JP2012051537A - 空気入りタイヤおよびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】タイヤ内側にインナーライナーを備えた空気入りタイヤであって、前記インナーライナーは、スチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体からなる厚さ0.05mm〜0.6mmの第1層と、スチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体およびスチレン−イソブチレンジブロック共重合体の少なくともいずれかを含み、厚さが0.01mm〜0.3mmである第2層とからなるポリマー積層体で構成され、前記第2層がカーカスプライのゴム層と接するように配置されており、前記インナーライナーに隣接して、タイヤ断面高さHに対して、ビードトウから0.2Hの位置から少なくとも上下に0.04Hの範囲に、厚さが0.01mm〜1.0mmの保護層を配置した前記空気入りタイヤ。
【選択図】図1
Description
保護層Pは、ビードトウから0.2Hの位置を基準として上下にそれぞれ少なくとも0.04Hの範囲に配置する。保護層Pは、少なくとも0.04Hの範囲に存在することが必要であり、0.04Hを超えて配置することができる。該保護層Pは、通常、タイヤ断面高さHを基準として0.01H〜0.4Hの範囲内に配置される。保護層Pのタイヤ径方向外側の上端部がビードトウから0.4Hを超える位置に配置されていると、未加硫タイヤを円筒状からトロイダル状に変形させる際に、保護層Pのタイヤ径方向外側の上端部がタイヤ径方向の膨脹に伴って剥離し易くなる。一方、保護層Pのタイヤ径方向内側の下端部がビードトウから0.01H未満の位置に配置されていると、加硫後のタイヤにおいて保護層Pがリム上でビード部の滑りを生じて好ましくない。
保護層の構成材料としては、軟化点が150℃〜250℃、好ましくは180℃〜200℃の範囲とする。一般的なタイヤ加硫工程の加硫温度は150℃〜180℃の範囲であり、この加硫温度において、軟化、流動しない材料であることが望ましい。かかる観点から、保護層の材料は、熱可塑性エラストマー、熱可塑性樹脂、又はこれらの混合物が好ましい。
熱可塑性エラストマーとしては、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、イソブチレンと芳香族ビニル又はジエン系モノマー共重合体、アクリルゴム(ACM)、アイオノマー、含ハロゲンゴム(例えばBr−IIR、Cl−IIR、イソブチレンパラメチルスチレン共重合体の臭素化物)を挙げることができる。
熱可塑性樹脂としては、ポリアミド系樹脂(ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン6/66共重合体など)、ポリエステル系樹脂(ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレート/テトラメチレングリコール共重合体、PET/PEI共重合体、ポリアリレート、ポリブチレンナフタレート、ポリオキシアルキレンジイミドジ酸/ポリブチレンテレフタレート共重合体などの芳香族ポリエステルなど)、ポリニトリル系樹脂(例えばポリアクリロニトリル、ポリメタクロニトリル、アクリロニトリル/スチレン共重合体、メタクリロニトリル/スチレン共重合体、メタクリロニトリル/スチレン/ブタジエン共重合体など)、ポリ(メタ)アクリレート系樹脂(ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、エチレンエチルアクリレート共重合体、エチレンアクリル酸共重合体、エチレンメチルアクリレート樹脂)、ポリビニル系樹脂(酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ビニルアルコール/エチレン共重合体、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル/塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニリデン/メチルアクリレート共重合体)、セルロース系樹脂(酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース)、フッ素系樹脂(ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリクロルフルオロエチレン、テトラフロロエチレン/エチレン共重合体)、イミド系樹脂(芳香族ポリイミド)などが使用できる。
本発明の保護層には、前述の熱可塑性エラストマーまたは熱可塑性樹脂にエラストマーを50質量%以下の範囲で混合できる。ここでエラストマーとしては、ジエン系ゴム及びその水素添加物、例えばオ、NR、IR、エポキシ化天然ゴム、SBR、BR、NBR、水素化NBR、水素化SBR、オレフィン系ゴム、例えばエチレンプロピレンゴム(EPDM、EPM)、マレイン酸変性エチレンプロピレンゴム(M−EPM)、ブチルゴム(IIR)、クロロプレンゴム、ヒドリンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、マレイン酸変性塩素化ポリエチレン、シリコーンゴム、例えばメチルビニルシリコーンゴム、ジメチルシリコーンゴム、メチルフェニルビニルシリコーンゴム、含イオウゴム、例えばポリスルフィドゴム、フッ素ゴム、例えばビニリデンフルオライド系ゴム、含フッ素ビニルエーテル系ゴム、テトラフルオロエチレン−プロピレン系ゴム、含フッ素シリコン系ゴム、含フッ素ホスファゼン系ゴムなどが使用できる。
