JP6518066B2 - 医療用高密度織物 - Google Patents

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本発明は、医療用の高密度織物に関する。更に詳しくは、本発明は、厚みが薄く、強度が強く、透水率に優れるといった織物性能を有するシームレスで筒状の医療用の高密度織物、特にステントグラフト用の分岐部を有するグラフトに関する。
近年の医療技術の進歩により、大動脈瘤の治療法が人工血管置換術から侵襲性の低いステントグラフトに急速に変わりつつある。従来の人工血管置換術では、開胸や開腹手術によって大規模な外科手術となるため患者の身体的な負担が大きく、高齢者や併存症を持つ患者への適用に限界があるとともに、長期間の入院加療を要するため患者や医療施設側の経済的負担が大きいという問題がある。一方、ステントグラフト施術では、筒状に作られた医療用の織物や膜といったグラフトに、金属によって円筒状に形態保持する役目をもったステントを組合せたステントグラフトを用いた経カテーテル的血管内治療(足の付け根の動脈からステントグラフトを圧縮挿入した細いカテーテルを入れ、動脈瘤の部位でステントグラフトを開放固定することで、動脈瘤への血流を阻止し、動脈瘤の破裂を防止する治療法)は、開胸や開腹手術を伴わないため、上記身体的・経済的負担が低減されることから近年その適応が急速に拡大しつつある。
しかしながら、現行のステントグラフトはステントの金属線径やグラフトの厚みが大きく、細い径にまで小さく折り畳めないため、太いカテーテル径のものしか無く、動脈の細い女性や日本人等のアジア人には適応できないケースが多い。ステントグラフトを細くするためには、金属であるステントの形状や金属線径等を工夫することが必要であるが、ステントグラフトは基本的に金属の拡張力により血管壁に押しあてる方式で患部に固定されるので、ステント線径を細くする等拡張力に影響を与えるような改善には限界がある。一方、ステントグラフトの大半容積を占めるグラフトも薄地化が望まれているが、例えば、e−PTFE膜では厚みを薄くするとステントによる拡張力や血圧によって経時的に膜が薄く延伸され破裂する危険性がある。また、繊維で構成される織物や編物でできたグラフトでは、厚みを薄くするとグラフト自体からの血液漏れが生じ、治療効果が見られなくなってしまう。特に、腹部大動脈瘤治療に使用される分岐型ステントグラフトでは、大動脈から各下肢に分岐した境界部からの液漏れが生じやすく、薄地化になるほどこの問題は顕在化している。さらに、分岐部には伸長や屈曲の応力がかかりやすく、膜タイプのグラフトでは破れの生じることもあり、織物タイプでは境界部を手縫いで縫製したり、熱カッターで端面処理したりして、境界部箇所からの血液漏れや破れを防止する対策が取られているが、十分といえるものはない。
以下の特許文献1〜3には、分岐部を有したグラフトが開示されている。特許文献1には、分岐部の各々の血管壁を共有する構造や橋架け状に結合することが開示されているが、具体的な織組織や配置場所が示されておらず現実に適応することは困難である。また、特許文献2には、分岐型のグラフト形状が開示されているが、側面への血流開閉に関するものである。さらに特許文献3には、分岐部にステントを配置する手法が開示されていが、分岐部の具体的な織組織等は示されていない。このように、分岐型のグラフト境界部について有効な手法を示唆したものは一切なく、現実にはグラフト境界部からの液漏れが懸念される状況が続いている。
本発明者らは、これら従来技術の分岐型ステントグラフトをモデル的に試作し、その特性を評価したが、懸念通り境界部からの液漏れ課題が残ったままであった。上述の通り、医療材料としての分岐型ステントグラフト用のグラフトは、医療現場の液漏れ防止と細径化の課題を同時に解決できる分岐部を有した医療用の織物はこれまで得られていないのが実情である。
特開昭64−32857号公報 特開2013−158352号公報 特開平8−280816号公報
本発明が解決しようとする課題は、体内埋め込み型資材として細径化が可能であり、必要な透水性や破裂強度を有する、分岐型ステントグラフト用のグラフトに使用されるシームレスで筒状の医療用の高密度織物を提供することである。
本発明者らは、鋭意検討し実験を重ねた結果、分岐型ステントグラフト用のグラフトを織物で構成し、かつ、分岐部を特定の織組織とすることで、液漏れの防止につながることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
即ち、本発明は以下のとおりのものである。
[1]太径部と分岐部を有するシームレスで筒状の医療用高密度織物であって、該織物から取り出した経糸と緯糸は共に、総繊度60dtex以下のマルチフィラメント合成繊維から成り、該太径部と該分岐部の境界部における織物組織の一部は、該筒状織物の上側の織物と下側の織物を結合する一重組織で構成されており、かつ、該織物は、下記(1)〜(4):
(1)カバーファクターが1600〜2400、
(2)厚みが90μm以下、
(3)破裂強度が100N以上、及び
(4)透水率が300ml/cm/min以下、
