JP2011232052A - 生体分子検出用デバイス - Google Patents

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Abstract

【課題】形状からプローブの識別が可能な生体分子検出用デバイスを提供する。
【解決手段】形状によって互いに識別可能に加工された複数の担体にそれぞれプローブを固定化してなるプローブ固定化担体を含むターゲット分子検出用デバイスを提供する。このようなデバイスを用いて以下の工程:(a)前記のデバイスにターゲット分子を接触させる工程、(b)プローブ固定化担体を形状によって識別する工程、及び(c)前記識別されたプローブ固定化担体に結合したターゲット分子に由来するシグナルを検出する工程を行う。
【選択図】図6

Description

本発明は、検出対象となる生体分子(ターゲット分子)とそれを特異的に検出するための生体分子(プローブ)を効率的に接触及び反応させることができる生体分子検出用デバイス、並びにその製造方法に関する。
核酸アレイは、担体上に多数の核酸プローブを高密度に、互いに混ざり合うことのないようにそれぞれ独立に搭載したものである。核酸アレイ上に搭載される核酸プローブは、その塩基配列と相補である配列によって構成される核酸分子をハイブリダイゼーションによってキャプチャーするためのセンサとして働く。
従来、核酸アレイとしては、表面加工を施したガラスやシリコンなどの担体上に、核酸プローブを搭載したものが利用されているが、近年ではゲル担体など、他の手法による担体の改質も行われている。
核酸アレイの製造方法として、核酸プローブを基板上で直接合成する方法、及びあらかじめ調製した核酸プローブをスライドガラスやシリコンなどの基板に固定する方法が知られている。
例えば、基板上で核酸プローブを直接合成する光リソグラフィー法によれば、光照射で選択的に除去される保護基をもつ物質を使用し、フォトリソグラフィー技術と固相合成技術を組み合わせて、微小なマトリックスの所定の領域(反応部位)に選択的にDNAを合成することによって核酸アレイを作製することができる(非特許文献1)。
また、あらかじめ調製した核酸プローブを搭載する方法として、主にスポッティング法が挙げられる(非特許文献2)。この方法は、あらかじめPCRや人工的な合成によって作製した核酸プローブを含む溶液を、スポッターまたはアレイヤーという特別の装置を用いて数nlから数plの微小体積でチップ表面に並べ、基板上の特定領域に搭載する技術である。
上記方法の他に、中空繊維配列体を用いたマイクロアレイの製造方法が開発されている。この方法では、貫通孔基盤を合成高分子から成る複数本の中空繊維を繊維軸方向に規則正しく配列させた中空繊維配列体を用いて製造する。この製法の一つの特徴は、中空繊維配列体の各中空繊維中空部に核酸プローブを固定化しておき、この中空繊維配列体を繊維軸方向と垂直な方法で薄片化することで、同一ロッドから同じ仕様のマイクロアレイ製品を大量に製造することができる点である(特許文献1)。
核酸アレイを利用した核酸検出方法は、核酸アレイに搭載されている核酸プローブに対して、検査対象となる核酸試料をハイブリダイズさせ、配列特異的に形成したハイブリットを蛍光物質等により検出するというものである。この方法では、複数の核酸プローブについて、その塩基配列と相補である塩基配列を含む核酸分子を、定量的又は定性的に調べることができ、複数の遺伝子に関する発現量又は特定の核酸塩基配列の配列自体等を解析するために利用される。
しかしながら、アレイの作製にはスポッター等の特殊な装置が必要となるため、その作業は細かくかつ煩雑である。また、一旦アレイが作製されると、搭載プローブの変更はできないため、検出対象とは関係のない不要なプローブが搭載され経済的に好ましくない場合が生じる。さらに、アレイ化にあたっては、アレイのサイズに応じてプローブの数が限定される。
ビーズ等にプローブを固定化してなる、アレイ化されていないデバイスが知られているが、これであっても、検体のハイブリダイゼーション前にビーズを不動化し、各ビーズに搭載されているプローブを明らかにする処理が必要になる(特許文献2)。さらに、搭載プローブの確認に、検出対象とは異なる種類の蛍光を使用して、検出と同時に行う場合があるが、複数種類の蛍光を使用する必要があるので、検出装置が大型化する(特許文献3)。
他方、ハイブリダイゼーションチャンバーと微小球を利用した複合アレイ、繊維を用いた光学センサ等が知られている(特許文献4〜11)。
