JP6112112B2 - 誘電多層膜構造を有する赤外遮蔽フィルム - Google Patents

誘電多層膜構造を有する赤外遮蔽フィルム Download PDF

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Description

本発明は、誘電多層膜構造を有する赤外遮蔽フィルムに関する。
赤外光の侵入を抑え、室内温度が過剰に上昇するのを防ぐために、建物の窓ガラスや自動車の窓ガラスの面に貼合するウインドウフィルムが利用されている。特に夏場において、冷房の使用を低減しエネルギーの省力化がされている。
上記ウインドウフィルムとして、赤外線を遮蔽する方法に基づいて分類すると、赤外吸収剤を含有する赤外線吸収層をフィルムに施す赤外線吸収タイプのフィルムと、赤外線を反射する層をフィルムに施す赤外反射タイプのフィルムと、その両方の機能を併せ持つタイプのフィルムとが知られている。
例えば、特開2002−210855号公報には、熱線吸収能を有する無機金属の微粒子(酸化錫、ATO(アンチモンドープ酸化錫)、ITO(錫ドープ酸化インジウム)等)を有する熱線遮断性樹脂組成物をコーティングした赤外線吸収タイプのフィルムが開示されている。米国特許7632568号公報では、高屈折率層と低屈折率層とを交互に積層したコーティングを有し、さらにATOを含有する層を有するフィルムが開示されている。
さらに、米国特許6391400号公報では、支持体の一方の面と他方の面で反射する波長域を異ならせた多層フィルムを有する赤外線反射フィルムが開示されている。
夏場において、屋外からの入射熱を遮断する試みはある一方で、冬場においても室内の暖房による熱を屋外側へ逃さないことが必要である。冬場において室内の熱を逃がさないことにより、室内を暖かく保ち、暖房の使用を低減できるため、省エネルギー化に有効である。
熱線吸収能を有する無機金属の微粒子を有する熱線遮蔽フィルムは、熱線吸収能を有する微粒子が非常に広範な吸収波長領域を持つことが多い。その結果として単純な層構成によりフィルムを簡易に製造できる場合が多く、また、比較的容易に貼付することができた。
しかしながら、熱線吸収能をもつフィルムを窓に貼ると、フィルム自身が赤外線を吸収し、熱エネルギーへと変わる。その熱により、ガラスの温度が上昇し、ガラス内部の歪みが大きくなる。特に窓のサッシ部分と日射部分でのガラスに温度差が生じやすく、結果、ガラスが割れる、「熱割れ」という現象が問題となる。これは、ガラスのサッシに挟まれた部分は日射が直接当たらないことやサッシへの放熱により、フィルムを貼り付けた日射部分よりも温度が上がりにくいためである。また熱割れは、日射に含まれる近赤外線を中心とする熱線によるものだけでなく、室内の暖房から発せられる遠赤外線を中心とする熱線によっても生じる現象であり、特に外気温の低い冬場においてはサッシ部分が十分に冷やされている一方で暖房熱によりフィルム貼付部のガラス温度が上がるために熱割れが生じることがある。
熱割れの発生は、フィルムの発熱量に左右されることから、赤外線吸収タイプよりも赤外線吸収量が少ない赤外反射タイプのフィルムの方が当該リスクは低くなる。しかしながら米国特許7632568号公報のようなフィルムでは、交互反射層に隣接して赤外光吸収ナノ粒子層が設けられている構成を持つことにより近赤外から遠赤外の広い波長域の光線を遮蔽しているが、反射層で反射しているのは約850nm〜1200nmまでの波長域で、それ以上の波長の光線は赤外光吸収層で吸収しているため、熱吸収量が大きく、熱割れのリスクが十分に排除されていないという問題があった。
また米国特許7632568号公報のように反射層が赤外吸収層の一方の側にしか存在しない場合、熱割れリスクが軽減されるのは赤外吸収層よりも反射層が熱線侵入側にあるときのみとなり、屋外からの日射または屋内からの暖房熱のどちらか一方の熱割れにしか効果を発揮せず、不足があった。すなわち、反射層が赤外吸収層より屋外側にあるときは屋内からの暖房熱に対して熱割れリスクは低減できておらず、逆に反射層が赤外吸収層より屋内側にあるときは、屋外からの日射に対して熱割れリスクが低減できない。
さらに米国特許7632568号公報では、人が暖かく感じる中遠赤外線波長域の熱線をフィルムが吸収してしまうことから、暖かさを維持するためにはどんどん暖房を使用することになる。したがって、省エネルギー化の観点からは改善の余地が大きい。
また米国特許6391400号公報のフィルムにおいては、多層積層による赤外反射層によって異なる波長域の遮蔽を行っている。しかし、多層積層により反射を行うと所望の光学特性を得るためには複雑な層構成とする必要があり、結果として製造が容易でなかったり、厚いフィルムとすることになったりする問題点がある。
また、複層ガラスや合わせガラスの間に、赤外反射フィルムを設ける技術もあるが、フィルムがガラスの一方に接している場合には、上記同様に熱割れのリスクが解決できていない。また、熱割れを防止するために、複層ガラスの間でフィルムを孤立される状態にすることが考えられるが、フィルムを複層ガラスへの組み込みコストが非常に高くなり、現実ではない。
そこで、本発明は、上記問題点に鑑みされたものであり、その目的は、夏場においての断熱効果および冬場においての保温効果に優れた赤外遮蔽フィルムを提供することである。また、本発明のさらなる目的は、赤外吸収剤を用いた場合でも熱割れのリスクが低減され、貼り付けが簡単で、保管時においても膜はがれが低減された赤外遮蔽フィルムを提供することである。
本発明の上記目的を、以下の構成により達成される。
誘電多層膜(A)、誘電多層膜(B)、および前記誘電多層膜(A)と前記誘電多層膜(B)との間に配置される非干渉層を有し、前記誘電多層膜(A)が、900〜1100nmの波長領域に反射率が50%以上の反射極大値を持ち、前記誘電多層膜(B)が、1200〜2100nmの波長領域に反射極大値を持ち、前記誘電多層膜(A)および前記誘電多層膜(B)以外のいずれか1層に赤外吸収剤を含有し、前記誘電多層膜(A)が積層されている面を屋外側に向けるように設置する、赤外遮蔽フィルム。
屋内側の窓ガラスに用いられる本発明の一実施形態に係る赤外遮蔽フィルムの構成を示す断面概略図である。 屋外側の窓ガラスに用いられる本発明の一実施形態に係る赤外遮蔽フィルムの構成を示す断面概略図である。 合わせガラスに用いられる本発明の一実施形態に係る赤外遮蔽フィルムの構成を示す断面概略図である。 比較例2に用いられる赤外遮蔽フィルムの構成を示す断面概略図である。 比較例4に用いられる赤外遮蔽フィルムの構成を示す断面概略図である。 比較例3に用いられる赤外遮蔽フィルムの構成を示す断面概略図である。 誘電多層膜(A)および誘電多層膜(B)の反射スペクトルである。
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
本発明の第一形態は、誘電多層膜(A)、誘電多層膜(B)、および前記誘電多層膜(A)と前記誘電多層膜(B)との間に配置される非干渉層を有し、前記誘電多層膜(A)が、900〜1100nmの波長領域に反射率が50%以上の反射極大値を持ち、前記誘電多層膜(B)が、1200〜2100nmの波長領域に反射極大値を持ち、前記誘電多層膜(A)および前記誘電多層膜(B)以外のいずれか1層に赤外吸収剤を含有し、前記誘電多層膜(A)が積層されている面を屋外側に向けるように設置する、赤外遮蔽フィルムである。
本発明によれば、誘電多層膜(A)、誘電多層膜(B)、その間の非干渉層、および赤外吸収剤を含有することで、優れた赤外線遮蔽性を有する、年間の気候変化に適したフィルムが提供される。すなわち、夏場においての断熱効果、および冬場においての保温効果に優れた赤外線反射フィルムが提供される。さらに、特定の反射率の誘電多層膜(A)を用いることでフィルムの発熱を防ぎ、これにより熱割れのリスクが低減される。また、簡単な層構成でより薄膜化した赤外遮蔽フィルムが実現することから、窓ガラス等に簡単に貼り付けることが可能となり、保管時の膜剥がれも防止し得る。
本発明の赤外遮蔽フィルムは、誘電多層膜(A)および誘電多層膜(B)を含み、当該誘電多層膜(A)と誘電多層膜(B)との間に、誘電多層膜(A)および誘電多層膜(B)から生じる光学的な特性を互いに干渉しないための非干渉層を含む。非干渉層を設けず、誘電多層膜(A)上に直接誘電多層膜(B)を直接形成すると、通常、互いの光学的な相互作用のため、全体として新しい第三の層としての反射特性を示す。そのため、非干渉層は、誘電多層膜(A)および(B)それぞれの反射特性を独立して示す赤外遮蔽フィルムを構成するために必要である。
また、本発明に係る誘電多層膜(A)が900〜1100nmの波長領域に反射率が50%以上の反射極大値を持ち、本発明に係る誘電多層膜(B)が1200〜2100nmの波長領域に反射極大値を持つ。ここで、本発明で言う反射極大値とは、上記で定義した波長域における反射スペクトル中、反射率が最大となるときの値をいう。誘電多層膜(A)では、上記の範囲に50%以上の反射極大値があれば、反射スペクトルの形状は問わず、例えば反射極大値以外に反射スペクトルがそれよりも小さい複数のピークを有していてもよい。誘電多層膜(B)においても、上記の範囲に反射極大値を有していれば、反射スペクトル自体の形状は問わない。
また、誘電多層膜(A)および(B)は、それぞれ上記の要件を満たせば、他の波長領域での反射特性は問わない。例えば、誘電多層膜(A)が、誘電多層膜(B)と同様の1200〜2100nmにさらにある程度の反射率を示すものであってもよい。しかしながら、一般的には誘電多層膜は広い波長領域に高い反射率を示すものを製造しようとすると、層構成が厚く複雑になる。したがって、フィルムの製造しやすさや貼り付けのしやすさ等の点から、誘電多層膜(A)および(B)は、それぞれ上記の波長領域範囲以外に高い反射率を示す必要はない。
