JP5592217B2 - トラック・バス用タイヤ - Google Patents
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Description
本発明のトラック・バス用タイヤのトウ部において前記空気遮断層の端部を被覆するようにトウゴムが配置されていることが、好ましく、該トウゴムは、ゴム成分の20〜40質量%がブチルゴムおよびハロゲン化ブチルゴムの少なくとも一方からなるゴム組成物である。
本発明のトラック・バス用タイヤの概略断面図を図に基づいて説明する。図1は、トラック・バス用タイヤの右半分の断面図であり、図2はそのビード部拡大図である。トラック・バス用タイヤ1は、トレッド部2と、該トレッド部両端からトロイド形状を形成するようにサイドウォール部3とビード部4とを有している。さらに、ビード部4にはビードコア5が埋設される。また、一方のビード部4から他方のビード部に亘って設けられ、両端をビードコア5のまわりに折り返して係止されるカーカスプライ6と、該カーカスプライ6のクラウン部外側には、4枚のプライよりなるベルト層7とが配置されている。
図3は、本発明の他の実施形態を示す。ビード部に位置するインナーライナーの下端部11eは少なくともビード部領域において、インナーライナー11と重複部分を形成するように空気遮断層9が配置されている。ここでインナーライナー11は、カーカスプライ6と空気遮断層9の間に配置されている。そして空気遮断層9は、インナーライナーの下端部11eからトウ先端PをとおりビードベースラインLに沿ってビードベースライン幅Wbの領域に、その下端部9eが位置している。ここで、ビードベースライン幅Wbは、通常120mmである。
図4において、空気遮断層9はタイヤ幅方向内側に位置するようにインナーライナー下端部11eを被覆するように配置されている。
図5において本発明のトラック・バス用タイヤは、カーカスプライ6の内側に隣接してインナーライナー11が配置されており、その内側に空気遮断層9が配置されている。該空気遮断層9は、トウ先端Pからタイヤ内面に沿う方向に35mm以下の領域(Hb)にその端部9eが位置するように配設される。そしてトウ部において空気遮断層の下端部9eを被覆するようにトウゴム13が配置されている。該トウゴム13は、ゴム成分の20〜40質量%がブチルゴムおよびハロゲン化ブチルゴムの少なくとも一方からなるゴム組成物である。
図6において、空気遮断層9はインナーライナーのタイヤ幅方向内側に位置するように配設されている。空気遮断層9は、ビード部に位置するインナーライナーの下端部11eを被覆するようにインナーライナー11との重なり部分を形成している。そして空気遮断層9の下端部9eは、トウ先端Pからタイヤ内面に沿う方向に35mm以下の領域(Hb)に位置する。なおトウ部において前記空気遮断層の下端部9eを被覆するようにトウゴム13が配置されている。該トウゴム13は、ゴム成分の20〜40質量%がブチルゴムおよびハロゲン化ブチルゴムの少なくとも一方からなるゴム組成物である。
本発明において、空気遮断層には特定のポリマー積層体が用いられる。ポリマー積層体は、スチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体(SIBS)からなる厚さ0.05mm〜0.6mmの第1層と、スチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体(SIS)およびスチレン−イソブチレンジブロック共重合体(SIB)の少なくともいずれかを含む第2層とからなり、前記第2層の厚さが0.01mm〜0.3mmである。
本発明の一実施の形態において、第1層は、スチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体(SIBS)からなる。SIBSのイソブチレンブロック由来により、SIBSからなるポリマーフィルムは優れた耐空気透過性を有する。したがって、SIBSからなるポリマーフィルムを空気遮断層に用いた場合、耐空気透過性に優れた空気入りタイヤを得ることができる。
本発明において、第2層はスチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体(以下、「SIS」ともいう。)からなるSIS層およびスチレン−イソブチレンジブロック共重合体(以下、「SIB」ともいう。)からなるSIB層の少なくともいずれかを含む。
本発明において空気遮断層に用いられるポリマー積層体の構造は各種の形態を採用できる。これらの形態を空気遮断層の概略断面図で示す、図7〜図10に基づき説明する。
