JP2011251519A - 非油性内容物用オレフィン系樹脂ボトル - Google Patents

非油性内容物用オレフィン系樹脂ボトル Download PDF

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Abstract

【課題】ケチャップ等の非油性の粘稠な内容物に対して、底壁内面での滑落性が向上したダイレクトブロー成形オレフィン系樹脂ボトルを提供する。
【解決手段】ダイレクトブローにより形成され且つオレフィン系樹脂の最内層を含む多層構造を有している非油性内容物用オレフィン系樹脂ボトルにおいて、ボトルの胴部壁の下端が、該ボトルを正立保持したときの接地部を含む周状接地面30となっており、周状接地面30で囲まれている底壁17には、パーティングラインXを含む位置に、周状接地面よりも高い上げ底部31が形成されており、周状接地面30該上げ底部31との間に形成される傾斜壁33は、該周状接地面に対して底壁中心Oを含む垂直断面でみて、水平面に対する該傾斜壁接線の傾斜角の最大角度が30度以上に傾斜した内面を有しており、底壁17を周状接地面30を含む水平面に投影したとき、該投影面を占める該上げ底部31の投影面の面積割合が45%以下となっている。
【選択図】図3

Description

本発明は、ケチャップに代表される粘稠な非油性内容物を収容するために用いられるオレフィン系樹脂ボトルに関するものである。
プラスチック容器は、成形が容易であり、安価に製造できることなどから、各種の用途に広く使用されている。特に、容器壁の内面が低密度ポリエチレンなどのオレフィン系樹脂で形成され且つダイレクトブロー成形で成形されたオレフィン系樹脂ボトルは、内容物を絞り出し易いという観点から、ケチャップなどの粘稠なスラリー状或いはペースト状の内容物を収容するためのボトルとして好適に使用されている。
また、粘稠な内容物を収容するボトルでは、該内容物を速やかに排出するため、或いはボトル内に残存させることなくきれいに最後まで使いきるために、ボトルを倒立状態で保存しておかれる場合が多い。従って、ボトルを倒立させたときには、粘稠な内容物がボトル内壁面に付着残存せずに、速やかに落下するという特性が望まれている。
このような要求を満足するボトルとして、例えば、特許文献1には、最内層が、MFR(メルトフローレート)が10g/10min以上のポリオレフィンからなる多層構造のボトルが提案されている。
この多層構造ボトルは、特にマヨネーズのような油脂分を含有する油性内容物を収容するために使用されるものであり、最内層が油性内容物に対する濡れ性に優れており、この結果、ボトルを倒立させたり、或いは傾斜させたりすると、マヨネーズ等の油性内容物は、最内層表面に沿って広がりながら落下していき、ボトル内壁面(最内層表面)に付着残存することなく、綺麗に排出することができるというものである。
また、ケチャップのような植物繊維が水に分散されている粘稠な非油性内容物用のボトルについては、特許文献2或いは特許文献3に、最内層に有機滑剤として飽和或いは不飽和の脂肪族アミドが配合されたポリオレフィン系樹脂ボトルが提案されている。
特開2007−284066号公報 特開2008−222291号公報 特開2009−214914号公報
上述した特許文献に開示されているポリオレフィン系樹脂ボトルは、ボトル壁の内面を形成する樹脂層の材質の面から、ボトルを倒立状態に保持したときの内容物の滑落性を向上させたものであり、何れのボトルにおいても、程度の差はあるが、ボトルの胴部壁を速い滑落速度で粘稠な内容物が滑り落ちるため、倒立保存により、粘稠な内容物を胴部の内壁面に付着することなく、下方(ボトル口部側)に落下せしめ、該内容物を綺麗に且つ速やかに排出することができるというものである。
しかしながら、粘稠な内容物用に用いられる従来公知のポリオレフィン系樹脂ボトルにおいては、ボトルの底部に内容物が付着し、この底部に付着している内容物を効果的に排出するのが困難であり、このため、使用済みのボトル内には排出されずに残存する内容物の量が多く、資源の無駄という問題や、廃棄に際してのボトルの洗浄が面倒であるなどの不都合があり、その改善が求められている。
また、本出願人は、先に、ケチャップに代表される非油性内容物用のオレフィン系樹脂ボトルでは、最内層のオレフィン系樹脂層に、有機系滑剤として飽和脂肪族アミドを含有せしめることがよいこと(特願2009−67223号)を提案したが、このような場合においても、ボトルの底壁に内容物が付着残存してしまい、その排出が困難となるという問題は依然として残っている。
従って、本発明の目的は、ケチャップ等の非油性の粘稠な内容物に対して、底壁内面での滑落性が向上したダイレクトブロー成形オレフィン系樹脂ボトルを提供することにある。
本発明者等は、ケチャップ等の非油性内容物が充填されたオレフィン系樹脂ボトルについて、多くの実験を行った結果、該ボトルの壁部をポリオレフィン系樹脂により形成された最内層を含む多層構造とし且つ、前記最内層が、非油性内容物に対して一定以上の滑落性を有する場合には、該ボトルの底壁に適度な勾配の傾斜壁によって小面積の上げ底部を形成することにより、底壁内面の非油性内容物に対する滑落性が飛躍的に向上し、この結果、底壁内面に付着残存する非油性内容物の量を大幅に減少させ、ボトル内に充填された非油性内容物を無駄なく排出することが可能となることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明によれば、ダイレクトブローにより形成され且つオレフィン系樹脂の最内層を含む多層構造を有している非油性内容物用オレフィン系樹脂ボトルにおいて、
前記ボトルの胴部壁の下端が、該ボトルを正立保持したときの接地部を含む周状接地面となっており、
前記周状接地面で囲まれている底壁には、ダイレクトブロー成形に用いる割型に由来して該底壁に現われるパーティングラインを含む位置に、該周状接地面よりも高い上げ底部が形成されており、
前記周状接地面と該上げ底部との間に形成される傾斜壁は、該周状接地面に対して底壁中心を含む垂直断面でみて、水平面に対する該傾斜壁接線の傾斜角の最大角度が30度以上に傾斜した内面を有しており、
前記底壁を周状接地面を含む水平面に投影したとき、該上げ底部の投影面が底壁全体の投影面積の45%以下に抑制されていると共に、
