘導結合型プラズマ)エッチング法を用い、エッチング条件(コイル型の電極に印加される電力量、基板側の電極に印加される電力量、基板側の電極温度等)を適宜調節し、所望のテーパー形状を有するように電極708および電極710を形成することもできる。また、テーパー形状は、マスクの形状によって制御することもできる。なお、エッチング用ガスとしては、塩素、塩化硼素、塩化珪素、四塩化炭素などの塩素系ガス、四弗化炭素、弗化硫黄、弗化窒素などのフッ素系ガス、または酸素などを適宜用いることができる。
次に、電極708および電極710をマスクとして、一導電型を付与する不純物元素を半導体層702、半導体層704に添加する(図9(A)参照)。本実施の形態では、半導体層702にn型を付与する不純物元素(例えばリンまたはヒ素)を、半導体層704にp型を付与する不純物元素(例えばボロン)を添加する。なお、n型を付与する不純物元素を半導体層702に添加する際には、p型の不純物が添加される半導体層704はマスク等で覆い、n型を付与する不純物元素の添加が選択的に行われるようにする。また、p型を付与する不純物元素を半導体層704に添加する際には、n型の不純物が添加される半導体層702はマスク等で覆い、p型を付与する不純物元素の添加が選択的に行われるようにする。または、半導体層702および半導体層704に、p型を付与する不純物元素またはn型を付与する不純物元素の一方を添加した後、一方の半導体層のみに、より高い濃度でp型を付与する不純物元素またはn型を付与する不純物元素の他方を添加するようにしても良い。上記不純物元素の添加により、半導体層702に不純物領域712、半導体層704に不純物領域714が形成される。
次に、電極708の側面にサイドウォール716を、電極710の側面にサイドウォール718を形成する(図9(B)参照)。サイドウォール716およびサイドウォール718は、例えば、ゲート絶縁膜706、電極708および電極710を覆うように新たに絶縁膜を形成し、異方性エッチングにより該絶縁膜を部分的にエッチングすることで形成することができる。なお、上記の異方性エッチングにより、ゲート絶縁膜706を部分的にエッチングしても良い。サイドウォール716およびサイドウォール718を形成するための絶縁膜としては、プラズマCVD法やスパッタリング法等を用いて、シリコン、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、有機材料などを含む膜を、単層構造または積層構造で形成すれば良い。本実施の形態では、膜厚100nmの酸化シリコン膜をプラズマCVD法によって形成する。また、エッチングガスとしては、CHF3とヘリウムの混合ガスを用いることができる。なお、サイドウォール716およびサイドウォール718を形成する工程は、これらに限定されるものではない。
次に、ゲート絶縁膜706、電極708および電極710、サイドウォール716およびサイドウォール718をマスクとして、半導体層702、半導体層704に一導電型を付与する不純物元素を添加する(図9(C)参照)。なお、半導体層702、半導体層704には、それぞれ先の工程で添加した不純物元素と同じ導電型の不純物元素をより高い濃度で添加する。ここで、n型を付与する不純物元素を半導体層702に添加する際には、p型の不純物が添加される半導体層704はマスク等で覆い、n型を付与する不純物元素の添加が選択的に行われるようにする。また、p型を付与する不純物元素を半導体層704に添加する際には、n型の不純物が添加される半導体層702はマスク等で覆い、p型を付与する不純物元素の添加が選択的に行われるようにする。
上記不純物元素の添加により、半導体層702に、一対の高濃度不純物領域720と、一対の低濃度不純物領域722と、チャネル形成領域724とが形成される。また、上記不純物元素の添加により、半導体層704に、一対の高濃度不純物領域726と、一対の低濃度不純物領域728と、チャネル形成領域730とが形成される。高濃度不純物領域720、高濃度不純物領域726はソースまたはドレインとして機能し、低濃度不純物領域722、低濃度不純物領域728はLDD(Lightly Doped Drain)領域として機能する。
