JP2012028047A - チタン製燃料電池セパレータの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明に係るチタン製燃料電池セパレータの製造方法は、純チタンまたはチタン合金からなる基材表面に炭素層が設けられたチタン製燃料電池セパレータの製造方法であって、有機系接着剤を用いて前記炭素層となる炭素シートを前記基材表面に接着する接着工程S1と、前記接着工程S1後に前記基材をプレスするプレス工程S2と、前記プレス工程S2後に前記基材を熱処理する熱処理工程S3と、を含み、前記有機系接着剤は、炭素粉を含有することを特徴とする。
【選択図】図1
Description
例えば、基材自身の酸化皮膜の表面に、気相成膜法により中間層および導電性薄膜を形成する方法(特許文献1)や、基材表面に、半金属元素等からなる部分と炭素等からなる部分とから構成される表面処理層を気相成膜法により形成する方法(特許文献2)が提案されている。
また、特許文献4は、基材の表面に、気相成膜法により炭素からなる被覆層が形成されていることに加え、基材表面に直接当該被覆層が形成されているため、両者間の密着性が非常に弱い可能性がある。
なお、導電性や耐食性を左右する導電性薄膜等の各層と基材との密着性が弱いと、当該各層を基材上に安定して維持することができない。よって、基材と当該各層との密着性の低さは、セパレータの導電耐久性(耐久性:導電性を長期間維持する性質)や耐食性にも悪影響を与えてしまう。
したがって、基材と炭素層との密着性が大きく向上したセパレータを製造することができる。
また、本発明に係るチタン製燃料電池セパレータの製造方法は、有機系接着剤に含有する炭素粉が黒鉛粉であり、平均粒径が0.5〜20μmであることにより、基材と炭素層との密着性がさらに向上したセパレータを製造することができる。
加えて、本発明に係るチタン製燃料電池セパレータの製造方法は、熱処理工程における熱処理を、酸素分圧1.3×10−1Pa以下という非酸化雰囲気下で行うことで、中間層が適切に形成されることにより、基材と炭素層との密着性を確保したセパレータを製造することができる。
そして、基材と炭素層との密着性を向上させることにより、導電性や耐食性に優れた炭素層を基材上に安定して維持することができるため、導電耐久性(耐久性:導電性を長期間維持する性質)や耐食性に優れたセパレータを製造することができる。
まず、実施形態に係るチタン製燃料電池セパレータの製造方法で形成されるチタン製燃料電池セパレータ10(以下、適宜、セパレータという)について説明する。
セパレータ10は、図2(熱処理工程S3後の図)に示すように、基材1と、当該基材1の表面(両面または片面)に形成された炭素層2(炭素シートにより構成される層)と、基材1と炭素層2との界面に形成された中間層3と、から構成される。なお、図2では、基材1の両面に炭素層2および中間層3が形成されているセパレータ10を表しているが、基材1の片面のみに炭素層2および中間層3が形成されていてもよい。
以下、セパレータ10を構成する基材1、炭素層2、中間層3について説明する。
セパレータ10の基材1は、純チタンまたはチタン合金からなる。よって、基材1は、ステンレス等を用いた場合と比べて軽量であるとともに、耐食性に優れる。また、純チタンまたはチタン合金は、強度、靭性に優れていることから、基材1の強度、靭性についても確保できる。
セパレータ10の炭素層2は、導電性と耐食性を有する炭素から構成される。そして、炭素層2は、炭素シートを基材1表面に接着、プレスした後、熱処理することにより形成する層である。
この炭素シートは、膨張黒鉛シート(燐片状黒鉛の層間に化学品が挿入されている黒鉛シート)、カーボンシート等の炭素系のシートであれば限定されないが、膨張黒鉛シートであることが好ましい。膨張黒鉛シートを用いることにより、後記する有機系接着剤2a(接着工程S1で使用)に含まれる炭素粉2bが炭素シートに食い込み易く、両者の接触面積が大きくなり、その結果、密着性が向上するからである。また、膨張黒鉛シートは、グラファイトが(002)面に平行に配向(炭素シート表面に対して平行に配向)していることから、プレス工程における圧力が低くても、低抵抗性(高電導性)を確保することができるからである。
