JP2011245282A - ステントグラフト用基布およびステントグラフト - Google Patents

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和哉 藤田
Tomoyuki Horiguchi
智之 堀口
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一裕 棚橋
Makoto Matsuo
良 松生
Asanori Shimada
浅則 島田
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Abstract

【課題】薄さと高強力、低透水性、柔軟性を両立するステントグラフト用基布、及び、より細いカテーテルに挿入可能なステントグラフトを提供する。
【解決手段】ステントグラフト用基布の織密度がタテヨコ共に150本/2.54cm以上、厚みが1〜90μm、総繊度が1〜40デシテックス、単糸繊度が0.1〜2.0デシテックスとする。
【選択図】なし

Description

本発明は、動脈瘤を再建又は修復する器具に関し、特に、動脈瘤、例えば腹部大動脈瘤及び胸部大動脈瘤を再建又は修復する経皮的に且つ(或いは)経管的に運搬されるステントグラフトおよびステントグラフト用基布に関する。
動脈瘤は動脈壁の異常拡張であり、腹部大動脈瘤や胸部大動脈瘤がある。腹部大動脈瘤は、通常は2本の腸骨動脈付近、或いは腎動脈の近くに位置する動脈の腹側部分中の動脈瘤である。また胸部大動脈瘤は、大動脈の胸側部分内の動脈瘤である。治療しないままにしておくと動脈瘤は破裂し、致命的な大出血を引き起こす危険性がある。
腹部大動脈瘤の治療には通常外科バイパス術を行い、この際患部又は拡張セグメント内へのグラフトの配置を伴う。ここで、経腹膜又は腹膜後方式を介する合成グラフトへの置換・切除が標準的な治療法であったが、危険性を伴うものであった。例えば、合併症としては、手術時心筋虚血、腎不全、勃起不能、腸虚血、感染、下肢虚血、麻痺を伴う脊髄損傷、大動脈−内臓瘻及び死が挙げられる。腹部大動脈瘤の外科的治療は高い死亡率を示すものとされている。
また、死亡率の高さに加え、大きな手術切開部及び腹腔の開放と関連して回復期間が長い問題、グラフトを大動脈に縫合する際の困難さ、グラフトを支持して補強する生来の血栓作用の喪失、腹部大動脈瘤のある多くの患者にとって手術が不適当である問題、及び動脈の破裂後における緊急手術の実施と関連した問題が挙げられる。腹部大動脈瘤のある多くの患者は、これら患者のうちの多くは高年齢であることと関連して、他の慢性の病気、例えば、心臓病、肺病、肝臓病及び(又は)腎臓病を抱えていることがあるので、手術の候補者としては理想的とは言えない。
上記動脈瘤が胸部大動脈中に生じる場合については、腹部大動脈瘤の場合と同様、広く受け入れられている治療方法は、手術による再建であり、これには動脈瘤セグメントをプロテーゼ器具で置き換える手技を含む。しかしながらこの手術は、上述したように、高いリスクがつきものであり、相当高い死亡率及び罹病率を伴う大きな計画である。
一方、カテーテルを用いた技術の開発に関心が向けられた多大な研究がなされている。これは、ステントグラフトの開発によって容易なものになり、患者が病院及びICUにいる期間を短くできることと共に手術による罹病率及び死亡率が低いことが利点として挙げられている。
ステントグラフトの運搬は一般的に、患部から見て遠隔の動脈、例えば、総大腿又は上腕動脈の外科的な切開を行い、そこから患部まで挿入されたカテーテルを介して、X線透視下で行われる。適当なサイズの導入器をガイドワイヤに嵌め、カテーテル及びガイドワイヤを動脈瘤中に通す。そして、導入器を通してステントグラフトをガイドワイヤに沿って適当な位置まで前進させる。大抵のステントグラフトは、自己拡張型であるが、追加の血管内カテーテル手技、例えば、バルーン血管形成術が、ステントグラフトの位置を固定するために必要な場合がある。ステントグラフトの配置に続き、X線造影剤を患部に注入することによって標準血管造影図を得ることができる。
