JP2012028047A - チタン製燃料電池セパレータの製造方法 - Google Patents

チタン製燃料電池セパレータの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】基材表面に炭素層が密着性の高い状態で被覆しているチタン製燃料電池セパレータの製造方法を提供することにある。
【解決手段】本発明に係るチタン製燃料電池セパレータの製造方法は、純チタンまたはチタン合金からなる基材表面に炭素層が設けられたチタン製燃料電池セパレータの製造方法であって、有機系接着剤を用いて前記炭素層となる炭素シートを前記基材表面に接着する接着工程S1と、前記接着工程S1後に前記基材をプレスするプレス工程S2と、前記プレス工程S2後に前記基材を熱処理する熱処理工程S3と、を含み、前記有機系接着剤は、炭素粉を含有することを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、燃料電池に用いられるチタン製燃料電池セパレータの製造方法に関するものである。
水素等の燃料と酸素等の酸化剤を供給し続けることで継続的に電力を取り出すことができる燃料電池は、乾電池等の一次電池や鉛蓄電池等の二次電池とは異なり、発電効率が高く、システム規模の大小にあまり影響されず、また、騒音や振動も少ないため、多様な用途・規模をカバーするエネルギー源として期待されている。燃料電池は、具体的には、固体高分子型燃料電池(PEFC)、アルカリ電解質型燃料電池(AFC)、リン酸型燃料電池(PAFC)、溶融炭酸塩型燃料電池(MCFC)、固体酸化物型燃料電池(SOFC)、バイオ燃料電池等として開発されている。中でも、燃料電池自動車や、家庭用燃料電池(家庭用コジェネレーションシステム)、携帯電話やパソコン等の携帯機器向けとして、固体高分子型燃料電池の開発が進められている。
固体高分子型燃料電池(以下、燃料電池という)は、固体高分子電解質膜を、アノード電極とカソード電極とで挟んだものを単セルとし、ガス(水素、酸素等)の流路となる溝が形成されたセパレータと呼ばれる(バイポーラプレートとも呼ばれる)電極を介して、前記単セルを複数個重ね合わせたスタックとして構成される。燃料電池は、スタックあたりのセル数を増やすことで、出力を高くすることができる。
燃料電池用のセパレータは、発生した電流を燃料電池の外部へ取り出すための部品でもあるので、その材料には、接触抵抗(電極とセパレータ表面との間で、界面現象のために電圧降下が生じることをいう)が低く、それがセパレータとしての使用中に長期間維持されるという特性が要求される。さらに、燃料電池の内部は酸性雰囲気であるため、セパレータには高耐食性も要求される。
これらの要求を満足するために、黒鉛粉末の成形体を削り出して成るセパレータや、黒鉛と樹脂の混合物成形体から成るセパレータが種々提案されている。これらは優れた耐食性を有するものの、強度や靱性に劣ることから、振動や衝撃が加えられた際に破損する虞がある。そのため、金属材料をベースにしたセパレータが指向され、種々提案されている。
耐食性と導電性を兼ね備えた金属材料としては、Au、Ptが挙げられる。従来から、薄型化が可能で、優れた加工性および高強度を有するアルミニウム合金、ステンレス鋼、ニッケル合金、チタン合金等の金属材料を基材とし、これにAuやPt等の貴金属を被覆して耐食性および導電性を付与したセパレータが検討されている。しかしながら、これらの貴金属材料は非常に高価であるため、コスト高となる。
このような問題に対して、貴金属材料を使用しない金属セパレータの製造方法が提案されている。
例えば、基材自身の酸化皮膜の表面に、気相成膜法により中間層および導電性薄膜を形成する方法(特許文献1)や、基材表面に、半金属元素等からなる部分と炭素等からなる部分とから構成される表面処理層を気相成膜法により形成する方法(特許文献2)が提案されている。
また、基材表面に、導電性炭素膜を化学的気相合成法またはスパッタリング法により形成する方法(特許文献3)や、基材表面に、アモルファスカーボン層と導電部とから構成される被覆層をスパッタリング法、フィルタレスアークイオンプレーティング法等により形成する方法(特許文献4)が提案されている。
