JP7480455B2 - カバードステント - Google Patents

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Description

本発明は、カバードステントに関する。
従来、食道、胃、十二指腸、小腸、大腸、胆管を含む消化器系管腔(以下、消化管と称する)等の生体管腔に生じた狭窄部又は閉塞部に留置され、病変部位を拡径して生体管腔の開存状態を維持するステントが知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許第4651943号公報
ところで、ステント骨格の周面を膜体で被覆したステント(いわゆるカバードステント)を用いた場合、ステント内へのイングロース(病変部位の組織がステント骨格の隙間を通過してステント内部まで侵入し、生体管腔を閉塞してしまう現象)の発生を抑制することができる。しかし、当該ステントが留置される生体管腔に対して側方から流れ込む消化液等の体液を通過させることができず、これに起因して生体管腔に炎症等が生じる可能性がある。
本発明の目的は、ステント内へのイングロースの発生を抑制しつつ、消化管の側方から流れ込む体液の通過を許容するカバードステントを提供することである。
本発明の一態様は、消化管に留置されるカバードステントであって、筒形状を有し、軸方向に略直交する径方向に拡縮可能な骨格部と、骨格部の周面に沿って取り付けられる皮膜部と、を備える。皮膜部の少なくとも一部には、通液性を有する通液部が設けられている。皮膜部には、通液部の領域と通液部を含まない領域にかけて骨格部の軸方向の伸張を規制する加工が施され、皮膜部の通液部の領域での加工は、通液部を含まない領域での加工と比べて通液性の低下の度合いが小さい。
本発明の一態様のカバードステントによれば、ステント内へのイングロースの発生を抑制しつつ、消化管の側方から流れ込む体液をステント内へと通過させることができる。
一実施形態におけるカバードステントの概略構成を示す斜視図である。 (A)は、図1のII-II線断面図であり、(B)は、図2(A)にて破線で囲んだ部分を拡大して示す模式図である。 カバードステントを消化管内に留置した使用状態の一例を示す図である。 (A)は拡張状態のカバードステントを模式的に示す図であり、(B)はカバードステントがシースに収容された状態を模式的に示す図である。
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
後述の各図では、一実施形態として、消化管のうち十二指腸に留置するカバードステントの構成例を模式的に表している。図面におけるカバードステントの形状、寸法等は模式的に示したもので、実際の形状や寸法等を示すものではない。
図1は、一実施形態におけるカバードステントの概略構成を示す斜視図である。図2(A)は図1のII-II線断面図であり、図2(B)は図2(A)にて破線で囲んだ部分を拡大して示す模式図である。図3は、カバードステントを消化管内に留置した使用状態の一例を示す図である。
図3に示すように、本実施形態のカバードステント100は、例えば十二指腸20の病変部位に留置される。膵臓22からの膵液や胆のう23からの胆汁は、十二指腸20の内壁に開口するファーター乳頭(十二指腸乳頭)21を介して十二指腸20内に流れ込む。本実施形態のカバードステント100は、後述するように、膵液や胆汁等の消化液をステント内へと通過させる機能を有している。
図1に示すように、カバードステント100は、骨格部11と、骨格部11に固定された皮膜部12とを備えており、全体形状が管状をなしている。また、カバードステント100の軸方向の一端には、例えば金属骨格からなるベア部14が形成されている。
ベア部14は、カバードステント100の留置時に十二指腸20の内壁との間で摩擦を生じさせ、カバードステント100の位置ずれ(マイグレーション)を抑制する機能を担う。
カバードステント100は、軸方向の両端に設けられた開口が連通し、十二指腸20を流れる物が通過する管状流路を内部に有している。
骨格部11は、例えば、金属細線(線材)が螺旋状に巻回されて形成されている。例えば、金属細線が山部と谷部とが交互に形成されるように屈曲しながら螺旋状に巻回されることで、骨格部11が形成されている。骨格部11の金属細線の断面形状は、例えば、円形又は楕円形である。
