JP2012056138A - 遮熱断熱フィルム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】遮熱断熱フィルム10は、基板となる透明合成樹脂層11の片面側に、赤外線を遮蔽する赤外線遮蔽層12が形成され、また、赤外線遮蔽層12とは反対面側の透明合成樹脂層11に、略30nm〜略200nmの外径を有する立方体状のシリカ殻からなるナノ中空粒子1がアクリル樹脂に均一に分散されたナノ中空粒子分散樹脂層13が形成され、更に、このナノ中空粒子分散樹脂層13の透明合成樹脂層11側とは反対面側に透明粘着層14が形成されたものである。
【選択図】図3
Description
しかしながら、窓ガラスのような視認性の要求される部位については住宅用の壁紙に使用されているような断熱材は視認性の観点から使用することはできない。
そこで、窓からの入熱や放熱を抑える手段として、合わせガラス、複層ガラス等が開発されているが、例えば、サッシでは窓枠の工事が必要となり、既存物件ではコスト面で厳しいのが現状であった。
また、窓からの入熱を改善する方法としてプラスチックフィルム上に金属膜を製膜した保護フィルムを窓に貼付する方法もあるが、これでは、熱の流入を抑えることはできるものの、熱の流出を抑える効果は不十分である。
この特許文献1の記載によれば、窓貼シートは透明性が高いものであり、また、スペーサを介して空気層を形成することにより、金属が塗布された樹脂フィルムのみでは得られない断熱性効果が得られるとある。
加えて、空気層が形成されるため、窓貼シートの強度は小さく脆いものとなり、ガラスの飛散を有効に抑えるには、樹脂等の厚みを大きくするか、または、別途ガラス飛散防止のためのフィルム等の貼付が考えられるが、係る場合、全体としてシートが必要以上に厚膜とならざるを得ず、高い透明性が得られなくなると共に、剥がれ易くなる。
なお、上記10nm〜300nmは、臨界値、境界値として当該値が出てきたものではなく、その数値は大凡の値として捉えているものである。
ところで、上記透明粘着層としては、アクリル系粘着剤、ビニル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ゴム系粘着剤等を用いることができるが、耐久性や透明性が高いアクリル系粘着剤を用いるが好ましい。特に、イソシアネート化合物、金属化合物、メラミン化合物等で架橋させたアクリル系粘着剤を用いるのがより好ましい。これにより、耐久性を向上させることができる。
なお、本発明において、上記透明粘着層を介して遮熱断熱フィルムが接合する基材は、主に建材用窓ガラス、自動車用窓ガラス等のガラス等である。
なお、上記30nm〜200nmを含み、この発明で使用する粒子のサイズは、透過型及び走査型電子顕微鏡にて観察した値、即ち、電子顕微鏡法による値である。また、上記数値は、厳格ものでなく概ねであり、当然、原材料の種類や測定方法等による誤差を含む概略値であり、数割の誤差を否定するものではない。また、臨界値、境界値として当該値が出てきたものではなく、その数値は大凡の値として捉えているものである。
ここで、上記ミクロ細孔とは、孔径が2mm以下であって窒素分子が通過可能な大きさの微細孔を意味するものである。
なお、上記数値は、臨界値、境界値として当該値が出てきたものではなく、その数値は発明者らの実験結果から得た大凡の値として捉えているものである。
なお、上記5重量%〜25重量%の範囲内とは、この範囲は、厳格に5重量%〜25重量%の範囲内であることを要求するものではなく、約5重量%〜約25重量%の範囲内あればよく、当然、測定等による誤差を含む概略値であり、数割の誤差を否定するものではない。
ここで、上記熱伝導率は、熱流計法(JIS A1412、ASTEM−C518、ISO8301準拠)に基いて測定計算したものである。
