JP2006248439A - 空気入りタイヤ及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 タイヤ内面に熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂とエラストマーとのブレンド物からなる内層を設けた空気入りタイヤ及びその製造方法であって、ブラダーの擦れによる外観の悪化を防止することを可能にした空気入りタイヤ及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 タイヤ内面に熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂とエラストマーとのブレンド物からなる内層8を設け、該内層8をタイヤ断面高さHに対してビードトウから0.2Hの位置を含む部分に配置すると共に、ビードトウから0.2Hの位置を基準として上下にそれぞれ少なくとも0.05Hの範囲に、内層8を覆うように該内層8の構成材料よりも軟化点が高い他の熱可塑性樹脂又は他の熱可塑性樹脂とエラストマーとのブレンド物からなる保護層9Aを配置する。保護層9Aの替わりに、ゴム組成物からなる保護層9Bを配置しても良い。
【選択図】 図1

Description

本発明は、タイヤ内面に熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂とエラストマーとのブレンド物からなる内層を設けた空気入りタイヤ及びその製造方法に関し、更に詳しくは、ブラダーの擦れによる外観の悪化を防止することを可能にした空気入りタイヤ及びその製造方法に関する。
空気入りタイヤは、インナーライナーと呼ばれる空気透過防止層を備えている。空気透過防止層は、一般にはブチルゴムを主成分とするゴム組成物から構成されているが、近年では軽量化のために熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂とエラストマーとのブレンド物から構成することが提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
しかしながら、熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂とエラストマーとのブレンド物からなる空気透過防止層をタイヤ内面に設けた場合、加硫直後の高温状態では樹脂成分の強度が低い状態にあるため、加硫時に使用されるブラダーをタイヤ内側で収縮させる際に、ブラダーの擦れにより空気透過防止層の表面が荒れ、外観が悪化するという問題がある。特に、ビードフィラーの近傍ではタイヤ内面が空洞側に突き出すように湾曲しているため、この部位における擦れが顕著に現れている。
特許第3150561号公報 特許第3212470号公報 特許第3153093号公報
本発明の目的は、タイヤ内面に熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂とエラストマーとのブレンド物からなる内層を設けた空気入りタイヤ及びその製造方法であって、ブラダーの擦れによる外観の悪化を防止することを可能にした空気入りタイヤ及びその製造方法を提供することにある。
上記目的を達成するための本発明の空気入りタイヤは、タイヤ内面に熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂とエラストマーとのブレンド物からなる内層を設け、該内層をタイヤ断面高さHに対してビードトウから0.2Hの位置を含む部分に配置すると共に、前記ビードトウから0.2Hの位置を基準として上下にそれぞれ少なくとも0.05Hの範囲に、前記内層を覆うように該内層の構成材料よりも軟化点が高い他の熱可塑性樹脂又は他の熱可塑性樹脂とエラストマーとのブレンド物からなる保護層を配置したことを特徴とするものである。
本発明の空気入りタイヤの製造方法は、上記空気入りタイヤを製造する方法であって、未加硫タイヤの内面に前記保護層の構成材料からなるフィルムを貼り付け、その後、該未加硫タイヤを金型内に投入し、該未加硫タイヤの内側でブラダーを膨らませながら加硫を行うことを特徴とするものである。
また、本発明の空気入りタイヤの製造方法は、上記空気入りタイヤを製造する方法であって、未加硫タイヤの内面に前記保護層の構成材料を溶剤に溶かした溶解物を塗布し、その後、該未加硫タイヤを金型内に投入し、該未加硫タイヤの内側でブラダーを膨らませながら加硫を行うことを特徴とするものである。
