JP2012066651A - 液圧ブレーキシステム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】静圧相当制御中に、移動判定時間内のパルス累積値が移動判定しきい値以上になった場合には、通常時制御が実行される。それにより、ブレーキシリンダ液圧が増加させられ、車両の移動が良好に防止される。このように、パルスの累積値に基づくため、回転速度に基づく場合に比較して、車両のゆっくりした移動の有無を、正確に検出することが可能となる。また、その後、パルス無し状態が停止判定時間以上継続すれば、静圧相当制御が開始されるのであり、静圧相当制御を適切に行うことが可能となる。
【選択図】図9
Description
電源には、上述のマスタ遮断弁に加えて、ECU,モータ等、種々の電流消費装置が接続される。電流消費装置の始動時には突入電流が流れるため、電源から大きな電流が供給され、電源電圧が低下する可能性がある。そのため、マスタ遮断弁に電流が供給できなくなり、マスタ遮断弁が開状態に切り換えられる可能性がある。そして、マスタ遮断弁が開状態に切り換えられると、ブレーキシリンダの作動液がマスタシリンダに戻され、キックバックが生じる。それに対して、特許文献1に記載の液圧ブレーキシステムにおいては、電流消費装置が始動し、マスタ遮断弁が不必要に開状態に切り換えられる可能性が高い場合に、静圧相当制御が行われ、ブレーキシリンダの液圧が低くされる。そのため、マスタ遮断弁が開状態に切り換えられても、キックバックを抑制することができる。
パルスの累積値に基づけば、例えば、車輪のゆっくりした回転、すなわち、車両のゆっくりした移動を検出することが可能となる。そして、車両のゆっくりした移動が検出された場合に、静圧相当制御を中止して、ブレーキシリンダ液圧を大きくすれば、車両を良好に停止させることが可能となる。このように、車両のゆっくりした移動が検出された場合に静圧相当制御が中止させられるのであり、適切に静圧相当制御が行われるようにすることが可能となる。
運転者により操作可能なブレーキ操作部材に連携させられた加圧ピストンを備え、前記ブレーキ操作部材の操作により、加圧ピストンの前方の加圧室に液圧を発生させるマスタシリンダと、
そのマスタシリンダの加圧室と前記ブレーキシリンダとの間に設けられ、前記ブレーキシリンダを前記マスタシリンダから遮断する閉状態と、前記ブレーキシリンダと前記マスタシリンダとを連通させる開状態とに切り換え可能なマスタ遮断弁と、
前記車輪が予め定められた角度だけ回転するのに伴ってパルス信号を出力する車輪回転検出装置と、
前記マスタ遮断弁の閉状態において、前記ブレーキシリンダの液圧を制御するブレーキ液圧制御装置と
を含む液圧ブレーキシステムであって、
前記ブレーキ液圧制御装置が、前記マスタ遮断弁の閉状態において、前記マスタ遮断弁が開状態に切り換えられる可能性が高い場合に、前記開状態に切り換えられる可能性が低い場合に比較して、前記ブレーキシリンダの液圧を、前記ブレーキ操作部材の同じ操作状態に対して低くする液圧抑制制御部を含み、
当該液圧ブレーキシステムが、前記液圧抑制制御部による液圧抑制制御中に、前記車輪回転検出装置から出力されたパルス信号のパルスの数の累積値が移動判定しきい値以上になった場合に、その液圧抑制制御を中止する抑制制御中止部を含むことを特徴とする液圧ブレーキシステム。
液圧抑制制御は、ブレーキ操作部材の同じ操作状態に対して、マスタ遮断弁が開状態に切り換えられる可能性が高い場合に低い場合に比較して、ブレーキシリンダ液圧を低くする制御である。液圧抑制制御は、上述の静圧相当制御に対応する。
例えば、マスタ遮断弁が開状態に切り換えられる可能性が低い場合に、ブレーキシリンダ液圧がマスタシリンダの液圧より高い値に制御され、マスタ遮断弁が開状態に切り換えられる可能性が高い場合に、マスタシリンダの液圧とほぼ同じ大きさに制御されるようにすることができる。いずれの場合であっても、ブレーキシリンダの液圧は、動力式液圧源の液圧を利用して制御される。
また、マスタ遮断弁が、マスタシリンダと、複数の車輪のうちの一部の車輪のブレーキシリンダとの間に設けられる場合には、その一部の車輪のブレーキシリンダの液圧が低くされる。他の車輪のブレーキシリンダの液圧については低くする必要性は低い。
(2)前記マスタ遮断弁が、電源から電流が供給される状態で閉状態となり、前記電流が供給されない状態で開状態となる常開の電磁開閉弁であり、
前記液圧抑制制御部が、前記電源の電圧が設定電圧以下まで低下する可能性が高い場合に、前記マスタ遮断弁が開状態に切り換えられる可能性が高いとする電圧低下予測部を含むものとすることができる。
電源から、マスタ遮断弁とは別の電流消費装置に大きな電流が供給されて、電源の電圧が低くなると、マスタ遮断弁のソレノイドに電流が供給されなくなり、開状態に切り換えられる可能性がある。特に、電源がバッテリであり、バッテリが劣化している場合には、マスタ遮断弁のソレノイドに電流が供給されなくなる可能性が高くなる。
そのため、(a)電流消費装置が始動させられる可能性が高い場合、(b)電源から大きな電流が供給される可能性が高い場合、(c)電源の電圧が設定電圧以下まで低下する可能性が高い場合に、マスタ遮断弁が開状態に切り換えられる可能性が高いとすることができる。
(3)前記マスタ遮断弁が、電源から電流が供給される状態で閉状態となり、前記電流が供給されない状態で開状態となる常開の電磁開閉弁であり、
前記電源が、前記マスタ遮断弁とは別の電流消費装置にも電流を供給するものであり、
前記液圧抑制制御部が、前記電流消費装置が始動させられる可能性が高い場合に、前記マスタ遮断弁が開状態に切り換えられる可能性が高いとする電流消費装置始動予測部を含むものとすることができる。
電流消費装置は、始動時に大きな突入電流が流れる装置とすることができる。
(4)前記電流消費装置は、前記電源に電流を供給可能な電源電力供給装置の始動時に、作動させられるものであり、
前記液圧抑制制御部が、前記電源電力供給装置の非作動状態にある間、前記マスタ遮断弁が開状態に切り換えられる可能性があるとして、前記ブレーキシリンダの液圧を低くする電源電力供給不能時抑制制御部を含むものとすることができる。
電源電力供給装置の作動状態においては、電源に電流が供給可能とされるため、電源から電流消費装置(マスタ遮断弁を含む)に電流を供給できなくなる状態になる可能性は低い。
そのため、電源電力供給装置が非作動状態にある場合においては、マスタ遮断弁が開状態に切り換えられる可能性があると考えたり、電源電力供給装置が非作動状態にあり、かつ、始動させられる可能性が高い場合に、マスタ遮断弁が開状態に切り換えられる可能性があると考えたりすることができる。
