JP2012212644A - 燃料電池セパレータの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明に係る燃料電池セパレータの製造方法は、金属基材の表面に黒鉛層を形成する黒鉛層形成工程と、形成した前記黒鉛層を前記金属基材上に圧着する圧着工程と、前記黒鉛層が圧着した前記金属基材を熱処理する熱処理工程と、を含み、前記黒鉛層形成工程において、前記黒鉛層を形成するために使用する黒鉛粉が、鱗状黒鉛粉、鱗片状黒鉛粉、膨張化黒鉛粉、および熱分解黒鉛粉のうちのいずれか、または、これらを主体とする黒鉛粉であることを特徴とする。
【選択図】なし
Description
これらの要求を満足するために、基材として金属材料を用いたセパレータが指向され、以下のような提案がされている。
例えば、基材自身の酸化皮膜の表面に、気相成膜法により中間層および導電性薄膜を形成する方法(特許文献1)や、基材表面に、半金属元素等からなる部分と炭素等からなる部分とから構成される表面処理層を気相成膜法により形成する方法(特許文献2)が提案されている。
また、特許文献3、および4に開示された技術は、基材表面に粒状の炭素粉を付着させているだけであり、炭素粉と基材との密着性が不十分で、導電性の劣化の懸念がある。さらに、基材表面の炭素層がポーラス状で環境遮断性が悪いため、基材表面が酸化されやすく導電性が劣化する恐れがある。
以下、本発明に係る燃料電池セパレータの製造方法を詳細に説明する。
そして、圧着工程により金属基材に黒鉛層を圧着させた後、金属基材に熱処理を施すことにより、黒鉛層と金属基材との結合をさらに強固なものとすることができる。
このように、本発明に係る燃料電池セパレータの製造方法は、金属基材がステンレス鋼であることから、本発明に係る製造方法により製造した燃料電池セパレータの耐食性を確保することができる。
その結果、高い導電性を長期間維持できるとともに、加工性に優れた燃料電池セパレータを生産性良く製造することができる。
まず、本発明に係る燃料電池セパレータの製造方法で製造される燃料電池セパレータ(以下、適宜、セパレータという)について説明する。
セパレータは、金属基材と、当該金属基材の表面に形成された黒鉛層(黒鉛粉により形成される層)と、から構成される。なお、黒鉛層は、金属基材の片面に形成されていても、両面に形成されていてもよい。また、セパレータとは、セパレータ用の板材も含む。
以下、セパレータを構成する金属基材、黒鉛層について説明する。
燃料電池セパレータの基材は、ガスの流路となる溝を形成するために必要となる加工性の点、ガスバリア性の点、導電性や熱伝導性の点から金属基材を用いるのが好ましく、更に燃料電池内部環境下での耐食性の観点から、純チタン、チタン合金またはステンレス鋼からなるのが好ましい。中でも純チタンまたはチタン合金はステンレス鋼と比べて軽量であるとともに耐食性に優れるため、非常に好ましい材料である。
黒鉛層は、基材表面に形成される層であり、下記の黒鉛粉により構成される。
黒鉛層の付着量は、特に限定されないが、10〜1000μg/cm2が好ましい。10μg/cm2未満では、導電性と耐食性を確保することができず、1000μg/cm2を超えると導電性と耐食性の効果については飽和する一方で、加工性が低下するからである。
なお、黒鉛層は基材の表面全体に被覆されていることが好ましいが、導電性と耐食性を確保するために、基材表面の40%以上、好ましくは50%以上に被覆していればよい。
次に、この黒鉛層を形成するために使用する黒鉛粉を説明する。
基材表面に黒鉛層を形成するが、この黒鉛層を形成する際に使用する黒鉛粉は、鱗状黒鉛粉、鱗片状黒鉛粉、膨張化黒鉛粉、および熱分解黒鉛粉のうちのいずれか、または、これらを主体とする黒鉛粉である。
さらに、人造黒鉛粉は前記メリットの他にも、高純度、高導電性という品質の材料を安定して供給可能というメリットが存在するため、黒鉛系の導電性材料としては、通常、人造黒鉛、人造黒鉛粉が用いられる。
なお、これらの黒鉛粉の中でも、特に、膨張化黒鉛粉は薄片間に微細な空間があるため圧力を受けたときに潰れやすく、薄片間での滑りが起こることでより広がり易い。よって、膨張化黒鉛粉を用いるのが特に好ましい。
以上より、本発明では、天然黒鉛の中でも、圧力を掛けても潰れにくい土壌黒鉛粉等を除いた鱗状黒鉛粉、鱗片状黒鉛粉、膨張化黒鉛粉、熱分解黒鉛粉を使用することとした。