を満たす前記医療用高密度織物。
[2]前記一重組織を構成する経糸の本数が2〜32本である、前記[1]に記載の医療用高密度織物。
[3]単糸繊度0.5dtex以下のポリエステルマルチフィラメント合成繊維を経糸及び/又は緯糸の一部に用いた、前記[1]又は[2]に記載の医療用高密度織物。
[4]緯糸が管に巻かれたシャトルを用いるタイプの織機で製織された、前記[1]〜[3]のいずれかに記載の医療用高密度織物。
[5]前記[1]〜[4]のいずれかに記載の医療用高密度織物をグラフトとして用いたステントグラフト。
[6]前記[5]に記載のステントグラフトを圧縮内挿した医療用デリバリーカテーテル。
本発明に係るシームレスで筒状の医療用の高密度織物は、体内埋め込み型資材として必要な透水性や破裂強度を有し、細径化が可能であり、かつ、分岐部に特定の織組織を用いることによって液漏れを最小限に留めることが可能な分岐型ステントグラフト用のグラフトとして有用である。
太径部と分岐部の双方に一重組織が形成されない織物組織を示す。 太径部と分岐部の双方に一重組織が形成される織物組織を示す。 太径部のみで一重組織が形成させる織物組織を示す。 分岐部のみで一重組織が形成される織物組織を示す。 熱セット時に型固定用として太径部の筒状織物内に挿入するステンレス棒を示す。
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。
本実施形態の織物に使用するマルチフィラメント合成繊維の総繊度は、ステントグラフト用織物の薄地化と強度の観点から、7dtex以上60dtex以下である必要がある。使用する繊維の総繊度が7dtex未満であると織物の厚みは薄くなり、ステントグラフトの細径化ニーズに適うが、強度面から実用に耐えない。また、総繊度が60dtexを超えると織物の厚みが90μmを超えてしまい、細径化に適さないものとなる。これは、例えば、内径50mmの筒状の織物とした時に直径6mmの孔(内径6mmのカテーテルを想定)を通過することができない。織物の薄地化と実用性能を両立するという観点から、総繊度は10dtex以上50dtex以下が好ましく、より好ましくは15dtex以上、40dtex以下である。
本実施形態の織物の経糸及び/又は緯糸として使用するに際して好ましい単糸繊度は、0.5dtex以下である。単糸繊度が0.5dtex以下になると血管内皮細胞との親和性が増すことで血管壁組織と織物との一体化が進み、ステントグラフトの血管内での移動や脱落防止や血栓の生成抑制が期待できる。織物の薄地化と細胞親和性の観点から、繊維の単糸繊度は好ましくは0.4dtex以下、より好ましくは0.3dtex以下である。単糸繊度の下限に特に限定はないが、織物製造工程である整経や製織加工等の工程通過性と織物の破裂強度発現の観点から、0.01dtex以上が好ましく、より好ましくは0.03dtex以上である。
本実施形態の織物のカバーファクターは1600〜2400であることが必要である。カバーファクターが1600よりも小さい場合には、織物の織密度が疎であることを意味し、織物自体からの血液漏れが生じやすくなる。また、カバーファクターが2400を超えると密度が大きくなり血液漏れが防止する機能が働くものの、織物自体が固くなって折り畳みが困難になることや細径化には適さないといった問題が生じてくる。カバーファクターは、好ましくは1800〜2300であり、より好ましくは2000〜2200である。また、経糸方向のカバーファクターと緯糸方向のカバーファクターはほぼ同じぐらいが好ましいが、特に限定されることはなく、経糸方向のカバーファクターの大きい方が高密度織物の製造が容易である。
尚、カバーファクター(CF)は下記式で計算される:
CF=√dw×Mw+(√df×Wf
{式中、dwは織物より抜き出した経糸の総繊度(dtex)であり、Mwは経糸の織密度(本/2.54cm)であり、dfは織物より抜き出した緯糸の総繊度(dtex)であり、そしてMfは緯糸の織密度(本/2.54cm)である。}。
本実施形態の織物はシームレスの筒状織物である。ステントグラフト用のグラフトとしては、シート状の織物や膜を筒状にして端部同士を接着剤で貼り合わせることや縫製によって縫い合わせて使用することも可能であるが、貼り合わせや縫製の部分の厚みが増し、小さく折り畳むことができなくなるので、細径化のためにはシームレス状の織物であることが好ましい。また、緯糸が連続して繋がって構成されることで、筒状でない平面状の織物や膜材を使った場合に成される張り合わせや縫製という煩雑で手作業のばらつきが生じる工程をなくすことができ、かつ、液漏れを軽減することができ、さらに、表面凹凸をなくすことで血液のスムーズな流れにも有効である。
本実施形態の織物の基本的な織組織として一重組織の箇所以外では、平織、綾織、朱子織等が使用でき特に限定するものではないが、織物の薄地化や強度、血液漏れ軽減の観点からは平織の構造が好ましい。織物の経糸密度と緯糸密度は、各々100本/2.54cm以上であることが好ましく、より好ましくは120本/2.54cm以上である。上限値は特に限定はないが、製織上実質的には250本/2.54cm以下である。
