JP7322687B2 - 廃電池からの有価金属回収方法 - Google Patents
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Description
具体的な処理方法として例えば、廃電池を焙焼して無害化したのち、破砕あるいは粉砕処理を行い、その後、篩や磁選等の処理に付して分別し、その分別物から有価金属を回収する方法がある。
この方法で回収した有価金属は、公知の乾式処理や湿式処理に付して不純物をさらに分離し高純度に精製された有価金属を得ることができる。そして有価金属は例えば再度リチウムイオン電池の原料として供することができる。
また、特許文献2では、廃電池を熔融してスラグを分離して有価物を回収した後、脱リン工程で石灰系のフラックスを添加して熔融することでリンを除去する処理が提案されている。
炉にはプラズマ炉、アーク炉、および誘導炉などがある。しかしながらプラズマ炉やアーク炉は装置費用が高額であり、還元度を微妙に調整する操作が難しいという問題がある。
一方、誘導炉は還元度の調整は比較的行い易い特長があるが、誘導電流で加熱するためには電気を流し易い金属や黒鉛(カーボン)が介在することが必要となる。このため廃電池にわざわざ加熱させるための金属を入れるために余計なコストを要したり、黒鉛坩堝を用いて坩堝から加熱することが必要となる。しかもとくに後者の黒鉛坩堝を用いた場合、黒鉛自身は還元剤にもなり得るため、熔融する廃電池の還元が過剰に進行したり、黒鉛坩堝の酸化が進行して破損しやすくなり坩堝コストや交換の手間が増加し生産効率や安定性を損ねるなどの課題がある。
第2発明の廃電池からの有価金属回収方法は、第1発明において、添加する塊状の炭素質還元剤の量が、前記誘導炉から排出される還元物とスラグの物量の合計を100質量%として0.1質量%以上18質量%以下の範囲となるように制御することを特徴とする。
第3発明の廃電池からの有価金属回収方法は、第1または第2発明において、添加する塊状の炭素質還元剤が1cm3~1000cm3の大きさであることを特徴とする。
第4発明の廃電池からの有価金属回収方法は、第1,第2または第3発明において、添加する塊状の炭素質還元剤の組成が炭素品位65質量%以上であることを特徴とする。
第5発明の廃電池からの有価金属回収方法は、第1発明において、磁着物である鉄を除去する磁選工程を前記篩工程の前または後で行うことを特徴とする。
第6発明の廃電池からの有価金属回収方法は、第1,第2,第3,第4または第5発明において、回収される有価金属が少なくともコバルト、ニッケル、および銅から選ばれる1種以上であることを特徴とする。
第2発明によれば、塊状の炭素質還元剤の量は、誘導炉から排出される還元物とスラグの物量の合計を100質量%として0.1質量%以上、18質量%以下の範囲となるように制御することで、熔融された廃電池と炭素質還元剤の接触の頻度が増し、還元反応が効率よく進行する。
第3発明によれば、添加する塊状の炭素質還元剤は、個々の体積が1cm3~1000cm3であると、小さすぎたり大きすぎるサイズにならないので接触の機会が増し発熱が充分に行われて、炭素質還元剤からの表面積当たりの発熱量も多くなる。
第4発明によれば、塊状の炭素質還元剤の炭素品位が65質量%以上にしているので、還元効率が高くなり不純物の混入も少なくなる。
第5発明によれば、磁選を行った場合は、鉄分の除去ができているのでスラグの融点や粘性等の設計が簡単に行え、後工程の湿式工程での処理費用も低減できる。
第6発明によれば、コバルトやニッケル、銅を各種産業で再利用できるほか、再度リチウムイオン電池の原料に供することができる。
