JP2011229713A - ステントグラフト用基布およびステントグラフト - Google Patents

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良 松生
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和哉 藤田
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一裕 棚橋
Asanori Shimada
浅則 島田
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Abstract

【課題】従来技術ではなし得なかった薄さ、柔らかさおよび高強力の全てを兼ね備えたステントグラフト用基布とそれを用いたステントグラフトを提供する。
【解決手段】薄さ、柔らかさを維持しつつ、高密度に織らずしても高強力と低透水性を具備したステントグラフト基布であって、合成フィラメントで構成されたリップストップ組織を有する平織物であり、厚みが20〜80μmであることを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、動脈瘤を再建又は修復する器具に関し、特に、動脈瘤、例えば腹大動脈瘤及び胸大動脈瘤を再建又は修復する経皮的にかつ(或いは)経管的に運搬されるステントグラフトおよびステントグラフト用基布に関する。
動脈瘤は動脈壁が異常拡張する病状であり、主なものに腹部大動脈瘤や胸部大動脈瘤がある。腹部大動脈瘤は通常、2本の腸骨動脈付近、或いは腎動脈の近くに位置する動脈の腹側部分中の動脈瘤である。また胸部大動脈瘤は大動脈の胸側部分内の動脈瘤であり、いずれも治療せずに放置しておくといずれ動脈瘤は破裂し、致命的な大出血を引き起こす危険性がある。
腹部大動脈瘤の治療には通常、外科バイパス手術を行い、この際患部または拡張セグメント内にグラフトの配置を伴う。ここで、経腹膜又は腹膜後方式を介する合成グラフトへの置換・切除が標準的な治療法であったが、危険性を伴うものであった。例えば、合併症としては、手術時心筋虚血、腎不全、勃起不能、腸虚血、感染、下肢虚血、麻痺を伴う脊髄損傷、大動脈−内臓瘻及び死が挙げられる。腹部大動脈瘤の外科的治療は高い死亡率を示すものとされている。
また、死亡率の高さに加え、大きな切開手術を伴うため回復期間が長くなる問題、グラフトを大動脈に縫合することが困難である問題、体力の負担が大きいこと等、様々な問題が付随する。また、腹部大動脈瘤のある患者の多くは高齢であり、他の慢性病、例えば、心臓病、肺病、肝臓病、腎臓病等を併発しているケースが多いため、さらにリスクが大きいものになる。
胸部大動脈の治療に広く採用されている方法も、手術による再建であり、動脈瘤セグメントをプロテーゼ器具で置き換える手法が主流になっている。しかし、この手術も前述したように、高いリスクが付随するものであり、高い死亡率および罹病率を伴うものである。
一方、近年、カテーテルを用いた技術開発にも関心が向けられ、多大な研究がなされている。これは、ステントグラフトの開発によって容易になり、病院およびICUにいる期間が短いことに加えて、手術による罹病率及び死亡率が低いことが大きな利点として挙げられる。
ステントグラフトの運搬は一般的に、患部から見て遠隔の動脈(例えば上腕動脈)の切開を行い、そこから患部まで挿入されたカテーテルを介して、X線透視下で治療が行われる。適当なサイズの導入器をガイドワイヤにはめ、カテーテルおよびガイドワイヤを動脈瘤中に通す。そして、導入器を通してステントグラフトをガイドワイヤに沿わせて適当な位置まで前進させる。ステントグラフトが所定の位置に配置された後、X線造影剤を患部に注入することによって血管の造影図を得る準備が整う。
上述のカテーテルの直径は代表的なもので20フレンチ(Fr)(3Fr=1mm)程度と大きく、現状では侵襲度が大きく、動脈切開部の閉鎖には外科手術による再建が必要である。また、血管が細い患者はステントグラフトの挿入が困難であるため適用範囲からは外れ、この治療の恩恵に預かることができない。従って、より直径が小さいカテーテルに収納可能なステントグラフトの設計が必要とされている。具体的には、血管等への挿入時に、可能な限り細い血管からでも挿入できるよう、ステントおよび基布が折り畳まれたときに細くコンパクトになるような工夫、加えて柔軟性を持たせるような工夫が、ステントグラフトに要求される。