本実施形態の織物の厚みは、90μm以下であることが必要であり。90μmを超える厚みを有する場合、折り畳んだときに細径化されず、所望のカテーテルに収納できなくなる恐れがあるため、好ましくは10〜70μmの範囲であり、これにより、細径のカテーテルへの収納が容易になり、疾患部での解放時にもカテーテルから容易に解放されるデリバリーシステムとすることができる。織物の厚みが10μmよりも薄くなると十分な破裂強度を保持することができなくなる。ここで、織物の厚みは、筒状織物の周方向、長さ方向(5cm〜30cm)の範囲内で任意に選択された10箇所について、その厚みを、厚みゲージを用いて測定した値の平均値で定義される。織物の厚み測定において、下記式:
Z(%)=(Zav−Zi)/Zav×100
{式中、Zavは10点測定値の平均値、そしてZiは各点の測定値であり、iは、1〜10の整数である。}で表す各測定ポイントにおける厚みバラツキZが全て±15%以内であることが好ましい。
厚みバラツキが−15%を超えてマイナス側に大きいと、折り畳んだときの織物の厚み平均値が90μm以下であっても、例えば、直径6mmの孔といった所望のカテーテルに収納できなくなる恐れがある。また、厚みバラツキが15%を超える部分は厚みが薄く、破裂強力や透水防止性能が損なわれる。厚みバラツキZは、より好ましくは±12%以内、更に好ましくは±10%以内である。
例えば、ステントグラフトが用いられる血管で最も太いのは、胸部大動脈であり通常内径40〜50mm程度である。患者の身体的負担低減及び適応患者拡大のためには、胸部大動脈では最大内径50mmのステントグラフトを18フレンチ(内径6mm)以下のカテーテルに挿入できることが求められているが、直径6mmの孔を通過することができる内径50mmの筒状の織物の厚みは最大で90μmであることが本発明者らのこれまでの検討により明らかになっており、この厚みは筒状織物の内径が変化しても大きく変わることはないので、ステントグラフト用織物に用いる極細ポリエステル繊維の単糸繊度及び総繊度特定するにおいては、織物の厚み90μm以下を基準とする。
本実施形態の織物自体の透水率は300cc/cm/min以下であることが必要である。織物の透水率は血液漏れ防止の指標となり、透水率が300cc/cm/min以下であることで、織物壁面からの血液漏れを低く抑えられる。また、織物の透水率は好ましくは250cc/cm/min以下、より好ましくは200cc/cm/minである。次に、グラフトである織物は金属製のステントと縫合糸で縫い合わせることで最終製品であるステントグラフトに仕上げるが、その際織物に大きな針孔が開くと、そこから血液漏れが生じる。即ち、本実施形態の医療用織物は針刺し前後の透水率は300cc/cm/min以下であり、実用性能として針を刺した後の透水率も300cc/cm/min以下であることが好ましい。ここで、針刺し後の透水率は、テーパー形状の3/8ニードル針を用い、任意で1cm当り10回数針を通した後に測定される値である。針孔を小さくするには、極細ポリエステル繊維を用いることが有効であり、これは、織り組織において単糸フィラメントが針で押し広げられるが、単糸フィラメントが柔らかいので、経糸と緯糸交差点の隙間が埋まり、針孔が残り難く針刺し前の透水率が低く抑えられる。
本実施形態の織物は、ANSI/AAMI/ISO7198:1998/2001基準の破裂強度試験に従って計測される破裂強度が100N以上であることが必要である。織物の破裂強度が100N未満であるとステントグラフト用織物として使用する場合、ステントの拡張力によって破裂するなど使用時の安全性の観点で問題となる。上記破裂強度は、好ましくは120N以上、より好ましくは140N以上である。織物の破裂強度の上限に特に制限はないが、織物の薄地化とのバランスの観点から実質的には500N以下となる。
本実施形態の織物を構成する経糸及び緯糸の断面における空隙率は、10%以上70%以下であることが好ましい。織物に10%以上の空隙を形成させることで単糸繊維間に細胞が侵入しやすくなり、血管壁組織と織物との一体性が増す(血液漏れ防止とステントグラフトの移動防止の効果)と共に上述した針刺し後の透水率を300cc/cm/min以下に抑制することができる。他方、織物の空隙率が70%を超えると織物の型崩れが起こり、透水率増加の原因となる。本実施形態の織物の空隙率は15%以上60%以下がより好ましく、より好ましくは20%以上50%以下であり、単糸繊度が小さくなるほど空隙率は大きくてもよい。
本実施形態の織物から抜き出した緯糸のクリンプ率は、4%以上20%以下であることが好ましい。クリンプ率が4%から20%であることによって、円断面内の柔軟性が増し、血管内の形状追従性が良好となると共に、破裂強度や透水率なども良好となるからである。クリンプ率が4%よりも小さい場合は円断面内の柔軟性に欠けるため、エンドリークが生じやすくなる。また、クリンプ率が20%を超える場合は織物の厚みが増す方向であり、細径化に適さないものとある。クリンプ率は6%以上18%以下がより好ましく、より好ましくは8%以上15%以下である。
