JP2015110700A - インナーライナー層用ゴム組成物及びそれを用いた空気入りタイヤ - Google Patents

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剛史 土田
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Abstract

【課題】優れた耐空気透過性、耐久性及び転がり抵抗性を兼ね備えたインナーライナー層を形成することができるゴム組成物、並びにそれを用いたインナーライナー層及び空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】60〜99.5質量%のスチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体と、0.5〜40質量%のスチレン−無水マレイン酸共重合体又はその誘導体とを含むタイヤのインナーライナー層用ゴム組成物、並びにそれを用いたインナーライナー層及び空気入りタイヤである。
【選択図】図1

Description

本発明は、インナーライナー層用ゴム組成物、並びにそれを用いたタイヤのインナーライナー層及び空気入りタイヤに関する。
インナーライナー層は、空気入りタイヤの内部に配され、タイヤ内部から外部への空気漏れの量(空気透過量)を低減して耐空気透過性を向上させる働きを担うタイヤ部材である。
インナーライナー層には、耐空気透過性は勿論のこと、耐久性も求められる。インナーライナー層は、リム組み作業等の際に工具類が接触して損傷を生じやすく、また、パンク修理等においてタイヤ内面をバフ処理する際にも損傷を受けやすい部材であるためである。インナーライナー層の損傷は、タイヤの耐空気透過性を大きく低下させ得る。
従来、チューブレスの空気入りタイヤのインナーライナー層には一般的に、耐空気透過性が比較的高いブチル系ゴムが使用されてきたが、その耐空気透過性には改善の余地があり、また、タイヤの転がり抵抗が上昇し、結果として燃費を悪化させる一因になるという問題もあった。
インナーライナー層の特性を改善すべく、従来、様々な技術が提案されている(特許文献1〜6)。
特開平08−258506号公報 特開平09−019987号公報 特許第2999188号明細書 特開2008−024219号公報 特開2005−343379号公報 特開2009−279977号公報
特許文献1には、ポリ塩化ビニリデンのような熱可塑性樹脂からなるフィルムを空気入りタイヤのインナーライナー層(空気透過防止層)に用いることが記載されている。熱可塑性樹脂は、ブチル系ゴムに比べて耐空気透過性の面でより優れている。
しかし、熱可塑性樹脂からなるインナーライナー層は、耐屈曲疲労性を確保するために極めて薄くする必要があり、このため、上述したような場面で損傷を生じやすかった。また、タイヤ使用時にショルダー部近傍に大きなせん断歪が作用するため、インナーライナー層とカーカス層との接着界面で剥離が発生しやすくなり、タイヤの空気漏れが発生しやすいという問題もあった。
特許文献2には、ガスバリヤー層(A)及びその両面に配置される接着層(B)からなる積層フィルム(インナーライナー層)と、カーカス層のようなゴム層(R)とを含む積層体であって、接着層(B)とゴム層(R)とが加熱接着されてなる積層体が記載されており、ガスバリヤー層(A)の両側に接着層(B)を設けることで、インナーライナー層の重ね合わせ部において接着層(B)同士が接触するようになり、加熱によって強固に接着されるので、空気圧保持性を向上できることが述べられている。しかし、このインナーライナー層の重ね合わせのための接着層(B)は、加硫工程においてブラダーと加熱状態で接触することになり、ブラダーに粘着するという問題があった。
特許文献3には、エラストマー組成物(A)を分散相、2種以上の熱可塑性樹脂のブレンドからなる熱可塑性樹脂組成物(B)をマトリックスとする熱可塑性エラストマー組成物を空気入りタイヤの空気透過防止層に用いることが記載されている。上記2種以上の熱可塑性樹脂にはナイロン樹脂が用いられる。
しかし、ナイロン樹脂は室温で硬いため、当該文献に記載の熱可塑性エラストマー組成物は、空気入りタイヤのインナーライナー層としては不向きである。また、この熱可塑性エラストマー組成物は、カーカス層のようなゴム層に加硫接着させることができないため、仮にこの熱可塑性エラストマー組成物をインナーライナー層に用いた場合には、ゴム層との接着のための加硫用接着層を別途設ける必要がある。このため、タイヤ構造及びタイヤ製造工程が複雑となり、生産性の観点からも不利であった。
特許文献4には、無水マレイン酸変性水素添加スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体のような柔軟樹脂が分散されたエチレン−ビニルアルコール共重合体層の両面に熱可塑性ウレタン系エラストマー層を積層し、この積層体を、ブチルゴム等を含む接着剤組成物を用いてゴム状弾性体層に接着してなるインナーライナー層が記載されている。
しかしながら、柔軟樹脂が分散されたエチレン−ビニルアルコール共重合体は接着力が低いため、熱可塑性ウレタン系エラストマー層との剥離が生じやすい傾向にある。また、柔軟樹脂が分散されているものの、マトリックスであるエチレン−ビニルアルコール共重合体自体は耐屈曲疲労性に乏しいため、当該文献に記載のインナーライナー層は、耐屈曲性に関してなお改善の余地があった。さらに、接着剤組成物を用いて上記積層体をゴム状弾性体層に接着するという別途の工程が必要であり、生産性の観点からも不利であった。
特許文献5には、ゴム組成物を含む熱可塑性樹脂からなるインナーライナー層において、ショルダー部における厚さ寸法がタイヤクラウン部における厚さ寸法よりも大きくすることにより、低温耐久性を向上させ得ることが記載されている。