前記最内層には、滑剤成分として、脂肪族アミドが配合されていることを特徴とする非油性内容物用オレフィン系樹脂ボトルが提供される。
本発明の非油性内容物用オレフィン系樹脂ボトルにおいては、
(1)前記最内層は、その表面を水平面に対する傾斜角85度となるように傾斜した状態で、粘度が1000乃至2000mPa・s(23℃)の非油性内容物70mgを、23℃において滑落させたときの滑落速度が5mm/min以上となる表面特性を有していること、
(2)前記パーティングラインに対して垂直方向で且つ底壁中心を含む垂直断面でみて、周状接地面間の間隔をD、前記上げ底部の下面と該周状接地面とを含む水平面との間隔をHとしたとき、D/Hが2〜10の範囲にあること、
(3)前記最内層には、前記脂肪族アミドが0.05重量%以上、0.4重量%未満の量で配合されていること、
が好ましく、さらに、
(4)前記脂肪族アミドが不飽和脂肪族アミドであり、非油性内容物の常温充填に適用されること、
或いは、
(5)前記脂肪族アミドが飽和脂肪族アミドであり、非油性内容物の熱間充填に適用されること、
が好適である。
尚、本発明において、上げ底部とは、ボトルの胴壁の下端に形成されている周状接地面からボトルの中心側に向かって上方に延びている傾斜壁の傾斜角(底壁中心を含む垂直断面でみて水平面に対してなす角度)が最大角をとった後(即ち、最大角を示す部分よりも上方に位置する)、20度となる部分で囲まれた部分を意味する。
ダイレクトブロー成形によるオレフィン系樹脂ボトルでは、押出成形によりパイプ形状に成形されたパリソンを、ボトル形状に対応するキャビティを有する割型で挟み、この割型によってパリソンの一方側の端部を閉じ(この部分がボトルの底壁となる)、この状態でパリソンの内部にエアーを供給し、そのブロー圧によって該パリソンをボトル形状に成形することにより製造される。このため、ボトルの底壁は、成形後の型抜きを考慮して、ほぼ平底となっており、その内面の大部分をフラットな面(或いはフラットに近い面)が占めている。
しかるに、本発明のオレフィン系樹脂ボトルでは、胴部壁の下端に形成される周状接地面で囲まれる底壁に、この周状接地面よりも高く形成された上げ底部を形成すると同時に、周状接地面と上げ底部とに連なっている傾斜壁の最大角度を、30度以上(好適には35乃至50度)とし、さらに、底壁を占める上げ底部の割合が小さく設定されている。具体的には、底壁の周状接地面を含む水平面に投影したとき、底壁全体の投影面を占める上げ底部の投影面の面積割合が45%以下(好適には40%以下)となっている。このような形状にボトルの底壁を形成すると同時に、ボトルの最内面層を、滑剤成分としての脂肪族アミドの配合によって非油性内容物に対して優れた滑落性を示す表面特性を有する層とすることにより、ボトル底壁の内面に付着残存する非油性内容物の量を大幅に低減することができるのである。
尚、脂肪族アミドの配合により実現される非油性内容物に対する滑落性は、例えば、その表面を水平面に対する傾斜角85度となるように傾斜した状態で、粘度が1000乃至2000mPa・s(23℃)の非油性内容物70mgを、23℃において滑落させたときの滑落速度で評価することができ、かかる滑落速度が5mm/min以上となるように、脂肪族アミドが最内面層に配合される。
即ち、本発明では、ボトルの底壁に勾配の大きな傾斜壁を形成して非油性内容物に対する滑落性を高め、且つボトルの底壁を占めるフラット或いはフラットに近い面を有する領域(非油性内容物が付着残存し易い領域である)の面積割合が小さく設定され、このような形態効果と、最内層の内容物滑落効果とが相乗的に作用し、ボトルの胴部内面は勿論のこと、ボトル底壁内面への非油性内容物の付着残存を低減させ、非油性内容物を効果的に無駄なく排出することができる。
例えば、後述する実験例に示されているように、フラットな面が大部分を占めている底壁形状(上げ底部が占める面積割合が63%)を有しており、最内層のオレフィン系樹脂層には有機滑剤成分が微量配合されているボトルでは、滑落性が低く(滑落速度=2.3mm/min)、これにケチャップを充填して一定時間倒立保持したときにボトルの胴壁内面に付着残存したケチャップの量は1.1gであり、底壁の内面に付着残存した量は2.2gである(実験例2参照)。一方、底壁形状のみを変更したボトル(上げ底部が占める面積割合が36%、滑落速度=2.3mm/min)について、同様の実験を行うと、胴壁内面に付着残存したケチャップ量は1.3gであり、底壁内面に付着残存した量は1.9gである(実験例3参照)。このことから、上げ底部が占める面積割合を45%以下と小さくすることにより、ボトルの底壁内面でのケチャップの付着残存量が少なくなる傾向にあることが理解される。
また、上げ底部が占める面積割合が45%以下と小さくなるように底壁形状を設定すると同時に最内層のオレフィン系樹脂層に充分な量のオレイン酸アミドを配合し、その滑落性を高めた実験例1のボトルでは(滑落速度=17.4mm/min)、胴壁内面内に付着残存したケチャップ量は0.2gであり、底壁内面に付着残存した量は0.3gであり、上記の実験例2,3に比して、胴壁内面及び底壁内面に付着残存したケチャップ量は何れも大幅に少なくなっており、内容物滑落性向上効果と底壁の形状効果とが相乗的に採用して、非油性内容物のボトル内(特に底壁内面)への付着残存を最も効果的に防止できることが判る。
尚、上記の滑落速度は、ボトルの胴部壁を板状に切り取り、この内面に粘度が1000乃至2000mPa・s(23℃)の非油性内容物(例えばケチャップ)70mgを載せ、水平面に対して85度に傾斜せしめて、23℃において滑落させることにより測定される。
本発明のボトルの内面にブリーディングした有機滑剤(脂肪族アミド)の存在形態を示す図。 本発明のオレフィン系樹脂ボトルをキャップと共に示す図。 図2のボトルの底壁を示す図であり、(a)は接地面を含む水平面への底壁の投影図(ボトルの底面図に相当)であり、(b)はA−A断面を拡大して示す図、(c)はB−B断面を拡大して示す図である。