骨格部11は、径方向内側に収縮した収縮状態から、径方向外側に拡張した拡張状態へと自己拡張するように変形可能に構成される。
例えば、骨格部11は、後述の図4(A)、(B)に示すように、径方向内側に収縮するときには軸方向に伸長するように変形し、径方向外側に拡張するときには軸方向に短縮するように変形する。そして、図3に示すように、骨格部11の拡張状態においてはカバードステント100の外面で十二指腸20の内壁が押圧されるようになっている。
骨格部11の金属細線を構成する材料としては、例えば、Ni-Ti合金(ニチノール)、コバルト-クロム合金、チタン合金、及びステンレス鋼等に代表される公知の金属又は金属合金が挙げられる。なお、骨格部11は、金属以外の材料(例えば、セラミックや樹脂等)で形成されていてもよい。
また、例えば、骨格部11の材料(ニチノール等)、骨格部11の金属細線の断面積及び断面形状(ワイヤ等の円線材、又は、レーザーカットによる角線材)、周方向における骨格部11の折り返し回数及び折り返し形状(山部の数及び山部の形状)、並びに、軸方向における骨格部11の螺旋ピッチ(カバードステント100の単位長さ当たりの骨格量)等は、留置される消化管の径等に応じて適切な値に設定され得る。これらのパラメータについての詳細な説明は省略する。
皮膜部12は、管状の膜体であって、骨格部11の隙間部分を閉塞するように骨格部11に取り付けられている。本実施形態では、図2(A)に示すように皮膜部12の外周に骨格部11が設けられている。もっとも、皮膜部12は、骨格部11の外側に取り付けられていてもよく、2枚の皮膜部12で内側と外側から骨格部11を挟み込んで覆うようにしてもよい。
また、骨格部11と皮膜部12の固定は、例えば、接着、溶着、テープによる貼着又は糸による縫い付け等のいずれの手法によるものでもよい。
皮膜部12は、通液性を有する布地からなる通液部13を少なくともその一部に備えている。通液部13は、例えば、生体適合性を有する繊維材料の織物、編物又は不織布で構成され、図2(B)に示すように、メッシュ状の微細な通液孔13aを表面に複数有している。各々の通液孔13aの大きさは、膵液や胆汁等の消化液は通過可能であるが、細胞組織の侵入は阻害される程度の寸法に設定されている。なお、図2(B)では、通液部13を織物で形成した例を模式的に示すが、上記のように通液部13は編物や不織布であってもよい。
通液部13を形成する繊維材料としては、例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂等が挙げられる。
通液部13は、例えば、カバードステント100を十二指腸20に留置したときに、十二指腸の内壁のファーター乳頭21(消化管内壁の開口)と対向する位置に設けられている。これにより、図2(B)に示すように、通液部13の通液孔13aを介して、十二指腸20に流れる消化液をカバードステント100の内部へと通過させることができる。
なお、例えば、カバードステント100の内部からファーター乳頭21を介して胆管内又は膵管内に管状の器具(例えば内視鏡等)を挿入する手技を行うときには、必要に応じて通液孔13aの隙間を押し広げることで対応が可能である。
本実施形態においては、通液部13は、図1に示すように、カバードステント100の軸方向の中間に部分的に形成されている。また、本実施形態の通液部13は、図2に示すように、皮膜部12の周方向の全体にわたって形成されている。皮膜部12の周方向の全体にわたって通液部13を形成すると、カバードステント100を留置するときに、ファーター乳頭21と通液部13との周方向の位置合わせが容易となるので好ましい。
もっとも、通液部13を形成する位置は上記に限定されることなく、例えば、カバードステント100の軸方向の端部に通液部13を形成してもよい。あるいは、皮膜部12の全体を通液部13としてもよい。また、皮膜部12の周方向の一部のみ(例えば半周程度)に通液部13を形成してもよい。
通液部13を有する皮膜部12は以下のように構成される。例えば、生体適合性を有する繊維材料の織物、編物又は不織布で皮膜部12を一体的に構成し、皮膜部12の全体を通液部13としてもよい。
