JP2011246540A - ポリオレフィンの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】蒸発潜熱除熱型重合槽を用いたポリオレフィンの製造方法において、蒸発ガスを凝縮及び冷却する凝縮器への冷媒供給量を略一定とし、凝縮器で凝縮された凝縮液を重合槽に供給する量を制御することにより重合槽内の温度を制御して、オレフィンを重合することを特徴とするポリオレフィンの製造方法。
【選択図】図1
Description
連続溶液重合において、重合を定常的に進行させるためには、重合反応による熱を除去して重合槽内の温度の上昇を防ぎ、かつ、重合温度を所望の値に一定に保つことが必要である。重合温度を一定に保つことは、分子量のムラが少ない高品位な重合体を安定して製造することにも繋がる。
熱伝達型は、重合槽外壁に設けたジャケット又は重合槽内部に設けたコイル等に冷媒を流し、伝熱面を介して熱伝達により除熱する方式である。
顕熱利用型は、予め低い温度に設定したモノマーや溶媒等を重合槽に供給することで重合槽内部の温度を低下されるものである。
蒸発潜熱型は、モノマーや溶媒等の蒸発潜熱を利用して重合槽を冷却する方式である。
このような特徴を有する蒸発潜熱型除熱は、除熱手段として工業操作上一般的に用いられる技術であり、オレフィンの重合を始め、ジエン重合や塩化ビニル重合等に広く適用され、実用例も多い。
特許文献1の重合方法では、重合温度に対する操作因子である非凝縮ガスの循環量の操作感度が非常に大きいため、バッチ反応における短時間の大まかな温度の制御は可能であるが、連続系で重合温度を厳密に制御することは困難であった。
1.蒸発潜熱除熱型重合槽を用いたポリオレフィンの製造方法において、蒸発ガスを凝縮及び冷却する凝縮器への冷媒供給量を略一定とし、前記凝縮器で凝縮された凝縮液を重合槽に供給する量を制御することにより重合槽内の温度を制御して、オレフィンを重合することを特徴とするポリオレフィンの製造方法。
2.前記凝縮器で凝縮された凝縮液を受け取る凝縮液受槽を設け、前記凝縮液受槽における凝縮液の量を所定量に制御することを特徴とする1に記載のポリオレフィンの製造方法。
3.前記凝縮液受槽の凝縮液の量を、非凝縮ガスを重合槽に戻す量により制御することを特徴とする1又は2に記載のポリオレフィンの製造方法。
4.前記凝縮器への冷媒供給量をA、非凝縮ガスを重合槽に戻す量をB、凝縮液を重合槽に戻す量をCとした際に、下記の条件(1)及び(2)を満たすようにA〜Cを制御することを特徴とする3に記載のポリオレフィンの製造方法。
0.57≦A/B≦53.3 (1)
5.0≦A/C≦320 (2)
5.前記重合槽内の液相部の溶液粘度を、0.1〜5,000mPa・sとし、連続溶液重合することを特徴とする1〜4のいずれかに記載のポリオレフィンの製造方法。
6.原料モノマーがプロピレンであることを特徴とする1〜5のいずれかに記載のポリオレフィンの製造方法。
図1は、本発明の実施に供する蒸発潜熱除熱型重合槽の一例の概略図である。尚、図1において各種の供給管や製品であるポリオレフィンの取出管等は省略している。
蒸発潜熱除熱型重合槽は、撹拌装置を有する重合槽10、蒸発ガスを凝縮、冷却し、凝縮液を重合槽10に循環させる循環管路20、及び非凝縮ガスを重合槽10に循環させる循環管路30を主な構成要素とする。
稼働中の重合槽10内には液相部と気相部が形成され、供給されたオレフィンモノマーを液相部にて重合させてポリオレフィンとする。
尚、凝縮器には固定管板式熱交換器を利用できる。蒸発ガス内に微量に含まれる飛沫同伴ポリマー溶液が熱交換器内で固化することを防ぐため、縦型で、重合槽気相部からの蒸発ガスを下降流で冷却するダウンフロー型とし、重合槽気相部からの蒸発ガスはチューブ側を、冷媒はシェル側を通過させることが好ましい。また、凝縮液の一部を凝縮器管板に連続的にスプレーすることも好ましい。
本発明では、凝縮器21への冷媒供給量を略一定とする。そして、重合槽10の手前に設けたバルブ24等の流量調節手段により凝縮器21で凝縮した凝縮液を重合槽に供給する量を制御する。これにより、凝縮液の循環量を直接的に制御できるため、重合槽10内の温度をより高精度に制御できる。