上述のカテーテルの直径は大きく、代表的には20フレンチ(Fr)(3Fr=1mm)程度なので、現状では侵襲度が低いとは言えず、動脈切開部の閉鎖には外科手術による再建が必要である。また、血管が細い患者はステントグラフトの挿入が困難であるため適用範囲からははずれ、いまだにこの治療の恩恵にあずかっていない。従って、より直径が小さいカテーテルに収納可能なステントグラフトの設計が必要となる。具体的には、血管等への挿入時に、可能な限り細い血管からでも挿入可能なように、ステント及び布を折り畳んだときに細くなるように、そして柔軟性を持たせるような工夫が、ステントグラフトに対してなされている。
ここで、ステントグラフト用基布における改良としては、従来の布をより薄くすることが考えられるが、単純に薄くすると布の強力低下や透水性が増加する問題がある。そこで、表面に超極細繊維の起毛を形成させ、挿入時に基布が圧縮された状態では0.2mm以下の厚みであり、血管内に留置された後は0.4mm以上となる基布が開示されている(例えば、特許文献1参照)。また、織物等を構成する糸を5〜40デニールとして薄い構造とする技術もある(特許文献2参照)。
特開2000−225198号公報 特表2008−505713号公報
特許文献1に記載の基布のように起毛表面を有する場合、圧縮時と開放時の厚みが変化する特徴を有する。しかし、起毛布はその構造上絶対的な厚みを有しており、例えば基布の厚みを90μm以下とすることは困難であった。さらに、起毛されている状態では柔軟であっても圧縮した場合は起毛同士が絡まりあい、風合いが固くなるため、例えば18Fr以下のカテーテルに挿入することが困難になる。
また、起毛布は起毛している際には構造が粗くなるため、起毛繊維に細胞が積極的に吸着することを促進する効果があるが、逆に繊維密度が少なく強力に劣る傾向にある。また、透水性が高くなり、血液や造影剤の漏洩にも繋がることから好ましくない。
一方、特許文献2に記載のように細繊度の糸を用いることは薄い基材を製造することに有効であるが、コーティングなどの処置なしで基材に強度を持たせることは容易ではない。
具体的には、糸を細くすると、織物強度は低下する傾向にあるため、一定の強度を保つためには限界があり、また、透水性を低くするために糸間距離を短くすると、必然的に織密度を増加させることに繋がり、そのため、織物基材の絶対的な厚みを小さくすることは困難で、より細いカテーテルに挿入できるステントグラフト用基材の薄地化に限界があった。これを補うために織物にコーティングを施して、細い糸の織物基材でも充分な強度を付与することで薄地化を可能にしているが、コーティングのため膜剤の耐久性に問題を抱えるものであった。従って、薄さと高強力、低透水性、耐久性、柔軟性を全て満足する手段が見出せていなかった。
本発明は上記課題を解決するために、以下の構成を有する。すなわち、本発明のステントグラフト用基布は、織密度がタテヨコ共に150本/2.54cm以上、カバーファクターが1300〜4000、総繊度が1.0〜40デシテックス、単糸繊度が0.1〜2.0デシテックス、厚みが1〜90μmであることを特徴とするものである。また、本発明のステントグラフトは本発明のステントグラフト用基布とステントよりなることを特徴とするものである。
本発明によれば、薄さと高強力、低透水性、耐久性、柔軟性を具備するステントグラフト用基布を得ることができる。そして、より細いカテーテルに挿入可能なステントグラフトを提供することができる。
図1は、生地最表面に略平行の辺を有する断面形状の一例の1000倍拡大写真である。 図2は、図1の一部をさらに拡大した3500倍拡大写真である。 図3は、最表面の繊維が変形していない一般的な織物の断面図の一例の1000倍拡大写真である。
本発明のステントグラフト用基布は、織物よりなるものである。布の構造には他に編物、不織布等があるが、本発明において薄さと強力を両立するためには織物であることが必要である。基布の厚みは1〜90μmであり、好ましくは10〜80μm、より好ましくは10〜60μmである。90μm以下であれば、18Fr以下の細いカテーテルにも挿入することができる。また1μm以上であれば、強力を維持することができる。
織物を構成する繊維としては、生体適合性を有するポリマーであれば特に限定されるものではなく、例えば、ポリエステル、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリウレタン、ポリアミド、ナイロン等を用いることができるが、強度に優れる点でポリエステル、特にポリエチレンテレフタレートでることが好ましい。
