JP2012013965A - 選択波長反射フィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】特定の波長の光線を選択的に反射することのできる選択波長反射フィルムを提供すること。
【解決手段】透明基材、選択反射層及び表面保護層を少なくとも有し、選択反射層がコレステリック構造を持つ棒状化合物からなり、かつ表面保護層が硬化性樹脂組成物の架橋硬化したものである選択波長反射フィルムである。
【選択図】図1

Description

本発明は、特定の波長の光線を選択的に反射し得る選択波長反射フィルム、該反射フィルムを用いた選択波長反射ガラス、及び選択波長反射プラスチック板に関する。
窓ガラスから室内に入り込む太陽光は、可視光線の他に、紫外線や赤外線なども含まれている。紫外線は日焼けの原因や人体に対する悪影響が懸念され、また包装材を劣化させ、内容物の変質を生じさせる。一方、赤外線は建物の室内や車内の温度上昇を引き起こし、夏場の冷房効果を低下させる。
このような、多くの波長を有する太陽光から、特定の波長の光、例えば赤外線を選択的に反射させ、可視光の透過性を維持することができれば、室内等の明るさを維持したまま、室内の温度上昇を抑制することが可能である。
このような課題を達成するために、種々の提案がなされている。例えば、可視光の透過率を低下させることなく、近赤外線を高効率で反射させることを目的として、広帯域で近赤外線を反射する薄膜コーティングを施した透明基板と、近赤外線部に鋭い波長選択反射性を有するコレステリック液晶製のフィルタとからなる積層体が提案されている(特許文献1参照)。また、透明基材フィルム上に、電離放射線硬化型樹脂、赤外線吸収剤又は赤外線遮蔽剤、及び電離放射線硬化型シリコーン樹脂を含む塗膜の硬化物からなる赤外線遮蔽フィルムが提案されている(特許文献2及び特許文献3参照)。また、無機粒子を含有する樹脂層よりなる屈折率が1.75以上の高屈折率層を有する熱線遮蔽膜及び該熱線遮蔽膜を基板に積層した積層体が提案されている(特許文献3参照)。
しかしながら、特許文献1に記載の積層体は、合わせガラスの一態様であって、その使用方法には大きな制約がある。また、特許文献2及び3に記載の赤外線遮蔽フィルムは、いずれも有機系又は無機系の赤外線吸収剤を必須とするものであり、反射させる波長の選択性の制御が不十分であり、可視光の高い透過率を維持しつつ、赤外線の高い遮蔽率を得るには限界があった。また、特許文献4に開示される熱線遮蔽膜は高い選択反射率を得るために、高屈折率層と低屈折率層を交互に複数積層する必要があり、製造工程が煩雑であるという問題があった。
また、赤外線遮蔽フィルム等は、例えば、窓ガラス等に貼着して使用されることが想定されることから、その表面物性も重要であり、表面に対して耐擦傷性等が求められる。
特開平4−281403号公報 特許第4359356号公報 特許第4190657号公報 特開2009−86659号公報
本発明は、このような課題に対して、特定の波長の光線を選択的に反射することができ、耐擦傷性の高い選択波長反射フィルム、該選択波長反射フィルムを用いた選択波長反射ガラス及び選択波長反射プラスチック板を提供することを目的とするものである。
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、コレステリック構造を形成可能な棒状化合物の波長選択性を利用した選択反射層を設け、これに特定の表面保護層を積層することで、上記課題を解決し得ることを見出した。本発明はかかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、透明基材、選択反射層及び表面保護層を少なくとも有し、選択反射層がコレステリック構造を持つ棒状化合物からなり、かつ表面保護層が硬化性樹脂組成物の架橋硬化したものである選択波長反射フィルム、該選択波長反射フィルムを用いた選択波長反射ガラス、及び選択波長反射フィルムを用いた選択波長反射プラスチック板を提供するものである。
本発明によれば、特定の波長の光線を選択的に反射することができ、かつ表面の耐擦傷性の優れた選択波長反射フィルムを得ることができる。特に、赤外線に相当する波長である780〜2500nmの光線を選択的に反射させる場合には、可視光の透過性を維持しつつ、赤外線に対して優れた反射性を有する選択波長反射フィルム(赤外線反射フィルム)を得ることができる。
本発明の選択反射フィルムの一態様を示す概念図である。 本発明の選択反射フィルムの他の一態様を示す概念図である。 本発明の選択反射フィルムの他の一態様を示す概念図である。 比較例1により製造される選択反射フィルムを示す概念図である。
本発明の選択波長反射フィルムは、透明基材、選択反射層及び表面保護層を少なくとも有する。以下、各構成要件について、図1を用いて説明する。図1は、本発明の選択波長反射フィルム10を示すものであり、図1に示す例では、透明基材11上に選択反射層12及び表面保護層13をこの順に有する。
[透明基材]
本発明の選択波長反射フィルムは、可視光を透過し、特定の波長の光線を反射することが目的であり、基材は透明であることが必要である。ここで本発明における透明とは、全光線透過率が80%以上のものをいう。
本発明の選択波長反射フィルムに用いられる基材としては、プラスチックフィルム、プラスチックシートが好ましく、ポリオレフィン樹脂、ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース系樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリイミド樹脂などからなるものが好ましく挙げられる。