電源がバッテリである場合に、駆動装置がエンジンである車両において、電源電力供給装置としてオルタネータが該当する。オルタネータはエンジンの始動に伴って始動させられ、エンジンはスタータモータの駆動により始動させられるのであり、スタータモータが電流消費装置に該当する。駆動装置が電動モータを含む車両において、電源電力供給装置として、本項に記載の電源とは別の電源(例えば、メイン電源)の電圧を変更して本項に記載の電源(例えば、サブ電源)に供給するDC/DCコンバータが該当する。DC/DCコンバータの始動時には、冷却装置が始動させられ、冷却水循環モータが始動させられる。冷却水循環モータが電流消費装置に該当する。
(5)前記抑制制御中止部が、前記パルスの数の累積値が前記移動判定しきい値以上になった後には、前記車輪の回転速度が小さくなっても、前記液圧抑制制御部による制御の再開を禁止する液圧抑制制御再開禁止部を含むものとされる。
パルスの累積値が移動判定しきい値以上になった場合には、車輪の回転速度が、パルスの累積値が移動判定しきい値以上になった時点の回転速度より小さくなっても、液圧抑制制御部による制御が中止された状態が維持される。
(6)当該液圧ブレーキシステムが、前記抑制制御中止部によって前記液圧抑制制御部による制御が中止されている状態において、前記車輪回転検出装置からパルス信号が出力されない状態が第1設定時間以上継続した場合に、前記液圧抑制制御部による制御を再開させる液圧抑制制御再開部を含むものとされる。
第1設定時間は、停止判定時間と称することができる。液圧抑制制御の中止中において、パルス信号が出力されない状態が停止判定時間以上続いた場合には、液圧抑制制御が再開させられる。ブレーキシリンダ液圧は低くしても差し支えないからである。
例えば、液圧抑制制御が、パルスの累積値が移動判定しきい値以上になったことにより中止している状態において、車輪の回転速度が、パルスの累積値が移動判定しきい値以上になった時点より小さくなっても、そのことに起因して液圧抑制制御が再開されることはない。しかし、パルス信号が検出されない状態(パルスなし状態)が停止判定時間以上続いた場合には、液圧抑制制御が再開されるようにすることができる。
(7)前記抑制制御中止部が、トランスミッションのシフト位置がパーキング位置でない場合に、前記パルスの数のカウントを実行する非パーキング時カウント部を含むものとすることができる。
シフト位置がパーキング位置にある場合には、パーキングロック機構がロック状態にあるため、車両は移動しないのが普通である。そのため、パルスの数のカウントを実行する必要性は低い。
トランスミッションのシフト位置がパーキング位置にある場合には、その時点のパルス累積値に基づいて液圧抑制制御と通常時制御とのいずれかが行われるようにしても、液圧抑制制御と通常時制御との予め定められた一方の制御が行われるようにしてもよい。シフト位置がパーキング位置にある場合には、パルスの数のカウントが行われないため、通常時制御が行われるようにすれば、車両の移動を未然に防止することができる。
なお、抑制制御中止部は、パーキングブレーキが作用状態にない場合に、パルスの数のカウントを実行するものとすることができる。
(8)前記抑制制御中止部が、(a)前記液圧抑制制御が開始されてから前記パルスの数をカウントする抑制制御開始後カウント部と、(b)前記液圧抑制制御中に、前記パルス信号が最初に出力されてから前記パルスの数をカウントするパルス初回出力後カウント部とのうちの少なくとも一方を含むものである。
(9)前記抑制制御中止部が、前記パルスのカウントが開始されてから、予め定められた第2設定時間が経過するまでに、前記パルスの累積値が前記移動判定しきい値以上になった場合に、前記液圧抑制制御を中止するものである。
第2設定時間は、移動判定時間と称することができ、移動判定時間内にパルスの累積値が移動判定しきい値以上になった場合に、液圧抑制制御が中止される。
移動判定時間は、パルスの累積値に基づいて、車両が移動しているか否かを正確に判定し得る長さとすることができ、車輪の回転速度を取得する際に用いられる時間より長い時間とすることができる。
また、移動判定時間内のパルスの累積値に基づけば、車輪の回転速度に基づく場合より、車両のゆっくりした移動の有無を正確に検出することができる。
さらに、移動判定時間内において、車輪の回転速度は一定であるとは限らない。回転速度が大きくなったり小さくなったりしたり、回転速度が0になったりすることがあるのであり、回転速度とは無関係に、パルスの数の累積値と移動判定しきい値とが比較される。
このように、移動判定時間内のパルスの数の累積値が大きい場合は、移動判定時間内の平均的な回転速度が大きいといえるが、移動判定時間内に、車輪の回転速度が大きい時間、小さい時間、0の時間が含まれる場合があり、常に、累積値の大小と回転速度の大小とが1対1に対応するとは限らない。
それに対して、パルスが連続して出力されない場合(例えば、パルスが停止判定時間以上出力されない場合)には、パルスのカウントが中止されるようにすることができる。
第1設定時間(停止判定時間)は、第2設定時間(移動判定時間)と同じ大きさであっても異なる時間であってもよく、例えば、第1設定時間は第2設定時間より長い時間とすることができる。
(10)前記抑制制御中止部は、前記車両の前後方向の振動に起因して発生させられるパルス信号を無視するものとすることができる。
パルス信号を無視するとは、車両の前後方向の振動に起因して発生させられるパルスが累積値に含まれないようにすることである。
車両の前後方向の振動(揺り戻し)に起因して、車輪回転検出装置からパルス信号が出力されることがあるが、その場合に、発生させられたパルスは車両の移動に起因するものではない。そのため、前後方向の振動に起因して出力されたパルスは累積値にカウントされないようにすることが望ましい。
(11)前記車輪回転検出装置が、前進方向の回転と後退方向の回転とを区別可能なものであり、前記抑制制御中止部が、前記前進方向の回転のパルスの数から後退方向の回転のパルスの数を引いた値を前記前進方向の回転のパルスの累積値とする前進方向回転パルスカウント部を含むものとすることができる。
車両の車輪において、前進方向の回転と後退方向の回転とが交互に起きるのは、車両の前後方向の振動に起因すると考えられる。そのため、前進方向の回転のパルスの数から後退方向の回転のパルスの数を引けば、前後方向の振動に起因するパルスが累積値に含まれないようにすることができる。
