JP2012017607A - アスベスト含有材の除去方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】アスベスト含有材2に基材1に到達するメッシュ状の切れ目K1を設け、その後、手持ち可能な注射器10を用いて、アスベスト含有材2の基材1との付着面T付近に酸性液3を注入し、これにより、アスベスト含有材2を酸性液3に反応させて溶解させ、剥離させつつ自然に落下させ、その落下したアスベスト含有材2を除去するようにした。
【選択図】図1
Description
特許文献2には、アスベスト含有物を剥離するカットブラシ(剥離手段)と、剥離手段を包囲する内側フードと、さらに内側フードを取り囲む外側フードと、剥離したアスベスト含有物を内側フード内から処理タンクへ吸引する吸引手段とを備えたアスベスト除去装置について開示されている。
すなわち、特許文献1、2に示すようなアスベスト除去装置を用いたアスベスト除去方法では、装置が設置できないような作業空間が狭小な場所であったり、また例えばH型鋼材等のように複雑な形状の基材に対してアスベスト含有材を被覆したものに対しては、アスベスト除去装置を使用することが困難となっていた。そのため、このような除去装置の適用が困難な条件にあっては、人力による除去方法に頼らざるを得ない現状があり、手間と作業時間がかかるという問題があった。
本発明では、切れ目によって区画されたブロック状のアスベスト含有材の略中心部の付着面に酸性液を注入することで、その酸性液が略中心部を中心にしてその周囲に均一に広がるので、ブロック状のアスベスト含有材をより確実に剥離、落下させることができる。
本発明では、注入冶具の注入先端を容易に基材に達する位置まで挿入して、その注入先端から酸性液を噴射することで、基材とアスベスト含有材との付着面に酸性液を確実に浸透させることができる。
図1に示すように、本第1の実施の形態によるアスベスト含有材の除去方法は、建物などの鉄筋コンクリート造のスラブやこのスラブを下方より支持するH型鋼材からなる基材1の表面1aに被覆されたアスベスト含有材2を除去する施工に適用されるものである。基材1は、例えば吹付け厚25〜60mm程度のアスベスト含有材2を吹き付けて施工されたものである。なお、アスベスト含有材2として、吹付けアスベスト材やアスベスト含有吹付けロックウール等が挙げられる。
また、図2においてメッシュ間隔Dは等間隔としているが、これに限定されることはなく、例えばボルトや鋼材等が設けられた箇所におけるアスベスト含有材2の表面が複雑な形状となる部分にあっては、メッシュ間隔Dを通常より小さくすることも可能である。
図4に示すように、注射針102は、少なくともアスベスト含有材2の基材1に対する被覆厚さ寸法よりも大きな長さ寸法を有しており、先端部102aには横穴をなす注出口103が設けられている。つまり、注射針102の針穴が横向きに開いているので、アスベスト含有材2に注射針102を挿入する際、アスベスト含有材2が注出口103に入り込んで目詰まりを起こし、酸性液3の注入が妨げられるといった不具合が抑えられるようになっている。
先ず、図1に示すように、除去するアスベスト含有材2の表面2aには、例えばアステクターS(登録商標)などの飛散抑制剤(図示省略)を散布しておく。その後、図2に示すように適宜なメッシュ間隔Dで切れ目K1を設ける。なお、この切れ目K1を設けただけの状態では、個々の区画領域2Aのブロックは基材1に対して付着しており、そのブロックが自然落下する状態にはなっていない。
また、切れ目K1を入れることで、基材1に被覆されるアスベスト含有材2の平面方向の連続性がなくなり、一定の大きさ(領域)に区画されたブロック状となり、隣接するブロック同士の保持力もなくなる。そのため、各ブロック状のアスベスト含有材2Aにおける付着面Tに酸性液3を浸透させることで、確実な落下が可能となる。
また、落下したアスベスト含有材2は、適宜な回収手段により取り除くことができる。ここで、本実施の形態では、予めアスベスト含有材2の表面2aに飛散抑制剤を散布しておくため、アスベスト含有材2が剥離落下する際に生じるアスベストの飛散を抑制することができる。