特開2000−245460号公報 特表2004−502138号公報 特表2002−501184号公報 国際公開第98/40726号パンフレット 国際公開第99/18434号パンフレット 国際公開第00/16101号パンフレット 国際公開第99/67641号パンフレット 国際公開第99/045357号パンフレット 米国特許第6023540号明細書 米国特許第6544732号明細書 米国特許第6327410号明細書
Science 251,767-773(1991) Science 270, 467-470(1995)
本発明は、簡便かつ正確にターゲット分子を検出することを可能とする検出デバイス、及びその検出方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、プローブを固定化した担体に所定の形状を付与し、その形状を識別することにより、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)形状によって互いに識別可能に加工された複数の担体にそれぞれプローブを固定化してなるプローブ固定化担体を含むターゲット分子検出用デバイス。
(2)以下の工程を含むターゲット分子の検出方法:
(a)前記(1)に記載のデバイスにターゲット分子を接触させる工程、
(b)プローブ固定化担体を形状によって識別する工程、
(c)前記識別されたプローブ固定化担体に結合したターゲット分子に由来するシグナルを検出する工程。
(3)さらに本発明は、以下の(3−1)の工程又は(3−2)の工程を含む、形状によって互いに識別可能なターゲット分子検出用デバイスの製造方法を提供する。
(3−1)
(a) 複数の中空繊維を、各繊維軸が同一方向となるように配列させて中空繊維束とし、これを樹脂で固定して繊維配列体を得る工程、
(b) 前記中空繊維の中空部に、プローブを含有するゲル前駆体重合性溶液を充填し、該溶液をゲル化する工程、
(c) 前記ゲルを保持した中空繊維配列体を中空繊維の長手方向に直交する方向で切断して薄片を製造する工程、及び
(d) 得られる薄片を、一本の中空繊維の切断面が含まれるように切断するとともに当該切断片の前記樹脂部分を形状加工する工程。
(3−2)
(a) 複数の中空繊維のそれぞれに、各繊維軸方向に所定の形状加工を施す工程、
(b) 前記中空繊維の中空部に、プローブを含有するゲル前駆体重合性溶液を充填し、該溶液をゲル化する工程、及び
(c) 前記ゲルを保持した中空繊維を中空繊維の長手方向に直交する方向で切断する工程。
本発明の上記検出方法において、工程b及び工程cは同時に行われることが好ましい。また、本発明においては、プローブ固定化担体を不動化せずに行うことができる。
本発明により、形状によって識別が可能な担体にプローブが固定化されているプローブ固定化担体を複数含むターゲット分子検出用デバイスが提供される。本発明のデバイスは、 担体を形状で識別することができるため、以下の利点を有する。
(i) アレイ化する必要が無いので、製造が容易である。
(ii) 各プローブがばらばらに存在するため、必要なプローブのみを選択してハイブリダイゼーションに使用することができる。すなわち、解析に不要なプローブは用意する必要が無く経済的である。
(iii)プローブの数が限定されない。
(iv)搭載されているプローブを形状で検出時に判断できるため、検出に際して不動化する必要が無く、デコード処理が不要である。
(v)プローブ種類が容易に視認できるため、検出装置が大掛かりにならない。
本発明の担体を検出面と垂直な方向から観察し、様々なバリエーションについて説明した説明図である。 所定形状を有する本発明の担体について概略的に説明する説明図である。 所定形状を有する本発明の担体について概略的に説明する説明図である。 本発明の担体を検出面と垂直な平面で切断した断面図である。 様々な切り込みをいれてユニークな形状に成形された担体について説明した斜視図である。 1枚のアレイから複数の本発明の担体を切り出す製造法について概略的に説明した概略図である。 アレイの製造方法について簡略に説明した説明図である。 本発明のデバイスの別の製造法について説明した説明図である。 所定形状を有する本発明のデバイスについて示した斜視図である。 本発明のデバイスを用いた蛍光検出の結果を示す説明図である。 比較試験の検出結果について示す説明図である。
2、4、6、8、10、12、20、30〜32、40〜42:担体
22:開口、
35〜37:切り込み
45〜47:ゲル
50:読み取り装置
59:ホルダ
60:薄片
62:切断線
65:切断片
70:多孔板
72:孔
74:中空繊維
76:板状物
80:中空繊維束
以下、本発明を詳細に説明する。
1.概要
