JP2011505506A - タイヤ補強用ハイブリッドコード - Google Patents

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Abstract

約6.5N/dTexより高い弾性率を有する少なくとも1本のp−アラミドフィラメントのコアと、p−アラミドフィラメントの周囲にらせん状に巻回されるスチールストランドのシースとを含む、タイヤ補強用コード。

Description

本発明は、タイヤの補強用ハイブリッドコードに関し、特に、スチール及びp−アラミドフィラメントを含むハイブリッドコードに関する。
スチールコア及びp−アラミドコアの双方による、p−アラミドストランドと共に巻回されたスチールストランドを含むタイヤ補強用ハイブリッドコードの作製が公知である。
米国特許第5,551,498号明細書は、共に撚り合わされた2本のp−アラミドストランドのコアと、そのコアを取り囲む6本のスチールストランド又はフィラメントの外層又はシースとを有するハイブリッドコードについて記載している。また、3本のスチールストランドからなるコアと、そのコアを取り囲む4本のp−アラミドストランドからなる層とからなるハイブリッドコードについても記載している。
米国特許第4,176,705号明細書は、タイヤ用のワイヤ補強コードについて記載している。このコードは、p−アラミドコアからなり、そのコアの周りに、共に撚り合わされたスチールフィラメントからなるスチールストランドが配置される。
スチールワイヤは、芳香族ポリアミド(アラミド)のフィラメントと比べて破断伸びが低いことが知られている。結果として、先行技術の複合補強コードは、コードの伸びがスチールワイヤストランドの破断伸びを超えない時点での荷重しか受けることができない。この限界荷重を超えると、スチールワイヤは破損し、全荷重をアラミドコアが引き受け、ひいてはアラミドコアは直ちにそれ自体の破断伸度を超え、同様に破損する。換言すれば、スチールワイヤ構成要素の破断伸びはポリアミドコアの破断伸度を明らかに下回るという事実にも関わらず、公知の複合コードは、その伸びがそのスチールワイヤ要素の破断伸びと一致するときに破断する。
このようなスチールワイヤの早過ぎる破断については、米国特許第4,807,680号明細書に記載されており、この明細書は、複数本のp−アラミドフィラメントのコアを、そのコアの周囲に巻回されたスチールフィラメントが取り囲むものからなるハイブリッドコードを備えるタイヤを開示する。提案されている解決法は、ほぼ矩形断面のワイヤを使用することであり、このワイヤは、対応する標準的な丸い断面のワイヤより高い破断点伸度を有する。矩形断面ワイヤを使用したハイブリッドコードは、米国特許第4,878,343号明細書にも記載されている。
p−アラミド構成要素を十分に利用するハイブリッドコードが依然として必要とされている。
本発明の一実施形態におけるハイブリッドコードの断面を図示する。 本発明のハイブリッドコードの一実施形態としての実施例2の引張強度データを示す。 標準的なp−アラミドのコアで作製された従来のコードの機械的挙動を示す。
定義
「ストランド」は、本明細書で使用されるとき、連続的な帯状の材料、アラミド又はスチールのいずれかを意味し、この帯状の材料は、単一のフィラメントか、又は共に撚り合わされて糸(アラミド)又はケーブル(スチール)を形成する複数本のフィラメントのいずれかを含み得る。
「フィラメント」は、本明細書で使用されるとき、比較的柔軟な、巨視的に一様な物体であって、その長さに垂直なその断面積にかかる幅に対する長さの比が大きい物体を意味する。フィラメント断面はいかなる形状であってもよいが、典型的には円形である。本明細書において、アラミドに関わる用語「繊維」は、用語「フィラメント」と同義的に用いられる。スチールに関わる用語「ワイヤ」もまた、用語「フィラメント」と同義的に用いられ得る。
