以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
なお、本明細書において、「板」、「シート」、「フィルム」の用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。例えば、「導電体付シート」は板やフィルムと呼ばれ得るような部材をも含む概念であり、したがって、「導電体付シート」は、「導電性パターン板(基板)」や「導電性パターンフィルム」と呼ばれる部材と、呼称の違いのみにおいて区別され得ない。
また、「シート面(板面、フィルム面)」とは、対象となるシート状(板状、フィルム状)の部材を全体的かつ大局的に見た場合において対象となるシート状部材(板状部材、フィルム状部材)の平面方向と一致する面のことを指す。
本明細書において、「接合」とは、完全に接合を完了する「本接合」だけでなく、「本接合」の前に仮止めするための、いわゆる「仮接合」をも含むものとする。
また、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件ならびにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
図1〜図13は、本発明による一実施の形態を説明するための図である。先ず、導電体付シートを備えた発熱板について説明する。図1は、発熱板を備えた自動車を概略的に示す図であり、図2は、発熱板をその板面の法線方向から見た図であり、図3は、図2の発熱板の横断面図である。
図1に示されているように、乗り物の一例としての自動車1は、フロントウィンドウ、リアウィンドウ、サイドウィンドウ等の窓ガラスを有している。ここでは、フロントウィンドウ5が発熱板10で構成されているものを例示する。また、自動車1はバッテリー等の電源7を有している。
この発熱板10をその板面の法線方向から見たものを図2に示す。また、図2の発熱板10のIII−III線に対応する横断面図を図3に示す。図3に示された例では、発熱板10は、一対のガラス板11,12と、一対のガラス板11,12の間に配置された導電体付シート20と、ガラス板11,12と導電体付シート20とを接合する接合層13,14とを有している。なお、図1および図2に示した例では、発熱板10は湾曲しているが、図3および図10〜図13では、図示の簡略化および理解の容易化のために、発熱板10およびガラス板11,12を平板状に図示している。
導電体付シート20は、シート状の透明基材30と、透明基材30上に形成された導電性パターン40と、導電性パターン40に通電するための銅線等からなる配線部15と、導電性パターン40と配線部15とを接続する接続部16(バスバーまたはバスバー電極とも呼ばれる)と、を有している。透明基材30上に直接導電性パターン40を設けてもよいが、両者の密着性を向上させるために保持層31を介して、透明基材30上に導電性パターン40を設けてもよい。配線部15は、バッテリー等の電源7に導電性パターン40を電気的に接続する配線として機能する。図2および図3に示した例では、配線部15を介して導電性パターン40に通電し、導電性パターン40を抵抗加熱により発熱させる。導電性パターン40で発生した熱は接合層13,14を介してガラス板11,12に伝わり、ガラス板11,12が温められる。これにより、ガラス板11,12に付着した結露による曇りを取り除くことができる。また、ガラス板11,12に雪や氷が付着している場合には、この雪や氷を溶かすことができる。したがって、乗員の視界が良好に確保される。
図2および図3に示した例では、バッテリー等の電源7から、配線部15および接続部16を介して導電性パターン40に通電し、導電性パターン40を抵抗加熱により発熱させる。導電性パターン40で発生した熱は接合層13,14を介してガラス板11,12に伝わり、ガラス板11,12が温められる。これにより、ガラス板11,12に付着した結露による曇りを取り除くことができる。また、ガラス板11,12に雪や氷が付着している場合には、この雪や氷を溶かすことができる。したがって、乗員の視界が良好に確保される。