図5に示すように、第2の実施の形態によるアスベスト含有材の除去方法は、アスベスト含有材2に基材1に到達する切れ目K1を設け、加圧噴射ガン11(注入冶具)を用いて、アスベスト含有材2にその表面2aから圧力をかけて酸性液3を浸透させる方法である。すなわち、第2の実施の形態では、基材1とアスベスト含有材2との間の付着面Tに直接、酸性液3を注入する方法である第1の実施の形態とは異なっている。
なお、本第2の実施の形態による基材1は、H形鋼の鋼材であり、その表面1aにアスベスト含有材2が吹き付け等によって被覆されている。
また、切れ目K1については、上述した第1の実施の形態と同様に、電動ノコギリ等により所定のメッシュ間隔をもって施工されることから、ここでは詳しい説明は省略する。
酸性液供給部12は、酸性液3を貯留する薬品槽13と、薬品槽13と加圧噴射ガン11との間を連結する液送管14と、液送管14の途中に介在された圧送ポンプ15と、圧送ポンプ15の下流側に設けられ設定圧力で酸性液3を送出するためのリザーバー16とからなる。
圧送ポンプ15は所定の圧力以上に昇圧することを防止する適宜な機構が設けられ、また液送管14は所定圧力に耐え得る材料が用いられている。
なお、施工時において、加圧噴射ガン11による噴射を行う前に、予めアスベスト含有材2の表面2aを湿潤剤で湿らせておくことで、加圧による噴射時の飛散を防止することが可能である。
そして、第2の実施の形態では、上述した第1の実施の形態のようにアスベスト含有材2に注射器10(図1参照)の注射針102を挿入する作業手間が無いうえ、挿入時の注入針102の破損なども無いので、作業効率の向上を図ることができる。
なお、下記の第1変形例〜第10変形例は、上述した第1の実施の形態の変形例であって、切れ目K1を利用して注入冶具より酸性液3を付着面Tに注入する場合と、切れ目K1を利用せずにアスベスト含有材2の表面2a(例えば、上述した第1の実施の形態の切れ目K1よって区画されたブロック状のアスベスト含有材2Aの略中心部P0を含む)から注入冶具を挿入して注入する場合とのいずれか一方を例示しているが、いずれの場合も可能である。
第1変形例は、上述した第1の実施の形態の注射器10(図1参照)に代えて図6に示すコーキングガン式の注入ガン17(注入冶具)を用いてアスベスト含有材2を除去するものである。
すなわち、注入ガン17は、酸性液3が充填される筒状の薬液充填部171と、薬液充填部171の先端に連通する流路(図示省略)を有する注入ドリル172と、薬液充填部171を回転可能に支持するとともに薬液充填部171内の酸性液3を注入ドリル172の先端開口172aから噴射させるための注入操作グリップ173と、薬液充填部171の後端171a側に設けられ、注入ドリル172を備えた薬液充填部171を手動操作により回転させるための回転レバー174とを備えている。なお、回転レバー174は、薬液充填部171の後端171a側に対して着脱可能に設けられ、その後端171a側に係合させたときに回転レバー174の回転とともに薬液充填部171および注入ドリル172が回転する構成であってもよい。
図7および図8に示す第2変形例は、上述した第1の実施の形態の注射器10(図1参照)に代えてスクレーパ形状の噴射スクレーパ18(注入冶具)を用いてアスベスト含有材2を除去するものである。
すなわち、噴射スクレーパ18は、把持部181aとブレード181bとを有するスクレーパ本体181の内部に酸性液3用の流路182が設けられ、その流路182が液送管14を介して薬品槽13に接続されている。噴射スクレーパ18と薬品槽13との間には圧送ポンプ15が設けられている。スクレーパ本体181の把持部181aには弁開閉釦183が設けられている。流路182は、ブレード181bで把持部181aから複数の流路に分岐され、それぞれがブレード先端の開口181cに繋がっている。
図9乃至図11に示す第3変形例は、上述した第1の実施の形態の注射器10(図4参照)の注射針102の構成を代えたものである。
図9に示す注射器10の注射針104は、その先端周面に複数の横穴からなる注出口105、105、…を備えた構成となっている。これにより、より広い範囲に酸性液3を注入することができ、また仮に何れかの注出口105が目詰まりしても他の注出口105より注入できる利点がある。