なお、車両の移動の有無が問題となり、移動の向きを問わない場合には、前進方向の回転のパルスの数と後退方向の回転のパルスの数との差の絶対値をパルスの累積値として取得することもできる。
(12)前記車両が、その車両の前後方向の加速度を検出する加速度センサを含み、前記制御中止部が、前記加速度センサによって出力される信号の周期が、前記車輪回転検出装置によって出力されるパルス信号の周期で決まる設定範囲内にある場合に、前記車輪回転検出装置によって出力されるパルス信号のパルスの数のカウントを中断するカウント中断部を含むものとすることができる。
車両が前後方向に振動すると、その振動に伴って、前後加速度センサの検出値は周期的に変化する。また、車両の前後方向の振動に伴って、車輪回転検出装置の検出値であるパルス信号も周期的に出力される場合がある。
そのため、(1)加速度センサから出力される信号と、車輪回転検出装置のパルス信号とがほぼ同時に出力される場合、(2)加速度センサの検出値の周期の1/2が、車輪回転検出装置のパルス信号の周期とほぼ同じである場合、(3)加速度センサの検出値の周波数が、車輪回転検出装置のパルス振動の周波数の1/2とほぼ同じである場合に、車両の前後方向の振動に起因して発生させられたパルス信号であるとすることができる。
(13)前記車輪回転検出装置が、前記車両に設けられた複数の車輪の各々について、それぞれ設けられ、前記制御中止部が、前記複数の車輪に対応して設けられた複数の車輪回転検出装置の各々についてカウントされたパルス累積値のすべてが前記移動判定しきい値以上である場合に、前記液圧抑制制御部による制御を中止する全パルス対応中止部を含むものである。
(14)前記車輪回転検出装置が、前記車両に設けられた複数の車輪の各々について、それぞれ設けられ、前記制御中止部が、前記複数の車輪に対応して設けられた複数の車輪回転検出装置のうちの2つ以上についてカウントされたパルス累積値が、それぞれ、前記移動判定しきい値以上である場合に、前記液圧抑制制御部による液圧抑制制御を中止する複数パルス対応中止部を含むものである。
4輪の車輪回転検出装置のうちの2つ以上について、パルス信号のパルスの累積値の各々と移動判定しきい値とをそれぞれ比較して、それらのパルスの累積値が、それぞれ、移動判定しきい値以上である場合に、液圧抑制制御が中止されるようにすることができる。
互いに異なる車輪に設けられた複数の車輪回転検出装置のパルスの累積値と移動判定しきい値とをそれぞれ比較する場合には、4輪のうちの1輪の車輪回転検出装置のパルス信号の累積値と移動判定しきい値とを比較する場合に比べて、液圧抑制制御を中止するか否かをより適切に判定することができる。
また、車輪回転検出装置が、前進方向の回転と後退方向の回転とを区別することができないものである場合には、複数の車輪に対応してそれぞれ設けられた車輪回転検出装置から出力されたパルス信号のパルスの累積値の各々と移動判定しきい値とを比較すれば、車両の移動の有無を正確に検出することができる。車両が前後方向に振動した場合に、それに起因して、4輪すべての車輪回転検出装置から同期してパルス信号が出力されることはまれであるからである。
(15)前記車輪回転検出装置が、前記車両に設けられた複数の車輪の各々について、それぞれ設けられ、前記制御中止部が、前記複数の車輪に対応して設けられた複数の車輪回転検出装置について取得されたパルス累積値の代表値が前記移動判定しきい値以上である場合に、前記液圧抑制制御部による液圧抑制制御を中止する複数パルス対応中止部を含むものである。
複数の車輪回転検出装置について取得された複数のパルス累積値の最大値、最小値、平均値等の代表値と移動判定しきい値とを比較して、中止か否かを判定することもできる。
[液圧ブレーキ回路]
本実施例1に係る液圧ブレーキシステムは、図1に示す液圧ブレーキ回路を含む。
10はブレーキ操作部材としてのブレーキペダルであり、12はブレーキペダル10の操作により液圧を発生させるマニュアル式液圧源としてのマスタシリンダである。14は動力式液圧源であり、ポンプ装置16とアキュムレータ18とを含む。
また、車両の左右前輪20には、それぞれ、液圧ブレーキ22が設けられ、左右後輪24には、それぞれ、液圧ブレーキ26が設けられる。液圧ブレーキ22,26は、それぞれ、ブレーキシリンダ28,30の液圧により作動させられる。液圧ブレーキ22,26は、車輪20,24の回転を、それぞれ抑制するものである。
マスタシリンダ12は、タンデム式のものであり、ブレーキペダル10に連携させられた2つの加圧ピストン34a,34bを含み、加圧ピストン34a,34bの前方が、それぞれ、加圧室36a,36bとされる。ブレーキペダル10の踏込み操作が行われると、それに伴って加圧ピストン34a,34bが前進させられ、加圧室36a,36bに、それぞれ、独立に液圧が発生させられる。また、加圧室36a,36bには、それぞれ、マスタ通路40a,40bが接続され、左右前輪20のブレーキシリンダ28に接続される。
以下、ブレーキシリンダ、液圧ブレーキ、後述する種々の電磁開閉弁等を、前後左右の車輪の位置に対応して区別する必要がある場合には、車輪位置を表す符号(FL,FR,RL,RR)を付して記載し、代表して、あるいは、区別する必要がない場合には、符号を付さないで記載する。
また、増圧リニア式制御弁64において、動力式液圧源14とブレーキシリンダ28,30との差圧に応じた差圧作用力Fpが弁子70を弁座72から離間させる向きに作用する(Fd+Fp:Fs)。
減圧リニア式制御弁66において、ブレーキシリンダ28,30とリザーバ48との差圧に応じた差圧作用力Fpが作用する。
いずれにしても、ソレノイド76への供給電流の制御により、差圧作用力Fpが制御され、ブレーキシリンダ28,30の液圧が個別に制御される。
マスタ通路40bには、さらに、ストロークシミュレータ92がシミュレータ制御弁94を介して接続される。
ブレーキECU50は、図3に示すように、実行部(CPU),入出力部,記憶部等を含むコンピュータを主体とするものであり、入出力部には、ブレーキスイッチ108,ストロークセンサ110,マスタシリンダ圧センサ112,アキュムレータ圧センサ114,ブレーキシリンダ圧センサ116,車輪回転検出装置としての車輪速度センサ118、加速度センサ120等が接続される。
ブレーキスイッチ108は、ブレーキペダル10が操作されるとOFFからONになるスイッチである。
