JP2012052528A - 冷却ファン - Google Patents

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Abstract

【課題】ブレード間にエアをスムーズに導入できるようにして、騒音発生の抑制とファン効率の向上を図ることのできる冷却ファンを提供する。
【解決手段】ボス部12から径方向外側に突出する複数のブレード13を、径方向外側の端部の近傍において、円筒状のリング部材14で連結する。リング部材14のエア吸い込み側の軸方向の端部にエア流入溝16を設ける。エア流入溝16は、リング部材14上の全ブレード13の回転方向の前部領域と隣接するブレード13の回転方向の前部領域の間に配置する。外周側から流入したエアは、リング部材14のエア流入溝16を通過し、緩やかに向きを変えてブレード13間に吸い込まれる。
【選択図】図3

Description

この発明は、自動車のラジエータ等に用いられる冷却ファンに関するものである。
この種の冷却ファンの多くは、エンジンや電動モータ等の回転駆動源に連結されるボス部に、径方向外側に突出する複数のブレードが設けられ、回転駆動源の動力によってブレードを旋回させて、冷却対象物にエアを送風する基本構造とされている。
ところで、このような冷却ファンにおいては、ブレードの肉厚を薄くすればファン効率を高めるうえで有利であることが知られているが、ブレードの肉厚を薄くすると、回転時にブレードが撓んでばたつきが生じ易くなる。
このため、ばたつきの抑制とブレードの肉薄化の両立を図った冷却ファンとして、複数のブレードの径方向外側の端部の近傍を円筒状のリング部材によって連結したものが案出されている(例えば、特許文献1参照)。
国際公開第2008/072516号明細書
この従来の冷却ファンでは、複数のブレードの端部の近傍がリング部材によって相互に連結されているため、外周側から流入するエアはリング部材を乗り越えてブレード間のスペースに吸い込まれる。
しかし、この従来の冷却ファンの場合、複数のブレードを連結するリング部材がブレードとほぼ同高さの円筒形状とされているため、外周側からブレード間のスペースに吸い込まれるエアは、リング部材のエア吸い込み側の端部を迂回してからファンの軸方向に急旋回することになる。そして、外周側から流入するエアがリング部材の端部で急旋回すると、エアの流速がその部分で局部的に高まり、そのことが騒音発生の原因となり易い。
また、従来の冷却ファンにおいては、外周側から流れ込むエアが上述のようにリング部材のエア吸い込み側の端部を迂回してブレード間のスペースに吸い込まれるため、エアが端部を迂回する分流路が長くなり、その分ファン効率が低下し易くなる。
そこでこの発明は、外周側からブレード間にエアをスムーズに導入できるようにして、騒音発生の抑制とファン効率の向上を図ることのできる冷却ファンを提供しようとするものである。
この発明に係る冷却ファンでは、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
請求項1に係る発明は、回転駆動源に連結されるボス部と、このボス部から径方向外側に突出する複数のブレードと、この複数のブレードの径方向外側の端部の近傍を環状に連結する筒状のリング部材と、を備えた冷却ファンにおいて、前記リング部材のエア吸い込み側の軸方向の端部にエア流入溝が設けられていることを特徴とするものである。
これにより、外周側から流れ込んだエアは、リング部材のエア流入溝を通ってブレード間のスペースに吸い込まれるようになる。エア流入溝は、リング部材のエア吸い込み側の軸方向の端部の一般面に対して窪んでいるため、外周側からブレード間のスペースに吸い込まれるエアは、急旋回せずにファンの軸方向に緩やかに向きを変えることになる。
請求項2に係る発明は、請求項1に係る冷却ファンにおいて、前記エア流入溝は、前記リング部材上の全ブレードの回転方向の前部領域と、隣接するブレードの回転方向の前部領域の間に配置されていることを特徴とするものである。
請求項3に係る発明は、請求項2に係る冷却ファンにおいて、前記リング部材のエア吐き出し側の軸方向の端部には、前記エア流入溝と円周方向でずれるように、肉抜き溝が設けられていることを特徴とするものである。