これらのうち、透明性や可撓性などの点から、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムなどのポリエステル樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)などのセルロース系樹脂などがさらに好ましく、汎用性、入手が容易な点でPETが特に好ましい。
これらの基材は、その上に設けられる層との密着性を向上させるために、所望により、片面または両面にコロナ放電処理、クロム酸化処理、熱風処理、オゾン・紫外線処理法などの酸化法や、サンドブラスト法、溶剤処理法などの凹凸化法、プラズマ処理といった、物理的または化学的表面処理を施すことができる。
該基材は、基材と表面保護層との層間密着性や、各種の被着材との接着性の強化などのためのプライマー層や、裏面プライマー層を形成するなどの処理を施してもよい。プライマー層の形成に用いられる材料としては特に限定されず、アクリル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル、ポリウレタン、塩素化ポリプロピレン、塩素化ポリエチレンなどが挙げられる。なお、裏面プライマー層に用いられる材料は被着材によって、適宜選択される。
また、透明性を阻害しない範囲内であれば、色彩を整えるための塗装や、デザイン的な観点での模様があらかじめ形成されていてもよい。
透明基材の厚さについては特に制限はないが、耐久性を確保し、かつ汎用性を考慮すると、通常20〜200μm程度、好ましくは30〜150μmの範囲である。
[選択反射層]
本発明の選択波長反射フィルムは、透明基材11上に選択反射層12を有し、該選択反射層がコレステリック構造を持つ棒状化合物からなることが特徴である。
選択反射層は、層の一方の面から入射する光(電磁波)のうち右円偏光成分または左円偏光成分を選択反射し、残りの成分を透過する機能を有する。このように特定の円偏光成分のみを反射できる材料として、コレステリック液晶材料が知られている。コレステリック液晶材料は、液晶のプレーナー配列のヘリカル軸に沿って入射した光(電磁波)の右旋および左旋の2つの円偏光のうち一方の偏光を選択的に反射する性質を有する。この性質は、円偏光二色性として知られ、コレステリック液晶分子の螺旋構造における旋回方向を適宜選択すると、その旋回方向と同一の旋光方向を有する円偏光が選択的に反射される。
すなわち、本発明の選択反射層は、透明基材の表面に対して法線の方向(下記の光の入射角θ=0°)に、多層構造となる一定周期のらせん構造(コレステリック構造)を有し、らせんピッチに対応した波長の円偏光を反射するという波長選択反射性を有する。選択反射波長λ(ピーク波長λ nm)は、一般に次式で与えられる。
λ=p・n・cosθ
p:コレステリック液晶のらせんピッチ(nm)
n:液晶のらせん軸に直交する面内の平均屈折率
θ:光の入射角(面の法線からの角度)
コレステリック構造を有する液晶は、このような選択反射性能を有し、取り扱いが容易であり、加工性に優れている。
本発明の選択波長反射フィルムにおける選択反射ピーク波長は、コレステリック構造のピッチ長で決定され、ネマチック液晶分子(液晶性モノマー)とカイラル剤を用いてコレステリック液晶を得る場合には、カイラル剤の添加量を調整することによりピッチ長を制御できる。必要とするピッチ長を得るためのカイラル剤の添加量は、使用する液晶材料の種類やカイラル剤の種類により異なり、用いる材料に応じて適宜決定される。また、液晶に高分子コレステリック液晶を用いる場合は、目的とするピッチ長を有するポリマー材料を選べばよい。
本発明の選択波長反射フィルムにおいては、任意にその波長を選択でき、例えば選択波長として赤外線領域(780〜2500nm)を選択すれば、いわゆる赤外線反射フィルムを好適に得ることができる。
なお、ネマチック液晶分子(液晶性モノマー)の合成については、例えば、特表2001−521538に記載される方法を用いることができる。
また、本発明においては、流動性が発現しないように液晶を固定化させる必要がある。そのため、選択反射層に用いられるコレステリック構造を持つ棒状化合物としては、重合性のネマチック液晶に重合性のカイラル剤を混合した重合性のカイラルネマチック液晶(重合性モノマー又は重合性オリゴマー)、又は高分子コレステリック液晶を好ましく挙げることができる。
特に、前記の重合性液晶の中でも、架橋可能な重合性モノマー又は重合性オリゴマーを用いることが好ましく、重合性官能基としてアクリレート構造を有していることがさらに好ましい。より具体的には、重合性ネマチック液晶と重合性カイラル剤に公知の光重合開始剤等を添加し、紫外線を照射してラジカル重合させ、ネマチック液晶分子とカイラル剤との重合体を得るものである。または、電子線を照射してラジカル重合させ、ネマチック液晶分子とカイラル剤との重合体を得てもよい。この場合には、光重合開始剤を必要としない。
なお、一般に、「液晶」は、狭義には流動性を有する状態のものを指すが、本発明においては、流動性を有する液晶を架橋等の手段により、液晶の持つ光学特性、屈折率、異方性等の所望の性能を維持する状態で固化させ、非流動状態としたものも「液晶」とするものである。
次に、選択反射層の材料について詳細に説明する。選択反射層は、円偏光二色性を発揮する層であれば特に限定されるものではないが、具体的には、コレステリック構造を有する棒状化合物を含有するものを好適に挙げることができる。
上記棒状化合物としては、通常、屈折率異方性を有するものであり、分子内に重合性官能基を有するものが好適に用いられ、さらに3次元架橋可能な重合性官能基を有するものがより好適に用いられる。上記棒状化合物が重合性官能基を有することにより、上記棒状化合物を重合して固定することが可能になるため、経時変化が生じにくいものとすることができるからである。また、上記重合性官能基を有する棒状化合物と、上記重合性官能基を有さない棒状化合物とを混合して用いても良い。なお、上記「3次元架橋」とは、棒状化合物を互いに3次元に重合して、網目(ネットワーク)構造の状態にすることを意味する。