ストロークセンサ110は、ブレーキペダル10の操作ストロークを検出するものであり、本実施例においては、2つのセンサが設けられ、同様に、ブレーキペダル60の操作ストローク(後退端位置からの隔たり)が検出される。このように、ストロークセンサ110について2系統とされており、2つのセンサのうちの一方が故障しても他方によりストロークを検出することが可能となる。
マスタシリンダ圧センサ112は、マスタシリンダ12の加圧室の液圧を検出するものである。マスタシリンダ圧センサ112は、加圧室36a,bに対応して、それぞれ設けられるため、一方が故障しても他方によりマスタシリンダ圧を検出することが可能となる。
アキュムレータ圧センサ114は、アキュムレータ18に蓄えられている作動液の圧力(PACC)を検出するものである。
ブレーキシリンダ圧センサ116は、前後左右の各ブレーキシリンダ28,30に対応して設けられ、それぞれの液圧を検出するものである。
入出力部には、各輪毎に対応して設けられた増圧リニア式制御弁64および減圧リニア式制御弁66,第1,第2マスタ遮断弁90FL,FRが、それぞれ、駆動回路126,127を介して接続され、ポンプモータ46が駆動回路128を介して接続される。
エンジン等ECU140は、エンジン142等を制御するものであり、実行部、記憶部、入出力部等を含むコンピュータを主体とするものである。入出力部には、ドアロックセンサ150,ドア開センサ152,エンジン状態検出装置154、イグニッションスイッチ156,着座センサ158、シフトポジションセンサ159等が接続されるとともに、エンジン142等が接続される。
ドアロックセンサ150は、運転席側のドアに設けられたロック装置がロック状態にあるかアンロック状態にあるかを検出するものである。
ドア開センサ152は、運転席側のドアが開状態にあるか否かを検出するものであり、例えば、カーテシーランプスイッチ等を利用することができる。
エンジン状態検出装置154は、エンジン142の作動状態を検出するものであり、例えば、スタータモータ164が作動状態(回転状態)にあるか否かを検出するセンサ、エンジン142の回転数を検出するセンサ等を含む。
イグニッションスイッチ156は、車両のメインスイッチであり、OFFからONに切り換えられると、スタータモータ164を始動させる指令が出力される。
着座センサ158は、運転席に人(運転者)が着座しているか否かを検出するものである。
シフトポジションセンサ159は、図示しないシフト操作部材のシフト位置を検出するものとしたり、トランスミッションのシフト位置を検出するものとしたりすること等ができる。シフト位置がパーキング位置にある場合には、図示しないパーキングロック機構がロック状態にあり、車輪20,24の回転が機械的にロックされた状態にある。
バッテリ170は、電流消費装置(ECU、センサ、電磁弁のソレノイド、モータ等)に電力を供給する電源である。
具体的に、バッテリ170には、上述の複数のセンサ、駆動回路126,127を介して増圧リニア式制御弁64,減圧リニア式制御弁66、マスタ遮断弁90等が接続されるとともに、スタータモータ164、点火プラグ等エンジンを始動させるための補機等が接続される。
また、スタータモータ164が作動させられると、エンジン142が始動させられ、オルタネータ172が回転させられる。オルタネータ172において発電された電力がバッテリ170に供給されて、蓄えられる。そのため、オルタネータ172の作動後には、バッテリ170に電力不足が生じ難くされ、安定して電力を供給できる状態となる。
[通常時制御]
通常、ブレーキペダル10が踏み込まれると、マスタ遮断弁90が閉状態とされ、シミュレータ制御弁92が開状態とされる。ブレーキシリンダ28,30がマスタシリンダ12から遮断された状態で、左右前輪20,左右後輪24のブレーキシリンダ28,30の液圧が、動力式液圧源14の液圧を利用して、増圧リニア式制御弁64,減圧リニア式制御弁66の制御により、目標液圧に近づくように制御される。目標液圧は、マスタシリンダ圧センサ112の検出値とストロークセンサ110の検出値とに基づいて取得されるのであるが、相対的には、マスタシリンダ圧が高い場合は低い場合より、大きい値に決定される。また、概念的には、目標液圧は、図4(a)の実線が示す大きさに取得される。
この制御を通常時制御と称し、液圧ブレーキシステムが正常であり、かつ、イグニッションスイッチ156がON状態にある場合(バッテリ170の電圧が低下する可能性が低く、マスタ遮断弁90に電流が供給されなくなる可能性が低い場合)、通常時制御指令が出力された場合に行われる。
静圧相当制御とは、ブレーキペダル10の操作状態が同じ場合(例えば、マスタシリンダ圧、ブレーキペダル10のストロークが同じ場合)に、通常時制御が行われる場合により、左右前輪20のブレーキシリンダ28FL、FRの液圧を低くする制御である。
通常時制御中に、マスタ遮断弁90に電流が供給されなくなることにより、開状態に切り換えられると、左右前輪20FL,FRのブレーキシリンダ28FL、FRからマスタシリンダ12に作動液が戻され、キックバックが生じることがある。それを回避するために、ブレーキシリンダ28の液圧が、通常時制御における場合より低くされる。例えば、目標液圧が通常時制御における場合より低い値に決定されるのであり、例えば、図4(a)の一点鎖線が示すように、マスタシリンダ液圧に近い大きさとされる。
また、静圧相当制御は、原則として、マスタ遮断弁90等にバッテリ170から電流が供給されなくなる可能性が高い場合に行われるのであり、本実施例においては、エンジン142が始動させられる可能性がある場合に行われる。エンジン142の始動時には、スタータモータ164等が作動させられるが、スタータモータ164の始動時には、大きな電流(突入電流)が流れるため、バッテリ170から大きな電流が供給され、電圧が低下する可能性が高くなる。特に、バッテリ170の劣化の程度が大きい場合には、大きな電流が流れた場合にマスタ遮断弁90に電流が供給されなくなる可能性が高くなる。
本実施例においては、図4(b)に示すように、運転席側のドアが開かれたことが検出された後、スタータモータ164が作動させられ、エンジン142が始動させられるまでの間(エンジン142の始動が完了した時点までの間であり、例えば、エンジン142の回転数が設定数以上になり、確実に作動状態に切り換えられたことが確認された時点までの間である)、バッテリ170からマスタ遮断弁90等に電流が供給されなくなる可能性が高いと判定されて、原則として、静圧相当制御が行われる。
図5(a)のフローチャートで表される制御態様指示プログラムは、予め定められた設定時間毎に実行される。