特許第4147925号公報 特開2004−14208号公報 特開2007−207718号公報 特開2008−204876号公報
しかしながら、特許文献1、2、3に開示された技術は、基材の表面に、気相成膜法により、中間層、導電性薄膜等が形成されていることから、各層の界面における密着性が弱いことが懸念される。
また、特許文献4は、基材の表面に、気相成膜法により炭素からなる被覆層が形成されていることに加え、基材表面に直接当該被覆層が形成されているため、両者間の密着性が非常に弱い可能性がある。
なお、導電性や耐食性を左右する導電性薄膜等の各層と基材との密着性が弱いと、当該各層を基材上に安定して維持することができない。よって、基材と当該各層との密着性の低さは、セパレータの導電耐久性(耐久性:導電性を長期間維持する性質)や耐食性にも悪影響を与えてしまう。
本発明は、前記の課題に鑑みてなされたものであり、その課題は、基材表面に炭素層が密着性の高い状態で被覆しているチタン製燃料電池セパレータの製造方法を提供することにある。
本発明者らは、炭素粉を含有させた有機系接着剤を用いて、炭素シートを純チタンまたはチタン合金からなる基材に接着した後、その基材をプレス、熱処理することにより、基材と炭素層(炭素シートにより構成される層)との密着性を向上させることができることを見出し、本発明を創出した。
前記課題を解決するために、本発明に係るチタン製燃料電池セパレータの製造方法は、純チタンまたはチタン合金からなる基材表面に炭素層を設けたチタン製燃料電池セパレータの製造方法であって、有機系接着剤を用いて前記炭素層となる炭素シートを前記基材表面に接着する接着工程と、前記接着工程後に前記基材をプレスするプレス工程と、前記プレス工程後に前記基材を熱処理する熱処理工程と、を含み、前記有機系接着剤は、炭素粉を含有することを特徴とする。
このように、本発明に係るチタン製燃料電池セパレータの製造方法は、基材と炭素シートを接着する有機系接着剤が炭素粉を含有することにより、熱処理工程において炭素粉の炭素原子と炭素シートの炭素原子が再配列することで、化学的に両者が強固に接合することとなる。そして、基材のチタンと炭素シートおよび炭素粉の炭素とが熱処理工程において反応し、基材と炭素層(炭素シートにより構成される層)との間に、凹凸構造のチタンカーバイドからなる中間層が形成されることとなる。
したがって、基材と炭素層との密着性が大きく向上したセパレータを製造することができる。
本発明に係るチタン製燃料電池セパレータの製造方法は、前記炭素粉は黒鉛粉であり、平均粒径が0.5〜20μmであることが好ましい。
このように、炭素粉が黒鉛粉であることにより、プレス工程において炭素粉が粉砕され易く、当該粉砕された炭素粉が基材と炭素シートとの界面において緻密に配列する。よって、熱処理工程における炭素粉の炭素原子と炭素シートの炭素原子との再配列が適切に生じることにより、両者がさらに強固に接合することとなる。その結果、熱処理工程におけるチタンカーバイドからなる中間層が適切に形成されることにより、基材と炭素層との密着性がさらに向上したセパレータを製造することができる。
また、黒鉛粉の平均粒径が0.5〜20μmであることにより、プレス工程において適切に黒鉛粉が粉砕されるため、基材と炭素層との密着性がさらに向上したセパレータを製造することができる。
本発明に係るチタン製燃料電池セパレータの製造方法は、前記熱処理工程における熱処理は、酸素分圧1.3×10−1Pa以下という非酸化雰囲気下で行うことが好ましい。
このように、熱処理工程における熱処理を、酸素分圧1.3×10−1Pa以下という非酸化雰囲気下で行うことにより、炭素シートの炭素が雰囲気中の酸素と反応(二酸化炭素の発生)する状況を回避でき、チタンカーバイドからなる中間層を適切に形成させることができる。
本発明に係るチタン製燃料電池セパレータの製造方法は、基材と炭素シートを接着する有機系接着剤が炭素粉を含有することにより、基材と炭素層との密着性が大きく向上したセパレータを製造することができる。
