JP4053857B2 - 異形血管補綴材用袋織り管状体の製造方法 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は異形血管補綴材用袋織り管状体を製造する方法に関し、詳しくは経筋や隙間のない高品質な異形血管補綴材用袋織り管状体を、シャットル織機により連続的に安定して製織するための製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
損傷を受けた、あるいは疾患のある血管を置換、修復するための代用血管として、血管補綴材が広く用いられている。血管補綴材に関しては、その材質や構造、表面修飾、物理的性能などについて古くから研究され、ポリエステル系繊維を織成あるいは編成により管状体としたものや、ポリテトラフルオロエチレン樹脂を管状に成形したものなどが実用化されている。これらのうち織成管状体は、有孔度を低くすることが可能で、これによって液密性を高めることが可能であるとともに、高い強度(破断、破裂等)を有し、かつ移植後の径方向の拡張が小さい、といった特徴を有している。このため、織成管状体は、血液の流れが早い胸・腹部大動脈等の治療に用いられる大口径血管補綴材として特に好適に用いられている。また、近年、大動脈瘤や大動脈解離に対する低侵襲治療として、カテーテルを経由してステント型血管補綴材を経皮的に血管に導入し、病変部に留置する血管内治療が注目を集めている。ステント型血管補綴材は小さく折り畳んだ状態でカテーテルに挿入されるが、このとき、血管補綴材の折り畳み体積が問題となる。織成管状体は壁厚の極薄化が可能で、折り畳み体積を小さくすることが可能であることから、ステントと組み合わせステント型血管補綴材としても好適に用いられている。
【0003】
血管補綴材の形状は移植部位によって異なり、一般的なストレート型から、分岐型、テーパー型と多様である(図1参照のこと)。また、径サイズも、末梢血管の治療に用いる7mm以下のもの(小口径血管補綴材)から、胸・腹部大動脈の治療に用いる7〜54mmのもの(大口径血管補綴材)まで広範囲に及ぶ。
【0004】
このような血管補綴材用織成管状体は、通常、開口装置としてドビー、またはジャカードを搭載したシャットル織機を使用し、袋織りの技法により製造することができる。袋織りにより得られた織布は、円周方向に継ぎ目のないシームレス管状体となるため、患部に移植した際、抗血栓性、強度に優れた血管補綴材となる。管状体を製造するにあたって、織機に備え付けるシャットル数は、通常、管状体の形状によって決定される。例えば、ストレート型管状体やテーパー型管状体を製造する場合に必要なシャットル数は1個であり、2分岐型管状体では2個といった具合である。
【0005】
ところが、分岐型やテーパー型など径サイズが一様でない異形形状の管状体を製造する場合、緯糸と交錯する経糸の本数が一様でなく製織幅が変化するため、部分的には適正な緯糸張力で管状体を製造することができても、管状体全体を常に適正な緯糸張力で製造することはできなかった。このため、経糸切れなどのトラブルが発生し、製織性が低下したり、管状体に経筋や隙間などの欠点が発生し、品質が低下するという問題があった。具体的には、緯糸張力が適正レベルよりも高いと、緯糸がシャットルとともに経糸間を移動する際、耳領域の経糸が緯糸に引っ張られ、経糸が切れやすくなる。また、耳領域の経糸密度が他領域に比べ高くなって経筋が発生しやすい。逆に緯糸張力が適正レベルよりも低いと、耳領域で緯糸が緩み、経糸間に隙間が発生しやすい。隙間は液密性の低下をもたらし、致命的欠陥となりかねない。特に、モノフィラメントや単糸繊度が大きなマルチフィラメント(単糸繊度5.5〜50dtex)を経糸に用いた場合、深刻な問題であった。
【0006】