ガラス板11,12は、特に自動車のフロントウィンドウに用いる場合、乗員の視界を妨げないよう可視光透過率が高いものを用いることが好ましい。このようなガラス板11,12の材質としては、ソーダライムガラス(青板ガラス)、硼珪酸ガラス(白板ガラス)、石英ガラス、ソーダガラス、カリガラス等が例示できる。ガラス板11,12は、可視光領域における透過率が90%以上であることが好ましい。ここで、ガラス板11,12の可視光透過率は、分光光度計((株)島津製作所製「UV−3100PC」、JIS K 0115準拠品)を用いて測定波長380nm〜780nmの範囲内で測定したときの、各波長における透過率の平均値として特定される。なお、ガラス板11,12の一部または全体に着色するなどして、可視光透過率を低くしてもよい。この場合、太陽光の直射を遮ったり、車外から車内を視認しにくくしたりすることができる。
また、ガラス板11,12は、1mm以上5mm以下の厚みを有していることが好ましい。このような厚みであると、強度および光学特性に優れたガラス板11,12を得ることができる。
ガラス板11,12と導電体付シート20とは、それぞれ接合層13,14を介して接合されている。このような接合層13,14としては、種々の接着性または粘着性を有した材料からなる層を用いることができる。また、接合層13,14は、可視光透過率が高いものを用いることが好ましい。典型的な接合層としては、ポリビニルブチラール(PVB)からなる層を例示することができる。接合層13,14の厚みは、それぞれ0.15mm以上0.7mm以下であることが好ましい。
なお、発熱板10には、図示された例に限られず、特定の機能を発揮することを期待されたその他の機能層が設けられても良い。また、1つの機能層が2以上の機能を発揮するようにしてもよいし、例えば、発熱板10のガラス板11,12、接合層13,14や、後述する導電体付シート20の透明基材30の少なくとも1つに機能を付与するようにしてもよい。発熱板10に付与され得る機能としては、一例として、反射防止(AR)機能、耐擦傷性を有したハードコート(HC)機能、赤外線遮蔽(反射)機能、紫外線遮蔽(反射)機能、偏光機能、防汚機能等を例示することができる。
次に、導電体付シート20について説明する。導電体付シート20は、図4に示すように、シート状の透明基材30と、透明基材30上に積層された保持層31と、保持層31上に形成された導電性パターン40と、導電性パターン40に通電するための配線部15と、導電性パターン40と配線部15とを接続する接続部16とを有している。図4に示したような実施の形態においては、赤外線吸収剤が、透明基材30中に含有されているか、または保持層31中に含有されていてもよく、あるいは透明基材30および保持層31の両方に赤外線吸収剤32が含有されていてもよい。赤外線吸収剤32については後記する。
導電体付シート20は、ガラス板11,12と略同一の平面寸法を有して、発熱板10の全体にわたって配置されてもよいし、運転席の正面部分等、発熱板10の一部にのみ配置されてもよい。
シート状の透明基材30は、保持層31および導電性パターン40を支持する基材として機能する。透明基材30は、可視光線波長帯域の波長(380nm〜780nm)を透過する一般に言うところの透明である電気絶縁性の基板である。図2、図7および図8に示された例では、透明基材30は、ガラス板11,12と略同一の寸法を有して、略台形状の平面形状を有している。
透明基材30に含まれる樹脂としては、可視光を透過し、保持層31および導電性パターン40を適切に支持し得るものであればいかなる樹脂でもよいが、好ましくは熱可塑性樹脂を用いることができる。この熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、アモルファスポリエチレンテレフタレート(A−PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、環状ポリオレフィン等のポリオレフィン樹脂、トリアセチルセルロース(三酢酸セルロース)等のセルロース系樹脂、ポリスチレン、ポリカーボネート樹脂、AS樹脂等を挙げることができる。とりわけ、アクリル樹脂やポリ塩化ビニルは、エッチング耐性、耐候性、耐光性に優れており、好ましい。透明基材30に赤外線吸収剤させるには、上記したような樹脂を成膜して透明基材を製造する際に、樹脂中に赤外線吸収剤32を分散させて押出溶融製膜機等により混練することにより、透明基材30中に赤外線吸収剤32を均一に分散させることができる。透明基材30中に赤外線吸収剤32を含有させる場合、透明基材の質量に対して1〜25質量%となるように赤外線吸収剤を含有させることが好ましい。この範囲であれば、デフロスタ機能の向上と可視光透過性とを両立させることができる。
また、透明基材30は、導電性パターン40の保持性や、光透過性等を考慮すると、0.03mm以上0.3mm以下の厚みを有していることが好ましい。