ステントグラフト用基布における改良としては、基布の厚みをより薄くかつ柔らかくすることが第一に考えられるが、単純に薄くすると布の強力低下や透水性が増加する問題が出てしまう。そこで、表面に超極細繊維の起毛を形成させ、挿入時の基布が圧縮された状態では0.2mm以下の厚みであり、血管内に留置された後は0.4mm以上となる基布が開示されている(例えば、特許文献1参照)。また、織物等を構成する糸を5〜40デニールとして薄い構造とする技術が提案されている(特許文献2参照)。
特開2000−225198号公報 特表2008−505713号公報
特許文献1に記載の基布のように起毛表面を有する場合、圧縮時と開放時の厚みが変化する特徴を有する。しかし、起毛布はその構造上絶対的な厚みを有しており、例えば基布の厚みを80μm以下とすることは困難であった。さらに、起毛されている状態では柔軟であっても圧縮した場合は起毛同士が絡まりあい、風合いが固くなるため、例えば18Fr以下のカテーテルに挿入することが困難になる。
また、起毛布は起毛している際には構造が粗くなるため、起毛繊維に細胞が積極的に吸着することを促進する効果があるが、逆に繊維密度が少なく強力に劣る傾向にある。また、透水性が高くなり、血液や造影剤の漏洩にも繋がることから好ましくない。
一方、特許文献2に記載のように細繊度の糸を用いることは薄い基材を製造することに有効であるが、生地に充分な強力を持たせることは困難であった。具体的には、糸を細くしても、透水性を低くするためには糸間距離を短くする必要があり、織密度を増加させることに繋がり、結局厚みや硬さは増加する。逆に、織密度を一定以下に抑えつつ細繊度化すると強力が低下してしまう。従って、薄さ、高強力、低透水性の全てを満足する手段を未だ見出すことができていなかった。
本発明は上記課題を解決するために、以下の構成を有する。すなわち、本発明のステントグラフト用基布は、合成フィラメントで構成されたリップストップ組織を有する平織物であって、厚みが20〜80μm、であることを特徴とするステントグラフト用基布である。また、本発明のステントグラフトは本発明のステントグラフト用基布とステントよりなることを特徴とするものである。
本発明によって、薄さ、柔軟性、高強力および低透水性を具備するステントグラフト用基布を得ることができ、その結果、より細いカテーテルに挿入可能である小サイズのステントグラフトを提供することができる。
本発明のステントグラフト用基布の織物組織図の一例である。 本発明のステントグラフト用基布の織物組織図の一例である。 比較例のステントグラフト用基布の織物組織図である。
以下、本発明の構成要件を詳細に説明する。
本発明のステントグラフト用基布は織物で構成される布帛である。布帛構造としては編物、不織布等様々あるが、薄さ、強力および低透水性を満足させるためには織物であることが必要である。織物の組織としては、平織、綾織、朱子織、二重織等が挙げられるが、丈夫で耐摩耗性に優れた平組織が好ましい。また、布帛の形態については制約はなく、一般的な平面上の織物以外に袋状に織り上げた形態でも構わない。
より細いカテーテルに挿入できるステントグラフトを提供するためには、使用される基布の厚みが薄く、かつ柔軟であることが重要である。
厚みは20〜80μmである必要があり、好ましくは30〜70μm、より好ましくは30〜60μmである。厚さが80μmを超えると、18Fr以下の細いカテーテルに挿入することが困難となり好ましくない。また厚みが邪魔することによってコンパクトに折り畳んだりすることができないため、14Fr以下の細いステントグラフトへの適用が困難になる。逆に薄過ぎると擦過等によって破れ易くなり、生地としての強度が保てなくなるため、厚さは20μm以上である必要がある。
本発明のステントグラフト基布を構成する平織物は格子状にリップストップ組織が組み合わされた織物組織であることが重要である。
体内に配置された後のステントグラフト基布に作用する主な外力としては、基布内側に取り付けられた金属性ステントとの擦過や血圧、脈動による伸縮が挙げられる。
特に血圧や脈動は年単位の長期にわたって基布のあらゆる方向に作用するため、基布にはこうした外力に耐え得る強力や耐久性が要求される。薄く柔らかい生地としながら、強力と耐久性を付与するためにはリップストップ組織を組み込んだ平織物にすることが大変効果的である。
リップストップ組織によって構成される格子柄の大きさの規定は特にないが生地の柔軟性と薄さを保ちつつ強力を持たせるためには、経方向、緯方向とも格子柄の大きさは2mm以下であることが好ましい。また、万一、体内での使用時にほつれ等の損傷が発生した場合にも、リップストップ部で疵の成長を止めることが可能になる。そのためにも格子柄の大きさは2mm以下であることが好ましい。
リップストップ組織を構成する糸にはリップ組織を構成しない糸と同じ糸を2本以上揃えて配置しても良いし、種類の異なる糸を配置しても良いが、リップストップ組織の糸の繊度を非リップストップ組織の糸の繊度より大きくすることが好ましく、具体的には44デシテックス以上であることが好ましい。そうすることによって引裂強力はもとより引張強力をも増加することができ、また、型くずれしにくい丈夫な生地にすることができる。