上記重合性官能基としては、例えば、紫外線、電子線等の電離放射線、或いは熱の作用によって重合する重合性官能基を挙げることができる。これら重合性官能基の代表例としては、ラジカル重合性官能基、或いはカチオン重合性官能基等が挙げられる。さらにラジカル重合性官能基の代表例としては、少なくとも一つの付加重合可能なエチレン性不飽和二重結合を持つ官能基が挙げられ、具体例としては、置換基を有するもしくは有さないビニル基、アクリレート基(アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基を包含する総称)等が挙げられる。また、上記カチオン重合性官能基の具体例としては、エポキシ基等が挙げられる。その他、重合性官能基としては、例えば、イソシアネート基、不飽和3重結合等が挙げられる。これらの中でもプロセス上の点から、エチレン性不飽和二重結合を持つ官能基が好適に用いられる。
また、棒状化合物は、液晶性を示す液晶性材料であることが好ましい。液晶性材料は屈折率異方性が大きいからである。棒状化合物の具体例としては、下記化学式(1)〜(6)で表される化合物を例示することができる。
Figure 2012013965
ここで、化学式(1)、(2)、(5)および(6)で示される液晶性材料は、D.J.Broerら、Makromol.Chem.190,3201−3215(1989)、またはD.J.Broerら、Makromol.Chem.190,2255−2268(1989)に開示された方法に従い、あるいはそれに類似して調製することができる。また、化学式(3)および(4)で示される液晶性材料の調製は、DE195,04,224に開示されている。
また、末端にアクリレート基を有するネマチック液晶性材料の具体例としては、下記化学式(7)〜(17)に示すものも挙げられる。
Figure 2012013965
さらに、棒状化合物として、SID 06 DIGEST 1673−1676)に開示された下記化学式(18)に表わされる化合物を例示することができる。
Figure 2012013965
なお、上記棒状化合物は、1種類のみを用いてもよく、または、2種以上を混合して用いてもよい。例えば、上記棒状化合物として、両末端に重合性官能基を1つ以上有する液晶性材料と、片末端に重合性官能基を1つ以上有する液晶性材料とを混合して用いると、両者の配合比の調整により重合密度(架橋密度)及び光学特性を任意に調整できる点から好ましい。
本発明においては、上記のいずれの棒状化合物も好適に用いることができるが、なかでもネマチック液晶性を示す棒状化合物を用い、その棒状化合物とカイラル剤とを併用した材料が用いられることが好ましい。このような材料では、カイラルネマチック液晶を固定化されることが可能になるからである。
上記カイラル剤としては、上記棒状化合物を所定のコレステリック配列させることができるものであれば特に限定されるものではない。カイラル剤としては、例えば、下記の一般式(19)、(20)又は(21)で表されるような、分子内に軸不斉を有する低分子化合物を用いることが好ましい。
Figure 2012013965
Figure 2012013965
Figure 2012013965
上記一般式(19)又は(20)において、R1は水素又はメチル基を示す。Yは上記に示す式(i)〜(xxiv)の任意の一つであるが、中でも、式(i)、(ii)、(iii)、(v)及び(vii)のいずれか一つであることが好ましい。また、アルキレン基の鎖長を示すc及びdは、それぞれ個別に2〜12の範囲で任意の整数をとり得るが、4〜10の範囲であることが好ましく、6〜9の範囲であることがさらに好ましい。
また、カイラル剤として、以下のような化学式で表わされるものも用いることができる。
Figure 2012013965
また、選択反射層を印刷又は塗工等により形成する際、重合性モノマー又は重合性オリゴマー等の液晶及びカイラル剤は溶媒に溶解して得られるコーティング液とすると、塗工性の面から好ましい。
この溶媒としては、材料に対し十分な溶解性を持つ限り特に限定されず公知のものを用いれば良く、例えば、アノン(シクロヘキサノン)、シクロペンタノン、トルエン、アセトン、MEK(メチルエチルケトン)、MIBK(メチルイソブチルケトン)、DMF(N,N−ジメチルホルムアミド)、DMA(N,N−ジメチルアセトアミド)、酢酸メチル、酢酸エチル、n−酢酸ブチル、酢酸3−メトキシブチル等の一般的な溶媒や、それらの混合溶媒が挙げられる。
選択反射層の形成方法としては、特に限定されず公知の方法を用いることができ、液晶、及びカイラル剤等を含むコーティング液を、基材上に、例えば、フレキソ印刷法、グラビア印刷法、孔版印刷法、インクジェット印刷法等の印刷方法により印刷することで形成することができる。
選択反射層12の厚みは、通常1〜20μm程度であり、好ましくは3〜15μmである。
[表面保護層]
本発明の選択反射フィルムにおける表面保護層13は、硬化性樹脂の架橋硬化したもので構成される。硬化性樹脂としては、電離放射線硬化性樹脂や2液硬化型樹脂などの熱硬化性樹脂が用いられ、これらを複数用いる、例えば、電離放射線硬化性樹脂と熱硬化性樹脂を併用する、いわゆるハイブリッドタイプであってもよい。
これらのうち、表面保護層を形成する樹脂の架橋密度を高め、表面の耐摩耗性や耐擦傷性を向上させ得るとの観点から、電離放射線硬化性樹脂が好ましく、また、無溶媒で塗工することができ、取り扱いが容易との観点から、電子線硬化性樹脂がさらに好ましい。
(電離放射線硬化性樹脂)
電離放射線硬化性樹脂とは、電磁波または荷電粒子線の中で分子を架橋、重合させ得るエネルギー量子を有するもの、すなわち、紫外線または電子線などを照射することにより、架橋、硬化する樹脂を指す。具体的には、従来電離放射線硬化性樹脂として慣用されている重合性モノマー及び重合性オリゴマーないしはプレポリマーの中から適宜選択して用いることができる。