繊維の総繊度は1〜40デシテックスであることが好ましい。5〜35デシテックスであることがより好ましく、10〜25デシテックスであることがさらに好ましい。1デシテックス以上とすることで、基布に必要な強力を維持することができ、40デシテックス以下とすることで、基布の厚みを低減することが可能となる。また、単糸繊度は0.1〜2.0デシテックスであることが好ましく、0.3〜1.0デシテックスであることがより好ましい。0.5デシテックス以下であることがさらに好ましい。0.1デシテックス以上で単糸の糸強度を損なうことがなく、また、摩耗による破断を抑制することができ、2.0デシテックス以下とすることで基布の柔軟性を持たすことができる。
上記の繊維はモノフィラメントよりもマルチフィラメントであることが、耐摩耗性と柔軟性の点で好ましい。マルチフィラメントとすることで、外部からの力に柔軟に対応でき、摩耗やズレによる柔らかさを発現する。マルチフィラメントの形態は、無撚りでも、仮撚り糸や撚糸であっても良いが、撚糸は繊維が収束しやすくなるので、上記の効果に優れつつ薄さと低透水性を両立するために無撚り又は仮撚り糸であることが好ましい。
織物の構造としては、平織、綾織、朱子織、二重織、袋織等特に限定するものではないが、基布の薄さと強力を両立することが容易な点で、平織または綾織が好ましい。
本発明のステントグラフト用基布は、織物の少なくとも一方の面の最表面層に、(i)織物の厚みの中心線に略平行な辺を有する断面形状の繊維、および/または(ii)織物の厚みの中心線に略平行な長軸を有する断面形状の繊維 が含まれていることが好ましい。ここで、「織物の厚みの中心線」とは、織物の厚み方向の中心点を結んだ線のことである。「略平行」とは、基布の厚みの中心線に対して20°以下、好ましくは10°以下、さらに好ましくは5°以下の角度をなす辺または長軸である。通常の円、三角中空等の断面形状を有する繊維で構成された織物であっても、織物の厚みの中心線に略平行な辺を有する断面形状に変形した繊維が最表層に含まれていればよい。あるいは、偏平の断面形状を有する繊維で構成された織物であれば、長軸方向が織物の厚みの中心線に略平行なっている繊維が最表層に含まれていればよい。このような織物とすることで、繊度が細くあるいは織密度が粗くても透水性を低くできるので、低透水性と柔軟性とをさらに高いレベルで両立することができる。また、織物の表裏両面の最表層に上記(i)および/または(ii)の繊維が含まれていることがより好ましい。また、織物の最表層の繊維が全て上記(i)および/または(ii)の繊維であることがより好ましい。
上記(i)の繊維を得るには、円や三角等の断面を有する繊維で製織した後、カレンダー等でプレス処理する手段や摩耗させて研削する手段等が挙げられる。低透水性と柔軟性をより高いレベルで両立させるにはカレンダー等でプレス処理する手段が好ましい。
本発明の構成を採ることにより、糸の繊度が小さいことから柔軟性も付与される。柔軟性が優れる基布、特に後述の通りカンチレバー剛軟度でタテおよびヨコ方向の剛性で50mm以下を達成するには、織り密度を粗くすればよいが、そうすると透水性が増加する。一般的に、高密度織物は風合いの硬いものとなるが、繊維の総繊度が1〜40デシテックスであり、単糸繊度は0.1〜2.0デシテックスの繊維を使えば、織密度を高めても柔軟性を持たせることができる。繊維の総繊度は5〜35デシテックスであることがより好ましく、10〜25デシテックスであることがさらに好ましい。単糸繊度は0.3〜1.5デシテックスであることがより好ましい。
反対に透水性を抑制する場合、特に透水性を250mL/cm/min以下とする場合、緻密に織る必要があるが、そうすると風合いの硬い織物となる。このように、柔軟性と透水性はトレードオフの関係にあるが、上述のように本願発明の基布であれば、織密度を高めても柔軟性を維持することができ、柔軟性と低透水性を両立することができる。