請求項4に係る発明は、請求項3に記載の冷却ファンにおいて、前記エア流入溝と前記肉抜き溝の深さが同じ深さに設定されていることを特徴とするものである。
請求項5に係る発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の冷却ファンにおいて、前記エア流入溝の深さと前記リング部材の軸方向の肉厚の比率が、0.10〜0.40の範囲に設定されていることを特徴とするものである。
請求項6に係る発明は、前記リング部材におけるエア吐き出し側の軸方向の端部には、前記ブレードの回転方向の後部領域に対応する箇所に、前記リング部材におけるエア吐き出し側の軸方向の端部の一般面より軸方向外側に向かって延出した壁部が設けられていることを特徴とするものである。
請求項7に係る発明は、前記肉抜き溝から前記リング部材のエア吸い込み側の軸方向の端部の一般面に至る間の高さをhとしたとき、前記エア流入溝から前記壁部の先端に至る間の高さは、1.2h〜1.3hの範囲に設定されていることを特徴とするものである。
請求項8に係る発明は、前記壁部は、前記リング部材におけるエア吐き出し側の軸方向の端部の一般面を基点に屈曲延出されていることを特徴とするものである。
請求項9に係る発明は、前記リング部材と前記壁部との間の角度は、15度〜30度の範囲に設定されていることを特徴とするものである。
請求項10に係る発明は、前記壁部は、前記リング部材上の全ブレードの回転方向の後部領域と、各々の後部領域に対応する位置に形成されている前記肉抜き溝との間に設けられていることを特徴とするものである。
請求項11に係る発明は、回転駆動源に連結されるボス部と、このボス部に一体的に、且つ径方向外側に向かって形成された複数のブレードと、これら複数のブレードの径方向外側の端部を環状に連結する筒状のリング部材とを備え、前記リング部材のエア吸い込み側の軸方向の端部にエア流入溝が設けられていることを特徴とするものである。
この発明によれば、リング部材のエア吸い込み側の軸方向の端部にエア流入溝が設けられ、外周側から流入するエアが、リング部材のエア流入溝を通って急旋回せずに軸方向に向きを変えてブレード間のスペースに吸い込まれるようになっているため、エアが急旋回することによるエアの流速の増大を抑制して、騒音の発生を未然に防止することができる。また、この発明によれば、外周側から流入するエアが、リング部材の軸方向の端部で大きく迂回せずに、エア流入溝を通ってブレード間に吸い込まれるため、ファン効率を確実に向上させることができる。
請求項2に係る発明によれば、エア流入溝が、リング部材上の全ブレードの回転方向の前部領域と、隣接するブレードの回転方向の前部領域の間に配置されているため、リング部材の外周側からエアを効率良く均等に吸い込むことができるとともに、円周方向の重量バランスを良好にすることができる。
請求項3に係る発明によれば、リング部材のエア吐き出し側の軸方向の端部に、エア流入溝と円周方向でずれるように、肉抜き溝が設けられていることから、円周方向の重量バランスをより高めることができる。
請求項4に係る発明によれば、エア流入溝と肉抜き溝の深さが同じ深さに設定されていることから、円周方向の重量バランスをさらに一層高めることができる。
請求項5に係る発明によれば、騒音の発生を確実に防止することできると共に、ファン効率の低下を防止することができる。
請求項6に係る発明によれば、リング部材におけるエア吐き出し側の軸方向の端部には、ブレードの回転方向の後部領域に対応する箇所に壁部が設けられているので、エアがブレードの回転方向の後方側の端部を通過した後でもリング部材の外側にエアが流れ出ることを抑制できる。このため、さらに確実にファンの騒音を低減することができる。
請求項7に係る発明によれば、壁部の軸方向高さを規制することにより、ファンの騒音を効果的に低減することができる。
請求項8に係る発明によれば、壁部を、リング部材におけるエア吐き出し側の軸方向の端部の一般面を基点に屈曲延出することにより、ファン効率を下げることなくファンの騒音を確実に低減できる。