そして、上記ナノ中空粒子分散樹脂層の熱伝導率が2.5W/mK以下とは、シリカ殻からなるナノ中空粒子の熱伝導率が極めて小さく断熱性が極めて高いため、本発明者らの実験研究によって、上記ナノ中空粒子分散樹脂層の熱伝導率を2.5W/mK以下とすることができ、確実に断熱性に優れたフィルムが得られることが確認されたことから、この知見に基づいて、設定されたものである。
なお、上記2.5W/mK以下とは、厳格に2.5W/mK以下であることを要求するものではなくて約2.5W/mK以下であればよく、当然、測定等による誤差を含む概略値であり、数割の誤差を否定するものではない。
ここで、上記日射透過率は、JIS A5759に準拠して300nm〜2500nmの波長範囲について透過率を測定し、JIS A5759に示す方法により算出したものである。
そして、上記日射透過率が50%以上とは、シリカ殻からなるナノ中空粒子の透明性が高いため、本発明者らの実験研究によって、フィルムにおいて日射透過率を50%以上とすることができ、可視光線透過率を高くすることができて良好な視認性が確保されることが確認されたことから、この知見に基づいて、設定されたものである。
なお、上記50%以上とは、厳格に50%以上であることを要求するものではなくて約50%以上であればよく、当然、測定等による誤差を含む概略値であり、数割の誤差を否定するものではない。
ここで、上記可視光線透過率は、JIS A5759に準拠して380nm〜780nmの波長範囲について透過率を測定し、JIS A5759に示す方法により算出したものである。
そして、上記可視光線透過率が70%以上とは、シリカ殻からなるナノ中空粒子を含有してもその透明性が高いため、本発明者らの実験研究によって、フィルムにおいて可視光線透過率を70%以上とすることができ、高い視認性が確保されることが確認されたことから、この知見に基づいて、設定されたものである。
なお、上記70%以上も、厳格に70%以上であることを要求するものではなくて約70%以上であればよく、当然、測定等による誤差を含む概略値であり、数割の誤差を否定するものではない。
ところで、上記紫外線吸収剤は、紫外線吸収効果を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、2−(2´−ヒドロキシ−5´−メチル−フェニル)ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系化合物、2.4−ジヒドロキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物、ジフェニルアクリレート等のアクリレート系化合物、p−オクチル−フェニルサリシレート等のサリシレート系化合物、クマリン系化合物、2−ヒドロキシ−ナフトフェノン、ニッケル−ビスオクチルフェニルスルフィド等の紫外線吸収剤等が挙げられる。そして、上記紫外線吸収剤は、例えば、前記透明合成樹脂層や前記透明粘着層等に含有させることができる。
ここで、上記紫外線透過率は、JIS A5760に準拠して300nm〜380nmの波長範囲について透過率を測定し、JIS A5760に示す方法により算出したものである。
そして、上記紫外線透過率が3%以下、より好ましくは2%以下とは、本発明者らの実験研究によって、シリカ殻からなるナノ中空粒子が含有されることで紫外線を有効に遮蔽することが可能となり、更に紫外線吸収剤が含有されることで紫外線透過率を3%以下、より良い場合には2%以下とすることができ、紫外線を多く遮蔽できることが確認されたことから、この知見に基づいて、設定されたものである。
なお、上記3%以下、2%以下も、厳格に3%以下、2%以下であることを要求するものではなくて約3%以下、約2%以下であればよく、当然、測定等による誤差を含む概略値であり、数割の誤差を否定するものではない。
したがって、請求項1の遮熱断熱フィルムによれば、ガラス等の基材に貼付するだけで、夏場は、室外の太陽熱が室内へ流入することによる室内の温度上昇が抑えられると共に、冬場は、室内の暖房熱が室外へ放出するのが抑えられ、冷暖房等の省エネ効果を図ることができる。