保持層31は、透明基材30と導電性パターン40との接合性を向上し、導電性パターン40を保持する機能を有する。保持層31は、例えば、透明な電気絶縁性の樹脂シートを透明基材30上に積層して形成することもできるし、透明基材30上に樹脂材料を塗布することにより形成することもできる。このような保持層31としては、例えば、ポリビニルブチラール(PVB)、2液硬化性ウレタン接着剤、2液硬化性エポキシ接着剤等を用いることができる。また、後述のように、導電体付シート20を接合層13を介してガラス板11に接合(仮接合)した後に透明基材30を剥離する場合、保持層31に剥離層を含ませるようにしてもよい。また、保持層31にも赤外線吸収剤を含有させてもよい。
保持層31の厚さは、光透過性や、透明基材30と導電性パターン40との接合性等を考慮して、1μm以上100μm以下とすることができる。好ましくは、保持層31の厚さを1μm以上15μm以下とすることができる。
上記の通り、本発明においては、赤外線吸収剤32が、透明基材30、保持層31、または赤外線吸収剤32を含有する層33のいずれか、あるいはこれらの層の2層以上に含まれている。このように、赤外線吸収剤32が導電体付シート20を構成する層に含有されていることにより、発熱板のデフロスタとしての機能をより向上させることができる。この理由は定かではないが、発熱板を透過する熱線の一部を赤外線吸収剤32が吸収し、赤外線吸収剤32を含有する層(例えば透明基材30等)全体の温度が均一に上昇することにより、導電性パターンから発せられる熱と相まって、発熱板のデフロスタとしての機能が向上するものと考えられる。また、赤外線吸収剤32が導電体付シート20のいずれかの層に含有されることにより、自動車等のフロントガラスに適用すれば、夏期等の車中の温度上昇を抑えることもできる。
赤外線吸収剤は、赤外線波長帯域の電磁波を吸収し得る材料であれば、従来公知のものを使用することができるが、本発明においては特に波長780〜3000nmの範囲の電磁波(近赤外線)を吸収し得る材料を用いることが好ましい。このような材料としては、有機系赤外線吸収剤および無機系赤外線吸収剤のいずれか、または両方を併用して使用することができる。これらのなかでも、無機系赤外線吸収剤として知られる、複合タングステン酸化物微粒子を使用することが好ましい。複合タングステン酸化物微粒子は、一般式:MxWyOz(式中、M元素は、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、Iのうちから選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1.1、2.2≦z/y≦3.0)で表されるものである。このような複合タングステン酸化物は、波長800〜1100nmの範囲の電磁波(近赤外線)を吸収し得る材料であり、赤外線吸収剤として機能する。
上記した一般式MxWyOzで表記される複合タングステン酸化物微粒子は、六方晶、正方晶、立方晶の結晶構造を有する場合に耐久性に優れることから、当該六方晶、正方晶、立方晶から選ばれる1つ以上の結晶構造を含むことが好ましい。例えば、六方晶の結晶構造を持つ複合タングステン酸化物微粒子の場合であれば、好ましいM元素として、Cs、Rb、K、Tl、In、Ba、Li、Ca、Sr、Fe、Snの各元素から選択される1種類以上の元素を含む複合タングステン酸化物微粒子が挙げられる。これらの中でも、M元素としては、耐久性の点から、Cs(セシウム)であることが好ましい。
上記一般式において、添加されるM元素の添加量xは、0.001以上1.0以下が好ましく、更に好ましくは0.33付近が好ましい。これは六方晶の結晶構造から理論的に算出されるxの値が0.33であり、この前後の添加量で好ましい赤外線吸収特性が得られる。一方、酸素の存在量zは、2.2以上3.0以下が好ましい。例えば、Cs0.33WO3、Rb0.33WO3、K0.33WO3、Ba0.33WO3などを挙げることができる。これら複合タングステン酸化物微粒子は、各々単独で使用してもよいが、混合して使用してもよい。
また、上記複合タングステン酸化物微粒子の表面を、Si、Ti、Zr、Alのいずれか1種類以上の元素を含有する酸化物で被覆することが、耐候性をより向上させることができる点から好ましい。
