JP2006210222A - 燃料電池用セパレータ及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】膨張黒鉛シートの脹れが無く、それ故、シール性の低下や接触抵抗の増加が抑えられ、反応ガスの流通性にも優れた高性能燃料電池用セパレータの提供。
【解決手段】樹脂及び導電性フィラーを含む基材1の表面を、硫酸分が10ppm以下である膨張黒鉛シートで被覆し,膨張黒鉛層2の厚さが20〜100μmであることを特徴とする燃料電池用セパレータ。また,基材1が樹脂を10〜40質量%,導電性フィラーを60〜90質量%含むことを特徴とする燃料電池用セパレータ。
【選択図】図2
【解決手段】樹脂及び導電性フィラーを含む基材1の表面を、硫酸分が10ppm以下である膨張黒鉛シートで被覆し,膨張黒鉛層2の厚さが20〜100μmであることを特徴とする燃料電池用セパレータ。また,基材1が樹脂を10〜40質量%,導電性フィラーを60〜90質量%含むことを特徴とする燃料電池用セパレータ。
【選択図】図2
Description
本発明は、樹脂と導電性フィラーとを含む基材と、膨張黒鉛シートとを一体化した燃料電池用セパレータに関する。
近年、燃料の有する化学エネルギーを電気エネルギーに直接変換する燃料電池に関する需要が高まっている。一般に燃料電池は、電解質を含有するマトリックスを挟んで、電極板が配置され、さらにその外側にセパレータが配置された単位セルを、多数積層した形になっている。
図1は一般的な燃料電池用セパレータ5の一例を示す斜線図であるが、平板部6の両面に所定間隔で複数の隔壁7を立設して形成されており、燃料電池とするには、隔壁7の突出方向(図中、上下方向)に沿って多数の燃料電池用セパレータ5を積層する。そして、この積層により、隣接する一対の隔壁7で形成されるチャネル8に各種流体を流通させる。
通常、燃料電池用セパレータ5の片面には燃料が、もう一方の面には気体酸化剤等が供給されるため、燃料電池用セパレータ5には両者が混合しないように気体不透過性に優れることが必要である。また、単位セルを積層して用いるので、高い導電性を有するとともに、積層時のシール性を確保するための表面性が必要であり、更には質量が小さく、コストが安いこと等が要求される。従来、燃料電池用セパレータは、このような特性、生産性を満足するため、樹脂、黒鉛等の導電性フィラー、補強のための炭素繊維等の配合物を高分散させた導電性樹脂組成物を所定の形状に熱プレス成型して得られるのが一般的である。
しかしながら、このような成形体では熱プレス時の樹脂流動により、表面に樹脂が流れ出し、接触抵抗が増大する問題があった。
接触抵抗を低減させる手段として、導電性樹脂組成物からなる基材の上に膨張黒鉛シートを載置し、所定の形状に加熱成形して積層した燃料電池用セパレータが知られている(例えば、特許文献1参照)。しかし、膨張黒鉛シートの層間に溜まった空気や水分が加熱圧縮時に熱膨張を起こしてシート表面に脹れが発生することがあり、この脹れがシール性を低下させたり、反応ガスの詰まりや圧力損失に伴う発電性能の低下を引き起こす。
膨張黒鉛シートに複数の穴を空けてガスを逃がす方法もあるが(例えば、特許文献2参照)、脹れの発生位置が不特定のため、確率論的に脹れを完全に無くすることはできない。穴の数を増やすことで脹れの発生を抑制することは可能であるが、一方で、加熱圧縮時に基材中の樹脂がこの穴を通じて流れ出すため、穴の数が増すに伴って膨張黒鉛シートの表面への樹脂の溢出量が多くなり、接触抵抗が増大するようになる。
また、膨張黒鉛は天然黒鉛を濃硫酸等で処理し、加熱することによって得られるため、膨張黒鉛には硫酸分が残存しており、この硫酸分と、同じく膨張黒鉛に不純物として含まれる鉄分とが燃料電池の稼動時に反応して水素ガスを発生し、膨張黒鉛シートに脹れを発生する。