本発明の有価金属回収方法を適用できる廃電池には、リチウムイオン電池に限られず、非水溶系二次電池としてのLi・AL‐リチウム含有二酸化マンガン二次電池、リチウムポリマー電解質二次電池など、また水溶液系二次電池としてのニッケル‐カドミニウム電池やニッケル‐水素電池、ニッケル‐亜鉛電池、ニッケル‐鉄電池など、各種の電池が含まれる。
廃電池から有価金属を回収するにあたっては、乾式製錬プロセスに加え、湿式製錬プロセスを行う場合もあるが、本発明に係る有価金属の回収方法は、乾式製錬プロセスに係るものである。
なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において種々の変更が可能である。
本発明に係る有価金属回収方法は、図1に示すように、廃電池を焙焼して焙焼物を得る焙焼工程S1と、焙焼物を破砕して破砕物を得る破砕工程S2と、破砕物を篩って篩下物と篩上物に分ける篩工程S4と、篩下物を還元熔融して還元物とスラグとを得る還元熔融工程S6を必須の工程とし、前記還元熔融工程S6において誘導炉を用い、この誘導炉に塊状の炭素質還元剤を添加することを特徴とする
なお、本発明の有価金属回収方法において、磁着物である鉄を除去する磁選工程S3と篩下物を酸化焙焼する酸化焙焼工程S5を実施することがあるが、これら両工程は任意である。
本発明の技術原理によれば、誘導加熱によって炉内に入れられた塊状の炭素質還元剤が発熱すると炉内の廃電池の還元反応が進行しメタルが生成する。同時に生成したメタルが誘導炉の誘導加熱を受けて発熱し、炉内温度が上昇する。この発熱によって誘導加熱できないスラグをも熔融することもできる。
これら一連の作用によってメタルの生成と炉内温度の上昇を両立させて、廃電池を還元しながら熔融できる。このようにして有価金属を含有するメタルが効率的かつ安価に得られる。
図1は、本発明に係る有価金属回収方法の一例を示しており、同図に基づき各工程S1~S6を順に説明する。
焙焼工程S1は、廃電池を無害化することや次工程で破砕し易くすることを主な目的としている。焙焼条件はとくに限定されないが、確実に無害化するとともに脆くして破砕し易くするためには700℃以上に加熱することが好ましい。また、廃電池を積み重ねすぎると内部まで十分に焙焼できず焼きムラができてしまうので、均一に焙焼できるように処理量や炉の加熱能力に注意が必要である。焙焼時の加熱方式はとくに限定されず、電気式であってよく、バーナー式であってよい。バーナー式加熱は低コストである点で好ましい。
破砕工程S2では、焙焼工程S1で焙焼された焙焼物を細かく破砕して廃電池内の各部材を分離する。本発明において破砕機はとくに限定されない。たとえばロッドミルや振動ミルなど公知の破砕機を用いてよい。チェーンミルも廃電池を効率よく破砕できるため好ましい。様々な種類や形状の廃電池が存在するため、目的に合わせて適切な破砕機を選定すればよい。
磁選工程S3の実施は任意である。そして、磁選工程S3を実施する場合は、前記破砕工程S2の後に行ってもよく、また後述する篩工程S4の後に行ってもよい。
磁選の目的は磁着物である鉄を主とする金属を除去することにある。有価金属に鉄が含まれてしまうと乾式製錬の際にスラグの融点や粘性等の設計が複雑になり、また鉄を充分に除去できない場合は後工程の湿式工程で処理費用がかかってしまうためである。磁選を行った場合は、スラグの融点や粘性等の設計が簡単に行え、鉄を充分に除去した場合は、後工程の湿式工程での処理費用が低減できる。
磁選機はとくに限定されないが、公知の吊下げ磁選機を用いることができる。