代表的には、重合性モノマーとして、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレート系モノマーが好適であり、中でも多官能性(メタ)アクリレートが好ましい。なお、ここで「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート又はメタクリレート」を意味し、他の類似するものも同様の意である。多官能性(メタ)アクリレートとしては、分子内にエチレン性不飽和結合を2個以上有する(メタ)アクリレートであればよく、特に制限はない。これらの多官能性(メタ)アクリレートは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
次に、重合性オリゴマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つオリゴマー、例えばエポキシ(メタ)アクリレート系、ウレタン(メタ)アクリレート系、ポリエステル(メタ)アクリレート系、ポリエーテル(メタ)アクリレート系などが挙げられる。ここで、エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーは、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することにより得ることができる。また、このエポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーを部分的に二塩基性カルボン酸無水物で変性したカルボキシル変性型のエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーも用いることができる。ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーは、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールとポリイソシアネートの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリエステル(メタ)アクリレート系オリゴマーとしては、例えば多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、あるいは、多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリエーテル(メタ)アクリレート系オリゴマーは、ポリエーテルポリオールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
さらに、重合性オリゴマーとしては、他にポリブタジエンオリゴマーの側鎖に(メタ)アクリレート基をもつ疎水性の高いポリブタジエン(メタ)アクリレート系オリゴマー、主鎖にポリシロキサン結合をもつシリコーン(メタ)アクリレート系オリゴマー、小さな分子内に多くの反応性基をもつアミノプラスト樹脂を変性したアミノプラスト樹脂(メタ)アクリレート系オリゴマー、あるいはノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、脂肪族ビニルエーテル、芳香族ビニルエーテル等の分子中にカチオン重合性官能基を有するオリゴマーなどがある。
本発明においては、電離放射線硬化性樹脂として、カプロラクトン系ウレタン(メタ)アクリレートが特に好ましい。カプロラクトン系ウレタン(メタ)アクリレートは、通常カプロラクトン系ポリオールと有機イソシアネートとヒドロキシ(メタ)アクリレートとの反応により得ることができるものである。
ここで、カプロラクトン系ポリオールとしては、市販されるものを使用することができ、好ましくは2個の水酸基を有し、数平均分子量が好ましくは500〜3000、より好ましくは750〜2000のものが挙げられる。また、カプロラクトン系以外のポリオール、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどのポリオールを1種又は複数種を任意の割合で混合して使用することもできる。
有機ポリイソシアネートとしては、2個のイソシアネート基を有するものが好ましく、黄変を抑制する観点から、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートなどが好ましく挙げられる。また、ヒドロキシ(メタ)アクリレートとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性−2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどが好ましく挙げられる。
カプロラクトン系ウレタン(メタ)アクリレートは、これらのポリカプロラクトン系ポリオールと有機ポリイソシアネートとヒドロキシ(メタ)アクリレートとの反応で合成することができる。合成法としては、ポリカプロラクトン系ポリオールと有機ポリイソシアネートとを反応させて、両末端に−NCO基を含有するポリウレタンプレポリマーを生成させた後に、ヒドロキシ(メタ)アクリレートと反応させる方法が好ましい。反応の条件などは常法に従えばよい。
本発明で用いられるカプロラクトン系ウレタン(メタ)アクリレートは、その数平均分子量(GPC法で測定したポリスチレン換算の数平均分子量)が、1000〜10000であることが好ましく、2000〜10000がより好ましい。すなわち、カプロラクトン系ウレタン(メタ)アクリレートはオリゴマーであることが好ましい。数平均分子量が上記範囲内(オリゴマー)であれば、加工性に優れ、コーティング剤組成物が適度なチクソ性が得られるので、表面保護層の形成が容易となる。
