JP2011251552A - マスタシリンダ - Google Patents

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Abstract

【課題】無効液量を低減することができるマスタシリンダの提供。
【解決手段】有底筒状のシリンダ本体15に形成された環状のシール溝30内に保持されるカップシール35の内周でピストン19が摺動し、ピストン19とシリンダ本体15とで形成される圧力室68内のブレーキ液を加圧するもので、シール溝30には、シール溝30における底部30aとシリンダ本体開口側の側壁30dとの間に傾斜面30cが形成されている。
【選択図】図2

Description

本発明は、マスタシリンダに関する。
マスタシリンダには、シリンダ本体に形成された環状のシール溝内に保持されるカップシールの内周でピストンが摺動することによりブレーキ液を加圧するものがある(例えば特許文献1参照)。
特開2004−231093号公報
ブレーキ液の加圧時にカップシールが変形すると、その変形分は圧力室の容積が増えることになり、いわゆる無効液量が発生する。
したがって、本発明は、無効液量を低減することができるマスタシリンダの提供を目的とする。
上記目的を達成するために、本発明は、シール溝における底部とシリンダ本体開口側の側壁との間に傾斜面を形成した。
本発明によれば、無効液量を低減することができる。
本発明に係る第1実施形態のマスタシリンダを示す断面図である。 本発明に係る第1実施形態のマスタシリンダの要部を示す部分拡大断面図である。 本発明に係る第2実施形態のマスタシリンダに用いられる自由状態にあるカップシールを示す部分拡大断面図である。 本発明に係る第2実施形態のマスタシリンダに用いられる自由状態にあるカップシールを示す部分拡大背面図である。 本発明に係る第2実施形態のマスタシリンダの要部を示す部分拡大断面図である。 本発明に係る第2実施形態のマスタシリンダに用いられるカップシールの変形例を示す部分拡大断面図であって、(a)は自由状態を、(b)は組付状態をそれぞれ示すものである。 本発明に係る第2実施形態のマスタシリンダに用いられるカップシールの変形例を示す部分拡大断面図であって、(a)は自由状態を、(b)は組付状態をそれぞれ示すものである。 本発明に係る第2実施形態のマスタシリンダに用いられるカップシールの変形例を示す部分拡大断面図であって、(a)は自由状態を、(b)は組付状態をそれぞれ示すものである。 本発明に係る第2実施形態のマスタシリンダのカップシールおよびシール溝の寸法関係等を示す部分拡大断面図であって、(a)はカップシールを、(b)はシール溝をそれぞれ示すものである。 本発明に係る第2実施形態のマスタシリンダを示す部分拡大断面図であって、(a)は非制動状態を、(b)はピストン戻し行程初期の状態をそれぞれ示すものである。
本発明に係る第1実施形態のマスタシリンダを図1および図2を参照して説明する。
図1中符号11は、図示せぬブレーキブースタを介して導入されるブレーキペダルの操作量に応じた力でブレーキ液圧を発生させるマスタシリンダを示している。このマスタシリンダ11には、重力方向上側にブレーキ液を給排するリザーバ12が取り付けられている。なお、本実施形態においては、マスタシリンダ11に直接リザーバ12を取り付けているが、マスタシリンダ11から離間した位置にリザーバを配して配管で接続するようにしても良い。
マスタシリンダ11は、底部13と筒部14とを有する有底筒状に一つの素材から加工されて形成されるとともに横方向に沿う姿勢で車両に配置されるシリンダ本体15を有している。このシリンダ本体15の開口部16側には、摺動可能に挿入されるプライマリピストン(ピストン)18が設けられている。また、このプライマリピストン18よりもシリンダ本体15の底部13側には、シリンダ本体15に摺動可能に挿入されるセカンダリピストン(ピストン)19が設けられている。プライマリピストン18およびセカンダリピストン19は、シリンダ本体15の筒部14の軸線(以下、シリンダ軸と称す)に直交する断面が円形状の摺動内径部20に摺動可能に案内される。