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、膨張黒鉛シートの脹れが無く、それ故、シール性の低下や接触抵抗の増加が抑えられ、反応ガスの流通性にも優れ、高性能の燃料電池用セパレータを提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく膨張黒鉛シートの性状、形態を鋭意検討した結果、脹れが発生する原因として、膨張黒鉛に残留する硫酸分と空気が影響することを突き止めた。即ち、膨張黒鉛シートを規定の温度、雰囲気中で熱処理することで、残留硫酸分を規定値以下にし、更に残留空気を無くすことで、脹れを発生することなく基材と膨張黒鉛シートとを積層することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は上記目的を達成するために、下記に示す燃料電池用セパレータ及びその製造方法を提供する。
(1)樹脂及び導電性フィラーを含む基材の表面に、硫酸分が10ppm以下である膨張黒鉛層が形成されていることを特徴とする燃料電池用セパレータ。
(2)膨張黒鉛層の厚さが、20〜100μmであることを特徴とする上記(1)記載の燃料電池用セパレータ。
(3)基材が、樹脂を10〜40質量%、導電性フィラーを60〜90質量%含むことを特徴とする上記(1)または(2)記載の燃料電池用セパレータ。
(4)樹脂がエポキシ樹脂であることを特徴とする上記(1)〜(3)の何れか1項に記載の燃料電池用セパレータ。
(5)導電性フィラーが膨張黒鉛、人造黒鉛及びカーボンブラックから選ばれるの少なくとも1種であることを特徴とする上記(1)〜(4)の何れか1項に記載の燃料電池用セパレータ。
(6)(a)樹脂及び導電性フィラーを含む導電性樹脂組成物を冷間プレスして基材予備成形体を得る工程と、
(b)前記基材予備成形体を、硫酸分が10ppm以下である膨張黒鉛シートで挟んで積層体を得る工程と、
(c)前記積層体を金型に配置し、加熱成形により所定形状に一体成形する工程と、
を有することを特徴とする燃料電池用セパレータの製造方法。
(7)膨張黒鉛シートを400℃以上、還元雰囲気中で熱処理することを特徴とする上記(6)記載の燃料電池用セパレータの製造方法。
(1)樹脂及び導電性フィラーを含む基材の表面に、硫酸分が10ppm以下である膨張黒鉛層が形成されていることを特徴とする燃料電池用セパレータ。
(2)膨張黒鉛層の厚さが、20〜100μmであることを特徴とする上記(1)記載の燃料電池用セパレータ。
(3)基材が、樹脂を10〜40質量%、導電性フィラーを60〜90質量%含むことを特徴とする上記(1)または(2)記載の燃料電池用セパレータ。
(4)樹脂がエポキシ樹脂であることを特徴とする上記(1)〜(3)の何れか1項に記載の燃料電池用セパレータ。
(5)導電性フィラーが膨張黒鉛、人造黒鉛及びカーボンブラックから選ばれるの少なくとも1種であることを特徴とする上記(1)〜(4)の何れか1項に記載の燃料電池用セパレータ。
(6)(a)樹脂及び導電性フィラーを含む導電性樹脂組成物を冷間プレスして基材予備成形体を得る工程と、
(b)前記基材予備成形体を、硫酸分が10ppm以下である膨張黒鉛シートで挟んで積層体を得る工程と、
(c)前記積層体を金型に配置し、加熱成形により所定形状に一体成形する工程と、
を有することを特徴とする燃料電池用セパレータの製造方法。
(7)膨張黒鉛シートを400℃以上、還元雰囲気中で熱処理することを特徴とする上記(6)記載の燃料電池用セパレータの製造方法。
本発明によれば、残留硫酸分が10ppm以下である膨張黒鉛シートを用いることにより、基材との積層のための加熱圧縮時における脹れが抑えられ、シール性に優れ、反応ガスの流通も良好で、接触抵抗も小さい高性能の燃料電池用セパレータが提供される。
以下、本発明に関して詳細に説明する