本発明において、インナーライナーに用いられるポリマー積層体は、スチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体(SIBS)からなる厚さ0.05mm〜0.6mmの第1層と、スチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体(SIS)およびスチレン−イソブチレンジブロック共重合体(SIB)の少なくともいずれかを含む第2層とからなり、前記第2層の厚さが0.01mm〜0.3mmである。
本発明において、第1層はスチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体(SIBS)からなる。SIBSのイソブチレンブロック由来により、SIBSからなるポリマーフィルムは優れた耐空気透過性を有する。したがって、SIBSからなるポリマーフィルムをインナーライナーに用いた場合、耐空気透過性に優れた空気入りタイヤを得ることができる。
本発明において、第2層はスチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体(以下SISともいう)からなるSIS層およびスチレン−イソブチレンジブロック共重合体(以下SIBともいう)からなるSIB層の少なくともいずれかを含む。
本発明においてインナーライナーに用いられるポリマー積層体の構造は各種の形態を採用できる。これらの形態をインナーライナーの模式的断面図で示す、図3〜図6に基づき説明する。
本発明の実施の形態において、ポリマー積層体10は、図3に示すように、第1層としてのSIBS層11および第2層としてのSIS層12から構成される。該ポリマー積層体10を空気入りタイヤのインナーライナーに適用する場合、SIS層12がカーカスプライ61に接するようにタイヤ半径方向外側に向けて設置すると、タイヤの加硫工程において、SIS層12とカーカス61との接着強度を高めることができる。したがって得られた空気入りタイヤは、インナーライナーとカーカスプライ61のゴム層とが良好に接着しているため、優れた耐空気透過性および耐久性を有することができる。
本発明の実施の形態において、ポリマー積層体10は、図4に示すように、第1層としてのSIBS層11および第2層としてのSIB層13から構成される。該ポリマー積層体10を空気入りタイヤのインナーライナーに適用する場合、SIB層13の面を、カーカスプライ61に接するようにタイヤ半径方向外側に向けて設置すると、タイヤの加硫工程において、SIB層13とカーカス61との接着強度を高めることができる。したがって得られた空気入りタイヤは、インナーライナーとカーカスプライ61のゴム層とが良好に接着しているため、優れた耐空気透過性および耐久性を有することができる。
本発明の実施の形態において、ポリマー積層体10は、図5に示すように、第1層としてのSIBS層11、第2層としてのSIS層12およびSIB層13が前記の順に積層されて構成される。該ポリマー積層体10を空気入りタイヤのインナーライナー61に適用する場合、SIB層13の面を、カーカスプライ61に接するようにタイヤ半径方向外側に向けて設置すると、タイヤの加硫工程において、SIB層13とカーカスプライ6との接着強度を高めることができる。したがって得られた空気入りタイヤは、インナーライナーとカーカスプライ61のゴム層とが良好に接着しているため、優れた耐空気透過性および耐久性を有することができる。
本発明の実施の形態において、ポリマー積層体10は、図6に示すように、第1層としてのSIBS層11、第2層としてのSIB層13およびSIS層12が前記の順に積層されて構成される。該ポリマー積層体10を空気入りタイヤのインナーライナーに適用する場合、SIS層12の面を、カーカスプライ61に接するようにタイヤ半径方向外側に向けて設置すると、タイヤの加硫工程において、SIS層12とカーカスプライ61との接着強度を高めることができる。したがって得られた空気入りタイヤ1は、インナーライナーとカーカスプライ61のゴム層とが良好に接着しているため、優れた耐空気透過性および耐久性を有することができる。
ポリマー積層体10は、SIBSと、SISおよびSIBの少なくともいずれかを、たとえば形態1〜4のいずれかに記載された順序でラミネート押出や共押出などの積層押出をして得ることができる。
本発明の空気入りタイヤは、次の工程で製造することができる。
(a)未加硫タイヤの内面にインナーライナーを配置する工程。
(b)ビードトウから0.2Hの位置から少なくとも上下に0.04Hの範囲に、厚さが0.01mm〜1.0mmの保護層を配置する工程。
(c)前記保護層を配置した未加硫タイヤを金型に配置して、未加硫タイヤの内側からブラダーを膨張させながら加硫する工程。
攪拌機付き2L反応容器に、メチルシクロヘキサン(モレキュラーシーブスで乾燥したもの)589mL、n−ブチルクロライド(モレキュラーシーブスで乾燥したもの)613ml、クミルクロライド0.550gを加えた。反応容器を−70℃に冷却した後、α−ピコリン(2−メチルピリジン)0.35mL、イソブチレン179mLを添加した。さらに四塩化チタン9.4mLを加えて重合を開始し、−70℃で溶液を攪拌しながら2.0時間反応させた。次に反応容器にスチレン59mLを添加し、さらに60分間反応を続けた後、大量のメタノールを添加して反応を停止させた。反応溶液から溶剤などを除去した後に、重合体をトルエンに溶解して2回水洗した。このトルエン溶液をメタノール混合物に加えて重合体を沈殿させ、得られた重合体を60℃で24時間乾燥することによりスチレン−イソブチレンジブロック共重合体を得た。
重量平均分子量 :70,000
<SIBS>
カネカ(株)社製のシブスターSIBSTAR 102T(ショアA硬度25、スチレン成分含有量25質量%、重量平均分子量:100,000)を用いた。
クレイトンポリマー社製のD1161JP(スチレン成分含有量15質量%、重量平均分子量:150,000)を用いた。
比較例1のインナーライナーには、次の配合成分をバンバリーミキサーで混合し、カレンダーロールにてシート化して厚さ1.0mmのポリマーフィルムを得た。
天然ゴム(注2) 10質量部
フィラー(注3) 50質量部