ポリマー積層体PLは、図7に示すように、第1層としてのSIBS層PL1および第2層としてのSIS層PL2から構成される。該ポリマー積層体PLを空気入りタイヤの空気遮断層に適用する場合、SIS層PL2がインナーライナーまたはカーカスプライ61に接するようにタイヤ半径方向外側に向けて設置すると、タイヤの加硫工程において、SIS層PL2とインナーライナーまたはカーカスプライ61との接着強度を高めることができる。したがって得られた空気入りタイヤは、空気遮断層とインナーライナーまたはカーカスプライ61のゴム層とが良好に接着しているため、優れた耐空気透過性および耐久性を有することができる。
ポリマー積層体PLは、図8に示すように、第1層としてのSIBS層PL1および第2層としてのSIB層PL3から構成される。該ポリマー積層体PLを空気入りタイヤの空気遮断層に適用する場合、SIB層PL3の面を、インナーライナーまたはカーカスプライ61に接するようにタイヤ半径方向外側に向けて設置すると、タイヤの加硫工程において、SIB層PL3とインナーライナーまたはカーカス61との接着強度を高めることができる。したがって得られた空気入りタイヤは、空気遮断層とインナーライナーまたはカーカスプライ61のゴム層とが良好に接着しているため、優れた耐空気透過性および耐久性を有することができる。
ポリマー積層体PLは、図9に示すように、第1層としてのSIBS層PL1、第2層としてのSIS層PL2およびSIB層PL3が前記の順に積層されて構成される。該ポリマー積層体PLを空気入りタイヤに適用する場合、SIB層PL3の面を、インナーライナーまたはカーカスプライ61に接するようにタイヤ半径方向外側に向けて設置すると、タイヤの加硫工程において、SIB層PL3とインナーライナーまたはカーカスプライ61との接着強度を高めることができる。したがって得られた空気入りタイヤは、空気遮断層とインナーライナーまたはカーカスプライ61のゴム層とが良好に接着しているため、優れた耐空気透過性および耐久性を有することができる。
ポリマー積層体PLは、図10に示すように、第1層としてのSIBS層PL1、第2層としてのSIB層PL3およびSIS層PL2が前記の順に積層されて構成される。該ポリマー積層体PLを空気入りタイヤの空気遮断層に適用する場合、SIS層PL2の面を、インナーライナーまたはカーカスプライ61に接するようにタイヤ半径方向外側に向けて設置すると、タイヤの加硫工程において、SIS層PL2とインナーライナーまたはカーカスプライ61との接着強度を高めることができる。したがって得られた空気入りタイヤは、空気遮断層とインナーライナーまたはカーカスプライ61のゴム層とが良好に接着しているため、優れた耐空気透過性および耐久性を有することができる。
ポリマー積層体PLは、SIBSと、SISおよびSIBの少なくともいずれかを、たとえば形態1〜4のいずれかに記載された順序でラミネート押出や共押出などの積層押出をして得ることができる。
本発明のトラック・バス用タイヤは一般的な製造方法を用いることができる。前記ポリマー積層体PLをトラック・バス用タイヤ1の生タイヤの空気遮断層に適用して他の部材とともに加硫成形することによって製造することができる。ポリマー積層体PLを生タイヤに配置する際は、ポリマー積層体PLの第2層であるSIS層PL2またはSIB層PL3が、インナーライナーまたはカーカスプライに接するようにタイヤ半径方向外側に向けて配置する。このように配置することでタイヤ加硫工程において、SIS層PL2またはSIB層PL3とインナーライナーまたはカーカスプライとの接着強度を高めることができる。得られたタイヤは、空気遮断層とインナーライナーまたはカーカスプライとが良好に接着しているため、優れた耐空気透過性および耐久性を有することができる。
攪拌機付き2L反応容器に、メチルシクロヘキサン(モレキュラーシーブスで乾燥したもの)589mL、n−ブチルクロライド(モレキュラーシーブスで乾燥したもの)613ml、クミルクロライド0.550gを加えた。反応容器を−70℃に冷却した後、α−ピコリン(2−メチルピリジン)0.35mL、イソブチレン179mLを添加した。さらに四塩化チタン9.4mLを加えて重合を開始し、−70℃で溶液を攪拌しながら2.0時間反応させた。次に反応容器にスチレン59mLを添加し、さらに60分間反応を続けた後、大量のメタノールを添加して反応を停止させた。反応溶液から溶剤などを除去した後に、重合体をトルエンに溶解して2回水洗した。このトルエン溶液をメタノール混合物に加えて重合体を沈殿させ、得られた重合体を60℃で24時間乾燥することによりスチレン−イソブチレンジブロック共重合体を得た。