特許文献6には、タイヤ内面に熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂中にエラストマーをブレンドした熱可塑性エラストマー組成物からなる熱可塑性樹脂フィルム層(インナーライナー層)を設け、その熱可塑性樹脂フィルム層の内面に保護ゴム層を積層した構成において、熱可塑性樹脂フィルム層又は保護ゴム層の少なくとも一方の厚さを変化させることにより、上述したような場面でのインナーライナー部の損傷を防止できることが記載されている。
本発明の目的は、優れた耐空気透過性、耐久性及び転がり抵抗性を兼ね備えたインナーライナー層を形成することができるゴム組成物、並びにそれを用いたインナーライナー層及び空気入りタイヤを提供することにある。
本発明は、以下に示すインナーライナー層用ゴム組成物、インナーライナー層及び空気入りタイヤを提供する。
[1] 60〜99.5質量%のスチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体と、
0.5〜40質量%のスチレン−無水マレイン酸共重合体又はその誘導体と、
を含む、タイヤのインナーライナー層用ゴム組成物。
[2] 前記誘導体は、スチレン−無水マレイン酸共重合体のモノエステル化物又はアンモニウム塩である、[1]に記載のゴム組成物。
[3] 前記スチレン−無水マレイン酸共重合体は、重量平均分子量が4000〜20000であり、酸価が50〜600である、[1]に記載のゴム組成物。
[4] 前記スチレン−無水マレイン酸共重合体のモノエステル化物は、重量平均分子量が5000〜12000であり、酸価が50〜400である、[2]に記載のゴム組成物。
[5] 前記スチレン−無水マレイン酸共重合体を構成するスチレン成分と無水マレイン酸成分との含有比が、モル比で50/50〜90/10である、[1]〜[4]のいずれかに記載のゴム組成物。
[6] 前記スチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体は、スチレン成分含有量が10〜30質量%である、[1]〜[5]のいずれかに記載のゴム組成物。
[7] 15〜40質量%のエチレン−ビニルアルコール共重合体をさらに含む、[1]〜[6]のいずれかに記載のゴム組成物。
[8] [1]〜[7]のいずれかに記載のゴム組成物から形成されるタイヤのインナーライナー層。
[9] 厚みが0.05〜0.5mmである、[8]に記載のインナーライナー層。
[10] カーカス層と、
前記カーカス層のタイヤ内側に配置される[8]又は[9]に記載のインナーライナー層と、
前記インナーライナー層のタイヤ内側に配置されるゴム層と、
を備える、空気入りタイヤ。
[11] 次の(a)及び(b):
(a)前記インナーライナー層が、第1領域と、前記第1領域とは異なる領域であって、前記第1領域よりも厚みが大きい第2領域とを含む、
(b)前記ゴム層が、第3領域と、前記第3領域とは異なる領域であって、前記第3領域よりも厚みが大きい第4領域とを含む、
の少なくともいずれかを満たす、[10]に記載の空気入りタイヤ。
[12] 前記第1領域は、前記インナーライナー層におけるトレッド部に対応する領域であり、
前記第2領域は、前記インナーライナー層における、前記第1領域以外の少なくとも一部の領域である、[11]に記載の空気入りタイヤ。
[13] 前記第4領域は、前記ゴム層におけるトレッド部に対応する領域であり、
前記第3領域は、前記ゴム層における、前記第4領域以外のすべての領域である、[11]又は[12]に記載の空気入りタイヤ。
本発明によれば、優れた耐空気透過性、耐久性及び転がり抵抗性を兼ね備えたインナーライナー層を形成することができるゴム組成物、並びにそれを用いたインナーライナー層及び空気入りタイヤを提供することができる。
本発明に係る空気入りタイヤの一例を説明するためのタイヤ右半分を示す概略断面図である。
<インナーライナー層用ゴム組成物>
本発明に係るインナーライナー層用ゴム組成物は、スチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体と、スチレン−無水マレイン酸共重合体又はその誘導体とを含むものである。また、エチレン−ビニルアルコール共重合体をさらに含むこともできる。
(1)スチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体
本発明に係るインナーライナー層用ゴム組成物は、ゴム組成物全量を100質量%とするとき、スチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体(以下、「SIBS」ともいう。)を60〜99.5質量%含む。SIBSが有するイソブチレンブロックに起因して、本発明のゴム組成物を含むインナーライナー層は優れた耐空気透過性を示す。
また、SIBSは芳香環以外の分子構造が完全飽和であるため、劣化硬化が生じにくく、優れた耐久性を有する。従って、本発明のゴム組成物を含むインナーライナー層は優れた耐久性を示す。さらに、SIBSを含む本発明のゴム組成物を用いたインナーライナー層によれば、ブチル系ゴム(ハロゲン化ブチルゴム等)を用いた従来のインナーライナー層と比較して、タイヤの転がり抵抗の低減が可能であり、その結果、燃費の向上効果を得ることができる。
ゴム組成物中におけるSIBSの含有量は60〜99.5質量%であり、これにより、優れた耐空気透過性、耐久性及び転がり抵抗性を兼ね備えたインナーライナー層用ゴム組成物を得ることができる。SIBSの含有量は、好ましくは80〜95質量%である。