さらに、本発明に係る誘電多層膜(A)および(B)以外のいずれか1層は、赤外吸収剤を含有する。そして本発明に係る誘電多層膜(A)は屋外側に向けるように設置され、すなわち、誘電多層膜(A)が設置される非干渉層の面と反対の面に本発明に係る誘電多層膜(B)が室内側に向けるように設置されている。このため、夏場においての断熱効果および冬場においての保温効果に優れ、熱割れのリスクが低減され、貼り付けが簡単な赤外遮蔽フィルムを実現できる。
上述した本発明の構成による主な作用効果の発揮のメカニズムは、以下のように推測される。
すなわち、夏場では、本発明に係る誘電多層膜(A)が屋外(室外または車外)側の太陽光からの熱線(特に近赤外光)を反射するため、本発明の赤外遮蔽フィルムの熱吸収を抑えることができ、熱割れのリスクが低減されると共に冷房設備に係る負荷も減らすことができる。たとえ本発明に係る誘電多層膜(A)によって反射されていない熱線があるとしても、本発明の赤外遮蔽フィルムに含有される赤外吸収剤がそのような赤外線を吸収する役割を果たすため、より広い波長領域の赤外線を遮蔽でき、より断熱効果に優れる赤外遮蔽フィルムが実現される。ただし、あらかじめ誘電多層膜(A)で50%以上の近赤外線が反射されているため、赤外吸収剤において吸収される量は誘電多層膜(A)がないときと比べて少ない。したがって、従来の赤外吸収剤を含有した赤外遮蔽フィルムで生じていた窓ガラス等の熱割れの問題は本発明では防止し得る。その一方、冬場では、夏場同様に太陽光からの熱線に対して熱割れのリスクを軽減できることに加えて、本発明に係る誘電多層膜(B)が屋内(室内または車内)の暖房から発せられる中遠赤外線を反射するため、太陽光の場合と同様にフィルムの熱吸収を抑え、熱割れのリスクが低減される。さらに人が暖かく感じる中遠赤外線波長域の熱線を屋内に反射して戻すことから、屋内の暖房効率を上げることができる。
赤外吸収剤を含む層を配置する際は、特に制限はないが、赤外吸収剤を含む層を誘電多層膜(A)よりも屋内側に配置すると、使用環境により、夏場の屋外からの熱線を重点的に遮蔽したい場合に好ましい。また、冬場の断熱効果を重要視する環境では、赤外吸収剤を含む層を、誘電多層膜(B)よりも屋外側に配置することが好ましい。したがって、最も好ましくは、誘電多層膜(A)と誘電多層膜(B)との間の非干渉層またはそれらの間に配置される後述の機能性層に赤外吸収剤が含まれていることにより、夏場の熱線遮蔽および冬場の断熱効果をいずれもより確実に得ることができる。
このように、本発明は年間の気候変化に適した赤外遮蔽フィルムを実現できると考えられる。
以下、本発明の赤外遮蔽フィルムの構成要素について、および本発明を実施するための形態等について詳細な説明をする。
{赤外遮蔽フィルム}
本発明の赤外遮蔽フィルムは、赤外線を反射する機能と吸収する機能を必須として有している。本発明の赤外遮蔽フィルムは、誘電多層膜(A)と、誘電多層膜(B)と、当該誘電多層膜(A)および誘電多層膜(B)の間に配置される非干渉層と、赤外吸収剤と、を必須成分として含むものであればよく、また必要により各種の機能性層をさらに含んでもよい。たとえば、本発明に係る誘電多層膜(A)または誘電多層膜(B)の少なくとも1方の外側に機能性層を有することが好ましい。機能性層の具体例については後述するが、本発明のフィルムが窓ガラス等に設置して使用するのに好適であるため、窓ガラスとフィルムとを固定する粘着剤層等があり得る。また、赤外吸収剤は、誘電多層膜(A)および誘電多層膜(B)以外のいずれか1層に含まれる。したがって、機能性層を設けた場合にそのいずれかが赤外吸収剤を含んでもよい。
以下、図面を参照しながら、本発明の赤外遮蔽フィルムの構成例を説明するが、本発明の技術的範囲は特許請求の範囲の記載を基づいて定められるべきであり、以下の形態のみに制限されない。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
図1は、本発明の一実施形態に係る赤外遮蔽フィルムを模式的に表した断面概略図である。図1によれば、非干渉層3の屋外側の面に、本発明に係る誘電多層膜(A)1が設置されていて、当該非干渉層3の屋内側の面に、本発明に係る誘電多層膜(B)2が設置されている。また、当該誘電多層膜(A)1と窓ガラス6の間に機能性層としての粘着層4が設置されていて、当該誘電多層膜(B)2の外側の面に機能性層としてのハードコート層5が設置されている。この際、当該赤外遮蔽フィルムは窓ガラス6の屋内側の面に施工されているものである。また、図2によれば、本発明の赤外遮蔽フィルムは、窓ガラス6の屋外側の面に施工されていてもよく、この際に係る機能性層としての粘着層4およびハードコート層5は、それぞれ誘電多層膜(A)1の外側の面および誘電多層膜(B)2と屋内側との間の面に設置される。さらに、図3によれば、本発明の赤外遮蔽フィルムは合わせガラスに用いることができる。すなわち、非干渉層3の屋外側の面に、本発明に係る誘電多層膜(A)1、機能性層としての粘着層4の順に設置され、当該非干渉層3の屋内側の面に、本発明に係る誘電多層膜(B)2、機能性層としての粘着層4の順に設置され、当該赤外遮蔽フィルムは2枚の窓ガラス板6の間に施工されて合わせガラスとなりうる。
前記誘電多層膜(A)が積層されている面を屋外側に向けるように設置し、かつ屋内に貼られることが好ましい。
また、本発明に係る誘電多層膜(A)、非干渉層、および誘電多層膜(B)の順に積層されていればよく、本発明の効果を損なわない限り、他の機能性層が、任意の層目で積層されていてもよい。
本発明の赤外遮蔽フィルムの光学特性として、JIS R3160−1998で示される可視光領域の透過率が40%以上であり、好ましくは60%以上である。また、一般的に赤外線遮蔽フィルムは、太陽直達光の入射スペクトルのうち赤外域が室内温度上昇に関係し、これを遮蔽することで室内温度の上昇を抑えることができる。日本工業規格JIS R3106−1998に記載された重価係数をもとに赤外の最短波長(760nm)から最長波長(3200nm)までの赤外全域の総エネルギーを100としたときの、760nmから各波長までの累積エネルギーをみると、760〜1300nmのエネルギー合計が赤外域全体の約75%を占めている。従って、この波長領域を遮蔽することが熱線遮蔽による夏場の省エネルギー効果がもっとも効率がよい。本発明の赤外遮蔽フィルムは、誘電多層膜(A)として、特に900〜1100nmの近赤外波長領域に反射率50%を超える反射極大値を有するように誘電多層膜の光学膜厚およびユニットを設計することが好ましく、前記領域に最大反射率が約80%以上である反射極大値を有するように誘電多層膜を設計することがより好ましい。
さらに、900〜1100nmの波長領域における反射率を50%以上とすることで、光の入射角による波長シフトによって可視光を大きく反射してしまうことを防止することができる。また通常、反射率の裾野が760〜1300nmに広がるため、900〜1100nm以外の領域でも反射率ゼロにはならない。したがって、近赤外光を効果的に反射することが可能である。すなわち、通常誘電多層膜では、反射極大値を示す波長を中心に反射率の裾野が広がる反射特性を示すため、900〜1100nmの近赤外波長領域に反射極大値を示す誘電多層膜を用いると、この膜は室内温度上昇の原因となる760〜1300nmの範囲にわたってある程度の反射率を示すものとなり、かつ、可視光領域には高い透過率を示すものとなりうる。
また、冬場での暖房から発する中遠赤外線を反射によって屋内へ戻すために、誘電多層膜(B)として、1200〜2100nmの波長領域に反射極大値をさらに有するように誘電多層膜を設計することがよりさらに好ましい。
さらに、誘電多層膜(B)の1200〜2100nmの波長領域における反射率が、前記誘電多層膜(A)の900〜1100nmの波長領域における最大反射率の20〜50%であることが好ましい。すなわち、冬場に太陽からの熱線を室内に取り込む妨げとならないように、1200〜2100nmの波長領域における反射ピークの反射率が、前記900〜1100nmの波長領域における反射ピークの最大反射率の20〜50%であるように、誘電多層膜を設計することが最も好ましい。また、1200〜2100nmの波長領域内において反射率20%を超える波長領域が合計で300nm以上あるように、誘電多層膜を設計することが好ましい。
本発明の赤外遮蔽フィルムの全体の厚さは、好ましくは40〜1000μmであり、より好ましくは50〜500μmである。
次いで、本発明の赤外遮蔽フィルムの各構成について、詳細に説明する。
<誘電多層膜>
本発明において、誘電多層膜とは、低屈折率材料を有する層(低屈折率層とも称する)と、高屈折率材料を有する層(高屈折率層とも称する)とを交互に積層してなる赤外遮蔽層のことをいう。
上述した本発明の赤外遮蔽フィルムの好適な光学特性を持たすために、使用する誘電多層膜の膜厚および高屈折率層と低屈折率層とを積層したユニットの設計が必要である。必要となる誘電多層膜の構成を光学シミュレーション(FTGSoftware Associates Film DESIGN Version 2.23.3700)で求めた結果、屈折率が1.9以上、好ましくは2.0以上の高屈折率層を利用し、6層以上積層した場合に優れた特性が得られることがわかっている。例えば、高屈折率層と低屈折率層(屈折率=1.35)とを交互に8層積層したモデルのシミュレーション結果をみると、高屈折率層の屈折率が1.8では誘電多層膜の反射率が70%にも達しないが、高屈折率の屈折率が1.9になると約80%の反射率が得られる。また、高屈折率層(屈折率=2.2)と低屈折率層(屈折率=1.35)とを交互に積層したモデルでは、積層数が4では誘電多層膜の反射率が60%にも達していないが、6層になると約80%の反射率が得られる。