また、本発明に係るチタン製燃料電池セパレータの製造方法は、有機系接着剤に含有する炭素粉が黒鉛粉であり、平均粒径が0.5〜20μmであることにより、基材と炭素層との密着性がさらに向上したセパレータを製造することができる。
加えて、本発明に係るチタン製燃料電池セパレータの製造方法は、熱処理工程における熱処理を、酸素分圧1.3×10−1Pa以下という非酸化雰囲気下で行うことで、中間層が適切に形成されることにより、基材と炭素層との密着性を確保したセパレータを製造することができる。
そして、基材と炭素層との密着性を向上させることにより、導電性や耐食性に優れた炭素層を基材上に安定して維持することができるため、導電耐久性(耐久性:導電性を長期間維持する性質)や耐食性に優れたセパレータを製造することができる。
実施形態に係るチタン製燃料電池セパレータの製造工程を示すフローチャートである。 実施形態に係るチタン製燃料電池セパレータの製造工程におけるセパレータについて順を追って示す図である。 実施例における接触抵抗測定、および、密着性評価において使用した接触抵抗測定装置の概略図である。
以下、本発明に係るチタン製燃料電池セパレータの製造方法の実施するための形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
≪チタン製燃料電池セパレータ≫
まず、実施形態に係るチタン製燃料電池セパレータの製造方法で形成されるチタン製燃料電池セパレータ10(以下、適宜、セパレータという)について説明する。
セパレータ10は、図2(熱処理工程S3後の図)に示すように、基材1と、当該基材1の表面(両面または片面)に形成された炭素層2(炭素シートにより構成される層)と、基材1と炭素層2との界面に形成された中間層3と、から構成される。なお、図2では、基材1の両面に炭素層2および中間層3が形成されているセパレータ10を表しているが、基材1の片面のみに炭素層2および中間層3が形成されていてもよい。
以下、セパレータ10を構成する基材1、炭素層2、中間層3について説明する。
<基材>
セパレータ10の基材1は、純チタンまたはチタン合金からなる。よって、基材1は、ステンレス等を用いた場合と比べて軽量であるとともに、耐食性に優れる。また、純チタンまたはチタン合金は、強度、靭性に優れていることから、基材1の強度、靭性についても確保できる。
そして、基材1は、従来公知の方法、例えば、純チタンまたはチタン合金を溶解、鋳造して鋳塊とし、熱間圧延した後、冷間圧延するという方法により作製されたものである。また、基材1は、焼鈍仕上げされていることが好ましいが、その仕上げ状態は問わず、例えば「焼鈍+酸洗仕上げ」、「真空熱処理仕上げ」、「光輝焼鈍仕上げ」等のいずれの仕上げ状態であっても構わない。
なお、基材1は、特定の組成のチタンに限定されるものではないが、チタン素材の冷間圧延のし易さや、その後のプレス成形性確保の観点から、O:1500ppm以下(より好ましくは1000ppm以下)、Fe:1500ppm以下(より好ましくは1000ppm以下)、C:800ppm以下、N:300ppm以下、H:130ppm以下であり、残部がTiおよび不可避的不純物からなるものが好ましい。基材1は、例えば、JIS 1種の冷間圧延板を使用することができる。
基材1の板厚は0.05〜1.0mmが好ましい。板厚が0.05mm未満では、基材1に必要とされる強度を確保することができず、一方、1.0mmを越えると加工性が低下するからである。
<炭素層>
セパレータ10の炭素層2は、導電性と耐食性を有する炭素から構成される。そして、炭素層2は、炭素シートを基材1表面に接着、プレスした後、熱処理することにより形成する層である。
この炭素シートは、膨張黒鉛シート(燐片状黒鉛の層間に化学品が挿入されている黒鉛シート)、カーボンシート等の炭素系のシートであれば限定されないが、膨張黒鉛シートであることが好ましい。膨張黒鉛シートを用いることにより、後記する有機系接着剤2a(接着工程S1で使用)に含まれる炭素粉2bが炭素シートに食い込み易く、両者の接触面積が大きくなり、その結果、密着性が向上するからである。また、膨張黒鉛シートは、グラファイトが(002)面に平行に配向(炭素シート表面に対して平行に配向)していることから、プレス工程における圧力が低くても、低抵抗性(高電導性)を確保することができるからである。