本発明の基布は、前述のリップストップ組織の効果により薄いながらも引張強力に優れていることが特徴である。経方向、緯方向ともに引張強力が50.0N/cm以上、引裂強力が8.0N以上であれば必要な強度が確保でき、血圧や脈動による伸縮に耐え得るものとなる。
本発明では、基布の薄さ、強力および低透水性を両立する点で織物のカバーファクター(以下、CFと略す)が重要であり、経糸方向と緯糸方向のCFの和は1300〜2200であることが必要である。好ましくは、1500以上2100以下である。ここで、CFは以下の式により算出する。なお、リップストップ部を有する織物のCFはリップストップの単位組織を構成する糸の平均繊度を求め、それを用いて算出する。
CF=√A×N+√B×M
A:経糸の繊度(デシテックス)、B:緯糸の繊度(デシテックス)
N:経糸の密度(本/2.54cm)、M:緯糸の密度(本/2.54cm)
CFを小さくすると厚さは薄くできるが、生地を構成する糸の本数が少なくなるため、必然的に生地の引張強力は小さくなり長期の使用に耐え得るものではなくなってしまう。また繊維間空隙も大きくなるため重要な性能である低透水性も得られない。従って、CFは1300以上とすることが好ましい。一方、CFが大きいほど強力や低透水性が向上する点で好ましいが、織物構造が緻密になるため生地が硬くなり、細いカテーテルに挿入するのが困難になる。また、成形加工性が困難になるため細いステントグラフトへの適用も困難になる。またCFが大きくなるに連れて、風合いがペーパーライクになるため引裂強力が急激に低下したり、しなやかさが失われるため屈曲部での損傷が発生し易くなる。従って、柔軟で引裂強力に優れた生地を得るためにはCFが2200以下であることが好ましい。
また、ステントグラフトとしての役目を果たすためには造影剤や血液といった液体が基布からできる限り漏れないことが重要であり、そのためには透水性が250ml/cm/min以下であることが好ましい。より好ましくは、50ml/cm/min以下、さらに好ましくは10ml/cm/min以下である。
本発明でいう透水性は、試料から無作為に2箇所をサンプリングし、各サンプルに対し下記方法で2回測定して、その平均値を求めるものである。
詳述すると、直径1cmの打ち抜きをした直径4cmのドーナッツ状パッキン2枚に、打ち抜き部分以外に通液のないよう2cm角の織物試料を挟み、円形ろ過フィルター用ハウジングに収納したものに、温度25℃の逆浸透膜ろ過水を織物試料が十分含水するまで通液する(2分以上)。温度25℃、ろ過差圧120mmHgの条件下に、逆浸透膜ろ過水の外圧全ろ過を30秒間行い、直径1cmの部分を透過する水の透過量(mL)を小数第1位を四捨五入して求める。その透過量(mL)を単位時間(min)および有効織物面積(cm)あたりの値に換算することにより、圧力120mmHgにおける透水性能を求める。
通常、低透水性を付与するためには、CFが2200以上の高密度で製織することが一般的であるが、前述のとおりCFが2200を越えると織物構造が緻密になり、柔軟性が損なわれてしまう。CFが2200以下の織物としながら、低透水性を達成するする手段としては、織物にカレンダー加工を施したり扁平断面糸を用いて、その断面における長軸側を織物の厚み方向に垂直に並べる等して単糸間空隙を低減させることが有効であるが、同時に厚さの低減も図ることができるカレンダー加工が特に効果的である。
本発明の基布を構成する合成フィラメントとしては、生体適合性を有するポリマーであれば特に限定されるものではなく、例えば、ポリエステル、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリウレタン、ポリアミド、ナイロン等を用いることができるが、強度に優れる点でポリエステル、特にポリエチレンテレフタレートであることが好ましい。
リップストップ組織を構成しない織物に使用する繊維の総繊度は5〜40デシテックスであることが好ましい。より好ましくは5〜35デシテックスで、さらに好ましくは10〜25デシテックスである。繊度が小さ過ぎるといくら高密度な織物にしても充分な強度を付与できないため、繊度は5デシテックス以上とすることが必要である。一方、繊度が太くなるとカレンダー加工を施しても、基布の厚みを80μm以下にすることが困難になるため、繊度は40デシテックス以下である必要がある。また、基布に柔軟性を付与するためには、単糸繊度は0.1〜2デシテックスであることが好ましく、0.3〜1.5デシテックスであることがより好ましい。0.1デシテックス以下になると摩耗による毛羽が発生し易くなり、2デシテックス以上になると基布の柔軟性が損なわれてしまう。