このため、請求項1の発明に係る遮熱断熱フィルムは、透明性が高く、ガラス等の基材に貼合した際にも可視光線の透過を可能にして視認性を阻害することなく、即ち、可視光線を効果的に取り込みつつ、優れた断熱性及び遮熱性を発揮する。
そこで、本発明者らが鋭意実験研究を積み重ねた結果、30nm〜200nmの範囲内の外径を有するシリカ殻からなる中空粒子が最も製造し易く、凝集も起こり難くて均一に分散させることが容易であり、ナノ中空粒子分散樹脂層を薄く形成してもシリカ殻からなるナノ中空粒子を用いたメリットが十分に発揮されることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成したものである。
なお、40nm〜150nmの外径、更に好ましくは50nm〜100nmの外径を有するシリカ殻からなる中空粒子とすることで、シリカ殻からなるナノ中空粒子を用いたメリットがより十分に発揮され、より確実に優れた断熱性及び遮熱性を確保できて熱の流出入の抑制効果の向上を図ることができるため、より好ましい。
なお、紫外線透過率が2%以下であることで、紫外線に対してより高い遮蔽性が確保されることになるため、紫外線透過率が2%以下であるのがより好ましい。
なお、本実施の形態において、同一の記号及び同一の符号は同一または相当する機能部分を意味するものであるから、ここでは重複する詳細な説明を省略する。
本実施の形態に係るナノ中空粒子分散樹脂層に使用したシリカ殻からなるナノ中空粒子1の製造手順の概略は以下の通りである。
続いて、このようにして作製したシリカコーティング粒子3を、洗浄した後に水に分散させ、更に塩酸を添加して内部の炭酸カルシウム2を溶解させて流出させることによって、流出孔を有する立方体状のシリカ中空粒子4を形成させる。最後に、乾燥させた後に200℃〜400℃に加熱して、溶解した炭酸カルシウム2が流出した孔を塞ぐことによって、本実施の形態に係るシリカ殻からなるナノ中空粒子1が製造される。
また、溶解した炭酸カルシウム2が流出した孔を加熱によって塞いでいるため、このシリカ殻からなるナノ中空粒子1には、孔径が2nmを超える大きさの細孔は存在していないが、窒素を用いたBET法によって孔径が2mm以下であって窒素分子が通過可能な大きさの微細孔であるミクロ細孔の存在が確認されており、このミクロ細孔を除いたシリカ殻1aのみの密度は、0.5g/cm3〜1.9g/cm3であることが判明している。
更に、本実施の形態に係るシリカ殻からなるナノ中空粒子1は、このように中空でシリカ殻が薄いため、また、ミクロ細孔を有し低密度であるため、加えて、正方形状であるが故に入射した可視光線の屈折が起きにくくて屈折率が低いため、透明性・透光性が高いものである。
なお、本実施の形態においては、有機溶媒のキシレン(オルト、メタ、パラの混合物)にアクリル樹脂(DIC(株)社製、アクリディックA−165)を溶解させこれにシリカ殻からなるナノ中空粒子1を混合して高速攪拌機等で均一に分散させることによって、ナノ中空粒子分散樹脂層溶液を作製し、これを後述の基板となる透明合成樹脂フィルムに塗布した後、溶媒としてのキシレンを80℃で2分間乾燥して揮発させることによって、アクリル樹脂にシリカ殻からなるナノ中空粒子1が均一に分散されたナノ中空粒子分散樹脂層を形成した。しかし、本発明を実施する場合には、例えば、貼付型のフィルム状のものを使用してナノ中空粒子分散樹脂層を形成してもよい。なお、このフィルム状のものは、例えば、シリカ殻からなるナノ中空粒子1とアクリル樹脂等の透明合成樹脂をニーダ等で加熱混練した後、カレンダー成形等に成形することによって製造できる。