重量平均分子量 :70,000
<SIBS>
カネカ(株)社製のシブスターSIBSTAR 102T(ショアA硬度25、スチレン成分含有量25質量%、重量平均分子量:100,000)を用いた。
クレイトンポリマー社製のD1161JP(スチレン成分含有量15質量%、重量平均分子量:150,000)を用いた。
<トラック・バス用タイヤの製造>
上記、SIBS、SISおよびSIBを、2軸押出機(スクリュ径:φ50mm、L/D:30、シリンダ温度:220℃)にてペレット化した。その後、Tダイ押出機(スクリュ径:φ80mm、L/D:50、ダイリップ幅:500mm、シリンダ温度:220℃、フィルムゲージ:0.3mm)、またはインフレーション共押出機にて空気遮断層を作製した。
比較例1〜3は空気遮断層を配置せず、インナーライナーとして次の成分をバンバリーミキサーで混合し、カレンダーロールにてシート化して厚さ1.0mmのポリマーフィルムを得た。
天然ゴム(注2) 10質量部
フィラー(注3) 50質量部
(注1)IIR:エクソンモービル(株)社製の「エクソンクロロブチル 1068」。
(注2)TSR20。
(注3)東海カーボン(株)社製の「シーストV」(N660、窒素吸着比表面積:27m2/g)。
実施例2、4、5、参考例1、2及び比較例4は、インナーライナーを配置しない構造である。実施例2、4、5、参考例1、2は、空気遮断層として第1層にSIBSを、第2層にSISまたはSIBを用いている。比較例4は、空気遮断層としてSIBS層のみを配置している。
実施例6〜8は、インナーライナーを配置しない構造であり、空気遮断層の第1層にSIBSを、第2層にSISとSIBの複合層を用いている。空気遮断層は、タイヤ内面全体に亘って配置されている。
実施例17〜20は、インナーライナーを配置しない構造であり、空気遮断層の第1層にSIBSを、第2層にSISとSIBの複合層を用いている。そしてトウゴムのブチルゴムの混合割合を変更させている。
実施例、参考例、比較例のトラック・バス用タイヤを、上述の如く製造し以下の性能試験を行った。
空気遮断層(ポリマー積層体またはポリマーシート)と、カーカス用ゴムシート(成分:天然ゴムおよびSBR)を重ねて170℃の条件下で12分間加圧加熱することによって剥離用試験片を作製した。なお、ポリマー積層体は、SIS層またはSIB層がゴムシートと接触するように重ねた。得られた試験片を用いて、JIS K 6256「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−接着性の求め方」にしたがって剥離試験を行い、空気遮断層とゴムシートの剥離力を測定した。試験片の大きさは25mm幅で、剥離試験は23℃の室温条件下で行った。数値が大きいほど空気遮断層とゴムシートの剥離力は大きい。
JIS K 6260「加硫ゴム及び熱可塑性ゴムのデマチャ屈曲亀裂試験方法」に準じて、中央に溝のある所定の試験片を作製した。空気遮断層は、厚さ0.3mmシートをゴムに貼り付けて加硫し、所定の試験片を作製した。試験片の溝の中心にあらかじめ切り込みを入れ、繰り返し屈曲変形を与え亀裂成長を測定する試験を行った。雰囲気温度23℃、歪30%、周期5Hzで、70万回、140万回、210万回時に亀裂長さを測定し、亀裂が1mm成長するのに要した屈曲変形の繰り返し回数を算出した。比較例1の値を基準(100)として、実施例、参考例および比較例のポリマー積層体の屈曲疲労性について指数表示した。数値が大きい方が、亀裂が成長しにくく良好といえる。例えば、参考例1の指数は以下の式で求められる。
<静的空気圧低下率試験>
上述の方法で製造した11R22.5PRトラック・バス用タイヤをJIS規格リムに組み付け、初期空気圧900Kpaを封入し、90日間室温で放置し、空気圧の低下率を計算した。
<実施例2、4、5、参考例1、2、比較例4>
実施例2、4、5、参考例1、2及び比較例4はインナーライナーを配置しない構造である。実施例2、4、5、参考例1、2は、空気遮断層として第1層にSIBSを、第2層にSISまたはSIBを用い、かつ、その下端部がトウ先端近傍まで延びる構成としているため、これらの実施例は剥離力、屈曲疲労性および静的空気低下率が総合的に優れている。
<実施例6〜16>
実施例6〜8はインナーライナーを配置しない構造である。空気遮断層は、第1層にSIBSを、第2層にSISとSIBの複合層を用いるとともに、タイヤ内面全体に亘って配置されている。これらの実施例は比較例1に比べ、剥離力、屈曲疲労性および静的空気低下率が総合的に優れている。