本発明のオレフィン系樹脂ボトルは、少なくとも最内層がオレフィン系樹脂で形成された多層構造を有しており、このオレフィン系樹脂の最内層は、滑り性が高く、滑剤成分として脂肪族アミドが配合され、滑落性に優れた表面特性を有していることが必要である。例えば、最も好適には、充分な量の脂肪族アミドの配合により、前述した滑落速度が5mm/min以上となるような滑落性に優れた表面特性を有する。即ち、有機滑剤として最内層に配合される脂肪族アミドは、最内層の表面にブリーディングすることにより、ケチャップ等の非油性内容物に対する滑落性を向上させ、例えばボトルを倒立保持させたときに速やかに非油性内容物を口部側に滑落させる滑落性向上作用を示すものであるが、多層構造とすることにより、最内層表面への脂肪族アミドのブリーディング量を適度な範囲に調製することができ、良好な滑落性を安定して確保することが可能となる。
この場合において、ボトル壁を単層構造とした場合には、滑落性向上のために配合された脂肪族アミドが、ボトル内面側にブリーディングすると同時に、ボトルの外面側にもブリーディングしてしまうため、ボトル壁内面への脂肪族アミドのブリーディング量にバラツキを生じ易く、この結果、非油性内容物に対する滑落性が不安定となってしまう。従って、本発明のボトルでは、多層構造を採用することが必要である。
<滑剤>
1.最内層用の有機滑剤;
上記の説明から理解されるように、本発明のオレフィン系樹脂ボトルでは、内容物の滑落速度を向上させるために、最内層に配合される有機滑剤成分として、脂肪族アミドが使用される。即ち、脂肪族アミドは両親媒性化合物であり、その分子は、親水性の極性基(アミド基)と疎水性の非極性基(炭化水素基)とを有しており、特にアミド基中の酸素原子と水素原子との間で水素結合が形成可能となっている。従って、図1の模式図に示されているように、最内層の表面にブリーディングした脂肪族アミド分子は、水素結合による極性基間の引力と、ファンデルワールス力による引力とにより多分子層を形成するものと思われる。このため、ケチャップ等の粘稠な非油性内容物は、脂肪族アミドの多分子層上を滑落していくこととなる。充分な量の脂肪族アミドを最内層に配合し、ブリーディングにより形成されたこの脂肪族アミドの多分子層における内容物側の表面は、緻密な炭化水素基で覆われており、非油性内容物と表面との相互作用が低減されていると思われる。また、この表面の緻密な炭化水素基は短いタイムスケールで分子運動をしていると思われる。したがって、表面と非油性内容物との相互作用の低減、および、炭化水素基の短いタイムスケールの分子運動により、内容物との非付着性が発現すると考えられる。この結果として、ボトルを倒立保持したとき、非油性内容物は速い速度で滑落していき、優れた滑落性を示すものと信じられる。例えば、有機滑剤として公知のステアリン酸などの脂肪酸やパラフィンワックスなどは、このような多分子層を形成しないため、ボトルを倒立保持したときの滑落速度は遅く、非油性内容物の滑落性を向上させる機能はほとんど示さない。
上記のような脂肪族アミドとしては、不飽和脂肪族アミド及び飽和脂肪族アミドがあり、何れも本発明の目的に好適に使用することができる。
これらの内、不飽和脂肪族アミドとしては、アクリルアミド、メタクリルアミド、クロトンアミド、イソクロトンアミド、ウンデシレンアミド、セトレイン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、オレイルパルミトアミド、ステアリルエルカミド、リノール酸アミド、リノレン酸アミド、アラキドン酸アミドを例示することができる。また、緻密な炭化水素基で覆われ、かつ分子運動性の高い多分子層を形成し得るという点で、適度な鎖長を有しているものが好適であり、特に炭素数が14〜24の範囲にある不飽和脂肪族アミド、例えばセトレイン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リノール酸アミド、リノレン酸アミド、アラキドン酸アミドが好ましく、オレイン酸アミドが最も好ましい。
また、飽和脂肪族アミドとしては、ブチルアミド、ヘキシルアミド、デシルアミド、ラウリン酸アミド、ミリスチン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘニン酸アミドを例示することができる。また、このような飽和脂肪族アミドとしても、緻密な炭化水素基で覆われやすい多分子層を形成し得るという点で、適度な鎖長を有しているものが好適であり、特に炭素数が8〜24の範囲にある飽和脂肪族アミド、特にステアリン酸アミド、ベヘニン酸アミドが最適である。
上記のような脂肪族アミドは、一般に、最内層を形成するオレフィン系樹脂層中に、0.03重量%以上、0.4重量%未満、特に0.05重量%以上、0.4重量%未満の量で配合される。即ち、この配合量が少ないと、最内層表面へのブリーディング量が十分でなく、このため、非油性内容物に対する滑落性を向上させることが困難となる傾向がある。また、この配合量を必要以上に多量に配合した場合には、滑落性の向上には限界があり、それ以上の滑落性の向上は得られず、逆にコストや成形性等の点で不都合を生じることがある。以上の観点から、脂肪族アミドの添加量としては、0.1重量%乃至0.3重量%が最も好ましい。
また、本発明において、上記の脂肪族アミドは、その配合量が上記範囲内である限り、1種単独或いは2種以上を併用して最内層であるオレフィン系樹脂層中に配合することができるが、一般に、1種単独の使用が好適である。即ち、複数種の脂肪族アミドが併用されている場合よりも1種単独の脂肪族アミドが配合されている場合の方が、ブリーディングにより、より規則的な配列の多分子層が形成され、より高い滑落性の向上効果が期待できるからである。
さらに、不飽和脂肪族アミドは、飽和脂肪族アミドに比して低融点であり、飽和脂肪族アミドに比してブリーディングし易い反面、熱運動性が高いという性質を有している。一方、飽和脂肪族アミドは、不飽和脂肪族に比して高融点であり、熱運動性が低いという性質を有している。このような性質を考慮して、非油性内容物のボトル内への充填形式に応じて、不飽和脂肪族アミド或いは飽和脂肪族アミドを用いることが好適である。