そもそも、モノフィラメントや単糸繊度が大きなマルチフィラメントなど、断面形状の自由度が小さい糸条を用いた織布においては、異形管状体に限らず、ストレート型管状体、さらにはフラットな織布においても、経筋や隙間などの欠点が発生しやすいものである。通常のマルチフィラメント(単糸繊度0.1〜3.5detx、単糸数10〜1000本の構成を有するマルチフィラメントを意味する)を用いた織布においては、糸断面が楕円形や扁平形に変形し、隣り合う経糸あるいは緯糸同士、交錯する経糸と緯糸とが密着するのに対し、モノフィラメントや単糸繊度が大きなマルチフィラメントを用いた織布においては、糸断面の変形が制限されて糸と糸とが密着できないため、経筋や隙間などの欠点につながるのである。製織中に張力あるいは適正張力が変化する場合、この現象は特に明瞭に現れる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はこのような現状に鑑みて行われたものであり、シャットル織機により異形血管補綴材用袋織り管状体を製造するに際して生じる従来の問題点を解決し、連続的に安定した製織を行うとともに、品質の高い異形血管補綴材用袋織り管状体を製造するための方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、製織幅に応じて張力の異なる緯糸を使い分けることにより、従来問題であった、緯糸張力が不適正なことによる経糸切れなどのトラブルを防止し、連続的に安定した製織を行うことができるとともに、経筋や隙間などの欠点を防止し、品質の高い異形血管補綴材用袋織り管状体を製造することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は第1に、シャットル織機を使用して異形血管補綴材用袋織り管状体を製造する方法であって、製織幅に応じて張力の異なる緯糸を使い分けることにより、常に適正な緯糸張力で製織することを特徴とする、異形血管補綴材用袋織り管状体の製造方法である。
第2に、1つの緯糸張力設定で対応させる製織幅変化が10mm以内であることを特徴とする、異形血管補綴材用袋織り管状体の製造方法である。
第3に、前記シャットル織機がジャカード装置付きシャットル織機であることを特徴とする、異形血管補綴材用袋織り管状体の製造方法である。
第4に、経糸にモノフィラメントを使用することを特徴とする、異形血管補綴材用袋織り管状体の製造方法である。
第5に、経糸に単糸繊度が5.5〜50dtexのマルチフィラメントを使用することを特徴とする、異形血管補綴材用袋織り管状体の製造方法である。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書において「異形血管補綴材用袋織り管状体」を、単に「異形袋織り管状体」、「異形管状体」、「管状体」という場合もある。
【0011】
本発明は、シャットル織機を使用して異形形状の血管補綴材用袋織り管状体を製造する方法である。
ここでシャットル織機とは、シャットル(緯糸挿入具の1つ)を用いて、経糸の間に緯糸を通す織機である。細幅織物を効率的に生産できる、緯糸張力を細かく設定することができる、などの特徴から、ラベル、ファッションリボンなど、主として細幅織物の製造に適しており、血管補綴材用袋織り管状体の製造にも好適に用いられる。
【0012】
本発明においては、開口装置としてドビー、またはジャカードを搭載したシャットル織機を使用する。
【0013】
ただし、ドビー方式による製織では、連続製織可能な異形管状体の形状に限界があるのが現状である。ドビー装置は、経糸を数〜数千本からなる数〜数十組のグループに分けて開口を制御することが可能であり、一定幅の織物を製造するのに適している。具体的には、目的の管状体を形成するために必要な本数の経糸を織機にセットし、ドビー装置により経糸を開口し、シャットルを用いて、織機にセットしてある全ての経糸に対して緯糸を挿入する。しかしながら、管状体の径サイズを変更する場合、すなわち管状体を扁平に折り畳んだ状態において管状体の幅を変更する場合、通常、織機にセットする経糸の本数を増減する作業が必要で、連続製織可能な異形管状体の形状は、図1( II )あるいは図2の分岐型管状体に代表される如く、織り始めから織り終わりまで総経糸本数の増加あるいは減少による製織幅変化がないものに限定されるのである。
【0014】