「ワイヤ」は、本明細書で使用されるとき、その長さに垂直なその断面積にかかる幅に対する長さの比が大きい連続的なスチール製の物体を意味する。
「糸」は、本明細書で使用されるとき、共に撚り合わされた複数本のフィラメントを含むストランドを意味する。
「ケーブル」は、本明細書で使用されるとき、共に撚り合わされた複数本のワイヤを含むストランドを意味する。
フィラメント、ストランド、糸又はケーブルが参照されるときの「直径」は、フィラメント、ストランド、糸又はケーブルの断面全体を囲んで描くことのできる最小の直径である。
「デニール」、長さ9,000mのフィラメント、ストランド、糸又はケーブル当たりのグラム重量。
「テックス」、1キロメートルのフィラメント、ストランド、糸又はケーブルのグラム重量。
「デシテックス」、テックスの10分の1、dTexと略記される。
「ねじれ角」は、シースストランドの経路とコアの主軸とによって形成される角度を意味する。らせん角という表現が等価に用いられる。
「撚り長さ(lay length)」は、シース軸上で計測したときの、コアの周囲を完全に一周するシースの一巻きに相当する長さを意味する。
スチールストランドによって取り囲まれた高弾性率p−アラミドのコアを使用してハイブリッドコードが作製されるとき、p−アラミドの強度が最も有効に利用され、p−アラミドとスチールとの個別の破断荷重値の合計に近い破断荷重値のハイブリッドコードが製造されることが分かっている。
第1の実施形態において、本発明はタイヤ補強用ハイブリッドコードを提供し、このコードは、少なくとも1本のp−アラミドフィラメントのコアと;p−アラミドフィラメントの周囲にらせん状に巻回されたスチールストランドのシースとを含み;p−アラミドフィラメントは、約6.5N/dTexより高く、且つ約10.8N/dTex以下の弾性率を有する。
第2の実施形態において、本発明は、本発明のハイブリッドコードを含むタイヤ補強構造を提供する。
第3の実施形態において、本発明は、本発明のハイブリッドコードを含むタイヤを提供する。
一態様において、本発明は、ハイブリッドコードの製造方法を提供し、これは、約6.5N/dTexより高い弾性率を有する少なくとも1本のp−アラミドフィラメントのコアを提供するステップと、そのコアに複数のスチールストランドを巻き付けるステップであって、それによりシースを形成するステップとを含む。
別の態様において、本発明は、タイヤ補強構造の製造方法を提供し、これは、本発明のハイブリッドコードを母材に組み込むステップを含む。
さらに別の態様において、本発明は、強化タイヤの製造方法を提供し、これは、本発明のハイブリッドコードをタイヤ内に組み込むステップを含む。
コア
一実施形態において、本発明のハイブリッドコードは、少なくとも1本の連続的な高弾性率p−アラミドフィラメントを含むコアを有し、ここで弾性率は、典型的には6.5〜10.8N/dTex;例えば7以上、7〜10.8N/dTexなど;又はさらには6.5〜8N/dTexである。高弾性率p−アラミドは、例えば、米国特許第3,869,430号明細書に記載されるとおり、高温チャンバの引張装置を通じて紡糸し、紡糸速度を低下させて結晶化度を高め、所望の結晶方位を提供することによって得ることができる。
高弾性率p−アラミドを使用することにより、コアとシースフィラメントとの破断点伸度は厳密に一致し、そのため破断荷重下(すなわち引張破壊試験)において、コアとシースフィラメントとは、本質的に同じ伸びで、すなわちより単純にいえば、同時に破断する傾向を有する。コアには1本又は複数の糸が使用され得る。
コアは、シースフィラメントで巻回する前には、丸い、又は楕円形の断面を有し得るが、しかしながら、多葉形状又は星形状などのより複雑な形状を有することもできる。コアにシースフィラメントが巻回されると、コアはシースフィラメントによって「締め付け」られ、典型的には、図1の「星形状」のように、より複雑な断面形状をとり得る。