即ち、ケチャップ等の非油性内容物(特に食品類)では、ボトル内に常温(通常、60℃以下)の常温充填する場合と、殺菌を兼ねて熱間充填(一般に80乃至90℃)する場合とがある。常温充填の場合には、融点がより低い不飽和脂肪族アミド(例えばオレイン酸アミド等の融点は90℃以下)がブリーディングし易く、有利であるが、熱間充填の場合には、不飽和脂肪族アミドは、分子の熱運動性が高いため、熱間充填時に多分子層の崩壊を生じ易く、この結果、非油性内容物に対する滑落性が低下してしまうおそれがある。一方、飽和脂肪族アミドでは、不飽和脂肪族アミドに比してブリーディングが生じ難い傾向があるが、熱間充填時にブリーディングが促進されるばかりか、分子の熱運動性が低いために、熱間充填に際しても多分子層が崩壊せず、安定に保持される。従って、非油性内容物を常温充填する場合にはオレイン酸アミド等の不飽和脂肪族アミドが好適であり、熱間充填の場合には、ステアリン酸アミドやベヘニン酸アミド等の飽和脂肪族アミドが好適に使用されるわけである。
2.その他の滑剤;
本発明のオレフィン系樹脂ボトルでは、最内層のオレフィン系樹脂層に有機滑剤として脂肪族アミドが配合され、このような脂肪族アミドの配合により非油性内容物に対する滑落性を向上させることが可能となるのであるが、このような目的以外にも有機滑剤を使用することができる。
例えば、最外層には、ボトル外面に滑り性を付与し、ボトル搬送に際して、ボトル同士の粘着を防止してボトルの搬送を高めることが求められる。このために、有機滑剤を使用し、有機滑剤がボトル外面にブリーディングするような層構造とすることが好適である。このような有機滑剤としては、種々の公知のものを使用することができ、例えば、前述した脂肪族アミド以外に、
(イ)流動、天然または合成パラフィン、マイクロワックス、ポリエチレンワック
ス、塩素化ポリエチレンワックス等の炭化水素系のもの、
(ロ)ステアリン酸、ラウリン酸等の脂肪酸系のもの、
(ハ)ブチルステアレート、硬化ヒマシ油、エチレングリコールモノステアレート等
の脂肪酸エステル系のもの、
(ニ)セチルアルコール、ステアリルアルコール等のアルコール系のもの、
(ホ)ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の金属石ケン、
(ヘ)ポリオルガノシロキサン、
などの有機滑剤を挙げることができ、これらは、1種単独或いは2種以上を混合して使用することもでき、特にブリーディング性が良好であるという点で、脂肪族アミドが好適であり、中でもオレイン酸アミド、エルカ酸アミド等の不飽和脂肪族アミドが低融点であり、最もブリーディングし易く、本発明には最適である。
上記のようなボトル外面に滑り性を付与するための有機滑剤は、オレフィン系樹脂の最内層に配合された脂肪族アミドのブリーディングによる多分子層の形成に悪影響を及ぼさないように使用することが必要であり、このために、最内層には、上記目的の有機滑剤は配合せず、最外層或いは最外層に隣接する層に、これらの有機滑剤を配合し、これらの有機滑剤は、最外層表面に選択的にブリーディングするように用いることが好ましく、例えば、最外層或いは最外層に隣接する隣接層中に0.01〜0.5重量%、特に0.02〜0.1重量%の量で配合されるのがよい。
尚、上記の有機滑剤は、最も好適には、最外層に隣接する層に配合するのがよい。最外層に直接有機滑剤が配合されていると、ボトルの成形時に有機滑剤が最外層表面にブリーディングしてしまう結果、ボトルの外面にブツなどが発生してしまい、ボトルの外観が損なわれてしまうことがある。しかるに、最外層には有機滑剤を配合せず、これに隣接する層を滑剤含有層とすることにより、ボトル成形時における最外層表面への有機滑剤のブリーディングを防止することができ、ブツの発生を有効に防止し、ボトルの外観を良好に保持することができるからである。
<ボトルの層構造>
本発明においては、ケチャップに代表される粘稠な非油性内容物をボトル内に充填し、これを絞り出しにより排出するため、内外層にオレフィン系樹脂の層を形成するが、非油性内容物の滑落性を向上させるために最内層に脂肪族アミドを配合し、さらには、ボトル外面に滑り性を付与するために、最外層にも前述した有機滑剤が配合される。このため、最外層と最内層との間には、滑落性向上のための脂肪族アミドの最外層側へのブリーディングを防止するために、また、ボトル外面の滑り性を高めるための有機滑剤の最内層側へのブリーディングを防止するために滑剤遮断性を有する中間層を設けることが好ましく、また、最外層に隣接する位置(最外層と滑剤遮断性の中間層との間)には、ボトル外面の滑り性を高めるための有機滑剤が配合された滑剤含有の隣接層が適宜設けられる。
1.最内層及び最外層;
本発明において、ボトルの内面に位置し且つ非油性内容物と接触する位置に設けられる最内層及びボトルの外面に露出した最外層は、それ自体公知のオレフィン系樹脂、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、中或いは高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ1−ブテン、ポリ4−メチル−1−ペンテンなどにより形成される。勿論、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィン同志のランダムあるいはブロック共重合体等であってもよい。また、前述した特許文献1(特開2007−284066号)に開示されている環状オレフィン共重合体により最外層及び最内層を形成することもできる。本発明において、特に好適に使用されるオレフィン系樹脂は、ポリエチレン、ポリプロピレンであり、特にボトルにスクイズ性を付与し、ボトル内容物を絞り出しにより取り出すようにするには、低密度ポリエチレンや直鎖低密度ポリエチレンを用いて最外層及び最内層を形成するのがよい。
特に最内層表面への脂肪族アミドのブリーディング性や最外層表面への有機滑剤のブリーディング性を高めるという観点からは、前述したオレフィン系樹脂の中で、MFR(190℃)が10g/10min以上及び/又は密度が0.91g/cm以下の範囲にあるもの、特に密度が0.91g/cm以下の直鎖低密度ポリエチレン(以下、超低密度直鎖ポリエチレンと呼ぶことがある)が最適である。この超低密度直鎖ポリエチレンは、従来公知の低密度のポリエチレンの中でも特に低密度であり、例えば、メタロセン系触媒を用いて、エチレンと少量のα−オレフィン(炭素数が8以下であるエチレン以外のα−オレフィン)を共重合して得られる極めて特殊な低密度ポリエチレンである。即ち、このようなオレフィン系樹脂により最内層或いは最外層を形成すると、これらの層が比較的ルーズな層となり、この結果、脂肪族アミドや有機滑剤のブリーディング性が向上し、安定して最内層表面に一定の多分子層が形成されて良好な滑落性を得ることができ、同様に、最外層においても有機滑剤が速やかに表面にブリーディングし、ボトルの搬送性が高められ、搬送時におけるボトル同士のくっつきやベルト等の搬送材へのボトルの接着が効果的に防止することができる。
