JP2017155847A - 遮熱層及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】基材に形成される遮熱層の熱収縮によるクラックに対策する遮熱層を提供する。
【解決手段】基材1に形成された遮熱層11は、多数の中空粒子12と中空粒子を基材に保持すると共に上記中空粒子間を埋めて当該遮熱層の母材を形成するシリコーン系バインダ13とを備え、このバインダにナノ粒子14が分散している。熱収縮によって内部に発生する引張応力がバインダ中のナノ粒子によって分散されて、不均一な応力集中が防がれる。そのため、遮熱層の熱収縮によるクラックの発生が抑制され、また、クラックが入っても、その進展が抑制される。
【選択図】図3

Description

本発明は遮熱層及びその製造方法に関する。
産業機器や民生機器では、エネルギー効率を高めるために、従来より各種の遮熱材が使用され、また、遮熱材の研究開発も行なわれている。例えば、自動車においては、エンジンの熱効率を高めるために、燃焼室の壁面に設ける遮熱層の研究開発が進められている。また、排気系やEGRクーラ等から廃熱を回収することも自動車の重要なニーズの一つであり、そのために効率の良い遮熱材が求められている。
エンジンの燃焼室壁面に遮熱層を設ける方法に関して、古くは、ZrOをはじめとする無機酸化物粒子をプラズマ溶射することが知られ、無機酸化物粒子として中空粒子を使用することも知られている。特許文献1には、バインダ(シリコーン樹脂)中に多数の中空粒子が分散してなる遮熱層をエンジンの燃焼室壁面に形成すること、並びに、中空粒子と液状バインダを混合してなるゾル状の遮熱材料をスプレー等で基材に塗布した後に加熱硬化させることが記載されている。特許文献2には、中空粒子としての多数のガラスビーズをジルコニアバインダに分散させてなる遮熱層について記載されている。
特開2014−001718号公報 WO2009/020206号公報
遮熱層の遮熱性能自体は中空粒子の充填量の調整等によって比較的高いレベルまで高めることが可能となるが、高熱に晒され、さらには高圧が加わる遮熱層の場合はその耐久性の確保が問題になる。
本発明者の研究によれば、遮熱層が高熱・高圧を受けたときには、遮熱層にその表面からクラックが入り、そのクラックの進展によって遮熱層が表面側から欠けていくケースが多いことがわかった。遮熱層は高熱に晒されて収縮するところ、その収縮変形が基材によって拘束されているために内部に引張応力が発生する。この引張応力がバインダの引張強度を上回ると、遮熱層にその表面側からクラックが入っていく。クラックは、主としてバインダと中空粒子の界面に沿って進展する。中空粒子を割ってクラックが進展する場合もある。
クラックが遮熱層の表面から内部に入るだけであれば、遮熱性能が大きく低下することはない。しかし、遮熱層の熱収縮が繰り返されると、クラックの進展によってクラック同士が繋がり、その結果、遮熱層が表面側から欠けていき、所期の遮熱性能が得られなくなる。また、エンジンの燃焼室に形成された遮熱層の場合、クラックを生じた状態においてエンジンの異常燃焼が起こると、そのときに発生する衝撃波によって遮熱層が破壊され易くなるという問題がある。
そこで、本発明は、遮熱層の熱収縮によるクラックに対策することを課題とする。
本発明は、上記課題を解決するために、バインダにナノ粒子を分散させるようにした。
ここに開示する基材に形成された遮熱層は、多数の中空粒子と、この中空粒子を上記基材に保持すると共に上記中空粒子間を埋めて当該遮熱層の母材を形成するシリコーン系バインダとを備え、このバインダにナノ粒子が分散していることを特徴とする。
このような遮熱層によれば、熱収縮によって内部に発生する引張応力がバインダ中のナノ粒子によって分散されて、不均一な応力集中が防がれる。そのため、遮熱層の熱収縮によるクラックの発生が抑制され、また、クラックが入っても、その進展が抑制される。