第4変形例は、上述した第1の実施の形態の注射器10(図1参照)に代えて図12及び図13に示す櫛形注入具19、20(注入冶具)を用いてアスベスト含有材2を除去するものであって、上述した第2変形例において噴射スクレーパ18(図7参照)を櫛形注入具19に代えたものである。図12に示す薬品槽13、液送管14、圧送ポンプ15は第2変形例と同様の構成であるので、ここでは詳細な説明は省略する。
この櫛形注入具19では、上述した第2変形例と同様に図2に示す切れ目K1に櫛状部192を基材1の表面1aに達するまで挿入した後、複数の針191の噴射開口191aから酸性液3を付着面Tへ向けて注入することができる。このとき、針191の長さが異なり、噴射開口191aの位置が異なるので、広い範囲への注入が可能となる。
図14に示す第5変形例は、上述した第1の実施の形態の注射器10(図1参照)に代えて二重釘形注入具21(注入冶具)を用いてアスベスト含有材2を除去するものである。なお、図14は注入時の作業手順を示した図であり、分かり易くするために手順毎の作業状態をすべて示した図となっている。
図14に示す二重釘形注入具21は、軸芯部211と、この軸芯部211が挿通可能で有底円筒形状の外管212とからなる。外管212の底部212aの中心であって外管212の先端には、注入開口213が設けられている。軸芯部211および外管212は、それぞれ金属或いは硬質樹脂などの部材からなる。軸芯部211の先端には、前記外管212の注入開口213に係合する突出部211aが設けられ、この二重釘形注入具21をアスベスト含有材2に打ち込んで挿入する際に、注入開口213に突出部211aを係合させておくことで、注入開口213が潰れたり目詰まりの無いように保持することができる。
なお、外管212の先端に注入開口213を中心として放射状に延びる切欠き(図示省略)を設けることで、注入開口213から噴射する酸性液3が放射方向に拡散させることも可能である。
図15および図16に示す第6変形例は、上述した第1の実施の形態の注射器10(図1参照)に代えて膨張式注入具22(注入冶具)を用いてアスベスト含有材2を除去するものである。
すなわち、膨張式注入具22は、酸性液3用の流路220を配した平板状のプレート221と、プレート221の一方面221aに所定間隔をもって設けられるとともに流路220に連通した複数の注入針222と、プレート221の他方面221bに全面にわたって設けられた膨縮部材223とを備えて概略構成されている。注入針222の先端には、注出口(図示省略)が設けられている。そして、この膨張式注入具22は、とくに図示しないが、上述した第4変形例と同様の図12に示す薬品槽13、液送管14、圧送ポンプ15が設けられ、その液送管14と前記流路220とが接続されている。
図15(a)に示すように、アスベスト含有材2が被覆される基材1はH形鋼であり、これに一定の間隔を開けて既存壁4が設けられている。この場合、基材1のH形鋼のウェブ1bとプレート221とが互いの面を平行にするとともに、注入針222を前記ウェブ1bのアスベスト含有材2に向けた状態で膨張式注入具22を配置する。このとき、縮減状態の膨張部材223と既存壁4とが所定の間隔をもって対向した状態となっている。
第7変形例は、上述した第1の実施の形態の注射器10(図1参照)に代えて図17に示す中空ドリル式注入具23(注入冶具)を用いてアスベスト含有材2を除去するものである。
すなわち、中空ドリル式注入具23は、中空ドリル231と、中空ドリル231の先端に取り付けた中空ドリルビット232と、中空ドリルビット232の先端に設けられたボールプランジャー233と、中空ドリル231、中空ドリルビット232およびボールプランジャー233のそれぞれの中空部に連通して設けられる酸性液3用の注入パイプ234とを備えている。通常の状態、つまりボールプランジャー233の先端233aが押圧されていない状態では、注入パイプ234内の酸性液3が流出するのが防止されている。
本中空ドリル注入具23では、中空ドリル231、中空ドリルビット232を回転させることで基板1に達するまでアスベスト含有材2を削孔する。そして、ボールプランジャー233が基板1に達して先端233aが押圧されると、この先端233aから酸性液3が付着面T(図1参照)に向けて注入されることになる。
第8変形例は、上述した第1の実施の形態の注射器10(図1参照)に代えて図18に示すカプセル式注入具24(注入冶具)を用いてアスベスト含有材2を除去するものである。
