JP2011253647A - 電線 - Google Patents

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Hiroyuki Yoshimoto
洋之 吉本
Tsunehiko Fuwa
恒彦 不破
Takuya Kinoshita
琢哉 木下
Seiichiro Otani
誠一郎 大谷
Yasuyuki Yamaguchi
安行 山口
Takeshi Sekiguchi
岳史 関口
Takeshi Shimono
武司 下野
Masamichi Sukegawa
勝通 助川
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Abstract

【課題】高い放電開始電圧及び耐電圧、優れた耐熱性を有し、耐磨耗性にも優れ、巻き線加工時の治具によるストレスに耐えうるだけの高い機械的強度をもつ電線を提供する。
【解決手段】本発明は、導体と、前記導体の外周に形成される第一の絶縁層と、第一の絶縁層の外周に形成され、溶融加工可能なフッ素樹脂、又は、ポリテトラフルオロエチレンからなる第二の絶縁層とを有し、前記第一の絶縁層は、溶融加工可能な官能基含有フッ素樹脂からなる層であり、かつ、98%積算粒子径が1〜10μm、平均粒子径が0.3〜5μmである溶融加工可能な官能基含有フッ素樹脂粒子が分散した水性分散体から得られたものであることを特徴とする電線である。
【選択図】なし

Description

本発明は、電線に関する。
自動車やロボットに使用される電線や、モーターに使用されるコイル用の巻き線には、高い放電開始電圧や、耐熱性が要求される。
このような背景の下、特許文献1では、導体と、前記導体を被覆する絶縁皮膜よりなる絶縁電線であって、前記絶縁皮膜が、(A)ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステルイミド樹脂及びH種ポリエステル樹脂から選ばれる1種以上の樹脂と、(B)フッ素樹脂及びポリスルホン樹脂から選ばれる1種以上の樹脂との混合樹脂を、塗布、焼付けして形成された絶縁層を有することを特徴とする絶縁電線が提案されている。
ところで、特許文献2では、(A−1)ヒドロキシル基、カルボキシル基もしくはカルボン酸塩もしくはカルボキシエステル基またはエポキシ基のいずれかを有する含フッ素エチレン性単量体の少なくとも1種を単量体の全量に対して0.05〜30モル%共重合してえられる含フッ素エチレン性重合体と、(B−1)無機充填剤またはあらかじめ不溶化された有機充填剤とからなる樹脂組成物であって、該(A−1)成分が1〜99.5重量%、該(B−1)成分が0.5〜99重量%からなる樹脂組成物が提案されている。
また、特許文献3では、厨房機器、オフィスオートメーション機器用の塗料として用いる水性分散体の製造方法として、フッ素樹脂粒子を気体雰囲気下で粉砕する工程(1)、前記工程(1)で粉砕されたフッ素樹脂粒子を水性媒体に分散させ、50〜10000kg/cmの圧力下、幅50〜500μmの通路を通過させることによりフッ素樹脂粒子を更に粉砕する工程(2)を含むことを特徴とする、98%積算粒子径が1〜10μm、かつ、平均粒子径が0.3〜5μmであるフッ素樹脂粒子が分散した水性分散体の製造方法が提案されている。
特開2010−67521号公報 国際公開第97/15623号パンフレット 特開2008−260864号公報
しかしながら、自動車やロボットに使用される機器、並びに、モーターに対する小型化や高出力化の要求を受け、そこで使用される電線やコイルに流れる電流の密度も大きくなり、また、巻き線の密度も高くなる傾向にあるので、従来の電線では達成できなかった高い性能を有する電線が求められている。
本発明の課題は、高い放電開始電圧及び耐電圧、優れた耐熱性を有し、耐磨耗性にも優れ、巻き線加工時の治具によるストレスに耐えうるだけの高い機械的強度をもつ電線を提供することにある。
本発明は、導体と、前記導体の外周に形成される第一の絶縁層と、第一の絶縁層の外周に形成され、溶融加工可能なフッ素樹脂、又は、ポリテトラフルオロエチレンからなる第二の絶縁層とを有し、前記第一の絶縁層は、溶融加工可能な官能基含有フッ素樹脂からなる層であり、かつ、98%積算粒子径が1〜10μm、平均粒子径が0.3〜5μmである溶融加工可能な官能基含有フッ素樹脂粒子が分散した水性分散体から得られたものであることを特徴とする電線である。
溶融加工可能な官能基含有フッ素樹脂は、カルボキシル基、カルボニル基、ヒドロキシル基、カルボン酸塩基、カルボキシエステル基、エポキシ基、及び、アミノ基からなる群から選択される少なくとも1種の官能基を有することが好ましい。
水性分散体は、懸濁重合により得られたフッ素樹脂粒子を気体雰囲気下で粉砕し、粉砕されたフッ素樹脂粒子を水性媒体に分散し、水性媒体に分散させたフッ素樹脂粒子を、50〜10000kg/cmの圧力下、幅50〜500μmの通路を通過させることにより、更に粉砕して得られたものであることが好ましい。
第二の絶縁層は、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体からなることが好ましい。
本発明の電線は、上記構成からなるので、高い放電開始電圧及び耐電圧、優れた耐熱性を有し、かつ耐磨耗性にも優れる。また、導体と被覆材との接着性にも優れる。
本発明の電線は、導体と、前記導体の外周に形成される第一の絶縁層と、第一の絶縁層の外周に形成され、溶融加工可能なフッ素樹脂、又は、ポリテトラフルオロエチレンからなる第二の絶縁層とを有し、前記第一の絶縁層は、溶融加工可能な官能基含有フッ素樹脂からなる層であり、かつ、98%積算粒子径が1〜10μm、平均粒子径が0.3〜5μmである溶融加工可能な官能基含有フッ素樹脂粒子が分散した水性分散体から得られたものであることを特徴とする。
