JP2011235175A - 生物学的に活性なインプラント - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 本発明によると、インプラントには、厚さ100μmまでの、ポリラクチドのような生物分解性ポリマーからなるエナメル質様コーティングが施される。このコーティングは骨誘導効果を有し、骨折の治癒を促進する。増殖因子などの追加の骨誘導物質をコーティング中に組み入れることも可能である。本発明はまた、有機溶媒中の生物分解性ポリマーの分散液を調製すること、コーティングすべき表面に該分散液を塗布すること、該溶媒を蒸発させること、を含んでなる、上記インプラントの作製方法に関する。
【選択図】なし
Description
− 有機溶媒中の生物分解性ポリマーの分散液を調製すること、
− コーティングすべき表面に該分散液を塗布すること、
− 該溶媒を蒸発させること、
を含んでなる。
下記は本発明を図面を参照しながら実施例によって説明するものである。
400mgのPDLLA(ポリ(D,L)ラクチド, Resomer R203, Boehringer-Ingelheim製)を室温で6mLのクロロホルム中に分散する。コーティングに他の骨誘導性もしくは殺生物性の物質を含有させる場合には、それらもこの分散液に添加し、そのような場合にはPDLLAと添加物との合計重量を400mgとする。
その分散液をコロイド溶液が形成されるまで6時間放置させ、次いで0.45μmの孔サイズの無菌ミクロフィルターを通過させて滅菌済容器中に入れる。
次いで、チタンおよび鋼製のキルシュナー(Kirschner)ワイヤ(直径1.6mm, 長さ3.5cm)、ならびにチタン製の骨用釘(bone nail)を濾過済の溶液中に浸漬し、その後溶媒をクロロホルムの雰囲気中で10分間蒸発させる。このプロセス(コーティングと蒸発)を再度繰り返す。
得られたインプラントは、約10〜20μmの厚さの薄いバーニッシュ様のポリマー層でコーティングされている。
それぞれ6週間および12週間のインキュベーション時間の後、本発明によるPDLLA層をコーティングしたチタン製キルシュナーワイヤの微生物学的試験を行ったところ、微生物の増殖は認められなかった。
さらに、本発明によるPDLLAをコーティングした10個のインプラントおよびコーティングしていない10個のインプラントをブドウ球菌(KD 105)で汚染させた。コーティングしたインプラントではこの微生物の付着率は著しく低かった。
チタン製および鋼製のキルシュナーワイヤ各20個の重量を測定し、次いで実施例1と同様に、カラーマーカーとして1%のメチルバイオレットを含有するPDLLAでコーティングした。
そのワイヤをラットの脛骨に移植した。体外移植後、コーティングの機械的摩滅を重量測定および光度測定分析によって測定した。摩滅率の最大値はチタン製では2.9%、鋼製では4.6%であった。ラスター(Raster)電子顕微鏡写真から、調べたインプラントのうちで金属表面にまでコーティングが摩滅していたものはないことが示された。
この実施例は、コーティングの機械的強度についてコロイド溶液の利点を示そうとするものである。
酢酸エチル各6mLの2バッチにそれぞれ800mgのPDLLA R203を添加した。その結果得られた分散液を室温でそれぞれ6時間および24時間放置し、次いで実施例1に記載の方法で濾過した。このようにして得られた分散液もしくは溶液を、実施例1の手順で、いわゆるステントをコーティングするために用いた。ここで、ステントは本発明がその範囲に含めようとしているタイプのインプラントではないことを述べておくべきである。これらのステントを用いたのは、それらが伸長試験を行ってバーニッシュ様コーティングの機械的強度を分析するために良く適しているからである。
コーティングの量はコーティングを施す前と後のステントの重量を測定して求めた。
当業者であれば熟知している方法によって、PTCAバルーンを用いてそのステントを8bar(116psi)の圧力で伸長させた。剥がれ落ちた、またはその他の形で失われたコーティング材料の量を測定するために、伸長されたステントの重量を再度測定した。
濾過前に6時間放置させた分散液をコーティングしたステントはそのコーティングが平均0.8%失われたのに対し、他方のステント(24時間放置)では重量で6.0%が失われた。このことは、コーティングの機械的強度については溶媒中で完全な化学的ポリマー溶液が作られない方が良く、むしろ、コロイド粒子径が0.45μm以下のコロイド溶液がよいことを示している。