さらに好ましくは、鱗状黒鉛粉、鱗片状黒鉛粉、膨張化黒鉛粉、熱分解黒鉛のいずれかもしくはこれらの混合粉末からなる黒鉛粉を用いる場合である。
燃料電池セパレータの製造方法は、黒鉛層形成工程と、圧着工程と、熱処理工程とを、含む。なお、圧着工程として、圧着工程の一形態である圧延工程を行うことが好ましい。
以下、燃料電池セパレータの製造方法を、工程ごとに説明する。
黒鉛層形成工程とは、基材表面に黒鉛層を形成する工程である。
黒鉛層の形成方法としては、基材表面に黒鉛層を形成することができる方法であれば、特に限定されないが、下記の方法が挙げられる。
例えば、黒鉛粉を塗料中に分散させたり、カルボキシメチルセルロース等のバインダを含む溶液に混合させたりすることによってスラリーを作製し、当該スラリーを基材表面に塗付して乾燥させる方法がある。このとき塗料中に含まれる樹脂成分としては、特にフェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂などが好ましく、これらの樹脂を含む塗料を用いると、黒鉛層と基板との密着性がより良好なものとなる。また、黒鉛粉を樹脂(ポリエステル樹脂等)中に混練してフィルムを作製し、当該フィルムを基材表面に貼り付ける方法がある。
圧着工程とは、黒鉛層形成の後に、黒鉛層を基材に圧着する工程である。例えば不織布などを黒鉛層に押し付けて擦り広げることや、黒鉛層を形成した材料を、樹脂製、ゴム製あるいは金属製の2本のロールの間に加圧しながら通すことにより、黒鉛層を潰して伸ばし、緻密な状態にしながら基材との密着性を高める。
熱処理工程とは、圧着工程の後に、黒鉛層が形成された基材を熱処理することによって、黒鉛層と基材との結合をより強固なものとする工程である。
なお、この熱処理は、300〜850℃の熱処理温度で熱処理を行うことができ、かつ雰囲気調整ができる熱処理炉であれば、電気炉、ガス炉等、どのような熱処理炉でも用いることができる。
上述した圧着工程の一形態として、圧延工程が挙げられる。圧延工程は、黒鉛層形成工程と熱処理工程との間に、黒鉛層が形成されている基材を圧延することにより、黒鉛層中の黒鉛粉を基材表面に強固に圧着させる工程である。この圧延工程によって、基材表面に形成されている黒鉛層中の黒鉛粉が潰されて広がり、基材表面を高い被覆率により被覆させることができるとともに、圧力により黒鉛層と基材との密着性が向上する。この「潰されて広がる」という点において、鱗状黒鉛粉、鱗片状黒鉛粉、膨張化黒鉛粉、熱分解黒鉛粉は非常に良好に作用する。
なお、圧下率は、圧延工程前後の黒鉛層が形成された基材(黒鉛層の厚さも含む)の厚さの変化から算出した値であり、「圧下率=(t0―t1)/t0×100」(t0:黒鉛層形成工程後の初期厚さ、t1:圧延後の厚さ)により算出する。
また、ガスの流路となる溝をプレス成形により形成する場合、黒鉛層が潤滑剤としての作用を持つため、潤滑油無しでもプレス成形が可能であるとともに、プレス成形後も黒鉛層の剥離がほとんど起こらない。このためプレス成形後の脱脂洗浄が不要となりセパレータの生産性も良くなる。
基材としては、JIS 1種のチタン基材(焼鈍酸洗仕上げ)を使用した。チタン基材の化学組成は、O:450ppm、Fe:250ppm、N:40ppm、残部がTiおよび不可避的不純物であり、チタン基材の板厚は、0.2mmであり、サイズは50×150mmとした。当該チタン基材は、チタン原料に対して従来公知の溶解工程、鋳造工程、熱間圧延工程、冷間圧延工程を施して得られたものである。
また、上記6種類の黒鉛粉のほかにアセチレンブラック粉末(Strem Chemicals,Inc.社製、平均粒径50nm、純度99.99%)を使用した。
そして、4段圧延機を用いて、圧下率が所定の値となるようにロールギャップを調整し、所定のトータル圧下率まで複数パスに分けて冷間圧延を実施した。なお、圧延ロールには潤滑油を塗布していない。また、圧延を行わない(圧下率0%)試験体については、黒鉛スラリーを塗付して乾燥させた後、黒鉛層が形成されている面を不織布(商品名:ベンコット(旭化成製))で乾拭きして黒鉛層を圧着させた。