このように誘電多層膜の構成を変化させることによって反射する光の目的波長をコントロールすることが出来るので、本発明において、望ましい反射ピークを得るために、本発明に係る誘電多層膜(A)および誘電多層膜(B)の各々に用いられる高屈折率層および低屈折率層の厚さや積層数を変化させることによって実現することができる。具体的に、本発明の赤外遮蔽フィルムを応用する際に、屋外側の面で太陽光線の強度分布の大きい900〜1100nmの近赤外線を効率よく反射するように、本発明に係る誘電多層膜(A)を設計し、屋内側の面で人が暖かく感じると言われている1200〜2100nmの中遠赤外線を反射するように、本発明に係る誘電多層膜(B)を設計した。
〔誘電多層膜(A)〕
本発明に係る誘電多層膜(A)において、用いられる高屈折率層の1層あたりの厚さは、50〜1220nmであることが好ましく、70〜1220nmであることがより好ましい。用いられる低屈折率層の1層あたりの厚さは、70〜1350nmであることが好ましく、90〜1330nmであることがより好ましい。
また、本発明に係る誘電多層膜(A)の総膜厚は、1〜8μmであることが好ましく、1.2〜6μmであることがより好ましい。
さらに、本発明に係る誘電多層膜(A)を構成する高屈折率層と低屈折率層との積層総数が4層以上であることが好ましい。
〔誘電多層膜(B)〕
本発明に係る誘電多層膜(B)において、用いられる高屈折率層の1層あたりの厚さは、70〜1300nmであることが好ましく、90〜1250nmであることがより好ましい。用いられる低屈折率層の1層あたりの厚さは、80〜1320nmであることが好ましく、90〜1300nmであることがより好ましい。
また、本発明に係る誘電多層膜(B)の総膜厚は、1〜8μmであることが好ましく、1.2〜6μmであることがより好ましい。
前記誘電多層膜(A)と前記誘電多層膜(B)の総膜厚の比が、±20%以内であることが好ましい。
ここで、本発明に係る誘電多層膜(A)と誘電多層膜(B)との総膜厚の比が、反りの懸念の観点から±20%以内であることが好ましく、±15%以内であることがより好ましい。総膜厚の比が上記の範囲内であると、窓ガラス等に対しても反りによる施工性低下を防止でき、誘電多層膜上にさらに機能性層を形成する場合の二次加工性にも優れる。なお、ここでいう総膜厚は、本発明の赤外遮蔽フィルムの断面を電子顕微鏡およびSEMで観察し、下記数式(1)に基づき算出することができる。
さらに、本発明に係る誘電多層膜(B)を構成する高屈折率層と低屈折率層との積層総数は、本発明に係る誘電多層膜(A)の場合と同様でもよく、異なってもよいが、4層以上であることが好ましい。
以下では、本発明に係る誘電多層膜(A)および誘電多層膜(B)を構成する高屈折率層と低屈折率層について詳細に説明する。なお、各々の層の屈折率もしくは相互の屈折率差、または各々の層を構成する材料もしくはその材料の含有量については、本発明に係る誘電多層膜(A)の場合と誘電多層膜(B)の場合とは、同じでもよく、異なってもよい。
また、本発明に係る誘電多層膜(A)または誘電多層膜(B)においては、本発明に係る非干渉層に隣接する最下層が低屈折率層であり、最表層も低屈折率層である層の構成が好ましい。
本発明に係る誘電多層膜(A)または誘電多層膜(B)としては、高屈折率層と低屈折率層との屈折率の差は大きいほど、少ないスタック数で赤外反射率を高くすることができる観点で好ましい。屈折率差が大きくなると、スタック数が少なくできるため、赤外遮蔽フィルムのヘイズが低下する傾向にある。
本発明に係る誘電多層膜(A)または誘電多層膜(B)では、隣接する高屈折率層と低屈折率層との屈折率差Δnが、0.05以上であることが好ましく、0.15以上であることがより好ましい。また上限は特に制限がないが、0.65以下であることが望ましい。Δnが0.05より小さい場合、反射性能を発現するのに層数が多く必要となり、製造工程が増えコスト面で望ましくない。またΔnが0.65より大きいと少ない層数で反射率を稼げるので反射性能としては向上するが、同時に反射を得たい波長領域以外の波長領域に生じる高次の反射も大きくなるため性能ムラが生じ、特に膜厚変動に対して性能変化が増大してしまうため、望ましくない。
また、隣接した層界面での反射は、層間の屈折率比に依存するので、その屈折率比が大きいほど、反射率が高まる。また、単層膜でみたとき層表面における反射光と、層底部における反射光の光路差を、n・d=波長/4、で表される関係にすると位相差により反射光を強めあうよう制御出来、反射率を上げることができる。ここで、nは屈折率、またdは層の物理膜厚、n・dは光学膜厚である。この光路差を利用することで、反射を制御出来る。反射中心波長を設定すると、この関係を利用して、各層の屈折率と膜厚を制御して、可視光や、赤外光の反射を制御する。即ち、各層の屈折率、各層の膜厚、各層の積層のさせ方で、特定波長領域の反射率をアップさせる。
本発明に係る高屈折率層の好ましい屈折率としては、1.70〜2.50であり、より好ましくは1.80〜2.20である。また、本発明に係る低屈折率層の好ましい屈折率としては1.10〜1.60であり、より好ましくは1.30〜1.50である。
本発明に係る高屈折率層および低屈折率層は、金属酸化物および水溶性高分子を含有することが好ましい。
[金属酸化物粒子]
本発明に係る誘電多層膜(A)または誘電多層膜(B)に使用できる金属酸化物として、特に制限されないが、透明な誘電体材料であることが好ましい。例えば、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、コロイダルアルミナ、チタン酸鉛、鉛丹、黄鉛、亜鉛黄、酸化クロム、酸化第二鉄、鉄黒、酸化銅、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化イットリウム、酸化ニオブ、酸化ユーロピウム、酸化ランタン、ジルコン、酸化スズ等を挙げることができ、低屈折率層、高屈折率層いずれも屈折率を調整するために適宜併用しても構わない。
上記のうち、本発明に係る高屈折率材料としては、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛等が好ましく挙げられるが、高屈折率層を形成するための金属酸化物粒子含有組成物の安定性の観点からは、酸化チタンがより好ましく用いられる。その中で、光触媒活性が低く屈折率が高いルチル型酸化チタンは特に好ましく用いられる。
本発明で用いられる酸化チタンの調製方法としては、例えば、特開昭63−17221号公報、特開平7−819号公報、特開平9−165218号公報、特開平11−43327号公報等に開示された調製方法を参照することができる。
本発明で用いられる酸化チタン微粒子の体積平均粒径として、一次粒子径は、1〜50nmであることが好ましく、4nm〜30nmであることがより好ましい。体積平均粒径が1nm以上50nm以下であれば、ヘイズが少なく可視光透過性に優れる観点で好ましい。なお、本発明に係る酸化チタン粒子の体積平均粒径とは、粒子そのものをレーザー回折散乱法、動的光散乱法、あるいは電子顕微鏡を用いて観察する方法や、屈折率層の断面や表面に現れた粒子像を電子顕微鏡で観察する方法により、1,000個の任意の粒子の粒径を測定し、それぞれd1、d2・・・di・・・dkの粒径を持つ粒子がそれぞれn1、n2・・・ni・・・nk個存在するチタン系酸化物粒子の集団において、粒子1個当りの体積をviとした場合に、体積平均粒径mv={Σ(vi・di)}/{Σ(vi)}で表される体積で重み付けされた平均粒径である。
本発明に係る高屈折率層において、酸化チタンと前述の金属酸化物とが混合されていても構わず、または複数種の酸化チタンを混合しても構わない。本発明に係る高屈折率層に用いられる金属酸化物粒子の内、好ましい酸化チタンの含有量は、高屈折率層の固形分に対して、30〜95質量%であり、好ましくは70〜90質量%である。高屈折率層の屈折率が高められる観点から酸化チタンの含有量が高いほど好ましい。
一方、本発明に係る低屈折率材料としては、上記の金属酸化物粒子のうち、シリカ(二酸化ケイ素)粒子を用いることが好ましく、具体的な例として合成非晶質シリカ、コロイダルシリカなどが挙げられ、中には酸性のコロイダルシリカゾルを用いることが特に好ましい。
本発明で用いられる二酸化ケイ素粒子は、その平均粒径が100nm以下であることが好ましい。一次粒子の状態で分散された二酸化ケイ素の一次粒子の平均粒径(塗布前の分散液状態での粒径)は、20nm以下のものが好ましく、より好ましくは10nm以下である。また二次粒子の平均粒径としては、30nm以下であることが、ヘイズが少なく可視光透過性に優れる観点で好ましい。
本発明に係る低屈折率層の金属酸化物の含有量は、低屈折率層の固形分100質量%に対して、30〜95質量%が好ましく、60〜90質量%がより好ましい。低屈折率材料としての金属酸化物の含有量が30質量%以上になると、低屈折率層を低屈折率化にすることができ、含有量が95質量%以下であれば、低屈折率層膜の柔軟性が得られ、誘電多層膜を形成することが容易となる。
[水溶性高分子]