ステップ1(以下、S1と略称する。他のステップについても同様とする)において、ブレーキスイッチ108の状態に基づいてブレーキ操作中であるか否かが判定される。ブレーキ操作中である場合には、S2において、バッテリ170からマスタ遮断弁90等に電流が供給されなくなる可能性が高いか否かが判定される。後述するが、バッテリ170からマスタ遮断弁90等に電流が供給されなくなる可能性が高い場合には、フラグF(以下、電圧低下可能性フラグと称する)が0とされるため、電圧低下可能性フラグFの状態に基づけば、バッテリ170からマスタ遮断弁90等に電流が供給されなくなる可能性が高い状態にあるか否かがわかる。
電圧低下可能性フラグFが0である場合には、S3において、シフトポジションセンサ159の検出値に基づき、シフト位置がパーキング位置(P)でないかパーキング位置であるかが判定される。
シフト位置が、パーキング位置でない場合には、S4において、車輪速度センサ118のパルス信号のパルスの累積値Nが取得され、S5において、パルスの累積値が、移動判定しきい値Nth以上であるか否かが判定される。
パルスのカウントについては後述するが、S4においては、4輪の各々に設けられた車輪速度センサ118のうちの2つ以上の各々についてカウントされた2つ以上のパルス累積値が取得されて、それぞれ、移動判定しきい値Nthと比較されるようにしたり、4つのパルス累積値の代表値(最大値、最小値、平均値等4つのパルス累積値を統計的に処理した値)が取得され、その代表値と移動判定しきい値Nthとが比較されるようにしたりすること等ができる。
そして、パルスの累積値Nが移動判定しきい値Nthより小さい場合には、S6において、静圧相当制御の実行が指示される。それに対して、パルスの累積値Nが移動判定しきい値Nth以上である場合には、S7において、通常時制御の実行が指示される。
また、電圧低下可能性フラグFが1であり、バッテリ170からマスタ遮断弁90に電流が供給されなくなる可能性が低い場合には、S2の判定がNOとなり、S7において、通常時制御の実行が指示される。
さらに、シフト位置がパーキング位置である場合にも通常時制御の実行が指示される。パーキング位置である場合には、車両が移動する可能性が低いため、パルスのカウントが行われない(パルスの累積値が取得されない)。そのため、車両の移動を未然に防止するため、通常時制御の実行が指示されるのである。
なお、シフト位置がパーキング位置である場合には、車両が移動する可能性が低いため、静圧相当制御の実行が指示されるようにすることもできる。
また、ブレーキ操作中でない場合には、S8において、終了処理の実行が指示される。使用されたフラグ、パラメータ等が初期値に戻される。
本実施例においては、オルタネータ172の非作動状態において、バッテリ170に接続されたマスタ遮断弁90以外の電流消費装置(例えば、スタータモータ164)が始動させられる可能性が高い場合に、電圧低下可能性フラグFが0にセットされる。
また、イグニッションスイッチ156がOFF状態にあり、運転者が乗車していない場合(降車した後)には、電圧低下可能性フラグFがされる。イグニッションスイッチ156がOFFにされた後、運転席側のドアがロック状態にされたこと、イグニッションスイッチ156がOFFにされてから設定時間TthBが経過したことの少なくとも一方が満たされた場合に、電圧低下可能性フラグFが0とされる。通常時制御が行われない方が、消費電力の低減に関しては望ましいからである。
起動後、エンジン等ECU140において、予め定められた設定時間毎に、図6のフローチャートで表される電圧低下可能性フラグセットプログラムが実行される。
S20において、ドアが閉状態から開状態に切り換えられてから(起動後)、最初の実行であるか否かが判定される。最初の実行である場合には、S21において、電圧低下可能性フラグFが0にセットされ、S22において、タイマAがスタートさせられる。本実施例においては、発明の理解を容易にするために、フラグFが0にされるステップ(S21)を設けたが、運転者が降車した後、電圧低下可能性フラグFは0にされるため、S21のステップは不可欠ではない。
運転席側のドアが閉状態から開状態に切り換えられた場合には、運転者が乗車したと考えられるため、近い将来に、イグニッションスイッチ156のON操作が行われ、エンジン142が始動させられると予測される。そのため、電圧低下可能性フラグFが0にセットされる。
次に、S28において、電圧低下可能性フラグFが1にセットされているか否かが判定されるが、ここでは、電圧低下可能性フラグFは1であるため、判定はYESとなり、S29において、タイマBのカウント中であるか否かが判定される。ここでは、カウント中でないため、S30において、イグニッションスイッチ156がOFFであるか否かが判定されるが、ここでは、エンジン142が始動させられており、イグニッションスイッチ156はONであるため、判定がNOとなる。
次に、S32において、着座センサ158の検出値に基づき、運転者が運転席に着座しているか否かが判定される。着座している場合には、S33において、タイマAが再度スタートさせられる。ここでは、電圧低下可能性フラグFは0であるため、S28の判定がNOとなる。以下、S20,23,24,25が繰り返し実行される。
運転者が運転席に着座していることが確認されてから、設定時間TthAが経過する前にエンジン142の始動が検出された場合には、S26〜30が実行されるが、エンジン142の始動が検出されない場合には、再度、S31,32が実行される。運転者が車両から降りてしまった場合には、そのうちに、エンジン等ECU140がスリープ状態となり、本プログラムが実行されることはない。また、いまだ、運転席に着座している場合には、S33、28の実行後、S20,23,24,25が繰り返し実行される。
S35,36の判定がいずれもNOである場合には、S20,23,28,29,35,36が繰り返し実行されるが、S35,36のいずれか一方の判定がYESになった場合には、S37において、電圧低下可能性フラグFが0とされて、S38において、タイマBがリセットされる。
本実施例においては、図7のフローチャートで表されるパルスカウントプログラムの実行により、車輪速度センサ118の出力値であるパルス信号のパルスがカウントされる。
車輪速度センサ118は、左右前輪20,左右後輪24の4輪に対応してそれぞれ設けられるが、車輪速度センサ118の各々に対応して、それぞれ、パルスカウントプログラムが実行される。