実施例17〜20は、インナーライナーを配置しない構造であり、空気遮断層の第1層にSIBSを、第2層にSISとSIBの複合層を用いている。そしてトウゴムのブチルゴムの混合割合が20〜40質量%である実施例18,19は剥離力、屈曲疲労性および静的空気低下率の総合的なバランスで優れている。
Claims (6)
- タイヤ内面が空気遮断層で覆われたトラック・バス用タイヤにおいて、
前記空気遮断層は、厚さが1mm以下で、ビード部のトウ先端からビードベースラインに沿って120mm以下の領域に、その端部が位置しており、且つ、
前記空気遮断層は、スチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体からなる厚さ0.05mm〜0.6mmの第1層と、スチレン−イソブチレンジブロック共重合体または、スチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体およびスチレン−イソブチレンジブロック共重合体を含み、厚さが0.01mm〜0.3mmである第2層とからなるポリマー積層体で構成され、
前記スチレン−イソブチレンジブロック共重合体は直鎖状であり、スチレン成分含有量が10〜35質量%であり、
前記第2層がカーカスプライの側に配置されている、トラック・バス用タイヤ。 - タイヤ内面にインナーライナーを有するトラック・バス用タイヤにおいて、
前記インナーライナーのタイヤ内面側に接して重なり部分を形成する空気遮断層が配置され、
前記空気遮断層は、厚さが1mm以下で、前記重なり部分からビード部のトウ先端を経てビードベースラインの沿って120mm以下の領域に、その端部が位置しており、且つ、
前記空気遮断層は、スチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体からなる厚さ0.05mm〜0.6mmの第1層と、スチレン−イソブチレンジブロック共重合体または、スチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体およびスチレン−イソブチレンジブロック共重合体を含み、厚さが0.01mm〜0.3mmである第2層とからなるポリマー積層体で構成され、
前記スチレン−イソブチレンジブロック共重合体は直鎖状であり、スチレン成分含有量が10〜35質量%である、トラック・バス用タイヤ。 - タイヤ内面にインナーライナーを有し、前記インナーライナーが空気遮断層で覆われたトラック・バス用タイヤにおいて、
前記空気遮断層は、厚さが1mm以下で、ビード部のトウ先端からタイヤ内面に沿う方向に35mm以下の領域にトウ端部が位置しており、且つ、
前記空気遮断層は、スチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体からなる厚さ0.05mm〜0.6mmの第1層と、スチレン−イソブチレンジブロック共重合体または、スチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体およびスチレン−イソブチレンジブロック共重合体を含み、厚さが0.01mm〜0.3mmである第2層とからなるポリマー積層体で構成され、
前記スチレン−イソブチレンジブロック共重合体は直鎖状であり、スチレン成分含有量が10〜35質量%であり、
前記第2層が前記インナーライナーに隣接して配置されている、トラック・バス用タイヤ。 - 前記スチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体はスチレン成分含有量が10〜30質量%である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のトラック・バス用タイヤ。
- 前記スチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体は、スチレン成分含有量が10〜30質量%である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のトラック・バス用タイヤ。
- ゴム成分の20〜40質量%がブチルゴムおよびハロゲン化ブチルゴムの少なくとも一方からなるゴム組成物よりなるトウゴムで、前記空気遮断層の端部が被覆されている請求項1〜5のいずれか1項に記載のトラック・バス用タイヤ。
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