一方、ジャカード装置は経糸を1〜数本ずつ開口させることが可能であり、極めて複雑な組織の織物を製造することができる。具体的には、織機にセットしてある経糸のうち、目的の管状体を形成するために必要な部分の経糸列、すなわち管状体形成に寄与して管状体の一部を構成する経糸列だけをジャカード装置により開口し、その部分の経糸に対して緯糸を挿入する。目的の管状体の径サイズ(幅)に見合う本数の経糸を自由に選択できるため、分岐型やテーパー型など各種形状の管状体も製造することができ、本発明において特に好ましく用いられる。
【0015】
これらの開口装置は、電子式、機械式のいずれであっても構わないが、形状変更の容易さ、生産性を考慮すると電子式開口装置が好ましい。
【0016】
図4は、ジャカード装置付きシャットル織機を用い、本発明の製造方法によりテーパー型血管補綴材用袋織り管状体Aを製造する場合の工程を模式的に示す平面図である。シャットルB1、B2、B3には、それぞれ、管状体の一部A1、A2、A3を形成するための緯糸D1、D2、D3が担持されており、該緯糸には、それぞれ、製織幅W1〜W2、W2〜W3、W3〜W4に適した張力が設定されている。そして、経糸列C1〜C2に対してシャットルB1を、経糸列C2〜C3に対してシャットルB2を、経糸列C3〜C4に対してシャットルB3を作動させて、緯糸D1、D2、D3をそれぞれ挿入することにより、テーパー型管状体Aを製造する。この方法によれば、管状体形成に寄与する経糸本数の増加あるいは減少により、製織幅が変化した場合にも、常に適正な緯糸張力で製織を行うことができるのである。
【0017】
なお、図4においてFは、異形管状体Aの形成に寄与しない部分の経糸列に対し緯糸を挿入することにより、管状体とは別個に形成した製織部である。製織部Fを形成することにより、織機にセットしてある全ての経糸に一定の張力が加えられることになり、製織部Fを形成しない場合に発生しやすい、管状体形成に寄与しない部分の経糸列の緩みや、それに起因する経糸切れ、開口不良などのトラブル、毛羽などの品質欠点を効果的に防止することができ、好ましい。
【0018】
製織部Fを形成するにあたっては、製織部Fを形成するための緯糸を、管状体Aを形成するための緯糸とは別個に準備し、それを用いて製織部Fを形成しても良いし、管状体の一部を形成するための緯糸であって、その時点では管状体形成に寄与していない緯糸を用いて、製織部Fを形成しても良い。後者の場合、緯糸張力は製織部Fの製織幅に適した設定でなく、経糸切れなどのトラブルを発生しやすいため、連続的に製織することは避けるべきである。経糸張力の安定性と、生産性、緯糸張力のバランスを考慮し、緯糸を挿入する頻度、および製織部Fの長さを決定するのがよい。
【0019】
緯糸張力の調整は、緯管(シャットル内に保持できる形に緯糸を巻き上げたもの)の回転を制御することによって行われ、例えば、押さえバネを用いて緯管を押さえつける方法を挙げることができる。緯管を押さえる力が強いほど、緯管は回転しにくく、その結果、緯糸に掛かる張力が強くなる。押さえバネとしては、通常、真鍮、ステンレス、スチール製などの心材を巻き上げたコイルバネが用いられ、心材の材質、コイルの形状(内径、長さ)が同じである場合、心材の直径が大きいほど(太さが太いほど)、押さえる力は強くなる。製織幅が大きいほど、緯管の回転を高めて緯糸を長く引き出す必要があり、従って緯糸張力を弱めてやればよい。
【0020】
緯糸張力は、使用する糸条の形態や物性、管状体の形状や組織、製織幅、経糸本数、糸密度など様々な条件を勘案した上で、適正範囲に入るよう調整する必要がある。異形管状体の製造において緯糸張力が不適正となる直接の要因は、管状体形成に寄与する経糸本数の増加あるいは減少による製織幅の変化であり、本発明では、製織幅に応じて、張力の異なる緯糸を使い分けることを特徴とする。
【0021】
1つの緯糸張力設定で許容可能な製織幅の変化は特に限定されるものでなく、上記様々な条件を勘案し、適宜決定すればよい。ここで製織幅は、織り上がり後の管状体を扁平に折り畳んだ状態における管状体の幅Wに相当し、織り上がり後の管状体の径サイズ(内径)Rとは、おおよそπR=2Wの関係である(π:円周率。管状体の壁厚は考慮していない)。製織幅変化が大きいほど、緯糸張力が不適正となって製織性が低下したり、管状体に経筋や隙間などの品質欠点が発生しやすくなる。好ましくは、1つの緯糸張力設定で対応させる製織幅変化を10mm以内とすることであり、より好ましくは8mm以内、さらに好ましくは6mm以内、特に好ましくは4mm以内である。