本発明の電線は、上記構成を有することにより、高い放電開始電圧及び耐電圧、優れた耐熱性を有し、かつ耐磨耗性にも優れる。また、導体と被覆材との接着性、絶縁性にも優れる。そのため、高電圧を負荷する用途、例えば、モーター用のコイル等に好適に利用できる。
なお、「導体の外周に形成される第一の絶縁層」という場合、該第一の絶縁層は、導体と接することとなる。同様に、「第一の絶縁層の外周に形成される第二の絶縁層」という場合、該第二の絶縁層は、第一の絶縁層と接することとなる。
溶融加工可能な官能基含有フッ素樹脂は、カルボキシル基、カルボニル基、ヒドロキシル基、カルボン酸塩基、カルボキシエステル基、エポキシ基、及び、アミノ基からなる群から選択される少なくとも1種の官能基を有することが好ましい。溶融加工可能な官能基含有フッ素樹脂が有する官能基としてより好ましくは、カルボキシ基、シアノ基、エポキシ基、及び、ヒドロキシル基からなる群より選択される少なくとも1種の基であり、中でも、ヒドロキシル基が特に好ましい。上記溶融加工可能な官能基含有フッ素樹脂は、官能基を主鎖末端又は側鎖の何れかに有するものであってもよいし、主鎖末端及び側鎖の両方に有するものであってもよい。
上記溶融加工可能な官能基含有フッ素樹脂は、テトラフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、フッ化ビニル、及び、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)からなる群より選択される少なくとも1種の含フッ素エチレン性単量体を重合することにより得られる含フッ素重合体からなるものが好ましい。
上記溶融加工可能な官能基含有フッ素樹脂は、導体との接着性を向上させる観点から、カルボキシル基、カルボニル基、ヒドロキシル基、カルボン酸塩基、カルボキシエステル基、エポキシ基、及び、アミノ基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有する官能基含有含フッ素エチレン性単量体と、上記の官能基を有さない含フッ素エチレン性単量体とを共重合して得られる官能基含有含フッ素エチレン性重合体からなるものが好ましい。官能基含有含フッ素エチレン性単量体が有する官能基としては、カルボキシル基、シアノ基、エポキシ基、及び、ヒドロキシル基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基が好ましく、中でも、ヒドロキシル基が好ましい。
上記官能基含有含フッ素エチレン性単量体としては、例えば、国際公開第98/51495号パンフレットに記載のものが挙げられ、下記式:
CX=CX−R−CHOH
(X、Xは同じか又は異なり、水素原子又はフッ素原子であり、Rは炭素数1〜40の2価のアルキレン基、炭素数1〜40の含フッ素オキシアルキレン基、炭素数1〜40のエーテル結合を含む含フッ素アルキレン基又は炭素数1〜40のエーテル結合を含む含フッ素オキシアルキレン基を表わす。)で示される単量体が好ましい。
上記官能基含有含フッ素エチレン性単量体は、重合体中の単量体全量の0.05〜30モル%であることが好ましい。
上記官能基を有さない含フッ素エチレン性単量体は、テトラフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、フッ化ビニル、及び、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)よりなる群から選択される少なくとも1種の含フッ素エチレン性単量体であることが好ましい。
上記溶融加工可能な官能基含有フッ素樹脂は、官能基含有含フッ素エチレン性単量体/テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体、官能基含有含フッ素エチレン性単量体/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、官能基含有含フッ素エチレン性単量体/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体、官能基含有含フッ素エチレン性単量体/クロロトリフルオロエチレン/テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体、官能基含有含フッ素エチレン性単量体/エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体、官能基含有含フッ素エチレン性単量体/エチレン/テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体、官能基含有含フッ素エチレン性単量体/ビニリデンフルオライド/テトラフルオロエチレン共重合体、及び、官能基含有含フッ素エチレン性単量体/ビニリデンフルオライド/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体よりなる群から選択される少なくとも1種の重合体からなるものであることが好ましい。
上記溶融加工可能な官能基含有フッ素樹脂は、パーフルオロ重合体からなるものであってもよいし、非パーフルオロ重合体からなるものであってもよい。上記溶融加工可能な官能基含有フッ素樹脂は、パーフルオロ重合体からなるものであることが好ましく、官能基含有含フッ素エチレン性単量体/テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体からなるものも好ましい。テトラフルオロエチレン単位70〜99モル%とPAVE単位1〜30モル%からなる共重合体であることが好ましく、テトラフルオロエチレン単位80〜97モル%とPAVE単位3〜20モル%からなる共重合体であることがより好ましい。テトラフルオロエチレン単位が70モル%未満では機械物性が低下する傾向があり、99モル%をこえると融点が高くなりすぎ成形性が低下する傾向がある。なお、本明細書中で、「パーフルオロ重合体」は、主鎖を構成する炭素原子に結合する水素原子が全てフッ素原子で置換されている重合体であればよく、例えば、上記溶融加工可能な官能基含有フッ素樹脂が有する官能基には水素原子が含まれていてもよい。
