JP2012021664A - ロータリーキルン及び金属回収方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】被処理物から金属を効率よく回収すると共に、回収率を向上させることのできるロータリーキルンを提供する。
【解決手段】電気炉6は、被処理物Wの溶融物から電気による加熱処理によって更に金属を分離させ、被処理物Wの溶融物であるスラグSに含有される金属を回収することできる。また、電気炉6は回転炉2と連絡シュート4を介して接続されているため、被処理物Wは回転炉2にて燃焼処理されてスラグSとなった後、直ちに電気炉6へ投入され、金属回収を効率的に行うことができる。更に、回転炉2での燃焼処理による熱を電気炉6における加熱処理に有効利用することができ、エネルギー効率を向上させることができる。また、コークス供給装置22Aより還元剤を供給し、電気炉6内のスラグS中に含まれる金属酸化物を還元反応させることによって、より多くの金属を回収することができる。
【選択図】図1

Description

本発明は、被処理物から金属を回収することのできるロータリーキルン及びそのロータリーキルンを用いた金属回収方法に関する。
従来のロータリーキルンとして、金属を含有する被処理物を燃焼処理する回転炉を備えるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。このロータリーキルンは、家電等の基板を回転炉内で回転させながら燃焼させることで溶融させ、溶融物を回転炉の出口からスラグ冷却装置へ落としている。スラグ冷却装置は、溶融物を水で冷却すると共に破砕することによって、砕塊を形成する。当該砕塊は、磁気選鉱装置などによって、金属の砕塊とスラグの砕塊とに分別される。
特開2008−139009号公報
しかしながら、従来のロータリーキルンでは、一度溶融した被処理物を冷却し、砕塊を他の装置まで搬送し金属とスラグを分別する必要があり、非効率である。また、一度加熱した被処理物を冷却する必要があり、エネルギー効率の点でも改善の必要があった。更に、上述のような磁気選鉱法では、金属の回収率に限界があり、被処理物から十分に金属を回収できない場合があった。以上より、被処理物から金属を効率よく回収すると共に、回収率を向上させることが求められていた。
そこで、本発明は、被処理物から金属を効率よく回収すると共に、回収率を向上させることのできるロータリーキルンを提供することを目的とする。
本発明に係るロータリーキルンは、金属を含有する被処理物を燃焼処理する回転炉と、接続部を介して回転炉と接続され、回転炉で燃焼処理された被処理物の溶融物から、電気による加熱処理によって金属を分離させる電気炉と、電気炉に還元剤を供給する還元剤供給手段と、を備えることを特徴とする。
本発明に係るロータリーキルンによれば、電気炉は、回転炉で燃焼処理された被処理物の溶融物から電気による加熱処理によって更に金属を分離させることができる。これによって、被処理物の溶融物に含有される金属を回収することできる。また、電気炉は回転炉と接続部を介して接続されているため、被処理物は回転炉にて燃焼処理された後、冷却工程や次の処理装置へ移動する工程などを要することなく、直ちに溶融物として電気炉へ投入される。従って、被処理物からの金属回収を効率的に行うことができる。更に、回転炉から排出された被処理物の溶融物を冷却する工程が入らないため、回転炉での燃焼処理による熱を電気炉における加熱処理に有効利用することができ、エネルギー効率を向上させることができる。また、還元剤供給手段が電気炉に還元剤を供給することができるため、電気炉内の溶融物中に含まれる金属酸化物を還元反応させることによって、より多くの金属を回収することができる。以上によって、被処理物から金属を効率よく回収すると共に、回収率を向上させることができる。