尚、上記のような最外層や最内層の厚みは、各層の機能が効果的に発揮され且つ必要以上に厚くならない程度に設定される。例えば、最外層では、その表面に有機滑剤が効果的にブリーディングし、優れたボトル搬送性が確保でき、最内層は、ボトル内に収容される非油性内容物に対して、優れた滑落性が確保でき、しかもボトル全体厚みが不必要に厚くならない程度に、ボトルの層構造に応じて適宜設定される。
2.滑剤遮断性中間層;
本発明においては、最外層と最内層との間に設けられる中間層に、滑剤遮断機能を持たせることにより、最内層表面への脂肪族アミドのブリーディングと最外層表面への有機滑剤のブリーディングとを完全に機能分離し、内容物に対する安定した滑落性を確保することができる。即ち、最外層或いは最外層隣接層に配合された有機滑剤が最内層の表面にブリーディングしてしまったり、或いは最内層に配合された脂肪族アミドが最外層表面にブリーディングしたりしてしまうと、最内層表面にブリーディングした脂肪族アミドの多分子層が不安定となったり、或いはそのブリーディング量が低減してしまい、この結果、滑落性が損なわれてしまうおそれを生じる。
滑剤遮断層として機能する中間層は、通常、密度が1.00g/cm以上且つガラス転移点(Tg)が35℃以上の樹脂により形成される、即ち、このような樹脂により形成される中間層は緻密な層となり、これにより、該中間層が滑剤遮断層として有効に機能し、該中間層よりも外側の層に配合されている有機滑剤の最内層への移行或いは最内層に配合されている有機滑剤の最外層側への移行が有効に抑制され、内容物に対する滑落性を安定に保持することが可能となる。例えば、密度あるいはガラス転移点(Tg)が上記範囲よりも低い樹脂を用いて中間層を形成する場合には、中間層がルーズな層となってしまい、滑剤遮断層としての機能が発現せず、この結果、最内層表面への有機滑剤のブリーディング量が低下して滑落性が低下するおそれを生じてしまう。
上記のような中間層を形成する樹脂としては、密度及びガラス転移点(Tg)の両者が上記範囲内である限り特に制限されず、成形可能な任意の熱可塑性樹脂を用いることができるが、一般的には、エチレンビニルアルコール共重合体(エチレン酢酸ビニル共重合体ケン化物)や芳香族ポリアミドなどのガスバリア性樹脂を用いることが好ましく、特にエチレンビニルアルコール共重合体を用いることが最も好適である。即ち、中間層形成用の樹脂としてガスバリア性樹脂を用いることにより、中間層に滑剤遮断性と共に酸素バリア性を付与することができ、特にエチレンビニルアルコール共重合体は、特に優れた酸素バリア性を示すため、酸素透過による内容物の酸化劣化をも有効に抑制することができ、優れた滑落性を維持せしめると同時に、優れた内容物保存性を確保することができる。
上記のようなエチレンビニルアルコール共重合体としては、一般に、エチレン含有量が20乃至60モル%、特に25乃至50モル%のエチレン−酢酸ビニル共重合体を、ケン化度が96モル%以上、特に99モル%以上となるようにケン化して得られる共重合体ケン化物が好適であり、これらの中から、密度及びガラス転移点(Tg)が前述した範囲にあるものが選択的に使用される。
また、上記の滑剤遮断層として機能する中間層の厚みは、一般に1乃至50μmの範囲、好適には9乃至40μmの範囲にあることが好ましい。この厚みが過度に薄いと、滑剤遮断性が低下してしまい、有機滑剤の最内面層側への移行を効果的に防止することが困難となるおそれがあり、また、厚みが過度に厚いと、滑剤遮断性のさらなる向上は得られず、かえってボトルの厚みが必要以上に厚くなったり、或いはコストの増大などの点で不都合を生じてしまうからである。
また、上記のようなガスバリア性樹脂を中間層として用いる場合には、内外層との接着性を高め、デラミネーションを防止するために、接着剤樹脂層を介して中間層を設けることが好ましい。これにより、中間層をしっかりと内外層に接着固定することができる。このような接着樹脂層の形成に用いる接着剤樹脂はそれ自体公知であり、例えば、カルボニル基(>C=O)を主鎖若しくは側鎖に1乃至100meq/100g樹脂、特に10乃至100meq/100g樹脂の量で含有する樹脂、具体的には、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸などのカルボン酸もしくはその無水物、アミド、エステルなどでグラフト変性されたオレフィン樹脂;エチレン−アクリル酸共重合体;イオン架橋オレフィン系共重合体;エチレン−酢酸ビニル共重合体;などが接着性樹脂として使用される。このような接着剤樹脂層の厚みは、適宜の接着力が得られる程度でよく、一般的には0.5乃至20μm、好適には1乃至8μm程度の厚みでよい。尚、このような中間層も、前述した密度及びガラス転移点の条件を満足すれば、滑剤遮断層として機能し得る。
3.最外層隣接層;
既に述べたように、本発明においては、ボトル外面に滑り性をするためには、最外層に隣接する位置(例えば前述した滑剤遮断性の中間層と最外層との間)に所定量で有機滑剤を配合することが好適である。即ち、このような最外層隣接層を形成する樹脂としては、デラミネーションを防止するために、一般に、最外層と同種のオレフィン系樹脂が使用される。このような隣接層を最外層と接着性の乏しい樹脂を用いて形成した場合には、接着剤樹脂層を介在させることが必要となってしまい、コスト等の点で不利となってしまうからである。
また、上記のような最外層隣接層の形成には、このボトル成形時に発生するリグラインド(スクラップ樹脂)をバージンのオレフィン系樹脂と混合して用いることもできる。この場合、成形性を維持しつつ、資源の再利用化を図るという観点から、リグラインドの量は、バージンのオレフィン系樹脂100重量部当り10乃至60重量部程度の量とするのがよい。
上記のような最外層隣接層の厚みは、ボトル壁の全体厚みが必要以上の厚みとならず且つこの層中に配合されている有機滑剤が最外層に速やかにブリーディングし得るような厚みとすればよく、一般に、20乃至200μm程度の厚みに設定される。