上記溶融加工可能な官能基含有フッ素樹脂は、融点が280〜310℃であることが好ましい。より好ましくは、285〜300℃である。上記融点は、DSC装置を用い、10℃/分の速度で昇温したときの融解熱曲線から求めることができる。
第一の絶縁層は、98%積算粒子径が1〜10μm、平均粒子径が0.3〜5μmである溶融加工可能な官能基含有フッ素樹脂粒子が分散した水性分散体から得られたものである。上記官能基含有フッ素樹脂粒子の平均粒子径は、0.3〜1μmであることが好ましい。
第一の絶縁層を構成する溶融加工可能な官能基含有フッ素樹脂は、上記溶融加工可能な官能基含有フッ素樹脂粒子から形成されたものである。
水性分散体は、懸濁重合により得られたフッ素樹脂粒子(以下、「フッ素樹脂粒子(1)」ともいう。)を気体雰囲気下で粉砕し、粉砕されたフッ素樹脂粒子(以下、「フッ素樹脂粒子(2)」ともいう。)を水性媒体に分散させ、水性媒体に分散させたフッ素樹脂粒子を、50〜10000kg/cmの圧力下、幅50〜500μmの通路を通過させることにより、更に粉砕して得られたものである。
上記98%積算粒子径とは、粒子径から換算した体積の最小点からの積算値が98%の点の粒子径をいう。フッ素樹脂粒子(2)の98%積算粒子径及び平均粒子径は、湿式フローシステムによるレーザー回折式粒度分布解析装置により、懸濁液試料の光散乱強度分布からミーの理論に基づき解析、演算して決定されるものである。また、本明細書中で別段のことわりなく「通路」という場合、上述した幅50〜500μmの通路を意味する。
上記懸濁重合は、通常の方法で行うことができ、特に限定されない。例えば、懸濁重合は、重合開始剤及び水性媒体の存在下に、含フッ素エチレン性単量体を重合してフッ素樹脂粒子(1)を得るものであってもよい。上記含フッ素エチレン性単量体は、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。例えば、上記含フッ素エチレン性単量体は、上述した官能基含有含フッ素エチレン性単量体及び官能基を有さない含フッ素エチレン性単量体であることが好ましい。上記懸濁重合は、含フッ素エチレン性単量体とフッ素非含有エチレン性単量体とを重合するものであってもよい。
上記懸濁重合は、例えば、撹拌機が備えられた耐圧反応容器で、温度及び圧力を調整して水性媒体を攪拌しながら行うことができる。上記懸濁重合は、上述の水性媒体中に含フッ素エチレン性単量体を連続的に供給しながら行うこともできる。上記懸濁重合は、2種以上の含フッ素エチレン性単量体を供給しながら行うものであってもよいし、含フッ素エチレン性単量体とフッ素非含有エチレン性単量体とを供給しながら行うものであってもよい。
上記懸濁重合において、重合温度、重合圧力等の重合条件は、特に限定されず、使用する含フッ素エチレン性単量体の量等に応じて、適宜選択することができるが、重合温度としては、5〜100℃であることが好ましく、30〜90℃であることがさらに好ましい。重合圧力としては、0.03〜3.0MPaであることが好ましい。
通常、上記懸濁重合の後に、反応容器から得られたフッ素樹脂粒子(1)を回収する。回収方法は特に限定されず、例えば、反応容器内の水性媒体に浮かんでいるフッ素樹脂粒子(1)をすくい出すこと等によって回収することができる。
回収されたフッ素樹脂粒子(1)は、通常の方法で凝析・乾燥することができる。フッ素樹脂粒子(1)は、98%積算粒子径が100〜2000μm、かつ、平均粒子径が25〜1000μmであることが好ましい。
フッ素樹脂粒子(1)は、気体雰囲気下で粉砕(以下、「乾式粉砕」ともいう。)される。この乾式粉砕により、フッ素樹脂粒子(2)が得られる。上記乾式粉砕を行うことで、上記通路を通過させることにより行う粉砕を効率よく進行させることができる。
重合上がりの水性分散体や湿式粉砕後の水性分散体を高圧で狭い通路を通過させる場合、粉砕が効率よく進行しないという問題が発生するおそれがある。この理由としては明確ではないが、フッ素樹脂粒子は柔らかく繊維化しやすいことから、無機系の粒子のようには粉砕されにくいと考えられること、及び、フッ素樹脂の水性分散体は泡が発生すると消泡しにくく、重合時や湿式粉砕時に泡が発生すると、その泡が狭い通路を通過する際に加えられるエネルギーを吸収し、粉砕が阻害されること、が理由ではないかと推測される。この問題は、上記乾式粉砕を行うことにより解決することができる。なお、上記気体雰囲気の気体は特に限定されず、例えば、大気中で粉砕を行ってもよい。
上記乾式粉砕は、気体雰囲気下で、フッ素樹脂粒子同士、又は、フッ素樹脂粒子と壁や物とを衝突させ、その衝突力や摩擦力などで粒子を粉砕するものであることが好ましい。上記乾式粉砕は、液体を含まない状態で固形物を粉砕する装置を用いて行うことが好ましく、例えば、ビーズ(メディア)ミル、ジェットミル、ローラーミル、カッターミル、ハンマーミル等の粉砕装置を用いて行うことができる。
上記乾式粉砕は、フッ素樹脂粒子(2)の98%積算粒子径が上記通路の幅以下となるまで粉砕することが好ましい。より好ましくは、フッ素樹脂粒子(2)の98%積算粒子径を上記通路の幅の80%以下、更に好ましくは50%以下の大きさとなるまで行う。フッ素樹脂粒子(2)の98%積算粒子径が上記通路の幅を超えると、該通路に粒子が閉塞するなど、水性媒体に分散させたフッ素樹脂粒子の粉砕が円滑に行えないおそれがある。上記フッ素樹脂粒子(2)は、98%積算粒子径が上記通路の幅以下であることが好ましく、60μm以下であることがより好ましく、40μm以下であることが更に好ましい。このような粒子径を得ることが困難である点で、湿式粉砕は好ましくない。
上記フッ素樹脂粒子(2)を所望の粒子径とするために、ふるいや風力による分級を行ってもよい。乾式粉砕によって得られた粒子は容易に分級することができるので、分級が比較的困難である湿式粉砕と比較して有利である。