本発明に係る誘電多層膜を構成する高屈折率層または低屈折率層には、上述した金属酸化物粒子と組み合わせて使用する水溶性高分子が含まれてもよい。本発明に係る高屈折率層と低屈折率層とで共通の水溶性高分子を使用してもよい。
本発明に適用可能な水溶性高分子としてはゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキシド等の合成ポリマー、無機ポリマー、増粘多糖類等が挙げられ、本発明においてはポリビニルアルコール、ゼラチンが特に好ましい。これら水溶性高分子は1種類または複数種類の混合でもよい。
本発明に係る水溶性高分子とは、水または温水媒体に対し1質量%以上溶解する高分子化合物であり、好ましくは3質量%以上である。
水溶性高分子の含有量は、高屈折率層または低屈折率層に対して、それぞれ、30〜80質量%であることが好ましく、30〜60質量%の範囲であることがより好ましい。30質量%以上であれば塗膜の透明性が高まる傾向にあり、80質量%以下であれば、高屈折率層はより高屈折率に、低屈折率層はより低屈折率になる傾向にあり好ましい。
本発明に係る水溶性高分子の重量平均分子量は、1,000以上200,000以下が好ましい。更には、3,000以上40,000以下がより好ましい。
以下、各水溶性高分子の詳細について説明する。
(ゼラチン)
本発明に係るゼラチンとしては、酸処理ゼラチン、アルカリ処理ゼラチンの他に、ゼラチンの製造過程で酵素処理をする酵素処理ゼラチン及びゼラチン誘導体、すなわち分子中に官能基としてのアミノ基、イミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基を持ち、それと反応して得る基を持った試薬で処理し改質したものでもよい。
(合成ポリマー)
本発明に適用可能な合成ポリマーとしては、例えば、ポリビニルアルコール類、ポリビニルピロリドン類、アルキレンオキサイド類、ポリアクリル酸、アクリル酸−アクリルニトリル共重合体、アクリル酸カリウム−アクリルニトリル共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、若しくはアクリル酸−アクリル酸エステル共重合体などのアクリル系樹脂、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸共重合体、若しくはスチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体などのスチレンアクリル酸樹脂、スチレン−スチレンスルホン酸ナトリウム共重合体、スチレン−2−ヒドロキシエチルアクリレート共重合体、スチレン−2−ヒドロキシエチルアクリレート−スチレンスルホン酸カリウム共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体、酢酸ビニル−マレイン酸エステル共重合体、酢酸ビニル−クロトン酸共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸共重合体などの酢酸ビニル系共重合体及びそれらの塩が挙げられる。これらの中で、特に好ましい例としては、ポリビニルアルコール類及びそれを含有する共重合体が挙げられる。
本発明で好ましく用いられるポリビニルアルコールには、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られる通常のポリビニルアルコールの他に、末端をカチオン変性したポリビニルアルコールやアニオン性基を有するアニオン変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコールも含まれる。
酢酸ビニルを加水分解して得られるポリビニルアルコールは、平均重合度が1,000以上のものが好ましく用いられ、特に平均重合度が1,500〜5,000のものが好ましく用いられる。また、ケン化度は、70〜100%のものが好ましく、80〜99.5%のものが特に好ましい。
カチオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開昭61−10483号に記載されているような、第一〜三級アミノ基や第四級アンモニウム基を上記ポリビニルアルコールの主鎖または側鎖中に有するポリビニルアルコールであり、カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体と酢酸ビニルとの共重合体をケン化することにより得られる。
カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、トリメチル−(2−アクリルアミド−2,2−ジメチルエチル)アンモニウムクロライド、トリメチル−(3−アクリルアミド−3,3−ジメチルプロピル)アンモニウムクロライド、N−ビニルイミダゾール、N−ビニル−2−メチルイミダゾール、N−(3−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、ヒドロキシルエチルトリメチルアンモニウムクロライド、トリメチル−(2−メタクリルアミドプロピル)アンモニウムクロライド、N−(1,1−ジメチル−3−ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド等が挙げられる。カチオン変性ポリビニルアルコールのカチオン変性基含有単量体の比率は、酢酸ビニルに対して0.1〜10モル%、好ましくは0.2〜5モル%である。
アニオン変性ポリビニルアルコールは、例えば、特開平1−206088号に記載されているようなアニオン性基を有するポリビニルアルコール、特開昭61−237681号および同63−307979号に記載されているような、ビニルアルコールと水溶性基を有するビニル化合物との共重合体及び特開平7−285265号に記載されているような水溶性基を有する変性ポリビニルアルコールが挙げられる。
また、ノニオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開平7−9758号に記載されているようなポリアルキレンオキサイド基をビニルアルコールの一部に付加したポリビニルアルコール誘導体、特開平8−25795号に記載されている疎水性基を有するビニル化合物とビニルアルコールとのブロック共重合体等が挙げられる。ポリビニルアルコールは、重合度や変性の種類違いなど二種類以上を併用することもできる。
本発明においては、これらのポリマーを使用する場合には、硬化剤を使用してもよい。例えばポリビニルアルコールの場合には、後述するホウ酸及びその塩やエポキシ系硬化剤が好ましい。
[添加剤]
本発明に係る高屈折率層および低屈折率層には適用可能な各種の添加剤を以下に例挙する。
(硬化剤)
本発明において、バインダーである水溶性高分子を硬化されるために、硬化剤を使用することが好ましい。
本発明に適用可能なる硬化剤としては、水溶性高分子と硬化反応を起こすものであれば特に制限はないが、水溶性高分子が前述のポリビニルアルコールの場合には、ホウ酸及びその塩が好ましい。また、その他にも公知のものが使用でき、一般的には水溶性高分子と反応し得る基を有する化合物あるいは水溶性高分子が有する異なる基同士の反応を促進するような化合物であり、水溶性高分子の種類に応じて適宜選択して用いられる。硬化剤の具体例としては、例えば、エポキシ系硬化剤(ジグリシジルエチルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ジグリシジルシクロヘキサン、N,N−ジグリシジル−4−グリシジルオキシアニリン、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル等)、アルデヒド系硬化剤(ホルムアルデヒド、グリオキザール等)、活性ハロゲン系硬化剤(2,4−ジクロロ−4−ヒドロキシ−1,3,5,−s−トリアジン等)、活性ビニル系化合物(1,3,5−トリスアクリロイル−ヘキサヒドロ−s−トリアジン、ビスビニルスルホニルメチルエーテル等)、アルミニウム明礬等が挙げられる。
また、水溶性高分子がゼラチンの場合には、例えば、ビニルスルホン化合物、尿素−ホルマリン縮合物、メラニン−ホルマリン縮合物、エポキシ系化合物、アジリジン系化合物、活性オレフィン類、イソシアネート系化合物などの有機硬膜剤、クロム、アルミニウム、ジルコニウムなどの無機多価金属塩類などを挙げることができる。
前記硬化剤の総使用量は、水溶性高分子の種類によって異なるが、水溶性高分子1gあたり1〜600mgが好ましく、100〜600mgがより好ましい。
(界面活性剤)
本発明に係る高屈折層および低屈折率層の少なくとも1層に、界面活性剤を添加しても良い。活性剤種としてはアニオン系、カチオン系、ノニオン系のいずれの種類も使用することができる。特にアセチレングリコール系ノニオン性界面活性剤、4級アンモニウム塩系カチオン性界面活性剤及びフッ素系カチオン性界面活性剤が好ましい。
また本発明に係る界面活性剤の添加量としては、それぞれの塗布液を100質量%としたとき、固形分として0.005〜0.30質量%の範囲であることが好ましく、更には0.01〜0.10質量%であることが好ましい。
また、上述の添加剤の他、本発明に係る高屈折率層および低屈折率層には、例えば、特開昭57−74193号公報、同57−87988号公報及び同62−261476号公報に記載の紫外線吸収剤、硫酸、リン酸、酢酸、クエン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等のpH調整剤、消泡剤、ジエチレングリコール等の潤滑剤、防腐剤、帯電防止剤、マット剤等の公知の各種添加剤を含有させることもできる。