【0022】
このように、緯糸張力の設定パターン数は管状体の形状によって異なり、それに応じた数のシャットルを織機に備え付ける必要がある。
【0023】
織り上がった管状体は、洗浄され、また必要によりクリンプ加工が施され、さらに、液密性向上を目的とした目止めコーティング等の加工を施され、血管補綴材として供される。このため、最終製品としての血管補綴材は、織り上がり後の管状体に比べ、通常、径方向、長手方向とも収縮し、糸密度の込んだものとなる。また、製織時、シャットルが経糸間を往復運動するため管状体には幅方向に張力がかかり、織機にセットした経糸列の幅に比べ、織り上がった管状体の幅は狭くなる。管状体の幅、および管状体形成に必要な経糸本数は、このような寸法変化を考慮し、決定しなければならない。
【0024】
異形管状体の織り組織は特に限定されるものでなく、例えば平織り、綾織り、朱子織り、梨地織りなどが挙げられるが、壁厚を薄く、且つ強度(破断強度、破裂強度)や液密性に優れた管状体を得やすいという理由により平織りが好ましい。
【0025】
本発明の異形血管補綴材用袋織り管状体の製造方法に用いられる糸条は特に限定されるものではなく、モノフィラメント、マルチフィラメントのいずれも使用可能であり繊度も任意であるが、なかでも、断面形状の自由度が小さく、従来の製造方法では製織が困難であった繊度5.5〜250dtexのモノフィラメントや単糸繊度が5.5〜50dtexのマルチフィラメントを経糸に用いた場合、特に効果を発揮する。
【0026】
その素材も特に限定されるものではないが、血管補綴材料としての使用実績からポリエステル系繊維が好ましい。ポリエステル系繊維は化学的に安定で耐久性が大きく、機械的強度も高く、毒性や異物反応がないことから、血管補綴材料として広く用いられてきた。ポリエステル系繊維として具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエステル−ポリエーテルブロック共重合体、及びこれらの複合繊維などを挙げることができる。
【0027】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
実施例1〜3、比較例1、2において用いた糸条は次の通りである。
経糸:単糸繊度18dtex、単糸数2本より構成される総繊度36dtex、無撚のポリエチレンテレフタレート製マルチフィラメント
緯糸:単糸繊度0.37dtex、単糸数210本より構成される総繊度78dtex、撚り数200回/mのポリエチレンテレフタレート製マルチフィラメント
【0028】
[実施例1]
電子式ドビー装置付きシャットル装置に3個のシャットルB1、B2、B3を備え付け、図2に示す2分岐型血管補綴材用袋織り管状体A(平織り組織)を製造した。
【0029】
シャットルB1、B2、B3には、それぞれ主管部A1、支管部A2、A3を形成するための緯糸D1、D2、D3を担持させた。このとき、押さえバネとして、内径2mm、長さ15mm、心材直径0.60mmの真鍮製コイルバネ、内径2mm、長さ15mm、心材直径0.35mmのステンレス製コイルバネ、同じく内径2mm、長さ15mm、心材直径0.35mmのステンレス製コイルバネを用いて、緯糸D1、D2、D3の張力をそれぞれ製織幅W1(24mm)、W2(12mm)、W3(12mm)に適したレベルとなるよう調整した。
【0030】
経糸列C1(450本)をドビー装置により開口し、シャットルB1を作動させて緯糸D1を挿入することで、主管部A1を製造した。このとき、主管部A1の製織幅が24mm、長さが200mmとなるように製織を行った。
次いで、経糸列C2、C3(各225本)をドビー装置によりそれぞれ開口し、シャットルB2、B3をそれぞれ作動させて緯糸D2、D3を挿入することで、主管部A1に連続する支管部A2、A3を製造した。このとき、支管部A2、A3の製織幅が12mm、長さが200mmとなるように製織を行った。