フッ素樹脂粒子(2)を水性媒体に分散させる方法は、特に限定されない。上記水性媒体としては特に制限されず、水、アルコール等の有機溶媒、界面活性剤等を含むものが挙げられ、粉砕を効率的に行うことができる点で、上記溶融加工可能な官能基含有フッ素樹脂を溶解しないものであることが好ましい。
上記水性媒体は、水と界面活性剤とを含むものであることが好ましい。上記界面活性剤としては、炭化水素系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、シリコン系界面活性剤、及び、アセチレン系界面活性剤からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。上記界面活性剤は、シリコン系界面活性剤、アセチレン系界面活性剤、及び、フッ素系界面活性剤からなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましく、これらと炭化水素系界面活性剤を組み合わせて使用することも好ましい。また、上記水性媒体は、塗装膜の加熱乾燥後に塗膜中に界面活性剤が残存せず、且つ、環境に影響が少ない点から、水とアセチレン系界面活性剤とを含むものであることが好ましい。
水性媒体に分散されたフッ素樹脂粒子(2)は、50〜10000kg/cmの圧力下、幅50〜500μmの通路を通過させることにより更に粉砕される。フッ素樹脂粒子を分散させた水性媒体を50〜10000kg/cmの圧力下、幅50〜500μmの通路に通過させることにより、フッ素樹脂粒子にエネルギーが加えられて粉砕される。すなわち、フッ素樹脂粒子が高圧で狭い通路を通過する際の衝撃力や真空作用によるキャビテーション等により粉砕、分散、乳化されることとなる。上記通路を一回通して粉砕したフッ素樹脂粒子を含む水性媒体は、必要に応じて、上記通路に複数回繰り返して通過させて粉砕を繰り返してもよい。以下、50〜10000kg/cmの圧力下、幅50〜500μmの通路を通過させることにより行われる粉砕を「高圧乳化粉砕」ともいう。
上記高圧乳化粉砕の方法としては、(i)フッ素樹脂粒子が分散した水性媒体に超高圧の圧力エネルギーを与え、途中で2流路に分岐させ、再度合流する部分で対向衝突させて、粉砕・分散・乳化を行う方法(噴射対向衝突法)、(ii)制御ノズルで高圧化された水性媒体を噴出させ、多段減圧部で高圧から常圧状態に段階的に圧力を下げていき、粉砕・分散・乳化を行う方法(貫通法)、等が挙げられる。
上記圧力は、100〜5000kg/cmであることが好ましく、300〜3000kg/cmであることがより好ましい。上記圧力が低すぎると、粉砕が不充分となるおそれがあり、上記圧力が高すぎると、圧力に見合った効果が得られず経済的ではない。上記通路の幅は、加える圧力やフッ素樹脂粒子の粒子径等により異なるが、70〜300μmであることが好ましい。
なお、上記通路の形状は特に制限されず、円筒状であっても多面体状であってもよく、いわゆるノズルと呼ばれるものであってもよい。上記の「通路の幅」とは、通路のうち最も断面積の小さい箇所の最大の断面径をいう。例えば、通路の断面が真円である場合にはその通路のうち最も狭い箇所の直径をいい、楕円である場合にはその通路のうち最も狭い箇所の長軸の長さをいい、多角形である場合にはその通路のうち最も狭い箇所の最も長い対角線の長さをいう。
上記高圧乳化粉砕により、98%積算粒子径が1〜10μm、かつ、平均粒子径が0.3〜5μmである溶融加工可能な官能基含有フッ素樹脂粒子を得ることができる。
上述したように、粉砕手段として高圧で狭い通路を通過させること、更に前処理を施してから狭い通路を通過させること、前処理を乾式粉砕としたこと、これらを組み合わせることで、上記溶融加工可能な官能基含有フッ素樹脂粒子を98%積算粒子径が1〜10μm、かつ、平均粒子径が0.3〜5μmであるものとすることができる。第一の絶縁層を構成する溶融加工可能な官能基含有フッ素樹脂が、このような溶融加工可能な官能基含有フッ素樹脂粒子から形成されることで、第一の絶縁層の層厚を薄くすることができ、更に、第一の絶縁層はクラック性及び仕上がり性に優れたものとなる。
上記高圧乳化粉砕により、水性媒体に溶融加工可能な官能基含有フッ素樹脂粒子が分散した水性分散体が得られる。上記水性分散体は、98%積算粒子径が1〜10μm、平均粒子径が0.3〜5μmである溶融加工可能な官能基含有フッ素樹脂粒子が分散したものである。上記平均粒子径が0.3μm未満であると、クラックの発生が多くなるおそれがあり、98%積算粒子径が10μmを超えると、導体に塗布して第一の絶縁層を形成する際に、均一な層厚とすることが難しくなるおそれがある。
上記水性分散体中の溶融加工可能な官能基含有フッ素樹脂粒子の98%積算粒子径及び平均粒子径は、遠心沈降式粒度分布測定装置により、液体中の粒子を強制的に沈降させ、その沈降状態を光透過法で測定し、ストークスの沈降式に従ってミーの理論に基づき解析、演算して決定されるものである。
上記水性分散体は、フッ素樹脂粒子の粒子径が上記範囲内であるため、粉砕前の分散液と比べて粒子の沈降が遅く、また、沈降してもケーキング(強固に凝集して再分散が困難な状態となること)を起こし難いという優れた効果を奏するものである。また、粒子径が小さいことにより、粒子同士の相互作用が働き、チクソトロピック性が高くなることによって沈降を防止するという優れた効果をも奏する。
上記水性分散体は、特開2008−260864号公報に記載された方法によっても得ることができる。
上記水性分散体は、輸送効率や塗装効率に優れる点で、固形分濃度が15質量%以上であることが好ましく、18質量%以上であることがより好ましく、上記範囲内であれば、50質量%以下とすることができる。上記水性分散体の固形分濃度は、加熱残存質量測定法により測定することができる。