好ましい実施形態では、上記バインダと上記ナノ粒子とが化学的に結合していることを特徴とする。ナノ粒子は比表面積が非常に大きいことから、その表面に官能基を有するとき、バインダとなるシリコーン樹脂の未反応シラノール基と反応し易くなる。バインダがナノ粒子と化学的に結合すると、バインダの熱分解が抑えられ、すなわち、熱分解して体積収縮することが抑えられ、クラックの発生及び進展の抑制に有利になる。
好ましい実施形態では、上記ナノ粒子はシリカよりなり、該ナノ粒子と上記バインダとがシラノール基の脱水縮合によってシロキサン結合していることを特徴とする。
好ましい実施形態では、上記ナノ粒子の少なくとも一部は中空状であることを特徴とする。これにより、遮熱性能の向上な有利になる。
上記遮熱層における上記ナノ粒子の含有量は0.5容量%以上10容量%以下であることが好ましい。ナノ粒子の含有量が10容量%を超えて多くなると、バインダによる中空粒子の保持効果が低くなる。ナノ粒子の含有量が0.5容量%未満になると、ナノ粒子による期待するクラック抑制効果が得られなくなる。
上記中空粒子の平均粒径(個数平均粒径)は30μm以下であることが好ましい。中空粒子のより好ましい平均粒径は10μm以下であり、さらに好ましいのは5μm以下である。このように中空粒子の粒径を小さくすると、遮熱層に多数の中空粒子を分散させることが可能になる。すなわち、遮熱層にその表面側から入るクラックは中空粒子によって進展が止められやすいところ、遮熱層に小さな中空粒子を多数分散させることによって、クラックの進展防止を図ることができる。
好ましい実施形態では、上記バインダには上記中空粒子が破砕されてなる破砕殻が含まれている。中空粒子の破砕殻が上記ナノ粒子と同様の働きをするため、クラックの抑制に有利になる。
上記遮熱層の好ましい製造方法は、
中空粒子と、バインダ用の反応性シリコーンと、該反応性シリコーンのシラノール基と反応して化学的に結合する官能基を有するナノ粒子との混合物を調製する工程と、
上記混合物を基材に塗布する工程と、
上記基材に塗布された混合物を焼成する工程とを備え、
上記焼成により、上記反応性シリコーンを架橋硬化させるとともに、上記ナノ粒子をその官能基によって反応性シリコーンに化学的に結合させて、上記基材に上記中空粒子とナノ粒子とバインダよりなる遮熱層を形成することを特徴とする。
上記製造方法の好ましい実施形態では、上記混合物を上記基材に塗布する前に、上記混合物に超音波を印加して上記中空粒子の一部を破砕する工程を備えている。
本発明によれば、遮熱層は、多数の中空粒子と当該遮熱層の母材を形成するシリコーン系バインダとを備え、このバインダにナノ粒子が分散しているから、熱収縮によって内部に発生する引張応力がバインダ中のナノ粒子によって分散されて、不均一な応力集中が防がれるため、クラックの抑制に有利になる。
本発明の適用例であるエンジンの断面図。 上記エンジンのピストン頂面の遮熱層を示す断面図。 上記遮熱層の一部を拡大した断面図。 微細バルーンを含有する遮熱層の断面の走査型電子顕微鏡写真。 微細バルーンの一部が破砕された遮熱層の断面の走査型電子顕微鏡写真。 遮熱層の耐熱性の温度依存性を示すグラフ図。 遮熱層の耐熱性の膜厚依存性を示すグラフ図。 ナノ粒子を含有する遮熱層とナノ粒子を含有しない遮熱層のTG曲線を示すグラフ図。
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
図1において、1は遮熱層が形成される基材としてのアルミニウム合金製ピストン、2はシリンダブロック、3はシリンダヘッド、4はシリンダヘッド3の吸気ポート5を開閉する吸気バルブ、6は排気ポート7を開閉する排気バルブ、8は燃料噴射弁である。エンジンの燃焼室は、ピストン1の頂面、シリンダブロック2、シリンダヘッド3、吸排気バルブ4,6の傘部前面(燃焼室に臨む面)で形成される。ピストン1の頂面には、キャビティ9が形成されている。なお、点火プラグの図示は省略している。