同様に、本実施形態の織物から抜き出した経糸のクリンプ率は、0.2%以上5%以下であることが好ましい。クリンプ率が0.2%から5%であることによって、経糸方向には丈夫な織物構造となり、グラフトの折れ曲がりや捩れが生じにくくなる。クリンプ率が0.2%よりも小さい場合は経糸と緯糸の屈曲バランスが良くないので、破裂強度や針刺し後の透水率がわるくなりやすく、経糸上を緯糸が滑りやすくなって、糸ズレが起きて血液漏れが起きることになる。また、クリンプ率が5%を超える場合は織物の垂直方向の剛性が減る方向であり、拍動に対しての安定性に適さないものとなる。クリンプ率は0.3%以上3%以下がより好ましく、より好ましくは0.4%以上2.5%以下である。
本実施形態の織物の分岐部は、筒状の太径部から連続して2つ又はそれ以上の分岐部に分かれていくものであり、太径部と分岐部の境界部における織物組織の一部は一重組織であることが必要である。例えば、太径部から2つの分岐部に分かれる際の織物を構成する織組織を図1に示す。図2に示すように、太径部と分岐部の双方に一重組織を設けた構造とすることができる。また、図3に示すように、太径部のみに一重組織を設けた構造としてもよい。さらには、図4に示すように、分岐部のみに一重組織を設けてもよいが、図2に示すように、太径部と分岐部の双方に設けることが好ましい。
一重組織は、上側と下側の織物を結合する構造であればよく、例えば、織構造上に無理のない組織としては、2/2斜子組織や2/2綾組織、3/3斜子組織や3/3織組織などを使用すればよく、1/2畝や2/1畝、平といった織組織でもよく、製織上又は取扱上の問題がない範囲で選択すればよい。
本実施形態の織物の分岐部は、その径に違いがあってもよく、また、3つ以上の複数の分岐でもよい。分岐部の長さは同じでもよいが、一般には一方の分岐がもう一方よりも長く、これは、例えば、腹部動脈瘤の治療において、片側の腸骨動脈から長い分岐部を有したステントグラフトを圧縮挿入したカテーテルで挿入して動脈瘤にて留置した後に、短い分岐部を有したステントグラフトをもう一方の腸骨動脈から挿入して結合するためである。
一重組織を構成する経糸の本数は2本〜32本であることが好ましい。また、一重組織は分岐部の各々に存在することが好ましく、複数ある分岐の内の一つに集中するよりも各々の分岐部に大きさに応じて存在することがより好ましい。一重組織を構成する経糸の本数が2本に満たない場合は、分岐部に存在するいずれかの分岐部で経糸1本となり、一重組織としては糸間拘束の弱い構造となって液漏れを軽減することができない。また、経糸の本数が32本を超える場合は、一重組織部の占める大きくなって分岐部付近の筒径が小さくなってしまい、血液のスムーズな流れを阻害することになることや、必要以上に一重組織部を設けても効果は大差ないものとなる。経糸の本数は4本から16本が好ましく、液漏れが少なく、かつ血液流れを阻害する影響が小さい。
また、一重組織を構成する緯糸の本数は、経糸と同数の糸で構成することができるが、特に限定されるものではない。
本実施形態の分岐部の織物を製織する場合、例えば、製織している片側を織っているときのもう一方の分岐部を構成する経糸は上開口で待機させておいても、下開口で待機させておいてもよく、織りやすいパターンで織り組織を組めばよく、グラフト基布などのように経糸本数が少なく、ジャガード機やドビー機の負荷が少ない場合には、特に制限されるものではない。また、本実施形態の分岐部を有する織物を製織する場合、分岐部の数に太径部を加えた数のシャトルを備えることが好ましい。例えば、2つの分岐部を製織する場合には、緯糸を納めたシャトルは3つ用意することが好ましい。しかし、太径部を製織していたものでいずれかの分岐を製織することも可能ゆえ、2つのシャトルでも製織は可能である。
本実施形態の織物は、前記した厚みや外径等の要件を逸脱しない範囲内でコラーゲンやゼラチン等でコーティングされていてもよい。
本実施形態の織物は、拡張可能部材となるステント(バネ状の金属)との組み合わせでステントグラフトとして使用される。ステントグラフトのタイプとしては、筒状の単純ストレートタイプ、枝血管に対応可能な分枝タイプや開窓タイプが挙げられる。拡張可能部材としては、形状記憶合金、超弾性金属、合成高分子材料を用いた自己拡張型の素材を用いることが可能である。拡張可能部材は従来技術のいかなるデザインであってもよい。拡張可能部材は自己拡張型に代わってバルーンで広げるタイプでも適応可能である。本発明の好ましい態様としてのステントグラフトは、ステントとグラフト間の隙間の大きさが2mm以内であることが好ましい。
本実施形態で使用する繊維は、ポリエステル繊維が好ましく、特に、極細ポリエステル繊維は、引張強度が3.5cN/dtex以上であり、かつ、引張伸度が12%以上であることが好ましい。極細ポリエステル繊維の引張強度が3.5cN/dtex以上であることで、ステントグラフト用織物として優れた力学物性を発揮することができる。他方、ポリエステル繊維は延伸倍率を高めることで引張強度を高めることは可能であるが、例えば、延伸により引張強度を3.5cN/dtex以上に高めても、引張伸度が12%を下回ると靱性に劣り、衝撃による破れや切れにつながる。織物の安定的な織加工工程性の観点から、本実施形態の極細ポリエステル繊維の引張強度は3.8cN/dtex以上がより好ましく、さらに好ましくは4.0cN/dtex以上である。同様の観点から、本実施形態の極細ポリエステル繊維の引張伸度は、15%以上がより好ましく、さらに好ましくは20%以上である。