上記水性分散体は、水性媒体に溶融加工可能な官能基含有フッ素樹脂粒子が分散したものである。上記水性媒体としては、上述のフッ素樹脂粒子(2)を分散させる水性媒体と同様に、水、アルコール等の有機溶媒、界面活性剤等を含むものが挙げられ、上記溶融加工可能な官能基含有フッ素樹脂を溶解しないものであることが好ましい。上記水性媒体は、水と界面活性剤とを含むものであることが好ましい。好ましい界面活性剤としては、フッ素樹脂粒子(2)を分散させる水性媒体と同じである。水とアセチレン系界面活性剤とを含むものであることがより好ましい。
上記第一の絶縁層は、上記水性分散体を導体上に塗布し、焼成して形成されたものであることが好ましい。
上記水性分散体の塗布は、1回のみでもよいし、複数回行ってもよい。複数回の塗布により、第一の絶縁層のピンホールを減少させることができる。
上記焼成は、従来公知の方法により行うことができる。塗布した混合液を焼成前に乾燥してもよい。焼成の温度としては、例えば、90〜250℃であることが好ましい。第一の絶縁層の焼成温度としてより好ましくは、100〜200℃である。
本発明の電線は、第一の絶縁層の外周に形成され、溶融加工可能なフッ素樹脂、又は、ポリテトラフルオロエチレン〔PTFE〕からなる第二の絶縁層を有する。上記第二の絶縁層を有することによって、第一の絶縁層の厚みを薄くすることができる。第一の絶縁層に用いられる溶融加工可能な官能基含有フッ素樹脂は高価であるため、コスト削減の観点から使用量を減らすことが好ましい。上記第二の絶縁層を形成することで、第一の絶縁層の厚みを薄くしたとしても、高い放電開始電圧及び耐電圧を有するとともに、優れた耐熱性を有し、更に優れた耐磨耗性を有するものとすることができる。また、導体との優れた密着性を有する電線とすることもできる。
溶融加工可能なフッ素樹脂としては、例えば、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、クロロトリフルオロエチレン/テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン/テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体、ポリビニリデンフルオライド、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体等が挙げられる。中でも、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体〔PFA〕が好ましい。
第二の絶縁層は、PFA、又は、PTFEからなるものであることが好ましい。また、第二の絶縁層は、溶融加工可能なフッ素樹脂からなることが好ましく、PFAからなるものであることがより好ましい。以下に、第二の絶縁層を形成するためのPFA及びPTFEについて説明する。
〔PFA〕
上記第二の絶縁層を形成するためのPFAとしては、特に限定されないが、テトラフルオロエチレン単位70〜99モル%とPAVE単位1〜30モル%からなる共重合体であることが好ましく、テトラフルオロエチレン単位80〜97モル%とPAVE単位3〜20モル%からなる共重合体であることがより好ましい。テトラフルオロエチレン単位が70モル%未満では機械物性が低下する傾向があり、99モル%をこえると融点が高くなりすぎ成形性が低下する傾向がある。
上記PAVEとしては、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)〔PMVE〕、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)〔PEVE〕、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)〔PPVE〕、及び、パーフルオロ(ブチルビニルエーテル)からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、なかでも、PMVE、PEVE及びPPVEからなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましく、PMVEであることが更に好ましい。
PFAは、テトラフルオロエチレン、PAVE、並びに、テトラフルオロエチレン及びPAVEと共重合可能な単量体からなる共重合体であってもよく、当該単量体としては、ヘキサフルオロプロピレン、CX=CX(CF(式中、X、X及びXは、同一若しくは異なって、水素原子又はフッ素原子を表し、Xは、水素原子、フッ素原子又は塩素原子を表し、nは2〜10の整数を表す。)で表されるビニル単量体、及び、CF=CF−OCH−Rf(式中、Rfは炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるアルキルパーフルオロビニルエーテル誘導体等が挙げられる。
上記アルキルパーフルオロビニルエーテル誘導体としては、Rfが炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基であるものが好ましく、CF=CF−OCH−CFCFがより好ましい。
PFAは、テトラフルオロエチレン及びPAVEと共重合可能な単量体に由来する単量体単位が0.1〜10モル%であり、テトラフルオロエチレン単位及びPAVE単位が合計で90〜99.9モル%であることが好ましい。共重合可能な単量体単位が0.1モル%未満であると成形性、耐環境応力割れ性及び耐ストレスクラック性に劣りやすく、10モル%をこえると、耐熱性、機械特性、生産性などに劣る傾向にある。
上記第二の絶縁層を形成するためのPFAとしては、372℃におけるMFRが5〜80g/10分であることが好ましい。上記MFRは、ASTM D3159に準拠し、メルトインデクサー(東洋精機社製)を用いて、融点より70℃高い温度、5kg荷重下で内径2mm、長さ8mmのノズルから10分間あたりに流出するポリマーの質量(g/10分)である。
〔PTFE〕