プライマリピストン18およびセカンダリピストン19には、それぞれ底面を有する内周孔18a,19aが形成されており、マスタシリンダ11は、いわゆるプランジャ型のものとなっている。このように、本実施形態におけるマスタシリンダ11は、2つのピストンを有するタンデムタイプのものとなっている。なお、本発明は、上記タンデムタイプのマスタシリンダへの適用に限られるものではなく、プランジャ型のマスタシリンダであれば、シリンダ本体に1つのピストンを配したシングルタイプのマスタシリンダや、3つ以上のピストンを有するマスタシリンダ等のいかなるマスタシリンダにも適用できるものである。
シリンダ本体15には、筒部14の径方向(以下、シリンダ径方向と称す)外側に突出する取付台部22が筒部14の円周方向(以下、シリンダ円周方向と称す)における所定位置に一体に形成されている。この取付台部22には、リザーバ12を取り付けるための取付穴24,25が形成されている。なお、本実施形態においては、取付穴24,25は、互いにシリンダ円周方向における位置を一致させた状態でシリンダ軸方向における位置をずらして形成されている。
シリンダ本体15の筒部14の取付台部22側には、ブレーキ液を図示せぬブレーキ装置に供給するための図示せぬブレーキ配管が取り付けられるセカンダリ吐出路26およびプライマリ吐出路27が形成されている。なお、本実施形態においては、これらセカンダリ吐出路26およびプライマリ吐出路27は、互いにシリンダ円周方向における位置を一致させた状態でシリンダ軸方向における位置をずらして形成されている。
シリンダ本体15の摺動内径部20には、シリンダ軸方向における位置をずらして複数具体的には4カ所のいずれも円環状をなすシール溝30、シール溝31、シール溝32およびシール溝33が底部13側から順に形成されている。これらシール溝30〜33は、シリンダ円周方向に環状をなしてシリンダ径方向外側に凹む形状をなしている。
最も底部13側にあるシール溝30は、底部13側の取付穴24の近傍に形成されており、このシール溝30内に円環状のカップシール35が配置され保持されている。
シリンダ本体15におけるシール溝30よりも開口部16側には、底部13側の取付穴24から穿設される連通穴36を筒部14内に開口させるように、筒部14の摺動内径部20からシリンダ径方向外側に凹む環状の開口溝37が形成されている。ここで、この開口溝37と連通穴36とが、シリンダ本体15とリザーバ12とを連通可能に結ぶとともにリザーバ12に常時連通するセカンダリ補給路38を主に構成している。
シリンダ本体15の摺動内径部20には、シリンダ円周方向における取付台部22側に、シール溝30内に開口するとともにシール溝30からシリンダ軸方向に直線状に底部13側に向け若干延出する連通溝41が、シリンダ径方向外側に凹むように形成されている。この連通溝41は、底部13とシール溝30との間であって底部13の近傍となる位置に形成されたセカンダリ吐出路26とシール溝30とを後述のセカンダリ圧力室68を介して連通させるものである。
シリンダ本体15には、シリンダ軸線方向における上記開口溝37のシール溝30に対し反対側つまり開口部16側に、上記シール溝31が形成されており、このシール溝31内に、円環状の区画シール42が配置され保持されている。
シリンダ本体15のシール溝31よりも開口部16側であって開口部16側の取付穴25の近傍に、上記したシール溝32が形成されている。このシール溝32内には、シール溝32に保持されるように、円環状のカップシール45が配置されている。
シリンダ本体15におけるこのシール溝32の開口部16側には、開口部16側の取付穴25から穿設される連通穴46を筒部14内に開口させるように、筒部14の摺動内径部20からシリンダ径方向外側に凹む環状の開口溝47が形成されている。ここで、この開口溝47と連通穴46とが、シリンダ本体15とリザーバ12とを連通可能に結ぶとともにリザーバ12に常時連通するプライマリ補給路48を主に構成している。