すなわち、カプセル式注入具24は、酸性液3を加圧状態で収容した円筒状の容器本体241の先端にニードル状の開栓器を有する針状の酸性液カプセルである。つまり、容器本体241の先端には凹部241aが形成されており、この凹部241aの底部、すなわち容器本体241の先端側の隔壁241bを有している。凹部241aには、キャップ242に一体的に設けられたニードル243が嵌合された状態となっている。このキャップ242は、凹部241aに係合した状態で容器本体241の中心軸線に沿ってキャップ先端242aから隔壁241bまでを連通する流路244が設けられている。そして、ニードル243の刃先部243aが隔壁241bに向けて配置されている。
これにより、容器本体241の内部に圧入されていた酸性液3が流路244を通ってキャップ先端242aから噴出し、その酸性液3がアスベスト含有材2と基材1との間の付着面Tに浸透して周囲に広がることになる。
図21に示す第9変形例は、上述した第1の実施の形態の注射器10(図1参照)に代えてTバー状注入具25(注入冶具)を用いてアスベスト含有材2を除去するものであって、上述した第2変形例において噴射スクレーパ18(図7参照)をTバー状注入具25に代えたものである。図21に示す薬品槽13、液送管14、圧送ポンプ15は第2変形例と同様の構成であるので、ここでは詳細な説明は省略する。
すなわち、Tバー状注入具25は、ドリル本体251と、ドリル本体251に回転可能に取り付けられるTバー252とを備えている。Tバー252は、回転軸253と、回転軸253の先端でその回転軸方向に直交する方向に延びると共に酸性液3を噴射させる複数の開口254aを有する先端バー254とからなる。
図23に示す第10変形例は、先端に注入冶具261を備えたロボットアーム26によってアスベスト含有材2を除去するものである。
このロボットアーム26の注入冶具261には、6軸のフォース/トルクセンサー262が設けられており、コンプライアンス制御を行うことができる構造となっている。
なお、このロボットアーム26には、図24に示すように、注入治具261を除く部分のすべてを覆う防護シート27を設けるようにしてもよい。
例えば、本実施の形態ではアスベスト含有材2に設ける切れ目K1をメッシュ状としているが、これに限定されることはなく、平行、或いは格子状をなす切れ目であってもかまわない。
また、酸性液3の、種類、注入量、注入位置、注入間隔等は、上述したようにアスベスト含有材の材質、その吹付け材の厚さ寸法、基材の材質等の条件に応じて適宜設定することができる。
1a 表面1a
2 アスベスト含有材
2a 表面
3 酸性液
10 注射器(注入冶具)
11 加圧噴射ガン
13 薬品槽
14 液送管
15 圧送ポンプ
17 注入ガン(注入冶具)
18 噴射スクレーパ(注入冶具)
19、20 櫛形注入具(注入冶具)
21 二重釘形注入具(注入冶具)
22 膨張式注入具(注入冶具)
23 中空ドリル式注入具(注入冶具)
24 カプセル式注入具(注入冶具)
25 Tバー状注入具(注入冶具)
26 ロボットアーム
27 防護シート
K1 切れ目
T 付着面
Claims (4)
- 基材の表面に被覆されているアスベスト含有材の除去方法であって、
前記アスベスト含有材に前記基材に到達する切れ目を設ける工程と、
注入冶具を用いて、前記アスベスト含有材の前記基材との付着面付近に酸性液を注入する工程と、
を有することを特徴とするアスベスト含有材の除去方法。 - 前記切れ目によって区画された領域の平面視略中心部に前記酸性液を注入することを特徴とする請求項1に記載のアスベスト含有材の除去方法。
- 前記切れ目に前記注入冶具の注入先端を挿入し、該注入先端から前記酸性液を噴射させることを特徴とする請求項1に記載のアスベスト含有材の除去方法。
- 基材の表面に被覆されているアスベスト含有材の除去方法であって、
前記アスベスト含有材に前記基材に到達する切れ目を設ける工程と、
注入冶具を用いて、前記アスベスト含有材にその表面から圧力をかけて酸性液を浸透させる工程と、
を有することを特徴とするアスベスト含有材の除去方法。
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