【0031】
本実施例における製織性は良好であり、得られた2分岐型管状体の品質も良好であった。
【0032】
[実施例2]
電子式ジャカード装置付きシャットル装置に2個のシャットルB1、B2を備え付け、図3に示すテーパー型血管補綴材用袋織り管状体A(平織り組織)、および製織部F(平織り組織)を製造した。
【0033】
シャットルB1、B2には、それぞれ管状体の一部A1、A2を形成するための緯糸D1、D2を担持させた。このとき、押さえバネとして、心材直径0.35mm、0.65mmの真鍮製コイルバネ(いずれも内径2mm、長さ15mm)を用いて、緯糸D1、D2の張力をそれぞれ製織幅W1(40mm)〜W2(28mm)、W2(28mm)〜W3(16mm)に適したレベルとなるよう調整した。
【0034】
織機にセットしてある経糸(1500本)のうち、管状体の一部A1の形成に寄与する部分の経糸列C1(750本)〜C2(525本)をジャカード装置により開口し、シャットルB1を作動させて緯糸D1を挿入することで、管状体の一部A1を製造した。このとき、長さ30mmを製織する間に、製織幅が40mm(W1)から28mm(W2)に変化するように製織を行った。また、A1の製織と並行して、経糸列C1〜C2の両側にあって、A1の形成には寄与しない部分の経糸列をジャカード装置により同時に開口し、シャットルB2を作動させて緯糸D2を挿入することで、製織部F1を製造した。A1の両側に配される製織部F1は、緯糸D2により連結され、一体となっている。このとき、製織部F1の長さが5mmとなるように製織を行った。
【0035】
同様にして、経糸列C2(525本)〜C3(300本)に対し、シャットルB2を作動させることで管状体の一部A1に連続するA2を製造した。このとき、長さ30mmを製織する間に、製織幅が28mm(W2)から16mm(W3)に変化するように製織を行った。また、A2の形成には寄与しない部分の経糸列に対し、シャットルB1を作動させることで、製織部F2(長さ5mm)を製造した。
【0036】
本実施例における製織性は良好であり、得られたテーパー型管状体の品質も良好であった。
【0037】
[実施例3]
電子式ジャカード装置付きシャットル装置に3個のシャットルB1、B2、B3を備え付け、図4に示すテーパー型血管補綴材用袋織り管状体A(平織り組織)、および製織部F(平織り組織)を製造した。
【0038】
シャットルB1、B2、B3には、それぞれ管状体の一部A1、A2、A3を形成するための緯糸D1、D2、D3を担持させた。このとき、押さえバネとして、心材直径0.3mm、0.5mm、0.7mmの真鍮製コイルバネ(いずれも内径2mm、長さ15mm)を用いて、緯糸D1、D2、D3の張力をそれぞれ製織幅W1(40mm)〜W2(32mm)、W2(32mm)〜W3(24mm)、W3(24mm)〜W4(16mm)に適したレベルとなるよう調整した。
【0039】
織機にセットしてある経糸(1500本)のうち、管状体の一部A1の形成に寄与する部分の経糸列C1(750本)〜C2(600本)をジャカード装置により開口し、シャットルB1を作動させて緯糸D1を挿入することで、管状体の一部A1を製造した。このとき、長さ20mmを製織する間に、製織幅が40mm(W1)から32mm(W2)に変化するように製織を行った。また、A1の製織と並行して、経糸列C1〜C2の両側にあって、A1の形成には寄与しない部分の経糸列をジャカード装置により同時に開口し、シャットルB2、B3を交互に作動させて緯糸D2、D3を挿入することで、製織部F1を製造した。A1の両側に配される製織部F1は、緯糸D2、D2により連結され、一体となっている。このとき、製織部F1の長さが5mmとなるように製織を行った。
【0040】
同様にして、経糸列C2(600本)〜C3(450本)に対し、シャットルB2を作動させることで管状体の一部A1に連続するA2を製造した。このとき、長さ20mmを製織する間に、製織幅が32mm(W2)から24mm(W3)に変化するように製織を行った。また、A2の形成には寄与しない部分の経糸列に対し、シャットルB1、B3を交互に作動させることで、製織部F2(長さ5mm)を製造した。
