JP2012036039A - ビス(フルオロスルホニル)イミドの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】一般的な材質の反応容器が使用可能なビス(フルオロスルホニル)イミドの製造方法であって、フルオロ硫酸と尿素とを三酸化硫黄の存在下で反応させることにより、炭酸ガスの発生と反応熱を制御しつつ、従来よりも低い反応温度で速やかにビス(フルオロスルホニル)イミドを製造することができる。
【選択図】なし
Description
[1] フルオロ硫酸と尿素とを三酸化硫黄の存在下で反応させることを特徴とするビス(フルオロスルホニル)イミドの製造方法。
[2] 反応容器内にフルオロ硫酸と三酸化硫黄とを予め投入して加熱し、前記反応容器に尿素を添加して反応させる工程を備えることを特徴とする前項1に記載のビス(フルオロスルホニル)イミドの製造方法。
[3] 第1のフルオロ硫酸に尿素を反応させることなく混合して、未反応混合液を調製する工程と、
反応容器内に予め投入された第2のフルオロ硫酸を加熱し、前記反応容器に前記未反応混合液を滴下して反応させる工程を備え、
前記未反応混合液及び前記反応容器内のいずれか一方又は両方に三酸化硫黄を添加することを特徴とする前項1に記載のビス(フルオロスルホニル)イミドの製造方法。
[4] 前記反応容器中の反応温度が、50〜100℃の範囲であることを特徴とする前項1乃至3のいずれか一項に記載のビス(フルオロスルホニル)イミドの製造方法。
[5] 三酸化硫黄が、尿素の質量部に対して0.1〜10倍の範囲であることを特徴とする前項1乃至4のいずれか一項に記載のビス(フルオロスルホニル)イミドの製造方法。
[6] 前記反応容器が、ガラス製又は金属製であることを特徴とする前項2乃至5のいずれか一項に記載のビス(フルオロスルホニル)イミドの製造方法。
[7] フルオロ硫酸と尿素と三酸化硫黄とを50℃以下で混合して、混合液を調製する工程と、
加熱している反応容器に前記混合液を供給し、少なくともビス(フルオロスルホニル)イミドを含む反応液を生成する工程と、
前記反応容器から前記反応液を回収する工程と、を備えることを特徴とする前項1に記載のビス(フルオロスルホニル)イミドの製造方法。
[8] 前記反応容器中の反応温度が、50〜100℃の範囲であることを特徴とする前項7に記載のビス(フルオロスルホニル)イミドの製造方法。
[9] 三酸化硫黄が、尿素の質量部に対して0.1〜10倍の範囲であることを特徴とする前項7又は8に記載のビス(フルオロスルホニル)イミドの製造方法。
[10] 前記反応容器が、ガラス製又は金属製であることを特徴とする前項7乃至9のいずれか一項に記載のビス(フルオロスルホニル)イミドの製造方法。
[11] 前記反応容器への前記混合液の供給速度は、1時間当たりの前記尿素の供給量が当該反応容器に含まれる反応液の重量の15%以下とすることを特徴とする前項7乃至10のいずれか一に記載のビス(フルオロスルホニル)イミドの製造方法。
[12] 前記混合液中の前記フルオロ硫酸が、当該混合液中に溶解している前記尿素の質量部に対して2〜10倍の範囲であることを特徴とする前項7乃至11のいずれか一項に記載のビス(フルオロスルホニル)イミドの製造方法。
また、反応中に水が副生しないため、一般的な材質の反応容器を用いることができる。
以下、本発明を適用した実施形態の一例について詳細に説明する。
本発明を適用した第1の実施形態であるビス(フルオロスルホニル)イミドの製造方法は、反応容器内にフルオロ硫酸と三酸化硫黄とを予め投入して加熱し、前記反応容器に尿素を添加して反応させる工程(添加反応工程)を備えて概略構成されている。以下、具体的に説明する。
添加反応工程では、先ず、反応容器内にフルオロ硫酸と三酸化硫黄とを予め投入して加熱する。次に、加熱している上記反応容器に尿素粉末を添加する。このようにして、フルオロ硫酸と尿素とを三酸化硫黄の存在下で反応させる。