本発明の燃料電池用セパレータは、図2に断面図にて示すように、樹脂及び導電性フィラーを含む導電性樹脂組成物からなる基材1の表面に、膨張黒鉛シートからなる層(膨張黒鉛層)2を積層一体化したものである。本発明では、膨張黒鉛層2として、残留硫酸分が10ppm以下である低硫酸分膨張黒鉛シートを用いる。後記する実施例でも示すように、残留硫酸分が10ppmを越える膨張黒鉛シートを用いると、本発明が目的とする、膨張脹れの無い燃料電池用セパレータを得ることはできない。
上記の低硫酸分膨張黒鉛シートを得るには、先ず、従来の方法に従い膨張黒鉛をプレスやロールによってシート状に成形する。用いる膨張黒鉛としては、嵩密度が0.2g/cm3以上のものが好ましく、これより低嵩密度になるとシートハンドリング性の悪化により、シート欠損が生じる。
また、シート厚は、後述する膨張黒鉛層2の厚さを満足するように、0.2〜1mmとすることが好ましい。0.2mmより薄くなると、シートの作製が困難でハンドリング性にも劣り、また、成形時に基材1から樹脂が滲み出て接触抵抗が悪化するといった不具合を生じる。一方、1mmより厚くなると、後述する熱処理を行ってもシート内部から硫酸分や空気が抜け難くなるため、基材1との加熱圧縮時に脹れが発生するとともに、形状追従性に劣るようになる。
次いで、上記の膨張黒鉛シートを熱処理して、残留硫酸分を10ppm以下にまで低減する。通常、膨張黒鉛は天然黒鉛を濃硫酸で処理し、加熱することによって得られるが、その際、膨張黒鉛の内部に硫酸分が残存する。この残留硫酸分は、燃料電池の稼動時に、膨張黒鉛中に不純物として存在する鉄と反応して水素を発生し、脹れ発生の一原因になっている。膨張黒鉛シートの硫酸分を10ppm以下とするのは、鉄との反応を避けるためである。より好ましくは、硫酸分を5ppm以下とする。
また、この熱処理により、シート内部に残留する空気も排出される。膨張黒鉛の内部に残留した空気もまた、脹れを発生させるため、高温で熱処理して急激な熱膨張を起こし、膨張黒鉛層を破壊して残留空気を逃がす。
上記の残留硫酸分及び空気を規定量以下にまで効率的に排出するために、熱処理温度は400℃以上とすることが望ましい。400℃以上とするのは、硫酸の沸点が300℃のためである。400℃未満では、硫酸分を蒸発させるのに時間がかかり、また硫酸分が10ppm以下にまで低減できない可能性がある。加熱時間は、加熱温度によって適宜決定することができる。熱処理コストを考えると、500〜700℃で3時間行うのが好ましい。また、加熱は、黒鉛を燃やさないように、還元雰囲気中で行う。
一方、基材2は、樹脂と導電性フィラーとを含む導電性樹脂組成物からなる。樹脂の種類に特に制限はないが、熱硬化性樹脂であれば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フラン樹脂、ジアリルフタレート樹脂等の1種または複数種類を混合したものを用いることができる。また熱可塑性樹脂であれば、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリカーボネート、ABS、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、液晶ポリエステル等の1種または複数種類を混合したものを用いることができる。
これらの中で、成形性、耐熱性を考慮した場合、エポキシ樹脂を選択するのが好ましい。エポキシ樹脂は、エポキシ基を持つ化合物が自己重合する、または硬化剤との反応により、エポキシ樹脂化合物となる。反応が付加重合であるため、反応によるガスは発生しない。そのため、反応ガスによる脹れを考慮しなくても良い。エポキシ樹脂としては、多官能性エポキシ化合物と硬化剤との反応で形成される構造体、並びに該構造体を与えるエポキシ化合物及び硬化剤全てを包含する。以後、反応前のエポキシ化合物をエポキシ樹脂前駆体、反応により生じた構造体をエポキシ化合物と言うことがある。また、エポキシ樹脂量は、エポキシ硬化物の質量に等しい。