また、織物の引張強力はタテおよびヨコ方向で50.0N/cm以上あれば必要な強度が確保される。好ましくは55.0N/cm以上で、より好ましくは60.0N/cm以上である。一般的に高密度織物を製織する場合、タテ密度を高めて、ヨコ密度を下げるのが製織性上の好ましい形態であるが、こうするとタテ方向の引張強力は高くなるが、ヨコ方向の引張強力が低くなり、充分な織物強度が得られない。ステントグラフトは血管内で全方向に伸縮が繰り返されるため、基材となる織物の引張強力が弱い糸方向で切断され織物が破裂してしまう。これを防ぐためには、織物のタテおよびヨコ方向の引張強度の弱い方の値が50.0N/cm以上であることが必要である。織物の引張強力がタテおよびヨコ方向で50.0N/cm以上であれば、織物に強力を与えるためのコーティングやボンディングなどの手法を取る必要が無くなり、またコーティング膜の劣化による織物の強力低下の問題を防ぐことができる。引張強力の上限について特に制限はないが、100N/cmを超えると糸の強伸度バランスが取れなくなり、織物の曲げ剛性が硬くなるため、引張強力は100N/cm以下であることが好ましい。
織物の引張強力をタテおよびヨコ方向で50.0N/cm以上とするためには、タテおよびヨコ方向の織密度を150本/2.54cm以上とする必要がある。例えば、タテ密度が150本/2.54cm以上であっても、ヨコ密度が150本/2.54cm未満である場合、ヨコ糸方向の引張強力が低くなるため、ステントグラフトの基材として使用した場合に生体内で破裂する危険性がある。すなわち、ステントグラフト用基布として必要な特性を付与するために、タテおよびヨコ方向の密度バランスを保つことが重要であり、タテおよびヨコ方向の織密度を150本/2.54cm以上にすることが必要である。また、タテとヨコの密度はできるだけ同一にするのが好ましい。例えば、タテ密度を450本/2.54cm以上になると、ヨコ密度は150本/2.54cm以上になっても、タテ密度が高いことによるタテ糸自由度の減少で、外力によるタテ糸1本当たりに対する応力が高くなり、織物強度は反対に低下することがある。したがって、タテヨコの密度バランスDは下記の式通りであり、D≦2.0であるのが好ましく、より好ましくはD≦1.8である。さらに好ましくは、D≦1.5である。
D=(密度の高い方向の織密度)/(密度の低い方向の織密度)
ここでいう織物の引張強力は、JIS L 1096 8.12.1 A法(ストリップ法)(1999)に記載の方法であり、タテおよびヨコ方向の幅1cmあたりの破断強力(N/cm)をそれぞれ3回の相加平均で算出し、有効数字3桁にまとめたものである。
また、織物の表面は起毛がされていないことが好ましい。起毛があることによって厚みが増し、かつ、起毛により繊維が切断されるために強力も低下することから好ましくない。平滑であることによって、基布が滑りやすく小さく畳んでカテーテルに収納しやすくなる。
ここで、本発明では織物のカバーファクター(以下、CFと略す)が強力と薄さを両立する点で重要であり、好ましいCFは1300〜4000である。より好ましくは、1400以上、さらに好ましくは1500以上である。またより好ましくは、3500以下、さらに好ましくは3000以下である。ここで、CFは以下の式により算出する。
CF=√A×N+√B×M
A:経糸の繊度(デシテックス)、B:緯糸の繊度(デシテックス)
N:経糸の本数(本/2.54cm)、M:緯糸の本数(本/2.54cm)
CFが1300以上であると、厚みを薄くしつつ、細繊度でも高い強力を維持できる。CFは高いほど強力が向上する点で好ましいが、高いほど製織性が低下し、糸へのダメージ、特に毛羽や糸強力の低下など品位を損ねる可能性があるため4000以下であることが好ましい。
ここで織密度は、タテヨコ共に150本/2.54cm以上であれば十分な透水性抑制効果を発揮できる。タテヨコ共に160本/2.54cm以上であることが好ましく、180本/2.54cm以上であることがさらに好ましい。またタテヨコ共に430本/2.54cm以下であることが好ましく、400本/2.54cm以下であることがさらに好ましい。
本発明では、特に柔軟性に優れることが特徴であり、カンチレバー剛軟度は10〜50mmであることが好ましい。40mm以下であることが好ましく、30mm以下であることがより好ましい。50mm以下であることにより、より細いカテーテルに挿入することが容易となる。一方、10mm未満であっても本願発明の効果を発揮することが可能となるが、強力等の観点から10mm以上であることが好ましい。
柔軟性は上述のように、繊度を細くすることや織密度を粗くすることで得られるが、一方で、透水性は増加し強力は低下する。本発明では、特定の織密度の繊維とすることでこれらを高いレベルで両立することが可能となる。マルチフィラメント化することも柔軟性を改善するために有効な手段である。さらに、本発明により薄さも具備するという効果も得ることができる。