また、本発明に係るロータリーキルンにおいて、電気炉は、回転炉の出口の下方に配置され、接続部と非接触で落下する被処理物が投入されることが好ましい。回転炉で燃焼処理されて排出される被処理物の溶融物は、接続部と接触することなく、そのまま下方に落下して電気炉に投入される。例えば、回転炉から排出された溶融物が接続部の内壁を伝って電気炉へ投入される場合、溶融物の熱が接続部の内壁に奪われて、固化・付着してしまう。一方、本発明に係るロータリーキルンによれば、回転炉での燃焼処理に係る熱を他の部材に奪われることなく、電気炉へ供給することができる。これによって、金属回収のためのエネルギー効率が一層向上する。
また、本発明に係るロータリーキルンにおいて、電気炉は、被処理物の溶融物が投入される投入部と、被処理物の溶融物を電気によって加熱処理する電極と、被処理物の溶融物を排出する電気炉用排出口と、を備え、投入部、電極、及び電気炉用排出口は、所定の方向に投入部、電極、電気炉用排出口の順で配置されていることが好ましい。これによって、投入部から電気炉に投入された被処理物の溶融物は、電極付近を通過して十分に加熱されて金属を分離された後に、電気炉用排出口から排出される。これによって、金属の回収効率が向上する。
また、本発明に係るロータリーキルンにおいて、電気炉は、回転炉の出口の下方に配置され、回転炉の回転軸線方向から見た場合に、回転炉の回転方向における下流側に配置されることが好ましい。燃焼処理された被処理物の溶融物は、回転炉が回転した状態にて排出されるため、回転炉の出口において、回転軸線の真下の位置よりも回転方向の下流側の位置から落下する。電気炉は、回転方向における下流側に配置されているため、接続部も当該電気炉の位置に合わせた構成となる。これによって、回転によって落下位置がずれるにも関わらず、被処理物の溶融物は接続部の内壁などと接触することなく電気炉へ投入されることができる。
また、本発明に係るロータリーキルンにおいて、回転炉は、燃焼処理によって被処理物から分離した金属を、周面壁を介して排出する回転炉用排出口を有することが好ましい。これによって、回転炉での燃焼処理の段階で分離される純度の高い金属を、電気炉へ投入する前段階において回転炉用排出口から回収することもできる。
本発明に係る金属回収方法は、上述のロータリーキルンを使用し、金属を含有する被処理物から金属を回収することを特徴とする。上述のロータリーキルンを用いることによって、被処理物から金属を効率よく回収すると共に、回収率を向上させることができる。
また、本発明に係る金属回収方法では、具体的に、Au,Ag,Cu,Pd,Pb,Snのうちいずれかを金属として回収する。また、本発明に係る金属回収方法では、金属を含有する被処理物として廃電子基板、電線屑あるいは、銅・金・銀のいずれかを製錬した際のスラグを原料としている。
本発明によれば、被処理物から金属を効率よく回収すると共に、回収率を向上させることができる。
本発明の実施形態に係るロータリーキルンの構成を示す概略断面図である。 電気炉の概略的な構成を示す断面図である。 図3は、図2に示すIII−III線に沿った断面図である。 図4は、図2に示すIV−IV線に沿った断面図である。 回転炉から投入されてからスラグ排出口より排出されるまでの間における、電気炉内のスラグの濃度と滞留時間との関係を示すグラフである。 本発明に係るロータリーキルンの効果を示す実験結果に係る表である。
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
図1は本発明の実施形態に係るロータリーキルンの構成を示す概略断面図である。図1に示すように、ロータリーキルン1は、回転炉2と、二次燃焼室3と、連絡シュート(接続部)4と、電気炉6と、を備えている。ロータリーキルン1は、回転炉2や電気炉6を用いて金属を含有する被処理物Wをスラグと金属に分離し、金属を回収するものである。金属を含有する被処理物Wは、例えば家電等の基板や、電線屑、銅金銀滓などである。また、これらに含有される金属、すなわち本実施形態に係るロータリーキルン1によって回収することのできる金属は、Cu、Au、Ag、Pb、SnやPd等である。