上記目的を達成するための本発明の他の空気入りタイヤは、タイヤ内面に熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂とエラストマーとのブレンド物からなる内層を設け、該内層をタイヤ断面高さHに対してビードトウから0.2Hの位置を含む部分に配置すると共に、前記ビードトウから0.2Hの位置を基準として上下にそれぞれ少なくとも0.05Hの範囲に、前記内層を覆うようにゴム組成物からなる保護層を配置したことを特徴とするものである。
本発明の空気入りタイヤの製造方法は、上記他の空気入りタイヤを製造する方法であって、未加硫タイヤの内面に前記保護層の構成材料からなるシートを貼り付け、その後、該未加硫タイヤを金型内に投入し、該未加硫タイヤの内側でブラダーを膨らませながら加硫を行うことを特徴とするものである。
また、本発明の空気入りタイヤの製造方法は、上記他の空気入りタイヤを製造する方法であって、未加硫タイヤの内面に前記保護層の構成材料を溶剤に溶かした溶解物を塗布し、その後、該未加硫タイヤを金型内に投入し、該未加硫タイヤの内側でブラダーを膨らませながら加硫を行うことを特徴とするものである。
本発明では、タイヤ内面に熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂とエラストマーとのブレンド物からなる内層を設けた空気入りタイヤにおいて、熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂とエラストマーとのブレンド物からなる内層がビード部の近傍に存在する場合に、その内層を覆うように保護層を設けているので、加硫時にブラダーの擦れにより内層の表面が荒れるのを防ぎ、外観の悪化を防止することができる。
本発明によれば、従来よりも高温状態でブラダーを収縮させることが可能になるため、加硫時間を短縮するという作用効果が得られる。また、保護層を設けることで内層の構成材料の自由度が広がり、高温状態での強度が低い材料でも使用可能となる。
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は本発明の第1実施形態からなる空気入りタイヤを示すものである。図1において、1はトレッド部、2はサイドウォール部、3はビード部である。一対のビード部3,3間にはカーカス層4が装架され、カーカス層4の端部がビードコア5の廻りにタイヤ内側から外側に折り返されている。トレッド部1におけるカーカス層4の外周側には、ベルト層6がタイヤ全周にわたって配置されている。一方、ビード部3におけるビードコア5の外周側には高硬度ゴムからなるビードフィラー7が埋設されている。また、タイヤ内面には熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂とエラストマーとのブレンド物からなる内層8が形成されている。この内層8は一対のビード部3,3間の全域にわたって形成され、空気透過防止層を構成している。
上記空気入りタイヤにおいて、内層8はタイヤ断面高さHに対してビードトウから0.2Hの位置を含む部分に存在している。ビードトウから0.2Hの位置、即ち、ビードフィラー7の近傍位置では、タイヤ内面が空洞側に突き出すように湾曲している。そのため、加硫時にブラダー10が収縮する際、ブラダー10はタイヤ内面から矢印の方向に移動しようとする。従って、加硫直後の高温状態において、ビードトウから0.2Hの位置で熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂とエラストマーとのブレンド物からなる内層8がタイヤ内面に露出していると、内層8の表面がブラダー10との擦れによって荒れてしまうことがある。
そこで、ビードトウから0.2Hの位置を基準として上下にそれぞれ少なくとも0.05Hの範囲には、内層8を覆うように該内層8の構成材料よりも軟化点が高い他の熱可塑性樹脂又は他の熱可塑性樹脂とエラストマーとのブレンド物からなる保護層9Aが配置されている。このような保護層9Aを設けることにより、加硫時にブラダー10との擦れにより内層8の表面が荒れるのを防ぎ、外観の悪化を防止することができる。
保護層9Aの構成材料としては、内層8の構成材料よりも軟化点が高いものを使用することが必要であるが、その軟化点は好ましくは160℃以上、更に好ましくは180℃以上とする。これにより、一般的なタイヤ加硫工程において外観の悪化を確実に防止することができる。保護層9Aの構成材料の軟化点の上限は250℃とすることが望ましい。また、保護層9Aの構成材料の軟化点と内層8の構成材料の軟化点との差は、5℃以上であることが望ましい。