ここでカンチレバー剛軟度はJIS L1096 8.19.1A法(カンチレバー法)(1999)で求めた値を用いる。本発明ではタテおよびヨコ方向の平均値のこという。
本発明のステントグラフト用基布は、透水性が250mL/cm/min以下であることが好ましい。より好ましくは、200mL/cm/min以下、さらに好ましくは100mL/cm/min以下である。250mL/cm/min以下であれば血液や造影剤の漏洩を永続的に抑制することができる。
本発明でいう透水性は、試料から無作為に2箇所をサンプリングし、各サンプルに対し下記方法で2回測定して、合計4つの値を求め、この4つの相加平均値を求めるものである。
詳述すると、直径1cmの打ち抜きをした直径4cmのドーナッツ状パッキン2枚に、打ち抜き部分以外に通液のないよう2cm角の織物試料を挟み、円形ろ過フィルター用ハウジングに収納したものに、温度25℃の逆浸透膜ろ過水を織物試料が十分含水するまで通液する(2分以上)。温度25℃、ろ過差圧120mmHgの条件下に、逆浸透膜ろ過水の外圧全ろ過を30秒間行い、直径1cmの部分を透過する水の透過量(mL)を小数第1位を四捨五入して求める。その透過量(mL)を単位時間(min)および有効織物面積(cm)あたりの値に換算することにより、圧力120mmHgにおける透水性能を求める。
本発明のステントグラフト用基布は、表面に親水加工が施されていることが好ましい。本発明でいう親水加工とは、繊維表面に親水剤をコーティングしたものでも、グラフトしたものでも良い。親水剤としては、例えばポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、等を例示することができる。親水加工されていることにより、細胞がより吸着し、生体適合性により優れた表面を形成することができる。また、親水剤によっては縫い目等において膨潤し、目止め効果により透水性を低下させる効果も期待できる。
本発明のステントグラフトは、本発明のステントグラフト用基布とステントよりなるものである。ステントグラフトは、少なくとも1つのステントがステントグラフト用基布に縫合糸等により固定されている。ステント設計は特に限定されるものではないが、例えば、自己拡張型ステント及びバルーン拡張型ステントを挙げることができる。ステント材料としては、例えばニッケルチタン合金等の形状記憶合金等が挙げられる。
次に、本発明のステントグラフト用基布およびステントグラフトの製造方法の一例を述べるが、ここに述べる製造方法に限定されるものではない。
本発明の織物を構成する繊維は、直接紡糸で得てもよいし海島型または分割割繊型の複合口金を用いて複合紡糸し、織物とした後に極細化して得てもよい。コストの点では前者が好ましい。
このようにして得た繊維は、次いで織物とする。織物を製造する場合、ウォータージェット織機やエアジェット織機のようなシャトルレス織機やフライシャトル織機、タペット織機やドビー織機、ジャカード織機等に織機は特に限定されるものではない。製織後は必要に応じて精練、リラックス処理し、テンター等でヒートセットを行う。
次いで、織物をカレンダー等でプレス処理しても差し支えない。この時、カレンダー等の表面は繊維を構成するポリマーのガラス転移点または軟化点以上の温度で加熱することが好ましく、この処理によってカレンダー等に接した表面の繊維が表面に対して略平行に変形させることができる。例えば、ポリエステル繊維である場合、カレンダー等の温度を120〜180℃程度に加熱して処理することが好ましい。
親水化処理は上記のプレス処理を行う場合は、その前または後、又はその両方で行うことができる。親水化処理の方法としては親水剤をコーティング処理するか、又は、プラズマやコロナ処理して繊維の表面を活性化した後、親水剤を処理してグラフト処理する方法等が挙げられる。
このようにして得られたステントグラフト用基布は、必要な大きさに溶断等でカットした後、ステントを取り付けてステントグラフトとする。この取り付け方法は特に限定されず、例えばポリエステル等の縫合糸を用いて縫い付ける方法で行うことができる。
なお、このようにしてステントとグラフトを一体化した後、親水剤をコーティングして縫い目を塞ぐこともできる。
以下、本発明を実施例で詳細に説明する。なお、実施例中の各物性値の測定方法は、以下の方法を用いた。