なお、グラファイトとは、六角形格子構造であるとともにシート状を呈したグラフェンシートが層状に多数積み重なった炭素からなる六角板状結晶のことである。
基材1と炭素層2との界面には、基材1のチタンと炭素シート(および後記する有機系接着剤2aに含まれる炭素粉2b)の炭素とが反応して形成されたチタンカーバイドからなる中間層3が形成されている。このチタンカーバイドは導電性を有するため、基材1と炭素層2との界面における電気抵抗が小さくなり、セパレータ10の導電性が向上する。加えて、チタンカーバイドは、基材1と炭素シート(および炭素粉2b)とが反応して形成されたものであるため、基材1と炭素層2との密着性が向上する。
なお、中間層3は、基材1と炭素層2との間の全ての界面に形成されていることが好ましいが、密着性を確保するためには、当該界面の50%以上に形成されていればよい。
そして、この中間層3の形成状態は、後記する熱処理条件によって制御することができる。
中間層3の平均厚さの上限は特に限定されないが、100nmを越えても密着性に変化がないことから、100nm以下でよい。
なお、有機系接着剤2aに含有されている炭素粉2bは、炭素層2に圧着しているか、チタンと反応し中間層3の一部となっている。
≪有機系接着剤≫
接着工程S1で使用する有機系接着剤2aとは、例えば、天然ゴム系、デンプン系、アクリル樹脂系、ウレタン樹脂系、エーテル系セルロース、エポキシ樹脂系、スチレン‐ブタジエンゴム系、ホットメルト、フェノール樹脂系、ポリスチレン樹脂系、ポリビニルアルコール樹脂系、ポリメタクリレート樹脂系及びポリウレタン樹脂系接着剤である。この中でも、熱処理工程S3において熱分解するエーテル系セルロースまたはポリスチレン樹脂系を有機系接着剤2aとして使用するのが好ましい。有機系接着剤2aが熱分解することにより、基材1のチタンと炭素シート(および後記する有機系接着剤2aに含まれる炭素粉2b)の炭素とが適切に反応するからである。
≪チタン製燃料電池セパレータの製造方法≫
チタン製燃料電池セパレータ10の製造方法は、接着工程S1と、プレス工程S2と、熱処理工程S3とを、含む。
以下、チタン製燃料電池セパレータ10の製造方法を、工程ごとに説明する。
接着工程S1とは、有機系接着剤2aを用いて炭素シートを純チタンまたはチタン合金からなる基材1表面に接着する工程である。
ここで、基材1表面に炭素シートを連続的に張り合わせる場合は、炭素シートは、帯状のもの、または帯状の炭素シート(フィルム)がロール状に巻かれたものを使用すればよい。一方、バッチ式で行う場合は、炭素シートは、基材1と略同じサイズ(横、幅)に予め切断されたものを使用すればよい。
なお、炭素シートは、炭素を97質量%以上含有するものであることが好ましく、水素等が不可避的に混入していても良い。そして、炭素シートは10〜200μmの厚さであることが好ましい。
また、有機系接着剤2aの塗布については、まず、炭素粉2aを含有しない有機系接着剤2aを基材1(または炭素シート)表面に塗布し、その後、炭素粉2bを塗布するという2段階の工程で行ってもよい。
プレス工程S2とは、接着工程S1後に炭素シートが接着されている基材1をプレスする工程である。
そして、プレス工程S2における圧力は300〜3000MPaであることが好ましい。300MPa未満であると、基材1と炭素シートとの接着性が十分でなく、3000MPaを超えても密着性は飽和するだけである。
熱処理工程S3とは、プレス工程S2後に炭素シートが圧着されている基材1を熱処理することによって、基材1のチタンと炭素シート(および炭素粉2b)の炭素を反応させ、基材1と炭素層2との間に中間層3を形成する工程である。
例えば、接着工程S1の前に基材1表面の不働態皮膜を除去する不働態皮膜除去工程を行ってもよい。