コアは単一のp−アラミドフィラメントからなってもよく、又は複数本のp−アラミドフィラメントを共に撚り合わせることによって作製された糸からなってもよい。また、コアが、共に撚り合わされない、すなわち独立した関係にある2本以上のp−アラミドフィラメントからなることも可能であり、又は、共に撚り合わされるか、若しくは独立しているか、そのいずれかである2本以上のアラミド糸からなってもよい。
本質的にコアには任意の直径又は線密度の糸を用い得る。均質な糸については、線密度は直径と直接相関し、そのためこれらの2つの表現は同義的に用いられ得る。選択されるコアストランドの線密度は、ハイブリッドコードの所望の最終直径に依存する。コアストランドとして用いることのできる糸の例は、約1000〜5000dtex、又は約1500〜4000dtexの範囲の線密度を有するp−アラミド糸である。約1600〜3200dtexの範囲の線密度を有する市販の糸が好適である。
コアの糸は、共に撚り合わされて所望のdTexの糸を形成する複数本のp−アラミドフィラメントからなり得る。例えば、約1580dTexの線密度を有する典型的な糸には、約1000本のフィラメントがある。約3160dTexの線密度を有する典型的な糸には、約1333〜2000本のフィラメントがある。
シース
各シースストランドは、連続的な単一のスチールワイヤからなってもよく、又は共に撚り合わされてケーブルを形成する複数本の連続的なワイヤからなってもよい。ワイヤは、楕円形又は円形の断面を有する。ワイヤは、典型的には、ゴムとの親和性を付与するコーティング、特にゴム中の硫黄原子と反応することのできるコーティング、例えば、銅、亜鉛及びかかる金属の合金、例えば真鍮などによって被覆される。
シースストランドの直径は、ハイブリッドコードの最終的な構造に影響を及ぼす。タイヤ補強用の本発明のハイブリッドコードに用いられるスチールワイヤの典型的な直径は、約0.15mm〜0.25mmの範囲、例えば0.175mmである。また、いわゆる「細径スチール(fine steel)」も好ましく、これは約0.04mm〜0.125mmの範囲の直径を有する。細径スチールシースで作製されたコードは、乗用車用タイヤのベルト又は自動二輪車用タイヤのベルトに特に好適である。細径スチールワイヤがシースとして用いられる場合、約1600dtexのコアを使用することが好ましい。約0.15mm以上の直径を有するワイヤがシースに用いられる場合、コアは好ましくは、各糸が約3200dTexの1本又は2本のp−アラミド糸で作製されるべきである。
ハイブリッドコード
本発明に係るハイブリッドコードの実施形態を提供するにおいては、以下のパラメータが考慮される:
シースストランドの本数N;
シースストランドの直径d;
1本又は複数のコアストランドの直径又は線密度;
充填比;
ねじれ角θ又は撚り長さ。撚り長さはπ*dc/tanθ(式中dcはシースストランドの中心を通る円の直径である)に等しいため、これらの2つのパラメータは独立していない。
充填比は、コアの実際の断面積とコアについて利用可能な面積との比として定義される。本発明のハイブリッドコードにおいては、約0.85〜1.15、好ましくは約1の充填比を有することが望ましい。
20°を超えないねじれ角については、コアについて利用可能な近似総面積(Acore)は、経験的に式(1)によって求められる:
core=[d/(2cosθ)]2×{[π−N(β−sinβcosβ)]×(1/tanβ)2−Ncosθ×(π/2−β−sinβcosβ)} (1)
式中、dはシースストランドの直径であり、θはねじれ角であり、Nはシースストランドの本数であり、及びβ=π/Nである。ストランドの直径dはmm単位で表され、及びβはラジアン単位で表され、従って結果として求まるAcore値はmm2単位である。