複合タングステン酸化物微粒子の平均分散粒径は、導電体付シートを透明に維持する観点から、800nm以下であることが好ましく、更に好ましくは200nm以下、特に好ましくは100nm以下である。また、製造上の難度、含有せしめる材料中への均一分散性等を考慮すると、平均分散粒径は30nm以上とすることが好ましい。なお、ここでの平均分散粒径とは、体積平均粒径をいい、粒度分布・粒径分布測定装置(例えば、日機装(株)製、ナノトラック粒度分布測定装置)を用いて測定することができる。
また、透明基材30、保持層31および導電性パターン40以外の層として、赤外線吸収剤を含有する層33を別途設けてもよい。赤外線吸収剤を含有する層33は、例えば、透明基材30と導電性パターン40との間に設けてもよく、また、透明基材30の導電性パターン40が設けられた側とは反対側に設けることもできる。また、図5に示すように、透明基材30と導電性パターン40との間に赤外線吸収剤32を含有する層33を設けてもよく、あるいは、図6に示すように透明基材30の導電性パターン40が設けられた側とは反対側の両方に赤外線吸収剤32を含有する層33を設けてもよい。
赤外線吸収剤32を含有する層33は、上記した赤外線吸収剤を適当な樹脂に分散させることにより形成することができる。樹脂をしては、透明性が高いものであれば特に制限なく使用でき、例えばポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等を使用することができる。また、後記するように、導電体付シート20を一対のガラス板11,12の間に配置した発熱板10とする場合に、導電体付シート20とガラス板11.12との間に設けられる接合層13,14と同じ材料(例えばポリビニルブチラール等)を用いて赤外線吸収剤32を含有する層33を形成しておけば、赤外線吸収剤32を含有する層33が接合層13,14を兼ねることも可能である。
次に、図7〜図9を参照して、導電性パターン40について説明する。図7および図8は、いずれも導電体付シート20をそのシート面の法線方向から見た平面図である。図9は、図8の導電性パターン40の一部を拡大して示す図である。
導電性パターン40は、バッテリー等の電源7から、配線部15および接続部16を介して通電され、抵抗加熱により発熱する。そして、この熱が接合層13,14を介してガラス板11,12に伝わることで、ガラス板11,12が温められる。なお、図示は略すが、通常は、配線部15は電源7と導電性パターン40の接続部(バスバー電極)16との間に開閉器が挿入(直列に接続)される。そして、発熱板10の加熱が必要な時のみ開閉器を閉じて導電性パターン40に通電する。また、発熱板10の加熱が不要な時は、開閉器を開き、導電性パターン40への電流を遮断する。電源7としては、自動車に設置する場合は、附帯する鉛蓄電池、リチウムイオン蓄電池等の電池を利用することができるが、別途専用の電源(電池、発電機等)を用いても良い。電動機を動力とする鉄道車両の場合は架線から給電された電力を適宜の電圧及び電流に変換して用いることもできる。
図7に、導電性パターン40のパターン形状の一例を示す。図7に示された例では、一対の接続部16を連結する複数の導電性細線41を有している。図示された例では、複数の導電性細線41は、それぞれ波線状のパターンで一方の接続部16から他方の接続部16へ延在している。複数の導電性細線41は、当該導電性細線41の延在方向と非平行な方向に、互いから離間して配列されている。とりわけ、複数の導電性細線41は、当該導電性細線41の延在方向と直交する方向に配列されている。各導電性細線41は、波線状のパターンの他に、直線状、折れ線状または正弦波状等のパターンで一対の接続部16の間を延びていてもよい。
図8および図9に、導電性パターン40のパターン形状の他の例を示す。図8および図9に示された例では、導電性パターン40の導電性細線41は、多数の開口領域44を画成するメッシュ状のパターンで配置されている。導電性パターン40は、2つの分岐点43の間を延びて、開口領域44を画成する複数の接続要素45を含んでいる。すなわち、導電性パターン40の導電性細線41は、両端において分岐点43を形成する多数の接続要素45の集まりとして構成されている。