本発明を適用した第2の実施形態であるビス(フルオロスルホニル)イミドの製造方法は、第1のフルオロ硫酸に尿素を反応させることなく混合して、未反応混合液を調製する工程(調製工程)と、反応容器内に予め投入された第2のフルオロ硫酸を加熱し、反応容器に上記未反応混合液を滴下して反応させる工程(滴下反応工程)を備えている。そして、上記未反応混合液及び上記反応容器内のいずれか一方又は両方に三酸化硫黄を添加することを特徴としている。以下、各工程について具体的に説明する。
先ず、フルオロ硫酸に尿素を反応させることなく混合して、尿素とフルオロ硫酸との未反応混合液(以下、未反応混合液という)を調製する。未反応混合液の調製は、例えば0〜30℃に冷却しているフルオロ硫酸に、尿素を少量ずつ添加することで容易に調製することができる。ここで、フルオロ硫酸の温度が100℃よりも高いと添加した尿素とフルオロ硫酸との反応が進行してしまう。したがって、本発明の調製工程では、尿素とフルオロ硫酸とを反応させずに混合して、フルオロ硫酸に尿素を溶解させることが重要である。
ところで、第1の実施形態では、尿素粉末を添加しているが、尿素粉末は吸湿性が高いため目詰まりを生じるなど、取り扱いが困難となる場合がある。これに対して、このようにして調製された未反応混合液は、常温で安定性も良く、取り扱いも非常に容易である。
次に、反応容器内に予め投入された第2のフルオロ硫酸を加熱する。
ここで、本実施形態では、上記未反応混合液及び上記反応容器内のいずれか一方又は両方に三酸化硫黄を添加することを特徴としている。次に、反応容器中の加熱しているフルオロ硫酸に上記未反応混合液を滴下して、尿素とフルオロ硫酸とを反応させる。本発明では、上記調製工程によって尿素を予めフルオロ硫酸に溶解しており、上記未反応混合液及び上記反応容器内のいずれか一方又は両方に三酸化硫黄を添加していることとなる。そして、フルオロ硫酸に溶解した尿素が反応容器内に滴下されて高温のフルオロ硫酸に接触することにより、尿素とフルオロ硫酸との反応が三酸化硫黄の存在下で速やかに進行する。このように、フルオロ硫酸に溶解した尿素を滴下しながら順次反応させることによって、炭酸ガスの発生と反応熱を制御することができる。したがって、急激な炭酸ガスの発生および激しい発熱を伴って、反応が暴走的に進行することがない。
また、未反応混合液を滴下中のフルオロ硫酸の反応温度は、50〜100℃の範囲であることが好ましく、60〜90℃の範囲であることがより好ましい。反応温度が50℃未満であると、反応の蓄積が起こりやすくなるために好ましくない。一方、100℃を超えると三酸化硫黄が揮発してしまうために好ましくない。
また、本実施形態では、尿素を未反応混合液として取り扱うため、常温で安定性も良く、取り扱いも非常に容易である。
本発明を適用した第3の実施形態であるビス(フルオロスルホニル)イミドの製造方法は、フルオロ硫酸と尿素と三酸化硫黄とを混合して調製する工程(調製工程)と、加熱している反応容器に上記混合液を供給し、少なくともビス(フルオロスルホニル)イミドを含む反応液を生成する工程(反応・生成工程)と、上記反応容器から上記反応液を回収する工程(回収工程)と、を備えて概略構成されている。以下、各工程について具体的に説明する。
先ず、フルオロ硫酸、尿素、三酸化硫黄の混合液を調製する。混合液の調製は、50℃未満でフルオロ硫酸に、尿素と三酸化硫黄とを少量ずつ添加することで容易に調製することができる。