<非干渉層>
本発明に係る非干渉層においては、本発明に係る誘電多層膜(A)と当該非干渉層との間に任意の層を積層してもよく、また本発明に係る誘電多層膜(B)と当該非干渉層との間にも任意の層を積層してもよいが、誘電多層膜(A)および誘電多層膜(B)から生じる光学的な特性を互いに干渉しないように、誘電多層膜(A)と誘電多層膜(B)との間に、本発明に係る非干渉層を配置することが必須である。
本発明の目的を実現するために、本発明において誘電多層膜(A)および誘電多層膜(B)を用いて、それぞれ異なる波長領域の赤外光線を反射するようにデザインしている。一般的に、光にはコヒーレンス長(可干渉距離)があり、光路差がコヒーレンス長よりも十分に長いと干渉しなくなることが知られている。赤外光はこのコヒーレンス長が短く、数ミクロン程度だと言われている。すなわち、本発明に係る誘電多層膜(A)で生じる反射光と、本発明に係る誘電多層膜(B)で生じる反射光と、が干渉しないようにするには、光路差を数ミクロンより大きくすればよい。したがって、本発明に係る非干渉層の厚さは、5μm以上である。光学性能上厚さの上限は特に定められないが、フィルムとしての可撓性から500μm以下、より好ましくは100μm以下であることが好ましい。
本発明に係る非干渉層は、JIS R3106−1998で示される可視光領域の透過率として、85%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。可視光透過率が85%以上であれば、本発明の赤外遮蔽フィルムとしたときのJIS R3106−1998で示される可視光領域の透過率を40%以上、好ましくは60%以上にすることにおいて有利である。
本発明に係る非干渉層は、透明な材料で形成することができ、本発明に係る誘電多層膜(A)と誘電多層膜(B)による反射光同士が相互作用しないようにする役割を持つものであれば、特に限定されなく、1種類または2種類以上の材料を混合し積層させてなる構成であってもよい。
本発明に係る非干渉層に適用可能な透明材料としては、例えば、メタクリル酸エステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート、ポリスチレン(PS)、芳香族ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド等の各樹脂フィルム、更には前記樹脂を2層以上積層して成る樹脂フィルム等を挙げることができる。また、上述の水溶性高分子の項目に記載された材料も好ましく使用することができる。
本発明に係る非干渉層は、本発明に係る誘電多層膜(A)および誘電多層膜(B)の製造と同時に塗布されてもよく、別途押出成形などで作製されたものを貼りつけてもよい。
さらに、本発明に係る非干渉層は、後述する赤外吸収剤を含んでもよく、機能性層を兼ねていてもよい。
<機能性層>
本発明において、前記誘電多層膜(A)または前記誘電多層膜(B)の少なくとも1方の外側に機能性層を有することが好ましい。
本発明の赤外遮蔽フィルムは、さらなる機能の付加を目的として、導電性層、帯電防止層、ガスバリア層、易接着層(接着層)、防汚層、消臭層、流滴層、易滑層、耐摩耗性層、ハードコート層、反射防止層、電磁波シールド層、紫外線吸収層、印刷層、蛍光発光層、ホログラム層、剥離層、粘着層、接着層、本発明の高屈折率層および低屈折率層以外の赤外線カット層(金属層、液晶層)、着色層(可視光線吸収層)、および合わせガラスに利用される中間膜層などの機能性層の1つ以上を有していてもよくこれら機能性層が本発明の非干渉性層を兼ねてもよい。また、本発明に係る誘電多層膜(A)および誘電多層膜(B)の少なくとも1方の外側に機能性層を有することが好ましい。例えば、前述した図1に示すように、本発明の赤外フィルムを屋内側の窓ガラスに施工する場合には、該当する誘電多層膜(A)の外側に粘着層を有することが、窓ガラスと接着しやすい施工の観点から好ましく、該当する誘電多層膜(B)の外側に、ハードコート層を有することが、耐摩擦性を高めるための表面保護の観点から好ましい。
以下、好ましい機能性層である粘着層およびハードコート層について順に説明する
〔粘着層〕
本発明の赤外遮蔽フィルムのいずれかの最表層面に粘着層を設けることが出来る。
本発明に係る粘着層を構成する粘着剤としては、例えばアクリル系粘着剤、シリコン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリビニルブチラール系粘着剤、エチレン−酢酸ビニル系粘着剤などを例示できる。
本発明の赤外遮蔽フィルムは、窓ガラスに貼り合わせる場合、窓に水を吹き付け、濡れた状態のガラス面に本赤外遮蔽フィルムの粘着層を合わせる貼り方、いわゆる水貼り法が張り直し、位置直し等の観点で好適に用いられる。そのため、水が存在する湿潤下では粘着力が弱い、アクリル系粘着剤が好ましく用いられる。
使用されるアクリル系粘着剤は、溶剤系およびエマルジョン系どちらでも良いが、粘着力等を高め易いことから、溶剤系粘着剤が好ましく、その中でも溶液重合で得られたものが好ましい。
この粘着層には、添加剤として、例えば安定剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、難燃剤、帯電防止剤、抗酸化剤、熱安定剤、滑剤、充填剤、着色、接着調整剤等を含有させることもできる。特に、本発明のように窓貼用として使用する場合は、紫外線による赤外遮蔽フィルムの劣化を抑制するためにも、紫外線吸収剤の添加は有効である。
本発明に係る粘着層の厚さは、1μm〜100μmが好ましく、より好ましくは3〜50μmである。1μm以上であれば、粘着性が向上する傾向にあり、十分な粘着力が得られる。逆に100μm以下であれば、赤外遮蔽フィルムの透明性が向上するだけでなく、さらにはフィルムを窓ガラスに貼り付けた後、剥がしたときに粘着層間で凝集破壊が起こらず、ガラス面への粘着材のこりが無くなる傾向にある。
また、本発明に係る粘着層には、後述する赤外吸収剤を含むことができる。
〔ハードコート層〕
本発明に係るハードコート層は、本発明の赤外遮蔽フィルムの両面に積層してもよく、片面に積層してもよい。
本発明に係るハードコート層で使用される硬化型の樹脂としては、熱硬化型樹脂や紫外線硬化型樹脂が挙げられるが、成形が容易な観点から、紫外線硬化型樹脂が好ましく、その中でも鉛筆硬度が少なくとも2Hのものがより好ましい。かような硬化樹脂は、単独でもまたは2種以上組み合わせしても用いることができる。
このような紫外線硬化型樹脂としては、例えば、多価アルコールを有するアクリル酸又はメタクリル酸エステルのような多官能性のアクリレート樹脂、並びに、ジイソシアネートおよび多価アルコールを有するアクリル酸やメタクリル酸から合成されるような多官能性のウレタンアクリレート樹脂などを挙げることができる。さらにアクリレート系の官能基を有するポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂またはポリチオールポリエン樹脂等も好適に使用することができる。
また、これらの樹脂に光増感剤(ラジカル重合開始剤)を含有してもよい。これらのラジカル重合開始剤の使用量は、樹脂の重合性成分100質量部に対して0.5〜20質量部、好ましくは1〜15質量部である。
なお、上述の硬化型の樹脂は、必要に応じて公知の一般的な塗料添加剤を配合しても良い。例えばレベリングや表面スリップ性等を付与するシリコーン系やフッソ系の添加剤は硬化膜表面の傷つき防止性に効果があることに加えて、活性エネルギー線として紫外線を利用する場合は前記添加剤の空気界面へのブリードによって、酸素による樹脂の硬化阻害を低下させることができ、低照射強度条件下に於いても有効な硬化度合を得ることができる。
また、ハードコート層は無機微粒子を含有することが好ましい。好ましい無機微粒子としては、チタン、シリカ、ジルコニウム、アルミニウム、マグネシウム、アンチモン、亜鉛または錫などの金属を含む無機化合物の微粒子が挙げられる。この無機微粒子の平均粒径は、可視光線の透過性を確保することから、1000nm以下が好ましく、10〜500nmの範囲にあるものがより好ましい。また、無機微粒子は、ハードコート層を形成する硬化樹脂との結合カが高いほうがハードコート層からの脱落を抑制できることから、単官能または多官能のアクリレートなどの光重合反応性を有する感光性基を表面に導入しているものが好ましい。
ハードコート層の厚みは0.1μm〜50μmが好ましく、1〜20μmがより好ましい。0.1μm以上であればハードコート性が向上する傾向にあり、逆に50μm以下であれば赤外遮蔽フィルムの透明性が向上する傾向にある。
なお、ハードコート層には、後述する赤外吸収剤を含むことができる。
ハードコート層の形成方法は特に制限されず、例えば、上記各成分を含むハードコート層用塗布液を調製した後、塗布液をワイヤーバー等により塗布し、熱および/またはUVで塗布液を硬化させ、ハードコート層を形成する方法などが挙げられる。
<赤外吸収剤>
本発明の赤外遮蔽フィルムにおいては、本発明に係る誘電多層膜(A)および誘電多層膜(B)以外のいずれか1層に赤外吸収剤を含む。