なお、グラファイトとは、六角形格子構造であるとともにシート状を呈したグラフェンシートが層状に多数積み重なった炭素からなる六角板状結晶のことである。
炭素層2は、基材1の表面全体に被覆されていることが好ましいが、必ずしも表面全体に被覆されている必要はなく、導電性と耐食性を確保するためには、表面の50%以上、好ましくは70%以上に被覆されていればよい。
また、基材1表面の炭素層2の平均厚さは、導電性と耐食性に影響する。炭素層2の平均厚さが0.5μm未満であると、十分な導電性と耐食性が得られない。一方、炭素層2の平均厚さが200μmを超えると加工性が低下してしまう。したがって、炭素層2の厚さは、0.5〜200μm以下であることが好ましい。
炭素層2の平均厚さは、基材1と炭素層2との断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)、等を用いて測定することができる。ここで、平均厚さとは、例えば、SEMで断面を観察した際の500μmの幅の範囲での炭素層2の平均厚さである。
<中間層>
基材1と炭素層2との界面には、基材1のチタンと炭素シート(および後記する有機系接着剤2aに含まれる炭素粉2b)の炭素とが反応して形成されたチタンカーバイドからなる中間層3が形成されている。このチタンカーバイドは導電性を有するため、基材1と炭素層2との界面における電気抵抗が小さくなり、セパレータ10の導電性が向上する。加えて、チタンカーバイドは、基材1と炭素シート(および炭素粉2b)とが反応して形成されたものであるため、基材1と炭素層2との密着性が向上する。
中間層3は、熱処理によって基材1のチタンと炭素シートの炭素とが反応して形成されたものであり、基材1および炭素層2との界面が凹凸形状となっている。そのため、気相成膜法により平滑な中間層3を形成した場合と比べ、基材1と炭素層2との密着性がより良好なものとなる。
なお、中間層3は、基材1と炭素層2との間の全ての界面に形成されていることが好ましいが、密着性を確保するためには、当該界面の50%以上に形成されていればよい。
そして、この中間層3の形成状態は、後記する熱処理条件によって制御することができる。
また、この中間層3の平均厚さは、5nm以上であることが好ましい。5nm未満であると、基材1と炭素層2との十分な密着性が得られないからである。
中間層3の平均厚さの上限は特に限定されないが、100nmを越えても密着性に変化がないことから、100nm以下でよい。
中間層3の平均厚さは、基材1と炭素層2との断面を、透過型電子顕微鏡(TEM)等を用いて測定することができる。ここで、平均厚さとは、例えば、TEMで断面を観察した際の500nmの幅の範囲での中間層3の平均厚さである。
以上、セパレータ10について説明したが、後記する接着工程S1において使用する有機系接着剤2aが熱分解されていない場合は、基材1と炭素層2との間に残留していてもよい。
なお、有機系接着剤2aに含有されている炭素粉2bは、炭素層2に圧着しているか、チタンと反応し中間層3の一部となっている。
次に、本発明に係るチタン製燃料電池セパレータ10の製造工程(接着工程S1)で使用する有機系接着剤2aについて説明する。
≪有機系接着剤≫
接着工程S1で使用する有機系接着剤2aとは、例えば、天然ゴム系、デンプン系、アクリル樹脂系、ウレタン樹脂系、エーテル系セルロース、エポキシ樹脂系、スチレン‐ブタジエンゴム系、ホットメルト、フェノール樹脂系、ポリスチレン樹脂系、ポリビニルアルコール樹脂系、ポリメタクリレート樹脂系及びポリウレタン樹脂系接着剤である。この中でも、熱処理工程S3において熱分解するエーテル系セルロースまたはポリスチレン樹脂系を有機系接着剤2aとして使用するのが好ましい。有機系接着剤2aが熱分解することにより、基材1のチタンと炭素シート(および後記する有機系接着剤2aに含まれる炭素粉2b)の炭素とが適切に反応するからである。