シリンダ本体15の摺動内径部20のシール溝32の底部13側には、シリンダ円周方向における取付台部22側に、シール溝32に開口するとともにシール溝32からシリンダ軸方向に直線状に底部13側に向け若干延出する連通溝51が、シリンダ径方向外側に凹むように形成されている。この連通溝51は、シール溝31の近傍となる位置に形成されたプライマリ吐出路27とシール溝32とを後述するプライマリ圧力室85を介して連通させるものである。
シリンダ本体15における上記開口溝47のシール溝32に対し反対側つまり開口部16側にシール溝33が形成されており、このシール溝33内に円環状の区画シール52が配置され保持されている。
シリンダ本体15の底部13側に嵌合されるセカンダリピストン19は、円筒部55と、円筒部55の軸線方向における一側に形成された底部56とを有する有底円筒状をなしている。上記内周孔19aは、これら円筒部55と底部56とにより形成されている。セカンダリピストン19は、円筒部55をシリンダ本体15の底部13側に配置した状態で、シリンダ本体15の摺動内径部20に設けられたカップシール35および区画シール42のそれぞれの内周に摺動可能に嵌合されている。また、円筒部55の底部56に対し反対側の端部の外周側には、他の部分よりも外径寸法が若干小さい環状の段部59が形成されている。この段部59には、その底部56側にシリンダ径方向に貫通するポート60が複数放射状に形成されている。
セカンダリピストン19とシリンダ本体15の底部13との間には、図示せぬブレーキペダル側(図1における右側)から入力がない非制動状態でこれらの間隔を決めるセカンダリピストンスプリング62を含む間隔調整部63が設けられている。この間隔調整部63は、シリンダ本体15の底部13に当接する係止部材64と、セカンダリピストン19の底部56に当接する係止部材65と、係止部材64に一端部が固定されるとともに係止部材65を所定範囲内でのみ摺動自在に支持する軸部材66とを有している。上記セカンダリピストンスプリング62は、両側の係止部材64,65間に介装されている。
ここで、シリンダ本体15の底部13および筒部14の底部13側とセカンダリピストン19とで囲まれて形成される部分が、セカンダリ吐出路26に液圧を供給するセカンダリ圧力室(圧力室)68となっている。このセカンダリ圧力室68は、セカンダリピストン19がポート60を開口溝37に開口させる位置にあるとき、セカンダリ補給路38に連通するようになっている。
シリンダ本体15の底部13側のシール溝30に設けられたカップシール35は、円環状のベース部90と、ベース部90の内周側からベース部90の軸線方向にほぼ沿って一側に延出する円環状の内周リップ部91と、ベース部90の外周側から内周リップ部91と同側に延出する円環状の外周リップ部92とを有しており、その中心線を含む径方向断面の片側形状がC字状をなしている。
カップシール35は、内周リップ部91の内周がセカンダリピストン19の外周に摺接することになっている。このカップシール35により、セカンダリピストン19がポート60をカップシール35よりも底部13側に位置させた状態では、セカンダリ補給路38とセカンダリ圧力室68との間を密封可能、つまり、セカンダリ圧力室68と、セカンダリ補給路38およびリザーバ12との連通を遮断可能となっている。この状態で、セカンダリピストン19が、シリンダ本体15の摺動内径部20およびシリンダ本体15に保持されたカップシール35および区画シール42の内周で摺動することによって、セカンダリ圧力室68内のブレーキ液を加圧してセカンダリ吐出路26からブレーキ装置に供給することになる。
なお、図示せぬブレーキペダル側から入力がなく、上述のセカンダリピストン19がポート60を開口溝37に開口させる位置(非制動位置)にあるときには、カップシール35のベース部90の内周側が上記セカンダリピストン19の段部59内で段部59に接触しない位置に配されるようになっている。そして、セカンダリピストン19がシリンダ本体15の底部13側へ移動してカップシール35のベース部90の内周側が段部59に当接することで、セカンダリ圧力室68とリザーバ12との連通が遮断されるようになっている。このようなっていることで、ピストンが移動し始めてから圧力室の圧力が発生するまでの、いわゆる無効ストロークの短縮化を図ることができる。