パルスカウントプログラムは、ブレーキECU50において、イグニッションスイッチ156のOFF状態において、予め定められた設定時間毎に実行される。
ブレーキ操作中であり、ブレーキスイッチ108がONである場合には、S62において、パルス信号が出力されたか否かが判定される。本実施例においては、本プログラムの前回の実行時から今回の実行時までの間に、パルス信号の出力があったか否かが判定される。
パルス信号が出力された場合には、S63において、前進回転方向であるか後退回転方向であるかが判定される。前進回転方向である場合には、S64において、車輪が前進方向に回転している場合に出力されるパルス信号のパルスの累積値(以下、前進回転方向パルスの累積値と称する。)N1が1増加させられ、後退回転方向である場合には、S65において、後退回転方向パルスの累積値(車輪が後退方向に回転している場合に出力されるパルス信号のパルスの累積値)N2が1増加させられる。そして、S66において、パルス信号の出力が、静圧相当制御の開始後、最初に検出されたものであるか否か、あるいは、後述する車両の停止判定後、最初に検出されたものであるか否かが判定される。すなわち、カウント値N1、N2のいずれか一方が0で、他方が1であるか否かが判定される。上述のように最初に検出された場合には、S67において、移動判定用タイマがスタートさせられ、パルスの累積値Nは1とされる。本実施例においては、上述のように最初にパルス信号が出力されてから移動判定時間のカウントが開始されるのである。
また、S67において、移動判定用タイマがリセットされた後にスタートされられることもある。移動判定用タイマがリセットされる前(S72)に、停止判定時間が経過して、パルス累積値が0にされた場合には、パルス累積値のカウントが新たに開始されるようにすることが望ましいからである、なお、停止判定時間を移動判定時間より長い時間とすることもできる。
S69において、移動判定時間が経過したか否かが判定される。移動判定時間が経過する前においては、S60,62〜69が繰り返し実行され、パルスの累積値がN=|N1−N2|として取得される。
移動判定時間が経過した場合には、S70において、パルスの累積値Nが移動判定しきい値Nth以上であるか否かが判定され、移動判定時間が経過するまでのパルスの累積値Nが移動判定しきい値Nth以上である場合には、その後、継続してカウントされるパルスの累積値Nがそのまま出力される。そのため、S5の判定がYESとなり、S7において、通常時制御の実行指令が出力される。
それに対して、移動判定しきい値より小さい場合には、S70において、累積値N、N1,N2が0とされ、S71において、移動判定用タイマがリセットされる。その後のカウントにより、移動判定しきい値Nth以上になって、S5の判定が誤ってYESとなるおそれがある。それを回避するために、S71において、累積値N、N1,N2が0とされて、移動判定用タイマがリセットされる。その後、S5の判定がNOとなり、S6において、静圧相当制御の実行指令が出力される。
次に、S73が実行された場合には、S73の判定がNOとなり、S77において、停止判定時間が経過したか否かが判定される。停止判定時間が経過する前においては、S76において、パルス累積値Nが前回値とされる。その後、S60、62,73,77,76が繰り返し実行されるが、停止判定時間が経過した場合には、S78において、累積値Nが0とされ(N1,N2も0とされる)、S79において、停止判定用タイマがリセットされる。
このように、パルス信号が検出されない状態が、停止判定時間以上続いた場合には、パルス累積値Nが0とされるため、S5の判定がNOとなり、S6において、静圧相当制御の実行指令が出力される。
また、一旦、パルス信号が出力されない時間がある程度続いた後、パルス信号が出力された場合には、停止判定用タイマのカウントは継続させられるが、次に、パルス信号が出力されなかった場合には、S73の判定がYESとなるため、停止判定用タイマのカウント値がリセットされる。そのため、誤って、停止判定がなされることはない。
一方、移動判定時間は、その間に、パルス信号が出力されない時間があっても、継続して、カウントされる。移動判定時間が経過するまでの間に、パルスが連続して出力される必要はないのであり、その期間内のパルスの累積値が移動判定しきい値Nth以上となれば、通常時制御の実行指令が出される。
イグニッションスイッチ156のOFF状態において、運転者が運転席側ドアを開けて乗車して、時間t0において、ブレーキペダル10が踏み込まれることにより、ブレーキスイッチ108がONとなる。その後、ペダルストロークあるいはマスタシリンダ圧の増加に伴って、ブレーキシリンダ液圧が増加させられる。この場合には、電圧低下可能性フラグFは0にあるため、静圧相当制御が行われる。
時間t1〜t2の間に、前進回転方向のパルス信号と後退回転方向のパルス信号とが交互に出力されるが、この場合には、パルス累積値は0となる。これは、車両の前後方向の振動に起因してパルス信号が出力されたのであり、移動に起因して出力されたのではないと考えられる。
時間t3からパルス信号が連続して検出される。パルス信号の出力毎にパルス累積値Nが増加させられ、t4において、移動判定しきい値Nthに達する。t3からt4までの時間は、移動判定時間以下の時間である。そのため、S5の判定がYESとなり、通常時制御実行指令が出される。ブレーキシリンダの液圧が増加させられるのであり、車両を良好に停止させることができる。
それに対して、パルス信号が停止判定時間以上出力されなかった場合(t5〜t6)には、パルス累積値Nが0とされる。車両が停止状態にあり、ブレーキシリンダ液圧を低くしても差し支えないと考えられる。その結果、静圧相当制御が行われる(S5,6)。さらに、その後、t7において、エンジン142が始動させられ、フラグFが1にセットされると、通常時制御に切り換えられる(S3,7)。
また、車両の前後方向の振動によるパルス信号はカウントされないため、車両が移動したか否かを正確に検出することができる。
さらに、移動判定時間を比較的長い時間として、移動判定しきい値を比較的小さい値とすれば、車両の非常にゆっくりした移動の有無を正確に検出することができ、車両が非常にゆっくり移動した場合であっても、静圧相当制御を中止させて、ブレーキシリンダ液圧を高くすることができる。
また、移動判定時間は、車輪速度を検出する際に用いられる時間より長い時間とすることができる。その場合には、車輪速度として検出できない小さい速度であっても、車両の移動を検出することが可能となる。