エポキシ樹脂前駆体としては、種々の公知の化合物を使用することができる。例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル型、ビスフェノールFジグリシジルエーテル型、ビスフェノールSジグリシジルエーテル型、ビスフェノールADジグリシジルエーテル型、レゾルシノ−ルジグリシジルエーテル型等の2官能性エポキシ化合物;フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型等の多官能性エポキシ化合物;更にはエポキシ化大豆油のような線状脂肪族エポキシ化合物、環式脂肪族エポキシ化合物、複素環エポキシ化合物、グリシジルエステル系エポキシ化合物グリシジルアミン系エポキシ化合物等が挙げられるがこれらに限定されない。上述したエポキシ樹脂のなかでは、耐熱性と強度の高い成形体が得られるため、多官能型エポキシ樹脂が本発明においては好ましい。また、そのエポキシ当量、分子量等のも特に制限はない。
導電性フィラーとしては、黒鉛粉末、カーボンブラック、カーボンファイバー等が挙げられる。黒鉛粉末としては、鱗片状黒鉛等の天然黒鉛、人造黒鉛、粒状黒鉛を用いても良いが、鱗片状黒鉛を濃硫酸等で処理し、加熱して得られる膨張黒鉛を用いることが好ましい。またカーボンブラックとしてはケッチェンブラック、アセチレンブラック、サーマルカーボンブラック、ファーネスカーボンブラックを単独もしくは複数組み合わせて用いることが好ましい。このケッチェンブラック、アセチレンブラックは高導電性フィラーとして開発されたものであり、それぞれ天然ガス等の不完全燃焼、アセチレンの熱分解により得られる。サーマルカーボンブラックは天然ガスの熱分解により得られる大粒子径のカーボンであり、例としてFTカーボン、MTカーボン等が挙げられる。ファーネスカーボンブラックは炭化水素油や天然ガスの不完全燃焼により得られるフィラーであり、粒径に応じてSAF、ISAF、IISAF、HAF、FF、FEF、MAF、GPF、SRF、CF等に分類される。これら各種のカーボンブラックのうちでも、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、またはファーネスカーボンブラックの中で比表面積やDBP吸油量の多いものが一層好ましい。カーボンファイバーとしては、PAN系、ピッチ系のものを使用することができ、特に黒鉛化した材料が好ましい。これら導電性フィラーは、燃料電池用セパレータで必要とされる導電性、強度、そり等を考慮して、適宜組み合わせて使用することができる。
導電性樹脂組成物において、樹脂を全量の10〜40質量%とすることが好ましい。これは、導電性樹脂組成物全体としての導電性、成形性、強度及び脹れ等の観点からである。樹脂が10質量%未満であると、基材の導電性には優れるものの、燃料電池用セパレートに必要な溝形状が出にくいといった成形上の不具合を生じる。そのため、溝形状の欠損等により、接触面積が減少し、接触抵抗増大の懸念がある。また、基材と膨張黒鉛シートとが接着不良となり、基材−シート層間での脹れが発生する。逆に樹脂が40質量%を越えると、基材の導電性が低くなり、また樹脂が膨張黒鉛シートに染み出し、表面の接触抵抗が増加するといった不具合を生じる。よって、樹脂量は10〜40質量%が好ましく、より好ましくは20〜30質量%が導電性、成形性、強度、脹れの観点からバランスよい配合となる。
樹脂と導電性フィラーとを混合する方法としては、種々の慣用の混合方法を行うことができる。一般的には、樹脂を加熱溶融させて混練し、そこに導電性フィラーを所定量添加し、ニーダー、バンバリミキサー等公知の混練手段を用いて混練する。この溶融混合方式では、樹脂の流動性を高めて混合するため、樹脂に導電性フィラーを容易に均一に混合することができる。その結果、得られる導電性樹脂組成物の安定性が高まる。