そして、有機系接着剤2aは、炭素粉2bを含有することを特徴とする。炭素粉2bを含有していることにより、まず、プレス工程S2において、炭素粉2bが基材1と炭素シートに食い込む。そして、熱処理工程S3において、炭素粉2bの炭素原子と炭素シートの炭素原子が再配列することで両者が化学的に強固に接合するとともに、基材1のチタンと炭素粉2bの炭素が反応し凹凸構造のチタンカーバイドからなる中間層3を形成する。その結果、基材1と炭素シートとの密着性が向上するからである。
炭素粉2bは、特に限定されず、黒鉛粉(結晶質)であっても、カーボン粉(非結晶質)であっても良いが、黒鉛粉のほうが好ましい。炭素粉2bが黒鉛粉である場合は、プレス工程S2において炭素粉2bが粉砕され易く、当該粉砕された炭素粉2bが基材1と炭素シートとの界面において緻密に配列する。よって、熱処理工程S3における炭素粉2bの炭素原子と炭素シートの炭素原子との再配列が適切に生じることにより、さらに強固に接合することとなるからである。
炭素粉2bが黒鉛粉(結晶質)である場合は、例えば、鱗片状黒鉛、人造黒鉛、土状黒鉛、膨張黒鉛を使用すれば良い。なお、炭素粉2bが黒鉛粉である場合の炭素粉2bのサイズは、平均粒径0.5〜20μmであることが好ましい。0.5μm未満だと若干性能(接触抵抗、密着性)が劣るとともに、当該サイズの黒鉛粉は安価ではなく入手が困難である。一方、20μmを超えると炭素シートの損傷(突き破る等)の原因となるからである。
なお、炭素粉2bがカーボン粉(非結晶質)である場合は、プレス工程S2において炭素粉2bはほとんど粉砕されないため、密着性の向上を確保するためには、炭素粉2bと炭素シートおよび基材1との接触面積を大きくする必要がある。よって、カーボン粉としては、例えば、カーボンブラック、アセチレンブラック等の平均粒径の小さなもの(平均粒径0.01〜0.2μm)を選択する必要がある。
炭素粉2bは、有機系接着剤2aと炭素粉2bを足した全量に対し、1〜50wt%となるように含有されていることが好ましい。1wt%未満だと、基材1と炭素シートとの密着性の向上を確保することができず、50wt%を超えると粘度が高くなり塗布することが困難となる。
次に、実施形態に係るチタン製燃料電池セパレータ10の製造方法を説明する。
≪チタン製燃料電池セパレータの製造方法≫
チタン製燃料電池セパレータ10の製造方法は、接着工程S1と、プレス工程S2と、熱処理工程S3とを、含む。
以下、チタン製燃料電池セパレータ10の製造方法を、工程ごとに説明する。
<接着工程>
接着工程S1とは、有機系接着剤2aを用いて炭素シートを純チタンまたはチタン合金からなる基材1表面に接着する工程である。
接着工程S1は、連続式(ロールtoロール)、バッチ式(シートごと)のいずれで行ってもよい。例えば、連続式で行う場合は、炭素粉2bを含有した有機系接着剤2aを帯状の基材1の表面(両面または片面)にコータ(例えば、グラビアコータ、リバースロールコータ、ロールナイフコータ、ダイコータ)で連続的に塗布する。その後、有機系接着剤2aが塗布された帯状の基材1表面に炭素シートを連続的に張り合わせればよい。
ここで、基材1表面に炭素シートを連続的に張り合わせる場合は、炭素シートは、帯状のもの、または帯状の炭素シート(フィルム)がロール状に巻かれたものを使用すればよい。一方、バッチ式で行う場合は、炭素シートは、基材1と略同じサイズ(横、幅)に予め切断されたものを使用すればよい。
なお、炭素シートは、炭素を97質量%以上含有するものであることが好ましく、水素等が不可避的に混入していても良い。そして、炭素シートは10〜200μmの厚さであることが好ましい。
この接着工程S1においては、前記したように、基材1表面に有機系接着剤2aを塗付して炭素シートを基材1に取り付けてもよいし、炭素シートに有機系接着剤2aを塗付して炭素シートを基材1に取り付けてもよい。
また、有機系接着剤2aの塗布については、まず、炭素粉2aを含有しない有機系接着剤2aを基材1(または炭素シート)表面に塗布し、その後、炭素粉2bを塗布するという2段階の工程で行ってもよい。
接着工程S1の有機系接着剤2aの塗布は、基材1(または炭素シート)表面に塗布することができる手段であれば限定されず、前記した各種コータを用いて行ってもよいし、スプレー等により行ってもよい。
<プレス工程>