次に、加熱している反応容器に上記混合液を供給して、少なくともビス(フルオロスルホニル)イミドを含む反応液を生成させる。本発明では、上記調製工程によって尿素と三酸化硫黄とを予めフルオロ硫酸に溶解していることとなる。そして、フルオロ硫酸に溶解した尿素を、反応容器中に供給し、高温のフルオロ硫酸又はビス(フルオロスルホニル)イミドと接触させることにより、尿素とフルオロ硫酸との反応が三酸化硫黄の存在下で速やかに進行する。このように、フルオロ硫酸に溶解した尿素と三酸化硫黄とを、加熱している反応容器に供給しながら順次反応させることによって、炭酸ガスの発生と反応熱を制御することができる。したがって、急激な炭酸ガスの発生および激しい発熱を伴って、反応が暴走的に進行することがない。また、反応系にフッ化水素が存在することがないため、ガラス製や金属製の反応容器を用いた場合でも腐食されることがない。
なお、本実施形態の反応機構は、上述した第1及び第2の実施形態と同様である(上記式(4)を参照)。
すなわち、上記反応液とは、上記式(4)に示すように、生成したビス(フルオロスルホニル)イミドと、副生したフルオロ硫酸アンモニウム及びスルファミン酸と、未反応のフルオロ硫酸と、からなるスラリー状の混合液である。したがって、反応容器内を撹拌しながら反応させることが好ましい。
また、反応容器への上記混合液の供給方法は、特に限定されるものではなく、上記供給速度に応じて適宜選択することができる。具体的には、例えば、定量ポンプによる滴下、タンクなどからの滴下、圧送等が挙げられる。
次に、上記反応・生成工程が開始され、反応容器内の反応液が所定量に達した後、上記反応容器から上記反応液を回収する。反応容器からの反応液の回収方法は、反応容器から反応液を定量的に抜き出せる方法であれば、限定されるものではない。上記方法としては、例えば、反応容器に排出管を設けたオーバーフロー方式、定量ポンプによる抜き出し等が挙げられる。
このように、反応容器への混合液の供給により生成した、ビス(フルオロスルホニル)イミドと、副生したフルオロ硫酸のアンモニウム塩及びスルファミン酸と、未反応のフルオロ硫酸とを含むスラリー状の反応液を連続的に排出させることにより、長時間安定して反応を続けることが可能となる。
攪拌機、温度計を備えた3Lのガラス製の反応器にフルオロ硫酸1.6kgを仕込み、冷却しながら尿素400gを少量ずつ添加し、尿素のフルオロ硫酸溶液を調製した。
攪拌機、温度計を備えた100mLのガラス製反応器に、材質がSUS304からなるテストピースを容器内に入れ、フルオロ硫酸5g、三酸化硫黄8gを仕込み、加熱した。
50℃で還流している反応器に、尿素のフルオロ硫酸溶液を30分かけて15g滴下した。滴下と同時にCO2ガスの発生が確認され、また反応の進行に伴って還流が収まり、滴下終了時の反応温度は80℃に達した。
滴下終了後、速やかに冷却し、反応液を水に溶解して19F−NMRにて分析を行った。
その結果、51.4ppmにビス(フルオロスルホニル)イミドのピークが確認された。また、内部標準添加法によるビス(フルオロスルホニル)イミドの尿素基準の収率は、46%であった。
また、使用後のガラス製反応器には重量減少が見られず、SUS304製のテストピースにおいても、腐食が発生していないことが目視にて確認された。
攪拌機、温度計を備えた3Lのガラス製反応器に、三酸化硫黄800gを仕込み、0〜10℃で、実施例1と同様に調製した尿素のフルオロ硫酸溶液2kgを滴下した。
攪拌機、温度計、ガス流量計を備えた500mLのSUS304製の反応器を90℃で加熱しているところへ、上記混合液を400g/Hrの速度で滴下した。混合溶液を500g滴下した頃から反応器に備え付けられた排出管から反応液の排出が確認され、その後は定量的に反応液を排出し続けた。滴下中の反応器中の反応温度は、80〜90℃を保っていた。混合溶液の滴下は7時間続けて行い、合計2.8kg(尿素400g)を滴下した。反応液を室温まで冷却後、水に溶解し、19F−NMRにて分析を行った。その結果、51.4ppmにビス(フルオロスルホニル)イミドのピークが確認された。内部標準添加法によりビス(フルオロスルホニル)イミドの尿素基準の収率は42%であった