熱可塑性樹脂をマトリックスとする保護層9Aは、ビードトウから0.2Hの位置を基準として上下にそれぞれ少なくとも0.05Hの範囲にすることが必要である。保護層9Aが少なくとも上記範囲に存在していないと、その保護機能が不十分になる。その一方で、熱可塑性樹脂をマトリックスとする保護層9Aの形成範囲はビードトウから0.03H以上0.3H以下の範囲に規制すると良い。つまり、保護層9Aのタイヤ径方向外側の上端部がビードトウから0.3Hを超える位置に配置されていると、未加硫タイヤを円筒状からトロイダル状に変形させる際に、保護層9Aのタイヤ径方向外側の上端部がタイヤ径方向の膨脹に伴って剥離し易くなる。逆に、保護層9Aのタイヤ径方向内側の下端部がビードトウから0.03H未満の位置に配置されていると、製品タイヤの状態で保護層9Aに起因してリム上でビード部が滑り易くなる。
上述のような保護層9Aを備えた空気入りタイヤを製造する場合、未加硫タイヤの内面に保護層9Aの構成材料からなるフィルムを貼り付けても良く、或いは、未加硫タイヤの内面に保護層9Aの構成材料を溶剤に溶かした溶解物を塗布しても良い。いずれの場合も、保護層9Aを設けた未加硫タイヤを金型内に投入し、該未加硫タイヤの内側でブラダーを膨らませながら加硫を行うようにする。
保護層9Aの厚さは、保護機能と軽量化の観点から0.03mm以上1.0mm以下の範囲で任意に選択される。特に、保護層9Aを溶解物の塗布により形成する場合、その厚さは0.03mm以上0.5mm以下の範囲にすることが好ましい。また、保護層9Aをフィルムの貼り付けにより形成する場合、その厚さは0.05mm以上0.8mm以下の範囲にすることが好ましい。
上記空気入りタイヤにおいて、空気透過防止層となる内層8の構成材料には、熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂とエラストマーとのブレンド物が使用されるが、特に、熱可塑性樹脂をマトリックスとし、そのマトリックス中にエラストマー成分が分散している熱可塑性エラストマー組成物を用いることが好ましい。
熱可塑性エラストマー組成物の熱可塑性樹脂成分としては、ヤング率が500MPa超、好ましくは500〜3000MPaの任意の熱可塑性樹脂を用いることができ、その配合量は樹脂及びエラストマーを含むポリマー成分の合計重量当り10重量%以上、好ましくは20〜85重量%である。
そのような熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアミド系樹脂〔例えばナイロン6(N6)、ナイロン66(N66)、ナイロン46(N46)、ナイロン11(N11)、ナイロン12(N12)、ナイロン610(N610)、ナイロン612(N612)、ナイロン6/66共重合体(N6/66)、ナイロン6/66/610共重合体(N6/66/610)、ナイロンMXD6、ナイロン6T、ナイロン6/6T共重合体、ナイロン66/PP共重合体、ナイロン66/PPS共重合体〕、ポリエステル系樹脂〔例えばポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンイソフタレート(PEI)、ポリブチレンテレフタレート/テトラメチレングリコール共重合体、PET/PEI共重合体、ポリアリレート(PAR)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、液晶ポリエステル、ポリオキシアルキレンジイミドジ酸/ポリブチレンテレフタレート共重合体などの芳香族ポリエステル〕、ポリニトリル系樹脂〔例えばポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメタクリロニトリル、アクリロニトリル/スチレン共重合体(AS)、メタクリロニトリル/スチレン共重合体、メタクリロニトリル/スチレン/ブタジエン共重合体〕、ポリ(メタ)アクリレート系樹脂〔例えばポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリメタクリル酸エチル、エチレンエチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレンアクリル酸共重合体(EAA)、エチレンメチルアクリレート樹脂(EMA)〕、ポリビニル系樹脂〔例えば酢酸ビニル(EVA)、ポリビニルアルコール(PVA)、ビニルアルコール/エチレン共重合体(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