尚、本願において「略一定」とは、定常状態における重合槽の温度制御のために冷媒供給量を意図的に変動させないという意味である。従って、設備始動時や冷媒循環装置の性能上生じうる供給量の変動等は考慮しない。
尚、本発明は凝縮液受槽22の設置に限定されず、凝縮液の過不足を防止できる機構であれば問題なく採用できる。
尚、冷媒としては入手が容易な35℃以下の水が好ましい。一般に使用される循環機構により凝縮器に冷媒を循環させる。
本発明の製造方法は、粘度が100mPa・sより高い粘度領域で特に有用な技術である。重合槽ジャケットで温度を制御する場合は、熱伝導率が小さいことから温度制御が困難となるが、本発明では多少粘度が高くても高精度な温度制御が可能である。
また、連続溶液重合することが好ましい。
0.57≦A/B≦53.3 (1)
5.0≦A/C≦320 (2)
5.62≦A/D≦50 (3)
0.38≦B/C≦140 (4)
0.42≦B/D≦13 (5)
0.07≦C/D≦1.5 (6)
(式中、A〜Cは上記式(1)(2)と同様であり、Dはポリオレフィンの濃度(wt%)である。)
尚、重合中に水素を少量存在させることにより、ドーマント状態の触媒を再活性化させる効果がある。そのため、水素濃度が下限値より小さいと触媒活性が低下し、一定の生産量を確保するために必要な触媒量が増加するため、経済的に不利となることがある。一方、水素濃度は製品グレードに応じて分子量を制御するため、上限値より大きいと分子量が低くなりすぎてしまうことがある。
また、水素を使用する場合、重合槽に戻す非凝縮ガスを直接液相部に供給することが好ましい。これにより、液相部への水素溶解を促進でき、重合反応が水素溶解律速となることを防止できる。
重合溶液の抜出し方法は、重合槽上部からのオーバーフロー抜出し、あるいは、ボトムからの抜出しも利用できる。
大型翼を備えた内容積68.2m3(気相部18.2m3、液相部50.0m3)の重合槽に、溶媒としてヘプタン、モノマーとしてプロピレンを連続的に供給し、ポリプロピレンを製造した。重合槽温度を71.5℃に設定し、圧力1.7MpaG、液相の平均滞留時間は1.9時間に設定した。重合条件下での気相部の組成は、水素/プロピレン/ヘプタン=3.1/95.3/1.6mol%に設定した。触媒は、トリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液を含む(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(3−トリメチルシリルメチル−インデニル)ジルコニウムジクロライド及びジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートを溶解させたメタキシレン溶液に予めプロピレンを反応させ予備活性化したものを用い、連続的に重合槽へ供給した(国際公開第WO2006−117983を参照)。
尚、攪拌機の単位液容積当たりの攪拌動力は1.5kW/m3であった。分子量の微調節には水素を用いた。
重合槽の気相部から、コンプレッサにより蒸発ガスを844m3/hの流量で強制的に抜出し、凝縮器にて38.0℃に冷却した。
定常状態において、凝縮器への冷媒供給量Aを474t/hで一定とした。また、非凝縮ガスを重合槽に戻す量Bを制御することで凝縮液受槽における凝縮液の保有量を一定に制御した。非凝縮ガスを重合槽に戻す量は、154m3/h付近で制御した。
さらに、凝縮液を重合槽に戻す量Cを制御することにより、重合温度を制御した。凝縮液を重合槽に戻す量は、22.5t/h付近で制御した。
得られたポリプロピレンの極限粘度[η]は0.90〜0.95dL/gであり、分子量分布(Mw/Mn)は2.4以下であった。分子量分布が小さく、分子量のムラが少ない高品位な重合体が得られた。
また、ポリプロピレンの極限粘度[η]は(株)離合社のVMR−053型自動粘度計を用い、デカリン溶媒中135℃において測定した。