図8および図9に示された例では、導電性パターン40の多数の開口領域44は、繰返し規則性(周期的規則性)を有しない形状およびピッチで配列されている。とりわけ図示された例では、多数の開口領域44が、隣接母点間距離がある上限値および下限値内に分布するランダム2次元分布した母点から生成されるボロノイ図における各ボロノイ領域と一致するように配列されている。言い換えると、導電性パターン40の各接続要素45は、ボロノイ図におけるボロノイ領域の各境界と一致している。また、導電性パターン40の各分岐点43は、ボロノイ図におけるボロノイ点と一致している。なお、このボロノイ図は、例えば特開2012−178556号公報、特開2013−238029号公報等に開示されているような公知の方法によって得られるので、ここではボロノイ図の作成方法についての詳細な説明は省略する。
導電性パターンが、正方格子配列やハニカム配列等の、繰返し規則性(周期的規則性)を有する形状およびピッチで配列された多数の開口領域を有する場合、この多数の開口領域の配列の繰返し規則性に起因して、光芒が視認されることがある。光芒とは、例えば自動車のフロントウィンドウに対向車のヘッドライトの光が入射した場合等、発熱板に対して観察者と反対側から光が入射したときに、発熱板上で筋状等の所定のパターンに分散されて観察される現象であり、とりわけ導電性パターンの多数の開口領域が繰返し規則性を有する形状およびピッチで配列されている場合に、光芒が目立ちやすくなる傾向がある。そして、この光芒がドライバー等の観察者に視認されることは、観察者による発熱板を介した視認性を悪化させる。一方、図8および図9に示されているような、繰返し規則性(周期的規則性)を有しない形状およびピッチで配列された多数の開口領域44を有する導電性パターン40によれば、発熱板10に光芒が生じることを効果的に抑制することができる。
図8および図9に示された30の導電性パターン40では、1つの分岐点43から延び出す接続要素45の数の平均が3.0より大きく4.0未満となっている。このように1つの分岐点43から延び出す接続要素45の数の平均が3.0より大きく4.0未満となっている場合、ハニカム配列から規則性を崩したパターンとすることができる。1つの分岐点43から延び出す接続要素45の数の平均を3.0より大きく4.0未満とした場合、開口領域44の配列を不規則化して、開口領域44が繰返規則性(周期性)を持って並べられた方向が安定して存在しないようにすることが可能となり、結果として、発熱板10に光芒が生じることをより効果的に抑制することができる。同時に、接続要素45の配列が、ハニカム配列を基準としていることから、接続要素45が均一に分散され、結果として、発熱ムラを効果的に抑制することも可能となる。
なお、1つの分岐点43から延び出す接続要素45の数の平均は、厳密には、導電性パターン40内に含まれる全ての分岐点43について、延び出す接続要素45の数を調べてその平均値を算出することになる、ただし、実際的には、導電性細線41によって画成された1つあたりの開口領域44の大きさ等を考慮した上で、1つの分岐点43から延び出す接続要素45の数の全体的な傾向を反映し得ると期待される面積を持つ1区画内において、調査すべき対象の数のばらつきの程度を考慮して適当と考えられる数の分岐点43について、各分岐点43から延び出す接続要素45の数を調べてその平均値を算出し、算出された値を当該導電性パターン40についての1つの分岐点43から延び出す接続要素45の数の平均値として取り扱うようにしてもよい。例えば、導電性パターン40の300mm×300mmの領域内に含まれる100箇所の分岐点43から延び出す接続要素45の数を光学顕微鏡や電子顕微鏡を用いて計数して算出した平均値を、当該導電性パターン40についての1つの分岐点43から延び出す接続要素45の数の平均値として取り扱うことができる。
図8および図9に示された導電性パターン40では、導電性パターン40は、4本、5本、6本および7本の接続要素45によって周囲を取り囲まれた開口領域44をそれぞれ含み、導電性パターン40に含まれた開口領域44のうち、6本の接続要素45によって周囲を取り囲まれた開口領域44が最も多くなっている。すなわち、6本の接続要素45によって周囲を取り囲まれた開口領域44が、他の本数の接続要素45によって周囲を取り囲まれた開口領域44と比較して、より多く導電性パターン40に含まれている。
このような導電性パターン40では、開口領域44の配列が、同一形状の正六角形を規則的に配置してなるハニカム配列から、各開口領域の形状および配置の規則性を崩した配列、言い換えると、ハニカム配列を基準として各開口領域の形状および配置をランダム化した配列とすることができる。これにより、開口領域44の配列に明らかな粗密が生じてしまうことを抑制することができ、多数の開口領域44を概ね均一な密度で、すなわち概ね一様に分布させることができる。結果として、発熱ムラを効果的に抑制することができる。また、開口領域44の配列を完全に不規則化すること、すなわち、開口領域44が規則的に配列された方向が存在しないようにすることが、安定して可能となる。したがって、発熱板10に光芒が生じることをさらに効果的に抑制することができる。