シリンダ本体15の開口部16側に嵌合されるプライマリピストン18は、第1円筒部71と、第1円筒部71の軸線方向における一側に形成された底部72と、底部72の第1円筒部71に対し反対側に形成された第2円筒部73とを有する形状をなしている。上記内周孔18aは、これらのうちの第1円筒部71と底部72とにより形成されている。プライマリピストン18は、第1円筒部71をシリンダ本体15内のセカンダリピストン19側に配置した状態で、シリンダ本体15の摺動内径部20に設けられたカップシール45および区画シール52のそれぞれの内周に摺動可能に嵌合されている。ここで、第2円筒部73の内側には図示せぬブレーキブースタの出力軸が挿入され、この出力軸によって底部72が押圧されることになる。
第1円筒部71の底部72に対し反対側の端部の外周側は、他の部分よりも外径寸法が若干小さい環状の凹部75が形成されている。さらに、第1円筒部71の凹部75には、その底部72側に径方向に貫通するポート76が複数放射状に形成されている。
セカンダリピストン19とプライマリピストン18との間には、図示せぬブレーキペダル側(図1における右側)から入力がない非制動状態でこれらの間隔を決めるプライマリピストンスプリング78を含む間隔調整部79が設けられている。この間隔調整部79は、セカンダリピストン19の底部56に当接する係止部材81と、プライマリピストン18の底部72に当接する係止部材82と、係止部材82に一端部が固定されるとともに係止部材81を所定範囲内でのみ摺動自在に支持する軸部材83とを有している。上記プライマリピストンスプリング78は、両側の係止部材81,82間に介装されている。
ここで、シリンダ本体15の筒部14の開口部16側とプライマリピストン18とセカンダリピストン19とで囲まれて形成される部分が、プライマリ吐出路27に液圧を供給するプライマリ圧力室(圧力室)85となっている。このプライマリ圧力室85は、プライマリピストン18がポート76を開口溝47に開口させる位置にあるとき、プライマリ補給路48に連通するようになっている。
シリンダ本体15のシール溝32に設けられたカップシール45も、カップシール35と同様、円環状のベース部90と、ベース部90の内周側からベース部90の軸線方向にほぼ沿って一側に延出する円環状の内周リップ部91と、ベース部90の外周側から内周リップ部91と同側に延出する円環状の外周リップ部92とを有しており、その中心線を含む径方向断面の片側形状がC字状をなしている。
カップシール45は、内周リップ部91の内周がプライマリピストン18の外周に摺接することになっている。このカップシール45により、プライマリピストン18がポート76をカップシール45よりも底部13側に位置させた状態では、プライマリ補給路48とプライマリ圧力室85との間を密封可能、つまり、プライマリ圧力室85と、プライマリ補給路48およびリザーバ12との連通を遮断可能となっている。この状態で、プライマリピストン18が、シリンダ本体15の摺動内径部20およびシリンダ本体15に保持されたカップシール45および区画シール52の内周で摺動することによって、プライマリ圧力室85内のブレーキ液を加圧してプライマリ吐出路27からブレーキ装置に供給することになる。
なお、図示せぬブレーキペダル側から入力がなく、上述のプライマリピストン18がポート76を開口溝47に開口させる位置(非制動位置)にあるときには、カップシール45のベース部90の内周側が上記プライマリピストン18の凹部75内で凹部75に接触しない位置に配されるようになっている。そして、プライマリピストン18がシリンダ本体15の底部13側へ移動してカップシール45のベース部90の内周側が凹部75に当接することで、プライマリ圧力室85とリザーバ12との連通が遮断されるようになっている。このようなっていることで、ピストンが移動し始めてから圧力室の圧力が発生するまでの、いわゆる無効ストロークの短縮化を図ることができる。