本実施形態の織物の経糸及び/又は緯糸の少なくとも一部には、極細ポリエステル繊維を使用してもよく、また、緯糸は全て極細ポリエステル繊維を使用することや織物の一部に使用すること、あるいは数本置きに極細ポリエステル繊維を使用することでも構わない。経糸についても同様であって、経糸や緯糸の一部又は全てに使用してもよく、使用比率は用途に応じて決めることができる。極細ポリエステル繊維は、単糸繊度が小さい分、毛羽が発生しやすいが、糊剤や油剤を付与して糸に被膜を形成してもよく、撚糸などで糸の集束性を向上して製織時の取り扱いを向上させてもよい。
本実施形態の織物を製織する際は、経糸は50〜1000T/mの撚糸を施してもよく、この撚糸に更に糊剤や油剤・WAX剤を付与してよく、また、撚糸を施さずに糊剤や油剤・WAX剤のみを付与することでも製織時の毛羽を抑制して製織性を向上するには有効である。しかしながら、生物学的安全上からは、無糊が好ましく、300〜700T/mの撚りのみで経糸を整経することが好ましい。ただし、この場合でも原糸製造時の紡糸油剤は経糸には付着している。また、緯糸についても、紡糸油剤やその他の油剤を更に付与したり、あるいは50〜200T/m程度の撚りをかけたりして、摩擦を下げて製織性を向上させてもよく、適宜製織に応じた手法を取ればよい。
本実施形態の織物を構成する極細ポリエステル繊維以外の材料としては、前記した範囲外のポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維等が挙げられる。これらはモノフィラメントでもマルチフィラメントでもよく、目的に応じて1種又は2種以上の繊維素材と組み合わせて使用することができ、組合せの態様としては、本実施形態のポリエステル繊維とその他繊維を撚り合わせて複合繊維として使用することもできるし、その他繊維を織物の経糸又は緯糸として使用することができ、あるいはその一部として部分的に使用することもできる。
なお、極細ポリエステル繊維は、PET成分の含有率が98重量%以上、即ち、PET以外の成分の含有率が2重量%未満であることが好ましい。ここで、PET以外の成分とは共重合などで分子鎖に取り込まれた成分やポリエステル繊維表面に付着した共重合PET、ポリアミド、ポリスチレン及びその共重合体、ポリエチレン、ポリビニルアルコール等の海島型極細PET繊維製造時に使用される海成分ポリマー、当該海成分ポリマーの分解物をいう。尚、本実施形態においては、PET以外の成分に、エチレングリコール、テレフタル酸(TPA)、モノヒドロキシエチレンテレフタレート(MHET)、ビス−2−ヒドロキシエチルテレフタレート(BHET)等のPET由来のモノマー・オリゴマーは含まないことが好ましい。PET以外の成分の含有率が2重量%以上含まれると埋め込まれた際に体内でこれら成分が溶出し、発熱や異物化反応を引き起こす懸念がある。極細ポリエステル繊維のPET以外の成分含有率は好ましくは1重量%未満、より好ましくは0.5重量%未満、更に好ましくは不含である。
本実施形態の織物は、ポリエステル繊維、特に、極細ポリエステル繊維は、ステントグラフト用織物として以外に、人工血管、人工繊維布、癒着防止剤、人工弁等の体内埋め込み型資材の構成繊維としても有効に機能する。また、体内埋め込み型資材以外にも体外での血液ろ過材、細胞分離膜、細胞吸着材、あるいは細胞培養基材等のメディカル用資材としての構成繊維としても有効に機能する。勿論、ポリエステル繊維、特に、極細ポリエステル繊維は、医療分野以外にも衣料用原料やフィルター、ワイピング材等の資材として利用することも可能である。
本実施形態においては、ステントグラフト用として好適な織物は、強度発現や血液漏れ防止の観点から織物であることが好ましい。また、織物の薄地化の観点から、本実施形態の織物は、極細ポリエステル繊維20重量%以上から構成されていることが必要である。本実施形態の極細ポリエステル繊維の織物における構成比率が20重量%未満であると織物の厚みが90μmを超え、細径化実現が困難となる。また、極細ポリエステル繊維の構成比率が20重量%未満であるとステントとの一体性に劣るものとなる。本実施形態の織物において、極細ポリエステル繊維の構成比率は好ましくは30重量%以上、より好ましくは40重量%以上である。尚、本実施形態の極細繊維は織物の経糸と緯糸の両方に用いることが可能であるが、ステントとの一体性向上の観点から特に緯糸に用いることが好ましい。
本実施形態の織物に使用するのに好適な極細ポリエステル繊維の製造方法においては、繊維束に仕上げ剤を付与し、その後の整経や製織工程での通過性を良好とすることができ、仕上げ剤としては、鉱物油由来の油剤や水溶性油剤等が用いられる。また、仕上げ剤の油付率は、嵩高加工や織編加工の工程通過性の観点から、1重量%以上3重量%以下が好ましく、より好ましくは1.2重量%以上2.8重量%以下、さらに好ましくは1.5重量%以上2.5重量%以下である。