SIBSの分子量は特に制限されないが、SIBSのゴム弾性及び流動性、インナーライナー層への成形加工性等の観点から、GPC測定による重量平均分子量(ポリスチレン換算。以下同様。)が50000〜400000であることが好ましく、50000〜100000であることがより好ましい。重量平均分子量が50000未満であると、SIBSのゴム弾性、引張強度及び引張伸びが低下するおそれがある。また、重量平均分子量が400000を超えると、SIBSの流動性の低下によりインナーライナー層への成形加工性(押出加工性等)が低下するおそれがある。
SIBSが有するイソブチレンブロックのGPC測定による重量平均分子量は、好ましくは10000〜150000であり、スチレンブロックのGPC測定による重量平均分子量は、好ましくは10000〜30000である。これらのブロックの重量平均分子量が10000未満であると、SIBSのゴム弾性が低下したり、流動性が高くなり過ぎて取扱い性に欠けたりすることがある。イソブチレンブロックの重量平均分子量が150000を超えるか、又はスチレンブロックの重量平均分子量が30000を超えると、SIBSの流動性の低下によりインナーライナー層への成形加工性(押出加工性等)が低下するおそれがある。
SIBSは、耐空気透過性及び耐久性をより良好にする観点から、SIBS中のスチレン成分の含有量が10〜40質量%であることが好ましく、10〜30質量%であることがより好ましく、14〜23質量%であることがさらに好ましい。SIBSを構成するイソブチレン成分とスチレンとのモル比(イソブチレン/スチレン)は、SIBSのゴム弾性の観点から、40/60〜95/5であることが好ましい。
SIBSは、リビングカチオン重合法のような一般的なビニル系化合物の重合法により得ることができる。たとえば、特開昭62−48704号公報及び特開昭64−62308号公報には、イソブチレンと他のビニル化合物とのリビングカチオン重合が可能であり、ビニル系化合物としてのイソブチレン及び他の化合物をリビングカチオン重合することでポリイソブチレン系のブロック共重合体を製造できることが開示されている。この他にも、リビングカチオン重合法によるビニル系化合物重合体の製造法が、例えば、米国特許第4,946,899号、米国特許第5,219,948号、特開平3−174403号公報等に記載されている。
SIBSは、分子内に芳香環以外の二重結合を有していないために、分子内に二重結合を有している重合体、例えばポリブタジエンに比べて紫外線に対する安定性が高く、従って耐候性も良好である。また、分子内に芳香環以外の二重結合を有しておらず、飽和系のゴム状ポリマーであるにも関わらず、波長589nmの光の20℃での屈折率(nD)は、ポリマーハンドブック〔1989年:ワイリー(Polymer Handbook, Willy,1989)〕によると、1.506である。これは他の飽和系のゴム状ポリマー、例えばエチレン−ブテン共重合体に比べて有意に高い。
(2)スチレン−無水マレイン酸共重合体又はその誘導体
本発明に係るインナーライナー層用ゴム組成物は、ゴム組成物全量を100質量%とするとき、スチレン−無水マレイン酸共重合体又はその誘導体を0.5〜40質量%含む。これにより、インナーライナー層及びこれを用いた空気入りタイヤの耐空気透過性及び耐久性を向上させることができる。スチレン−無水マレイン酸共重合体とその誘導体とを併用してもよい。
スチレン−無水マレイン酸共重合体の誘導体としては、スチレン−無水マレイン酸共重合体の無水マレイン酸部分をモノエステル化して得られる、モノエステル基及びモノカルボン酸基を有するモノエステル化物や、スチレン−無水マレイン酸共重合体のアンモニウム塩が挙げられる。インナーライナー層用ゴム組成物は、スチレン−無水マレイン酸共重合体の誘導体を2種以上含有していてもよい。
スチレン−無水マレイン酸共重合体又はその誘導体は、市販品を入手することができる。スチレン−無水マレイン酸共重合体の誘導体としては、例えば「SMA1000」、「SMA2000」、「SMA3000」、「SMA EF30」、「SMA EF40」、「SMA EF60」、「SMA EF80」(いずれも商品名、川原油化株式会社より入手可能)が挙げられ、スチレン−無水マレイン酸共重合体のモノエステル化物としては、例えば「SMA1440」、「SMA17352」、「SMA2625」、「SMA3840」(いずれも商品名、川原油化株式会社より入手可能)が挙げられ、スチレン−無水マレイン酸共重合体のアンモニウム塩としては、例えば「SMA1000H」、「SMA1440H」、「SMA2000H」、「SMA3000H」、「SMA2625H」、「SMA17352H」(いずれも商品名、川原油化株式会社より入手可能)が挙げられる。
インナーライナー層用ゴム組成物にスチレン−無水マレイン酸共重合体又はその誘導体を含有させることにより、インナーライナー層とこれに隣接するゴムとの接着性(加硫後の接着性)を向上させることができ、これにより、インナーライナー層及びこれを用いた空気入りタイヤの耐空気透過性及び耐久性を向上させることができる。また、スチレン−無水マレイン酸共重合体又はその誘導体を含有させることにより、ゴム組成物に濡れ性を与えることができるため、ゴム組成物の未加硫時の粘着性を向上させることができる。粘着性の向上は、空気入りタイヤの成形加工性の向上に寄与する。
ゴム組成物中におけるスチレン−無水マレイン酸共重合体又はその誘導体の含有量(2種以上併用する場合はその合計含有量)が0.5〜40質量%であることにより、隣接ゴムとの接着性に優れ、耐空気透過性及び耐久性に優れるインナーライナー層及びこれを用いた空気入りタイヤを得ることができる。ゴム組成物中におけるスチレン−無水マレイン酸共重合体又はその誘導体の含有量は、好ましくは2〜30質量%である。
スチレン−無水マレイン酸共重合体は、加硫後における隣接ゴムとの接着性及びゴム組成物の流動性の観点から、GPC測定による重量平均分子量が4000〜20000であることが好ましく、5000〜15000であることがより好ましい。