請求項9に係る発明によれば、壁部の角度を規制することにより、ファンの騒音を効果的に低減することができる。
請求項10に係る発明によれば、リング部材上の全ブレードの回転方向の後部領域と、各々の後部領域に対応する位置に形成されている肉抜き溝との間に壁部を設けているので、肉抜き溝が設定されているリング部材であっても、共存して壁部をレイアウトすることが可能になる。このため、設計自由度を向上させつつ、ファンの騒音を低減することができる。
請求項11に係る発明によれば、エアが急旋回することによるエアの流速の増大を抑制して、騒音の発生を未然に防止することができる。また、ファン効率を確実に向上させることができる。
この発明の第1実施形態における冷却ファンの正面図である。 この発明の第1実施形態における冷却ファンのファン本体の斜視図である。 この発明の第1実施形態における冷却ファンの図1のA−A断面に対応する断面図である。 この発明の第1実施形態における冷却ファンのファン本体の模式的な側面図である。 この発明の第1実施形態における冷却ファンのエア流入溝の深さを変えてファン効率とファン騒音を調べた結果を示すグラフである。 この発明の第2実施形態における冷却ファンのファン本体の斜視図である。 この発明の第3実施形態における冷却ファンのファン本体の斜視図である。 この発明の第3実施形態における冷却ファンのファン本体の模式的な側面図である。 この発明の第3実施形態における壁部の高さを変えてファン騒音を調べた結果を示すグラフである。 この発明の第4実施形態における冷却ファンのファン本体の斜視図である。 図10のB−B線に沿う断面図である。 この発明の第4実施形態におけるファン本体へのエアの流れを示す説明図である。 この発明の第4実施形態における壁部の角度を変化させてファン効率を調べた結果を示すグラフである。
(第1実施形態)
以下、この発明の第1実施形態を図1〜図5に基づいて説明する。
図1は、この第1実施形態に係る冷却ファン1を正面から見た図であり、図2は、冷却ファン1のファン本体10を示す斜視図、図3は、冷却ファン1の断面を示す図である。
この第1実施形態の冷却ファン1は、自動車のラジエータに用いられる軸流ファンであり、図示しないエンジンや電動モータ等の回転駆動源によって回転駆動されるファン本体10と、ファン本体10の外周側を覆ってラジエータに対するエアの導入効率を高めるためのシュラウド11と、を備えている。
シュラウド11は、その前面のほぼ中央に、ファン本体10の軸方向に沿った奥行き深さを持つ円形の導風孔30が設けられ、その導風孔30の周壁面の内側にファン本体10が回転可能に配置されるようになっている。また、シュラウド11の前面の導風孔30を囲む領域は、図3に示すように、導風孔30に向かって窪むテーパ面31とされている。
ファン本体10は、回転駆動源の出力軸に連結される有底円筒状のボス部12と、このボス部12の外周面と一体的に径方向外側に突出する複数のブレード13(この第1実施形態の場合、ブレードは5枚であり、それぞれボス部12の外周面と一体成形されている。)と、複数のブレード13の径方向外側の端部領域を環状に連結する円筒状のリング部材14と、を備えている。(この第1実施形態の場合、リング部材14は、ブレード13の径方向外側の端部より径方向内側にオフセットした位置を環状に連結した状態になっている。)
ここで、ファン本体10について、シュラウド11の外側に露出する側の面(図1において正面に見える側の面)を前面と呼び、その裏側の面を後面と呼ぶものとすると、各ブレード13は、図1に矢印Rで示すファン本体10の回転方向の前方側がファン本体10の前面側に開くように傾斜している。したがって、ブレード13の後面側は正圧面とされ、ブレード13の前面側は負圧面とされている。また、各ブレード13は、付根部側では仰角が大きく、かつ、翼弦長が短く設定されており、延出端側に向かうにつれて仰角が次第に小さくなるとともに翼弦長が次第に長くなるように設定されている。そして、各ブレード13の延出端は、正面視でボス部12と同軸中心の円を描く円弧形状に形成され、シュラウド11の導風孔30の内周面に対してほぼ一定の微小隙間が維持されるようになっている。