本発明の燃料電池用セパレータは、導電性樹脂組成物からなる基材1と、上記の低硫酸分膨張黒鉛シートとを加熱成形により一体化して得られる。具体的には、冷間プレスにて導電性樹脂組成物を平板状に成形してなる予備成形体を2枚の低硫酸分膨張黒鉛シートで挟み込み、この積層体を、例えば図1及び図2に示すような段状の成形型に配置して所定温度、圧力等により熱プレス成形する。ここで、予備成形体と低硫酸分膨張黒鉛シートとを積層した状態でプレスして平板状物とし、その後にこの平板状物を段状の成形型に配置して熱プレスにて本成形を行ってもよい。これにより、予備成形体と低硫酸分膨張黒鉛シートとが熱融着し、図1及び図2に示すような形状に一体成形され、かつ、表面の膨張黒鉛層2に脹れのない燃料電池用セパレータが得られる。成形条件には制限がなく、導電性樹脂組成物の組成や物性、膨張黒鉛層2の厚さ等に合わせて適宜設定する。
膨張黒鉛層2の厚さは、20〜100μmであることが好ましい。20μmより薄くなると、基材1からの樹脂の染み出しにより接触抵抗が悪化するといった不具合を生じる。一方、100μmより厚くなると、圧縮強度が低すぎて、突起部の潰れが起きる。また、燃料電池用セパレータの最薄部で基材1に対する膨張黒鉛層2の比率が大きくなりすぎ、反応ガスの透過が大きくなる。
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明を更に説明するが、本発明はこれにより何ら限定されるものではない
(実施例1〜3、比較例1〜6)
導電性フィラーとして、膨張黒鉛(日本黒鉛(株)製;平均粒径約400〜800μm)を40質量%、アセチレンブラック(電気化学工業(株)製;平均粒径約5〜10μm)を5質量%、人造黒鉛(オリエンタル産業(株)製「AT-5」;平均粒径約40〜50μm)を20質量%となるように混合したものを用い、表1に示す量のエポキシ樹脂(ソマール(株)製「F-7145」;平均分子量約1500)と溶融混合して導電性樹脂組成物を調製した。そして、この導電性樹脂組成物を冷間プレスにて成形し、一辺が200mmで、厚さ2mmの平板状の予備成形体を得た。
導電性フィラーとして、膨張黒鉛(日本黒鉛(株)製;平均粒径約400〜800μm)を40質量%、アセチレンブラック(電気化学工業(株)製;平均粒径約5〜10μm)を5質量%、人造黒鉛(オリエンタル産業(株)製「AT-5」;平均粒径約40〜50μm)を20質量%となるように混合したものを用い、表1に示す量のエポキシ樹脂(ソマール(株)製「F-7145」;平均分子量約1500)と溶融混合して導電性樹脂組成物を調製した。そして、この導電性樹脂組成物を冷間プレスにて成形し、一辺が200mmで、厚さ2mmの平板状の予備成形体を得た。
また、膨張黒鉛(日本黒鉛(株)製;平均粒径約400〜800μm)をシート状に成形して膨張黒鉛シートを作製した。また、膨張黒鉛シートを表1に示す温度及び時間にて加熱処理して硫酸分を除去した。膨張黒鉛シートの残留硫酸の濃度は、膨張黒鉛シートを蒸留水に80℃、24時間浸漬し、その抽出液をイオンクロマトグラフィーで測定して求めた。浸漬条件は、膨張黒鉛シート200gに対し、蒸留水400ccとした。結果を表1に示す。
上記の予備成形体を膨張黒鉛シートで挟んだ状態で、離型剤を塗布した段差のついた型に入れ、150℃、圧力98MPaで圧縮成形してサンプルを作製した。試験サンプルの形状は、図1及び図2に示すような凹凸のついた形状であり、サイズは一辺が200mmで、平板部(図1、符号6で示す部分)の厚さを1mmとした。このとき、膨張黒鉛シートの厚さを調整して、膨張黒鉛層が表1に示す厚さとなるようにした。
得られたサンプルについて、下記の(1)脹れ評価及び(2)接触抵抗測定に供した。
(1)脹れ評価
サンプル両面の膨張黒鉛層を目視で観察し、面内に脹れが無いものを「○」、脹れが1つでもあるものを「×」として表1に示した。
(2)接触抵抗測定