ここで、図1に示されるシリンダ本体15のシール溝30の近傍部分、カップシール35およびセカンダリピストン19のカップシール35の摺接部分とからなるセカンダリ側のシール構造部SSと、シリンダ本体15のシール溝32の近傍部分、カップシール45およびプライマリピストン18のカップシール45の摺接部分とからなるプライマリ側のシール構造部SPとは、同様の構造となっており、以下においては、これらの詳細を、セカンダリ側のシール構造部SSを例にとり、主に図2を参照して説明する。
シール溝30は、最もシリンダ径方向外側にあってシリンダ軸方向に沿う円筒状の溝底部(底部)30aと、溝底部30aのシリンダ底部13側(図2における左側)の端縁部の位置でシリンダ軸方向に直交する環状壁30bと、溝底部30aのシリンダ開口部16側(図2における右側)で溝底部30aと連続し溝底部30aから離間するほど小径となる傾斜面30cと、傾斜面30cのシリンダ開口部16側(図2における右側)の端縁部の位置でシリンダ軸方向に直交する環状壁(側壁)30dとを有している。よって、言い換えれば、シール溝30には、シール溝30における溝底部30aとシリンダ本体開口側(図2における右側)の環状壁30dとの間に傾斜面30cが形成されている。これら溝底部30a、環状壁30b、傾斜面30cおよび環状壁30dは、シリンダ本体15に一体的に形成されている。
傾斜面30cは、シリンダ軸方向位置がシリンダ本体開口側に位置するほど径が比例的に小さくなるテーパ面となっている。言い換えれば、傾斜面30cは、シリンダ軸を包含する面での断面形状が直線状をなす部分円錐面形状となっている。
カップシール35は、内周リップ部91の内周面91aにて、セカンダリピストン19の外周面19aに摺接することになり、ベース部90のシリンダ本体開口側の背面90aにて、その背後にあるシール溝30の環状壁30dに当接し、外周リップ部92のベース部90とは反対側の外周面92aにて、シール溝30の溝底部30aに当接する。
ここで、カップシール35は、図示せぬブレーキペダル側から入力がなく、その内側に嵌合するセカンダリピストン19が非制動位置にあるとき、外周リップ部92の外周面92aがベース部90ほど小径となるように傾斜する形状をなす。
そして、カップシール35は、セカンダリピストン19が非制動位置にあるとき、図2に示すように、ベース部90と外周リップ部92との境界近傍にて、傾斜面30cに当接する。よって、セカンダリピストン19が非制動位置にあるとき、カップシール35は、その状態によって、ベース部90の背面90aの外周側にて、傾斜面30cに当接し、あるいは、外周リップ部92の外周面92aの基端側(ベース部90側)にて、傾斜面30cに当接する。この状態では、溝底部30aおよび傾斜面30cとカップシール35との間に隙間95があり、傾斜面30cおよび環状壁30dとカップシール35との間にも隙間96がある。
上記のように、セカンダリピストン19が非制動位置にある状態から、セカンダリピストン19がシリンダ本体15の底部13側(図2における左側)に移動してセカンダリ圧力室68の液圧が発生する。この液圧をカップシール35はその環状壁30b側から受けることになり、外周リップ部92およびベース部90が上記隙間95,96を埋めるように変形して溝底部30a、傾斜面30cおよび環状壁30dに密着する。この間は、カップシール35の変形によるセカンダリ圧力室68の、カップシール35の変形がない場合と比べての容積増(以下、容積増と称す)によって、セカンダリ圧力室68の液圧が、セカンダリピストン19のストロークに対して上昇せずに、いわゆる無効ストローク状態となる。そして、カップシール35が上記隙間95,96を埋めてシール溝30に密着するように変形した後、セカンダリ圧力室68の液圧は、セカンダリピストン19のストロークに対して本来の上昇率で上昇することになる。