(注1)エクソンモービル(株)社製の「エクソンクロロブチル 1068」。(注2)TSR20。(注3)東海カーボン(株)社製の「シーストV」(N660、窒素吸着比表面積:27m2/g)。
上述の方法で製造した厚さ0.6mmのSIBS層をインナーライナーとして用いた。比較例2は保護層を有しない例、比較例3は保護層を有する例である。
比較例4はインナーライナーの第1層にSIBS層、第2層にSIS層を用い、保護層を有しない例、比較例5はインナーライナーの第1層にSIBS層、第2層にSIB層を用い、保護層を有しない例である。
実施例1、2は、インナーライナーの第1層にSIBS層を、第2層にSIS層を用い、かつ保護層を有する例であり、実施例3、4は、インナーライナーの第1層にSIBS層を、第2層にSIB層を用い、かつ保護層を有する例である。
実施例、比較例のインナーライナーを有する空気入りタイヤを製造し以下の性能試験を行った。
JIS K 6256「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−接着性の求め方」に準じて試験片を作製した。インナーライナーとゴム層に用いる材料のシートを貼り合わせて加硫する。加硫後に貼り合わせ界面で剥離強度を測定した。試験片の大きさは25mm幅で、剥離試験は23℃の室温条件下で行った。比較例1の剥離強度を100として相対値で示す。値が大きいほど剥離強度に優れている。
JIS K 6260「加硫ゴム及び熱可塑性ゴムのデマチャ屈曲亀裂試験方法」に準じて、ポリマー積層体またはポリマーフィルムをゴムに貼り付けて加硫し、中央に溝のある所定の試験片を作製した。試験片の溝の中心にあらかじめ切り込みを入れ、繰り返し屈曲変形を与え亀裂成長を測定する試験を行った。雰囲気温度23℃、歪30%、周期5Hzで、70万回、140万回、210万回時に亀裂長さを測定し、亀裂が1mm成長するのに要した屈曲変形の繰り返し回数を算出した。比較例1の値を基準(100)として、実施例1〜4および比較例2〜5のポリマー積層体の屈曲疲労性について指数表示した。数値が大きい方が、亀裂が成長しにくく良好といえる。例えば、実施例1の指数は以下の式で求められる。
<静的空気圧低下率試験>
上述の方法で製造した195/65R15スチールラジアルPCタイヤをJIS規格リム15×6JJに組み付け、初期空気圧300Kpaを封入し、90日間室温で放置し、空気圧の低下率を計算した。
170℃で20分間プレス成形して、195/65R15サイズの加硫タイヤを製造した。加硫タイヤを100℃で3分間冷却した後、加硫タイヤを金型から取り出し空気入りタイヤを製造した。ブラダー擦れ破損は、加硫タイヤの内側に配置されたインナーライナー層の損傷を目視で検査した。判定基準は以下のとおりである。
B:インナーライナーの損傷の数がタイヤ1本あたり1個以上である。
実施例1〜4は、いずれも保護層を有しており、ブラダー擦れ破損は認められなかった。一方、保護層を有しない比較例2、4および5はブラダー擦れ破損が認められた。また保護層を有するが、インナーライナーが第1層のみの比較例3もブラダー擦れ破損が認められた。
Claims (6)
- タイヤ内側にインナーライナーを備えた空気入りタイヤであって、
前記インナーライナーは、スチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体からなる厚さ0.05mm〜0.6mmの第1層と、スチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体およびスチレン−イソブチレンジブロック共重合体の少なくともいずれかを含み、厚さが0.01mm〜0.3mmである第2層とからなるポリマー積層体で構成され、前記第2層がカーカスプライのゴム層と接するように配置されており、
前記インナーライナーに隣接して、タイヤ断面高さHに対して、ビードトウから0.2Hの位置から少なくとも上下に0.04Hの範囲に、厚さが0.01mm〜1.0mmの保護層を配置した前記空気入りタイヤ。 - 前記スチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体はスチレン成分含有量が10〜30質量%である、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
- 前記スチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体は、スチレン成分含有量が10〜30質量%であり、重量平均分子量が100,000〜290,000である請求項1または2記載の空気入りタイヤ。
- 前記スチレン−イソブチレンジブロック共重合体は直鎖状であり、スチレン成分含有量が10〜35質量%であり、重量平均分子量が40,000〜120,000である請求項1〜3のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
- 保護層は、スチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体、スチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体およびスチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体の少なくとも1種からなる請求項1記載の空気入りタイヤ。
- 請求項1記載の空気入りタイヤの製造方法であって、
未加硫タイヤの内面にインナーライナーを配置する工程、
ビードトウから0.2Hの位置から少なくとも上下に0.04Hの範囲に、厚さが0.01mm〜1.0mmの保護層を配置する工程、さらに
前記保護層を配置した未加硫タイヤを金型に配置して、未加硫タイヤの内側からブラダーを膨張させながら加硫することを特徴とする空気入りタイヤの製造方法。
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