基材としては、JIS 1種のチタン基材(焼鈍酸洗仕上げ)を使用した。チタン基材の化学組成は、O:450ppm、Fe:250ppm、N:40ppm、残部がTiおよび不可避的不純物であり、チタン基材の板厚は、0.5mmである。
実施例に係る試験体と同様の基材の両面に、表1に記載の炭素粉を所定量含有したエーテル系セルロース接着剤または炭素粉を含有しないエーテル系セルロース接着剤を用いて、膨張黒鉛シート(厚さ100μm)を接着した。その後、1500MPaまたは700MPaで冷間圧延を行い、非酸化雰囲気(1.3×10−3Pa)で熱処理(750℃、5分)を行うことで比較例に係る試験体(No.4、5)を作製した。
前記方法により作製した試験体について、図3に示す接触抵抗測定装置30を用いて、接触抵抗を測定した。詳細には、試験体31の両面を2枚のカーボンクロス32,32で挟み、さらにその外側を接触面積1cm2の2枚の銅電極33,33で挟んで荷重98N(10kgf)で加圧し、直流電流電源34を用いて7.4mAの電流を通電し、カーボンクロス32,32の間に加わる電圧を電圧計35で測定して、接触抵抗を求めた。
接触抵抗(表1では初期接触抵抗と示す)が10mΩ・cm2以下の場合を導電性が良好、10mΩ・cm2を超える場合を導電性が不良とした。
図3に示す接触抵抗測定装置30を用いて、密着性評価を行った。試験体31の両面を2枚のカーボンクロス32,32で挟み、さらにその外側を接触面積1cm2の銅電極33,33で挟んで荷重98N(10kgf)に加圧し、両面から加圧された状態を保持したまま、面内方向に試験体31を引き抜いた(引抜き試験)。
引抜き試験後、非摩擦面および摩擦面をSEM/EDXにて100倍の倍率で観察し、加速電圧を15kVとしてチタン(Ti)と炭素(C)を定量分析したときに、非摩擦面での炭素の量(原子%)を100%として、摩擦面での炭素の量が非摩擦面の炭素の量の80%以上であったときは○(非常に良好)、摩擦面での炭素の量が非摩擦面の炭素の量50%以上、80%未満であるときは△(良好)、摩擦面での炭素の量が非摩擦面の炭素の量50%未満であるときを×(不良)と判断した。
そして、有機系接着剤に炭素粉(アセチレンブラック)を含有させるとともに、熱処理を行った試験体(No.3)は、密着性に関して試験体No.1、2と比較すると劣るが、良好という結果であるとともに、導電性が良好という結果となった。
一方、有機系接着剤に炭素粉を含有させなかった試験体(No.4)は、密着性が不良という結果となった。
また、熱処理を行わなかった試験体(No.5)は、密着性が不良という結果であるとともに、導電性についても不良という結果となった。
2 炭素層
2a 有機系接着剤(接着剤)
2b 炭素粉
3 中間層
10 チタン製燃料電池セパレータ(セパレータ)
30 接触抵抗測定装置
31 試験体
32 カーボンクロス
33 銅電極
34 直流電流電源
35 電圧計
S1 接着工程
S2 プレス工程
S3 熱処理工程
Claims (3)
- 純チタンまたはチタン合金からなる基材表面に炭素層を設けたチタン製燃料電池セパレータの製造方法であって、
有機系接着剤を用いて前記炭素層となる炭素シートを前記基材表面に接着する接着工程と、前記接着工程後に前記基材をプレスするプレス工程と、前記プレス工程後に前記基材を熱処理する熱処理工程と、を含み、
前記有機系接着剤は、炭素粉を含有することを特徴とするチタン製燃料電池用セパレータの製造方法。 - 前記炭素粉は黒鉛粉であり、平均粒径が0.5〜20μmであることを特徴とする請求項1に記載のチタン製燃料電池用セパレータの製造方法。
- 前記熱処理工程における熱処理は、酸素分圧1.3×10−1Pa以下という非酸化雰囲気下で行うことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のチタン製燃料電池用セパレータの製造方法。
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