充填比は、実際のコア断面積を計算されたAcore値で除すことによって計算することができる。実際のコア断面積は光学顕微鏡若しくは電子顕微鏡を用いて計測することができ、或いは、以下のとおり計算してもよい:
actual[mm2]=線密度[dTex]/(10000*繊維比重*コア充填率)
式中、丸い断面の繊維で作製されたp−アラミド糸の場合、繊維比重は1.44に等しく、コア充填率は実験から0.74768に等しいことが分かっている。コア充填率は、密に詰まった繊維の間に存在する小さい間隙も含む糸の全断面積に対する、アラミド繊維によって占められる糸の有効断面積の割合である。
外側シースは、わずか2本のスチールストランドからなってもよく、但し、有し得るスチールストランドは12本未満である。
スチールストランドの直径は、乗用車用タイヤ又は自動二輪車用タイヤのベルトの適用には、約0.08〜0.25mm又は約0.08〜0.125mmであり、及びトラック用タイヤのベルト及びカーカスの適用には、約0.15〜0.2である。
コアとしての低弾性率p−アラミドと、スチールワイヤシースとを備える従来のハイブリッドコード(例えば、米国特許第4,176,705号明細書に記載されるとおりの)では、理論的にはシースとコアとの破断荷重を一致させることが可能であるものの、それは、スチールシースの破断点伸度を人為的に高めるため、非常に大きい(すなわち、30°より大きい)ねじれ角を用いることによるしかない。しかしながら、工業的に利用可能なスチールコードの撚り線加工機を用いてかかる大きいねじれ角を作製することは、実際にはできない。本発明に従えば、妥当な(例えば、約8〜21°の範囲の)ねじれ角を用いながら、コアとシースとの破断点荷重の良好な一致を得ることが可能である。加えて、本発明のハイブリッドコードは、約10〜15°の範囲のねじれ角を有し得る。
本発明のハイブリッドコードのいくつかの実施形態が以下に記載される。これらのコードは、全て1.0の充填比を有する。
コード1
コア:約6.5N/dTexより高い弾性率を有するp−アラミドで作製されたp−アラミド糸、1580dtex、フィラメント数1000本±2%
シース:直径0.1mmのスチールワイヤ15本
ねじれ角:18.6°
撚り長さ:4.74mm
予想引張強度:609N
コード2
コア:約6.5N/dTexより高い弾性率を有するp−アラミドで作製されたp−アラミド糸、1580dtex、フィラメント数1000本±2%
シース:直径0.08mmのスチールワイヤ18本
ねじれ角:20.2°
撚り長さ:4.19mm
予想引張強度:535N
コード3
コア:約6.5N/dTexより高い弾性率を有するp−アラミドで作製されたp−アラミド糸、1580dtex、フィラメント数1000本±2%
シース:直径0.09mmのスチールワイヤ17本
ねじれ角:12.9°
撚り長さ:6.92mm
予想引張強度:596N
コード4
コア:約6.5N/dTexより高い弾性率を有するp−アラミドで作製されたp−アラミド糸、1580dtex、フィラメント数1000本±2%
シース:直径0.125mmのスチールワイヤ13本
ねじれ角:10.9°
撚り長さ:8.97mm
予想引張強度:740N
コード5
コア:約6.5N/dTexより高い弾性率を有するp−アラミドで作製されたp−アラミド糸、3173dtex、フィラメント数1333〜2000本
シース:直径0.175mmのスチールワイヤ13本
ねじれ角:13.0°
撚り長さ:10.2mm
予想引張強度:1454N
コード6
コア:約6.5N/dTex以上の弾性率を有するp−アラミドで作製されたp−アラミド糸、3276dtex、フィラメント数1333〜2000本
シース:直径0.15mmのスチールワイヤ15本
ねじれ角:12.8°
撚り長さ:10.2mm
予想引張強度:1347N
コード7