合成フィラメントを構成する単糸の断面については特に制約はなく、一般的な丸断面の他に三角断面、扁平断面および中空断面等の異形断面でも良いが、生地に曲げ柔らかさや低透水性を付与できる点からは扁平断面が好ましい。
前記の繊維は耐摩耗性と柔軟性の点で、モノフィラメントよりもマルチフィラメントであることが好ましい。マルチフィラメントとすることで、外部からの力に柔軟に対応でき、単糸がズレ動くことによって柔らかさや耐摩耗性を発現できる。なお、マルチフィラメントは無撚糸でも実撚糸でもよく、また、捲縮が付与された仮撚糸でも構わない。
また、織物の表面は起毛がされていないことが好ましい。起毛があることによって厚みが増し、かつ、起毛により繊維が切断されるために強力も低下することから好ましくない。平滑であることによって、基布が滑りやすく小さく畳んでカテーテルに挿入し易くなる。
本発明のステントグラフトは、本発明のステントグラフト用基布とステントよりなるものである。ステントグラフトは、少なくとも1つのステントがステントグラフト用基布に縫合糸等により固定されている。ステント設計は特に限定されるものではないが、例えば、自己拡張型ステントおよびバルーン拡張型ステントを挙げることができる。ステント材料としては、例えばニッケルチタン合金等の形状記憶合金等が挙げられる。
次に、本発明のステントグラフト用基布およびステントグラフトの製造方法の一例を述べるが、ここに述べる製造方法に限定されるものではない。
本発明の織物を構成する繊維は、直接紡糸で得てもよいし海島型または分割割繊型の複合口金を用いて複合紡糸し、織物とした後に極細化して得てもよい。製造コストの点では前者が好ましい。
このようにして得た繊維は、次いで織物とする。織物を製造する場合、ウォータージェット織機やエアジェット織機のようなシャトルレス織機やフライシャトル織機、タペット織機やドビー織機、ジャカード織機等に織機は特に限定されるものではない。製織した生地には必要に応じて精練、リラックス処理を施し、テンター等でヒートセットを行う。
次いで、織物をカレンダー等でプレス処理しても差し支えない。この時、カレンダー等の表面は繊維を構成するポリマーのガラス転移点または軟化点以上の温度で加熱することが好ましく、この処理によってカレンダー等に接した表面の繊維の断面形状をその表面に対して略平行に変形させることができる。例えば、ポリエステル繊維である場合、カレンダー等の温度を120〜180℃程度に加熱して処理することが好ましい。
このようにして得られたステントグラフト用基布は、必要な大きさに溶断等でカットした後、ステントを取り付けてステントグラフトとする。この取り付け方法は特に限定されず、例えばポリエステル等の縫合糸を用いて縫い付ける方法で行うことができる。
なお、このようにしてステントとグラフトを一体化した後、親水剤をコーティングして縫い目を塞ぐこともできる。
以下、本発明を実施例で詳細に説明する。なお、実施例中の各物性値の測定方法および成形加工性は以下のとおりとする。
A.厚み
一定加圧23.5kPa(240gf/cm)で10秒間放置した後の対象織物の計測値(μm)を読み、無作為に5箇所計測してその相加平均値を求め、小数点第1位を四捨五入した値(μm)を用いた。
B.引張強力
JIS L 1096 8.12.1(1999)により、幅5cm、長さ20cmのサンプルを採取し、つかみ間隔10cmで定速伸長型引張試験器にて、引張速度10cm/分にて伸長させた。得られた値を幅1cm当たりに換算して引張強力とした。
C.引裂強力
JIS L1096 8.15.5により、エレメンドルフ型引裂試験機を用いて、6.3cm×10cmのサンプルを経方向、緯方向にそれぞれ5枚採取し、試験片の両つかみの中央で直角に2cmの切れ目を入れ、残りの4.3cmを引き裂いたときに示す荷重強さ(N)を測定し、その相加平均値を小数点第1位まで求めた。
D.透水性
直径1cmの打ち抜きをした直径4cmのドーナッツ状パッキン2枚に、打ち抜き部分以外に通液のないよう2cm角の織物試料を挟み、円形ろ過フィルター用ハウジングに収納したものに、温度25℃の逆浸透膜ろ過水を織物試料が十分含水するまで通液した。温度25℃、ろ過差圧120mmHgの条件下に、逆浸透膜ろ過水の外圧全ろ過を30秒間行い、直径1cmの部分を透過する水の透過量(mL)を求めた。その透過量(mL)を単位時間(min)および有効織物面積(cm)あたりの値に換算することにより、圧力120mmHgにおける透水性能を求めた。
E.成形加工性
基布を14Frのステントグラフトに製品化する際の成形加工性とした。
実施例1