上記第二の絶縁層を形成するためのPTFEは、テトラフルオロエチレン単独重合体であってもよいし、変性ポリテトラフルオロエチレン〔変性PTFE〕であってもよい。上記「変性PTFE」は、得られる共重合体に溶融加工性を付与しない程度の少量の共単量体をテトラフルオロエチレンと共重合してなるものを意味する。上記少量の共単量体としては特に限定されず、例えば、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン、トリフルオロエチレン(3FH)、PAVE、パーフルオロ(アルコキシビニルエーテル)、(パーフルオロアルキル)エチレン等が挙げられる。上記少量の共単量体は、1種又は2種以上を用いることができる。
上記少量の共単量体が上記変性ポリテトラフルオロエチレンに付加されている割合は、その種類によって異なるが、例えば、PAVE、パーフルオロ(アルコキシビニルエーテル)等を用いる場合、通常、上記テトラフルオロエチレンと上記少量の共単量体との合計質量の0.001〜1質量%であることが好ましい。
ポリテトラフルオロエチレンとしては、耐熱性の観点で、融点が320℃以上のものが好ましい。
上記第二の絶縁層を形成するためのポリテトラフルオロエチレンとしては、標準比重(SSG)が2.13〜2.21であることが好ましい。上記SSGは、ASTM D4895に準拠して測定したものである。
第二の絶縁層が溶融加工可能なフッ素樹脂からなるものである場合、第二の絶縁層の形成方法は、溶融加工可能なフッ素樹脂を含む塗料を第一の絶縁層上に塗布し、焼成して形成するものであってもよいし、溶融加工可能なフッ素樹脂を溶融押出成形することにより形成するものであってもよい。溶融押出成形することにより形成されるものであることがより好ましい。
第二の絶縁層が、溶融加工可能なフッ素樹脂を含む塗料を第一の絶縁層上に塗布し、焼成して形成されるものである場合、焼成の条件は使用するフッ素樹脂の種類等によって適宜設定すればよいが、例えば、上記焼成は270〜320℃で行うことが好ましい。
第二の絶縁層が溶融加工可能なフッ素樹脂を溶融押出成形することにより形成されるものである場合、溶融押出成形の条件は使用するフッ素樹脂の種類等によって適宜設定すればよいが、例えば、360〜400℃で行うことが好ましい。
第二の絶縁層がポリテトラフルオロエチレンからなるものである場合、第二の絶縁層の形成方法は、ペースト押出により形成するものであってもよいし、国際公開2008/102878号パンフレットに記載されているようにポリテトラフルオロエチレンの1次粒子の分散液の押出成形を行うことにより形成するものであってもよい。
第一の絶縁層及び第二の絶縁層は、無機顔料を含んでもよい。上記無機顔料は成形する際に安定なものが好ましく、例えば、チタン、鉄の酸化物、カーボン粉末などが挙げられる。上記無機顔料は、電線を構成するいずれの絶縁層に含まれていてもよい。
第一の絶縁層及び第二の絶縁層は、また、フィラー、密着付与剤、酸化防止剤、潤滑剤、染料等を含むものであってもよい。上記無機顔料、フィラー、密着付与剤、酸化防止剤、潤滑剤、染料等は、電線を構成するいずれの絶縁層に含まれていてもよい。
本発明の電線は、各絶縁層を形成した後加熱してもよい。上記加熱は、フッ素樹脂の融点付近の温度で加熱してもよい。
第一の絶縁層及び第二の絶縁層の膜厚は限定されないが、第一の絶縁層及び第二の絶縁層の合計の膜厚が1〜100μmであることが好ましい。本発明によれば、上記合計の膜厚を60μm以下にすることもできるし、40μm以下にすることも可能である。各絶縁層の合計の膜厚を薄くすることは、放熱性能に優れる点で有利である。
上記第一の絶縁層及び第二の絶縁層の膜厚は、電線の用途等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、本発明の電線が、導体及び第一の絶縁層のみからなる場合、第一の絶縁層は、10〜50μmであることが好ましい。導体、第一の絶縁層及び第二の絶縁層のみからなる場合、第一の絶縁層は、3〜15μmであり、第二の絶縁層は、10〜50μmであることが好ましい。
導体の形成材料としては、導電性が良好な材料であれば特に制限されず、例えば、銅、銅合金、銅クラッドアルミニウム、アルミニウム、銀、金、亜鉛めっき鉄、ニッケル等が挙げられる。また、アルミニウム/銅、ニッケル/銅等の多層構造であってもよい。
上記導体は、その形状に特に限定はなく、導体の断面形状は円形であっても平形であってもよい。円形導体である場合、導体の直径は、0.5〜2.0mmであることが好ましい。より好ましくは、0.6〜1.0mmである。
平形導体である場合、導体の厚みは0.5〜3mmであり、幅は0.7〜1.5mmであることが好ましい。
本発明の電線は、導体の厚みに対して絶縁層の厚みが薄いことが好ましい。例えば、本発明の電線が、導体、第一の絶縁層及び第二の絶縁層からなる場合、(第一の絶縁層の厚み+第二の絶縁層の厚み)/(導体の厚み)=0.08以下であることが好ましい。より好ましくは、0.06以下である。このように、導体の太さに対して絶縁層の厚みが薄いことで、高電圧が印加される巻き線等の用途に特に好適に利用することができる。ここで、導体の厚みは、円形導体の場合は、導体の直径を意味する。本発明の電線が、導体及び第一の絶縁層のみからなる場合、(第一の絶縁層の厚み)/(導体の厚み)=0.08以下であることが好ましく、より好ましくは、0.06以下である。
本発明の電線は、絶縁層全体としての比誘電率が2.8以下であることが好ましい。例えば、本発明の電線が、導体及び第一の絶縁層のみからなる場合、下記方法で測定した第一の絶縁層の比誘電率が2.8以下であることが好ましい。本発明の電線が、導体、第一の絶縁層及び第二の絶縁層からなる場合、二層からなる積層体を下記方法で測定したときの比誘電率が2.5以下であることが好ましい。
上記比誘電率は、容量法により測定する値である。測定方法としては、被覆電線を1%食塩水中に入れ、導体と、最外絶縁層の外側間の電気容量を求め、厚み、表面積から比誘電率を求める。測定は、以下の条件で行うことができる。
容量法誘電率測定方法 1kHz(pF/m)
内側電極:芯線(導体)
外側電極:水