また、この第1実施形態のブレード13は、正面視で延出端側が回転方向の前方に向かって湾曲する前進翼型とされているが、特に、回転方向の前方側の縁部は延出端に近づくにつれて前方側への膨出量が大きくなっている。この膨出量の大きくなっている領域を、以下では「膨出領域13a」と呼ぶものとする。
リング部材14は、エア吸い込み側(ファン本体10の前面側)の軸方向の端部に複数のエア流入溝16が設けられるとともに、エア吐き出し側(ファン本体10の後面側)の軸方向の端部に同様に複数の肉抜き溝17が形成されている。
リング部材14のエア吸い込み側の軸方向の端部の一般面14aは、ブレード13の軸方向の一端(図3中の左側の端部)とほぼ同高さに形成されており、エア流入溝16の底部は、この一般面14aに対して所定深さだけ窪んで形成されている。各エア流入溝16は、リング部材14の周域において、一のブレード13の膨出領域13aと隣接する別のブレード13の膨出領域13aの間に形成されている。各エア流入溝16はリング部材14の周域に等間隔に設けられている。なお、この第1実施形態では、リング部材14のエア吸い込み側の軸方向の端部の一般面14aがブレード13の軸方向の一端とほぼ同高さに形成されているが、一般面14aはブレード13の軸方向の一端と異なる高さであっても良い。
また、リング部材14のエア吐き出し側の軸方向の端部の一般面14bは、ブレード13の軸方向の他端(図3中の右側の端部)とほぼ同高さに形成されており、肉抜き溝17の底部は、この一般面14bに対して所定深さだけ窪んで形成されている。各肉抜き溝17は、各ブレード13の正圧面に臨む位置で、かつ、少なくともその底部が、リング部材14上でエア流入溝16の底部と円周方向でオフセットする位置に形成されている。各肉抜き溝17はリング部材14の周域に等間隔に設けられている。なお、この第1実施形態では、リング部材14のエア吐き出し側の軸方向の端部の一般面14bについてもブレード13の軸方向の他端とほぼ同高さに形成されているが、一般面14bはブレード13の軸方向の他端と異なる高さであっても良い。
また、エア流入溝16と肉抜き溝17は、方形状の溝ではなく、傾斜面を持つ先開きの台形状に形成されている。これにより、ファン本体10の成形時には、リング部材14を容易に型成形することができる。
また、この第1実施形態の場合、エア流入溝16と肉抜き溝17は同深さに設定されている。ただし、エア流入溝16と肉抜き溝17の深さは必ずしも同じである必要はない。
次に、冷却ファン1のファン本体10の製造方法について説明する。
ファン本体10は、ポリプロピレン等の樹脂材により成形された樹脂成形品であって、上下型内に樹脂材を充填することで形成されている。上型には、樹脂材を注入するためのゲート41(図1における2点鎖線参照)が複数個所(例えば、本第1実施形態では5箇所)設けられている。ゲート41の形成位置を、より詳述すると、図1に示すように、ボス部12の筒底面部成形部位であって、複数のブレード13が一体的に設けられる根元部に位置している。
そして、上下型を型合わせした後、各ゲート41から高温状態で溶融した樹脂材が注入されて、ボス部12を形成する空間内と複数のブレード13を形成する空間内に樹脂材が順次充填される。続いて、最後にリング部材14を形成する空間に樹脂材が充填されることになる。このとき、隣接するゲート41から注入された樹脂材は、それぞれブレード13を形成する空間を経由して隣接するブレード13の間のリング部材14の中央付近で結合される。
このように、冷却ファン1のファン本体10は、各隣接するブレード13の間のリング部材14の中央付近に樹脂同志の結合部位(ウェルド)Wを有するものとして成形される(図2における2点鎖線参照)。
以上の構成において、この冷却ファン1のファン本体10が回転駆動されると、図3に矢印で示すように、シュラウド11の導風孔30の主に前方側からエアがブレード13間のスペースに吸い込まれ、そのエアがファン本体10の後方側に配置された図示しないラジータに供給される。