本発明においては、前記多官能性(メタ)アクリレートなどとともに、その粘度を低下させるなどの目的で、単官能性(メタ)アクリレートを、本発明の目的を損なわない範囲で適宜併用することができる。これらの単官能性(メタ)アクリレートは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(熱硬化性樹脂)
熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、水酸基官能性アクリル樹脂、カルボキシル官能性アクリル樹脂、アミド官能性共重合体、ウレタン樹脂などが挙げられる。
これらの樹脂の架橋硬化の態様としては特に限定されず、以下のような態様がある。エポキシ樹脂は、アミン、酸触媒、カルボン酸、酸無水物、水酸基、ジシアンジアミド又はケチミンとの反応、フェノール樹脂は、塩基触媒と過剰なアルデヒドとの反応、ユリア樹脂はアルカリ性または酸性下での重縮合反応、不飽和ポリエステル樹脂は無水マレイン酸とジオールとの共縮合反応、メラミン樹脂はメチロールメラミンの加熱重縮合反応、アルキド樹脂は、側鎖などに導入された不飽和基同士の空気酸化による反応、ポリイミド樹脂は、酸または弱アルカリ触媒の存在下での反応、又はイソシアネート化合物との反応(2液型の場合)、シリコーン樹脂は、シラノール基の酸触媒の存在下での縮合反応、水酸基官能性アクリル樹脂は、水酸基と自身が持つアミノ樹脂との反応(1液型の場合)、カルボキシル官能性アクリル樹脂は、アクリル酸またはメタクリル酸などのカルボン酸とエポキシ化合物による反応、アミド官能性共重合体は水酸基との反応または自己縮合反応、ウレタン樹脂は、水酸基を含有するポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂等の樹脂とイソシアネート化合物又はその変性物との反応などにより架橋硬化が促進される。これらの反応を利用した架橋剤または硬化剤が通常用いられる。
熱硬化性樹脂の中では、2液硬化型樹脂が好ましく、ポリオールとイソシアネートとの2液硬化性の樹脂が好ましい。
ここで、ポリオールとしては、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、エポキシポリオール等、種々のものがあるが、アクリルポリオールが好ましい。このアクリルポリオールとしては、塩化ビニル変性アクリルポリオール、塩化ビニル−酢酸ビニル変性アクリルポリオール、塩素化ポリオレフィン変性アクリルポリオール、メチル(メタ)アクリレート−2ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート共重合体、オクチル(メタ)アクリレート−エチルヘキシル(メタ)アクリレート−2ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート共重合体、メチル(メタ)アクリレート−ブチル(メタ)アクリレート−2ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート−スチレン共重合体等が挙げられるが、塩化ビニル変性アクリルポリオールが特に好ましい。
また、イソシアネートとしては、従来公知の化合物を適宜使用すれば良い。例えば、2,4−トリレンジイソシアネート(TDI)、キシレンジイソシアネート(XDI)、ナフタレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート、或いは、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、メチレンジイソシアネート(MDI)、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂肪族(乃至は脂環式)イソシアネート等のポリイソシアネートが用いられる。或いはまた、これら各種イソシアネートの付加体又は多量体、例えば、トリレンジイソシアネートの付加体、トリレンジイソシアネート3量体(trimer)等も用いられる。
次に、本発明の選択波長反射フィルムの層構成に関し、図1〜3を用いて説明する。ここでは、表面保護層として、電離放射線硬化性樹脂を用いた場合について説明するが、これに限定されるものではなく、上述の他の硬化性樹脂も用い得る。
図1は、本発明の選択波長反射フィルムの層構成の一態様を示す図である。図1に示す選択波長反射フィルムは、透明基材11の上に選択反射層12及び表面保護層13が積層されたものである。ここでは、透明基材11の上に選択反射層12を塗工し、次いで、その上に直接電離放射線硬化性樹脂組成物を塗工し、電離放射線の照射により、架橋硬化させて表面保護層を形成してもよいし、図2に示すように、選択反射層12の上に、プライマー層14を塗工し、その上に電離放射線硬化性樹脂組成物を塗工し、電離放射線の照射により、架橋硬化させて表面保護層13を形成してもよい。
なお、ここでプライマー層14は、選択反射層12と表面保護層13の接着性を高める目的で設けられるものである。該プライマー層14を形成するための樹脂は特に限定されず、適宜設定されるものであるが、耐候性をさらに向上させるため、紫外線吸収剤(UVA)や光安定剤(HALS)を含有させることもできる。また、プライマー層14の厚さについては、本発明の効果を奏する範囲で特に限定されず、通常0.5〜10μmの範囲、好ましくは1〜5μmの範囲で選定される。
また、表面保護層13の形成方法として、何らかの基材に電離放射線硬化性樹脂を塗工し、電離放射線の照射により架橋硬化させて表面保護層13を形成した後、その上にプライマー層14を介して選択反射層12を形成し、接着層15を介して透明基材11に転写することで、本発明の選択波長反射フィルムを得てもよい(図3参照)。