また、前記赤外吸収剤が、前記誘電多層膜(A)と前記誘電多層膜(B)との間の層に含有されることが好ましい。すなわち、本発明に係る誘電多層膜(A)および誘電多層膜(B)との間の層に赤外吸収剤を含むことがより好ましい。さらに、本発明に係る非干渉層に赤外吸収剤を含むことにより、誘電多層膜(A)または(B)に入射した赤外線のうち、反射されなかった残りの赤外線が赤外吸収剤を含む層に侵入することから、フィルム全体での赤外線吸収量を減らすことができ、温度上昇を軽減できるため、最も好ましい。赤外吸収剤を併用することにより、誘電多層膜(A)または(B)で反射しきれない赤外線を遮断できるため、赤外遮蔽フィルムとしてより広い波長範囲での赤外線遮断効果が得られる。さらに、本発明によれば、誘電多層膜(A)として近赤外領域の反射率が特定の値以上のものを使用するため、赤外吸収剤を赤外遮蔽フィルムに併用しても、熱割れのリスクは非常に低いものとなる。誘電多層膜の反射のみによって赤外遮蔽フィルムを実現しようとすると、通常、誘電多層膜の反射帯域が赤外線領域に対して狭いことから、誘電多層膜の膜厚等を少しずつずらしたユニットを複数積層して帯域を広げる工夫が必要となる。そのため製造工程が増えて煩雑になり、コストもかさむことから、本発明では赤外吸収剤を併用する。
本発明で用いる赤外吸収剤は、一般に透明樹脂に添加して用いられている赤外吸収剤であれば特に限定されないが、良溶媒100重量部に対し化合物0.1重量部を溶解した溶液について、600〜2500nmの近赤外線波長領域の一部、または全域で前記良溶媒を対照とした光線透過率が50%以下、さらには30%以下となる化合物が好ましい。そのような赤外吸収剤としては、例えば、シアン系近赤外吸収剤、ピリリウム系近赤外吸収剤、スクワリリウム系近赤外吸収剤、クロコニウム系近赤外吸収剤、アズレニウム系近赤外吸収剤、フタロシアニン系近赤外吸収剤、ジチオール金属錯体系近赤外吸収剤、ナフトキノン系近赤外吸収剤、アントラキノン系近赤外吸収剤、インドフェノール系近赤外吸収剤、およびアジ系近赤外吸収剤などの特開平6−200113に開示されている赤外吸収剤が挙げられる。また、市販品の赤外線吸収剤であるSIR−103、SIR−114、SIR−128、SIR−130、SIR−132、SIR−152、SIR−159、SIR−162(以上、三井東圧染料製)、KayasorbIR−750、Kayasorb IRG−002、Kayasor IRG−003、IR−820B、Kayasorb IRG−022、Kayasorb IRG−023、Kayasorb CY−2、Kayasorb cCY−4、KayasorbCY−9(以上、日本火薬製)等も用いることができる。
また、上記以外の赤外吸収剤として、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、アンチモンドープ酸化錫(ATO)、アンチモン酸亜鉛、6硼化ランタン(LaB6)、酸化タングステンセシウム(Cs0.33WO3)等の無機赤外吸収剤も用いることができ、これらは単独でもまたは2種類以上組み合わせても用いることができる。
本発明に用いられる赤外吸収剤の該当する層における含有量は、赤外線吸収剤の種類、粒径等により変化する吸光係数に依存するので、必要に応じて適宜添加量は制御することはできる。例えば、遮熱用に市販されているアンチモンドープ酸化錫(ATO)の場合には、3g/m2以上であることが好ましい。
{赤外遮蔽フィルムの製造方法}
本発明の赤外遮蔽フィルムの製造方法について特に制限はなく、非干渉層の両面に高屈折率層と低屈折率層とを交互に積層してなる誘電多層膜(A)および高屈折率層と低屈折率層とを交互に積層してなる誘電多層膜(B)がそれぞれ形成することができるのであれば、いかなる方法でも用いられる。
例えば、(1)まず、非干渉層の材料から本発明に係る非干渉層を成形し、次いでその上に、高屈折率層と低屈折率層とを交互に積層してなる誘電多層膜(A)または誘電多層膜(B)のいずれかを塗布し乾燥してから、当該非干渉層の裏側の面にもう一方の誘電多層膜を塗布して乾燥し、それぞれの面の上に必要に応じてさらに他の機能性層を塗布し製造する方法;(2)成形された非干渉層の両面に誘電多層膜(A)および(B)を同時に塗布し乾燥して、それぞれの面の上に必要に応じてさらに他の機能性層を塗布し製造する方法;(3)支持体上に、誘電多層膜(A)または(B)のいずれか1方を塗布し乾燥してから、その上に非干渉層、前記誘電多層膜(A)または(B)のもう1方を塗布し乾燥して製造する方法;などが挙げられる。その中、誘電多層膜(A)または(B)を形成する際に、具体的には水系の高屈折率層形成用塗布液と低屈折率層形成用塗布液とを交互に湿式塗布、乾燥して積層体を形成することが好ましく、高屈折率層形成用塗布液と、低屈折率層形成用塗布液とを同時重層塗布する方法がより簡便なプロセスとなるため、より好ましい。
塗布方式としては、例えば、ロールコーティング法、ロッドバーコーティング法、エアナイフコーティング法、スプレーコーティング法、カーテン塗布方法、あるいは米国特許第2,761,419号、同第2,761,791号公報に記載のホッパーを使用するスライドビード塗布方法、エクストルージョンコート法等が好ましく用いられる。
上記した赤外遮蔽フィルムの製造方法の(3)で用いられる支持体として、種々の樹脂フィルムを用いることができ、ポリオレフィンフィルム(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリエステルフィルム(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリ塩化ビニル、3酢酸セルロース等を用いることができ、好ましくはポリエステルフィルムである。
本発明に用いられる支持体の厚みは、10〜300μm、特に20〜150μmであることが好ましい。また、本発明の支持体は、2枚重ねたものであっても良く、この場合、その種類が同じでも異なってもよい。また上述した非干渉層と誘電多層膜(A)または(B)の間に支持体を入れてもよい。
高屈折率層形成用塗布液および低屈折率層形成用塗布液を調製するための溶媒は、特に制限されないが、水、有機溶媒、またはその混合溶媒が好ましい。環境面、操作の簡便性などから、塗布液の溶媒としては、特に水、または水とメタノール、エタノール、もしくは酢酸エチルとの混合溶媒が好ましく、水がより好ましい。
高屈折率層形成用塗布液中の水溶性高分子の濃度は、1〜10質量%であることが好ましい。また、高屈折率層形成用塗布液中の金属酸化物粒子の濃度は、1〜50質量%であることが好ましい。
低屈折率層形成用塗布液中の水溶性高分子の濃度は、1〜10質量%であることが好ましい。また、低屈折率層形成用塗布液中の金属酸化物粒子の濃度は、1〜50質量%であることが好ましい。
同時重層塗布を行う際の高屈折率層形成用塗布液と低屈折率層形成用塗布液の粘度としては、スライドビード塗布方式を用いる場合には、5〜100mPa・sの範囲が好ましく、さらに好ましくは10〜50mPa・sの範囲である。また、カーテン塗布方式を用いる場合には、5〜1200mPa・sの範囲が好ましく、さらに好ましくは25〜500mPa・sの範囲である。
塗布および乾燥方法としては、水系の高屈折率層形成用塗布液と低屈折率層形成用塗布液を30℃以上に加温して、塗布を行った後、形成した塗膜の温度を1〜15℃に一旦冷却し、10℃以上で乾燥することが好ましく、より好ましくは、乾燥条件として、湿球温度5〜50℃、膜面温度10〜50℃の範囲の条件で行うことである。また、塗布直後の冷却方式としては、形成された塗膜均一性の観点から、水平セット方式で行うことが好ましい。
粘着剤の塗工方法としては、任意の公知の方法が使用できる。これらは適宜、粘着剤を溶解できる溶媒にて溶液にする、または分散させた塗布液を用いて塗工することが出来、溶媒としては公知の物を使用することが出来る。
本発明に係る粘着層の形成は、直接本発明の赤外遮蔽フィルムに塗工しても良く、また、一度剥離フィルムに塗工して乾燥させた後、本発明の赤外遮蔽フィルムを貼り合せて粘着剤を転写させても良い。
本発明に係るハードコート層などの他の機能性層の形成方法は特に制限はないが、任意の公知の方法が使用できる。
紫外線照射により硬化する方法としては、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、メタルハライドランプなどから発せられる100〜400nmの波長領域の紫外線を照射する、又は走査型やカーテン型の電子線加速器から発せられる100nm以下の波長領域の電子線を照射することにより行うことができる。
{赤外遮蔽体}
本発明の赤外遮蔽体とは、本発明の赤外遮蔽フィルムを基体の少なくとも一方の面に設けられた態様を表す。
基体として好ましいのは、プラスチック基体、金属基体、セラミック基体、布状基体等が好ましく、フィルム状、板状、球状、立方体状、直方体状等様々な形態の基体に本発明の赤外遮蔽フィルムを設けた状態を言う。その中でも好ましいのは板状のセラミック基体で、ガラス板に本発明の赤外遮蔽フィルムを設けた、赤外遮蔽体が好ましい。ガラス板の例としては、例えばJIS R3202に記されたフロート板ガラス、および磨き板ガラスが好ましく、ガラス厚みとしては0.01mm〜20mmが好ましい。ここで、例えば基体が建物の窓ガラスや自動車のフロントガラスだった場合、本体(窓枠等)に設けられている基体に赤外遮蔽フィルムを貼ってもよい。その場合、基体より屋外側に貼り付けてもよいし、基体より屋内側に貼り付けてもよい。さらにまた、あらかじめ窓などに設ける基体(たとえばガラス)に赤外遮蔽フィルムを貼って、遮蔽体を形成し、その遮蔽体を建物の窓ガラスとしてまたは自動車のガラスとして本体に設置してもよい。その場合も、誘電多層膜(A)が屋外に向くように設置するが、赤外遮蔽フィルムは屋内側でも屋外側でもよい。耐久性の観点及び屋内保温性の観点からは屋内側に赤外遮蔽フィルムを配置するほうがよい。
基体に、本発明の赤外遮蔽フィルムを設ける方法としては、上述のように赤外遮蔽フィルムに粘着層を塗設し、粘着層を介して基体に貼り付ける方法が好適に用いられる。