A.厚み
織物の厚みはダイヤルシックネスゲージ((株)尾崎製作所製、商品名“ピーコックH”)を用いて測定した。一定加圧23.5kPa(240gf/cm)で10秒間放置した後の対象織物の計測値(μm)を求めた。同様にして無作為に計5箇所計測してその相加平均値を求め、小数点第1位を四捨五入した値(μm)を織物の厚みとした。
B.透水性
無作為に2箇所をサンプリングし、各サンプルに対し下記方法で2回測定して、合計4つの値を求め、この4つの相加平均を求めた。
直径1cmの打ち抜きをした直径4cmのドーナッツ状パッキン2枚に、打ち抜き部分以外に通液のないよう2cm角の織物試料を挟み、円形ろ過フィルター用ハウジングに収納したものに、温度25℃の逆浸透膜ろ過水を織物試料が十分含水するまで通液した(2分以上)。温度25℃、ろ過差圧120mmHgの条件下に、逆浸透膜ろ過水の外圧全ろ過を30秒間行い、直径1cmの部分を透過する水の透過量(mL)を小数第1位を四捨五入して求めた。その透過量(mL)を単位時間(min)および有効織物面積(cm)あたりの値に換算することにより、圧力120mmHgにおける透水性能を求めた。
C.カンチレバー剛軟度
JIS L 1096 8.19.1A法(カンチレバー法)(1999)に基づいて測定した。タテおよびヨコ方向で得られた値を相加平均した値を用いた。
D.引張強力
JIS L 1096 8.12.1 A法(ストリップ法)(1999)に基づいて測定した。織物のタテ方向を長さ方向とする幅5cm、長さ20cmのサンプルを採取し、つかみ間隔10cmで定速伸長型引張試験器にて、引張速度10cm/分にて伸長させた。得られた値を幅1cm当たりに換算して引張強力(N/cm)とした。これを3つのサンプルについて行い、得られた3つの値の平均値をタテ方向の引張強力(N/cm)とした。織物のヨコ方向を長さ方向とする幅5cm、長さ20cmのサンプルについても同様に測定を行い、ヨコ方向の引張強力とした(N/cm)。
E.断面観察
織物の断面を走査電子顕微鏡(SEM)にて観察した。織物のタテ方向に垂直な断面内とヨコ方向に垂直な断面内を、各2箇所ずつサンプリングし、1000倍および3500倍にて表面付近の糸を観察した。
実施例1
22デシテックス12フィラメントのポリエチレンテレフタレート繊維を紡糸し、ついでウォータージェットルームにて平織に製織した。これを精練、乾燥、セットして仕上密度が経250本/2.54cm、緯200本/2.54cm、カバーファクターが2111の織物とした。得られた基布の物性を表1にまとめた。この結果から明らかなように、薄くて低透水性、柔軟な基布を得ることができた。また、得られた織物の断面をSEMで観察したところ、表層の糸は中央部と同様に丸い断面を有していた。図3にタテ糸のSEM断面写真を示した。
実施例2
繊維を22デシテックス48フィラメントのポリエチレンテレフタレート繊維を紡糸し、仕上織密度を経300本/2.54cm、緯200本/2.54cmとした以外は実施例1と同様に処理した。得られた基布は実施例1と比較してさらに透水性が抑制され、柔軟性にも優れていた。得られた布帛の断面をSEMで観察したところ、表層の糸は中央部と同様に丸い断面を有していた。
実施例3
繊維を22デシテックス12フィラメントのポリエチレンテレフタレートとし、仕上織密度を経160本/2.54cm、緯160本/2.54cmとした以外は実施例1と同様に処理した。得られた基布は実施例1と比較すると透水性が増加したものの、薄地で柔軟性にも優れていた。得られた布帛の断面をSEMで観察したところ、表層の糸は中央部と同様に丸い断面を有していた。
実施例4
実施例3で得られた織物に、さらにロールの1本のみを160℃に過熱してカレンダー処理を行い、180℃で熱セットした。得られた織物は薄くて、透水性が低く、柔軟性に優れていた。
得られた織物の断面をSEMで観察したところ、表層の糸は表面に略平行(厚み方向に略垂直)に変形していた。図1および図2にタテ糸のSEM断面写真を示した。
実施例5
繊維を33デシテックス72フィラメントのポリエチレンテレフタレート繊維を紡糸し、仕上織密度を経300本/2.54cm、緯180本/2.54cmとした以外は実施例1と同様に処理した。得られた基布は実施例1と比較すると厚みが増加したものの、透水性に優れていた。得られた布帛の断面をSEMで観察したところ、表層の糸は中央部と同様に丸い断面を有していた。