、塩化ビニル/塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニリデン/メチルアクリレート共重合体〕、セルロース系樹脂〔例えば酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース〕、フッ素系樹脂〔例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリクロルフルオロエチレン(PCTFE)、テトラフロロエチレン/エチレン共重合体(ETFE)〕、イミド系樹脂〔例えば芳香族ポリイミド(PI)〕などを挙げることができる。これら熱可塑性樹脂はエラストマー成分を含まない単独の材料として用いても良い。
熱可塑性エラストマー組成物のエラストマー成分としては、ヤング率が500MPa以下の任意のエラストマー又は該エラストマーの分散性や耐熱性などの改善のために補強剤、充填剤、架橋剤、軟化剤、老化防止剤、加工助剤などの配合剤を必要量添加したエラストマー組成物を用いることができ、その配合量は樹脂及びエラストマーを含むポリマー成分の合計重量当り10重量%以上、好ましくは10〜80重量%である。
そのようなエラストマーとしては、例えば、ジエン系ゴム及びその水素添加物〔例えばNR、IR、エポキシ化天然ゴム、SBR、BR(高シスBR及び低シスBR)、NBR、水素化NBR、水素化SBR〕、オレフィン系ゴム〔例えばエチレンプロピレンゴム(EPDM、EPM)、マレイン酸変性エチレンプロピレンゴム(M−EPM)〕、ブチルゴム(IIR)、イソブチレンと芳香族ビニル又はジエン系モノマー共重合体、アクリルゴム(ACM)、アイオノマー、含ハロゲンゴム〔例えばBr−IIR、Cl−IIR、イソブチレンパラメチルスチレン共重合体の臭素化物(Br−IPMS)、クロロプレンゴム(CR)、ヒドリンゴム(CHC,CHR)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、塩素化ポリエチレン(CM)、マレイン酸変性塩素化ポリエチレン(M−CM)〕、シリコーンゴム(例えばメチルビニルシリコーンゴム、ジメチルシリコーンゴム、メチルフェニルビニルシリコーンゴム)、含イオウゴム(例えばポリスルフィドゴム)、フッ素ゴム(例えばビニリデンフルオライド系ゴム、含フッ素ビニルエーテル系ゴム、テトラフルオロエチレン−プロピレン系ゴム、含フッ素シリコン系ゴム、含フッ素ホスファゼン系ゴム)、熱可塑性エラストマー(例えばスチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー)などを挙げることができる。
熱可塑性エラストマー組成物には、上記必須成分に加えて第三成分として、相溶化剤などの他のポリマー及び配合剤を混合することができる。他のポリマーを混合する目的は、熱可塑性樹脂成分とエラストマー成分との相溶性を改良するため、材料のフィルム成形加工性を良くするため、耐熱性向上のため、コストダウンのため等であり、これに用いられる材料としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ABS、SBS、ポリカーボネート等が挙げられる。
熱可塑性エラストマー組成物は、予め熱可塑性樹脂とエラストマー(ゴムの場合は未加硫物)とを2軸混練押出機等で溶融混練し、連続相を形成する熱可塑性樹脂中にエラストマー成分を分散させることにより得られる。エラストマー成分を加硫する場合には、混練下で加硫剤を添加し、エラストマーを動的に加硫させても良い。また、熱可塑性樹脂またはエラストマー成分への各種配合剤(加硫剤を除く)は、上記混練中に添加しても良いが、混練の前に予め混合しておくことが好ましい。熱可塑性樹脂とエラストマーの混練に使用する混練機としては、特に限定はなく、スクリュー押出機、ニーダ、バンバリミキサー、2軸混練押出機等が挙げられる。中でも樹脂成分とゴム成分の混練およびゴム成分の動的加硫には2軸混練押出機を使用するのが好ましい。さらに、2種類以上の混練機を使用し、順次混練してもよい。溶融混練の条件として、温度は熱可塑性樹脂が溶融する温度以上であれば良い。また、混練時の剪断速度は2500〜7500sec-1であるのが好ましい。混練全体の時間は30秒から10分、また加硫剤を添加した場合には、添加後の加硫時間は15秒から5分であるのが好ましい。上記方法で作製された熱可塑性エラストマー組成物は、押出機による成形によってフィルム化される。