回転炉2は、被処理物Wを燃焼処理することによって溶融させる。回転炉2は、円筒状を呈し、その内壁が耐火材で内張りされている。回転炉2は、バーナ10からの熱風によって、被処理物Wを1400〜1500℃で燃焼処理することができる。この回転炉2は、ベース上に固定された支持部(不図示)により回転可能に支持されると共に駆動装置によって回転する。この回転炉2は、回転軸線を傾斜させて設置されており、これにより、回転炉2内に投入された被処理物Wを燃焼しつつ、高い側の入口2aから低い側の出口2bに流動させる。回転炉2の入口2a側には、被処理物Wを投入するための投入シュート7と、投入された被処理物Wを回転炉2へ押し込むための投入プッシャ8とが設けられている。本実施形態に係るロータリーキルン1では、添加剤などを入れることによる成分調整を行う必要がない。成分調整を行わないため、スラグSの増加が防止される。耐火物の損傷を防止するため、回転炉2を水膜冷却することで保護する。本実施形態に係るロータリーキルン1の燃焼処理温度は1400〜1500℃と高温であり耐火物の損傷が大きく、添加剤などを入れることによる成分調整を行い被処理物Wの溶融点を降下することも有効的な手段であるが、その場合、スラグSが増加する。従って、可能な限り添加剤を使用せずに燃焼させ、耐火物は回転炉2を水膜冷却することで保護する。
回転炉2において、燃焼処理された被処理物Wの溶融物は、比重差によってスラグSと金属M1に分離される。また、被処理物W中の可燃物は熱分解されてガス化する。被処理物Wから分離した金属M1は、溶融状態または半溶融状態となって下層側に溜まる。溶融した金属M1の表面は、十分な量のスラグで覆われる。これによって、溶融した金属M1の酸化は防止される。回転炉2は、タッピング法によって、溶融した金属M1を、円筒状の周面壁2cを介して取り出し可能に構成されている。具体的には、回転炉2は、回転炉2の底部に溜まっている溶融した金属M1を周面壁2cを介して下方向へ落として排出することのできる、タッピング用ノズル(排出口)9を有している。タッピング用ノズル9は、回転炉2の周面壁2cに取り付けられている。具体的には、回転炉2にて所定時間溶融運転を続けた後、タッピング用ノズル9が所定の位置(底部以外の位置)に配置されるタイミングで回転炉2を停止させ、タッピング用ノズル9を開口する。その後、回転炉2の回転を再開し、タッピング用ノズル9を底部の位置に配置することで溶融した金属M1の部分に潜り込ませる。これによって、金属M1は自重によってタッピング用ノズル9を介して排出され、モールド等の造塊装置に鋳込まれて冷却される。金属M1の排出が終了すると、スラグSもタッピング用ノズル9から排出されるため、当該スラグSの排出を確認したタイミングで回転炉2の回転を再開し、タッピング用ノズル9を閉口する。このような動作を繰り返すことによって、回転炉2内で分離されている金属M1を選択に回収することができる。なお、回転炉2から電気炉6へ投入される溶融物には、スラグSのみならず、回転炉2で回収しきれなかった金属M1が一部あるいは全部含まれていてもよい。
二次燃焼室3は、回転炉2内で発生したガスを更に燃焼させることによって、例えば、ダイオキシンや悪臭物質などを分解し、排ガス処理設備へ供給することができる。二次燃焼室3は、回転炉2の出口2bと接続されている。二次燃焼室3には、回転炉2の出口2b付近に二次燃焼用のバーナ11が取り付けられると共に、更に上方に、尿素、空気、SCC温調水を供給する供給装置や攪拌ブロワが取り付けられている。
連絡シュート4は、回転炉2と電気炉6とを接続する連絡通路である。連絡シュート4は、二次燃焼室3の下側から下方に延びるように設けられており、当該二次燃焼室3と連通されている。連絡シュート4を構成する壁面部は、回転炉2の出口2bから排出されるスラグSと内壁面が接触しないように位置の調整が行われている。このような構成により、スラグSは、連絡シュート4の内壁面と非接触で、当該連絡シュート4内を垂直(あるいは、回転炉2の回転力や当該回転炉2内での流速によって、所定の角度を持って)に落下して電気炉6へ投入される。スラグSが連絡シュート4と接触しないため、スラグSの熱は連絡シュート4の壁面部に奪われることなく、あるいは付着固化することなく、電気炉6内に供給される。連絡シュート4には、バーナ12が取り付けられている。当該バーナ12は、スラグSが連絡シュート4で詰まったときや、スラグSが連絡シュート4の壁面に付着した場合における非常用の溶融手段である。すなわち、スラグSが詰まった場合などに加熱して溶融させ、落下させる。
