JP5632686B2 - 空気入りタイヤ - Google Patents
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本発明の一実施の形態において、ポリマー積層体は、スチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体(SIBS)からなる厚さ0.05mm〜0.6mmの第1層と、スチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体(SIS)およびスチレン−イソブチレンジブロック共重合体(SIB)の少なくともいずれかを含む第2層とからなり、前記第2層の厚さが0.01mm〜0.3mmである。
本発明の一実施の形態において、第1層は、スチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体(SIBS)からなる。SIBSのイソブチレンブロック由来により、SIBSからなるポリマーフィルムは優れた耐空気透過性を有する。したがって、SIBSからなるポリマーフィルムをインナーライナーに用いた場合、耐空気透過性に優れた空気入りタイヤを得ることができる。
本発明において、第2層はスチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体(以下、「SIS」ともいう。)からなるSIS層およびスチレン−イソブチレンジブロック共重合体(以下、「SIB」ともいう。)からなるSIB層の少なくともいずれかを含む。
本発明においてインナーライナーに用いられるポリマー積層体の構造は各種の形態を採用できる。これらの形態をインナーライナーの模式的断面図で示す、図2〜図5に基づき説明する。
ポリマー積層体10は、図2に示すように、第1層としてのSIBS層11および第2層としてのSIS層12から構成される。該ポリマー積層体10を空気入りタイヤのインナーライナーに適用する場合、SIS層12がカーカスプライ61に接するようにタイヤ半径方向外側に向けて設置すると、タイヤの加硫工程において、SIS層12とカーカス61との接着強度を高めることができる。したがって得られた空気入りタイヤは、インナーライナーとカーカスプライ61のゴム層とが良好に接着しているため、優れた耐空気透過性および耐久性を有することができる。
ポリマー積層体10は、図3に示すように、第1層としてのSIBS層11および第2層としてのSIB層13から構成される。該ポリマー積層体10を空気入りタイヤのインナーライナーに適用する場合、SIB層13の面を、カーカスプライ61に接するようにタイヤ半径方向外側に向けて設置すると、タイヤの加硫工程において、SIB層13とカーカス61との接着強度を高めることができる。したがって得られた空気入りタイヤは、インナーライナーとカーカスプライ61のゴム層とが良好に接着しているため、優れた耐空気透過性および耐久性を有することができる。
ポリマー積層体10は、図4に示すように、第1層としてのSIBS層11、第2層としてのSIS層12およびSIB層13が前記の順に積層されて構成される。該ポリマー積層体10を空気入りタイヤのインナーライナー61に適用する場合、SIB層13の面を、カーカスプライ61に接するようにタイヤ半径方向外側に向けて設置すると、タイヤの加硫工程において、SIB層13とカーカスプライ6との接着強度を高めることができる。したがって得られた空気入りタイヤは、インナーライナーとカーカスプライ61のゴム層とが良好に接着しているため、優れた耐空気透過性および耐久性を有することができる。
ポリマー積層体10は、図5に示すように、第1層としてのSIBS層11、第2層としてのSIB層13およびSIS層12が前記の順に積層されて構成される。該ポリマー積層体10を空気入りタイヤのインナーライナーに適用する場合、SIS層12の面を、カーカスプライ61に接するようにタイヤ半径方向外側に向けて設置すると、タイヤの加硫工程において、SIS層12とカーカスプライ61との接着強度を高めることができる。したがって得られた空気入りタイヤ1は、インナーライナーとカーカスプライ61のゴム層とが良好に接着しているため、優れた耐空気透過性および耐久性を有することができる。
ポリマー積層体10は、SIBSと、SISおよびSIBの少なくともいずれかを、たとえば形態1〜4のいずれかに記載された順序でラミネート押出や共押出などの積層押出をして得ることができる。