このとき、シュラウド11の導風孔30には、前方側だけでなくシュラウド11の外周側からもエアが流入する。このシュラウド11の外周側から流入するエアは、シュラウド11の前面のテーパ面31に沿って導風孔30方向に進み、ファン本体10のリング部材14に設けられたエア流入溝16を通過してブレード13間に吸い込まれ、軸方向に沿って吐き出される。
このシュラウド11の外周側から流入するエアは、リング部材14の端部の一般面14aよりも低いエア流入溝16を通過してブレード13間に吸い入れられるため、そのエアはリング部材14部分で急激に旋回することなく、軸方向に緩やかに向きを変えることになる。このため、この冷却ファン1の場合、シュラウド11の外周側から流入したエアの流速がリング部材14部分で急激に増速されることがない。
したがって、この冷却ファン1においては、エアの流速がリング部材14部分で急激に増速されることによる騒音の発生を未然に防止することができる。
また、この冷却ファン1の場合、シュラウド11の外周側から流入したエアが、充分なエア通過面積を確保されたエア流入溝16部分を通過して最短距離をもってブレード13間に吸い入れられるため、エアの流通抵抗が少なく、その分ファン効率の充分な向上を望むことができる。
また、この冷却ファン1においては、エア流入溝16が、リング部材14上の全ブレード13の回転方向の前部領域と、隣接するブレード13の回転方向の前部領域の間に配置されているため、リング部材14の外周側からファン本体10部分にエアを効率良く均等に吸い込むことができ、しかも、ファン本体10の円周方向の重量バランス(回転バランス)を良好にすることができる。
さらに、この冷却ファン1では、リング部材14のエア吐き出し側の軸方向の端部にエア流入溝16と円周方向でずれるように肉抜き溝17が設けられているため、リング部材14の円周方向の重量バランスがより良好となっている。
特に、この第1実施形態の場合、エア流入溝16と肉抜き溝17の深さが同じ深さに設定され、リング部材14の軸方向の肉厚が円周方向のほぼ全域で均等になっているため、リング部材14の円周方向の重量バランスはさらに良好となっている。
ここで、リング部材14に形成するエア流入溝16の深さと、ファン効率及びファン騒音の関係を調べた実験結果について説明する。
図4は、この実験で用いた冷却ファンの各部の寸法関係を示す図である。
同図においては、L1は、リング部材14の軸方向の厚みを示し、L2は、エア流入溝16の深さ、L3は、肉抜き溝17の深さをそれぞれ示している。
ここでは、L2/L1をリング除去比とし、そのリング除去比を0から1の間で変化させ、そのときのファン効率とファン騒音を測定した。なお、L3/L1はL2/L1と等しくした。
図5は、このときの実験結果を示すグラフである。
図5のグラフから明らかなように、除去比L2/L1が0.10〜0.40の範囲でファン効率とファン騒音のいずれについても良好な結果が得られ、とりわけ、0.15〜0.25の範囲では特に優れた結果が得られた。
一方、この冷却ファン1のファン本体10が回転駆動すると、隣接するブレード13間で次の事象が発生する。
図2、図4を用いて説明すると、ファン本体10が矢印Rの方向に回転したとき、ブレード13の回転方向の後方側は、通過するエアを正圧面側に向かって流すための応力(正圧面側へ吸引される力)によって、図中下方向(正圧面側)に応力を受けることになる。これに対し、ブレード13の回転方向の前方側はエアを切ってブレード13間に流入させることから図中上方向(負圧面側)に応力を受ける。
つまり、ブレード13の回転方向の前方側と後方側とでは、受ける応力の向きが異なり、ブレード13全体として、捻られる応力が発生することになる。そして、この応力は各ブレード13の間を連結しているリング部材14に対して、その中央付近に集中する。
ところで、先に説明したこのファン本体10の製造の過程において、注入される樹脂材の温度は、ゲートに注入される時点よりも、リング部材14に至った時点の方が若干温度が下がる。このため、ファン本体10における樹脂同志の各結合部位W(この第1実施形態の場合は計5箇所)の強度がばらつくことがある。