また、スチレン−無水マレイン酸共重合体を構成するスチレン成分と無水マレイン酸成分との含有比は、軟化点を高くし、熱安定性を高める観点から、モル比で50/50〜90/10とすることが好ましい。また未加硫時におけるゴム組成物の粘着性の観点から、スチレン−無水マレイン酸共重合体の酸価は、50〜600であることが好ましく、95〜500であることがより好ましい。
スチレン−無水マレイン酸共重合体のモノエステル化物は、加硫後における隣接ゴムとの接着性及びゴム組成物の流動性の観点から、GPC測定による重量平均分子量が5000〜12000であることが好ましく、6000〜11000であることがより好ましい。
また、スチレン−無水マレイン酸共重合体のモノエステル化物を構成するスチレン成分と無水マレイン酸由来成分との含有比は、加硫後における隣接ゴムとの接着性の観点から、モル比で50/50〜90/10とすることが好ましい。また未加硫時におけるゴム組成物の粘着性の観点から、スチレン−無水マレイン酸共重合体のモノエステル化物は、その酸価が50〜400であることが好ましく、95〜290であることがより好ましい。
スチレン−無水マレイン酸共重合体のモノエステル化物は、例えば反応容器にスチレン−無水マレイン酸共重合体とアルコールを導入し、不活性ガス雰囲気下で加熱攪拌することによって製造することができる。
(3)エチレン−ビニルアルコール共重合体
本発明に係るインナーライナー層用ゴム組成物は、エチレン−ビニルアルコール共重合体をさらに含むことができる。
ゴム組成物中におけるエチレン−ビニルアルコール共重合体の含有量は、15〜40質量%であることが好ましい。含有量を15質量%以上とすることにより、インナーライナー層の耐空気透過性をより高める効果が得られ得る。一方、含有量を40質量%以下とすることにより、ゴム組成物調製時の混練性やインナーライナー層の機械強度等の悪化を防止することができる。エチレン−ビニルアルコール共重合体の含有量は、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは25質量%以上であり、またインナーライナー層及びこれを用いた空気入りタイヤの耐久性の観点から、30質量%以下であることがより好ましい。
エチレン−ビニルアルコール共重合体は、下記一般式(I):
Figure 2015110700
(式中、m及びnはそれぞれ独立して1〜100であり、xは1〜1000である。)で表わされるエチレン−ビニルアルコ−ル共重合体であることが好ましい。
エチレン−ビニルアルコ−ル共重合体のエチレン由来部位により、ゴム組成物に含まれる他の成分との相溶性が良好に付与され、エチレン−ビニルアルコ−ル共重合体は、インナーライナー層中に微細なサイズの分散形態で存在することができる。一方、エチレン−ビニルアルコ−ル共重合体は、ビニルアルコ−ル由来部位の寄与により良好な耐空気透過性を有する。したがって、インナーライナー層には、耐空気透過性に優れるエチレン−ビニルアルコ−ル共重合体が微細なサイズで島状に分散されることとなり、これにより、インナーライナー層の厚みが薄い場合においても、良好な耐空気透過性が発現される。インナーライナー層の厚みを小さくすることは、タイヤの軽量化、ひいては燃費の向上に有利である。
上記一般式(I)において、エチレン−ビニルアルコ−ル共重合体を構成するためにm及びnは1以上とされる。一方、m及びnがそれぞれ100以下であることにより、ゴム組成物中の他の成分との相溶性と、耐空気透過性とが両立されたエチレン−ビニルアルコ−ル共重合体が得られる。ゴム組成物中の他の成分との相溶性がより良好になる点で、mは5以上であることが好ましい。また、耐空気透過性がより良好になる点で、nは5以上であることが好ましい。一方、ビニルアルコール由来部位による耐空気透過性の発現を損ない難いことから、mは95以下であることが好ましく、80以下であることがより好ましい。また、エチレン由来部位によるゴム組成物中の他の成分との良好な相溶性の発現を損ない難いことから、nは95以下であることが好ましく、80以下であることがより好ましい。
上記一般式(I)において、エチレン−ビニルアルコ−ル共重合体を構成するためにxは1以上とされる。一方、xが1000以下であることにより、ゴム組成物調製時の混練性が確保され、エチレン−ビニルアルコ−ル共重合体が均一に分散されたゴム組成物、ひいてはインナーライナー層が得られる。ゴム組成物中の他の成分との相溶性及び耐空気透過性が良好に発現されることから、xは10以上であることが好ましく、混練性がより良好になることから、xは500以下であることが好ましく、100以下であることがより好ましい。
上記一般式(I)で表されるエチレン−ビニルアルコ−ル共重合体は、エチレン成分を25〜50モル%の範囲で含むことがSIBSとの相溶性の観点から好ましい。
上記一般式(I)で表されるエチレン−ビニルアルコ−ル共重合体は、他の成分との共重合体とされた状態でゴム組成物中に含有されてもよい。この場合におけるエチレン−ビニルアルコ−ル共重合体の含有量とは、上記一般式(I)で表される構造部分の含有量を意味する。
なお、エチレン−ビニルアルコ−ル共重合体の分子構造は、例えば赤外吸収スペクトル(IR)や核磁気共鳴スペクトル(NMR)等により確認することができる。
(4)その他の配合成分
本発明に係るインナーライナー層用ゴム組成物は、補強剤(例えばカーボンブラック)、顔料、加硫剤、加硫促進剤、各種オイル、老化防止剤、軟化剤、可塑剤、カップリング剤、粘着付与剤のような添加剤を含有することができる。これらの配合剤、添加剤の含有量は、一般的な量とすることができる。
また、本発明に係るインナーライナー層用ゴム組成物は、例えばブチル系ゴム(ハロゲン化ブチルゴム等)のようなジエン系ゴムなど、SIBS以外のゴム成分を含むことができるが、その含有量は、ゴム組成物全量を100質量%とするとき、15質量%以下とすることが好ましく、10質量%以下とすることがより好ましく、5質量%以下とすることがさらに好ましく、0質量%であることが特に好ましい。