また、図9のフローチャートで示すように、シフト位置がパーキング位置にあるか否かが、パルスカウントプログラムのS62と63との間のS81において判定され、パーキング位置にある場合には、S82において、累積値Nが前回値とされた後、S69が実行されるようにすることもできる。本実施例においては、S3のステップは不可欠ではない。
ブレーキ液圧制御プログラム、電圧低下可能性フラグセットプログラムについては実施例1における場合と同様であるため説明を省略して、パルスのカウントについて説明する。
パルスカウントは、図10のフローチャートで表されるパルスカウントプログラムの実行により行われるが、実施例1における場合と同じ実行が行われるステップについては同じステップ番号を付して説明を省略する。
パルス信号が検出された場合には、S91において、加速度センサ120の出力の有無が検出される。加速度センサ120の出力値の絶対値が設定値以下であり、前後加速度が検出されない場合には、S92において、パルス累積値がカウントアップされる。
それに対して、前後加速度センサ120の出力値の絶対値が設定値以上である場合には。S93において、車輪速度センサ118のパルス信号の周波数fw(周期でもよい)が取得され、S94において、加速度センサ120の出力の周波数fg(周期でもよい)が取得され、S95において、加速度センサ120の出力の周波数fgが車輪速度センサ118のパルス信号の周波数fwのほぼ1/2であるか否かが判定される(fg=fw/2)。換言すれば、加速度センサ120の出力と、車輪速度センサ118の出力とが同期するか否かが判定されるのである。これらが同期しない場合には、S92においてパルス累積値が1増加させられ、同期する場合には、S96において累積値Nが前回値とされるのであり、累積値が増加させられることはない。このパルス信号は、車両の前後方向の振動に起因するものであると考えられるため、車両の移動の判定には用いられないのである。
なお、本プログラムにおいては、変数N1,N2が用いられることがないため、S61′,S71′,S78′においては、累積値Nが0とされ、S66′において、累積値Nが0であるか否かが判定される。
時間t11〜t12において、車輪速度センサ118のパルス信号も、加速度センサ120の出力信号も検出されたが、加速度センサ120の出力の周波数fgが、ほぼ車輪速度センサ118のパルス信号の周波数fwの1/2であるため、パルスの累積値Nが増加させられることはない。ここでは、パルス累積値Nは0のままであり、静圧相当制御が行われる。
それに対して、時間t13〜t14において、パルス信号が検出されたが、加速度センサ120の出力値は0である。そのため、パルス累積値Nがカウントアップされるのであり、時間t15において、移動判定しきい値Nthに達し、S5において、通常時制御実行指令が出力される。
このように、本実施例においては、車輪速度センサ118が前進方向の回転と後退方向の回転とを区別して出力できない場合であっても、前後加速度センサ120の出力値を利用して、車輪速度センサ118のパルス信号が、車両の前後方向の振動に起因する信号であるか否かを判定することができ、パルス累積値Nを正確に検出することができる。
本実施例においては、ブレーキECU50のS91〜95,96を記憶する部分、実行する部分等によりカウント中断部が構成される。
その場合の制御態様指示プログラムを表すフローチャートの一例を図12に示す。
S101において、左右前輪20FL,FR,左右後輪22RL,RRに設けられた車輪速度センサ118についてのパルス累積値NFL,NFR,NRL,NRRが取得され、S102以降において、それぞれ、個別に移動判定しきい値Nth以上であるか否かが判定される。
S102において、左前輪20FLについてのパルス累積値NFLが移動判定しきい値Nth以上であるか否かが判定され(NFL≧Nth)、移動判定しきい値Nth以上である場合には、S103において、判定用累積値Mが1とされ(M=1)、移動判定しきい値Nthより小さい場合には、S103が実行されることはない。
S104において、右前輪20FRについてのパルス累積値NFRが移動判定しきい値Nth以上であるか否かが判定され(NFR≧Nth)、移動判定しきい値Nth以上である場合には、S105において、判定用累積値Mが1増加させられる(M=M+1=2)が、移動判定しきい値Nthより小さい場合には、S105が実行されることはない。
以下、同様に、左後輪22RL,右後輪22RRについてのパルス累積値が移動判定しきい値Nthと比較され、判定用累積値Mが取得される。
そして、S110において、判定用累積値Mが4以上であるか否かが判定され、4以上である場合には、すべての車輪に対応する車輪速度センサ118についてのパルス累積値が移動判定しきい値Nthより大きいとされ、S7において、通常時制御実行指令が出力される。また、4つのパルス累積値のうちの1つでも、移動判定しきい値Nthより小さいものがある場合には、S6において、静圧相当制御の実行指令が出力される。4つのパルス累積値のうちの少なくとも1つのパルス累積値に前後方向の振動に起因するパルスが含まれる可能性があるからである。
そして、S111において、判定用累積値Mが0にされる。
なお、パルスカウントは、図10のフローチャートにおいて、S91、93〜96のステップが不要となり、パルスが検出された場合には、S62の判定がYESとなり、S92において、パルス累積値がカウントアップされる。
本実施例においては、S101〜110,S7を記憶する部分、実行する部分等により全パルス対応中止部が構成される。
図13に示すように、ハイブリッド車両には、コンピュータを主体とするハイブリッドECU200が設けられる。ハイブリッドECU200には、DC/DCコンバータ202等が接続される。また、これらハイブリッドECU200,ブレーキECU50,エンジン等ECU140等は、互いにCAN130を介して接続され、情報の通信が行われる。
ハイブリッド車両には、メインバッテリとしての288Vバッテリ210と、補助バッテリとしての12Vバッテリ212とが設けられ、補助バッテリ212にブレーキECU50,エンジン等ECU140,ハイブリッドECU200,各センサ等、駆動回路126,127,128等、DC/DCコンバータ202を冷却する冷却用ポンプ(冷却水循環用ポンプ)を駆動する冷却用ポンプモータ(冷却水循環用ポンプモータ)214等が接続される。
DC/DCコンバータ202は、メインバッテリ210と補助バッテリ212との間に設けられ、メインバッテリ210の288Vを12Vに降圧して、補助バッテリ212に電力を供給する。メインバッテリ210には、駆動用電動モータ220が接続される。