本実施形態に使用する極細ポリエステル繊維の製造方法においては、未延伸糸の段階又は延伸糸の段階で交絡処理を付与することが、整経時や製編織時の工程における毛羽や糸切れの低減や解舒性向上の観点から好ましく、交絡処理は、公知の交絡ノズルを採用し、交絡数は1〜50個/mの範囲が好ましい。さらには、本実施形態に用いる極細ポリエステル繊維は、ステントグラフト最終製品(滅菌処理後)の織物を構成する極細ポリエステル繊維として熱収縮応力0.05cN/dtex以上を確保するという観点から、製織に用いる極細ポリエステル繊維の熱収縮応力は、80℃以上200℃以下の温度範囲において0.2cN/dtex以上であることが好ましい。
本実施形態の好ましい態様としてのステントグラフトは、カテーテルに挿入されて血管内で移送されるものである。本実施形態のステントグラフトは、織物の厚みが90μm以下と薄くかつ柔軟性が高いので、細い径のカテーテルに挿入することができ、その結果血管内の移送が容易であり、血管壁を損傷するリスクが低減される。尚、カテーテルとしては、チューブタイプやバルーンタイプ等、従来技術のものが好適に使用される。また、本実施形態の細い径のカテーテルに挿入されたステントグラフトは、従来のデリバリーシステムを使用して血管内で移送、留置することができる。本実施形態の筒状シームレス織物をステントグラフト用織物として用いた場合、ステントグラフトを細径化できるので、入院期間の短縮など患者の身体的・経済的負担を低減することができ、また、血管壁損傷等のリスクも低減することができる。更に動脈の細い女性やアジア人等、これまで経カテーテル的血管内治療適応から除外されていた症例に対しても適用範囲を広めることができる。
以下、本実施形態の織物の製造について説明する。本実施形態の織物を構成する経糸を準備する工程では、整経機により経糸ビームに必要本数の経糸を必要本数巻き取って、これを織機に仕掛けてもよく、あるいは、クリールに仕掛けた巻糸体から直接に経糸を織機上まで引き出してきてもよい。
本実施形態のシームレスの筒状の織物を製造するために使用する織機に関しては、特に限定されるものではないが、杼(シャトル)の往復運動によって緯糸を通すシャトル織機を用いることが、シームレスの織物にするために好適であり、また、織物の耳部(筒状織物の折り返し部分)の織密度バラツキを抑制し、織物の厚みを均一化するために好ましい。シャトル織機を使用する場合、分岐部が2つある場合には、3丁のシャトルを用いて製織し、太径部、分岐部の一方、分岐部のもう一方の3つを各々のシャトルを使えばよい。あるいは、2丁のシャトルを使用する場合には、太径部と分岐部の一方で1つのシャトル、分岐部のもう一方をもう1つのシャトルで製織することができる。尚、シャトルからの緯糸の解舒時の張力を均一にすることがシワのない高品質の筒状の織物を製織することに有効であり、複数のバネ等を使用した構造とすることが好ましい。
また、本実施形態のように筒状の織物の製織では、織前を安定化させ、織物の厚みや径を均一化させる、あるいは加工時の糸切れ等を抑制するという目的で、全面テンプル(全幅テンプルともいう)を用いてもよい。織物と接触する部分の全面テンプルの部材は摩擦係数の小さい素材を選定することや、巻取りロール表面はタック性があって滑りにくく表面が滑らかな材料を使用することが好ましい。全面テンプルの構造や用いる部材の摩擦係数については、用いる糸の単糸繊度や総繊度、経糸や緯糸の織密度によって、適宜設計選定すればよい。
次に、筒状のシームレス織物を製織する場合、経糸の上げ下げの制御が必要であり、そのための装置としては、ジャガード式開口装置やドビー式開口装置等を用いることができるが、分岐部の織組織を構成しやすくするためには電子式ジャガードを使用することが特に好ましい。
製織後は、油剤等の除去を目的とした精練処理、形態安定性を目的とした熱セットを行うが、精練温度・処理時間、熱セット温度・処理時間、また、これらの工程における張力は特に限定されるものではない。
本実施形態の織物を熱セットする場合、太径部の径を有したステンレス管と分岐部の径を有し、その先端が細くなったものを使用し、分岐部付近の一重組織によって径が細くなった分を減じた熱セット用の金属冶具を製作することが好ましい。尚、このときは作業性の観点から、太径用と分岐用は各々別々に製作し、熱セットする織物に金属冶具を上下から差し入れて、織物内で固定できるような構造にし、所望の径の織物をシワなく固定することが好ましい。
前記処理された織物はステントと縫合糸を用いて組み合わせる。織物とステントとの接合条件は、ステントの形状に合わせて選択すればよい。また、縫合に用いる針は特に限定はないが、針刺し後の透水率が300cc/cm/min以下になるようなものを選定することが好ましい。次いで、前記方法で得られたステントグラフトの滅菌処理を行う。滅菌処理の条件は、特に限定するものではないが、滅菌効果と処理後の極細ポリエステル繊維の熱収縮応力とのバランスで選定すればよい。
以下、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、物性の主な測定値は以下の方法で測定した。