篩工程S4は、破砕工程S2の後で行ってよく、また磁選工程S3の後で行ってもよい。篩工程S4では破砕物を篩機によって篩上物と篩下物に分ける。篩の目開きは破砕する廃電池の種類や形状に合わせて決めればよい。目開きが大きすぎると篩下に有価金属とともに非有価金属が多く回収されてしまうため好ましくない。また目開きが小さすぎると篩上に多く有価金属が含まれてしまい好ましくない。一般的には、篩の見開きは、0.5mm以上で、5mm以下であると有価金属を効率的に回収できて好ましい。
なお、ニッケルやコバルト等の有価金属は主に正極活物質に含まれるため、粉末状で回収されるので篩下物に含まれる。
酸化焙焼工程S5の実施は任意である。酸化焙焼工程S5を実施する場合は、篩工程S4で回収された篩下物(粉末)を酸化焙焼工程S5において酸化焙焼する。酸化焙焼することによって廃電池中の還元剤になり得る成分を酸化することができ、それにより廃電池の品質を均一化できる。酸化焙焼すると残留還元剤率を安定して低く抑えることができ、これによって次工程の還元熔融工程において還元度を制御し易くできる。
還元熔融工程S6では、廃電池の粉砕物である篩下物を、または酸化焙焼された篩下物を還元熔融する。この還元熔融によって有価金属を含有するメタルとスラグが生成させる。本発明の還元熔融工程S6では誘導炉が用いられるが、誘導炉を用いると効率的に廃電池を熔融でき、また目的に合わせた還元度を実現でき、よって効率的に有価金属を回収できる。
上記誘導炉IFにおける炉1内に塊状の炭素質還元剤と廃電池を投入することで、炭素質還元剤が誘導電流によって加熱され、加熱された炭素質還元剤によって廃電池の還元反応が促進される。
本発明のように塊状の炭素質還元剤を用いることで、熔融された廃電池と還元物の接触の頻度が増し、還元反応が効率よく進行する効果が得られる。
炭素質還元剤としては、石炭やカーボン、コークスなどを例示できる。
しかし個々の塊のサイズが、例えば1cm3未満となるなど、極度に小さなサイズでは誘導電流による発熱が充分に行われず、加熱の効果が不充分なまま消耗されるので効果が減じる。一方で、誘導電流は炭素質還元剤の表面で生じて発熱するものであり、過度に粗大な炭素質還元剤を用いても発熱を有効に活用することができない。
このため、添加する塊状の炭素質還元剤は、個々の体積が1cm3~1000cm3、好ましくは5cm3~500cm3であることが好ましい。この場合、発熱が充分に行われるし、還元剤からの表面積当たりの発熱量も多くなる。
本発明の回収方法で得たメタルは、後工程で例えば酸に溶解して中和や溶媒抽出や電解採取などの方法により不純物を分離する湿式処理を行うことで純度の高い有価金属を分離して回収することができる。
廃電池としてのリチウムイオン電池には、自動車車載用の一般に角形電池と称せられるものの使用済み品を用いた。この廃電池を900℃の温度で5時間、大気中で焙焼して焙焼物を得た。
次に破砕工程で、上記の焙焼物をチェーンミルを用いて12kg/バッチづつ35秒間の破砕処理を行った。
破砕処理で得た破砕物を回収し、下記の磁選工程で磁選を行った。
磁選機には市販の吊下げ磁選機を用た。各試料は4.5kg/分の供給速度で破砕物を3000Gの磁力を有する磁選機に供給し磁選して鉄などの磁着物と非磁着物とに分けた。
上記の非磁着物を連続式の振動篩を用いて篩別した。
篩の目開きは3.0mmとし、供給速度は2.5kg/分とした。
篩下物を次工程の酸化焙焼工程で酸化焙焼に付した。
酸化焙焼には炉内直径20cmで炉の有効長さ100cmのキルンを用いた。試料の供給速度は2.0kg/分とし炉内温度が750℃に維持しながら3時間大気を流しながら焙焼した。得た酸化焙焼物(篩下物)を次工程の還元熔融工程に付した。
酸化焙焼物(篩下物)の還元熔融には炉内容量が60リットルの誘導炉を用いた。誘導炉での1回の処理量は10.0kgとした。