プレス工程S2とは、接着工程S1後に炭素シートが接着されている基材1をプレスする工程である。
プレス工程S2におけるプレス方法は、特に限定されず、圧延等の基材1表面に圧力をかける方法であればよい。
そして、プレス工程S2における圧力は300〜3000MPaであることが好ましい。300MPa未満であると、基材1と炭素シートとの接着性が十分でなく、3000MPaを超えても密着性は飽和するだけである。
プレス工程S2におけるプレスは、基材1に対し300〜3000MPaの圧力をかけることができるプレス装置であれば、従来公知の圧延装置等のどのようなプレス装置で行ってもよい。
<熱処理工程>
熱処理工程S3とは、プレス工程S2後に炭素シートが圧着されている基材1を熱処理することによって、基材1のチタンと炭素シート(および炭素粉2b)の炭素を反応させ、基材1と炭素層2との間に中間層3を形成する工程である。
熱処理工程S3における熱処理は、酸素分圧1.3×10−1Pa以下という非酸化雰囲気下で行うのが好ましい。酸素分圧が1.3×10−1Paを超えると、炭素シートの炭素が雰囲気中の酸素と反応することで、二酸化炭素となってしまい(燃焼反応を起こしてしまい)、チタンカーバイド(中間層3)を形成する炭素の量が減少してしまうからである。
熱処理工程S3における熱処理温度は、300〜850℃であることが好ましい。熱処理時の温度が低いと、炭素層2の炭素と基材1のチタンの反応が起こり難いため、チタンカーバイドが形成されず、一方、温度が高いと、基材1の機械特性の低下が発生する懸念が存在するからである。より好ましい温度範囲は、400〜800℃であり、さらに好ましくは、450〜700℃である。
また、熱処理の時間は、2〜10分間であり、温度が低い場合は長時間の処理、温度が高い場合は短時間の処理というように、温度によって時間を適宜調整すればよい。
熱処理工程S3の熱処理は、300〜850℃の熱処理温度で熱処理を行うことができ、かつ雰囲気調整ができる熱処理炉であれば、電気炉、ガス炉等、どのような熱処理炉で行ってもよい。
なお、気相成膜法によりチタン基材上にチタンカーバイド層(中間層)と炭素層を形成させる例があるが、この場合のチタンカーバイド層は均一な厚さで形成される。その結果、チタンカーバイド層と炭素層との間には平滑な界面が形成され、この部分において剥離が懸念される。一方、本発明のチタンカーバイド層は、炭素層2との界面は凹凸形状となっている。チタンカーバイド層が炭素層2と基材1のチタンとが反応して形成されたものである上、界面が凹凸構造となることで両者の密着性がより良好なものになると考えられる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更可能である。
例えば、接着工程S1の前に基材1表面の不働態皮膜を除去する不働態皮膜除去工程を行ってもよい。
次に、本発明に係るチタン製燃料電池セパレータ製造方法について、本発明の要件を満たす実施例と本発明の要件を満たさない比較例とを比較して具体的に説明する。
<実施例に係る試験体の作製>
基材としては、JIS 1種のチタン基材(焼鈍酸洗仕上げ)を使用した。チタン基材の化学組成は、O:450ppm、Fe:250ppm、N:40ppm、残部がTiおよび不可避的不純物であり、チタン基材の板厚は、0.5mmである。
基材の両面に、表1に記載の炭素粉を所定量含有したエーテル系セルロース接着剤を用いて、膨張黒鉛シート(厚さ100μm)を接着した。その後、1500MPaまたは700MPaで冷間圧延を行い、非酸化雰囲気(1.3×10−3Pa)で熱処理(750℃、5分)を行うことで実施例に係る試験体(No.1〜3)を作製した。
<比較例に係る試験体の作製>
実施例に係る試験体と同様の基材の両面に、表1に記載の炭素粉を所定量含有したエーテル系セルロース接着剤または炭素粉を含有しないエーテル系セルロース接着剤を用いて、膨張黒鉛シート(厚さ100μm)を接着した。その後、1500MPaまたは700MPaで冷間圧延を行い、非酸化雰囲気(1.3×10−3Pa)で熱処理(750℃、5分)を行うことで比較例に係る試験体(No.4、5)を作製した。