なお、半導体層702上に形成されたサイドウォール716と、半導体層704上に形成されたサイドウォール718は、キャリアが移動する方向(いわゆるチャネル長に平行な方向)の長さが同じになるように形成しても良いが、異なるように形成しても良い。例えば、pチャネル型トランジスタとなる半導体層704上のサイドウォール718は、nチャネル型トランジスタとなる半導体層702上のサイドウォール716よりも、キャリアが移動する方向の長さが長くなるように形成すると良い。pチャネル型トランジスタにおいて、サイドウォール718の長さをより長くすることで、ボロンの拡散による短チャネル効果を抑制することができるため、ソースおよびドレインに高濃度のボロンを添加することが可能となる。これにより、ソースおよびドレインを十分に低抵抗化することができる。
ソースおよびドレインをさらに低抵抗化するために、半導体層702および半導体層704の一部をシリサイド化したシリサイド領域を形成しても良い。シリサイド化は、半導体層に金属を接触させ、加熱処理(例えば、GRTA法、LRTA法等)により、半導体層中の珪素と金属とを反応させて行う。シリサイド領域としては、コバルトシリサイドまたはニッケルシリサイドを形成すれば良い。半導体層702や半導体層704が薄い場合には、半導体層702、半導体層704の底部までシリサイド反応を進めても良い。シリサイド化に用いることができる金属材料としては、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、コバルト(Co)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、バナジウム(V)、ネオジム(Nd)、クロム(Cr)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)等が挙げられる。また、レーザー光の照射などによってもシリサイド領域を形成することができる。
上述の工程により、nチャネル型トランジスタ732およびpチャネル型トランジスタ734が形成される。なお、図9(C)に示す段階では、ソース電極またはドレイン電極として機能する導電膜は形成されていないが、これらのソース電極またはドレイン電極として機能する導電膜を含めてトランジスタと呼ぶこともある。
次に、nチャネル型トランジスタ732、pチャネル型トランジスタ734を覆うように絶縁膜736を形成する(図9(D)参照)。絶縁膜736は必ずしも設ける必要はないが、絶縁膜736を形成することで、アルカリ金属やアルカリ土類金属などの不純物がnチャネル型トランジスタ732、pチャネル型トランジスタ734に侵入することを防止できる。具体的には、絶縁膜736を、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化アルミニウム、酸化アルミニウムなどの材料を用いて形成するのが望ましい。本実施の形態では、膜厚600nm程度の窒化酸化シリコン膜を、絶縁膜736として用いる。この場合、上述の水素化の工程は、該窒化酸化シリコン膜形成後に行っても良い。なお、本実施の形態においては、絶縁膜736を単層構造としているが、積層構造としても良いことはいうまでもない。例えば、2層構造とする場合には、酸化窒化シリコン膜と窒化酸化シリコン膜との積層構造とすることができる。
次に、nチャネル型トランジスタ732、pチャネル型トランジスタ734を覆うように、絶縁膜736上に絶縁膜738を形成する。絶縁膜738は、ポリイミド、アクリル、ベンゾシクロブテン、ポリアミド、エポキシ等の、耐熱性を有する有機材料を用いて形成するとよい。また、上記有機材料の他に、低誘電率材料(low−k材料)、シロキサン系樹脂、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、PSG(リンガラス)、BPSG(リンボロンガラス)、アルミナ等を用いることもできる。ここで、シロキサン系樹脂とは、シロキサン系材料を出発材料として形成されたSi−O−Si結合を含む樹脂に相当する。シロキサン系樹脂は、置換基に水素の他、フッ素、アルキル基、芳香族炭化水素から選ばれる一を有していても良い。なお、これらの材料で形成される絶縁膜を複数積層させることで、絶縁膜738を形成しても良い。
絶縁膜738の形成には、その材料に応じて、CVD法、スパッタ法、SOG法、スピンコート、ディップ、スプレー塗布、液滴吐出法(インクジェット法、スクリーン印刷、オフセット印刷等)、ドクターナイフ、ロールコーター、カーテンコーター、ナイフコーター等を用いることができる。