ここで、接着層15を構成する接着剤としては、特に制限されるものではなく、例えば、ポリエステル系接着剤、ポリエーテル系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリウレタン系接着剤、ゴム系接着剤、シリコーン系接着剤などを使用することができる。また、ヒートシールにより接着層15を形成することもできる。
上記電離放射線樹脂組成物の塗工は、硬化後の厚さが通常1〜20μm程度となるように、グラビアコート、バーコート、ロールコート、リバースロールコート、コンマコートなどの公知の方式、好ましくはグラビアコートにより行う。また、優れた耐候性とその持続性、さらには透明性と防汚性とを得る観点から、硬化後の厚さは、好ましくは2〜20μmである。
本発明で好適な電離放射線樹脂組成物の塗工により形成した未硬化樹脂層は、電子線、紫外線などの電離放射線を照射して架橋硬化することで、表面保護層となる。ここで、電離放射線として電子線を用いる場合、その加速電圧については、用いる樹脂や層の厚みに応じて適宜選定し得るが、通常、加速電圧70〜300kV程度で未硬化樹脂層を硬化させることが好ましい。
照射線量については、カプロラクトン系ウレタンアクリレートなどの電離放射線硬化性樹脂の架橋密度が飽和する量が好ましく、通常5〜300kGy(0.5〜30Mrad)、好ましくは10〜50kGy(1〜5Mrad)の範囲で選定される。
電子線源としては、特に制限はなく、例えばコックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、あるいは直線型、ダイナミトロン型、高周波型などの各種電子線加速器を用いることができる。
また、電離放射線として紫外線を用いる場合には、波長190〜380nmの紫外線を含むものを放射する。紫外線源としては特に制限はなく、例えば高圧水銀燈、低圧水銀燈、メタルハライドランプ、カーボンアーク燈などが用いられる。
また、表面保護層は、凹部を有していてもよい。表面保護層に凹部を施す方法については特に制限はなく、例えばエンボス加工により施される。エンボス加工は、公知の枚葉又は輪転式のエンボス機を使用する通常の方法により行えばよい。
本発明における硬化性樹脂組成物には、紫外線吸収剤(UVA)及び/又は光安定剤を含有させることが、本発明の選択反射フィルムに耐候性を付与する点で好ましい。
紫外線吸収剤としては、無機系、有機系のいずれでもよく、無機系紫外線吸収剤としては、平均粒径が5〜120nm程度の酸化チタン、酸化セリウム、酸化亜鉛などを好ましく用いることができる。また、有機系紫外線吸収剤としては、例えばベンゾトリアゾール系、トリアジン系、ベンゾフェノン系、サリチレート系、アクリロニトリル系などが好ましく挙げることができる。なかでも、紫外線吸収能が高く、また紫外線などの高エネルギーに対しても劣化しにくいトリアジン系がより好ましい。
トリアジン系紫外線吸収剤としては、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤が好ましく、例えば、2−(2−ヒドロキシ−4−[1−オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)−4,6−ビス(4−フェニルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−ドデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス[2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル]−6−(2,4−ジブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−トリデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−(2'−エチル)ヘキシル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジンなどが好ましく挙げられ、これらを単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。
トリアジン系紫外線吸収剤の含有量は、硬化性樹脂100質量部に対して、1〜10質量部が好ましく、3〜10質量部がより好ましく、5〜10質量部がさらに好ましい。トリアジン系紫外線吸収剤の含有量が上記範囲内であれば、該吸収剤がブリードアウトすることなく、また十分な紫外線吸収能が得られるので、優れた耐候性が得られる。これまで一般的には、バインダー樹脂100質量部に対して紫外線吸収剤を1質量部以上加えると、該吸収剤がブリードアウトする場合があるため、より優れた紫外線吸収能を得ようとしても得られなかった。しかし、本発明によって、トリアジン系紫外線吸収剤と電離放射線硬化性樹脂、特にはカプロラクトン系ウレタンアクリレートと、後述する所定の光安定剤との組合せにより、1質量部以上という多量の紫外線吸収剤を添加しても、該吸収剤がブリードアウトすることなく、優れた耐候性を得ることが可能となった。
次に、光安定剤としては、ヒンダードアミン系光安定剤(HALS)などが好ましく挙げられる。
本発明で用いられるヒンダードアミン系光安定剤(HALS)としては、反応性官能基Aを有するヒンダードアミン系光安定剤が好ましい。反応性官能基Aは、カプロラクトン系ウレタンアクリレートなどの電離放射線硬化性樹脂と反応性を有するものであれば特に制限はなく、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基などのエチレン性二重結合を有する官能基などが好ましく挙げられ、これらから選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。なかでも(メタ)アクリロイル基が好ましい。