コーティング中に含ませた増殖因子(WF)の安定性を調べるために、チタン製キルシュナーワイヤを増殖因子であるIGF-I(5重量%)およびTGF-β1(1重量%)を含有するPDLLAで実施例1のとおりコーティングした。増殖因子の安定性(貯蔵寿命)を6週間後、6か月後、および1年後に分析した。6週間後では効力の喪失は3%未満であった。6か月後には、コーティング中に含まれる増殖因子は依然として95.5%より良い効力を示し、1年後には93%より良い値であった。このことは、本発明によって提供されたコーティング中に取り込まれた活性物質は、たとえそのコーティングされたインプラントが使用前に長期間保存されていても、その生物学的安定性および有効性を保持することを立証するものである。
実施例1の方法によりPDLLAでコーティングされたチタン製キルシュナーワイヤをin vitro 溶出試験(elutriation test)にかけた。in vivoの状況をシミュレートするために、溶出は空気の層流条件下で37℃(98.6°F)で生理食塩液(0.9% NaCl溶液)を通過させて行なった。
9週間以内に約10%のPDLLAコーティングが漸増的に分解した。
PDLLAコーティングのin vivoでの生物分解特性を調べるために、定められたコーティング量のPDLLAでコーティングされたキルシュナーワイヤ10個をSprague Dawleyラットに埋め込んだ。6週間後、そのインプラントを取り出し、PDLLAコーティングのin vivoでの分解を、移植前と移植後の、重量ならびに固有粘度、および完全に分離したコーティングの分子量の差異を測定することによって求め、in vitroのデータと比較した。
結果を図1に示す。9週間以内に、PDLLAコーティングの約10%が生物分解されていた。匹敵するin vivo測定では、その時点でin vitroとin vivoの結果がほぼ同一であった。
実施例1に記載の方法で、チタン製キルシュナーワイヤにPDLLAをコーティングし、それにはさらに5重量%のIGF-Iまたは1重量%のTGF-β1または5重量%のIGF-Iと1重量%のTGF-β1の組合せのいずれかを含有させた。
コーティング中に取り込ませた増殖因子の放出パターンをin vitro溶出試験によって分析した。結果を図2に示す。48時間以内にコーティングからの増殖因子の最初の放出が48〜54%の比率で起こった。その後は、放出は漸増的に6週間に至るまで続き、取り込ませた増殖因子の合計71〜78%が放出された。
PDLLAおよび上述の増殖因子でコーティングされたチタン製キルシュナーワイヤ10個を、用いたSprague Dawleyラットの各々の脛骨に移植した。42日後、インプラントを取り出し、取り込ませた増殖因子の残存濃度をELISAを用いて測定した。図2に示すとおり、in vivoでの結果はin vitro溶出試験の結果と一致していた。
動物実験としては60匹(5月齢の雌のSprague Dawleyラット)の動物で試験を行った。
供試動物は全て右脛骨を標準化された方法で骨折させた。異なるコーティングを施したチタン製ワイヤ(直径1.0mm)を元の位置にもどした脛骨中に髄内の支持体として移植した。
手術後、42日目まで連日、群分けの指定(下記参照)に従って、ラット特異的組換え成長ホルモン(r-rGH)2mg/kgまたはプラシーボをそれぞれ皮下に注射した。0日目、4日目、7日目、14日目、21日目、28日目、35日目、および42日目に、吸入麻酔剤投与後、2平面でX線写真を撮影し、眼球後法(retrobulbar method)(−80℃(−112°F)で急速凍結)によって各動物から1.25ml採血し、各動物の体重と体温を測定した。42日目に骨折した脛骨と骨折していない脛骨を骨膜と共に別々に調製して生体力学的試験(ねじり荷重−ねじり剛性)にかけた。
第I群 右脛骨骨折−コーティングなしのインプラント−プラシーボの全身適用(対照群)
第II群 右脛骨骨折−ポリ-D,L-ラクチド(登録商標) 203でコーティングしたインプラント−プラシーボの全身適用
第III群 右脛骨骨折−ポリ-D,L-ラクチドでコーティングしたインプラント−(r-rGH)の全身適用
第IV群 右脛骨骨折−ポリ-D,L-ラクチドならびに増殖因子IGF-I(5%)およびTGF-β(1%)でコーティングしたインプラント−プラシーボの全身適用第V群 右脛骨骨折−ポリ-D,L-ラクチドならびに増殖因子IGF-I(5%)およびTGF-β(1%)でコーティングしたインプラント−(r-rGH)の全身適用コーティングされたインプラントは実施例1に示す方法で作製した。
骨折
用いた骨折モデルでは、軟組織に大きなダメージを与えることなく右脛骨を標準的に横骨折させることができた。60匹中2匹において、脛骨骨折は複雑骨折であった;1匹ではらせん型で、試験途上での中止を必要とした。1匹の動物が手術後観察での麻酔下で死亡した(32日目)。
体重と体温
(r-rGH)での全身治療を受けた動物(第III群および第V群)では、試験期間中にプラシーボを受けた動物(第I、II、およびIV群)と比べて体温の上昇は認められなかったが、体重は13%までの有意の増加を示した(p<0.05)。第I、II、およびIV群(プラシーボ)の群間、または第IIIおよびV群(GH)の群間では大きな相異は認められなかった。