ここで、第1実施形態によれば、シール溝30には、シール溝30における溝底部30aとシリンダ本体開口側の環状壁30dとの間に傾斜面30cが形成されているため、セカンダリピストン19が非制動位置(大気圧下で組み付けた状態)にある状態で、カップシール35の外周リップ部92およびベース部90と、シール溝30の溝底部30aおよび環状壁30dとの間に生じる隙間95,96を小さくできる。よって、隙間95,96を埋めるために必要なカップシール35の変形量を小さくできることから、カップシール35の変形によるセカンダリ圧力室68の容積増つまり無効液量を低減することができ、無効ストロークの短縮化を図ることができる。したがって、応答性を向上することができる。
つまり、図2に二点鎖線で示すように、従来のシール溝30は傾斜面30cが形成されておらず、よって、セカンダリピストン19が非制動位置にあるとき、溝底部30aおよび環状壁30dと、カップシール35の外周リップ部92およびベース部90との隙間が大きい。このため、この隙間を埋めるのに必要なカップシール35の変形量が大きく、よって、カップシール35の変形によるセカンダリ圧力室68の容積増つまり無効液量が大きくなってしまう。これに対し、第1実施形態では、カップシール35に近接するように傾斜面30cが形成されることで、溝底部30aおよび環状壁30dと、外周リップ部92およびベース部90との隙間が狭められているため、無効液量を低減することができるのである。
また、傾斜面30cは、セカンダリピストン19が非制動位置にあるときに、カップシール35のベース部90の外周側に当接するように、あるいはカップシール35の外周リップ部92の基端側に当接するように形成されているため、カップシール35の外周リップ部92およびベース部90とシール溝30の溝底部30aおよび環状壁30dとの間に生じる隙間95,96をより小さくできる。よって、カップシール35の変形によるセカンダリ圧力室68の容積増つまり無効液量をより低減することができ、無効ストロークの一層の短縮化を図ることができる。
なお、以上においては、傾斜面30cが一定角度の部分円錐面形状である場合を例にとり説明したが、溝底部30aの径方向寸法よりも小さい径方向寸法を有していれば、他の形状とすることもできる。
本発明に係る第2実施形態のマスタシリンダを主に図3〜図10を参照して第1実施形態との相違部分を中心に説明する。なお、第1実施形態と同様の部分には同一の符号を付しその説明は略す。
第2実施形態においては、図3および図4に示すように、カップシール35の外周リップ部92の外周面92aのベース部90側からベース部90の背面90aにかけて、シリンダ本体15の軸方向(図3の左右方向)に延びる溝100が形成されている。言い換えれば、溝100は、カップシール35のベース部90と外周リップ部92との境界近傍の外周側に、外周リップ部92の基端側からベース部90の外周側にかけて形成されており、図5に示すようにシール溝30の傾斜面30cに当接する傾斜面当接部位に形成されている。このような溝100が、カップシール35に、図4に示すように、周方向に等間隔をなして複数形成されている。溝100は、図3に示すように、その略全長にわたって深さが一定となっている。なお、溝100は、少なくとも一つあれば良い。
このような第2実施形態によれば、カップシール35の傾斜面当接部位に、シリンダ本体15の軸方向に延びる溝100が形成されている。このため、セカンダリ圧力室68の圧力上昇後、図示せぬブレーキペダル側から入力が解除され、セカンダリピストン19が非制動位置に戻る戻り行程中に、溝底部30aおよび傾斜面30cにカップシール35が密着した状態にあっても、セカンダリ補給路38からセカンダリピストン19とシリンダ本体15との隙間を経て、カップシール35のベース部90の背面90aとシール溝30の環状壁30dとの隙間に流れるブレーキ液が、溝100を通って、円滑に、ベース部90の背面90aおよび外周リップ部92の外周面92aと、シール溝30の傾斜面30cおよび溝底部30aの隙間に流れ、セカンダリ圧力室68に流れる。したがって、セカンダリピストン19の戻り行程において、即座にセカンダリ圧力室68にセカンダリ補給路38のブレーキ液を流すことができる。