このような光安定剤としては、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニルメタクリレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート、メチル(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート、2,4−ビス[N−ブチル−N−(1−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ]−6−(2−ヒドロキシエチルアミン)−1,3,5−トリアジン)などが挙げられる。
反応性官能基Aを有するヒンダードアミン系光安定剤の含有量は、電離放射線硬化性樹脂100質量部に対して、1〜10質量部が好ましく、3〜10質量部がより好ましく、5〜10質量部がさらに好ましい。ヒンダードアミン系光安定剤の含有量が上記範囲内であれば、該光安定剤がブリードアウトすることなく、また十分な光安定性が得られるので、優れた耐候性が得られる。
本発明の選択波長反射フィルムの表面保護層を構成する樹脂組成物中には、その性能を阻害しない範囲で各種添加剤を含有することができる。各種添加剤としては、例えば重合禁止剤、架橋剤、帯電防止剤、接着性向上剤、酸化防止剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、カップリング剤、可塑剤、消泡剤、充填剤、溶剤などが挙げられる。
本発明の選択波長反射フィルムは、透明基材の選択波長反射層を設ける側の反対側に接着剤層又は粘着剤層を設けることができ、接着剤層付き、又は粘着剤層付き選択波長反射フィルムとすることができる。また、該接着剤層及び粘着剤層の上に保護フィルムを設けることもできる。
[選択波長反射ガラス及び選択波長反射プラスチック板]
本発明の選択波長反射ガラスは、本発明の選択波長反射フィルムを、接着剤又は粘着剤層を介して貼付してなる。接着剤としては、被着材の種類などに応じて公知の接着剤から適宜選択すれば良い。例えば、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、アイオノマーなどのほか、ブタジエン・アクリルニトリルゴム、ネオプレンゴム、天然ゴムなどが挙げられる。
また、粘着剤としては、アクリル系粘着剤やシリコーン系粘着剤を使用することができる。
なお、接着剤又は粘着剤で本発明のフィルムを粘接着するに際し、裏面プライマー層を設けることが粘接着性を高めることができるので好ましい。
このようにして製造されたガラス及びプラスチック板は、選択波長が赤外線の場合には、可視光線量を維持しつつ、赤外線を反射するので、窓、天井などの建築物に用いることで、室内の明るさを保ちながら、室内の温度上昇を抑えることができる。また、車載用として用いた場合にも、夏場の車内の温度上昇を抑制することができる。
一方、選択波長として特定の可視光の波長を選んだ場合には、調光材料として用いることができ、また、輝度向上フィルムとして用いることができる。
さらには、紫外線等の短波長領域を選択した場合には、紫外線、電磁波などの有害光線の遮蔽フィルムとして用いることもできる。
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、この例によってなんら限定されるものではない。
(評価方法)
(1)外観
各実施例及び比較例で製造した選択波長反射フィルムの外観を目視にて評価した。
○;透明
×;着色
(2)耐擦傷性
各実施例及び比較例で得られたフィルムについて、スチールウールを用いて、300g/cm2の荷重をかけて5往復擦り、外観を目視で評価した。評価基準は以下のとおりである。
○:外観にほとんど変化がなかった。
△:外観に若干の傷つきや艶変化があった。
×:外観に傷つきがあり、艶変化があった。
実施例1
透明基材としてポリエチレンテレフタレート原反(東レ株式会社製「U−35」、厚さ125μm、以下「PET基材」と称する。)を用意した。
次に、下記式(I)に示される液晶性モノマー97.4質量部と、両側の末端に重合可能なアクリレートを有するカイラル剤(右旋回性、Paliocolor(登録商標)LC756(BASF社製))2.6質量部とを溶解させたシクロヘキサノン溶液を準備した。なお、上記シクロヘキサノン溶液には、上記液晶性モノマー分子に対して5.0質量部の光重合開始剤(イルガキュア184)を添加した(固形分30質量%)。
次に、PET基材に、配向膜を介さずにバーコーターにて、上記のシクロヘキサノン溶液を塗布した。次いで、100℃で2分間保持し、シクロヘキサノン溶液中のシクロヘキサノンを蒸発させて、液晶性モノマー分子を配向させ、右旋回性塗膜を得た。そして、得られた塗膜に、紫外線照射装置(フュージョン社製、Hバルブ、以下同じ)を用いて紫外線200mJ/cm2(照射量測定はフュージョン社製、UV Power MAPにて測定、以下同じ)照射し、塗膜中の光重合開始剤から発生するラジカルによって、配向した液晶性モノマー分子のアクリレート及びカイラル剤のアクリレートを3次元架橋してポリマー化し、第1のPET基材上にコレステリック構造を固定化することにより、選択反射層(膜厚6.5g/m2)を形成した。
次に、電離放射線硬化性樹脂組成物(電子線硬化性樹脂)として、ポリカプロラクトンジオール系ウレタンアクリレートオリゴマー(2官能、分子量:約1000)100質量部に、電子線(EB)反応性光安定剤(BASFジャパン株式会社製、商品名「サノールLS−3410」1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニルメタクリレート)を6質量部、トリアジン系紫外線吸収剤(BASFジャパン株式会社製、商品名「チヌビン479」)を2質量部含有させた組成物を用いて、選択反射層の上にグラビアコートにて塗膜を形成した。その後、加速電圧175keV及び照射線量5Mrad(50kGy)の条件で電子線を照射して上記塗膜を架橋硬化させることにより、表面保護層(5g/m2)を形成させて、赤外線反射フィルム(本発明の選択波長反射フィルム)を得た(図1参照)。なお、表面保護層の厚さは5μmであった。上記方法にて評価した結果を第1表に示す。