サンプルから30mm×60mmの試験片を切り出し、図3に模式的に示すように、この試験片4と、サンプルと同組成の基材及び膨張黒鉛層を有する30mm×60mmで、厚さ1mmの平板シートとを重ね合わせ、銅板に金メッキを施した一対の電極3で挟み込み、1MPaの荷重を加えた状態で抵抗値を測定した。そして、測定した抵抗値に接触面積(重なり面積)を乗じた値を接触抵抗とした。
(1)脹れ評価
サンプル両面の膨張黒鉛層を目視で観察し、面内に脹れが無いものを「○」、脹れが1つでもあるものを「×」として表1に示した。
(2)接触抵抗測定
サンプルから30mm×60mmの試験片を切り出し、図3に模式的に示すように、この試験片4と、サンプルと同組成の基材及び膨張黒鉛層を有する30mm×60mmで、厚さ1mmの平板シートとを重ね合わせ、銅板に金メッキを施した一対の電極3で挟み込み、1MPaの荷重を加えた状態で抵抗値を測定した。そして、測定した抵抗値に接触面積(重なり面積)を乗じた値を接触抵抗とした。
表1に示されるように、本発明に従い、低硫酸分膨張黒鉛シートからなる膨張黒鉛層を設けた実施例の各サンプルは、膨張黒鉛層の脹れも無く、接触抵抗が小さくなっている。 実施例1のサンプルでは接触抵抗が若干大きいが、これは膨張黒鉛層が薄いため樹脂が滲み出したことによるものと考えられる。
これに対し、膨張黒鉛層の無い比較例1のサンプルでは接触抵抗が大きい。熱処理を行わない膨張黒鉛シートを用いた比較例2のサンプルも接触抵抗が大きく、脹れも発生している。また、熱処理が不十分で硫酸分が規定値より多い膨張黒鉛シートを用いた比較例3のサンプルでは、接触抵抗は小さいものの、脹れが発生している。
また、比較例4のサンプルのように導電性樹脂組成物の樹脂量が少なすぎると、基材−膨張黒鉛層間で脹れが発生し、セパレータ形状が規定どおりでないため、接触抵抗が大きくなる。逆に、比較例5のサンプルのように樹脂量が多すぎると、脹れは発生しないものの樹脂の染み出しによる接触抵抗の増加が見られる。
また、比較例6のサンプルのように低硫酸分膨張黒鉛シートを用いても、膨張黒鉛層が厚くなりすぎると脹れが発生するようになる。
1 基材
2 膨張黒鉛層
3 金メッキ電極
4 試験片
5 燃料電池用セパレータ
6 平板部
7 隔壁
8 チャネル
2 膨張黒鉛層
3 金メッキ電極
4 試験片
5 燃料電池用セパレータ
6 平板部
7 隔壁
8 チャネル
Claims (7)
- 樹脂及び導電性フィラーを含む基材の表面に、硫酸分が10ppm以下である膨張黒鉛層が形成されていることを特徴とする燃料電池用セパレータ。
- 膨張黒鉛層の厚さが、20〜100μmであることを特徴とする請求項1記載の燃料電池用セパレータ。
- 基材が、樹脂を10〜40質量%、導電性フィラーを60〜90質量%含むことを特徴とする請求項1または2記載の燃料電池用セパレータ。
- 樹脂がエポキシ樹脂であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の燃料電池用セパレータ。
- 導電性フィラーが膨張黒鉛、人造黒鉛及びカーボンブラックから選ばれるの少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の燃料電池用セパレータ。
- (a)樹脂及び導電性フィラーを含む導電性樹脂組成物を冷間プレスして基材予備成形体を得る工程と、
(b)前記基材予備成形体を、硫酸分が10ppm以下である膨張黒鉛シートで挟んで積層体を得る工程と、
(c)前記積層体を金型に配置し、加熱成形により所定形状に一体成形する工程と、
を有することを特徴とする燃料電池用セパレータの製造方法。 - 膨張黒鉛シートを400℃以上、還元雰囲気中で熱処理することを特徴とする請求項6記載の燃料電池用セパレータの製造方法。
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