補助バッテリ212には、多くの電流消費装置が接続されているため、DC/DCコンバータ202の作動前において、これら電流消費装置の始動により、電圧が低下し、マスタ遮断弁90に電流が供給されなくなる可能性がある。また、DC/DCコンバータ202の始動時に、冷却用ポンプモータ214が駆動させられることにより、補助バッテリ212の電圧が低下して、マスタ遮断弁90等に電流が供給されなくなる可能性もある。そのため、本実施例においては、ドア開等の予め定められた条件が満たされてから、DC/DCコンバータ202が作動し、READYが成立するまでの間は、電圧低下可能性フラグFが0にセットされる。
ハイブリッドECU200は、(a)ドア開が検出されたこと、(b)ブレーキスイッチ108がONになったこと、(c)イグニッションスイッチ156がOFFからONになったことの少なくとも1つが成立した場合に、起動させられる。それ以降、設定時間毎にプログラムが実行される。
起動後、最初の実行である場合には、S21、22において、電圧低下可能性フラグFが0にセットされ、タイマAがスタートさせられる。また、電圧低下可能性フラグFは1ではないため、S23の判定がNOとなり、S101において、READYが成立したか否かが判定される。DC/DCコンバータ202が作動状態になったことを含む予め定められた条件(READY成立条件)が満たされたか否かが判定されるのであり、READYが成立した場合には、S26において、フラグFが1にセットされる。以下、図6のフローチャートで表される電圧低下可能性フラグセットプログラムにおける実行と同様であるため、説明を省略する。
図15に示すように、上述の(a)〜(c)のうちの少なくとも1つが満たされた時から、READYが成立するまでの間、電圧低下可能性フラグFが0にセットされるのであり、補助バッテリ212からマスタ遮断弁90等に電流が供給されなくなる可能性があるとされる。
以下、同様に、静圧相当制御、通常時制御等が行われる。
Claims (8)
- 車両の車輪に設けられ、液圧により作動させられて前記車輪の回転を抑制する液圧ブレーキのブレーキシリンダと、
運転者により操作可能なブレーキ操作部材に連携させられた加圧ピストンを備え、前記ブレーキ操作部材の操作により、加圧ピストンの前方の加圧室に液圧を発生させるマスタシリンダと、
そのマスタシリンダの加圧室と前記ブレーキシリンダとの間に設けられ、前記ブレーキシリンダを前記マスタシリンダから遮断する閉状態と、前記ブレーキシリンダと前記マスタシリンダとを連通させる開状態とに切り換え可能なマスタ遮断弁と、
前記車輪が予め定められた角度だけ回転するのに伴ってパルス信号を出力する車輪回転検出装置と、
前記マスタ遮断弁の閉状態において、前記ブレーキシリンダの液圧を制御するブレーキ液圧制御装置と
を含む液圧ブレーキシステムであって、
前記ブレーキ液圧制御装置が、前記マスタ遮断弁の閉状態において、前記マスタ遮断弁が開状態に切り換えられる可能性がある場合に、前記開状態に切り換えられる可能性がない場合に比較して、前記ブレーキシリンダの液圧を、前記ブレーキ操作部材の同じ操作状態に対して低くする液圧抑制制御部を含み、
当該液圧ブレーキシステムが、前記液圧抑制制御部による液圧抑制制御中に、前記車輪回転検出装置から出力されたパルス信号のパルスの数の累積値が移動判定しきい値以上になった場合に、その液圧抑制制御を中止する抑制制御中止部を含むことを特徴とする液圧ブレーキシステム。 - 前記抑制制御中止部が、前記パルスの数の累積値が前記移動判定しきい値以上になった後には、前記車輪の回転速度が小さくなっても、前記液圧抑制制御部による制御の再開を禁止する液圧抑制制御再開禁止部を含む請求項1に記載の液圧ブレーキシステム。
- 当該液圧ブレーキシステムが、前記抑制制御中止部によって前記液圧抑制制御部による制御が中止されている状態において、前記車輪回転検出装置からパルス信号が出力されない状態が設定時間以上継続した場合に、前記液圧抑制制御部による制御を再開させる液圧抑制制御再開部を含む請求項1または2に記載の液圧ブレーキシステム。
- 前記抑制制御中止部が、トランスミッションのシフト位置がパーキング位置でない場合に、前記パルスの数のカウントを実行する非パーキング時カウント部を含む請求項1ないし3のいずれか1つに記載の液圧ブレーキシステム。
- 前記車輪回転検出装置が、前進方向の回転と後退方向の回転とを区別可能なものであり、前記抑制制御中止部が、前記前進方向の回転のパルスの累積値から後退方向の回転のパルスの累積値を引いた値を前記前進方向の回転のパルスの累積値とする前進方向回転パルス累積値取得部を含む請求項1ないし4のいずれか1つに記載の液圧ブレーキシステム。
- 前記車両が、その車両の前後方向の加速度を検出する加速度センサを含み、前記抑制制御中止部が、前記加速度センサによって出力される信号の周波数が、前記車輪回転検出装置によって出力されるパルス信号の周波数で決まる設定範囲内にある場合に、前記車輪回転検出装置によって出力されるパルス信号のパルスの数のカウントを中断するカウント中断部を含む請求項1ないし5のいずれか1つに記載の液圧ブレーキシステム。
- 前記車輪回転検出装置が、前記車両に設けられた複数の車輪の各々について、それぞれ設けられ、前記抑制制御中止部が、前記複数の車輪に対応して設けられた複数の車輪回転検出装置の各々についてカウントされたパルス累積値のすべてが前記移動判定しきい値以上である場合に、前記液圧抑制制御部による制御を中止する全パルス対応中止部を含む請求項1ないし6のいずれか1つに記載の液圧ブレーキシステム。
- 前記マスタ遮断弁が、電源装置から電力が供給される状態で閉状態となり、前記電力が供給されない状態で開状態となる常開の電磁開閉弁であり、
前記電源装置が、(a)前記マスタ遮断弁に接続された電源と、(b)その電源に電力を供給可能であって、前記電源からの電力の供給により始動させられる電源電力供給装置とを含み、
前記電源に、前記電源電力供給装置の始動時に作動させられる電流消費装置が接続され、
前記液圧抑制制御部が、前記電源電力供給装置の非作動状態にある間、前記マスタ遮断弁が開状態に切り換えられる可能性があるとして、前記ブレーキシリンダの液圧を低くする電源電力供給不能時抑制制御部を含む請求項1ないし7のいずれか1つに記載の液圧ブレーキシステム。
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