前記方法により作製した試験体について、図1に示す接触抵抗測定装置10を用いて、接触抵抗を測定した。詳細には、試験体11の両面を2枚のカーボンクロス12、12で挟み、さらにその外側を接触面積1cm2の2枚の銅電極13、13で挟んで荷重98N(10kgf)で加圧し、直流電流電源を用いて7.4mAの電流を通電し、カーボンクロス12、12の間に加わる電圧を電圧計で測定して、接触抵抗を求めた。
接触抵抗が8mΩ・cm2以下の場合を導電性が良好、8mΩ・cm2を超える場合を導電性が不良とした。
図1に示す接触抵抗測定装置10を用いて、密着性評価を行った。試験体11の両面を2枚のカーボンクロス12、12で挟み、さらにその外側を接触面積1cm2の銅電極13、13で挟んで荷重98N(10kgf)に加圧し、両面から加圧された状態を保持したまま、面内方向に試験体11を引き抜いた(引抜き試験)。
引抜き試験後、非摩擦面および摩擦面をSEM/EDXにて50倍の倍率で観察し、加速電圧を15kVとしてチタン(Ti)と炭素(C)を定量分析したときに、非摩擦面での炭素の量(原子%)に対する摩擦面での炭素の量の割合、すなわち摩擦試験後の炭素の残存率((摩擦面での炭素量(原子%)/非摩擦面での炭素量(原子%))×100)を求めた。この摩擦試験後の炭素の残存率が70%以上であったときは○(良好)、摩擦面での炭素の量が非摩擦面の炭素の50%以上、70%未満であるときは△(やや不良)、摩擦面での炭素の量が非摩擦面の炭素の量50%未満であるときを×(不良)と判断し、○(良好)となるものを合格と判断した。
前記方法により作製した試験体について、耐久性評価(耐久試験)を行った。すなわち、試験体を比液量が20ml/cm2である80℃の硫酸水溶液(10mmol/L)に1000時間浸漬した後、試験体を硫酸水溶液から取り出し、洗浄、乾燥して、前記と同様の方法で接触抵抗を測定した。
硫酸浸漬後(耐久試験後)の接触抵抗(表1では耐久試験後接触抵抗と示す)が15mΩ・cm2以下の場合を耐久性が良好、15mΩ・cm2を超える場合を耐久性が不良とした。
約1350cm−1の位置にDバンドのピークが得られ、約1590cm−1の位置にGバンドのピークが得られる。試験体No.6、10ではDバンドのピーク強度に対してGバンドのピーク強度が非常に大きく、且つシャープであることから、結晶性の高い黒鉛被膜が形成されていることが分かる。一方、試験体No.20ではDバンドのピーク強度が大きく、且つGバンドピークの半値幅が大きくなっている。このように本発明に規定する製造方法で作製した材料は、黒鉛層の密着性が良好であると共に、黒鉛層の結晶性が非常に高いことから良好な導電性と耐食性を発揮する。
11 試験体
12 カーボンクロス
13 銅電極
Claims (6)
- 金属基材の表面に黒鉛層を形成する黒鉛層形成工程と、
形成した前記黒鉛層を前記金属基材上に圧着する圧着工程と、
前記黒鉛層が圧着した前記金属基材を熱処理する熱処理工程と、を含み、
前記黒鉛層形成工程において、前記黒鉛層を形成するために使用する黒鉛粉が、鱗状黒鉛粉、鱗片状黒鉛粉、膨張化黒鉛粉、および熱分解黒鉛粉のうちのいずれか、または、これらを主体とする黒鉛粉であることを特徴とする燃料電池セパレータの製造方法。 - 前記圧着工程が、前記黒鉛層を形成した前記金属基材を圧延する圧延工程であることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池セパレータの製造方法。
- 前記圧延工程における前記金属基材の圧下率が0.1〜40%であることを特徴とする請求項2に記載の燃料電池セパレータの製造方法。
- 前記熱処理工程は、300〜850℃の温度範囲で前記金属基材を熱処理する熱処理工程であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の燃料電池セパレータの製造方法。
- 前記金属基材が純チタンもしくはチタン合金であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の燃料電池セパレータの製造方法。
- 前記金属基材がステンレス鋼であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の燃料電池セパレータの製造方法。
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