<インナーライナー層及び空気入りタイヤ>
図1は、本発明に係る空気入りタイヤの一例を説明するためのタイヤ右半分を示す概略断面図(タイヤ子午線方向の半断面図)である。本発明に係る空気入りタイヤは、カーカス層と、カーカス層のタイヤ内側に配置されるインナーライナー層と、インナーライナー層のタイヤ内側に配置されるゴム層とを少なくとも備えるものであり、トラック、バス等の重荷重用空気入りタイヤであってもよいし、乗用車用空気入りタイヤであることもできるが、好ましくは重荷重用空気入りタイヤである。
図1に示される空気入りタイヤ100は、タイヤ周方向に延びる主溝5を有し、クラウン中心位置Aからショルダー部11にわたって形成されているトレッド部10;ショルダー部11から延びるバットレス部15;バットレス部15から延びるサイドウォール部20;サイドウォール部20から延び、ビードコア26が埋設されるとともに、チェーファー27が配置されたビード部25;左右一対のビードコア26間に装架され、両端をビードコア26のまわりに折り返して係止されるカーカス層30;カーカス層30のクラウン部外側に配置される複数のベルト層35;カーカス層30のタイヤ半径方向内側において、左右一対のビード部25間にわたって配置されるインナーライナー層40;インナーライナー層40のタイヤ半径方向内側において、左右一対のビード部25間にわたって配置されるゴム層50を含む。インナーライナー層40は、カーカス層及びゴム層50と接しており、密着している。
本発明の空気入りタイヤにおいてインナーライナー層40は、上述の本発明に係るゴム組成物から形成される。これにより、優れた耐空気透過性、耐久性及び転がり抵抗性を兼ね備えた空気入りタイヤとすることができる。
インナーライナー層40は、規定内圧を充填した状態でのタイヤ子午線方向断面における厚みが、0.05〜0.5mmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは0.1〜0.4mmの範囲内である。インナーライナー層40の厚みが0.05mm未満であると、生タイヤの加硫時に、インナーライナー層40がプレス圧力で破れてしまい、得られたタイヤにおいてエアーリーク現象が生じるおそれがある。一方、インナーライナー層40の厚みが0.5mmを超えると、タイヤの転がり抵抗性の面で不利である。インナーライナー層40の厚みが0.05〜0.5mmの範囲内とすることは、優れた耐空気透過性、耐久性及び転がり抵抗性を兼ね備えた空気入りタイヤを得るうえで望ましい。
本発明の空気入りタイヤは、次の(a)及び(b):
(a)インナーライナー層が、第1領域と、該第1領域とは異なる領域であって、第1領域よりも厚みが大きい第2領域とを含む、
(b)ゴム層が、第3領域と、第3領域とは異なる領域であって、第3領域よりも厚みが大きい第4領域とを含む、
の少なくともいずれかを満たしていることが好ましい。
条件(a)において、第1領域よりも厚みを大きくする第2領域は、耐空気透過性が経時的に比較的低くなりやすく、これにより周辺のタイヤ部材が酸化劣化して経時的に耐久性が低下しやすいような領域であり、これに対して第1領域は、このような懸念がなく、耐空気透過性が経時的にも良好な領域である。上記のような第2領域における厚みをより大きくすることにより、タイヤ部材の酸化劣化を効果的に抑制することができ、タイヤの耐久性及び耐空気透過性を向上させることができる。
なお、第2領域の厚みを大きくする分、第2領域の厚みを大きくしない場合と比べればタイヤ重量は増加するが、本発明によれば、所定のゴム組成物からなり、優れた耐空気透過性、耐久性及び転がり抵抗性を兼ね備えたインナーライナー層を用いるため、例えば従来のインナーライナー層と同等の耐空気透過性を得るためには、従来のインナーライナー層に比べて、より小さな厚みで足りる。
図1を参照して、第1領域は、より具体的には、インナーライナー層40におけるトレッド部10に対応する領域R1であることができる。トレッド部10に対応する領域とは、トレッド部10が有する最も外側の主溝5に対応する位置からタイヤ幅方向内側の領域をいう。この領域は、カーカス層30に加えてベルト層35及びトレッド部10が積層されているため、良好な耐空気透過性を有している。
第1領域よりも厚みを大きくする第2領域は、第1領域以外の少なくとも一部の領域であり、より具体的には、図1を参照して、ショルダー部11からバットレス部15に対応する領域R2、サイドウォール部20に対応する領域R3、ビード部25に対応する領域R4のいずれか1つ以上の領域であることができる。これらの領域の一部分の厚みを大きくするようにしてもよい。サイドウォール部20は薄いため、耐空気透過性が低下しやすい。また、ショルダー部11からバットレス部15に至る領域及びビード部25は、耐空気透過性が低下すると周辺のタイヤ部材の酸化劣化により耐久性が低下しやすい。
ショルダー部11からバットレス部15に対応する領域R2は、トレッド部10に対応する領域R1とサイドウォール部20に対応する領域R3との間に位置する領域であり、領域R2の少なくとも一部の厚みを大きくする場合、例えば、最大幅を有するベルト層35の末端35aからインナーライナー層40に垂線を下ろしたとき、その垂線とインナーライナー層40との交点を中心として、タイヤ子午線方向断面の内側に沿ってインナーペリフェリー(タイヤ子午線方向断面において、一方のビードトゥから他方のビードトゥまでのタイヤ内周面に沿った長さ)の5〜10%の範囲内の厚みを大きくすることが好ましい。これにより、過度にタイヤ重量を増加させることなく、タイヤ耐久性を向上させることができる。
領域R2の少なくとも一部の厚みを大きくする態様は、とりわけ重荷重用空気入りタイヤに好適に適用することができる。