電気炉6は、連絡シュート4を介して回転炉2と接続され、回転炉2で燃焼処理された被処理物Wの溶融物から、電気による加熱処理によって金属を分離させる。本実施形態では、回転炉2内で分離したスラグS中に残存している金属を回収することができる。電気炉6は、電気抵抗加熱炉であって、溶融物を滞留させてスラグSから金属M2を分離させる槽20と、スラグSを電気によって加熱する電極21A,21B,21Cを備えている。槽20内では、下側に溶融した金属M2の層が形成され、上側に溶融したスラグSの層が形成される。また、電気炉6には、還元剤としてのコークスを電気炉6内へ供給するコークス供給装置22Aが、供給ライン22Bを介して接続されている。還元剤として、コークスの他、石炭、廃カーボンを用いることができる。また、電気炉6は、金属回収ライン23を介して槽20内の金属M2を排出し、スラグ回収ライン24を介して槽20内のスラグSを排出する。このような電気炉6は、滞留するスラグSをバーナなどで加熱する場合に比して、熱効率よく加熱することが可能である。
回転炉2の出口2bから投入されるスラグSには数%の金属分が、金属微粒子あるいは金属酸化物として含有されている。電気炉6は、電極21A,21B,21C同士の間でのジュール熱でスラグS中の金属分を溶融させ、溶融した金属M2として分離させる。このとき、コークス供給装置22Aから供給されたコークスによる還元効果によって、スラグSに含まれている金属酸化物が還元され、金属M2として回収することができる。電気炉6の槽20に1400〜1500℃に保温した状態で3〜6時間滞留させることによって、スラグS中の金属成分をほぼ全量を金属M2として回収できる。
次に、図2、図3及び図4を参照して、ロータリーキルン1における電気炉6及びその周辺の構成について、より詳細に説明する。図2は、電気炉6の概略的な構成を示す断面図である。図3は、図2に示すIII−III線に沿った断面図である。図4は、図2に示すIV−IV線に沿った断面図である。図2、図3、図4に示すように、電気炉6の槽20は、スラグS及び金属M2を滞留させるための滞留部31と、当該滞留部31の上側を塞ぐ蓋部32を備えている。槽20は、上方から見た場合に、長円状の形状をなしており、滞留部31の部内側面31bで取り囲まれる部分も長円状の形状をなしている。また、滞留部31の底面31aは、金属排出口33及びスラグ排出口34側に傾斜している。
槽20の蓋部32の上面壁32aには、連絡シュート4と連結される投入部35が形成されている。当該投入部35と連絡シュート4の下端部4aとが固定されることによって、連絡シュート4と電気炉6の槽20の内部とが連通される。投入部35及び連絡シュート4は、槽20の長円形状における一端側に配置される。すなわち、回転炉2から落下したスラグSは、槽20の長円形状における一端側へ投入される。
槽20の滞留部31は、槽20内の金属M2を排出する金属排出口33と、槽20内のスラグSを排出するスラグ排出口34と、を備えている。金属排出口33及びスラグ排出口34は、槽20の長円形状における他端側に配置される。すなわち、槽20内で滞留したスラグS及び金属M2は、槽20の長円形状における他端側から排出される。金属排出口33は、下側の金属M2の層の高さに合わせ、滞留部31の側面壁を貫通させることによって形成され、金属回収ライン23に接続される。スラグ排出口34は、上側のスラグSの層の高さに合わせ、金属排出口33よりも高い位置において滞留部31の側面壁を貫通させることによって形成され、スラグ回収ライン24に接続される。なお、上から見て、金属排出口33とスラグ排出口34は、ずれるように配置されている。