このようにして作製した試験体について、以下の方法により、接触抵抗測定、および、密着性評価を行った。
[接触抵抗測定]
前記方法により作製した試験体について、図3に示す接触抵抗測定装置30を用いて、接触抵抗を測定した。詳細には、試験体31の両面を2枚のカーボンクロス32,32で挟み、さらにその外側を接触面積1cmの2枚の銅電極33,33で挟んで荷重98N(10kgf)で加圧し、直流電流電源34を用いて7.4mAの電流を通電し、カーボンクロス32,32の間に加わる電圧を電圧計35で測定して、接触抵抗を求めた。
接触抵抗(表1では初期接触抵抗と示す)が10mΩ・cm以下の場合を導電性が良好、10mΩ・cmを超える場合を導電性が不良とした。
[密着性評価]
図3に示す接触抵抗測定装置30を用いて、密着性評価を行った。試験体31の両面を2枚のカーボンクロス32,32で挟み、さらにその外側を接触面積1cmの銅電極33,33で挟んで荷重98N(10kgf)に加圧し、両面から加圧された状態を保持したまま、面内方向に試験体31を引き抜いた(引抜き試験)。
引抜き試験後、非摩擦面および摩擦面をSEM/EDXにて100倍の倍率で観察し、加速電圧を15kVとしてチタン(Ti)と炭素(C)を定量分析したときに、非摩擦面での炭素の量(原子%)を100%として、摩擦面での炭素の量が非摩擦面の炭素の量の80%以上であったときは○(非常に良好)、摩擦面での炭素の量が非摩擦面の炭素の量50%以上、80%未満であるときは△(良好)、摩擦面での炭素の量が非摩擦面の炭素の量50%未満であるときを×(不良)と判断した。
各試験体の炭素シートの種類、接着剤中の炭素粉の種類、炭素粉含有率(=炭素粉質量/(炭素粉質量+有機系接着剤質量)×100)、圧延面圧、熱処理の有無、接触抵抗、および、密着性を表1に示す。
Figure 2012028047
有機系接着剤に炭素粉(黒鉛粉)を含有させるとともに、熱処理を行った試験体(No.1、2)は、密着性が非常に良好という結果であるとともに、導電性が良好という結果となった。
そして、有機系接着剤に炭素粉(アセチレンブラック)を含有させるとともに、熱処理を行った試験体(No.3)は、密着性に関して試験体No.1、2と比較すると劣るが、良好という結果であるとともに、導電性が良好という結果となった。
一方、有機系接着剤に炭素粉を含有させなかった試験体(No.4)は、密着性が不良という結果となった。
また、熱処理を行わなかった試験体(No.5)は、密着性が不良という結果であるとともに、導電性についても不良という結果となった。
表1の結果から、炭素粉を含有する有機系接着剤を用いて基材と炭素シートとを接着し、プレス及び熱処理を施すことにより製造したチタン製燃料電池セパレータは、基材と炭素層との密着性、および導電性の面で優れることがわかった。
1 基材
2 炭素層
2a 有機系接着剤(接着剤)
2b 炭素粉
3 中間層
10 チタン製燃料電池セパレータ(セパレータ)
30 接触抵抗測定装置
31 試験体
32 カーボンクロス
33 銅電極
34 直流電流電源
35 電圧計
S1 接着工程
S2 プレス工程
S3 熱処理工程

Claims (3)

  1. 純チタンまたはチタン合金からなる基材表面に炭素層を設けたチタン製燃料電池セパレータの製造方法であって、
    有機系接着剤を用いて前記炭素層となる炭素シートを前記基材表面に接着する接着工程と、前記接着工程後に前記基材をプレスするプレス工程と、前記プレス工程後に前記基材を熱処理する熱処理工程と、を含み、
    前記有機系接着剤は、炭素粉を含有することを特徴とするチタン製燃料電池用セパレータの製造方法。
  2. 前記炭素粉は黒鉛粉であり、平均粒径が0.5〜20μmであることを特徴とする請求項1に記載のチタン製燃料電池用セパレータの製造方法。
  3. 前記熱処理工程における熱処理は、酸素分圧1.3×10−1Pa以下という非酸化雰囲気下で行うことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のチタン製燃料電池用セパレータの製造方法。
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