サイドウォール部20に対応する領域R3は、ショルダー部11からバットレス部15に対応する領域R2とビード部25に対応する領域R4との間に位置する領域であり、領域R3の少なくとも一部の厚みを大きくする場合、例えば、カーカスラインの最大幅の点Bからインナーライナー層40に垂線を下ろしたとき、その垂線とインナーライナー層40との交点を中心として、インナーペリフェリーの3〜8%の範囲内の厚みを大きくすることが好ましい。これにより、過度にタイヤ重量を増加させることなく、タイヤ耐久性を向上させることができる。
領域R3の少なくとも一部の厚みを大きくする態様は、とりわけ乗用車用空気入りタイヤに好適に適用することができる。
ビード部25に対応する領域R4は、サイドウォール部20に対応する領域R3に続く領域であり、領域R4の少なくとも一部の厚みを大きくする場合、例えば、カーカス層30の末端30aからインナーライナー層40に垂線を下ろしたとき、その垂線とインナーライナー層40との交点を中心として、インナーペリフェリーの3〜10%の範囲内の厚みを大きくすることが好ましい。これにより、過度にタイヤ重量を増加させることなく、タイヤ耐久性を向上させることができる。領域R4の厚みを大きくすることは、耐空気透過性の低下により酸化劣化を生じてチェーファーセパレーション等の不具合を起こしやすいチェーファー27の酸化劣化防止にとりわけ有効であり、これによりタイヤの耐久性を向上させることができる。
領域R4の少なくとも一部の厚みを大きくする態様は、とりわけ重荷重用空気入りタイヤに好適に適用することができる。
インナーライナー層40の第1領域及び第2領域の厚みはそれぞれ、0.05〜0.5mmの範囲内にある限り特に制限されないが、第1領域の厚みT1に対する第2領域の厚みT2の比T2/T1は、1.05〜3であることが好ましく、1.1〜2であることがより好ましく、1.1〜1.7であることがさらに好ましい。この範囲内であれば、第2領域の厚みを大きくすることによる上述の効果を十分に得ることができる。
第2領域の厚みを大きくする方法は特に制限されず、1)第2領域に相当する部分を厚く成形する、2)第2領域に相当する部分において本発明に係るゴム組成物からなる層を複数積層する、等の方法を採用することができる。
ゴム層50は、インナーライナー層40のタイヤ半径方向内側において、左右一対のビード部25間にわたって配置される層であり、インナーライナー層40を保護する役割を担う。ゴム層50を備えることより、リム組み作業等の際に工具類が接触することによる損傷や、パンク修理等においてタイヤ内面をバフ処理する際における損傷がインナーライナー層40に生じることをより効果的に防止することができる。これにより、タイヤの耐久性及び耐空気透過性の低下を効果的に抑制することができる。
ゴム層50を構成するゴムは、耐空気透過性が良好なものであることが好ましく、具体例を挙げれば、例えば、天然ゴム;エポキシ化天然ゴム;イソプレンゴム;スチレンブタジエンゴム;ブタジエンゴム;ニトリルゴム;ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム等のブチル系ゴムのようなジエン系ゴムである。好ましくは耐空気透過性のより優れるブチル系ゴムである。
ゴム層50の厚みは、インナーライナー層40の損傷を効果的に防止するために、0.2〜2mmであることが好ましく、0.5〜1.5mmであることがより好ましい。
本発明の空気入りタイヤが上述の厚みに関する条件(a)及び(b)のうち、(b)を満たすものである場合、ゴム層50は、第3領域と、該第3領域とは異なる領域であって、第3領域よりも厚みが大きい第4領域とを含む。ここでいう厚みも、規定内圧を充填した状態でのタイヤ子午線方向断面における厚みである。本発明の空気入りタイヤが(a)を満たすものである場合、ゴム層50は(b)を満たすものであってもよいし、全領域にわたって均一な厚みを有していてもよい。インナーライナー層40が(a)を満たし、かつゴム層50が(b)を満たすことがより好ましい。
条件(b)において、第3領域よりも厚みを大きくする第4領域は、上述したような場面でインナーライナー層40に損傷が生じやすい領域、具体的には、ゴム層50におけるトレッド部10に対応する領域である。トレッド部10に対応する領域とは、トレッド部10が有する最も外側の主溝5に対応する位置からタイヤ幅方向内側の領域をいう。第3領域は、第4領域以外のすべての領域であることができる。
ゴム層50の第3領域及び第4領域の厚みはそれぞれ、0.2〜2mmの範囲内にある限り特に制限されないが、第3領域の厚みT3に対する第4領域の厚みT4の比T4/T3は、1.05〜20であることが好ましく、1.1〜15であることがより好ましく、1.2〜10であることがさらに好ましく、1.2〜5であることが特に好ましい。第4領域の厚みT4は、好ましくは0.5〜2mmであり、より好ましくは0.8〜1.5mmである。
ゴム層50は、押出成形、カレンダー成形のような従来公知の方法によって製造することができる。第4領域の厚みを大きくする方法は特に制限されず、1)第4領域に相当する部分を厚く成形する、2)第4領域に相当する部分において複数のゴム層を積層する、等の方法を採用することができる。
カーカス層30は、コードが配列・埋設されたゴム部材である。コードは、例えばポリエステル、ナイロン、アラミド等の有機繊維や、スチールからなる。カーカス層30を構成するゴムは特に制限されず、天然ゴム、イソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム等であることができる。カーカス層30は、通常の添加剤、例えばカーボンブラック、シリカのような充填剤を含有することができる。