このような事情に鑑みると、ファン本体10の回転駆動時に、リング部材14に加わる応力がリング部材14の樹脂同志の結合部位Wに集中しないようにファン本体10の強度を増す必要がある。このため、使用する樹脂材自体を結合強度の強い高品位のものとしたり、リング部材14の厚みを増したり、軸方向長さを長くすることも考えられる。
しかしながら、このようにすると、樹脂材が高くなったり、樹脂の使用量が増えたりすることで、結果的にファン本体10のコストが増大してしまう課題がある。
一般的に、物体に作用する応力は、その物体に形状の変化点(屈曲点)等がある場合、この変化点側に分散する傾向がある。ここで、本第1実施形態では、リング部材14のエア吸い込み側にエア流入溝16を設けると共に、エア吐き出し側に肉抜き溝17を設けている。このため、上記課題に対して、作用する応力を各溝16,17の変化点C付近(図2参照)に分散させることができる。よって、コストを増大させることなく、ファン本体10の強度を確保することができる。
(第2実施形態)
次に、この発明の第2実施形態を図6に基づいて説明する。尚、第1実施形態と同一態様には、同一符号を付して説明する(以下の実施形態についても同様)。
図6は、この第2実施形態の冷却ファン201のファン本体210を示す斜視図である。
同図に示すように、この第2実施形態において、冷却ファン201は、自動車のラジエータに用いられる軸流ファンであり、図示しないエンジンや電動モータ等の回転駆動源によって回転駆動されるファン本体210と、ファン本体210の外周側を覆ってラジエータに対するエアの導入効率を高めるためのシュラウド(図6においては不図示)とを備えている点、ファン本体210は、回転駆動源の出力軸に連結される有底円筒状のボス部12と、このボス部12の外周面と一体的に径方向外側に突出する複数のブレード13と、複数のブレード13の径方向外側の端部領域を環状に連結する円筒状のリング部材14とを備えている点等の基本的構成は、前述した第1実施形態と同様である(以下の実施形態についても同様)。
ここで、この第2実施形態のファン本体210と、第1実施形態のファン本体10との相違点は、第1実施形態のリング部材14は、ブレード13の径方向外側の端部より径方向内側にオフセットした位置を環状に連結した状態になっているのに対し、第2実施形態のリング部材14は、ブレード13の径方向外側の端部を環状に連結した状態になっている点にある。
したがって、冷却ファン201においては、前述の第1実施形態と同様の効果に加え、ブレード13全体を用いてエアの吸い込みや吐き出しを制御することができ、より効果的に冷却ファン1の騒音を防止できると共に、ファン効率を向上させることが可能になる。
(第3実施形態)
次に、この発明の第3実施形態を図7〜図9に基づいて説明する。
図7は、この第3実施形態の冷却ファン301のファン本体310を示す斜視図、図8は、冷却ファン301の各部の寸法関係を示す図である。
図7、図8に示すように、この第3実施形態と第1実施形態との相違点は、第3実施形態における冷却ファン301のファン本体310には、リング部材14のエア吐き出し側の軸方向の端部に壁部42が形成されているが、第1実施形態には壁部42が形成されていない点にある。
壁部42についてより詳述する。
この壁部42は、リング部材14のエア吐き出し側の軸方向の端部の一般面14bから軸方向に沿って延出形成されている。そして、壁部42は、全ブレード13の回転方向(図8における矢印R方向)の後部領域と、各々の後部領域に対応する位置に形成されている肉抜き溝17との間に配置されている。換言すれば、壁部42は、リング部材14のエア吐き出し側の端部であって、かつ、エア流入溝16と軸方向でほぼ重なる位置に配置されている。
さらに、壁部42は、円周方向の両側面が肉抜き溝17の円周方向側面の延長線上に位置するように傾斜しており、全体として先細りの台形状に形成されている。
以上の構成において、冷却ファン301のファン本体310が回転駆動されると、冷却ファン301のエア吸い込み側(ファン本体310の前面側、図8における上側)からエアがブレード13間のスペースに吸い込まれ、そのエアがファン本体310のエア吐き出し側(ファン本体310の後面側、図8における下側)へと抜けていく。このとき、ブレード13のリング部材14よりも径方向内側で、かつ、正圧面内側では、ブレード13に沿ってエアが流れる。そして、エアは、回転方向の後方側の縁部を過ぎると慣性力によりリング部材14の外側へ流れようとする。