なお、1つの開口領域44を取り囲む接続要素45の数は、厳密には、導電性パターン40内に含まれる全ての開口領域44について、当該開口領域44を取り囲む接続要素45の数を調査することになる、ただし、実際的には、導電性細線41によって画成された1つあたりの開口領域44の大きさ等を考慮した上で、1つの開口領域44を取り囲む接続要素45の数の全体的な傾向を反映し得ると期待される面積を持つ1区画内において、調査すべき対象の数のばらつきの程度を考慮して適当と考えられる数の開口領域44について、各開口領域44を取り囲む接続要素45の数を調べ、周囲を取り囲む接続要素45の本数ごとの開口領域44の数を積算するようにしてもよい。例えば、導電性パターン40の300mm×300mmの領域内に含まれる100個の開口領域44のそれぞれを取り囲む接続要素45の数を光学顕微鏡や電子顕微鏡を用いて計数し、周囲を取り囲む接続要素45の本数ごとの開口領域44の数を積算した値を用いて、当該導電性パターン40について。何本の接続要素45によって周囲を取り囲まれた開口領域44が最も多くなっているかを判定することができる。
なお、このような導電性パターン40を構成するための材料としては、例えば、金、銀、銅、白金、アルミニウム、クロム、モリブデン、ニッケル、チタン、パラジウム、インジウム、タングステン等の金属、及び、ニッケル−クロム合金、真鍮、青銅等のこれら例示の金属の中から選択した二種以上の金属の合金の一以上を例示することができる。
導電性パターン40は、従来既知の方法によって、透明基材30(保持層31が存在する場合は保持層31上)に形成することができる。例えば、透明基材30上に、上記した金属の箔を積層し、箔を所望のパターンにエッチングする方法や、上記した金属からなる微粒子を含有する導電性インキを透明基材30上に所望のパターンで印刷し、更に形成したパターン表面に、上記した金属の薄膜をメッキする方法等が挙げられる。以下、箔をエッチングして導電性パターンを形成する方法について詳述する。
まず、金属箔を準備し、この金属箔の片面に暗色膜を形成する。金属箔は、導電性細線の導電性金属層を形成するようになる。また、暗色膜は、導電性細線の暗色層を形成するようになる。金属箔の厚さは、1μm以上50μm以下とすることができる。また、金属箔をなす材料の一部分に暗色化処理(黒化処理)を施して、金属箔をなしていた一部分に、金属酸化物や金属硫化物からなる被膜を形成することにより、金属箔の一方の面に暗色膜を設けることができる。暗色膜が形成された金属箔を、暗黒膜と保持層とが対面するようにして、保持層が形成された透明基材と積層することにより、暗色化処理(黒化処理)により粗面化された暗色膜表面の微細な凹凸に保持層31を構成する樹脂材料が入り込むため、いわゆるアンカー効果により、暗色膜と保持層とが強固に接合される。これにより、金属箔と透明基材とが強固に接合される。
次に、金属箔上に、レジストパターンを設ける。レジストパターンは、形成されるべき導電性パターンのパターンに対応したパターンとなっている。このようなレジストパターンは、公知のフォトリソグラフィー技術を用いたパターニングにより形成することができる。続いて、レジストパターンをマスクとして、暗色膜を含む金属箔をエッチングする。このエッチングにより、暗色膜を含む金属箔がレジストパターンと略同一のパターンにパターニングされる。エッチング加工に用いる腐食液は、金属箔および(暗色膜が存在する場合は)暗色膜の材料に応じて公知の腐食液を適宜選択して用いることができる。例えば、金属箔が銅であり、暗色膜が酸化銅(II)(CuO)の場合には、金属箔および暗色膜ともに塩化第二鉄水溶液を用いるか、あるいは金属箔部分(銅)は塩化第二鉄水溶液を、暗色膜(酸化銅(II))部分には希塩酸を用いることができる。その後、レジストパターンを除去することにより導電体付シート20が作製される。