<遮熱層について>
図2に示すように、ピストン1の頂面に遮熱層11が形成されている。図3に示すように、遮熱層11は、無機酸化物よりなる多数の中空粒子12と、この中空粒子12をピストン1に保持すると共に中空粒子12間を埋めて当該遮熱層11の母材(マトリックス)を形成するシリコーン系のバインダ13とを備え、バインダ13にはナノ粒子14が分散している(図3では、ナノ粒子14を点々で表している。)。
遮熱層11の厚さ(以下、「膜厚」という。)は、例えば、40μm以上125μm以下となるように、好ましくは40μm以上100μm以下となるようにする。中空粒子12としては、遮熱層11の膜厚よりも小さいμmオーダの粒径のものを用いる。その平均粒径は、例えば30μm以下であることが好ましい。ナノ粒子13の平均粒径は、1nm以上200nm以下であることが好ましく、さらには、1nm以上100nm以下であることが好ましい。
但し、上記数値範囲はエンジンの燃焼室の壁面に遮熱層11を設ける場合の好ましい範囲であって、限定的なものではない。また、燃焼室の壁面以外の機器等に遮熱層を設ける場合は、中空粒子12の粒径及び遮熱層11の膜厚は、さらに小さく、あるいは大きくすることもできる。
中空粒子12としては、ガラスバルーン、ガラスバブル、フライアッシュバルーン、シラスバルーン、シリカバルーン等のSi系酸化物成分(例えば、シリカ)又はAl系酸化物成分(例えば、アルミナ)を含有するセラミック系中空粒子を採用することが好ましい。特に、表面が滑らかな球状のガラスバルーンを好ましく採用することができる。
バインダ13としては、例えば、メチルシリコーン樹脂、メチルフェニルシリコーン樹脂に代表される、分岐度の高い3次元ポリマーからなるシリコーン樹脂を好ましく用いることができる。シリコーン樹脂の具体例としては、例えばポリアルキルフェニルシロキサンを挙げることができる。
ナノ粒子13としては、ジルコニア、アルミナ、シリカ、チタニア等の無機化合物よりなる無機ナノ粒子、Ti、Zr、Al等の金属ナノ粒子等を採用することができ、特に、シリカよりなるナノバルーンを好ましく採用することができる。
<遮熱層の製造方法>
上記遮熱層は以下に述べる方法によって製造することができる。この製造方法は、中空粒子と、バインダ用の反応性シリコーンと、ナノ粒子との混合物を調製する工程と、この混合物を基材に塗布する工程と、この基材に塗布された混合物を焼成する工程とを備えている。この焼成により、反応性シリコーンを架橋硬化させて、上記基材に上記中空粒子とナノ粒子とバインダよりなる遮熱層を形成することができる。
ナノ粒子として、反応性シリコーンのシラノール基と反応して化学的に結合する官能基を有するシリカ等よりなるナノ粒子を採用すると、上記焼成により、反応性シリコーンを架橋硬化させるとともに、当該ナノ粒子をその官能基によって反応性シリコーンに化学的に結合させることができる。
上記混合物を基材に塗布する前に、必要に応じて、上記混合物に超音波を印加して上記中空粒子の一部を破砕する工程を設けることができる。
以下、当該製造方法の具体例を説明する。
ナノ粒子と、このナノ粒子の約4倍の重量の反応性シリコーンを遊星運動する自転・公転ミキサーに投入し、自転回転数2000rpm×5分間の混合→5分以上の冷却を2回繰り返す固練混合を行なう。この固練混合物に残りの反応性バインダと粘稠用希釈溶媒を加え、自転回転数2000rpm×5分間の混合を行なう。混合はいずれも大気圧で行なうことができる。
得られた混合物に中空粒子を加え、シャフトジェネレータ型の刃を有するディスパーサで攪拌(4000rpm×10分間)することにより、中空粒子をナノ粒子入りバインダに分散させる。この中空粒子が分散した混合物を所定の容器に入れ、超音波装置によって超音波を当該混合物に5〜60分間印加する。これにより、中空粒子の一部が超音波破砕された遮熱材料が得られる。