また、本実施例において用いたシクロヘキサノン溶液をガラス基板に塗布し、上記と同様にして配向させ、固定化した選択反射層について、株式会社島津製作所製「UV−3100PC」を用いて、各波長に対する反射率(%)を測定した結果を第2表に示す。本実施例で用いた選択反射層は、約1000nmにピークを有する赤外線を反射することがわかる。
Figure 2012013965
実施例2
実施例1で調製した赤外線反射フィルムに対して、選択反射層と表面保護層の間にプライマー層を設けたこと以外は、実施例1と同様にして赤外線反射フィルムを得た(図2参照)。プライマー層を構成する樹脂としては、ポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体とアクリルポリオールからなるアクリルウレタン共重合体を用い、厚さは3μmとした。実施例1と同様に評価した結果を第1表に示す。
実施例3
実施例2において、表面保護層として、電子線硬化性樹脂に代えて、紫外線硬化性樹脂(ウレタンアクリレートオリゴマー100質量部に対して光重合開始剤0.1質量部含む)を用いたこと以外は実施例2と同様にして赤外線反射フィルムを得た(図2参照)。実施例1と同様に評価した結果を第1表に示す。
実施例4
選択反射層を形成するまでの工程を実施例1に記載の方法で行い、PET基材A上に選択反射層を有するフィルムを得た。
次いで、該選択反射層の上に、2液硬化型ウレタン樹脂(主剤はポリエステル系:18質量部、硬化剤はヘキサメチレンジイソシアネート:2質量部)10g/m2を塗工し、60℃で1分間保持して、厚さ10μmの接着層を設けた。該接着層の上に、もう1つのPET基材(PET基材B;東洋紡績株式会社製「A4300」、厚さ100μm)をドライラミし、その後、PET基材Aを剥離した。
次に、実施例2と同様にして、選択反射層の上にプライマー層を設け、該プライマー層の上に、実施例1と同様にして、表面保護層を設けて、赤外線反射フィルムを得た(図3参照)。実施例1と同様に評価した結果を第1表に示す。
比較例1
実施例1において、表面保護層を設けなかったこと以外は、実施例1と同様にして、赤外線反射フィルムを得た(図4参照)。実施例1と同様に評価した結果を第1表に示す。
Figure 2012013965
第1表
Figure 2012013965
本発明によれば、特定の波長の光線を選択的に反射することができ、かつ表面の耐擦傷性の優れた選択波長反射フィルムを得ることができる。特に、赤外線に相当する波長である0.2〜1000μmの光線を選択的に反射させる場合には、可視光の透過性を維持しつつ、赤外線に対して優れた反射性を有する選択波長反射フィルム(赤外線反射フィルム)を得ることができる。
赤外線反射フィルムとして用いた場合には、窓、天井などの建築物に用いることで、室内の明るさを保ちながら、室内の温度上昇を抑えることができる。また、車載用として用いた場合にも、夏場の車内の温度上昇を抑制することができる。さらに、ビニールハウスなどの用途として用いることもできる。
また、選択波長として特定の可視光の波長を選んだ場合には、調光材料として用いることができ、また、輝度向上フィルムとして用いることができる。
さらには、紫外線等の短波長領域を選択した場合には、紫外線、電磁波などの有害光線の遮蔽フィルムとして好適に使用することができる。
10 選択波長反射フィルム
11 透明基材
12 選択反射層
13 表面保護層
14 プライマー層
15 接着層

Claims (12)

  1. 透明基材、選択反射層及び表面保護層を少なくとも有し、該選択反射層がコレステリック構造を持つ棒状化合物からなり、かつ表面保護層が硬化性樹脂組成物の架橋硬化したものである選択波長反射フィルム。
  2. 前記選択波長が赤外線領域である請求項1に記載の選択波長反射フィルム。
  3. 前記硬化性樹脂組成物が、電離放射線硬化性樹脂組成物である請求項1又は2に記載の選択波長反射フィルム。
  4. 前記電離放射線硬化性樹脂がカプロラクタン系ウレタン(メタ)アクリレートである請求項3に記載の選択波長反射フィルム。
  5. 前記カプロラクトン系ウレタン(メタ)アクリレートの数平均分子量が、1000〜10000である請求項4に記載の選択波長反射フィルム。
  6. 前記表面保護層を形成する硬化性樹脂組成物中に紫外線吸収剤及び/又は光安定剤を含有する請求項1〜5のいずれか1項に記載の選択波長反射フィルム。
  7. 前記光安定剤が、反応性官能基Aを有するヒンダードアミン系光安定剤である請求項6〜9のいずれか1項に記載の選択波長反射フィルム。
  8. 透明基材と選択反射層が接着層を介して接する請求項1〜7のいずれか1項に記載の選択波長反射フィルム。
  9. 前記選択反射層が、紫外線又は電子線によって硬化されたものである請求項1〜8のいずれか1項に記載の選択波長反射フィルム。
  10. 透明基材の選択反射層を設ける側の反対側に接着剤層又は粘着剤層を有する請求項1〜9のいずれか1項に記載の選択波長反射フィルム。
  11. ガラス基板上に、請求項10に記載の選択波長反射フィルムを、接着剤層又は粘着剤層を介して貼付した選択波長反射ガラス。
  12. プラスチック基板上に、請求項10に記載の選択波長反射フィルムを、接着剤層又は粘着剤層を介して貼付した選択波長反射プラスチック板。
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