断熱性について測定を行った供試体は、具体的には、シリカ殻からなるナノ中空粒子1が固形分で10重量%、アクリル樹脂が固形分で90重量%配合されたナノ中空子分散樹脂層をステンレス(SUS304)円板(φ60mm,厚さ5mm)に所定の厚さで形成させたものである(供試体1、供試体2)。また、比較のために、アクリル樹脂そのものをステンレス(SUS304)円板(φ60mm,厚さ5mm)に所定の厚さで形成させたもの(供試体3、供試体4)、更には、ステンレス(SUS304)そのもの(供試体5)についても測定を行った。これらの熱伝導率、全熱抵抗率、熱貫流率についての測定結果を図2(a)の下段に示す。
なお、ここで使用したシリカ殻からなるナノ中空粒子1は、具体的には、外径が98nm、シリカ殻1aの厚さが8nm、シリカ殻1aのみの密度が1.7g/cm3、比表面積が147m2 /g、粒子比重が0.72、空隙率が58.6%、嵩密度が0.03g/cm3のものであり、表面にイソシアヌレート基を修飾したものである。
λ=(Qh+Qc)・L/(2・ΔT)‥‥(1)
SUS304)円板を含めた全体の厚さd(m)を用いた下記の式(2)によって算出したものである。
R=d/λ‥‥(2)
K=1/(R+Ri+Ro)‥‥(3)(Ri+Ro:両面側の熱抵抗値の和)
これより、本実施の形態に係るナノ中空粒子分散樹脂層が断熱性に優れていることが確認された。
図3に示すように、本実施の形態に係る遮熱断熱フィルム10は、基板となる透明合成樹脂層11の片面側に、赤外線を遮蔽する赤外線遮蔽層12が形成され、また、赤外線遮蔽層12とは反対面側の透明合成樹脂層11に、上述した略30nm〜略200nmの外径を有する立方体状のシリカ殻からなるナノ中空粒子1がアクリル樹脂に均一に分散されたナノ中空粒子分散樹脂層13が形成され、更に、このナノ中空粒子分散樹脂層13の透明合成樹脂層11側とは反対面側に透明粘着層14が形成されたものである。
そして、この本実施の形態に係る遮熱断熱フィルム10は、通常、オフィスビルや家庭の窓ガラス、自動車の窓ガラス等のガラス15の内部側(室内側、車内側)に透明粘着層14を介して貼り付けられて使用されるものである。
明合成樹脂層11の厚さは25μm〜250μm程度に設定されるのが好ましい。本発明者らの実験研究によれば、25μm未満の場合、その強度等が小さく破損する恐れがあり、一方、250μmを超えた場合、透明度が低下して視認性を阻害する恐れがあることが確認されている。
マー(荒川化学(株)社製、ビームセット700)25重量部、多官能ウレタンアクリレート
オリゴマー(根上工業(株)社製、UN949)25重量部、光重合開始剤(BASFジャパ
ン(株)社製、イルガキュア184)2重量部を固形分比でそれぞれ調整したものを使用した
。なお、本実施の形態においては、赤外線遮蔽層12を透明合成樹脂層11の片面側に形成する際、積算光量200mJ/cm2の紫外線を照射した。
(日本ポリウレタン工業(株)社製、コロネートL−45E)1重量部、紫外線吸収剤(BA
SFジャパン(株)社製、チヌビン384−2)5重量部を固形分比でそれぞれ調整したもの
を使用した。
成分を均一に混合するにあたっては、例えば、ニーダ等による加熱混錬や、有機溶剤による溶解混合後に有機溶剤を乾燥除去する方法等を用いることができる。
なお、ここで使用したシリカ殻からなるナノ中空粒子1は、具体的には、外径が98nm、シリカ殻1aの厚さが8nm、シリカ殻1aのみの密度が1.7g/cm3、比表面積が147m2 /g、粒子比重が0.72、空隙率が58.6%、嵩密度が0.03g/cm3のものであり、表面にイソシアヌレート基を修飾したものである。
具体的には、図4に示すように、上面に開口部21(200×200)を有する発泡スチロールからなるボックス20(内寸:W400×L300×H200)の外側上部に開口部21を覆うようにフロートガラス板15(250×250、厚さ3mm)を設定し、更にそのガラス板15の裏面(下面)に実施例1に係る遮熱断熱フィルム10を設定し、そして、ボックス20の内部に、測定部がボックス20の中央部で底から約50cmの位置、約100cmの位置、及び、ガラス裏面(ガラス板15とフィルムの間)にくるように高精度温度収集装置(KEYENCE製 GR―300)のセンサを設定し、高精度温度収集装置によってガラス裏面の温度、ボックス20内部の底から約100cm高さの温度(ガラス板15から約100cm離間した場所の温度)、ボックス20内部の底から約50cm高さの温度(ガラス板15から約150cm離間した場所の温度)をそれぞれ測定した(朝6時頃から夕方6時頃まで)。また、表1上段の配合組成・構成を有する比較例1乃至比較例3に係るフィルムについても実施例1と同様に測定を行った。それらの測定結果を図5乃至図7に示す。