得られたデータは絶対値で(ねじり荷重)、および百分率で(ねじり剛性)、骨折させなかった反対側との比較で示した。
ねじり剛性については、反対側の脛骨と比べたとき、同様な所見が得られた。この場合にも、増殖因子の局所適用を行った群では最も好ましい結果が得られた。
5月齢の雌のSprague Dawleyラット(n=144)の右脛骨を、骨折作成機を用いて標準的に閉鎖骨折させ、チタン製キルシュナーワイヤのコーティングしていないものとコーティングしたものを髄内安定器具として脛骨に移植した。下記の各群について比較した:
第I群: コーティングしていないインプラント(対照群)
第II群: PDLLA(登録商標)203でコーティングしたインプラント
第III群: PDLLA+r-IGF-I(5%)でコーティングしたインプラント
第IV群: PDLLA+r-IGF-I(5%)+TGF-β1(1%)でコーティングしたインプラント
コーティングされたインプラントは実施例1の方法で作製した。
経時的にX線写真を2平面(a.-p.および側面)でとった。0日目、4日目、7日目、14日目、21日目、28日目に、血清を測定し、r-IGF-Iおよびr-TGF-β1の全身濃度ならびに体重および体温も測定した。4週間後、インプラントを取り出し、骨折させた脛骨を非処置の反対側の脛骨と比較して生体力学的に試験した。仮骨の組織形態測定的検討を行ない(O.Safranin/v.Kossa)、分析用イメージングシステム(Zeiss KS 400)で定量した。
ポリラクチドで処置した群は非処置の第I群に比べ有意に高い最大ねじり荷重および最大ねじり剛性を示した(図4)。
処置群と非処置群の間には、血清パラメーター、体重、または体温に関して明らかな変化は認められなかった。
12月齢のユカタンコビトブタ(Yucatan dwarf pig)(n=30)に、標準的な骨切除術(1mmギャップ)を右脛骨に施し、次いでコーティングした、およびコーティングしていないチタン製脛骨髄内釘でそれぞれ髄内安定化させ、静止状態でロックした。下記の群の比較を行った:
第I群: コーティングしていないインプラント(対照群)
第II群: PDLLA(登録商標)203でコーティングしたインプラント
第III群: PDLLA+r-IGF-I(5%)+TGF-β1(1%)でコーティングしたインプラント
コーティングされたインプラントは実施例1の方法で作製した。
4週間後、対照群動物は全て骨切除術ギャップの癒合が完全ではないことを示した。ポリラクチドで処置した群では良好な仮骨形成が認められた。第III群では十分に進行した仮骨形成を示した(図7)。
ポリラクチドで処置した第II群、およびさらに増殖因子で処置した第III群では仮骨量と仮骨直径は対照群よりも有意に大きい値であった。
反対側の脛骨と比べ、また対照群と比べてポリラクチドで処置した群ではかなり高い最大ねじり荷重および最大ねじり剛性を示した。
ポリラクチドコーティング中に増殖因子を含ませることによって、最大ねじり荷重および最大ねじり剛性の顕著な増加がもたらされた。
電気摘出機(power extractor)を用いたチタン製ワイヤの脛骨からの標準的な摘出では、IGF-IおよびTGF-βでコーティングしたワイヤの摘出には対照群のワイヤーの摘出よりも有意に大きな摘出力が必要であった。
実施例8および10から、本発明に従ってコーティングしたインプラントの使用によって、骨接合を有意に加速し、それゆえに骨折の治癒過程を有意に加速することができることは明かである。この加速した過程は、他の骨誘導剤の添加が無くともポリマーでコーティングしたインプラントで実証されている。増殖因子をコーティング中に取り込ませると骨折治癒過程はさらに加速され、IGF-IおよびTGF-βを組み合わせて適用すると特に効果的である。
これらの実施例は本発明の方法を用いてバーニッシュ様コーティングを作ることができ、その物理的構造および機械的強度により、従来技術から明確に区別しうるものである。
Claims (1)
- 整形外科用インプラントであって、以下:
(i)表面、
(ii)本体、及び
(iii)バーニッシュ様の耐摩耗性コーティングであって、
100 kDa以下の平均分子量を有し、ガラス転移温度が37℃より高い
生物分解性ポリマーを備え、
厚さが100μm以下であり、
インプラントが移植されるときに機械的摩擦がコーティングを摩耗又は損傷しないように本体の表面への接着を形成し、且つ
移植されるときに骨と接触するように適合している、前記コーティング、
を備える、前記整形外科用インプラント。
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