コア:共に撚り合わされた2本のp−アラミド3155dtex糸、約6.5N/dTexより高い弾性率を有するp−アラミドで作製されたもので、各糸のフィラメント数は1333〜2000本であった。
シース:直径0.175mmのスチールワイヤ17本
ねじれ角:17.0°
撚り長さ:10.2mm
予想引張強度:2288N
上記のコードでは、「予想引張強度」は、コアとシースとの双方の引張強度が全て有効利用され、且つ、スチールシースが弾塑性モデルの塑性流れ区間にある間に、2つの構成要素が同時に破断することを仮定して計算されている。
「細径スチール」で作製されたシースを有するコード1、2、3及び4は、高性能乗用車用タイヤのベルト材料として用いられ得る。かかるコードは、ポリマー母材(例えばゴム)に埋設されると、「フットプリントパッチ」の面積(すなわち、タイヤの接地面積)が増加したタイヤをもたらし、これは、レース用トラック上でのいわゆる「ハードハンドリング」試験中に直面するような、高応力条件にある間のベルト構造の挙動の改善並びにトレッド要素の接線応力及び接線歪みの低減につながる。このコード(すなわち、細径スチールを使用したもの)は、高性能自動二輪車用ラジアルタイヤの0°ベルトにも好適である。
そのシースに従来のワイヤ径を使用するコード5、6及び7は、トラック用タイヤのベルト及びカーカスでの使用に特に好適である。
タイヤ補強構造及びタイヤ
本発明のハイブリッドコードは、乗用タイヤ、トラック用タイヤ及びカーカス並びに高性能自動二輪車用タイヤにおけるベルトの補強に用いるのに特に好適である。純粋なスチール補強コードと比較して、p−アラミドを本発明のコードにおけるコア材料として用いると、タイヤの重量が低減され、転がり抵抗性が向上する。さらに、p−アラミドは腐食を受けにくいため、腐食が低減する。
本発明のハイブリッドコードをタイヤに組み込むためには、コードを母材に組み込むことにより、カーカス、ビード補強チェーファ(低いサイドウォールの補強用の複合ストリップ)、又はベルトストリップの形態のタイヤ補強構造が形成される。母材は、本発明のコードを部分的又は完全に埋設して、複数本のコードを互いに固定的な向き及び位置に維持することのできる任意のポリマー材料であり得る。典型的な材料は、ゴムなどの熱硬化性材料である;しかしながら、熱可塑性加硫物及びコポリエーテルエステルなどの熱可塑性材料を使用することも可能である。次に、タイヤ補強構造が、タイヤの構造内に、典型的にはトレッドの下側に取り付けられる。ベルト補強構造については、ベルトは、トレッドの下側でタイヤの周囲を囲んで、又はタイヤのリムを囲んで延在する。
ハイブリッドコードの作製方法
本発明のハイブリッドコードを作製するためには、選択された本数のスチールストランドが高弾性率p−アラミドコアの周囲に撚り線加工されるか、又はらせん状に巻き付けられる。スチールストランドは、各々、所望の本数のスチールフィラメント又はワイヤで構成されてもよく、それらが共に撚り合わされてケーブルを形成する。スチールコード製造用の標準的な撚り線加工機を使用してハイブリッドコードを製造することができる。
アラミドコアは、スチールストランドを撚り線加工するか、又はらせん状に巻き付けることによって生じる中心に位置する間隙を、完全に充填することが望ましい。充填比は、約0.85〜1.15又は約0.95〜1.05であり得る。
充填比が低過ぎる場合、規則的な形状のハイブリッドコードを得ることが難しく、コアとシースとの間に機械的な結合が存在しないことになる。これは、コアがシース内で摺動し、コードの強度が弱まり得ることを意味する。
他方で、充填比が高過ぎる場合、隣接するシースワイヤ間の隙間が大きくなり過ぎ、アラミドコアが露出するため、ハイブリッドコードは本質的に100%金属の外表面ではなくなる。真鍮で被覆されたスチールはゴム中の連結剤と反応し、結果としてゴム母材がスチールシースに付着する。この付着は未処理のアラミドでは起こらない。これは、アラミドコアが露出すると、ゴム母材のコードとの付着が損なわれ得ることを意味する。