上述した実施の形態では、導電性パターン40に含まれる複数の接続要素45は、それぞれ発熱板10の板面の法線方向から見て直線状(直線分)をなしていたが、これに限らず、複数の接続要素45のうちの少なくとも一部が、発熱板10の板面の法線方向から見て直線状以外の形状、例えば曲線状または折れ線状の形状を有してもよい。具体的には、円弧状、放物線状、波線状、ジグザグ状、曲線と直線との組み合わせ等の形状を有してもよい。とりわけ、2つの分岐点43の間を直線(直線分)として接続する接続要素45が、複数の接続要素45のうちの20%未満である、すなわち、複数の接続要素45のうちの80%以上が直線(直線分)以外の形状を有している、ことが好ましい。
このような、直線(直線分)以外の形状の接続要素45を含む導電性パターン40によれば、曲線状、折れ線状等の形状を有する接続要素45の側面に入射した光は、当該側面で乱反射する。これにより、当該接続要素45の側面に一定の方向から入射した光(対向車のヘッドライトの光や太陽光等)が、その入射方向に対応して当該側面で一定の方向に反射することが抑制される。したがって、この反射光がドライバー等の観察者に視認されて、接続要素45を有する導電性パターン40が観察者に視認されることを、抑制することができる。結果として、導電性パターン40が視認されることによる、観察者による窓ガラスを介した視認性の悪化を抑制することができる。
また、上述した実施の形態では、導電性パターン40は、ボロノイ図に基づいて決定された、すなわち多数の開口領域44が繰返し規則性(周期的規則性)を有しない形状およびピッチで配列された、パターンを有しているが、このようなパターンに限られず、導電性パターン40は、三角形、四角形、六角形等の同一形状の開口領域が規則的に配置されたパターン、異形状の開口領域が規則的に配置されたパターン等、種々のパターンを用いてもよい。
次に、導電体付シート20を用いた発熱体10について説明する。発熱板10は、ガラス板11、接合層13、導電体付シート20、接合層14、ガラス板12をこの順に重ね合わせ、加熱・加圧することにより製造することができる。発熱板の製造方法の一例として、まず接合層13をガラス板11に、接合層14をガラス板12に、それぞれ仮接着する。次に、ガラス板11,12の接合層13,14が仮接着された側が、それぞれ導電体付シート20に対向するようにして、接合層13が仮接着されたガラス板11、導電体付シート20、接合層14が仮接着されたガラス板12をこの順に重ね合わせ、加熱・加圧する。これにより、ガラス板11、導電体付シート20およびガラス板12が、接合層13,14を介して接合され、図3に示す発熱板10が製造される。
なお、上述した実施の形態に対して様々な変更を加えることが可能である。以下、図面を適宜参照しながら、変形例について説明する。以下の説明および以下の説明で用いる図面では、上述した実施の形態と同様に構成され得る部分について、上述の実施の形態における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いることとし、重複する説明を省略する。
図10〜図13を参照して、発熱板10の製造方法の変形例について説明する。図10〜図13は、発熱板10の製造方法の変形例を順に示す断面図である。
まず、導電体付シート20を作製する。導電体付シート20は、上述した製造方法の一例において説明した方法により作製することができる。
次に、接合層13をガラス板11に仮接着する。次に、ガラス板11の接合層13が仮接着された側が、導電体付シート20に対向するようにして、接合層13が仮接着されたガラス板11を、導電体付シート20の導電性パターン40の側から重ね合わせ、加熱・加圧する。これにより、図10に示すように、ガラス板11および導電体付シート20が、接合層13を介して接合(仮接合または本接合)される。
次に、図11に示されているように、導電体付シート20の透明基材30を除去する。例えば、保持層31が剥離層を含むように形成されている場合、導電体付シート20の透明基材30を、この剥離層を用いて導電性パターン40および接合層13から剥離することができる。
剥離層としては、例えば界面剥離型の剥離層、層間剥離型の剥離層、凝集剥離型の剥離層等を用いることができる。界面剥離型の剥離層としては、透明基材30との密着性と比べて、導電性パターン40および接合層13との密着性が相対的に低い剥離層を好適に用いることができる。このような層としては、シリコーン樹脂層、フッ素樹脂層、ポリオレフィン樹脂層等が挙げられる。また、導電性パターン40および接合層13との密着性と比べて、透明基材30との密着性が相対的に低い剥離層を用いることもできる。層間剥離型の剥離層としては、複数層のフィルムを含み、導電性パターン40および接合層13や、透明基材30との密着性と比べて、当該複数層間相互の密着性が相対的に低い剥離層を例示することができる。凝集剥離型の剥離層としては、連続相としてのベース樹脂中に分散相としてのフィラーを分散させた剥離層を例示することができる。