本発明は、プローブが固定された担体(以下、「プローブ固定化担体」ともいう)を含むターゲット分子検出用デバイスであって、当該担体の形状が識別可能に加工されたものである。本発明者らは、プローブが固定されたマイクロアレイの一部のスポットを切断した後、当該切断片の一部を加工して形状により見分けることができるようにした。その結果、形状によりどのプローブが固定されているかを識別することができるとともに、プローブスポットは十分に検出可能なシグナルを得ることができた。本発明は、これらの知見に基づき完成されたものである。
従って、本発明のデバイスは、それぞれのプローブが固定された担体がそれぞれ独立した存在となっており、平面基板に固定された形態とはなっていない(不動化されていない)点が特徴的である。
本発明において、担体とは、プローブを担持させるための支持体を意味し、形状によって担体同士が識別可能に加工されている。プローブは、担体に固定化することで、個々の生体分子を他の生体分子と混じりあわない状態で独立に存在させることが可能である。
一般にマイクロアレイにおいて、どの位置にどの種類のプローブが固定されているかは、プローブが固定されているアレイ上の位置座標とその座標におけるプローブの種類により知ることができる。本発明は、どの担体にどの種類のプローブが固定されているかを知るための指標として、担体の形状を用いることとしたものである。
2.形状によって互いに識別可能に加工された複数の担体
プローブ固定化担体は、形状によって互いに識別可能である限り、どのような形状であってもよい。
本発明においては、一般的にマイクロアレイに使用される平面基板にプローブを固定化し、その後基板の各区画を所定形状に加工することができる。
平面基板は、その表面が実質的に平面からなる板である。基板としては、例えば、スライドガラス、シリコン基板、樹脂基板、ゲルからなる基板などが挙げられる。
図1(a)〜(d)に示すように、方形の担体の四方のいずれかの角を切断すると、いくつかの種類の形状に区別することができる。例えば、四方すべてを切断した担体2(図1(a))、1つの角のみを切断した担体4(図1(b))、2箇所の角のみを切断した担体6(図1(c))、及び角を切断していない担体8(図1(d))を想定してみる。
そうすると、4種類の担体により4種類のプローブを固定することができる。担体の形状のパターンを多様化させて多くの組み合わせの形状ができるようにすれば、その組合せ数に対応した多数のプローブを固定することができる。例えば1000種類の形状の担体が存在すれば、最大で1000種類のプローブを固定したマイクロアレイと同様に、最大で1000種類のプローブを形状に応じて固定することができる。しかも、担体同士は物理的に切り離されているため、必要な担体のみを自由に組み合わせて使用することができる。その結果、通常のマイクロアレイのように、必要でないプローブが固定されることによる無駄を省くことができる。
形状の組み合わせは任意であり、本発明において特に限定されるものではない。例えば、図2は方形状の担体の対角する一対の角を切り落とすように形状加工した担体の正面図である。
図3は方形状の角を切り落とすのではなく、方形状の一辺を山形に削り取るように形状加工を施した担体の正面図である。
図1(b)に例示した担体を用いて本発明のデバイスについてさらに詳細に説明する。
図4に示すように、担体20には開口22が穿設され、これにより担体20は枠状の形状を有する。この担体20の開口22内には、核酸、タンパク質、又は糖鎖といった生体高分子と結合可能なプローブを含有したゲルが配置される。
担体20はユニークな形状に形成されており、これにより別の形状を有する担体を識別することができる。開口22内に配置されるプローブの種類も担体20の形状の異同に対応しており、形状の同じ担体20同士では同じプローブであり、形状の異なる担体20同士では異なるプローブが開口22内に配置されている。
このように、ユニークな形状を有する担体20と、この担体20に設けられたユニークなプローブとでプローブ担体4を構成したことで、ユニークな形状に形成された担体20の形状を基にして複数の担体上に固定されたプローブをそれぞれ識別することができ、ユーザはこの担体の形状を基にして担体を選択することができるなど、利便性の高いプローブ担体を提供することができる。
上記では主に目視で直接的に識別することを前提として数十種類のプローブを識別可能となるような態様を示したが、本発明においては、さらに多くの種類のプローブを識別することができるように構成することもできる。