シースストランドは、コアの少なくとも85%、又はコアの少なくとも90%、又はさらにはコアの少なくとも95%を被覆し得る。1.15の充填比では、スチールシースはコア表面の93.25%を被覆する。
ハイブリッドコード10の充填比が1のとき、断面の形状は「規則的」であり(図1を参照)、すなわちコア2はシースワイヤ4内の星形状の隙間を本質的に完全に充填する。図1に示されるとおり、ハイブリッドコード10の断面は、アラミドコア2の周囲にらせん状に巻き付けられた8本のワイヤ4を有し、各シースワイヤ4は、その断面上の中心が正多角形の頂点上に配置される。アラミドコアは、シースフィラメントによって締め付けられ、複雑な形状(この図では星型)になっているところが示される。
以下に記載されるハイブリッドコードを作製し、ASTM D−2969に準拠して合計破断点荷重の試験に供した:
実施例1
コア:約6.5N/dTexより高い弾性率を有するp−アラミドで作製された糸、3160dtex、フィラメント数1333本±2%。
シース:直径0.175mmのスチールワイヤ13本
ねじれ角:13.0°
撚り長さ:10.2mm
この例示的コードは、概要に記載されたコード5の実際的な実施形態に相当する。市販の3160dTex糸をコアとして使用した。充填比は0.9969であった。シース及びコアが最適に有効利用された場合の予想合計破断点荷重(計算値)は、1452Nであった。
実施例2
コア:約6.5N/dTexより高い弾性率を有するp−アラミドで作製された糸、3160dtex、フィラメント数1333本±2%。
シース:直径0.15mmのスチールワイヤ15本
ねじれ角:12.8°
撚り長さ:10.2mm
この例示的コードは、概要に記載されたコード6の実際的な実施形態に相当する。市販の3160dTex糸をコアとして使用した。充填比は0.9646であった。シース及びコアが最適に有効利用された場合の予想合計破断点荷重(計算値)は、1324Nであった。
実施例3
コア:共に撚り合わされた2本の3160dtex糸、約6.5N/dTexより高い弾性率を有するp−アラミドで作製されたもので、各糸のフィラメント数は1333本±2%であった。
シース:直径0.175mmのスチールワイヤ17本
ねじれ角:17.0°
撚り長さ:10.2mm
この例示的コードは、概要に記載されたコード7の実際的な実施形態に相当する。市販の3160dTex糸をコアとして使用した。充填比は1.0016であった。シース及びコアが最適に有効利用された場合の予想合計破断点荷重(計算値)は、2290Nであった。
ASTM D−2969に準拠して実際の破断点荷重について実施例1、2及び3のコードを試験した。測定された値を、コア及びシースの理論上の最大荷重の合計に基づき計算した理論値と併せて表1に掲載する。
コアについて、計算値は以下のとおり計算した:
コア最大荷重[N]=糸の引張強さ[N/dTex]*線密度[dTex]
シースの最大荷重は以下のとおり計算した:
シース最大荷重=シースワイヤの本数*ワイヤ破断荷重*引張破断点乗数、ここで、引張破断点乗数は、ねじれ角θの関数として推定される:引張破断点乗数=(cosθ)1.5
直径がd[mm]のワイヤの破断荷重は、実験的に決定するか、又は以下のとおり推定することができる:
ワイヤ破断荷重[N]=スチール引張強度[N/mm2]*1/4*π*(d[mm])2
理論的な強度計算に用いられる値は、以下のとおりである:
−高弾性率p−アラミド引張強さ0.193N/dTex−スチール引張強度2800N/mm2
Figure 2011505506