また、通液性を有する皮膜部12に対し、通液部13以外の領域に通液性を低下させる表面処理(例えば、プレス加工や、生体適合性を有する被膜の形成等)を施すようにしてもよい。これにより、皮膜部12のうち表面処理を施さない部分に対して選択的に通液部13を形成できる。
また、通液性の異なる布地を繋げて皮膜部12を製造することで、皮膜部12に通液部13を部分的に形成するようにしてもよい。上記の構成においては、通液部13以外の領域には布地以外のシート材を用いてもよい。あるいは、皮膜部12を布地で形成する場合において、通液部13の領域と通液部13以外の領域(通液部13よりも通液性が低い部分)とでそれぞれ編み方や織り方を変化させたり、通液部13に用いる材料と通液部13以外の部分に用いる材料とを変えたりすることで、皮膜部12に通液部13を部分的に形成してもよい。
また、皮膜部12には、骨格部11の軸方向の伸張を規制するための加工が施されている。当該加工を施すことにより、骨格部11は軸方向の伸張が規制された皮膜部12に拘束されて軸方向に伸張しにくくなる。これにより、収縮状態と拡張状態の間でカバードステント100が軸方向に伸張する度合い(短縮率)も小さくなる。
上記加工の一例としては、加熱したローラを用いて皮膜部12を軸方向に延伸させるプレス加工が挙げられる。上記のプレス加工は、骨格部11の軸方向の伸張を規制可能な強度を有する一方で、カバードステント100の径方向の拡縮性を損なわない程度の強度を有することが好ましい。
上記のプレス加工は、例えば、皮膜部12の周方向の全体に施されていてもよく、皮膜部12の周方向の一部(例えば周方向の所定角度おき)に施されていてもよい。
また、骨格部11の軸方向の伸張を規制する観点から、上記のプレス加工は、カバードステント100の軸方向に沿って、軸方向の一端から他端にかけて施されることが好ましい。
ここで、皮膜部12の周方向の全体に通液部13が形成されている場合、カバードステント100の軸方向の一端から他端にかけてプレス加工を施すと、通液部13に対しても通液性を低下させるプレス加工が施されることになる。かかる場合においては、通液部13の範囲には要求される通液性を損なわない強度でプレス加工を施せばよい。
次に、カバードステント100のシース200内における収容状態について、図4(A)、(B)を参照して説明する。図4(A)は、拡張状態のカバードステント100を模式的に示す図であり、図4(B)は、カバードステント100がシース200に収容された状態を模式的に示す図である。
カバードステント100は、シース200(図4(B)参照)内に収容された状態で十二指腸20内に導入される。シース200に収容されたカバードステント100は、骨格部11が収縮された収縮状態にある。カバードステント100は、例えば、十二指腸20の狭窄部等に運ばれた後にシース200から放出され、骨格部11が拡張した拡張状態へと変形する。このとき、カバードステント100は、十二指腸の内壁のファーター乳頭21(消化管内壁の開口)に対して通液部13を対向させるように留置される。
図4(B)に示すように、カバードステント100は、シース200に収容された収縮状態では、図4(A)の拡張状態と比べて、径方向内側に収縮され、且つ軸方向に伸長した状態になる。すなわち、カバードステント100は、図4(A)の拡張状態の軸方向の長さL1と比べて、図4(B)に示すシース200に収容された収縮状態での軸方向の長さL2は長くなる。
ここで、本実施形態のカバードステント100は、皮膜部12に施されたプレス加工により、皮膜部12に取り付けられている骨格部11の軸方向への伸長が規制される。そのため、シース200に収容したときの軸方向の長さL2は、プレス加工を施さない場合と比べると短くなる。
以上のように、本実施形態のカバードステント100は、骨格部11が皮膜部12で覆われているので、ステント内へのイングロースの発生を抑制することができる。
また、皮膜部12の一部には、通液性を有する布地からなる通液部13が設けられている。そのため、ファーター乳頭21から流れ込む消化液をカバードステント100内へと通過させることができる。したがって、本実施形態によれば、ステント内へのイングロースの発生を抑制しつつ、十二指腸の側方から流れ込む消化液の通過を許容するカバードステントとなる。