【0041】
さらに、経糸列C3(450本)〜C4(300本)に対し、シャットルB3を作動させることで管状体の一部A2に連続するA3を製造した。このとき、長さ20mmを製織する間に、製織幅が24mm(W3)から16mm(W4)に変化するように製織を行った。また、A3の形成には寄与しない部分の経糸列に対し、シャットルB1、B2を交互に作動させることで、製織部F3(長さ5mm)を製造した。
【0042】
本実施例における製織性は良好であり、得られたテーパー型管状体の品質も良好であった。
【0043】
[比較例1]
電子式ドビー装置付きシャットル装置に2個のシャットルB1、B2を備え付け、図5に示す2分岐型血管補綴材用袋織り管状体A(平織り組織)を製造した。
【0044】
シャットルB1には主管部A1および支管部A2を形成するための緯糸D1を担持させ、シャットルB2には支管部A3を形成するための緯糸D2を担持させた。このとき、押さえバネとして、内径2mm、長さ15mm、心材直径0.75mmの真鍮製コイルバネ、内径2mm、長さ15mm、心材直径0.35mmのステンレス製コイルバネを用いて、緯糸D1、D2の張力をそれぞれ調整した。ここで、緯糸D1の張力は、実施例1の緯糸D1に設定した張力よりも強く、かつ実施例1の緯糸D2に設定した張力よりも弱くなるよう設定した。
【0045】
経糸列C1(450本)をドビー装置により開口し、シャットルB1を作動させて緯糸D1を挿入することで、主管部A1を製造した。このとき、主管部A1の製織幅が24mm、長さが200mmとなるように製織を行った。
【0046】
次いで、経糸列C2、C3(各225本)をドビー装置によりそれぞれ開口し、シャットルB1、B2をそれぞれ作動させて緯糸D1、D2を挿入することで、主管部A1に連続する支管部A2、A3を製造した。このとき、支管部A2、A3の製織幅が12mm、長さが200mmとなるように製織を行った。
【0047】
本比較例では、主管部A1の製織において、耳領域で経糸切れが発生するなど製織性が不良であり、連続的に製織することが困難であった。また、得られた管状体も、主管部A1の耳領域に経筋が、支管部A2の耳領域に隙間が発生するなど、品質の劣ったものであった。
【0048】
[比較例2]
電子式ジャカード装置付きシャットル装置に2個のシャットルB1、B2を備え付け、図6に示すテーパー型血管補綴材用袋織り管状体A(平織り組織)、および製織部F(平織り組織)を製造した。
【0049】
シャットルB1には管状体Aを形成するための緯糸D1を担持させ、シャットルB2には製織部Fを形成するための緯糸D2を担持させた。このとき、押さえバネとして、心材直径0.5mm、0.25mmの真鍮製コイルバネ(いずれも内径2mm、長さ15mm)を用いて、緯糸D1、D2の張力をそれぞれ調整した。
【0050】
織機にセットしてある経糸(1500本)のうち、管状体Aの形成に寄与する部分の経糸列C1(750本)〜C2(300本)をジャカード装置により開口し、シャットルB1を作動させて緯糸D1を挿入することで、管状体Aを製造した。このとき、長さ60mmを製織する間に、製織幅が40mm(W1)から16mm(W2)に変化するように製織を行った。また、管状体Aの製織と並行して、経糸列C1〜C2の両側にあって、管状体Aの形成には寄与しない部分の経糸列をジャカード装置により同時に開口し、シャットルB2を作動させて緯糸D2を挿入することで、製織部F(F1、F2、F3)を一定間隔毎に断続的に製造した。管状体Aの両側に配される製織部F(F1、F2、F3)は、緯糸D2により連結され、それぞれが一体となっている。このとき、製織部F(F1、F2、F3)の長さが5mm、間隔が15mmとなるように製織を行った。
【0051】
本比較例では、管状体太端部の製織において、耳領域で経糸切れが発生するなど製織性が不良であり、連続的に製織することが困難であった。また、得られた管状体も、管状体太端部の耳領域に経筋が、管状体細端部の耳領域に隙間が発生するなど、品質の劣ったものであった。