本発明の空気入りタイヤは、一般的な製造方法を用いることができる。前記ポリマー積層体10を空気入りタイヤ1の生タイヤのインナーライナーに適用して他の部材とともに加硫成形することによって製造することができる。ポリマー積層体10を生タイヤに配置する際は、ポリマー積層体10の第2層であるSIS層12またはSIB層13が、カーカスプライ61に接するようにタイヤ半径方向外側に向けて配置する。このように配置すると、タイヤ加硫工程において、SIS層12またはSIB層13とカーカス6との接着強度を高めることができる。得られた空気入りタイヤは、インナーライナーとカーカスプライ61のゴム層とが良好に接着しているため、優れた耐空気透過性および耐久性を有することができる。
攪拌機付き2L反応容器に、メチルシクロヘキサン(モレキュラーシーブスで乾燥したもの)589mL、n−ブチルクロライド(モレキュラーシーブスで乾燥したもの)613ml、クミルクロライド0.550gを加えた。反応容器を−70℃に冷却した後、α−ピコリン(2−メチルピリジン)0.35mL、イソブチレン179mLを添加した。さらに四塩化チタン9.4mLを加えて重合を開始し、−70℃で溶液を攪拌しながら2.0時間反応させた。次に反応容器にスチレン59mLを添加し、さらに60分間反応を続けた後、大量のメタノールを添加して反応を停止させた。反応溶液から溶剤などを除去した後に、重合体をトルエンに溶解して2回水洗した。このトルエン溶液をメタノール混合物に加えて重合体を沈殿させ、得られた重合体を60℃で24時間乾燥することによりスチレン−イソブチレンジブロック共重合体を得た。
重量平均分子量 :70,000
<SIBS>
カネカ(株)社製のシブスターSIBSTAR 102T(ショアA硬度25、スチレン成分含有量25質量%、重量平均分子量:100,000)を用いた。
クレイトンポリマー社製のD1161JP(スチレン成分含有量15質量%、重量平均分子量:150,000)を用いた。
上記、SIBS、SISおよびSIBを、2軸押出機(スクリュ径:φ50mm、L/D:30、シリンダ温度:220℃)にてペレット化した。その後、Tダイ押出機(スクリュ径:φ80mm、L/D:50、ダイリップ幅:500mm、シリンダ温度:220℃、フィルムゲージ:0.3mm)、またはインフレーション共押出機にてインナーライナーを作製した。
比較例1のインナーライナーには、次の配合成分をバンバリーミキサーで混合し、カレンダーロールにてシート化して厚さ1.0mmのポリマーフィルムを得た。Gs/Gbの値は1である。
天然ゴム(注2) 10質量部
フィラー(注3) 50質量部
(注1)エクソンモービル(株)社製の「エクソンクロロブチル 1068」。
(注2)TSR20。
(注3)東海カーボン(株)社製の「シーストV」(N660、窒素吸着比表面積:27m2/g)。
上述の方法で製造した厚さ0.6mmのSIBS層をインナーライナーとして用いた。Gs/Gbの値は1である。
0.40mmのSIBS層と0.20mmのSIS層の複合層をインナーライナーとして用いた。Gs/Gbの値は1である。
参考例1〜4は、第1層にSIBSを、第2層にSISを用いており、Gs/Gbの値は、参考例1が最も高く、参考例4が最も低い。
実施例5〜8は、第1層にSIBSを、第2層にSIBを用いており、Gs/Gbの値は、実施例5が最も高く、実施例8が最も低い。比較例4はGs/Gbの値が1である。
実施例9〜12は、第1層にSIBSを、第2層にSISとSIBの複合層を用いている。Gs/Gbの値は、実施例9が最も高く、実施例12は最も低い。比較例5はGs/Gbの値が1である。
実施例、参考例、比較例のポリマー積層体および該ポリマー積層体をインナーライナーに用いて空気入りタイヤを製造し以下の性能試験を行った。
インナーライナー(ポリマー積層体またはポリマーシート)と、カーカス用ゴムシート(成分:天然ゴムおよびSBR)を重ねて170℃の条件下で12分間加圧加熱することによって剥離用試験片を作製した。なお、ポリマー積層体は、SIS層またはSIB層がゴムシートと接触するように重ねた。得られた試験片を用いて、JIS K 6256「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−接着性の求め方」にしたがって剥離試験を行い、インナーライナーとカーカスの剥離力(IL/カーカス剥離力)を測定した。試験片の大きさは25mm幅で、剥離試験は23℃の室温条件下で行った。インナーライナーとカーカス剥離力は大きいほど好ましい。