なお、本発明者らの実験研究により、本実施の形態の実施例1に係る遮熱断熱フィルム10を単板ガラスに貼付することで、従来のペアガラスと同等以上の断熱性が得られることが確認されている。そして、従来のペアガラスのように空気層が含まれることによる共鳴もないため、本実施の形態によれば、遮音効果が期待できる。
本実施の形態の実施例2に係る遮熱断熱フィルム10は、表2の上段に示した配合組成・構成によって作製したものである。このような配合組成・構成を有する実施例2に係る遮熱断熱フィルム10をガラスに貼付した際の日射透過率、可視光線透過率及び紫外線透過率を測定し、更に、実施例2に係るナノ中空粒子分散樹脂層13をステンレス(SUS304)基板に貼付した際の熱伝導率を測定した。また、比較のために、表2の上段に示した配合組成・構成の比較例5乃至比較例10に係るフィルムを作製し、実施例2と同様に測定を行った。
波長範囲について透過率を測定し、JIS A5759に示す方法により算出したものである。
範囲について透過率を測定し、JIS A5759に示す方法により算出したものである。
また、視認性については、透明性が高くガラスの視認性が阻害されていないものを○、少し透明性が低くガラスの視認性を阻害する可能性が高いものを△と判定した。
これらの測定結果・評価結果を表2の中段・下段にまとめて示す。
これより、本実施の形態の実施例2に係る遮熱断熱フィルム10は優れた断熱性を有することが確認された。
これより、本実施の形態の実施例2に係る遮熱断熱フィルム10は透明性が高く、ガラス等の基材15に貼付した際にも良好な視認性を確保できることが確認された。
なお、上記実施の形態においては、紫外線吸収剤が透明粘着層14に含有されているが、本発明を実施する場合には、これに限定されるものではなく、例えば、透明合成樹脂層11等に配合することも可能である。
このため、ナノ中空粒子分散樹脂層13に含まれるシリカ殻からなるナノ中空粒子1は、固形分比率で5重量%〜25重量%含有されることが好ましい。
このため、ナノ中空粒子分散樹脂層13の厚さは、2μm〜20μmの範囲内であることが好ましい。
これは、赤外線の透過が赤外線遮蔽層12のみならずナノ中空粒子分散樹脂層13のシリカ殻からなるナノ中空粒子1によっても防止されるので遮熱性に優れ、更には、ナノ中空粒子分散樹脂層13の熱伝導率が極めて小さいという優れた断熱性が発揮され、ガラス等の基材15に貼り付けた際に(本実施の形態では内貼り)、両面の熱伝導率の差が大きくなり、それによって、ガラス等の基材15に吸収され蓄熱された熱はフィルム側(室内等の内部側)に放散されるのが防止されてフィルムとは反対側(室外等の外部側)へと放出される一方で、フィルム側(室内等の内部側)の熱はガラス等を介してのフィルムとは反対側(室外等の外部側)への放散が防止されるためである。
加えて、ナノ中空粒子分散樹脂層13のシリカ殻からなるナノ中空粒子1、更には、透明粘着層の14に含有された紫外線吸収剤によって太陽光線等に含まれる紫外線の透過も防止されることから紫外線に対する遮蔽性も高い。
また、上述の如く、ナノ中空粒子分散樹脂層13の厚さが薄くても優れた断熱性が得られることから、低コストで製造でき、厚大に起因する剥がれ易さもない。
因みに、従来のシラスバルーン、ガラスバルーン、シリカバルーン、セラミック等の微細発泡体または微細中空体は、圧縮強度が低くてフィルム製造工程において破壊されやすかったり、平均粒子径が大きかったりするため、これらを利用しても優れた断熱性及び遮熱性を得ることはできない。