空気入りタイヤは、上述の本発明に係るゴム組成物から形成されるインナーライナー層として用い、そのタイヤ半径方向内側にゴム層を配置すること以外は、一般的な製造方法に従って未加硫タイヤを構築し、これを加硫成形することよって製造することができる。具体的には、本発明に係るゴム組成物を例えばTダイ押出機を用いてシート状(フィルム状)に押出加工し(押出温度は例えば130〜200℃)、これをタイヤ成形機上でゴム層や他のタイヤ部材とともに貼り合わせて未加硫タイヤを形成した後、加硫機中で加熱加圧することによって空気入りタイヤを製造することができる。得られる空気入りタイヤは、インナーライナー層と隣接するゴムとが良好に接着しているとともに、優れた耐空気透過性、耐久性及び転がり抵抗性を示す。
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
表1〜3に示される構成の実施例1〜30及び比較例1〜9の空気入りタイヤを製造して、性能を評価した。
<実施例1>
(1)インナーライナー層(未加硫)の作製
配合剤として以下のものを準備した。
〔a〕スチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体(SIBS):カネカ(株)社製の「シブスターSIBSTAR 102T」(ショアA硬度25、スチレン成分含有量25質量%、GPC測定(ポリスチレン換算)による重量平均分子量:100000)、
〔b〕スチレン−無水マレイン酸共重合体(SMA):川原油化株式会社より入手した「SMA1000」(スチレン成分/無水マレイン酸成分モル比:50/50、重量平均分子量:5500、酸価:490)。
上記配合剤を表1に示される量比(表1に示される数値は質量部を表す。)で混練し、2軸押出機(スクリュ径:φ50mm、L/D:30、シリンダ温度:220℃)にてペレット化して、インナーライナー層用ゴム組成物を得た。その後、Tダイ押出機(スクリュ径:φ80mm、L/D:50、ダイリップ幅:500mm、シリンダ温度:220℃、フィルムゲージ:0.3mm)を用いてインナーライナー層用ゴム組成物の押出成形を行い、ポリマーシート(未加硫のインナーライナー層)を作製した。このポリマーシートの厚みは全体にわたって均一であり、その厚み(加硫後、規定内圧を充填した状態でのタイヤ子午線方向断面における厚み)は0.05mmとなるようにした。
(2)ゴム層(未加硫)の作製
Tダイ押出機を用いて、ブチルゴムからなるゴム層を作製した。この際、Tダイ押出機の押出口にプロファイルをつけて、トレッド部に対応する領域の厚み(加硫後、規定内圧を充填した状態でのタイヤ子午線方向断面における厚み)が1.0mm、その他の領域のすべての厚みが0.5mmとなるようにした。
(3)空気入りタイヤの製造
上記ポリマーシートをインナーライナー層(IL層)に適用し、そのタイヤ半径方向内側に上記ゴム層を配置して、生タイヤを製造し、次に加硫工程において、170℃で20分間プレス成形して、図1に示す基本構造を有する195/65R15サイズの空気入りタイヤを製造した。
<実施例2〜15>
インナーライナー層用ゴム組成物に配合される配合剤の量を表1に示されるとおりとしたこと、及びTダイ押出機の押出口にプロファイルをつけて、インナーライナー層における表1に示される領域の厚みが0.075mmとなるようにしたこと以外は、実施例1と同様にして空気入りタイヤを製造した。
<実施例16〜30>
表2に示されるように、スチレン−無水マレイン酸共重合体(SMA)の代わりに、スチレン−無水マレイン酸共重合体のモノエステル化物(SMAモノエステル化物)〔川原油化株式会社より入手した「SMA1440」(スチレン成分/無水マレイン酸由来成分モル比:80/20、重量平均分子量:7000、酸価:200)〕を用いたこと以外は、それぞれ実施例1〜15と同様にして空気入りタイヤを製造した。
<比較例1〜4>
インナーライナー層用ゴム組成物に配合される配合剤の種類及び量を表3に示されるとおりとしたこと以外は、実施例1と同様にして空気入りタイヤを製造した。比較例1において、ブチルゴム(IIR)には、エクソンモービル(株)製の「エクソンクロロブチル1068」を用いた。また比較例1(比較例5〜9においても同じ。)において、カーボンブラックには、東海カーボン(株)製の「シーストV」(N660、N2SA:27m2/g)を用いた。
<比較例5〜9>
インナーライナー層用ゴム組成物に配合される配合剤の種類及び量を表3に示されるとおりとしたこと以外は、それぞれ実施例1〜5と同様にして空気入りタイヤを製造した。
(タイヤ評価試験)
実施例及び比較例で作製した空気入りタイヤについて、以下の評価試験を行った。評価結果を指数で表わしたものを表1〜3に示す。
〔1〕タイヤ重量の測定
タイヤ重量を測定し、下記式:
タイヤ重量指数=(比較例1のタイヤ重量)/(各実施例・比較例のタイヤ重量)×100
に従って、タイヤ重量指数を算出した。タイヤ重量指数が大きいほど、タイヤ重量が小さく、軽量化の達成度が高い。
〔2〕耐空気透過性の評価
空気入りタイヤをリム(22.5×7.50)に装着し、初期圧力900kPa、室温21℃、無負荷条件にて3ヶ月間静置する間、4日毎に内圧を測定した。初期圧力P0(kPa)、測定圧力Pt(kPa)、経過時間t(日)として、下記式:
t/P0=exp(−αt)
に基づいて、回帰係数αを算出した。得られた回帰係数αから、t=30(日)として、下記式:
β=〔1−exp(−αt)〕×100
に基づいて、1ヶ月当たりの圧力低下率β(%/月)を算出した。そして、下記式:
耐空気透過性指数=(比較例1のβ値)/(各実施例・比較例のβ値)×100
に従って、耐空気透過性指数を算出した。耐空気透過性指数が大きいほど、耐空気透過性が高い。
〔3〕タイヤ耐久性の評価