測定機器:NF回路設計ブロック製LCZメーター
本発明の電線によれば、絶縁層の放電開始電圧を1200V以上とすることができるし、また、1500V以上とすることも可能である。上記放電開始電圧は、電線を構成する絶縁層全体の放電開始電圧を意味し、例えば、電線が、導体と、第一の絶縁層及び第二の絶縁層とからなる場合、第一の絶縁層及び第二の絶縁層をあわせた絶縁層全体の放電開始電圧である。
上記放電開始電圧は、ツイスト片について、総研電気(株)製DAC−PD−3を用いて、周波数100kHz、電荷量100pCにて測定することができる。
本発明の電線によれば、絶縁層の耐電圧を10kV以上とすることができ、また、15kV以上とすることもできる。上記耐電圧は、電線を構成する絶縁層全体の耐電圧を意味し、例えば、電線が、導体と、第一の絶縁層及び第二の絶縁層とからなる場合、第一の絶縁層及び第二の絶縁層をあわせた絶縁層全体の耐電圧である。
上記耐電圧は、絶縁破壊試験機を用いて、JIS C3003 11.1に準拠して測定することができる。
上記電線は、自動車用電線、ロボット用電線等に好適に使用できる。また、コイルの巻き線(マグネットワイヤー)としても好適に使用でき、本発明の電線を使用すれば巻線加工での損傷を生じにくい。上記巻き線は、モーター、回転電機、圧縮機、変圧器(トランス)等に好適であり、高電圧、高電流及び高熱伝導率が要求され、高密度な巻線加工が必要となる、小型化・高出力化モーターでの使用にも充分に耐えうる特性を有する。また、配電、送電又は通信用の電線としても好適である。
本発明の電線は、特に巻き線として好適であり、中でも、モーターのコイル線として特に有用である。すなわち、本発明は、上記電線からなるコイルでもある。
上記溶融加工可能な官能基含有フッ素樹脂は、プリント基板等の高周波伝送製品上に形成する絶縁層の材料としても好適に使用できる。
基板と、基板上に形成される第一の絶縁層とを有し、前記第一の絶縁層は、上述した溶融加工可能な官能基含有フッ素樹脂からなる層であることを特徴とする高周波伝送製品は、絶縁層と基板とが強固に接着しており、誘電体損が低く、伝送特性に優れる。
上記高周波伝送製品において、第一の絶縁層は、98%積算粒子径が1〜10μm、平均粒子径が0.3〜5μmである溶融加工可能な官能基含有フッ素樹脂粒子が分散した水性分散体から得られたものであることが好ましい。また、水性分散体は、懸濁重合により得られたフッ素樹脂粒子を気体雰囲気下で粉砕し、粉砕されたフッ素樹脂粒子を水性媒体に分散し、水性媒体に分散させたフッ素樹脂粒子を、50〜10000kg/cmの圧力下、幅50〜500μmの通路を通過させることにより、更に粉砕して得られたものであることが好ましい。高周波伝送製品における第一の絶縁層の好ましい形態は、上記電線における第一の絶縁層の好ましい形態と同様である。
上記高周波伝送製品は、更に、第一の絶縁層上に形成され、PAVE、又は、ポリテトラフルオロエチレンからなる第二の絶縁層を有することも好ましい形態の一つである。高周波伝送製品における第二の絶縁層の好ましい形態は、上記電線における第二の絶縁層の好ましい形態と同様である。
つぎに本発明を実施例をあげて説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
(実施例1)
〔官能基含有フッ素樹脂(RAP)粉末の製造(懸濁重合)〕
撹拌機、バルブ、圧力ゲージ、温度計を備えた6リットルのガラスライニング製オートクレーブに純水1500mlを入れ、窒素ガスで充分置換したのち、真空にし、1,2−ジクロロ−1,1,2,2−テトラフルオロエタン(R−114)1500gを仕込んだ。
ついで、下記式(1):
Figure 2011253647
で表されるパーフルオロ−(1,1,9,9−テトラハイドロ−2,5−ビストリフルオロメチル−3,6−ジオキサ−8−ノネノール) 5.0g、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)〔PPVE〕 130g、メタノール 180gを窒素ガスを用いて圧入し、系内の温度を35℃に保った。
撹拌を行いながらテトラフルオロエチレンガス(テトラフルオロエチレン)を内圧が8.0kgf/cmGとなるように圧入した。ついで、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネートの50%メタノール溶液0.5gを窒素を用いて圧入して反応を開始した。
重合反応の進行に伴って圧力が低下するので、7.5kgf/cmGまで圧力が低下した時点でテトラフルオロエチレンガスで8.0kgf/cmGまで再加圧し、降圧、昇圧を繰り返した。
テトラフルオロエチレンガスの供給を続けながら、重合開始からテトラフルオロエチレンガスが約60g消費されるごとに、上記のヒドロキシ基を有する含フッ素エチレン性単量体(上記式(1)で示される化合物)の2.5gを計9回(計22.5g)圧入して重合を継続し、重合開始よりテトラフルオロエチレンが約600g消費された時点で供給を止めオートクレーブを冷却し、未反応モノマー及びR−114を放出した。
得られた共重合体を水洗、メタノール洗浄を行ったのち、真空乾燥することにより710gの白色紛末を得た。得られた粉末の粒子径をレーザー回折式粒度分析装置により測定したところ、平均粒子径が149μm、98%積算粒子径が632μmであった。19F−NMR分析、IR分析により測定した、得られた共重合体の組成はテトラフルオロエチレン/PPVE/(式(1)で示されるヒドロキシ基を有する含フッ素エチレン性単量体)=97.0/2.0/1.0モル%であった。また、赤外スペクトルは3620〜3400cm−1に−OHの特性吸収が観測された。DSC分析によりTm=305℃、DTGA分析により分解開始点365℃、1%熱分解温度Td=375℃であった。高化式フローテスターを用いて直径2000μm、長さ8mmのノズルを用い、372℃で予熱5分間、荷重7kgf/cmGでメルトフローレートを測定したところ32g/10minであった。