ここで、リング部材14に壁部42が形成されていない場合、エアは、リング部材14の径方向外側に流れ、さらに、ファン本体310の負圧面側へと流れ込んでしまう。このような場合、翼端渦が発生するので、冷却ファン301の騒音が大きくなってしまう。
しかしながら、この第3実施形態では、リング部材14の所定の位置に壁部42が形成されているので、ブレード13から吐き出されたエアが壁部42に邪魔されてリング部材14よりも径方向外側に流れにくくなる。
したがって、冷却ファン301においては、前述の第1実施形態と同様の効果に加え、ブレード13から吐き出されたエアが壁部42に邪魔されてリング部材14よりも径方向外側に流れにくくなるので、さらに確実に冷却ファン301の騒音を低減することができる。
また、壁部42は、全ブレード13の回転方向(図8における矢印R方向)の後部領域と、各々の後部領域に対応する位置に形成されている肉抜き溝17との間に配置されている。このように、肉抜き溝17が形成されているリング部材14であっても、肉抜き溝17と共存して壁部42をレイアウトすることが可能になり、設計の自由度を高めることができる。
ここで、図8、図9に基づいて、リング部材14に形成する壁部42の高さHと、ファン騒音の関係を調べた実験結果について説明する。
図8においては、hは、肉抜き溝17からリング部材14のエア吸い込み側の軸方向の端部の一般面14aに至る間の高さを示す。また、壁部42の高さHとは、エア流入溝16から壁部42の先端に至る間の軸方向の高さをいうものとする。そして、壁部42の高さを1.2hの場合と1.3hの場合とで変化させ、そのときのファン騒音を壁部42が無い場合(現行h)の騒音と比較した。
図9は、このときの実験結果を示すグラフである。
同図から明らかなように、壁部42の高さが1.2h〜1.3hの範囲に設定されているとき、壁部42が無い場合と比較してファン騒音が良好に低減されるという結果が得られた。
したがって、壁部42の高さHは、肉抜き溝17からリング部材14のエア吸い込み側の軸方向の端部の一般面14aに至る間の高さhに対し、1.2h〜1.3hの範囲に設定されていることが望ましい。
(第4実施形態)
次に、この発明の第4実施形態を図10〜図13に基づいて説明する。
図10は、この第4実施形態の冷却ファン401のファン本体410を示す斜視図、図11は、図10のB−B線に沿う断面図である。
図10、図11に示すように、この第4実施形態と第3実施形態との相違点は、第3実施形態の壁部42は、リング部材14のエア吐き出し側の軸方向の端部の一般面14bから軸方向に沿って延出形成されているのに対し、第4実施形態の壁部43は、リング部材14の一般面14bを基点として斜め外側に向かうように屈曲延出形成されている点にある。
すなわち、壁部43は、リング部材14に対して角度θだけ斜め外側に傾斜した状態で設けられている。このため、リング部材14は、エア吐き出し側に向かって末広がり状に形成され、エア吸い込み側からエア吐き出し側に向かうに従い、徐々に開口面積が大きくなる。
図12は、冷却ファン401のファン本体410が回転駆動されたときのエアの流れを示す説明図である。
同図に示すように、上述のような構成において、冷却ファン401のファン本体410が回転駆動されると、冷却ファン401のエア吸い込み側(図12における紙面奥側)からエアがブレード13間のスペースに吸い込まれ、そのエアがファン本体410のエア吐き出し側(図12における紙面手前側)へと抜けていく。このとき、リング部材14の開口面積がエア吐き出し側に向かって徐々に大きくなるので、吐き出されるエアの流速がリング部材14のエア吐き出し側で遅くなる。これにより、冷却ファン401によるエア圧力を増大させることができる。
したがって、冷却ファン401においては、前述の第3実施形態と同様の効果に加え、冷却ファン401によるエア圧力を増大させることができるので、ファン効率を向上させることができる。