次に、半導体層702と半導体層704の一部が露出するように絶縁膜736および絶縁膜738にコンタクトホールを形成する。そして、該コンタクトホールを介して半導体層702に接する導電膜740および導電膜742と、半導体層704に接する導電膜744および導電膜746を形成する(図10(A)参照)。導電膜740、導電膜742、導電膜744、導電膜746は、トランジスタのソース電極またはドレイン電極として機能する。なお、本実施の形態においては、コンタクトホール開口時のエッチングに用いるガスとしてCHF3とHeの混合ガスを用いたが、これに限定されるものではない。
導電膜740、導電膜742、導電膜744、導電膜746は、CVD法やスパッタリング法等により形成することができる。材料としては、アルミニウム(Al)、タングステン(W)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、銅(Cu)、金(Au)、銀(Ag)、マンガン(Mn)、ネオジム(Nd)、炭素(C)、珪素(Si)等を用いることができる。また、上記材料を主成分とする合金を用いても良いし、上記材料を含む化合物を用いても良い。また、導電膜740、導電膜742、導電膜744、導電膜746は、単層構造としても良いし、積層構造としても良い。
アルミニウムを主成分とする合金の例としては、アルミニウムを主成分として、ニッケルを含むものを挙げることができる。また、アルミニウムを主成分とし、ニッケルと、炭素または珪素の一方または両方を含むものを挙げることができる。アルミニウムやアルミニウムシリコン(Al−Si)は抵抗値が低く、安価であるため、導電膜740、導電膜742、導電膜744、導電膜746を形成する材料として適している。特に、アルミニウムシリコンは、パターニングの際のレジストベークによるヒロックの発生を抑制することができるため好ましい。また、珪素の代わりに、アルミニウムに0.5%程度のCuを混入させた材料を用いても良い。
導電膜740、導電膜742、導電膜744、導電膜746を積層構造とする場合には、例えば、バリア膜とアルミニウムシリコン膜とバリア膜の積層構造、バリア膜とアルミニウムシリコン膜と窒化チタン膜とバリア膜の積層構造などを採用するとよい。なお、バリア膜とは、チタン、チタンの窒化物、モリブデンまたはモリブデンの窒化物などを用いて形成された膜である。バリア膜の間にアルミニウムシリコン膜を挟むように導電膜を形成すると、アルミニウムやアルミニウムシリコンのヒロックの発生をより一層防止することができる。また、還元性の高い元素であるチタンを用いてバリア膜を形成すると、半導体層702と半導体層704上に薄い酸化膜が形成されていたとしても、バリア膜に含まれるチタンが該酸化膜を還元し、導電膜740および導電膜742と半導体層702とのコンタクト、導電膜744および導電膜746と半導体層704とのコンタクトを良好なものとすることができる。また、バリア膜を複数積層するようにして用いても良い。その場合、例えば、導電膜740乃至導電膜746を、下層からチタン、窒化チタン、アルミニウムシリコン、チタン、窒化チタンのように、5層構造またはそれ以上の積層構造とすることもできる。
また、導電膜740、導電膜742、導電膜744、導電膜746として、WF6ガスとSiH4ガスから化学気相成長法で形成したタングステンシリサイドを用いても良い。また、WF6を水素還元して形成したタングステンを、導電膜740、導電膜742、導電膜744、導電膜746として用いても良い。
なお、導電膜740および導電膜742はnチャネル型トランジスタ732の高濃度不純物領域720に接続されている。導電膜744および導電膜746はpチャネル型トランジスタ734の高濃度不純物領域726に接続されている。
図10(B)に、図10(A)に示したnチャネル型トランジスタ732およびpチャネル型トランジスタ734の平面図を示す。ここで、図10(B)のA−Bにおける断面が図10(A)に対応している。ただし、図10(B)においては、簡単のため、絶縁膜736、絶縁膜738、導電膜740、導電膜742、導電膜744、導電膜746等を省略している。
なお、本実施の形態においては、nチャネル型トランジスタ732とpチャネル型トランジスタ734が、それぞれゲート電極として機能する電極を1つずつ有する場合(電極708、電極710を有する場合)を例示しているが、開示する発明の一態様は該構成に限定されない。トランジスタは、ゲート電極として機能する電極を複数有し、なおかつ該複数の電極が電気的に接続されているマルチゲート構造を有していても良い。
本実施の形態では、エアボイドなどの欠陥の発生を抑制した良好なSOI基板を用いているため、半導体装置の歩留まりを向上させることができる。なお、本実施の形態で示した構成は、他の実施の形態で示す構成と適宜組み合わせて用いることができる。