貼合方法としては、そのまま基体にフィルムを貼る乾式貼合、上述のように水貼り貼合する方法が適応できるが、基体と赤外遮蔽フィルムの間に空気が入らないようにするため、また基体上での赤外遮蔽フィルムの位置決め等、施工のしやすさの観点で水貼り法により貼合することがより好ましい。
このとき、赤外遮蔽フィルム自体にたわみや反りがあると、貼合が難しくなると同時に、貼合後のはがれが発生しやすくなる。そのため、赤外遮蔽フィルムはたわみや反りを極力抑えて作製されることが望ましく、膜応力を低減するため誘電多層膜(A)と誘電多層膜(B)の膜厚の比が20%以下であることが好ましく、15%以下がより好ましい。誘電多層膜(A)および(B)は、線膨張率が互いに異なることによりたわみや反りの原因となる場合があるが、膜厚の比が上記の範囲であれば、たわみや反りを効果的に防止することができる。
本発明の赤外遮蔽体とは、本発明の赤外遮蔽フィルムを基体の複数面に設けた状態、本発明の赤外遮蔽フィルムに複数の基体を設けた状態でも構わない。例えば上述の板ガラスの両面に本発明の赤外遮蔽フィルムを設けた態様、本発明の赤外遮蔽フィルムの両面に粘着層を塗設し、赤外遮蔽フィルムの両面に上述の板ガラスを貼り合わせた、合わせガラス状の態様でも構わない。
ただし、いずれの場合も近赤外線を反射する誘電多層膜(A)を屋外側に、中遠赤外線を反射する誘電多層膜(B)を屋内側に向けて設置する。
{赤外遮蔽フィルムの応用}
本発明の赤外遮蔽フィルムは、幅広い分野に応用することができる。例えば、建物の屋外の窓や自動車窓等太陽光に晒らされる窓ガラスに貼り合せ、室内温度の過上昇を抑える赤外反射効果を付与する窓貼用フィルム、農業用ビニールハウス用フィルム等として、主としてハウス内温度の過上昇を抑える赤外遮蔽効果を付与した農業用フィルムの目的で用いられる。
また自動車用の合わせガラスのように、本発明の赤外遮蔽フィルムをガラスとガラスの間に挟み、自動車用赤外遮蔽フィルムとして用いられ、この場合外気ガスから赤外遮蔽フィルムを封止できるため、耐久性の観点から好ましい。
好ましい実施形態として、本発明は、本発明の赤外遮蔽フィルムを設けたガラスを有し、誘電多層膜(A)が積層されている面が屋外側にむけるように設置される、窓枠体も提供する。
さらに別の実施形態として、本発明は、本発明の赤外遮蔽フィルムを設けたガラスを有し、誘電多層膜(A)が積層されている面が屋外側に向くように設置する、窓枠体の設置方法も提供する。本発明の窓枠体を家屋等の建築物の窓に適用することにより、または、本発明の窓枠体の設置方法により、夏場の室内の温度上昇を抑制し、冬場の室内の温度を維持することができる。これにより、快適な室内環境維持がより省エネルギーで実現し得る。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
<実施例1>
〔低屈折率層形成用塗布液の調製〕
500質量部の純水に、部分ケン化ポリビニルアルコール(水溶性樹脂JP45(日本酢ビポバール社製、ケン化度88%、重合度4500))15.0質量部を攪拌しながら添加し、次いで変性ポリビニルアルコール(水溶性樹脂AZF8035(日本合成化学社製))2.0質量部を混合しながら70℃に昇温溶解させることにより、水溶性樹脂の水溶液を得た。
次いで、平均粒径が5nmのシリカ微粒子を含む10質量%の酸性シリカゾル(スノーテックスOXS:日産化学社製)350質量部中に、上記で得られた水溶性樹脂水溶液全量を加え混合した。さらに、4質量%ホウ酸の水溶液10質量部を添加し、1時間攪拌させた後、純水で1000.0gに仕上げて、低屈折率層形成用塗布液L1を調製した。
〔高屈折率層形成用塗布液の調製〕
[二酸化チタンゾル水系分散液の調製]
まず、ケイ酸ソーダ4号(日本化学社製)をSiO2に換算した時の濃度が2.0質量%であるように純水で希釈し、ケイ酸水溶液を調製した。
次いで、15.0質量%の酸化チタンゾル(体積平均粒径5nm、ルチル型酸化チタン粒子(堺化学社製:商品名SRD−W))0.5kgに純水2kgを加えた後、90℃に加熱した。次いで、上記調製したケイ酸水溶液1.3kgを徐々に添加し、オートクレーブ中において、175℃で18時間加熱処理を行い、冷却後、限外濾過膜にて濃縮することにより、SiO2を表面に付着させた酸化チタンゾル(以下、「シリカ付着酸化チタンゾル」と称する、固形分濃度:20質量%)を得た。
上記で得られた固形分濃度20.0質量%のシリカ付着酸化チタンゾル水系分散液28.9部に4質量%のホウ酸水溶液9.0部を混合して、シリカ変性酸化チタン粒子分散液H1を調製した。
次いで、シリカ変性酸化チタン粒子分散液H1を攪拌しながら、純水16.3部および5.0質量%のポリビニルアルコール(RS2117、クラレ製)水溶液33.5部を加えた。最後に純水で1000部に仕上げて、高屈折率層形成用塗布液H1を調製した。
なお、上述の方法により製造された高屈折率層および低屈折率層の屈折率を計測したところ、それぞれ1.9および1.45であった。
〔非干渉層の形成〕
直径35mmの二軸押出混練機(TEM−35B、東芝機械社製)で熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂(ZEONEX 280、日本ゼオン株式会社製、ガラス転移温度約140℃、数平均分子量約28,000)100重量部に近赤外線吸収剤SIR−128(三井東圧染料株式会社製、吸収波長領域約700〜約1000nm)1重量部を添加し、樹脂温度220℃で混練し、ペレタイザーでペレット化した。このペレットを、樹脂温度260℃で成形し、赤外吸収剤を含有する非干渉層N1を形成した。
〔粘着層の形成〕
酢酸エチル60質量部およびトルエン20質量部を混合し、さらにアクリル系粘着剤(アロンタックM−300、東亞合成社製)20質量部を攪拌しながら添加し、混合することにより粘着剤塗布液を得た。
セパレータフィルムとしては25μm厚のポリエステルフィルム(セラピール:東洋メタライジング社製)を用いた。このセパレータフィルムの上に、粘着剤塗布液をワイヤーバーにより塗布し、80℃、2分間乾燥することで粘着層付きフィルムを作製した。このフィルムの粘着層表面を所定の位置へ貼合機により貼合した。このとき赤外遮蔽フィルム側の貼合時張力を10kg/mとし、粘着層付きフィルムの貼合時張力を30kg/mとした。
〔ハードコート層の形成〕
メチルエチルケトン溶媒90質量部にUV硬化型ハードコート材(UV−7600B:日本合成化学社製)7.5質量部を添加し、次いで光重合開始剤(イルガキュア184:チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製)0.5質量部を攪拌しながら添加し混合することによりハードコート層形成用塗布液を得た。
次いで、所定の位置にハードコート層用塗布液をワイヤーバーにより塗布し、70℃3分熱風乾燥した。その後大気下で、アイグラフィックス社製のUV硬化装置(高圧水銀ランプ使用)にて、硬化条件:400mJ/cm2で硬化を行うことで、ハードコート層を形成した。
〔赤外遮蔽フィルム1の製造〕
上記製造した赤外吸収剤を含有する非干渉層N1の上に、多層同時塗布可能なスライドホッパー塗布装置を用い、45℃に保温しながら、上記調製した低屈折率層形成用塗布液及び高屈折率層形成用塗布液を同時重層塗布した。この際、層の構成は、フィルム表面側に低屈折率層とし、それぞれ交互に低屈折率層は7層、高屈折率層は6層、計13層を積層した。その直後、膜面が15℃以下となる条件で冷風を1分間吹き付けてセットさせた後、80℃の温風を吹き付けて乾燥させ、誘電多層膜(A1)を作製した。
続いて同様にして、上記フィルムのもう一方の面に、低屈折率層は5層、高屈折率層は4層、計9層積層を塗布し、セット、乾燥させて誘電多層膜(B1)を作製した。
次いで、上述の方法にて誘電多層膜(A1)の上に粘着層を膜厚10μm、誘電多層膜(B1)の上にハードコート層を膜厚10μmになるよう形成し、赤外遮蔽フィルム1を得た。誘電多層膜(A1)は本発明の誘電多層膜(A)に、誘電多層膜(B1)は本発明の誘電多層膜(B)に相当する。
SEMにより塗布膜の断面を観察したところ、誘電多層膜(A1)の低屈折率層および高屈折率層の膜厚(厚膜層を除く)は、それぞれ147〜325nmおよび113〜130nmであり、総膜厚は2.39μmであった。また、誘電多層膜(B1)の低屈折率層および高屈折率層の膜厚(厚膜層を除く)は、それぞれ90〜290nmおよび192〜237nmであり、総膜厚は2.30μmであった。なお、それぞれの高屈折率層および低屈折率層の膜厚は表1に示される。
<実施例2>
厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)支持体上に、多層同時塗布可能なスライドホッパー塗布装置を用い、45℃に保温しながら、上記調製した低屈折率層形成用塗布液及び高屈折率層形成用塗布液を同時重層塗布した。この際、層の構成は、フィルム表面側に低屈折率層とし、それぞれ交互に低屈折率層は4層、高屈折率層は3層、計7層を積層した。その直後、膜面が15℃以下となる条件で冷風を1分間吹き付けてセットさせた後、80℃の温風を吹き付けて乾燥させ、誘電多層膜(B2)を作製した。
次いで、メチルエチルケトン溶液にブチラール樹脂(積水化学製、エスレックBM−S)を溶かし、ATOを分散させた液を乾燥後の膜厚が10μmになるように非干渉層N2を押出機により前記製作した誘電多層膜(B2)付きのフィルムに塗工し、乾燥後、その上に、低屈折率層は7層、高屈折率層は6層、計13層積層を塗布し、セット、乾燥させて誘電多層膜(A2)を形成した。なお、形成された高屈折率層および低屈折率層の膜厚はそれぞれ表1に示される。誘電多層膜(A2)は本発明の誘電多層膜(A)に、誘電多層膜(B2)は本発明の誘電多層膜(B)に相当する。