故に、本実施の形態に係る遮熱断熱フィルム10は耐久性が高い。
このため、本実施の形態に係る遮熱断熱フィルム10によれば、ガラス等の基材15に貼付するだけで、夏場は、室外の太陽熱が室内へ流入することによる室内の温度上昇が抑えられると共に、冬場は、室内の暖房熱が室外へ放出するのが抑えられ、冷暖房等の省エネ効果を図ることができる。
よって、本実施の形態に係る遮熱断熱フィルム10は、透明性が高くガラス等の基材15に貼合した際にも可視光線の透過を可能にして視認性を阻害することなく、優れた断熱性及び遮熱性を発揮する。
なお、本発明を実施する場合には、透明合成樹脂層11の配置側とは反対面側の赤外線遮蔽層12に透明粘着層14を形成して赤外線遮蔽層12側をガラス等の基材15に接合させることも可能であるが、上述の如く、ナノ中空粒子分散樹脂層13側に透明粘着層14が形成されてガラス等の基材15に貼付される方が、効率よく赤外線や熱を遮蔽することができる。
また、上記実施の形態においては、30nm〜200nmの外径を有する立方体状のシリカ殻からなるナノ中空粒子1を用いた場合について説明したが、炭酸カルシウムを調整する工程(第1工程)、それにシリカをコーティングする工程(第2工程)、炭酸カルシウムを溶解させてナノ中空粒子とする工程(第3工程)を経ることで熱伝導率の低く断熱性が高い10nm〜300nmの外径を有するシリカ殻からなるナノ中空粒子が得られることが確認されているため、本発明を実施する場合には、10nm〜300nmの外径を有するシリカ殻からなるナノ中空粒子であれば、その他の特性を有するものを使用してもよい。因みに、10nm〜300nmの外径を有するシリカ殻からなるナノ中空粒子の壁厚は30nm以下であり、空隙率は40%以上である。
特に、炭酸カルシウムを調整する工程(第1工程)において、透過型電子顕微鏡法による一次粒子径が20nm〜200nmの炭酸カルシウムを水系にて調製し、静的光散乱法による粒子径(分散粒子径)が20nm〜700nmになるように熟成させた後、脱水して含水ケーキの状態とし、続くシリカをコーティングする工程(第2工程)において、この含水ケーキをアルコール中に分散させ、アンモニア水、水、シリコンアルコキシドを、シリコンアルコキシド/アルコールの体積比を0.002〜0.1、アンモニア水に含有されるNH3を、シリコンアルコキシド1モルに対して、4モル〜15モル、水をシリコンアルコキシド1モルに対して、25モル〜200モルとなるように添加することにより、シリカでコーティングされた炭酸カルシウムを調製した後、アルコール及び水による洗浄を行い、再び含水ケーキとし、更に、炭酸カルシウムを溶解させてナノ中空粒子とする工程(第3工程)において、この含水ケーキを水に分散させ、酸を添加して液の酸濃度を0.1〜3モル/Lとし、炭酸カルシウムを溶解させることにより、透過型電子顕微鏡法による一次粒子径が30nm〜300nm、静的光散乱法による粒子径(分散粒子径)が30nm〜800nm、壁厚5nm〜30nm、水銀圧入法により測定される細孔分布において2nm〜20nmの細孔が検出されないシリカ殻からなるナノ中空粒子を製造できることが、本発明者らの実験研究により確認されている。
そして、本発明者らは、この方法に順じ、適宜薬剤濃度や撹拌方法や温度やアルカリの種類等を調整することにより、以下の表3に示す様々な1次粒子径、壁厚、及び空隙率のシリカ殻からなるナノ中空粒子を製造できることを確認している。
なお、コーティングシリカ殻からなる中空粒子は、例えば、シリカ殻からなるナノ中空粒子1と、イソシアネート系表面改質剤(イソシアネート基(−N=C=O)を1つ以上もった化合物からなる表面改質剤)としてのTEISとを、キシレン、n−ヘキサン等を溶媒としてオートクレーブ中で溶媒の臨界温度において2時間反応させ、TEISのエトキシ基をシリカ殻からなるナノ中空粒子1の表面の水酸基とそれぞれ縮合させることによって製造することができる。