つまり、溝100のない第1実施形態のカップシール35では、セカンダリピストン19の戻り行程でセカンダリ圧力室68の圧力が大気圧に戻っても、溝底部30aおよび傾斜面30cにカップシール35の外周リップ部92が密着していて、液補給が遅れる可能性があったが、第2実施形態では、このような液補給の遅れを防止できる。したがって、セカンダリピストン19の戻り時の応答性をも向上することができ、液補給の遅れに起因して生じる異音の発生を防止することができる。
なお、溝100の形状は、溝底部30aおよび傾斜面30cとカップシール35との間に流路が形成されるものであれば、以上に限定されることなく変更が可能である。
例えば、図6に示すように、溝100の底面をベース部90の背面90aと連続的に繋げる形状としたり、図7に示すように、溝100を外周リップ部92とベース部90との境界の湾曲部分のみに形成したり、図8に示すように、溝100の深さが連続的に変化するようにしたりできる。
以上において、図9に示すように、カップシール35とシール溝30との関係は、カップシール35の外周リップ部92の外周面92aとベース部90の背面90aのそれぞれの延長線の交点をOとし、カップシール35の内周リップ部91の内周面91aとベース部90の背面90aのそれぞれの延長線の交点をO’として、O点とO’点との距離をLcupとし、シール溝30の傾斜面30cの環状壁30d側の開始位置のセカンダリピストン19の外周面19aからの距離をLmizoとすると、Lmizo<Lcupを満足する位置に設定する。
さらに、カップシール35の外周リップ部92の外周面92aのベース部90の背面90aに対する傾斜角をθcupとし、傾斜面30cの傾斜角をθmizoとすると、θcup<θmizo<90°を満足する角度とするのが好ましい。
このように構成すれば、カップシール35をシール溝30に組み付けた時の非制動状態におけるカップシール35の変形状態は、図10(a)に示すように、カップシール35と傾斜面30cとが接触しているときに カップシール35のベース部90の背面90aとシール溝30の環状壁30dとの間に隙間101を形成できる。したがって、図10(b)に示すように、矢印Xで示すセカンダリピストン19の戻り行程開始後、セカンダリ圧力室68内の圧力が大気圧まで下がったときに、カップシール35の弾性力によって隙間101が形成されることになり、上記した液補給の遅れをさらに防止できる。勿論、上記の関係は、第1実施形態にも適用できる。
なお、以上においては、セカンダリ側のシール構造部SSを例にとって詳細に説明したが、プライマリ側のシール構造部SPも同様の構造となっているため、同様の効果を奏することができる。
11 マスタシリンダ
15 シリンダ本体
18 プライマリピストン(ピストン)
19 セカンダリピストン(ピストン)
30,32 シール溝
30a 溝底部(底部)
30c 傾斜面
30d 環状壁(側壁)
35,45 カップシール
68 セカンダリ圧力室(圧力室)
85 プライマリ圧力室(圧力室)
90 ベース部
91 内周リップ部
92 外周リップ部
100 溝

Claims (4)

  1. 有底筒状のシリンダ本体に形成された環状のシール溝内に保持されるカップシールの内周でピストンが摺動し、前記ピストンと前記シリンダ本体とで形成される圧力室内のブレーキ液を加圧するマスタシリンダにおいて、
    前記シール溝には、該シール溝における底部と前記シリンダ本体開口側の側壁との間に傾斜面が形成されてなることを特徴とするマスタシリンダ。
  2. 前記傾斜面は、前記ピストンが非制動位置にあるときに、前記カップシールのベース部の外周側に当接するように形成されていることを特徴とする請求項1に記載のマスタシリンダ。
  3. 前記傾斜面は、前記ピストンが非制動位置にあるときに、前記カップシールの外周リップ部の基端側に当接するように形成されていることを特徴とする請求項1に記載のマスタシリンダ。
  4. 前記カップシールの前記傾斜面当接部位には、前記シリンダ本体の軸方向に延びる溝が形成されてなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のマスタシリンダ。
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