実施例1、2及び3は、本発明に係るハイブリッドコードの例である。それらの全てが、合計破断点荷重に関して優れた性能を示し、コア及びシースの双方が有効利用されている。5個の供試材の平均値から得られた引張強度の実験値(「実際の破断点荷重」)が、理論値(「計算上の破断点荷重」)と良好に一致していることは明らかである。実施例1、2及び3について、それぞれ、99.31%、100.68%及び93.93%の一致である。より太いコード(実施例3)の破断強度がやや予想を下回るという事実は、単一の糸ではなく、撚り対線のコアを使用したためと考えられる。
本発明のコードの理想的な挙動は図2に見ることができ、これは、実施例2における引張強度のデータを示す(x軸:伸度(%)、y軸:力(N))。滑らかな曲線は、コアとシースとの望ましい同時破断を示している。
他方で、図3は、標準的な低弾性率p−アラミドで作製された従来のコードの挙動を示す。x軸上に歪み(%)をとり、y軸上に荷重(N)をとる。このコードは、直径0.2mmのワイヤ12本によって取り囲まれた3333dTexの標準的なp−アラミドコアを含む構造体である。曲線Cは、試験品に対する合計荷重を示す。曲線Bは、コア糸(すなわち、シースなし)の引張に関するプロットであり、及び曲線Aは、曲線Cと曲線Bとの差であって、スチールシースの寄与に相当する。p−アラミドコアに完全に荷重がかかるかなり前にスチールシースワイヤが破断することは明らかである。この構造体の強度の計算値が1592Nであるのに対し、実験値は1298N(81.54%)である。p−アラミドコアの強度に対する寄与は、わずか318Nに過ぎず、これは純粋なコア強度のわずか51.88%にしか相当しない。従って、標準的なp−アラミドコアが用いられるときのp−アラミドコア強度の有効利用は、約50%である。対照的に、本発明のハイブリッドコードでは、高弾性率p−アラミドが用いられるとき;ほぼ100%のコア強度が有効利用される。

Claims (14)

  1. 少なくとも1本のp−アラミドフィラメントのコアと、
    前記p−アラミドフィラメントの周囲にらせん状に巻回されたスチールストランドのシースと、
    を含み、前記p−アラミドフィラメントが6.5N/dTexより高い弾性率を有する、タイヤ補強用ハイブリッドコード。
  2. 前記スチールストランドが、各々、単一のスチールワイヤからなる、請求項1に記載のハイブリッドコード。
  3. 前記スチールストランドが、各々、複数本のスチールワイヤを共に撚り合わせることによって作製されたケーブルからなる、請求項1に記載のハイブリッドコード。
  4. コアの90%より大きい外表面が、前記シースによって被覆される、請求項1に記載のハイブリッドコード。
  5. 前記ねじれ角が8〜21°である、請求項1に記載のハイブリッドコード。
  6. 前記シースが、0.04mm〜0.125mmの直径を有する細径スチールワイヤで作製される、請求項1に記載のハイブリッドコード。
  7. 1つ又は複数の請求項1に記載のハイブリッドコードと支持母材とを含む、タイヤ用支持構造。
  8. ベルトである、請求項7に記載の支持構造。
  9. カーカスである、請求項7に記載の支持構造。
  10. ビード補強チェーファである、請求項7に記載の支持構造。
  11. 1つ又は複数の請求項1に記載のハイブリッドコードを含むタイヤ。
  12. 6.5N/dTexより高い弾性率を有する少なくとも1本のp−アラミドフィラメントのコアを提供するステップと、
    前記コアに複数のスチールストランドを巻き付けるステップであって、それによりスチールストランドのシースを形成するステップと、
    を含む、ハイブリッドコードの製造方法。
  13. 請求項1に記載のハイブリッドコードを支持母材に埋設するステップを含む、タイヤ用支持構造の製造方法。
  14. 請求項7に記載の支持構造をタイヤ内に組み込むステップを含む、タイヤの製造方法。
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