攪拌機、温度計を備えた100mLのガラス製反応器に、材質がSUS304からなるテストピースを容器内に入れ、フルオロ硫酸5gを仕込み、80℃に加熱した。
次に、反応器に実施例1と同様に調製した尿素のフルオロ硫酸溶液を30分かけて15g滴下した。尿素のフルオロ硫酸溶液を全て滴下しても溶液内に結晶の析出はみられなかった。また、CO2ガスの発生も確認できなかったが、そのままの温度で反応を48時間行った。
冷却後、反応液を水に溶解し、19F−NMRにて分析を行った。
その結果、51.4ppmにビス(フルオロスルホニル)イミドのピークが確認された。また、内部標準添加法によるビス(フルオロスルホニル)イミドの尿素基準の収率は、18%であった。
また、使用後のガラス製反応器には重量減少が見られ、SUS304製のテストピースにおいても、激しい腐食が発生していることが目視にて確認された。
Claims (12)
- フルオロ硫酸と尿素とを三酸化硫黄の存在下で反応させることを特徴とするビス(フルオロスルホニル)イミドの製造方法。
- 反応容器内にフルオロ硫酸と三酸化硫黄とを予め投入して加熱し、前記反応容器に尿素を添加して反応させる工程を備えることを特徴とする請求項1に記載のビス(フルオロスルホニル)イミドの製造方法。
- 第1のフルオロ硫酸に尿素を反応させることなく混合して、未反応混合液を調製する工程と、
反応容器内に予め投入された第2のフルオロ硫酸を加熱し、前記反応容器に前記未反応混合液を滴下して反応させる工程を備え、
前記未反応混合液及び前記反応容器内のいずれか一方又は両方に三酸化硫黄を添加することを特徴とする請求項1に記載のビス(フルオロスルホニル)イミドの製造方法。 - 前記反応容器中の反応温度が、50〜100℃の範囲であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のビス(フルオロスルホニル)イミドの製造方法。
- 三酸化硫黄が、尿素の質量部に対して0.1〜10倍の範囲であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のビス(フルオロスルホニル)イミドの製造方法。
- 前記反応容器が、ガラス製又は金属製であることを特徴とする請求項2乃至5のいずれか一項に記載のビス(フルオロスルホニル)イミドの製造方法。
- フルオロ硫酸と尿素と三酸化硫黄とを50℃以下で混合して、混合液を調製する工程と、
加熱している反応容器に前記混合液を供給し、少なくともビス(フルオロスルホニル)イミドを含む反応液を生成する工程と、
前記反応容器から前記反応液を回収する工程と、を備えることを特徴とする請求項1に記載のビス(フルオロスルホニル)イミドの製造方法。 - 前記反応容器中の反応温度が、50〜100℃の範囲であることを特徴とする請求項7に記載のビス(フルオロスルホニル)イミドの製造方法。
- 三酸化硫黄が、尿素の質量部に対して0.1〜10倍の範囲であることを特徴とする請求項7又は8に記載のビス(フルオロスルホニル)イミドの製造方法。
- 前記反応容器が、ガラス製又は金属製であることを特徴とする請求項7乃至9のいずれか一項に記載のビス(フルオロスルホニル)イミドの製造方法。
- 前記反応容器への前記混合液の供給速度は、1時間当たりの前記尿素の供給量が当該反応容器に含まれる反応液の重量の15%以下とすることを特徴とする請求項7乃至10のいずれか一に記載のビス(フルオロスルホニル)イミドの製造方法。
- 前記混合液中の前記フルオロ硫酸が、当該混合液中に溶解している前記尿素の質量部に対して2〜10倍の範囲であることを特徴とする請求項7乃至11のいずれか一項に記載のビス(フルオロスルホニル)イミドの製造方法。
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