このようにして得られる熱可塑性エラストマー組成物の薄膜は、熱可塑性樹脂のマトリクス中にエラストマーが不連続相として分散した構造をとる。かかる状態の分散構造を採ることにより、ヤング率を50〜500MPaの範囲に設定し、タイヤ構成部材として適度な剛性を付与することが可能になる。
上記熱可塑性エラストマー組成物はシート又はフィルムに成形された状態でタイヤ成形に用いられるが、隣接するゴムとの接着性を高めるために接着層を積層しても良い。この接着層を構成する接着用ポリマーの具体例としては、分子量100万以上、好ましくは300万以上の超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、エチレンエチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレンメチルアクリレート樹脂(EMA)、エチレンアクリル酸共重合体(EAA)等のアクリレート共重合体類及びそれらの無水マレイン酸付加物、ポリプロピレン(PP)及びそのマレイン酸変性物、エチレンプロピレン共重合体及びそのマレイン酸変性物、ポリブタジエン系樹脂及びその無水マレイン酸変性物、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SBS)、スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SEBS)、フッ素系熱可塑性樹脂、ポリエステル系熱可塑性樹脂などを挙げることができる。特に、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SBS)を用いることが好ましい。接着層の厚さは特に限定されないが、タイヤ軽量化のためには厚さが少ない方がよく、5μm〜150μmが好ましい。
図2は本発明の第2実施形態からなる空気入りタイヤを示すものである。本実施形態は、上記実施形態における保護層の構成材料だけを異ならせたものであるので、図1と同一物には同一符号を付してその部分の詳細な説明は省略する。
図2において、ビードトウから0.2Hの位置を基準として上下にそれぞれ少なくとも0.05Hの範囲には、内層8を覆うようにゴム組成物からなる保護層9Bが配置されている。このようにタイヤ内面に熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂とエラストマーとのブレンド物からなる内層8を設けた空気入りタイヤにおいて、内層8がビード部の近傍に存在する場合に、その内層8を覆うようにゴム組成物からなる保護層9Bを設けているので、加硫時にブラダー10の擦れにより内層8の表面が荒れるのを防ぎ、外観の悪化を防止することができる。
ゴム組成物からなる保護層9Bは、ビードトウから0.2Hの位置を基準として上下にそれぞれ少なくとも0.05Hの範囲にすることが必要である。保護層9Bが少なくとも上記範囲に存在していないと、その保護機能が不十分になる。なお、ゴム組成物からなる保護層9Bの場合、材料が柔らかく剥離し難いため、その上端部及び下端部の位置が特に規制されるものではない。
上述のような保護層9Bを備えた空気入りタイヤを製造する場合、未加硫タイヤの内面に保護層9Bの構成材料からなるシートを貼り付けても良く、或いは、未加硫タイヤの内面に保護層9Bの構成材料を溶剤に溶かした溶解物を塗布しても良い。いずれの場合も、保護層9Bを設けた未加硫タイヤを金型内に投入し、該未加硫タイヤの内側でブラダーを膨らませながら加硫を行うようにする。
保護層9Bの厚さは、保護機能と軽量化の観点から0.03mm以上1.0mm以下の範囲で任意に選択される。特に、保護層9Bを溶解物の塗布により形成する場合、その厚さは0.03mm以上0.5mm以下の範囲にすることが好ましい。また、保護層9Bをシートの貼り付けにより形成する場合、その厚さは0.05mm以上0.8mm以下の範囲にすることが好ましい。
上述した保護層9Bは、ゴム組成物から構成されるが、そのゴム組成物にはゴム成分の他に加硫剤、加硫促進剤、カーボンブラック、老化防止剤等の配合剤を適宜配合することができる。ゴム成分としては、天然ゴムやイソプレンゴムのほか、各種の合成ゴムを使用することができる。保護層9Bを溶解物の塗布により形成する場合、ゴム成分と配合剤を有機溶剤に溶かしたゴムセメント、又は、ゴムラテックスと配合剤と粘着性付与樹脂とを含む水系ゴムセメントを用いることができる。