剥離層として、透明基材30との密着性と比べて、導電性パターン40および接合層13との密着性が相対的に低い層を有する界面剥離型の剥離層を用いた場合、剥離層と導電性パターン40および接合層13との間で剥離現象が生じる。この場合、剥離層が、導電性パターン40および接合層13側に残らないようにすることができる。すなわち、透明基材30は、剥離層とともに除去される。このようにして透明基材30および剥離層が除去されると、導電性パターン40の開口領域43内に、接合層13が露出するようになる。
その一方で、剥離層として、導電性パターン40および接合層13との密着性と比べて、透明基材30との密着性が相対的に低い界面剥離型の剥離層を用いた場合には、剥離層と透明基材30との間で剥離現象が生じる。剥離層として、複数層のフィルムを有し、導電性パターン40および接合層13や、透明基材30との密着性と比べて、当該複数層間相互の密着性が相対的に低い層間剥離型の剥離層を用いた場合には、当該複数層間で剥離現象が生じる。剥離層として、連続相としてのベース樹脂中に分散相としてのフィラーを分散させた凝集剥離型の剥離層を用いた場合には、剥離層内での凝集破壊による剥離現象が生じる。
最後に、ガラス板11、接合層13および導電性パターン40に、接合層14を介してガラス板12を重ね合わせ、加熱・加圧する。具体的には、接合層14をガラス板12に仮接着し、次いで、ガラス板12の接合層14が仮接着された側が、導電性パターン40および接合層13に対向するようにして、ガラス板11、導電性パターン40および接合層13、接合層14が仮接着されたガラス板12をこの順に重ね合わせ、加熱・加圧する。これにより、ガラス板11、導電性パターン40、ガラス板12が、接合層13,14を介して接合(本接合)され、図12に示す発熱板10が製造される。
図12に示された発熱板10によれば、導電体付シート20を用いて発熱板10を製造した場合であっても、発熱板に透明基材30が含まれないようにすることができる。これにより、発熱板10全体の厚みを小さくすることができる。また、発熱板10内の界面数を低減することができる。したがって、光学特性の低下すなわち視認性の低下を抑制することができる。
次に、図13を参照して、発熱板10の製造方法の他の変形例について説明する。図13は、発熱板10の製造方法の他の変形例を順に示す断面図である。
まず、上述の発熱板10の製造方法の変形例と同様の工程により、ガラス板11および導電体付シート20が、接合層13を介して接合(仮接合)されたものを作製し、ここから透明基材30を除去する。すなわち、上述の発熱板10の製造方法の変形例で図16を参照して説明した、ガラス板11、導電性パターン40および接合層13が積層されたものを得る。
次に、ガラス板11、接合層13および導電性パターン40、ガラス板12をこの順に重ね合わせ、加熱・加圧する。これにより、ガラス板11と導電性パターン40とが接合層13を介して接合(本接合)され、且つ、ガラス板11とガラス板12とが接合層13を介して接合(本接合)される。そして、図13に示す発熱板10が製造される。
図13に示された発熱板10によれば、導電体付シート20を用いて発熱板10を製造した場合であっても、発熱板10が透明基材30および接合層14を含まないようにすることができる。これにより、発熱板10全体の厚みをさらに小さくすることができる。また、発熱板10内の界面数をさらに低減することができる。したがって、光学特性の低下すなわち視認性の低下をさらに効果的に抑制することができる。加えて、導電性パターン40とガラス板12とが接触しているので、導電性パターン40によるガラス板12の加熱効率を上げることができる。
発熱板10は、自動車1のリアウィンドウ、サイドウィンドウやサンルーフに用いてもよい。また、自動車以外の、鉄道車両、航空機、船舶、宇宙船等の乗り物、事務所、店舗、、病院等の建物、冷蔵庫、展示箱、戸棚等の収納乃至保管設備の窓あるいは扉の透明部分に用いてもよい。
さらに、発熱板10は、乗り物以外にも、特に室内と室外とを区画する箇所、例えばビルや店舗、住宅の窓あるいは扉の透明部分等に使用することもできる。
なお、以上において上述した実施の形態に対するいくつかの変形例を説明してきたが、当然に、複数の変形例を適宜組み合わせて適用することも可能である。