上記遮熱材料を基材の遮熱を要する面にスプレーで塗布する。そして、その遮熱材料を加熱焼成して遮熱層を形成する。
<遮熱層の評価>
−サンプル1−
中空粒子としてのアルミノシリケート製微細バルーン(平均粒径3〜7μm,中空率80%)、反応性シリコーンとしての信越化学社製シリコーン樹脂KR−251、並びに無機ナノ粒子としてのシリカ製ナノバルーン(平均粒径100nm,中空率57%)を準備した。KR−251は、メチル系ストレートシリコーン樹脂を二官能化させ、さらに高分子化させたものである。
上記準備した材料を用い、上記製造方法の具体例で説明した方法によってアルミニウム合金製の板状基材の表面に遮熱層を形成した。
遮熱層の膜厚は75μmである。微細バルーンの仕込み量は45容量%であるが、その一部が超音波破砕されて破砕殻の状態になっているから、遮熱層における中空状態の微細バルーンの含有量は40〜43容量%程度になっている。ナノバルーンの含有量は10容量%である。サンプル1を以下では「ナノバルーン+微細バルーン破砕」と標記する。
−サンプル2−
中空粒子としてホウケイ酸ガラス製のガラスバルーン(平均粒径20μm,中空率80%)と、反応性シリコーンとしてのKR−251とを準備した。このガラスバルーンとKR−251をディスパーサで攪拌混合し、得られた混合物(遮熱材料)をサンプル1と同様に基材にスプレーで塗布し、加熱焼成して遮熱層を形成した。
このサンプル2の遮熱層は、ナノ粒子を含有せず、また、ガラスバルーンの破砕も行なわれていない。遮熱層の膜厚は75μmであり、ガラスバルーンの含有量は48容量%である。サンプル2を以下では「ガラスバルーン」と標記する。
−サンプル3−
中空粒子としてガラスバルーンに代えてアルミノシリケート製微細バルーン(平均粒径3〜7μm,中空率80%)を採用する他は、サンプル2と同様にして遮熱層を形成した。
このサンプル3の遮熱層は、ナノ粒子を含有せず、また、微細バルーンの破砕も行なわれていない。遮熱層の膜厚は75μmであり、微細バルーンの含有量は50容量%である。図4は遮熱層の断面の走査型電子顕微鏡写真である。多数の水玉様のものが微細バルーンである。サンプル3を以下では「微細バルーン」と標記する。
−サンプル4−
中空粒子としての微細バルーンと反応性シリコーンとしてのKR−251をディスパーサで攪拌混合した後に、微細バルーンの一部を超音波破砕する工程を追加する他は、サンプル3と同様にして遮熱層を形成した。
このサンプル4の遮熱層は、膜厚が75μmであり、ナノ粒子を含有しない。微細バルーンの仕込み量は50容量%であるが、その一部が超音波破砕されて破砕殻の状態になっているから、遮熱層における中空状態の微細バルーンの含有量は45〜48容量%程度になっている。図5は遮熱層の断面の走査型電子顕微鏡写真である。半円状に写っているものが微細バルーンの破砕殻15であり、破砕殻の内にもバインダが入っている。サンプル4を以下では「微細バルーン破砕」と標記する。
[耐熱試験(耐熱性の温度依存性)]
サンプル1〜4を加熱してその温度を室温から500℃まで1時間をかけて上昇させ、500℃に6時間保持した後に室温まで冷却するという加熱処理を行なった。これを以下では500℃耐熱試験という。この耐熱試験前後の遮熱層の鉛筆硬度(引っ掻き硬さ)を調べた。サンプル1については、800℃に6時間保持する800℃耐熱試験後の鉛筆硬度についても調べた。
ここに、サンプル2の仕様でアルミニウム合金製ピストンに膜厚75μmの遮熱層を形成したケースにおいて、台上エンジンでの高負荷耐久試験(エンジン回転数4000rpm,スロットル全開,200時間運転)では、遮熱層の損傷は認められなかった。この試験では、遮熱層の表面温度が400〜450℃になるところ、試験後の遮熱層の鉛筆硬度は3Bであった。従って、上記耐熱試験後の遮熱層の鉛筆硬度が3B以上であれば、エンジン実機においても所期の耐熱性が得られると見込まれる。