【0052】
上記実施例1〜3、および比較例1、2で得られた異形血管補綴材用袋織り管状体(製織後、洗浄、乾燥したもの)について、透水率を測定した。透水率は液密性と密接に関係しており、この値が小さいほど、管状体からの血液の漏出が少ないことを意味する。
【0053】
測定方法は、「人工血管ガイドライン」に従った。すなわち、0.5cm2の試料面に、120mmHg(16.0kPa)の水を供給し、透過する水量を1分間測定した。透過水量を1.0cm2当たりに換算し、透水率とした。実施例1および比較例1の2分岐型管状体については、主管部および支管部のそれぞれについて、長さ方向中央、幅方向に中央、端(耳領域)の位置で測定した。また、実施例2、3、比較例2のテーパー型管状体については、織り始めより長さ方向に5mm間隔毎に(このときの製織幅変化は2mm)、幅方向に中央、端(耳領域)の位置で測定した。測定は2回行い、その平均値を求めた。結果を、表1および表2に示す。
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【0056】
【発明の効果】
本発明によれば、シャットル織機による異形血管補綴材用袋織り管状体の製造において従来問題であった、緯糸張力が不適正なことによる経糸切れなどのトラブルを防止することができ、連続的に安定した製織を行うことが可能となる。本発明によって製造された異形血管補綴材用袋織り管状体は、経筋や隙間などの欠点が無く、品質の優れたものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】血管補綴材の形状を模式的に示す斜視図である。( I )ストレート型 ( II )2分岐型 ( III )テーパー型
【図2】実施例1により2分岐型管状体を製造する場合の工程を模式的に示す平面図である。
【図3】実施例2によりテーパー型管状体を製造する場合の工程を模式的に示す平面図である。
【図4】実施例3によりテーパー型管状体を製造する場合の工程を模式的に示す平面図である。
【図5】比較例1により2分岐型管状体を製造する場合の工程を模式的に示す平面図である。
【図6】比較例2によりテーパー型管状体を製造する場合の工程を模式的に示す平面図である。
【符号の説明】
A(A1,A2,A3) 異形袋織り管状体
B(B1,B2,B3) シャットル
C(C1,C2,C3,C4) 経糸列
D(D1,D2,D3) 緯糸
E 筬
F(F1,F2,F3) 製織部
W(W1,W2,W3,W4) 異形袋織り管状体の製織幅
Claims (6)
- シャットル織機を使用して異形血管補綴材用袋織り管状体を製造する方法であって、製織幅に応じて張力の異なる緯糸を使い分けて製織することを特徴とする、異形血管補綴材用袋織り管状体の製造方法。
- 製織幅が大きくなると共に、緯糸張力を小さくすることを特徴とする、請求項1に記載の異形血管補綴材用袋織り管状体の製造方法。
- 1つの緯糸張力設定で対応させる製織幅変化が10mm以内であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の異形血管補綴材用袋織り管状体の製造方法。
- 前記シャットル織機がジャカード装置付きシャットル織機であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の異形血管補綴材用袋織り管状体の製造方法。
- 経糸にモノフィラメントを使用することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項記載の異形血管補綴材用袋織り管状体の製造方法。
- 経糸に単糸繊度が5.5〜50dtexのマルチフィラメントを使用することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項記載の異形血管補綴材用袋織り管状体の製造方法。
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