槽20の蓋部32の上面壁32aには、上下方向に延びる電極21A,21B,21Cがそれぞれ挿入されている。電極21A,21B,21Cは、投入部35と、金属排出口33及びスラグ排出口34との間に配置されており、槽20の長円形状の一端側から他端側へ向かう方向D1へ電極21A、電極21B、電極21Cの順で直線状に並んでいる(図4参照)。
ここで、図3に示すように、回転炉2内のスラグSは、回転炉2が回転している状態にて落下する。従って、スラグSは、回転炉2の底部において、回転軸線CLの真下の位置よりも回転方向における下流側の位置にて落下する。すなわち、図3において回転炉2が反時計回りに回転している場合、スラグSは紙面右側寄りの位置で落下する。このようなスラグSの落下位置のずれに合わせて、スラグSが内壁面と非接触で落下できるように、電気炉6の位置及び連絡シュート4の構成が設定される。具体的には、電気炉6は、回転軸線方向CLから見た場合に、回転炉2の回転方向における下流側に配置される。電気炉6の位置にあわせ、連絡シュート4の下端部4aも、回転炉2の回転方向における下流側に配置される。すなわち、電気炉6及び連絡シュート4の下端部4aが、回転軸線CLよりも、図3における紙面右側寄りに配置される。
次に、上述のように構成されたロータリーキルン1におけるスラグ及び当該分離される金属の流れを説明する。まず、投入シュートへ投入された被処理物Wは、投入プッシャ8によって回転炉2へ押込まれる。被処理物Wは、バーナ10の熱風によって回転炉内で燃焼処理される。当該燃焼処理によって、被処理物Wは溶融し、スラグSの層と金属M1の層に分離される。下層側の金属M1は、タッピング用ノズル9から回収される。上層側のスラグSは、回転炉2の出口から落下し、連絡シュート4の内壁などには接触することなく、投入部35を介して電気炉6に投入される。槽20内において滞留しているスラグSからは、電極21A,21B,21Cでの電気による加熱処理によって、金属M2が分離される。また、スラグSに含まれている金属酸化物のコークスによる還元反応によって、より多くの金属M2が分離する。分離した金属M2は、槽20の底側に溜まる。分離した金属M2は金属回収ライン23から回収され、金属分が除去されたスラグSはスラグ回収ライン24から回収される。なお、投入部35から投入されたスラグSの槽20内での滞留時間、すなわち、投入部35を介してスラグSが落ちたときから当該スラグSが排出されるまでの時間は3〜6時間である。この滞留時間は、投入量、排出量及び槽20の容積によって調整される。
次に、本実施形態に係るロータリーキルン1の作用・効果について説明する。
本実施形態に係るロータリーキルン1において、電気炉6は、回転炉2で燃焼処理された被処理物Wの溶融物(本実施形態ではスラグS)から電気による加熱処理によって更に金属を分離させることができる。これによって、被処理物Wの溶融物であるスラグSに含有される金属を回収することできる。また、電気炉6は回転炉2と連絡シュート4を介して接続されているため、被処理物Wは回転炉にて燃焼処理されてスラグSとなった後、冷却工程や次の処理装置へ移動する工程などを要することなく、直ちに電気炉6へ投入される。従って、被処理物Wからの金属回収を効率的に行うことができる。更に、回転炉2から排出されたスラグSを冷却する工程が入らないため、回転炉2での燃焼処理による熱を電気炉6における加熱処理に有効利用することができ、エネルギー効率を向上させることができる。また、コークス供給装置22Aが電気炉6に還元剤としてのコークスを供給することができるため、電気炉6内のスラグS中に含まれる金属酸化物を還元反応させることによって、より多くの金属を回収することができる。以上によって、被処理物Wから金属を効率よく回収すると共に、回収率を向上させることができる。