非リップストップ組織部の糸として22デシテックス18フィラメントのポリエチレンテレフタレート繊維を、リップストップ組織部の糸として56デシテックス18フィラメントのポリエチレンテレフタレート繊維を準備し、経糸用の糸にはアクリル糊剤を付着させた。経糸、緯糸ともに3本置きにリップストップ糸が配置されるように、ウォータージェットルームにて図1に示すリップ組織を有する平織物に製織した。これを精練、乾燥、セットして経202本/2.54cm、緯164本/2.54cmの織物を作成した。この時、CFは2021である。次に、ロールの1本のみを160℃に過熱してカレンダー処理を行い、180℃で熱セットした。得られた織物の物性を表1に示す。この結果から明らかなように、薄くて高強力でかつ、低透水性を有した織物を得ることができた。また、柔らかくしなやかに曲がる生地であるため、14Frのステントグラフトの製品にする際の成形加工性も極めて良好であった。
実施例2
22デシテックス12フィラメントのポリエチレンテレフタレートを用いて、図2に示すダブルリップ組織で実施例1と同じ製造工程で、密度が経180本/2.54cm、緯180本/2.54cmの織物を作成した。この時、CFは1689である。得られた基布は実施例1と同じように薄さ、柔軟性、高強力を兼ね備えた織物であり、成形加工性も良好であった。
比較例1
22デシテックス12フィラメントのポリエチレンテレフタレートを用いて、実施例1と同じ製造工程で、リップストップ組織を持たない経220本/2.54cm、緯210本/2.54cmの平織物を作成した。図3に織物組織図を示す。この時、CFは2017である。得られた織物の物性は表1のとおりで、薄く低透水性を有していたが引裂強力に劣るものであった。また、風合いが硬めであり成形加工性がやや不良であった。
比較例2
22デシテックス12フィラメントのポリエチレンテレフタレートを用いて、カレンダー加工を施さない以外は実施例1と同じ製造工程で、リップストップ組織を持たない経300本/2.54cm、緯200本/2.54cm平織物を作成した。図3に織物組織図を示す。この時、CFは2345である。得られた織物の物性は表1のとおりで、厚みが大きく、また風合いも硬いものであり、ステントグラフトの成形加工性が不良であった。
比較例3
44デシテックス12フィラメントのポリエチレンテレフタレートを用いて、実施例1と同じ製造工程で、リップストップ組織を持たない経150本/2.54cm、緯140本/2.54cm平織物を作成した。図3に織物組織図を示す。この時、CFは1923である。得られた織物の物性は表1のとおりで、カレンダー加工をしたにも関わらず厚みが大きく、風合いも硬いものであった。
比較例4
22デシテックス12フィラメントのポリエチレンテレフタレートを用いて、実施例1と同じ製造工程で、リップストップ組織を持たない経120本/2.54cm、緯100本/2.54cm平織物を作成した。図3に織物組織図を示す。この時、CFは1032である。得られた織物の物性は表1のとおりで、強力が全く不足しており透水性も大きく、ステントグラフト基布としての性能を満たすものではなかった。
Figure 2011229713
本発明によって強度を保持したまま基布を薄くかつ柔らかくすることができるため、ステントグラフトのダウンスケール化が可能になり、より細い血管に対応できるコンパクトなステントグラフトを提供できる。

Claims (7)

  1. 合成フィラメントで構成されたリップストップ組織を有する平織物であって、厚みが20〜80μmであることを特徴とするステントグラフト用基布。
  2. 前記織物の引張強力が経方向、緯方向ともに50.0N/cm以上、引裂強力が経方向、緯方向とも8.0N以上である請求項1に記載のステントグラフト用基布。
  3. 前記織物の経糸方向と緯糸方向のカバーファクターの和が1300以上2200以下である請求項1または2に記載のステントグラフト用基布。
  4. カレンダー加工が施されている請求項1〜3のいずれかに記載のステントグラフト用基布。
  5. 透水性が250ml/cm/min以下である請求項1〜4のいずれかに記載のステントグラフト用基布
  6. リップストップ組織を構成しない糸の繊度が5デシテックス以上40デシテックス以下、単糸繊度が0.1デシテックス以上2デシテックス以下である合成フィラメントからなる請求項1〜5のいずれかに記載のステントグラフト用基布。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載のステントグラフト用基布とステントよりなるステントグラフト。
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