より好ましくは、シリカ殻からなるナノ中空粒子1をキシレン、n−ヘキサン等の溶媒に湿式ジェットミルで微細分散させた後、TEIS等の表面修飾剤を加え、これにオートクレーブの高温高圧を加えて溶媒の超臨界状態とし、シリカ殻からなるナノ中空粒子1の表面に表面修飾剤を反応付加させての製造である。これにより、シリカ殻からなるナノ中空粒子1の表面全体が確実に表面修飾剤に覆われ、表面修飾剤の活性基が透明合成樹脂の活性基と反応してなる強固な結合もより多く作られるため、ナノ中空粒子分散樹脂層中においてシリカ殻からなるナノ中空粒子が微細凝集粒子としてその凝集が一段と防止され、更に均一に微細分散されやすくなる。
また、本発明を実施するに際しては、各構成材料、配合、層の厚さ等は、上記に限定されるものではなく、必要とされる断熱性、遮熱性、透明性等を考慮して設定される。
更に、本発明の実施の形態で挙げている数値は、臨界値を示すものではなく、実施に好適な好適値を示すものであるから、上記数値を若干変更してもその実施を否定するものではない。
10 遮熱断熱フィルム
11 透明合成樹脂層
12 赤外線遮蔽層
13 ナノ中空粒子分散樹脂層
14 透明粘着層
15 基材(ガラス)
Claims (10)
- 基板となる透明合成樹脂層と、
前記透明合成樹脂層の片面側に形成され、赤外線を遮蔽する赤外線遮蔽層と、
前記透明合成樹脂層の他面側に形成され、10nm〜300nmの範囲内の外径を有するシリカ殻からなるナノ中空粒子が透明合成樹脂中に分散されたナノ中空粒子分散樹脂層と
を具備することを特徴とする遮熱断熱フィルム。 - 更に、前記ナノ中空粒子分散樹脂層の他面側または前記赤外線遮蔽層の他面側に形成され、前記遮熱断熱フィルムを接合させるための透明粘着層を具備することを特徴とする請求項1に記載の遮熱断熱フィルム。
- 前記ナノ中空粒子分散樹脂層に含まれるシリカ殻からなるナノ中空粒子の外径を30nm〜200nmの範囲内としたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の遮熱断熱フィルム。
- 前記ナノ中空粒子分散樹脂層に含まれるシリカ殻からなるナノ中空粒子は、前記シリカ殻に複数のミクロ細孔を有し、前記ミクロ細孔を除いた前記シリカ殻のみの密度が0.5g/cm3〜1.9g/cm3の範囲内であることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1つに記載の遮熱断熱フィルム。
- 前記ナノ中空粒子分散樹脂層に含まれるシリカ殻からなるナノ中空粒子は、前記ナノ中空粒子分散樹脂層中に固形分比率で5重量%〜25重量%の範囲内で含有されることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1つに記載の遮熱断熱フィルム。
- 前記ナノ中空粒子分散樹脂層の熱伝導率が2.5W/mK以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか1つに記載の遮熱断熱フィルム。
- 前記遮熱断熱フィルムの日射透過率が、50%以上であることを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れか1つに記載の遮熱断熱フィルム。
- 前記遮熱断熱フィルムの可視光線透過率が、70%以上であることを特徴とする請求項1乃至請求項7の何れか1つに記載の遮熱断熱フィルム。
- 更に、前記遮熱断熱フィルムには、紫外線吸収剤を含有することを特徴とする請求項1乃至請求項8の何れか1つに記載の遮熱断熱フィルム。
- 前記遮熱断熱フィルムの紫外線透過率は、3%以下であることを特徴とする請求項9に記載の遮熱断熱フィルム。
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---|---|---|---|
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