本実施例では、貼り合わせに係る速度を制御したSOI基板のエアボイド数と、貼り合わせに係る速度を制御しなかったSOI基板のエアボイド数とを比較した結果について説明する。
まず、本実施例で用いた試料について説明する。
ボンド基板として、シリコンウエハ(126.6mmの略四角形)を用いた。また、ベース基板として、ガラス基板(126.6mmの略四角形)を用いた。
次に、シリコンウエハに対し、熱酸化処理を行うことにより、シリコンウエハの表面に酸化シリコン膜を形成した。熱酸化処理は、酸化シリコン膜の膜厚が210nmとなるように行った。熱酸化処理の条件は、酸素ガスと水素ガスを用いたウェット熱酸化で、950℃で62分間とした。
次に、酸化シリコン膜を介して水素イオンを照射することにより、シリコンウエハ中に脆化領域を形成した。水素イオンの照射は、イオンドーピング装置を用いて行った。ソースガスとして100%の水素ガスを用い、水素ガスを励起してプラズマを生成した。生成されたプラズマには、3種のイオン種(H+、H2 +、H3 +)が含まれている。3種のイオン種を分離せずに電界で加速し、シリコンウエハに照射した。また、水素ガスの流量は50sccm、加速電圧は50kV、電流密度は6.35μA/cm2、ドーズ量は2.7×1016ions/cm2とした。
次に、シリコンウエハに対してUVオゾン処理を行った。UVオゾン処理は、大気雰囲気下にてエキシマUVランプ直下のステージ上に基板を配置し、10mm/secの速度でステージをスキャンさせて基板全面にUVを照射する方法で処理を行った。
次に、シリコンウエハとガラス基板との貼り合わせを行った。貼り合わせの条件として、貼り合わせに係る速度を制御した場合と、貼り合わせに係る速度を制御しない場合とで貼り合わせを行った。
次に、貼り合わせに係る速度を制御する場合について説明する。この場合については、図12に示す貼り合わせ装置を用いた。まず、貼り合わせ装置の基板支持台にシリコンウエハを乗せ、その後、真空ポンプを用いて真空排気を行うことにより、シリコンウエハを真空吸着領域に吸着して固定した。次に、シリコンウエハにベース基板を対向させ、シリコンウエハ及びガラス基板の一部にボンドピンを用いて力を加えて、シリコンウエハを反らせるとともに、シリコンウエハとガラス基板との貼り合わせを開始させた。
その後、ボンドピンの力を徐々に低下させることにより、シリコンウエハの反り量を低下させ、シリコンウエハとガラス基板の貼り合わせに係る速度を低下させ、貼り合わせを進行させた。
シリコンウエハとガラス基板の貼り合わせ終了地点となる、シリコンウエハとガラス基板との角部(貼り合わせを開始した地点の角部との対向に位置する角部)において、基板支持台に設けられたストッパーにより、ガラス基板と、シリコンウエハとの貼り合わせが停止した状態となった。その後、徐々に基板支持台に設けられたストッパーを下降させることで、シリコンウエハとベース基板との貼り合わせが再び開始され、ストッパーの位置を、ボンド基板の表面の高さと同じ高さにすることで、シリコンウエハとガラス基板との貼り合わせを完了させた。
比較例として、図12に示す貼り合わせ装置を用いず、貼り合わせに係る速度を制御しない場合について説明する。まず、シリコンウエハとガラス基板とを対向させ、ガラス基板の角部の一点を押圧することで、シリコンウエハとガラス基板との貼り合わせを開始させた。貼り合わせを開始させると、貼り合わせは、その開始地点から同心円を描くように進行し、そのまま、シリコンウエハとガラス基板との貼り合わせを、貼り合わせ終了地点まで進行させた。
図13(A)に、図12に示す貼り合わせ装置を用いて貼り合わせを行ったシリコンウエハとガラス基板との貼り合わせ完了地点を光学顕微鏡によって撮影した写真(倍率50倍)を示す。図13(B)に、比較例として、図12に示す貼り合わせ装置を用いずに貼り合わせを行ったシリコンウエハとガラス基板との貼り合わせ完了地点を光学顕微鏡によって撮影した写真(倍率50倍)を示す。
図13(B)に示すように、貼り合わせに係る速度を制御しなかった場合は、貼り合わせ完了地点付近において、複数のエアボイドが確認された。これに対し、図13(A)に示すように、図12に示す貼り合わせ装置を用いて、貼り合わせに係る速度を制御した場合は、貼り合わせ完了地点付近においても、エアボイドは確認されなかった。
以上により、シリコンウエハとガラス基板との貼り合わせに係る速度を制御することにより、貼り合わせ界面において、エアボイドの発生を抑制することができることが確認できた。