分子量分布(Mw/Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)法により、下記の装置及び条件で測定したポリエチレン換算の重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnより算出した値である。
・GPC測定装置
カラム:TOSO GMHHR−H(S)HT
検出器:液体クロマトグラム用RI検出器 WATERS 150C
・測定条件
溶媒:1,2,4−トリクロロベンゼン
測定温度:145℃
流速:1.0ミリリットル/分
試料濃度:2.2mg/ミリリットル
注入量:60マイクロリットル
検量線:Universal Calibration
解析プログラム:HT−GPC(Ver.1.0)
以下に示す条件を変更した他は、実施例1と同様にして重合した。
・気相部からの蒸発ガス量の抜き出し量:803m3/h
・重合温度:78.0℃に設定
・製造中の気相部の組成:水素/プロピレン/ヘプタン=3.3/94.4/2.3mol%
・非凝縮ガスを重合槽に戻す量B:145m3/h付近で制御
・凝縮液を重合槽に戻す量C:20.9t/h付近で制御
・重合槽液相部の粘度:153mPa・s
以下に示す条件を変更した他は、実施例1と同様にして重合した。
・気相部からの蒸発ガス量の抜き出し量:715m3/h
・重合温度:88.5℃に設定
・重合条件下での気相部の組成:水素/プロピレン/ヘプタン=3.1/93.3/3.6mol%
・非凝縮ガスを反応液に戻す量B:106m3/h付近で制御
・凝縮液を反応液に戻す量C:18.9t/h付近で制御
・重合槽液相部の粘度:33mPa・s
実施例1において、凝縮器への冷媒供給量Aを474t/hとし、非凝縮ガスを重合層に戻す量Cを変動させることで重合温度を制御した。非凝縮ガスの供給量は154m3/h付近で制御した。尚、凝縮液を重合槽に戻す量Bは、凝縮液受槽における凝縮液の保有量を一定に保つように適宜変動させた。凝縮液を重合槽に戻す量Bの平均値は22.5t/hであった。
その結果、製造中の重合温度の変動は±0.4℃よりも大きくなった。また、分子量分布は2.4よりも大きくなり、実施例1で得られたポリマーと比較して分子量のバラつきが大きかった。
表1に、実施例1−3及び比較例1の製造条件及び計算結果を示す。尚、表1の値は製造時の定常状態(設定値)の値である。
11 温度センサー
20 循環管路
21 凝縮器
22 凝縮液受槽
23 流量計
24 バルブ
30 循環管路
31 液面レベル計
32 圧縮機
33、35 流量計
34、36 バルブ
P ポンプ
Claims (6)
- 蒸発潜熱除熱型重合槽を用いたポリオレフィンの製造方法において、
蒸発ガスを凝縮及び冷却する凝縮器への冷媒供給量を略一定とし、
前記凝縮器で凝縮された凝縮液を重合槽に供給する量を制御することにより重合槽内の温度を制御して、オレフィンを重合することを特徴とするポリオレフィンの製造方法。 - 前記凝縮器で凝縮された凝縮液を受け取る凝縮液受槽を設け、
前記凝縮液受槽における凝縮液の量を所定量に制御することを特徴とする請求項1に記載のポリオレフィンの製造方法。 - 前記凝縮液受槽の凝縮液の量を、非凝縮ガスを重合槽に戻す量により制御することを特徴とする請求項1又は2に記載のポリオレフィンの製造方法。
- 前記凝縮器への冷媒供給量をA、非凝縮ガスを重合槽に戻す量をB、凝縮液を重合槽に戻す量をCとした際に、下記の条件(1)及び(2)を満たすようにA〜Cを制御することを特徴とする請求項3に記載のポリオレフィンの製造方法。
0.57≦A/B≦53.3 (1)
5.0≦A/C≦320 (2) - 前記重合槽内の液相部の溶液粘度を、0.1〜5,000mPa・sとし、
連続溶液重合することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリオレフィンの製造方法。 - 原料モノマーがプロピレンであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のポリオレフィンの製造方法。
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