尚、前述した各層には、それぞれの層に要求される特性を損なわない程度の量で、種々の配合剤、例えば、顔料、紫外線吸収剤等が適宜配合されていてよい。
上述した説明をまとめ、本発明のオレフィン系樹脂ボトルのボトル壁の層構成の好適例を示すと、以下の通りである。(以下の例示でADは、接着剤層を示す。)
<常温充填>
最外層(含有機滑剤)/AD/滑剤遮断性中間層/AD/最内層(不飽和脂肪族アミド)
最外層(含有機滑剤)/AD/滑剤遮断性中間層/AD/隣接層(含有機滑剤)/最内層(不飽和脂肪族アミド)
最外層(有機滑剤フリー)/隣接層(含有機滑剤)/AD/滑剤遮断性中間層/AD/最内層(不飽和脂肪族アミド)

<熱間充填>
最外層(含有機滑剤)/AD/滑剤遮断性中間層/AD/最内層(飽和脂肪族アミド)
最外層(有機滑剤フリー)/隣接層(含有機滑剤)AD/滑剤遮断性中間層/AD/最内層(飽和脂肪族アミド)
最外層(含有機滑剤)/AD/滑剤遮断性中間層/AD/隣接層(滑剤含有)/最内層(飽和脂肪族アミド)
上記のような層構造を有する本発明のオレフィン系樹脂ボトルは、各層を形成するための樹脂組成物を用いての共押出により、前述したチューブ状のパリソンを溶融押出し、例えば2分割金型を用いてのダイレクトブロー成形を行うことにより製造される。
<ボトルの形態>
本発明のダイレクトブロー成形オレフィン系樹脂ボトルは、図2に示されているように、全体として10で示されており、螺条を備えた首部11、肩部13を介して首部11に連なる胴部壁15及び胴部壁15の下端を閉じている底壁17を有しており、このようなボトル10に非油性の粘稠な内容物を充填した後、首部11の上端開口部にアルミ箔等の金属箔19をヒートシールにより施し、所定のキャップ20を装着することにより、包装ボトルとして使用に供される。かかる包装ボトルでは、キャップ20を開封し、シール材が塗布された金属箔19を引き剥がし、ボトル10を傾倒乃至倒立させることにより、内容物の取り出しが行われる。
図3を参照して、このボトル10において、胴部壁15の周状の下端面は、周状接地面30となっており、この周状接地面30で囲まれた領域が底壁17となっている。
尚、周状接地面30は、このボトル10を成立保持させたときに接地する部分を含む面であり、その全面が接地する必要は無く、少なくとも、この面30内の3点以上の部分で接地していればよい。
本発明のボトル10では、上記の底壁17には、周状接地面30よりも高い位置に上げ底部31が形成されており、この上げ底部31の周囲と周状接地面30との間には傾斜壁33が形成されることとなる。即ち、本発明では、前述したように、最内層のオレフィン系樹脂層に脂肪族アミドを配合しておくと同時に、傾斜壁33の勾配を急勾配とし且つ上げ底部31が底壁17を占める面積比率を小さくすることにより、この底壁17の内面に付着残存する非油性内容物の量を大幅に低減することができ、非油性内容物を無駄なく排出することが可能となるものである。
ところで、このボトルは、ダイレクトブロー成形で成形されるため、上記の底壁17には、必ず成形に用いた割型に由来する垂直パーティングラインXが現われており、上記の上げ底部31は、必ず垂直パーティングラインXを含むようにして形成される(図3(a)参照)。換言すると、パーティングラインXは、必ず、上げ底部31を通っており、通常、この上げ底部31は、パーティングラインXにより2分されたものとなっている。
尚、このボトルは、絞り出しに非油性内容物を排出するため、図3(a)の底壁17の投影図から理解されるように、その水平断面は一般に楕円形状として絞り出しを行いやすい形状としており、長軸(A−A)と短軸(B−B)の交点Oが底壁17の中心となり、この中心Oを通るようにパーティングラインXが現われている。
従来公知のダイレクトブロー成形オレフィン系樹脂ボトルでは、底壁17に上げ底部31が形成されているとしても、成形時の型抜きの観点から、その傾斜角は極めて小さく、従って、底壁17は、平底に近い形状となっている。
これに対して、本発明のボトル10では、この傾斜壁33の内面の最大傾斜角を大きく設定すると同時に、上げ底部31が底壁17を占める面積割合が一定値以下と小さく設定されている。
即ち、周状接地面30と上げ底部31とに連なっている傾斜壁33は、例えば図3(c)に示されているように、その下端部(周状接地面30との接合部)及びその上端部(上げ底部31との接合部)が曲率面となっており、その傾斜壁33の内面の接線の水平面に対する傾斜角(外面の傾斜角も同様)は、下端部でゼロであり、上方に向かって次第に大きくなり、最大傾斜角をとる。上端部近傍では、上方に向かって次第に小さくなり、傾斜角が20度となった後、上端部でゼロとなる。この傾斜角が20度である境界の内側部分が上げ底部31となっている。従って、上端と下端との間の部分で、その傾斜角は最大となり、傾斜壁33の内面の殆んどの部分は、この最大傾斜角と同じか(下端と上端の間がフラットな場合)或いは最大傾斜角に近い(下端と上端の間も曲率を有している場合)角度となっている。底壁17の傾斜壁33の内面に付着した非油性内容物の滑落性は、当然のことながら、この傾斜壁33の傾斜角度が大きいほど高くなり、従って、傾斜壁33の内面の大部分を占める最大傾斜角度或いは最大傾斜角度に近い傾斜角度を示す領域が、滑落性を支配することとなり、この最大傾斜角度が大きい程、傾斜壁33の内面での滑落性は高くなっている。
本発明においては、このような傾斜壁33の最大傾斜角度を底壁17の中心Oを通る垂直断面で算出し、このような任意の垂直断面での最大傾斜角度を30度以上、特に35度以上とすることにより、非油性内容物に対する傾斜壁33の内面での滑落性を高めているわけである。例えば、A−A断面での傾斜壁33の最大傾斜角度α(図3(b)参照)とB−B断面での傾斜壁33の最大傾斜角度β(図3(c)参照)とは、同じであっても異なっていてもよい。この最大傾斜角度が上記範囲よりも小さいと、この傾斜壁33の内面に非油性内容物が付着残存し易く、ボトルを倒立状態に保持した場合にも、この部分に付着した非油性内容物が滑落し難くなってしまうからである。
また、上記の最大傾斜角が必要以上に大きいと、ダイレクトブロー成形において、成形終了後の型抜きがかなりの無理抜きとなってしまい、底壁17の変形等の成形不良を生じ易くなってしまうおそれがあり、また、成形不良が生じないとしても、上げ底部31が接地面30に対してかなり高い位置に形成されてしまい、この結果、ボトルの内容積が低減されてしまうおそれがある。このため、上記の最大傾斜角度は70度以下、特に65度以下の範囲にあるのが好ましい。