ここで、リング部材14と壁部43との間の角度θは、15度〜30度の範囲に設定されていることが望ましい。より詳しく、図13に基づいて説明する。
図13は、壁部43の角度θを変化させてファン効率を調べた実験結果のグラフである。
同図に示すように、角度θが15度〜30度の範囲に設定されている場合、従来や壁部43が無い場合(波型リング)と比較してファン効率が向上していることが確認できる。
なお、この発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。例えば、上記の実施形態は、冷却ファンをラジエータの冷却に用いているが、本発明に係る冷却ファンは、ラジエータ冷却用に限定されるものではなく、その他の機器を冷却するものであっても良い。
1,201,301,401…冷却ファン
12…ボス部
13…ブレード
14…リング部材
16…エア流入溝
17…肉抜き溝
30…導風孔
42,43…壁部

Claims (11)

  1. 回転駆動源に連結されるボス部と、
    このボス部から径方向外側に突出する複数のブレードと、
    この複数のブレードの径方向外側の端部の近傍を環状に連結する筒状のリング部材と、を備えた冷却ファンにおいて、
    前記リング部材のエア吸い込み側の軸方向の端部にエア流入溝が設けられていることを特徴とする冷却ファン。
  2. 前記エア流入溝は、前記リング部材上の全ブレードの回転方向の前部領域と、隣接するブレードの回転方向の前部領域の間に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の冷却ファン。
  3. 前記リング部材のエア吐き出し側の軸方向の端部には、前記エア流入溝と円周方向でずれるように、肉抜き溝が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の冷却ファン。
  4. 前記エア流入溝と前記肉抜き溝の深さが同じ深さに設定されていることを特徴とする請求項3に記載の冷却ファン。
  5. 前記エア流入溝の深さと前記リング部材の軸方向の肉厚の比率が、0.10〜0.40の範囲に設定されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の冷却ファン。
  6. 前記リング部材におけるエア吐き出し側の軸方向の端部には、前記ブレードの回転方向の後部領域に対応する箇所に、前記リング部材におけるエア吐き出し側の軸方向の端部の一般面より軸方向外側に向かって延出した壁部が設けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の冷却ファン。
  7. 前記肉抜き溝から前記リング部材のエア吸い込み側の軸方向の端部の一般面に至る間の高さをhとしたとき、
    前記エア流入溝から前記壁部の先端に至る間の高さは、1.2h〜1.3hの範囲に設定されていることを特徴とする請求項6に記載の冷却ファン。
  8. 前記壁部は、前記リング部材におけるエア吐き出し側の軸方向の端部の一般面を基点に屈曲延出されていることを特徴とする請求項6又は7に記載の冷却ファン。
  9. 前記リング部材と前記壁部との間の角度は、15度〜30度の範囲に設定されていることを特徴とする請求項8に記載の冷却ファン。
  10. 前記壁部は、前記リング部材上の全ブレードの回転方向の後部領域と、各々の後部領域に対応する位置に形成されている前記肉抜き溝との間に設けられていることを特徴とする請求項6〜9のいずれか1項に記載の冷却ファン。
  11. 回転駆動源に連結されるボス部と、
    このボス部に一体的に、且つ径方向外側に向かって形成された複数のブレードと、
    これら複数のブレードの径方向外側の端部を環状に連結する筒状のリング部材とを備え、
    前記リング部材のエア吸い込み側の軸方向の端部にエア流入溝が設けられていることを特徴とする冷却ファン。
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