上記耐熱試験の結果を図6に示す。まず、耐熱試験前の鉛筆硬度をみると、サンプル4(微細バルーン破砕)は、サンプル2(ガラスバルーン)及びサンプル3(微細バルーン)に比べて、鉛筆硬度が高くなっており、サンプル1(微細バルーン破砕+ナノバルーン)は鉛筆硬度がサンプル4(微細バルーン破砕)よりもさらに高くなっている。このことから、微細バルーンの一部を破砕し破砕殻状態にしてバインダに分散させると、バインダの補強効果が得られること、また、バインダへのナノバルーンの添加によって補強効果が得られることがわかる。ナノバルーンを介してシリコーン樹脂が架橋した状態になり、補強効果が得られていると考えられる。
次に500℃耐熱試験後の鉛筆硬度をみると、サンプル4(微細バルーン破砕)は、サンプル2(ガラスバルーン)及びサンプル3(微細バルーン)に比べて、鉛筆硬度が高くなっているが、「3B」までには至っていない。これに対して、サンプル1(微細バルーン破砕+ナノバルーン)は鉛筆硬度「1H」になっている。これから、ナノバルーンの添加が耐熱性の向上に大きな効果があることがわかる。サンプル1の場合、800℃耐熱試験後でも、鉛筆硬度が「3B」よりも硬い「B」になっている。
これは、熱収縮によってバインダの内部に発生する引張応力がバインダ中のナノバルーンによって分散されて、不均一な応力集中が防がれること(クラックの抑制)、ナノバルーンがバインダとしてのシリコーン樹脂のシラノール基に化学的に結合し、そのため、未反応シラノール基が少なくなっていること(バインダの熱分解がナノバルーンで抑制され、バインダの体積収縮が小さくなっていること)、並びにナノバルーンによるバインダの補強効果が得られていることによると考えられる。
また、500℃耐熱試験後の鉛筆硬度について、サンプル4(微細バルーン破砕)とサンプル3(微細バルーン)の硬度差よりも、サンプル1(微細バルーン破砕+ナノバルーン)とサンプル4(微細バルーン破砕)の硬度差の方が格段に大きい。すなわち、微細バルーンの一部を破砕することによる耐熱性向上効果よりも、ナノバルーンの添加による耐熱性向上効果の方が大きい。このことから、微細バルーンの一部を破砕しないケース、さらにはサンプル2のように中空粒子としてガラスバルーンを採用するケースにおいても、ナノバルーンを添加すれば、遮熱層の耐熱性が大きく向上することが見込まれる。
[耐熱試験(耐熱性の膜厚依存性)]
サンプル1〜4の各仕様において、膜厚を変えた遮熱層を形成し、500℃耐熱試験後の遮熱層の鉛筆硬度を調べた。結果を図7に示す。
サンプル1〜4のいずれにおいても、膜厚が大きくなるほど鉛筆硬度が低くなっている。これは、膜厚が大きくなるほど、遮熱層表面側の熱収縮が大きくなってクラックを生じ易くなるためである。
そうして、各サンプルの膜厚依存性をみると、サンプル2(ガラスバルーン)及びサンプル3(微細バルーン)の場合、膜厚が30μm以下程度の薄いケースでは、鉛筆硬度が「3B」よりも高いが、膜厚が厚くなると、「3B」よりも低くなっている。サンプル4(微細バルーン破砕)においても、鉛筆硬度が「3B」よりも高くなるのは、膜厚が70μm以下の場合である。
これに対して、サンプル1(微細バルーン破砕+ナノバルーン)では、膜厚が100μmを超えても、鉛筆硬度が「3B」よりも高い。これから、サンプル1の仕様であれば、遮熱層の膜厚を大きくして遮熱性能を高めることができることがわかる。
[耐熱試験(ナノバルーン含有量が耐熱性与える影響)]
サンプル1(微細バルーン破砕+ナノバルーン)の仕様において、ナノバルーンの含有量を変えて800℃耐熱試験後の鉛筆硬度を調べた。いずれも遮熱層の膜厚は75μmとし、微細バルーンの仕込み量は45容量%とした。結果を表1に示す。