さらに、本発明においては、上げ底部31が底壁17を占める面積比率、具体的には、底壁17の周状接地面30を含む投影面に対して、該投影面中を占める上げ底部31の投影面(図3(a)中、17で示す斜線部)の面積比率が45%以下、特に40%以下とすることも重要である。即ち、後述する実施例の実験結果からも理解されるように、ボトルを倒立保持した場合において、この上げ底部17の内面に最も多く非油性内容物が付着残存してしまい、ボトルの廃棄などに際しては、この排出のために、ボトル内の洗浄等の面倒な作業が必要となってしまう。本発明においては、ボトルの層構成を前述した多層構成とし且つ上げ底部17の面積比率を低く抑えることにより、底壁17の内面に付着残存する非油性内容物の量を大幅に低減することができるのである。
尚、図3(c)から理解されるように、上げ底部31のB−B断面、即ち、パーティングラインXに対して垂直方向の垂直断面(B−B断面)での上げ底部31の側断面では、一般に、その中心下面に小さな懸垂部31aが形成される。即ち、ダイレクトブロー成形に際しては、開放された2分割金型の間にパイプ形状の溶融パリソンを配置し、この状態で金型を閉じることにより、溶融パリソンの一端部が閉じられ、従って、このパリソン内にエアー等の流体をブローすることにより、ボトル形状に成形される。従って、金型を閉じたときに、底壁となる部分では樹脂が集中し、かなりの厚肉となってしまう。しかるに、上記のような懸垂部31aが形成されるような形状としておけば、金型を閉じた時に、底壁となる部分での樹脂の集中が緩和され、局部的な厚肉化を有効に回避でき、底壁17の厚みが均一となるように成形することが可能となる。
また、上げ底部31の上面は、必ずしもフラットな面ではなく、適度な曲率面となっていてもいが(図3(c)参照)、本発明では、このような上げ底部31の面積比率が小さく設定されているため、このような上げ底部31の上面の形状は、非油性内容物の滑落性に与える影響は無視することができる。
さらに、パーティングラインXに対して垂直方向での垂直断面(B−B断面)でみて、周状接地面30間の間隔D(底壁17の短軸部での幅に相当)と上げ底部31との高さH(懸垂部31aと周状接地面30を含む水平面との間隔)との比D/Hは2〜10、好ましくは2乃至8の範囲に設定されていることが好ましい。即ち、この値が過度に小さいと、上げ底部31が過度に上方に形成されてしまい、この結果、2分割金型を用いての成形が困難となってしまうおそれがあり、例えば4分割金型などの複雑な金型の使用が必須となってしまい、成形性の面で不利となってしまう。また、この値が大き過ぎると、上げ底部31の面積比率を前述した低い範囲に抑えることが困難となるおそれを生じる。
上述した本発明のダイレクトブロー成形オレフィン系樹脂ボトルは、ケチャップ、水性糊、蜂蜜などの非油性内容物を充填して使用に供される。
このような本発明のボトルは、これを倒立保存しておくことにより、容易に粘稠な非油性内容物を口部側に落下せしめ、容易に排出することができ、しかも、ボトルの底壁への内容物の付着残存を効果的に抑制し、使用済みボトルに残存する内容物量を大幅に低減することができる。
本発明を次の実験例にて説明する。
尚、以下の実施例等で行った各種の特性、物性等の測定方法及びボトルの成形に用いた樹脂等は次の通りである。
(1)ボトル底壁の傾斜壁の上げ底部面積率及び最大傾斜角
ダイレクトブロー成形により作製した容量500gのボトル底壁の内面3次元形状をVIVID9i(コニカミノルタセンシング製)により計測した。得られた底壁の3次元形状をRapidForm(INUS Technology製)を用い、周状接地面を含む水平面に投影し、底壁の水平面投影図を得た。得られた投影図および、3次元形状から、上げ底部の投影図における面積率を算出した。また、図3におけるA−A断面およびB−B断面における水平面に対する傾斜壁の接線の最大角を最大傾斜角とした。
(2)用いた樹脂の物性測定
各層の形成に用いた樹脂のMFRは、ASTM D123(190℃)、密度はASTM D792によりそれぞれ測定し、さらにガラス転移点(Tg)は、0℃以上の場合にはDSC法により、0℃未満の場合には、動的粘弾性法により測定した。
(3)滑落速度測定
ダイレクトブロー成形により作製した容量500gのボトルに温度45℃のトマトケチャップを充填した後、口部をシールし22℃で14日間保管した。保管後、ボトルから全量取り出し、容器内面を蒸留水で洗浄、常温下で乾燥した。このボトルの胴部から10mm×60mmの試験片を切り出した。23℃50%RHの条件下、固液界面解析システムDropMaster700(協和界面化学(株)製)を用い、試験片の内層が上になるように固定し、70mgのケチャップ(23℃における粘度=1500mPa・s)を試験片にのせ、85°の傾斜角における滑落挙動をカメラで測定するとともに、滑落挙動を解析し移動距離−時間のプロットから滑落速度を算出した。
(4)内容物残量評価
ダイレクトブロー成形により作製した容量500gのボトルに温度45℃のトマトケチャップを充填した後、口部をシールし23℃で3日間保管した。保管後、ボトルから400g使用し、残存量100gとし1時間正立保管した。その後、20分間かけてスクイズして内容品を使用した後、底部から30mmの位置を底部/胴部の境界、キャップ天面から60mmの位置を首部/胴部の境界とし、ボトルを底部、胴部、首部に3分割させ、各々の重量(A)を測った。重量測定後、付着残存したケチャップを水道水で洗い流し、乾燥させた後、再度重量(B)を測り、(B)−(A)を残存量とした。
n=3(nは試験回数)について求めた内容物残存量の平均を表1に示した。
得られた内容物残存量(g)を次の基準で評点にし、○を許容レベルとした。
○:5.0g未満
×:5.0g以上
(5)用いた樹脂種類及び有機滑剤
ボトル各層の形成のために、下記の樹脂を用いた。
<最外層、接着剤層、滑剤遮断中間層>
<最外層用樹脂>
樹脂A:
低密度ポリエチレン
MFR;0.4g/10min
密度;0.92g/cm
(有機滑剤として、オレイン酸アミドを0.03重量%含有)
樹脂B:
低密度ポリエチレン
MFR;0.4g/10min