また、本実施形態に係るロータリーキルン1において、電気炉6は、回転炉2の出口2bの下方に配置され、連絡シュート4と非接触で落下するスラグSが投入される。回転炉2で燃焼処理されて排出されるスラグSは、連絡シュート4と接触することなく、そのまま下方に落下して電気炉6に投入される。例えば、回転炉2から排出されたスラグSが連絡シュート4の内壁を伝って電気炉6へ投入される場合、スラグSの熱が連絡シュート4の内壁に奪われて、固化付着してしまう。一方、本実施形態に係るロータリーキルン1によれば、回転炉2での燃焼処理に係る熱を他の部材に奪われることなく、あるいは固化付着によるトラブルがなく電気炉6へ供給することができる。これによって、金属回収のためのエネルギー効率や稼働率が一層向上する。
また、本実施形態に係るロータリーキルン1において、投入部35と、電極21A,21B,21Cと、金属排出口33及びスラグ排出口34とは、図4に示す方向D1に向かって、この順番で配置されている。これによって、投入部35から電気炉6に投入されたスラグSは、電極21A,21B,21Cによって十分に加熱されて金属M2を分離された後に、スラグ排出口34から排出される。これによって、金属M2の回収効率が向上する。
また、本実施形態に係るロータリーキルン1において、電気炉6は、回転炉2の出口2bの下方に配置され、回転炉2の回転軸線CL方向から見た場合に、回転炉2の回転方向における下流側に配置されている。燃焼処理された被処理物Wの溶融物であるスラグSは、回転炉2が回転した状態にて排出されるため、回転炉2の出口2bにおいて、回転軸線CLの真下の位置よりも回転方向の下流側の位置から落下する。電気炉6は、回転方向における下流側に配置されているため、連絡シュート4も電気炉6の位置に合わせた構成となる。これによって、回転によって落下位置がずれるにも関わらず、スラグSは連絡シュート4の内壁などと接触することなく電気炉6へ投入されることができる。
また、本実施形態に係るロータリーキルン1において、回転炉2は、燃焼処理によって被処理物Wから分離した金属を、周面壁2cを介して排出するタッピング用ノズル9を有することが好ましい。これによって、回転炉2での燃焼処理の段階で分離する純度の高い金属を、電気炉6へ投入する前段階においてタッピング用ノズル9から回収することもできる。本実施形態において、回転炉2内で回収される金属M1は貴金属濃度が高く、電気炉6で分離される金属M2は、還元効果によってスラグS中の鉄分も還元するため、貴金属濃度が低くなる。従って、本実施形態に係るロータリーキルン1によれば、タッピング用ノズル9は、不純物の少ない品質の高い金属を回収し、電気炉6は、回転炉2内で回収し切れなかった金属を可能な限り多く回収することとして使い分けることができる。
以下、本発明の実施例について説明する。図6(a)に示す表1は、本発明に係る被処理物Wから回転炉2のタッピング用ノズル9から回収される金属M1と電気炉6から回収される金属M2の金属濃度と回収率における実験結果を示す。
表1に記載した値は3日間の操業で得られた成果物の全体の質量をもとにしており、本発明に係るロータリーキルン1の電気炉6によって金属を回収する場合における実験で得られたマテリアルバランスを示している。図5は、回転炉2から投入されてからスラグ排出口34より排出されるまでの間における、電気炉6内のスラグSの濃度と滞留時間との関係を示すグラフである。図5は、被処理物Wに含まれる金属のうち、Cuの濃度を例にして示す。図5において、Aで示す部分は、回転炉2の出口2bから落下して電気炉6に投入されたばかりのスラグSのCu濃度を示している。一方、図5において、Bで示す部分は、電気炉6から排出される直前のスラグSのCu濃度を示している。図5に示すように、投入直後におけるスラグSのCu濃度は4〜5%程度であるのに対し、滞留時間の経過とともにCu濃度は徐々に低下し(すなわち、スラグSにおいてこのCu濃度低下分に相当するCuの分離が進行している)、2〜4時間炉内で処理されることでCu濃度が1%以下となっている。図6(b)に示す表2は従来方法とのメタル主要元素の含有率と回収率の比較を示すものである。図6(c)に示す表3は実施例と同様の回収率を得るための操作をした場合のエネルギー消費である。上層側のスラグSが、回転炉2の出口から落下し、投入部35を介して炉に投入される際の必要エネルギーを本発明において熱源を電気炉とガスバーナーで変更したケース、さらに従来方法で排出されたスラグSを冷却し凝固したのち電気炉で再溶解したケースとを比較したものである。このように、回転炉2に連結された電気炉6を用いることによって、従来になく高いエネルギー効率を達成し、同時に金属の回収効率を大きく向上させることができる。なお、スラグSの投入量や排出量を調整することによって、図5のBで示す位置よりも早い段階でスラグSを排出してもよい。