JIS K 6260「加硫ゴム及び熱可塑性ゴムのデマチャ屈曲亀裂試験方法」に準じて、中央に溝のある所定の試験片を作製した。インナーライナーは、厚さ0.3mmシートをゴムに貼り付けて加硫し、所定の試験片を作製した。試験片の溝の中心にあらかじめ切り込みを入れ、繰り返し屈曲変形を与え亀裂成長を測定する試験を行った。雰囲気温度23℃、歪30%、周期5Hzで、70万回、140万回、210万回時に亀裂長さを測定し、亀裂が1mm成長するのに要した屈曲変形の繰り返し回数を算出した。比較例1の値を基準(100)として、実施例、参考例および比較例のポリマー積層体の屈曲疲労性について指数表示した。数値が大きい方が、亀裂が成長しにくく良好といえる。例えば、参考例1の指数は以下の式で求められる。
<静的空気圧低下率試験>
上述の方法で製造した195/65R15スチールラジアルPCタイヤをJIS規格リム15×6JJに組み付け、初期空気圧300Kpaを封入し、90日間室温で放置し、空気圧の低下率を計算した。
<平均厚さの測定>
195/65R15スチールラジアルPCタイヤを周方向に8等分し、それぞれの箇所で、幅20mmでタイヤ径方向に沿って切断した8個のカットサンプルを作成し、この8個のカットサンプルについて、それぞれのバットレス領域Rsとビード領域Rbにおいて等間隔に5等分した5点についてインナーライナー層の厚さを測定した。それぞれ測定した合計40点の測定値の算術平均値をGs、Gbとした。
195/65R15スチールラジアルPCタイヤをJIS規格リム15×6JJに組み付け、正規の空気圧を充填し、JATMA YEAR BOOKで空気圧−付加能力対応表より、この空気圧に対応する最大荷重を負荷し、速度80km/hでドラム上で走行し、外観目視にて確認可能な損傷が発生した時点で走行を終了し走行距離を求めた。比較例1の走行距離を100とし指数で示す。指数が大きいほど、耐クラック性が優れている。
表1において参考例1〜4は、第1層としてのSIBS層(厚さ0.4mm)を、第2層としてのSIS層(厚さ0.2mm)からなるポリマー積層体を用いている。そしてGs/Gbは、参考例1が0.75でもっとも大きく、参考例4は0.33で最も小さい。比較例1〜3は、Gs/Gbは、いずれも1である。いずれの参考例も耐クラック性指数は比較例1よりも改善されている。但し、参考例4の耐クラック性は、比較例3と同程度である。
Claims (5)
- タイヤ内側にインナーライナーを備えた空気入りタイヤであって、
前記インナーライナーは、スチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体からなる厚さ0.05mm〜0.6mmの第1層と、スチレン−イソブチレンジブロック共重合体、または、スチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体およびスチレン−イソブチレンジブロック共重合体を含み、厚さが0.01mm〜0.3mmである第2層とからなるポリマー積層体で構成され、前記第2層がカーカスプライのゴム層と接するように配置され、
前記スチレン−イソブチレンジブロック共重合体は直鎖状であり、スチレン成分含有量が10〜35質量%であり、
前記インナーライナーは、タイヤ最大幅位置からビードトウに亘るビード領域Rbの平均厚さGbより、タイヤ最大幅位置からベルト層端の対応位置Luに亘るバットレス領域Rsの平均厚さGsが薄い、空気入りタイヤ。 - 前記インナーライナーのバットレス領域の平均厚さGsと、ビード領域の平均厚さGbの比(Gs/Gb)は、0.5〜0.7である請求項1に記載の空気入りタイヤ。
- 前記インナーライナーのバットレス領域の平均厚さGsは、0.05〜0.40mmである請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
- 前記スチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体はスチレン成分含有量が10〜30質量%である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
- 前記スチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体は、スチレン成分含有量が10〜30質量%である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
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