密度;0.92g/cm
(有機滑剤として、オレイン酸アミドを0.3重量%含有)
<接着剤層>
無水マレイン酸変性ポリエチレン
<滑剤遮断層(中間層)>
エチレンビニルアルコール共重合体(密度1.19g/cm、Tg69℃)
<最内層用樹脂>
樹脂A:
低密度ポリエチレン
MFR;0.4g/10min
密度;0.92g/cm
(有機滑剤として、オレイン酸アミドを0.03重量%含有)
樹脂B:
低密度ポリエチレン
MFR;0.4g/10min
密度;0.92g/cm
(有機滑剤として、オレイン酸アミドを0.3重量%含有)
(実験例1)
50mm押出機に最内層隣接層形成用樹脂として、オレイン酸アミドを0.03重量%含有する低密度ポリエチレン、40mm押出機に、最外層および最内層形成用樹脂として、オレイン酸アミド0.3重量%含有する低密度ポリエチレン、30mm押出機Aに接着剤層形成用樹脂として無水マレイン酸変性ポリエチレン、30mm押出機Bに滑剤遮断性中間層形成用樹脂としてエチレンビニルアルコール共重合体の樹脂ペレットをそれぞれ供給し、温度210度の多層ダイヘッドより溶融パリソンを押し出し、公知のダイレクトブロー成形法により内容量500g、重量20gのケチャップ用4種6層の多層ボトルを作製した。
このボトルの胴部層構成は以下の通りである。
最外層:30μm
接着材層:6μm
滑剤遮断性中間層:20μm
接着材層:6μm
最内隣接層:200μm
最内層:100μm
また、このボトルの底壁形状は図3に示す通りであり、上げ底部の平面形状が楕円形、図3における傾斜角αが60度、傾斜角βが40度であり、上げ底部の面積率は30%、D/Hは4.6である。
このボトルについて、滑落速度測定および内容物残量評価を行い、結果を表1に示した。
(実験例2)
最内層および最外層形成用樹脂を樹脂A(有機滑剤としてオレイン酸アミドを0.03重量%含有の低密度ポリエチレン)とし、図3における傾斜角αが60度、傾斜角βが30度、上げ底部の面積率が63%となるように底壁の形状を変更した以外は、実験例1と同様の条件でボトルを作製した。このボトルについて、滑落速度測定および内容物残存評価を行い、結果を表1に示した。
(実験例3)
最内層および最外層形成用樹脂を樹脂A(有機滑剤としてオレイン酸アミドを0.03重量%含有の低密度ポリエチレン)とし、図3における傾斜角αが60度、傾斜角βが40度、上げ底部の面積率が30%となるように底壁の形状を変更した以外は、実験例1と同様の条件でボトルを作製した。このボトルについて、滑落速度測定および内容物残存評価を行い、結果を表1に示した。
表1から、上げ底部が大部分を占めている底壁形状を有し、最内層に低濃度のオレイン酸アミドを配合したポリエチレンを用いたボトル(実験例2)では、内容物残存評価を行った際、ボトルの底壁の内面に付着残存した量は2.2gであり、胴壁内面に付着残存したケチャップの量は1.1gであった。底壁形状のみを変更し、底上げ部面積率を低減させたボトル(実験例3)について、同様の実験を行うと、底壁内面に付着残存した量は1.9gであり、胴壁内面に付着残存したケチャップ量は1.3gであり、ボトルの底壁内面でのケチャップの付着残存量は、実験例2に比して少なくなっている。一方、底壁形状の変更と同時に最内層のオレフィン系樹脂層に高濃度のオレイン酸アミドが配合されているボトル(実験例1)では、底壁内面に付着残存した量は0.3gであり、胴壁内面内に付着残存したケチャップ量は0.2gであり、上記の実験例2,3に比して、胴壁内面及び底壁内面に付着残存したケチャップ量は何れも大幅に少なくなっており、有機滑剤成分のブリーディング効果と底壁の形状効果とが相乗的に採用して、非油性内容物のボトル内(特に底壁内面)への付着残存を最も効果的に防止できることが判る。
また、ボトル全体の残存量においても、実験例1では、実験例2,3と比較し、残存量が最も低減されていることが判る。
Figure 2011251519
17:底壁
30:周状接地面
31:上げ底部
33:傾斜壁

Claims (6)

  1. ダイレクトブローにより形成され且つオレフィン系樹脂の最内層を含む多層構造を有している非油性内容物用オレフィン系樹脂ボトルにおいて、
    前記ボトルの胴部壁の下端が、該ボトルを正立保持したときの接地部を含む周状接地面となっており、
    前記周状接地面で囲まれている底壁には、ダイレクトブロー成形に用いる割型に由来して該底壁に現われるパーティングラインを含む位置に、該周状接地面よりも高い上げ底部が形成されており、
    前記周状接地面と該上げ底部との間に形成される傾斜壁は、該周状接地面に対して底壁中心を含む垂直断面でみて、水平面に対する該傾斜壁接線の傾斜角の最大角度が30度以上に傾斜した内面を有しており、
    前記底壁を周状接地面を含む水平面に投影したとき、該上げ底部の投影面が底壁全体の投影面積の45%以下に抑制されていると共に、
    前記最内層には、滑剤成分として、脂肪族アミドが配合されていることを特徴とする非油性内容物用オレフィン系樹脂ボトル。
  2. 前記最内層は、その表面を水平面に対する傾斜角85度となるように傾斜した状態で、粘度が1000乃至2000mPa・s(23℃)の非油性内容物70mgを、23℃において滑落させたときの滑落速度が5mm/min以上となる表面特性を有している請求項1に記載の非油性内容物用オレフィン系樹脂ボトル。
  3. 前記パーティングラインに対して垂直方向で且つ底壁中心を含む垂直断面でみて、周状接地面間の間隔をD、前記上げ底部の下面と該周状接地面とを含む水平面との間隔をHとしたとき、D/Hが2〜10の範囲にある請求項1または2に記載の非油性内容物用オレフィン系樹脂ボトル。
  4. 前記最内層には、前記脂肪族アミドが0.05重量%以上、0.4重量%未満の量で配合されている請求項1乃至3の何れかに記載の非油性内容物用オレフィン系樹脂ボトル。
  5. 前記脂肪族アミドが不飽和脂肪族アミドであり、非油性内容物の常温充填に適用される請求項4に記載の非油性内容物用オレフィン系樹脂ボトル。
  6. 前記脂肪族アミドが飽和脂肪族アミドであり、非油性内容物の熱間充填に適用される請求項4に記載の非油性内容物用オレフィン系樹脂ボトル。
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