〔乾式粉砕〕
上記重合で得られた白色粉末を乾式粉砕した。
乾式粉砕は以下の方法で行った。
装置:ロータースピードミル(商品名、フリッチュ・ジャパン社製)
ローターで粉砕された後、0.12mm径のメッシュを通過した粒子が得られる。
乾式粉砕した粉末(樹脂)を、下記の配合Aを有する分散液とした。
配合A
樹脂 30質量部
水 68.6質量部
シリコン系界面活性剤 0.6質量部(有効成分として)
(商品名、FZ−77、東レダウコーニング社製)
炭化水素系界面活性剤 0.8質量部(有効成分として)
(商品名、TDS80、第一工業製薬社製)
(乳化粉砕工程)
得られた分散液を、以下の装置により表1記載の回数処理した。
装置:ナノ3000(商品名、美粒社製)
高圧で狭いノズルを通した液を壁に衝突させて粉砕する。
得られた水性分散体の固形分濃度、樹脂粒子の平均粒子径をそれぞれ測定した。固形分濃度は30重量%であった。樹脂粒子の平均粒子径は0.53μmであり、98%積算粒子径は2.1μmであった。
(固形分濃度の測定)
アルミカップに試料液を約1g量り入れ、試料の質量を測定した後、加熱乾燥炉を用いて320℃で20分間乾燥し、デシケーター中で室温で20分間放冷した後、残存質量を測定し、下記式より固形分を測定した。
固形分(質量%)=加熱後の試料質量/加熱前の試料質量×100
(98%積算粒子径及び平均粒子径の測定)
専用のセルに試料を入れ、適正な濁度になるように調整したのち、遠心沈降式粒度分布測定装置(堀場製作所製CAPA700)により測定した光散乱強度分布からミーの理論に基づき解析、演算して決定した。
〔電線の製造〕
上述の乾式粉砕により得られたフッ素樹脂粒子を分散させた水性分散体100gを、底面に穴の開いたポリエチレン製ビーカー及び前記ビーカー底面に固定された穴の開いたゴム栓からなるゴム栓付きビーカーに入れた。1.0mm直径の銅線をゴム栓からビーカー内に通し、さらに、銅線の上端をビーカー上面からビーカーの上部に設置された連続式焼成炉中に通した。
上記連続式焼成炉は、長さ2mの焼成炉を3個垂直に直結したものである。この焼成炉は熱風循環式で、炉内温度を下から1番目の炉を90℃、2番目の炉を180℃、3番目の炉を270℃に設定した。
銅線の上端を1m/minの速度で上方に引っ張ることにより、ビーカー内で銅線の表面に混合液が塗付され、続いて銅線を連続式焼成炉中に導入し、絶縁層により被覆された電線を得た。
上記1回の操作で得られた電線の第一の絶縁層の厚みは、6μmであった。
第一の絶縁層上に、PFA(商品名:ネオフロンPFA AP−202、ダイキン工業株式会社製)を、ダイ温度380℃、成形速度20m/分で溶融押し出し成形し、第2層を形成した。
得られた電線は、以下の方法により評価した。
(絶縁層の厚み)
JIS C 3003.5に準拠して測定した。
(放電開始電圧)
放電開始電圧は、ツイスト片について、総研電気(株)製DAC−PD−3を用いて、周波数100kHz、電荷量100pCにて測定を行った。
(耐電圧)
耐電圧は、絶縁破壊試験機を用いて、JIS C3003 11.1に準拠して測定した。
(熱劣化試験後の耐電圧)
JIS C3003 11.1で作成した試料を240℃、200時間熱処理し、室温に戻して耐電圧を測定した。
(耐磨耗性試験)
JIS C3003 10.1.に準拠して行った。
(実施例2〜5)
高圧乳化粉砕における、ノズル径、圧力、及び、パス回数を表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、水性分散体及び電線を得た。また、実施例1と同様に電線の評価を行った。
(比較例1)
乾式粉砕に代えて湿式粉砕を行い、これにより得られた水性分散体について高圧乳化粉砕を行ったこと以外は、実施例1と同様にして重合体粉末の粉砕を行った。
〔湿式粉砕〕
上記実施例1において乾式粉砕前の白色粉末を上述の配合Aを有する分散液とした後、湿式粉砕した。
湿式粉砕は以下の方法により行った。
装置:ホモディスパー(特殊機化工業社製 商品名、TKホモミキサー)
水と界面活性剤中で、高速回転する羽根で粉砕する。
実施例1〜5及び比較例1の粉砕条件を表1に示す。また、実施例1〜5の電線の評価結果を表2に示す。
Figure 2011253647
Figure 2011253647
本発明の電線は、自動車用電線、ロボット用電線等に好適に使用でき、また、コイルの巻き線(マグネットワイヤー)としても好適に利用可能である。

Claims (4)

  1. 導体と、前記導体の外周に形成される第一の絶縁層と、第一の絶縁層の外周に形成され、溶融加工可能なフッ素樹脂、又は、ポリテトラフルオロエチレンからなる第二の絶縁層とを有し、
    前記第一の絶縁層は、溶融加工可能な官能基含有フッ素樹脂からなる層であり、かつ、98%積算粒子径が1〜10μm、平均粒子径が0.3〜5μmである溶融加工可能な官能基含有フッ素樹脂粒子が分散した水性分散体から得られたものである
    ことを特徴とする電線。
  2. 溶融加工可能な官能基含有フッ素樹脂は、カルボキシル基、カルボニル基、ヒドロキシル基、カルボン酸塩基、カルボキシエステル基、エポキシ基、及び、アミノ基からなる群から選択される少なくとも1種の官能基を有する
    請求項1記載の電線。
  3. 水性分散体は、懸濁重合により得られたフッ素樹脂粒子を気体雰囲気下で粉砕し、粉砕されたフッ素樹脂粒子を水性媒体に分散し、水性媒体に分散させたフッ素樹脂粒子を、50〜10000kg/cmの圧力下、幅50〜500μmの通路を通過させることにより、更に粉砕して得られたものである
    請求項1又は2記載の電線。
  4. 第二の絶縁層は、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体からなる
    請求項1、2又は3記載の電線。
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