表1において、実施例1~10では塊状炭素質還元剤を0.80kg投入した。比較例1では塊状炭素質還元剤は投入しなかった。
投入した塊状炭素質還元剤の大きさ(体積)は、表1に示すとおり実施例1から実施例8に向かって順に大きくした。塊状炭素質還元剤の炭素品位はいずれも90質量%である。
実施例9,10では塊状炭素質還元剤の大きさ(体積)は、いずれも110cm3であるが、塊状炭素質還元剤の炭素品位は実施例6が65質量%、実施例7を99質量%とした。
評価基準としては、各試料が熔融できたか否か、熔融時間が短いか長いか、および生成したメタルを回収できたか否か、を目安とした。結果を表1に示した。
実施例1~10では、試料が塊状炭素質還元剤で加熱され還元されて熔融し、メタルが生成して回収することができた。これに対し、塊状炭素質還元剤を投入していない比較例1では、廃電池が熔融しなかった。
また、実施例9,10で対比するように塊状炭素質還元剤の大きさ(体積)が同じ場合では、塊状炭素質還元剤の炭素品位(質量%)が高いほど短時間で廃電池が熔融した。
実施例11~15は、いずれも熔融された廃電池と還元物の接触の頻度が増し、還元反応が効率よく進行した。このことは比較例1と比べて熔融時間が短いことからも分かる。
しかしながら、表3に示す実施例11~15の不純物であるメタル中の鉄、マンガンの含有量の発生傾向をみると、塊状炭素質還元剤の使用量が、0.1質量%未満である実施例11では還元反応が効力良く進まないと推測される。また、塊状炭素質還元剤の使用量が18質量%を越える実施例15では還元が進み過ぎて鉄やマンガンなどの不要な金属が多く生成すると推測される。
実施例16~18は、いずれも還元効率が高くなり、比較的、不純物の混入も少なかった。しかしながら、実施例16~18の熔融時間の傾向をみると、実施例16で示す炭素品位が65質量%を下回ると、溶解時間が長くなる傾向が推測される。
2 コイル
3 継鉄(ヨーク)
4 プラグ
IF 誘導炉
Claims (6)
- 廃電池から有価金属を回収する方法であって、
廃電池を700℃以上に加熱して焙焼物を得る焙焼工程と、
前記焙焼工程で得られた焙焼物を破砕して破砕物を得る破砕工程と、
前記破砕工程で得られた破砕物を篩って篩下物と篩上物に分ける篩工程と、
前記篩工程で得られた篩下物を酸化焙焼する酸化焙焼工程と、
前記酸化焙焼工程で得られた酸化焙焼物を還元熔融して還元物とスラグとを得る還元熔融工程とを、その順で処理し、
前記還元熔融工程で用いる炉が誘導炉であり、
該誘導炉に塊状の炭素質還元剤を添加して還元熔融する
ことを特徴とする廃電池からの有価金属回収方法。 - 添加する塊状の炭素質還元剤の量が、前記誘導炉から排出される還元物とスラグの物量の合計を100質量%として0.1質量%以上18質量%以下の範囲となるように制御する
ことを特徴とする請求項1記載の廃電池からの有価金属回収方法。 - 添加する塊状の炭素質還元剤が1cm3~1000cm3の大きさである
ことを特徴とする請求項1または2記載の廃電池からの有価金属回収方法。 - 添加する塊状の炭素質還元剤の組成が炭素品位65質量%以上である
ことを特徴とする請求項1,2または3記載の廃電池からの有価金属回収方法。 - 磁着物である鉄を除去する磁選工程を前記篩工程の前または後で行う
ことを特徴とする請求項1記載の廃電池からの有価金属回収方法。 - 回収される有価金属が少なくともコバルト、ニッケル、および銅から選ばれる1種以上である
ことを特徴とする請求項1,2,3,4または5記載の廃電池からの有価金属回収方法。
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