空気入りタイヤをリム(22.5×7.50)に装着し、JIS D4230に準拠する室内ドラム試験機(ドラム径1707mm)にかけて、酸素濃度60%に調整した空気を充填して空気圧をJATMA規定空気圧900kPaにし、JATMA規定負荷能力の150%を負荷し、速度81km/hの条件で、タイヤ故障を起こすまでの走行距離を測定した。そして、下記式:
タイヤ耐久性指数=(各実施例・比較例の走行距離)/(比較例1の走行距離)×100
に従って、タイヤ耐久性指数を算出した。タイヤ耐久性指数が大きいほど、タイヤ耐久性が高い。
〔4〕耐剥離性の評価
JIS K 6256「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−接着性の求め方」に準じて剥離試験を行った。まず、厚さ0.05mmの上記ポリマーシート(未加硫のインナーライナー層)、厚さ1mmの上記ゴム層及び補強キャンバス生地を、この順番で重ねて170℃の条件下で12分間加圧加熱することによって剥離用試験片(試験片の幅:25mm)を作製した。得られた試験片を用いて23℃の室温条件下で剥離試験を行い、インナーライナー層(IL層)とゴム層との剥離力を測定した。そして、下記式:
耐剥離性指数=(各実施例・比較例の剥離力)/(比較例1の剥離力)×100
に従って、耐剥離性指数を算出した。耐剥離性指数が大きいほど、インナーライナー層(IL層)とゴム層との接着力が高い。なお、この耐剥離性の評価は、実施例1、6、11、16、21、26及び比較例1〜4について行った。
〔5〕転がり抵抗性の評価
粘弾性スペクトロメーターVES((株)岩本製作所)を用いて、温度70℃、初期歪10%、動歪2%の条件下でtanδを測定した。そして、下記式:
転がり抵抗性指数=(比較例1のtanδ)/(各実施例・比較例のtanδ)×100
に従って、転がり抵抗性指数を算出した。転がり抵抗性指数が大きいほど、転がり抵抗性に優れる。
Figure 2015110700
Figure 2015110700
Figure 2015110700
5 主溝、10 トレッド部、11 ショルダー部、15 バットレス部、20 サイドウォール部、25 ビード部、26 ビードコア、27 チェーファー、30 カーカス層、30a カーカス層の末端、35 ベルト層、35a 最大幅を有するベルト層の末端、40 インナーライナー層、50 ゴム層、100 空気入りタイヤ、A クラウン中心位置、B カーカスラインの最大幅の点、R1 トレッド部に対応する領域、R2 ショルダー部からバットレス部に対応する領域、R3 サイドウォール部に対応する領域、R4 ビード部に対応する領域。

Claims (13)

  1. 60〜99.5質量%のスチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体と、
    0.5〜40質量%のスチレン−無水マレイン酸共重合体又はその誘導体と、
    を含む、タイヤのインナーライナー層用ゴム組成物。
  2. 前記誘導体は、スチレン−無水マレイン酸共重合体のモノエステル化物又はアンモニウム塩である、請求項1に記載のゴム組成物。
  3. 前記スチレン−無水マレイン酸共重合体は、重量平均分子量が4000〜20000であり、酸価が50〜600である、請求項1に記載のゴム組成物。
  4. 前記スチレン−無水マレイン酸共重合体のモノエステル化物は、重量平均分子量が5000〜12000であり、酸価が50〜400である、請求項2に記載のゴム組成物。
  5. 前記スチレン−無水マレイン酸共重合体を構成するスチレン成分と無水マレイン酸成分との含有比が、モル比で50/50〜90/10である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のゴム組成物。
  6. 前記スチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体は、スチレン成分含有量が10〜30質量%である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のゴム組成物。
  7. 15〜40質量%のエチレン−ビニルアルコール共重合体をさらに含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載のゴム組成物。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載のゴム組成物から形成されるタイヤのインナーライナー層。
  9. 厚みが0.05〜0.5mmである、請求項8に記載のインナーライナー層。
  10. カーカス層と、
    前記カーカス層のタイヤ内側に配置される請求項8又は9に記載のインナーライナー層と、
    前記インナーライナー層のタイヤ内側に配置されるゴム層と、
    を備える、空気入りタイヤ。
  11. 次の(a)及び(b):
    (a)前記インナーライナー層が、第1領域と、前記第1領域とは異なる領域であって、前記第1領域よりも厚みが大きい第2領域とを含む、
    (b)前記ゴム層が、第3領域と、前記第3領域とは異なる領域であって、前記第3領域よりも厚みが大きい第4領域とを含む、
    の少なくともいずれかを満たす、請求項10に記載の空気入りタイヤ。
  12. 前記第1領域は、前記インナーライナー層におけるトレッド部に対応する領域であり、
    前記第2領域は、前記インナーライナー層における、前記第1領域以外の少なくとも一部の領域である、請求項11に記載の空気入りタイヤ。
  13. 前記第4領域は、前記ゴム層におけるトレッド部に対応する領域であり、
    前記第3領域は、前記ゴム層における、前記第4領域以外のすべての領域である、請求項11又は12に記載の空気入りタイヤ。
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