その後、前記PET支持体を剥がした後、実施例1と同様な操作により、誘電多層膜(A2)の上に粘着層、誘電多層膜(B2)の上にハードコート層をそれぞれ施工し、赤外遮蔽フィルム2を得た。
<実施例3>
上記赤外遮蔽フィルム1の形成において、誘電多層膜(B1)の代わりに誘電多層膜(B2)を用いること以外は同様にして、赤外遮蔽フィルム3を得た。
<実施例4>
上記赤外遮蔽フィルム4の形成において、非干渉層N1の中に近赤外線吸収剤SIR−128を含有させないこと、およびハードコート層に赤外吸収剤(ATO粉末、超微粒子ATO、住友金属鉱山株式会社製)を含有させること以外は同様にして、赤外遮蔽フィルム4を得た。
<比較例1>
上記赤外遮蔽フィルム1の形成において、誘電多層膜(A1)の上にハードコート層、誘電多層膜(B1)の上に粘着層を塗工し、本発明の赤外遮蔽フィルム1の設置方向とは逆になるような比較フィルム1を得た。
<比較例2>
上記赤外遮蔽フィルム1の形成において、誘電多層膜(B1)を用いず、すなわち、ハードコート層を非干渉層N1上に直接塗工すること以外は同様にして、比較フィルム2を得た。非干渉層N1は便宜上このように称するが、比較例2では誘電多層膜(B)を設けていないため、本来の非干渉層としての機能は果たしていない。比較例2の層構成は図4に示す。
<比較例3>
上記赤外遮蔽フィルム1の形成において、非干渉層N1に上に誘電多層膜(B1)、誘電多層膜(A1)、および粘着層の順に塗工し、非干渉層N1の反対側にハードコート層を直接塗工すること以外は同様にして、比較フィルム3を得た。非干渉層N1は便宜上このように称するが、比較例3では誘電多層膜(A)および(B)の間に設置されていないため、誘電多層膜(A)および(B)の干渉を防止する機能は果たしていない。比較例3の層構成は図6に示す。
<比較例4>
上記赤外遮蔽フィルム1の形成において、誘電多層膜(A1)を設けず、すなわち、粘着層を非干渉層N1に直接塗工すること以外は同様にして、比較フィルム4を得た。非干渉層N1は便宜上このように称するが、比較例4では誘電多層膜(A)を設けていないため、本来の非干渉層としての機能は果たしていない。比較例4の層構成は図5に示す。
<比較例5>
上記赤外遮蔽フィルム1の形成において、誘電多層膜(A1)および誘電多層膜(B1)を共に使用せず、粘着層をおよびハードコート層は非干渉層N1上に直接塗工すること以外は同様にして、比較フィルム5を得た。非干渉層N1は便宜上このように称するが、比較例5では誘電多層膜(A)および(B)を設けていないため、本来の非干渉層としての機能は果たしていない。
<反射率の評価>
誘電多層膜A1をPET(東洋紡製A4300:両面易接着層)の片面に形成した赤外遮蔽フィルムをそれぞれ作製し、分光光度計(積分球使用、日本分光社製、V−670型)を用い、850〜2500nmの領域における反射率を測定した。測定時光の侵入は反射層側からになるようにして、フィルムを設置した。その結果を図7のグラフ中Aに示す。波長950nmに反射率94%の反射極大値を示した。
同様にして、誘電多層膜B1の反射率を測定した。その結果を図7のグラフ中Bに示す。波長1300nmに反射率46%(誘電多層膜A1の極大反射率の49%)の反射極大値を示した。また、反射率20%を超える波長領域は1180nmから2180nmまでの1000nmであった。
同様に誘電多層膜A2は波長990nmに反射率84%の反射極大値を示し、誘電多層膜B2は波長1750nmに41%(誘電多層膜A2の極大反射率の49%)の反射極大値を示した。また誘電多層膜Bの反射率20%を超える波長領域は1200nm〜1350nmと1500nm〜2100nmの750nmであった。
(総膜厚比)
作製した赤外遮蔽フィルムの断面を電子顕微鏡およびSEMで観察し、誘電多層膜(A1またはA2)および誘電多層膜(B1またはB2)の総膜厚をそれぞれ求め、この比を数式(1)の通りに算出した。
<熱割れ低減効果>
60cm×60cmのアルミサッシで保持された窓の屋内側の面に赤外反射フィルムを貼りつけ、屋外側から太陽に見立てた白熱灯を10分間照射し、接触式温度計によりガラス中央部とサッシ付近の温度を測定した。この温度差が小さいほど、熱割れのリスクが低いと言える。
<室内の保温効果>
60cm×60cmのアルミサッシで保持された窓の屋内側の面に赤外反射フィルムを貼りつけ、屋内側から暖房熱源となる遠赤外線ヒーターを10分間照射し、空間温度計によりガラスからそれぞれ1cm離れた屋内側、屋外側の温度を測定した。この温度差が大きいほど、保温効果が高いと言える。
<反り>
得られた赤外遮蔽フィルムを60cm×60cmの大きさに切り出し、径が3インチの紙コアに巻き取った後、ビニール袋に入れた状態で、58℃の恒温槽に3日間、保管した。その後、取り出し、机の上で、まき内側が上になるように紙コアから巻きだし、30分放置した後、フィルムの四隅の机表面からの立ちあがり高さを定規で測定し、その平均を計算して反りあがり量を以下の基準で評価した。
○ :反りあがり量が3mm以下
○△:反りあがり量が3mm超〜7mm以下
△ :反りあがり量が7mm超〜15mm以下
△×:反りあがり量が15mm超〜30mm以下
× :反りあがり量が30mm超。
以上各評価の結果は表2に示す。熱割れ低減評価の結果において、本発明の赤外遮蔽フィルム1〜4のいずれも、ガラス中央部とサッシ付近の温度差が小さく、熱割れのリスクが比較例の比較フィルム1、4、5より低減されることが示された。しかし、比較例2、3は、反り防止の点で本発明より劣っている。
また、室内の保温効果の評価結果において、本発明の赤外遮蔽フィルム1〜4のいずれも屋内側と屋外側の温度差が大きく、比較例の比較フィルム1、2、5より暖房熱の保温効果に優れていることが示された。
さらに、反りの目視評価では、前記誘電多層膜(A)と前記誘電多層膜(B)の総膜厚の比が、±20%以内である場合の赤外遮蔽フィルム1、2のいずれも、反りが少なく、比較例の比較フィルム2、3、4より反りが少ないことを示し、ガラスへの施工性に優れていることが示された。また、反りが少ないため、膜はがれのリスクも低減している。
なお、本出願は、2012年7月10日に出願された日本特許出願第2012−154948号に基づいており、その開示内容は、参照により全体として引用されている。
1 誘電多層膜(A)、
2 誘電多層膜(B)、
3 非干渉層、
4 機能性層(粘着層)、
5 機能性層(ハードコート層)、
6 窓ガラス、
7 非干渉層N1。

Claims (8)

  1. 誘電多層膜(A)、誘電多層膜(B)、機能性層、および前記誘電多層膜(A)と前記誘電多層膜(B)との間に配置される非干渉層を有し、
    前記誘電多層膜(A)が、900〜1100nmの波長領域に反射率が50%以上の反射極大値を持ち、前記誘電多層膜(B)が、1200〜2100nmの波長領域に反射極大値を持ち、
    前記機能性層は、導電性層、帯電防止層、ガスバリア層、易接着層(接着層)、防汚層、消臭層、流滴層、易滑層、耐摩耗性層、ハードコート層、反射防止層、電磁波シールド層、紫外線吸収層、印刷層、蛍光発光層、ホログラム層、剥離層、粘着層、接着層、前記誘電多層膜(A)と前記誘電多層膜(B)を構成する高屈折率層および低屈折率層以外の赤外線カット層、着色層、および合わせガラスに利用される中間膜層からなる群より選択され、
    前記機能性層または前記非干渉層のいずれか1層に赤外吸収剤を含有し、
    前記誘電多層膜(A)が積層されている面を屋外側に向けるように設置する、赤外遮蔽フィルム。
  2. 前記誘電多層膜(B)の1200〜2100nmの波長領域における反射率が、前記誘電多層膜(A)の900〜1100nmの波長領域における最大反射率の20〜50%である、請求項1に記載の赤外遮蔽フィルム。
  3. 前記誘電多層膜(A)または前記誘電多層膜(B)の少なくとも1方の外側に前記機能性層を有する、請求項1または2に記載の赤外遮蔽フィルム。
  4. 前記赤外吸収剤が、前記非干渉層に含有される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の赤外遮蔽フィルム。
  5. 前記誘電多層膜(A)と前記誘電多層膜(B)の総膜厚の比が、±20%以内である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の赤外遮蔽フィルム。
  6. 前記誘電多層膜(A)が積層されている面を屋外側に向けるように設置し、かつ屋内に貼られる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の赤外遮蔽フィルム。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の赤外遮蔽フィルムを設けたガラスを有し、
    前記誘電多層膜(A)が積層されている面が屋外側に向けるように設置される、窓枠体。
  8. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の赤外遮蔽フィルムを設けたガラスを有する窓枠体を前記誘電多層膜(A)が積層されている面が屋外側に向くように設置する、窓枠体の設置方法。
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