実施例6
繊維を33デシテックス72フィラメントのポリエチレンテレフタレートとし、仕上織密度を経153本/2.54cm、緯153本/2.54cmとした以外は実施例1と同様に処理した。得られた基布は実施例1と比較すると厚みが薄くなり、柔軟性に優れていた。得られた布帛の断面をSEMで観察したところ、表層の糸は中央部と同様に丸い断面を有していた。
実施例7
実施例6で得られた織物に、さらにロールの1本のみを160℃に過熱してカレンダー処理を行い、180℃で熱セットした。得られた織物は実施例1の織物と比較してさらに透水性が抑制され、細繊度で低密度のため柔軟性にも優れていた。得られた織物の断面をSEMで観察したところ、表層の糸は表面に略平行(厚み方向に略垂直)に変形していた。
比較例1
繊維を33デシテックス72フィラメントのポリエチレンテレフタレートとし、織密度を経330本/2.54cm、緯130本/2.54cmとした以外は実施例1と同様に処理した。実施例4や実施例5と比較してタテ密度も多く緻密な組織であったが、ヨコ密度が小さいためヨコ方向の引張強力に劣るものであり、また、透水性にも劣っていた。得られた布帛の断面をSEMで観察したところ、表層の糸は中央部と同様に丸い断面を有していた。
比較例2
繊維を44デシテックス18フィラメントのポリエチレンテレフタレート繊維を紡糸し、織密度を経230本/2.54cm、緯140本/2.54cmとした以外は実施例1と同様に処理した。糸繊度が大きいことによって厚みが増加し、透水性には優れるものの単糸繊度が大きいことから柔軟性に劣るものであった。得られた布帛の断面をSEMで観察したところ、表層の糸は中央部と同様に丸い断面を有していた。
比較例3
繊維を12デシテックス1フィラメントとし、織密度を経305本/2.54cm、緯305本/2.54cmとした以外は実施例1と同様に処理した。実施例1、実施例2と比較して非常に薄い基布を得ることができたが、高密度であるにも関わらず、透水性は高く、柔軟性に欠けるものであった。得られた布帛の断面をSEMで観察したところ、表層の糸は中央部と同様に丸い断面を有していた。
比較例4
繊維を22デシテックス48フィラメントのポリエチレンテレフタレート繊維とし、仕上織密度をタテ212本/2.54cm、ヨコ144本/2.54cmとする以外は実施例1と同様にして織物を作成した。実施例4や実施例7と比較して緻密な織密度であり、カバーファクターも実施例4に対して高く、強力も高かったが、透水性は非常に大きかった。得られた布帛の断面をSEMで観察したところ、表層の糸は中央部と同様に丸い断面を有していた。
比較例5
繊維を22デシテックス630フィラメントのポリエチレンテレフタレート繊維とし、仕上織密度をタテ160本/2.54cm、ヨコ174本/2.54cmとする以外は実施例1と同様に処理して織物を作成した。実施例4や実施例7と同程度の織密度で、しかも、単糸繊度は実施例7よりさらに小さいものであったが、厚みは大きく、柔軟性も実施例7と同程度であった。得られた布帛の断面をSEMで観察したところ、表層の糸は中央部と同様に丸い断面を有していた。
比較例6
仕上織密度をタテ120本/2.54cm、ヨコ100本/2.54cmとする以外は実施例1と同様にして織物を作成した。織密度も小さく、薄くて柔軟な基布を得ることができた。しかし、引張強力は低く、透水性にも劣るものであった。得られた布帛の断面をSEMで観察したところ、表層の糸は中央部と同様に丸い断面を有していた。

Claims (4)

  1. 密度がタテヨコ共に150本/2.54cm以上、厚みが1〜90μm、総繊度が1〜40デシテックス、単糸繊度が0.1〜2.0デシテックス、さらにタテおよびヨコ方向の引張強力が50.0N/cm以上の織物であるステントグラフト用基布。
  2. カバーファクターが1300〜4000である請求項1に記載のステントグラフト用基布。
  3. 透水性が250mL/cm/min以下である請求項1又は2に記載のステントグラフト用基布。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載のステントグラフト用基布とステントよりなるステントグラフト。
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