表1によれば、ナノバルーン含有量が少ない方が耐熱性が高いという結果になっており、遮熱層のナノバルーン含有量は10容量%以下であることが好ましく、高熱に晒されるケースでは4容量%以下、さらには2容量%以下であること、さらには1容量%以下であることが好ましいということができる。また、表1に示す試験結果によれば、ナノバルーン含有量が1容量%であるときの耐熱性が最も良いことから、ナノバルーン含有量が0.5容量%程度であっても、高い耐熱性能が得られることが見込まれる。
[遮熱層の熱重量減少(TG)分析]
サンプル1(微細バルーン破砕+ナノバルーン)の仕様で調製したナノバルーン含有量が2容量%の試料と、サンプル4(微細バルーン破砕)の仕様で調製したナノバルーン含有量が0容量%の試料について、熱重量減少分析を行なった。その結果(TG曲線)を図8に示す。図8では、「ナノバルーン」を「ナノ粒子」と表記し、含有量については「容量%」を単に「%」と表記している。
同図によれば、ナノバルーン含有量が2容量%のケースでは、TG曲線が0容量%のケースよりも高温側にシフトしており、ナノバルーンの添加によって、シリコーン樹脂(バインダ)の熱分解が抑制されていることがわかる。このナノバルーンの添加によるシリコーン樹脂の熱分解の抑制も、遮熱層の耐熱性向上に寄与していると認められる。
なお、上記実施形態では、本発明に係る遮熱層をピストン1の頂面に適用したが、これに限らず、シリンダヘッド3の下面などエンジンの燃焼室を構成する他の面に遮熱層を形成するようにしてもよい。さらには、本発明は、エンジンに限らず、その他の遮熱が要求される産業機器や民生機器にも適用することができる。
1 ピストン(基材)
11 遮熱層
12 中空粒子
13 バインダ
14 ナノ粒子

Claims (8)

  1. 基材に形成された遮熱層であって、
    多数の中空粒子と、
    上記中空粒子を上記基材に保持すると共に上記中空粒子間を埋めて当該遮熱層の母材を形成するシリコーン系バインダとを備え、
    上記バインダにナノ粒子が分散していることを特徴とする遮熱層。
  2. 請求項1において、
    上記バインダと上記ナノ粒子とが化学的に結合していることを特徴とする遮熱層。
  3. 請求項2において、
    上記ナノ粒子はシリカよりなり、該ナノ粒子と上記バインダとがシラノール基の脱水縮合によってシロキサン結合していることを特徴とする遮熱層。
  4. 請求項1乃至請求項3のいずれか一において、
    上記ナノ粒子の少なくとも一部は中空状であることを特徴とする遮熱層。
  5. 請求項1乃至請求項4のいずれか一において、
    上記遮熱層における上記ナノ粒子の含有量が0.5容量%以上10容量%以下であることを特徴とする遮熱層。
  6. 請求項1乃至請求項6のいずれか一において、
    上記バインダには上記中空粒子が破砕されてなる破砕殻が含まれていることを特徴とする遮熱層。
  7. 中空粒子と、バインダ用の反応性シリコーンと、該反応性シリコーンのシラノール基と反応して化学的に結合する官能基を有するナノ粒子との混合物を調製する工程と、
    上記混合物を基材に塗布する工程と、
    上記基材に塗布された混合物を焼成する工程とを備え、
    上記焼成により、上記反応性シリコーンを架橋硬化させるとともに、上記ナノ粒子をその官能基によって反応性シリコーンに化学的に結合させて、上記基材に上記中空粒子とナノ粒子とバインダよりなる遮熱層を形成することを特徴とする遮熱層の製造方法。
  8. 請求項7において、
    上記混合物を上記基材に塗布する前に、上記混合物に超音波を印加して上記中空粒子の一部を破砕する工程を備えていることを特徴とする遮熱層の製造方法。
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