(1)総繊度・単糸繊度
総繊度(dtex)は、繊維束を一定長切出し、その糸条の重量(g)を計測し、それを1000mあたりの重量(g)に換算した値である。単糸繊度(dtex)は、前記方法で求めた総繊度を単糸数で除した値である。
(2)引張強度・引張伸度
引張強度及び引張伸度は、JIS−L−1013に準じて測定した。
(3)織物の破裂強度
ANSI/AAMI/ISO 7198:1998/2001に準拠して織物の破裂強度試験をn=5で実施し、その時の最大試験力の平均値である。
(4)織物の透水率
ANSI/AAMI/ISO 7198:1998/2001に準拠して織物の透水率測定を行う。透水率試験は、測定をn=5で行い、その平均値をとる。
(5)分岐部の筒状織物の透水率(境界部を含めた透水率(l/min)
ANSI/AAMI/ISO 7198:1998/2001を参考にして透水率測定を行う。分岐部を有した筒状の医療用織物について、全長100mmで、太径部は50mm、分岐部は50mmの長さのものを準備する。この織物の太径部を、周囲をゴム被覆した金属管にかぶせ、その周状を金属バンドでしっかり固定して液漏れの無いように締める。このとき、金属バンド先端と境界部(太径部と分岐部の境界)までの長さを30mmとする。ただし、金属管は水が通るに十分な中空構造となっている。
同様に、分岐部の先端も周囲をゴム被覆した金属管にかぶせ、その周状を金属バンドでしっかり固定して液漏れの無いように締める。金属バンド先端と境界部までの長さを30mmとする。測定はn=5で行い、その平均値をとる。
(6)織物の厚み
織物の厚みを荷重1Nのシックネスゲージを用いてn=5で測定し、その平均値で示す。
(7)クリンプ率
織物から抜き出した経糸及び緯糸について、JIS L1096 8.7b法に準じて実施した。20本の糸について測定し、その平均値で示した。
(8)空隙率
織物をTechnovit(Kulzer Co.Germany)等の樹脂で包埋しガラスナイフで3μmの厚みの切片を作製し、400倍の光学顕微鏡で写真を撮影する。写真上で繊維部分と繊維間隙部分の面積測定から下記式にて空隙率を算出する。
空隙率(%)=(極細繊維束が占有する面積−個々の極細繊維の占有する面積)/(極細繊維束が占有する面積)×100
尚、画像面積測定は、一般的な画像処理コンピューターソフト、例えばNIH image等を用いる。
(9)カテーテル挿入性
ステントを縫合した織物を適切に折り畳み、円筒内径が6mmのカテーテルに挿入できるか否かを評価した。無理なく挿入できる場合を〇とし、手こずる場合を△、不可能な場合を×とした。各々5本ずつ作製して評価する。
[実施例1〜3]
経糸として、織物から抜き出した糸が総繊度36dtex/単糸繊度1.5dtexとなるポリエステル繊維を用い、緯糸として、織物から抜き出した糸が総繊度26dtex/単糸繊度0.17dtexとなる極細ポリエステル繊維を用い、電子式ジャガード方式の開口装置を備えたシャトル織機において、3つのシャトルを用いて分岐型の筒状のシームレス織物を作製した。経糸本数は670本、経糸の筬への通し幅は50.0mm、筬密度16.8羽/cm、8本/羽として太径部を製織した。次いで、分岐部については経糸を中央で分けて各々335本を左側と右側の分岐部用として、境界部の織物組織は図2に従い、分岐の前後において一重組織が形成されるようにし、一重組織に供する経糸本数は24本として製織した(実施例1)。同様に、分岐部の織物組織を図3として、太径部のみで一重組織が形成されるようにし、一重組織に供する経糸本数は20本として製織をおこない(実施例2)、また、分岐部のみで一重組織を形成する図4の織物組織でも製織をおこなった(実施例3)。なお、端数の経糸は適当な本数で筬入れして製織している(以下も同様)。
[実施例4〜6、比較例1]
経糸と緯糸として、織物から抜き出した糸が総繊度36dtex/単糸繊度1.5dtexとなるポリエステル繊維を用い、実施例1〜3と同様に、電子式ジャガード方式の開口装置を備えたシャトル織機において、3つのシャトルを用いて分岐型の筒状のシームレス織物を作製した。経糸本数は562本、経糸の筬への通し幅は49.2mm、筬密度19.1羽/cm、6本/羽として太径部を製織した。次いで、分岐部については経糸を中央で分けて各々281本を左側と右側の分岐部用として、境界部の織物組織は図2に従い、一重組織に供する経糸本数は24本とし、分岐の前後において一重組織が形成されるようにして製織した(実施例4)。同様に、太径部と分岐部の織物組織は一重組織を成さない図1に従い製織した(比較例1)。さらに、一重組織に供する経糸本数は4本(実施例5)と44本(実施例6)として、一重組織は図2を縮小及び拡大させた織物組織を一重組織として製織をおこなった。
[実施例7、8、比較例2]
続いて、実施例4において、緯糸の打込み密度をかえて、仕上げ反で緯糸密度が、80本/2.54cm(比較例2)、121本/2.54cm(実施例7)、180本/2.54cm(実施例8)とした織物を作製した。
[比較例3]