タイヤ内面に熱可塑性樹脂とエラストマーとのブレンド物からなる内層(空気透過防止層)を設けた空気入りタイヤにおいて、ビード部の近傍で内層を覆うように保護層を設けた実施例1〜4及び比較例1〜2のタイヤをそれぞれ作製した。これら実施例1〜4及び比較例1〜2においては、保護層の構成材料、保護層の形成方法、保護層の上端部のビードトウからの高さ、保護層の下端部のビードトウからの高さを種々異ならせた。また、比較のため、保護層を設けていない従来例のタイヤを作製した。内層の構成材料の配合は表1の通りである。
Figure 2006248439
一方、保護層の構成材料には、樹脂セメント、樹脂フィルム、ゴム組成物のシート、ゴムセメントを用いた。樹脂セメントとしては、塩化ビニリデン系共重合体としてアクリロニトリル(共重合量モル%が50%のもの、軟化点:約180℃)を、35重量%のトルエンと65重量%のメチルエチルケトンとの混合溶媒に、20重量%の割合で溶解させた樹脂セメントを作製し、これを刷毛等で未加硫タイヤの内面に塗布した。また、樹脂フィルムとしては、ポリエステルフィルム(PET、軟化点:約240℃)を用意し、これを未加硫タイヤの内面に貼り付けた。保護層を構成するゴム組成物及びゴムセメントの配合は表2の通りである。
Figure 2006248439
これら従来例、実施例1〜4及び比較例1〜2について、それぞれ30本のタイヤを作製し、ブラダーの擦れに起因する内層の破損の有無を目視により調べ、その結果を表3に示した。
Figure 2006248439
表3に示すように、従来例ではブラダーの擦れに起因して内層にゲージ変化を生じ、その結果として、ビード部近傍において内層に局部的な穴空き部分が形成されていた。これに対して、実施例1〜4ではブラダーの擦れに起因する内層の破損を全く生じていなかった。一方、比較例1〜2では保護層の形成範囲が不十分であるため擦れ部分を完全に覆うことができず、ブラダーの擦れに起因する内層の破損を生じていた。
本発明の第1実施形態からなる空気入りタイヤを示す子午線半断面図である。 本発明の第2実施形態からなる空気入りタイヤを示す子午線半断面図である。
符号の説明
1 トレッド部
2 サイドウォール部
3 ビード部
4 カーカス層
5 ビードコア
6 ベルト層
7 ビードフィラー
8 内層
9A,9B 保護層
10 ブラダー

Claims (6)

  1. タイヤ内面に熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂とエラストマーとのブレンド物からなる内層を設け、該内層をタイヤ断面高さHに対してビードトウから0.2Hの位置を含む部分に配置すると共に、前記ビードトウから0.2Hの位置を基準として上下にそれぞれ少なくとも0.05Hの範囲に、前記内層を覆うように該内層の構成材料よりも軟化点が高い他の熱可塑性樹脂又は他の熱可塑性樹脂とエラストマーとのブレンド物からなる保護層を配置したことを特徴とする空気入りタイヤ。
  2. 請求項1に記載の空気入りタイヤを製造する方法であって、未加硫タイヤの内面に前記保護層の構成材料からなるフィルムを貼り付け、その後、該未加硫タイヤを金型内に投入し、該未加硫タイヤの内側でブラダーを膨らませながら加硫を行うことを特徴とする空気入りタイヤの製造方法。
  3. 請求項1に記載の空気入りタイヤを製造する方法であって、未加硫タイヤの内面に前記保護層の構成材料を溶剤に溶かした溶解物を塗布し、その後、該未加硫タイヤを金型内に投入し、該未加硫タイヤの内側でブラダーを膨らませながら加硫を行うことを特徴とする空気入りタイヤの製造方法。
  4. タイヤ内面に熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂とエラストマーとのブレンド物からなる内層を設け、該内層をタイヤ断面高さHに対してビードトウから0.2Hの位置を含む部分に配置すると共に、前記ビードトウから0.2Hの位置を基準として上下にそれぞれ少なくとも0.05Hの範囲に、前記内層を覆うようにゴム組成物からなる保護層を配置した空気入りタイヤ。
  5. 請求項4に記載の空気入りタイヤを製造する方法であって、未加硫タイヤの内面に前記保護層の構成材料からなるシートを貼り付け、その後、該未加硫タイヤを金型内に投入し、該未加硫タイヤの内側でブラダーを膨らませながら加硫を行うことを特徴とする空気入りタイヤの製造方法。
  6. 請求項4に記載の空気入りタイヤを製造する方法であって、未加硫タイヤの内面に前記保護層の構成材料を溶剤に溶かした溶解物を塗布し、その後、該未加硫タイヤを金型内に投入し、該未加硫タイヤの内側でブラダーを膨らませながら加硫を行うことを特徴とする空気入りタイヤの製造方法。
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