また、本実施形態のカバードステント100は、皮膜部12には、骨格部11の軸方向の伸張を規制する加工(例えばプレス加工)が施されている。そのため、軸方向の伸張を規制する加工が施されていない他の皮膜部を用いた場合と比べて、収縮状態におけるカバードステント100の軸方向の長さL2が相対的に短くなる。これにより、カバードステント100の外面部とシース200の内面部との接触面積を相対的に小さくすることができ、シース200から放出する際の抵抗を小さくすることができる。したがって、シース200からのカバードステント100の放出を適正に行うことができる。
さらに、収縮状態におけるカバードステント100の軸方向の長さL2を相対的に小さくできる。これにより、ステント留置時のカバードステント100の軸方向の短縮率を低減でき、十二指腸の所望の留置部位にカバードステント100を好適に留置することができる。
なお、シースを手元側に引っ張ることでシースからカバードステントを放出する場合、シースの内面部とカバードステントの外面部との摩擦抵抗によっては、カバードステントが軸方向にさらに伸長してしまい、放出する際の抵抗が大きくなることが考えられる。これに対し、本実施形態では、皮膜部12に上記の加工が施されているため、カバードステント100が軸方向にさらに伸長してしまうのを抑制することができる。したがって、放出時の抵抗の増加を抑制することができる。
以上、本発明者によってなされた発明を実施形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
例えば、骨格部11は、1本の金属パイプ(例えば、Ni-Ti合金からなるパイプ等)をレーザー加工(レーザーカット)することによって形成されてもよい。
また、上記実施形態では、皮膜部12は、通液性を有する織物、編物、不織布等で構成するようにしたが、一例であってこれに限られるものではなく、例えば、非通液性の膜体で構成してもよい。具体的には、図示は省略するが、骨格部11を所定の溶液(例えば、シリコーン溶液等)にディッピングして膜体を形成してもよい。この場合、当該膜体に微細な通液孔を形成することで、通液部13が設けられた皮膜部12を形成する。
また、上記実施形態では、十二指腸に留置されるカバードステント100を例示したが、一例であってこれに限られるものではない。例えば、ステントは、十二指腸以外の消化管に留置されるものであってもよいし、消化管以外の生体管腔に留置されるものであってもよい。この場合も、ステント内へのイングロースの発生を抑制しつつ、生体管腔の側方から流れ込む消化液等の体液をステント内へと通過させることができる。
なお、十二指腸以外の消化管に留置されるステントの場合、当該消化管を流れる物は、例えば、全く消化が行われていない摂取直後の食物、一部分解処理された食物、消化管を通っても消化されなかった物(例えば、便等)を含み、物質の状態は問わない。
今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
100 カバードステント
11 骨格部
12 皮膜部
13 通液部

Claims (3)

  1. 消化管に留置されるカバードステントであって、
    筒形状を有し、軸方向に略直交する径方向に拡縮可能な骨格部と、
    前記骨格部の周面に沿って取り付けられる皮膜部と、を備え、
    前記皮膜部の少なくとも一部には、通液性を有する通液部が設けられ
    前記皮膜部には、前記通液部の領域と前記通液部を含まない領域にかけて前記骨格部の軸方向の伸張を規制する加工が施され、
    前記皮膜部の前記通液部の領域での前記加工は、前記通液部を含まない領域での前記加工と比べて通液性の低下の度合いが小さい
    カバードステント。
  2. 前記通液部は、前記消化管に当該カバードステントが留置されたときに、前記消化管内壁の開口に対向する位置に設けられている
    請求項1に記載のカバードステント。
  3. 前記皮膜部には、前記カバードステントの軸方向に沿って、軸方向の一端から他端にかけて前記骨格部の軸方向の伸張を規制する加工が施されてなる
    請求項1又は2に記載のカバードステント
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