実施例1において、緯糸として、織物から抜き出した糸が総繊度36dtex/単糸繊度1.5dtexとなるポリエステル繊維を用い、仕上げ反の緯糸密度が、190本/2.54cm(比較例3)とした織物を作製した。
[実施例9、比較例4]
緯糸として、織物から抜き出した糸の総繊度が48tex/単糸繊度0.46dtexとなるポリエステル繊維として製織し(実施例9)、また、織物から抜き出した緯糸が総繊度90dtex/単糸繊度2.5dtexとなるポリエステルの仮撚り加工糸にかえて製織した(比較例4)。
[実施例10]
経糸として、織物から抜き出した糸が総繊度27dtex/単糸繊度0.18dtexとなる極細ポリエステル繊維を用い、緯糸として織物から抜き出した糸が総繊度30dtex/単糸繊度0.2dtexとなる極細ポリエステル繊維を用い、実施例1と同様に電子式ジャガード方式の開口装置を備えたシャトル織機において、3つのシャトルを用いて分岐型の筒状のシームレス織物を作製した。経糸本数は650本、経糸の筬への通し幅は49.7mm、筬密度32.8羽/cm、4本/羽として太径部を製織した。次いで、分岐部については経糸を中央で分けて各々325本を左側と右側の分岐部用として、境界部の織物組織は図2に従い、一重組織に供する経糸本数は24本とし、分岐の前後において一重組織が形成されるようにして製織した(実施例10)。
これら製織した織物は下記の処理条件で、精練、熱セットを施し、分岐型の筒状の織物を作製した。尚、太径部と2つの分岐部にはそれぞれのシャトルを使って製織するため、境界部では太径部の緯糸を織っていたシャトルから、各々の分岐部を織る緯糸のシャトルに切り替わることになり、境界部では緯糸は連続ではなくなる。
熱セット時に型固定用として太径部の筒状織物内に挿入するステンレス棒は直径25mmの円柱状を有し、その先端は少し扁平になっており、分岐部は直径12mmの円柱状となった構造である。熱セットでは、図5に示すような形状のステンレス棒を用いたが、境界部の織組織の形状や目的の密度に応じて、適宜太径部や分岐部の先端の形状や太さをかえることがシワのない筒状の織物をつくる上で好ましい。特に、分岐部では一重組織等によって、筒状の織物の径が小さくなることを考慮したステンレス棒の作製が必要である。
処理を終えた仕上げ反(実施例1〜10、比較例1〜4)の諸特性は表1に示す通りであり、実施例においては、厚み、破裂強度、通常基布部の透水率、分岐部における透水率において優れていることが判る。また、比較例1では、分岐部前後での織物組織に一重組織がないことにより、分岐部で目開きが生じたため分岐部を含めた透水率が高く、比較例2では、通常基布部の透水率が高いため分岐部を含めた透水率も高くなっている。比較例3と4では、厚みが大きいため折り畳み後のグラフト径が大きく細径化に適していなかった。
(精練条件)
・98℃の炭酸ナトリウム水溶液(濃度:5g/l)中で1時間撹拌洗浄。
・98℃の超純水で30分の撹拌洗浄を3回繰り返す。
・室温で2軸方向に定長乾燥する。
(熱セット条件)
・予め恒温槽内で180℃に加温しておいたφ50mm×200mm長のステンレス製の芯棒に精練、乾燥後の織物を通し、200mm長さの織物の両端を、ホースバンドを用いて皺にならないよう、かつ、弛みの無いようにセット固定する。
・織物を固定したステンレス製芯棒を180℃の恒温槽に投入し、恒温槽内の温度が180℃にコントロールされた時点から20分間熱セットを行う。
(滅菌処理条件)
・185℃の恒温槽内で30分間熱処理する。
本発明に係る織物は、体内埋め込み型資材として細径化が可能であり、かつ、必要な破裂強度や透水性を有した分岐型ステントグラフト用のグラフトに使用されるシームレスで筒状の医療用の高密度織物として好適に利用可能である。

Claims (6)

  1. 太径部と分岐部を有するシームレスで筒状の医療用高密度織物であって、該織物から取り出した経糸と緯糸は共に、総繊度60dtex以下のマルチフィラメント合成繊維からなり、該太径部と該分岐部の境界部における織物組織の一部は、該筒状織物の上側の織物と下側の織物を結合する一重組織で構成されており、該織物は、下記(1)〜(4):
    (1)カバーファクターが1600〜2400、
    (2)厚みが90μm以下、
    (3)破裂強度が100N以上、及び
    (4)透水率が300ml/cm/min以下、
    を満たす前記医療用高密度織物。
  2. 前記一重組織を構成する経糸の本数が2〜32本である、請求項1に記載の医療用高密度織物。
  3. 単糸繊度0.5dtex以下のポリエステルマルチフィラメント合成繊維を経糸及び/又は緯糸の一部に用いた、請求項1又は2に記載の医療用高密度織物。
  4. 緯糸が管に巻かれたシャトルを用いるタイプの織機で製織された、請求項1〜3のいずれか1項に記載の医療用高密度織物。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の医療用高密度織物をグラフトとして用いたステントグラフト。
  6. 請求項5に記載のステントグラフトを圧縮内挿した医療用デリバリーカテーテル。
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