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。
例えば、上述の実施形態では、回転炉2内で分離した金属M1をタッピング用ノズル9で回収したが、当該タッピング用ノズル9がなく、被処理物Wの溶融物を全て電気炉6に投入してもよい。
また、電気炉6の形状や、投入部35、電極21、電極21A、電極21B、電極21C、スラグ排出口34及び金属排出口33の配置位置は、実施形態に示すものに限定されない。
また、上述の実施形態においては、特に好ましい例として、回転炉2より排出された溶融物が装置におけるいずれの内壁面にも接触せずに電気炉6へ投入される構成となっているが、接触するような構成であってもよい。
1…ロータリーキルン、2…回転炉、4…連絡シュート(接続部)、9…タッピング用ノズル(回転炉用排出口)、22A…コークス供給装置(還元剤供給手段)、21A,21B,21C…電極、22B…供給ライン(還元剤供給手段)、33…金属排出口(電気炉用排出口)、34…スラグ排出口(電気炉用排出口)、35…投入部、W…被処理物、S…スラグ(被処理物の溶融物)、M1,M2…金属(被処理物の溶融物)。

Claims (8)

  1. 金属を含有する被処理物を燃焼処理する回転炉と、
    接続部を介して前記回転炉と接続され、前記回転炉で燃焼処理された前記被処理物の溶融物から、電気による加熱処理によって金属を分離させる電気炉と、
    前記電気炉に還元剤を供給する還元剤供給手段と、を備えることを特徴とするロータリーキルン。
  2. 前記電気炉は、前記回転炉の出口の下方に配置され、前記接続部と非接触で落下する前記被処理物の前記溶融物が投入されることを特徴とする請求項1記載のロータリーキルン。
  3. 前記電気炉は、
    前記被処理物の前記溶融物が投入される投入部と、
    前記被処理物の前記溶融物を電気によって加熱処理する電極と、
    前記被処理物の前記溶融物を排出する電気炉用排出口と、を備え、
    前記投入部、前記電極、及び前記電気炉用排出口は、所定の方向に前記投入部、前記電極、前記電気炉用排出口の順で配置されていることを特徴とする請求項1または2記載のロータリーキルン。
  4. 前記電気炉は、前記回転炉の出口の下方に配置され、
    前記回転炉の回転軸線方向から見た場合に、前記回転炉の回転方向における下流側に配置されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載のロータリーキルン。
  5. 前記回転炉は、燃焼処理によって前記被処理物から分離した金属を、周面壁を介して排出する回転炉用排出口を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載のロータリーキルン。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項記載のロータリーキルンを使用した、金属を含有する被処理物から金属を回収する金属回収方法。
  7. Au,Ag,Cu,Pd,Pb,Snのうちいずれかを金属として回収する請求項6に記載の金属回収方法。
  8. 金属を含有する前記被処理物として廃電子基板、電線屑あるいは、銅・金・銀のいずれかを製錬した際のスラグを原料とする請求項6または7に記載の金属回収方法。
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