例えば、少なくとも数百種類以上のプローブを検出できるように担体の縁部にユニークな切り込みを入れてユニークな形状を有する担体を形成することもできる。図5に示すように、外形が方形状に形成された担体30〜32の縁部に、それぞれユニークな切り込み35〜37を入れることにより、それぞれの担体30〜32を識別することが可能となる。切り込み35〜37の認識にはフォトセンサ、ラインセンサ、又はイメージセンサなどを備えた読取装置50を使用することで、細かな切り込みでも確実に読み取ることができる。それぞれの担体30〜32には異なるプローブを含有したゲル45〜47が配設され、これにより、担体30〜32の形状を基にしてプローブを識別することが可能となる。
切り込み35〜37は、その本数、幅、切り込み間隔、切り込み深さを変えることにより、担体30〜32の形状をユニークなものとすることができる。切り込みにおける溝の幅や配置を変えることにより、例えば切り込みをバーコード状に示すことが可能となり、より多くの識別が可能となる。読取装置50に搭載されたフォトセンサ、ラインセンサ、又はイメージセンサはそれぞれの切り込み35〜37の形状に応じて受光信号を出力し、読取装置50に搭載された識別回路がこの受光信号に基づいて担体40〜42の異同を識別する。切り込み位置は担体30〜32の縁部であればどこでもよく、このためユニークな形状を有する担体を大量に容易に形成することが可能となり、数百種類以上の大量のプローブを識別するときに利用することができる。また、このような読取装置を介してプローブ担体を識別できるようにすることにより、担体の形状加工のバラエティを飛躍的に増やすことができる。
異なるプローブを保持した担体を一括して取り扱えるようにホルダ59を用いることもできる。このようなホルダ59に複数の担体を載せ、ホルダ59上側から読取装置50を用いて担体を識別してもよい。このような態様により、担体に目視では識別が困難な形状加工を施した場合であっても、読取装置50の読取結果を受けてユーザは担体を使うか否かを選択することが可能となる。
本発明においてプローブ固定化担体とは、生体分子が固定された担体である。当該プローブ固定化担体は、ターゲット分子検出用デバイスとして使用される。このようなデバイスの例としては、DNAアレイやプロテインアレイ、抗体アレイ、レクチンアレイなどの区画を所定形状に形状加工し、それぞれの区画が形状により互いに識別されるものが挙げられる。本発明のデバイスは、区画全体が基板に固定化されていないため、プローブ固定化担体は不動化されず自由に移動することができる。このようなデバイスは、反応に用いる検体の量を極小化し、検出を高速に行うことができる。しかも、担体を高密度に並べる必要がない。
本発明において、担体として用いられる材料は、一般的マイクロアレイに使用される樹脂、ゲル、ガラス、シリコン等である。また、ゲルは、親水性ゲルであり、所望の生体分子を固定化できるものであればどのような親水性ゲルであっても良い。
本発明に用いることができる親水性ゲルとしては、例えばアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−アクリロイルアミノエトキシエタノール、N−アクリロイルアミノプロパノール、N−メチロールアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、ヒドロキシエチルメタクリレート、(メタ)アクリル酸、アリルデキストリン等の単量体の一種類又は二種類以上と、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の多官能性単量体とを共重合したゲルが挙げられる。その他本発明に用いることのできるゲルとしては、例えばアガロース、アルギン酸、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール等のゲル、又はこれらを架橋したゲルが挙げられる。
本発明において、プローブの固定とは、プローブを担体から遊離させないための処理である。本発明では、プローブをそのままゲルに固定化してもよく、また、プローブに化学的修飾を施した誘導体、必要に応じて変性させたプローブを固定化してもよい。プローブの担体への固定化には、プローブを担体に物理的に包括する方法を利用してもよく、担体の構成成分への直接的な結合を利用してもよい。また、プローブを一旦高分子体や無機粒子などに共有結合又は非共有結合により結合させ、それらを担体に包括固定化してもよい。例えば、プローブとして核酸を利用し、担体としてゲルを使用する場合には、核酸の末端基にビニル基を導入し(WO98/39351)、アクリルアミド等のゲルの構成成分と共重合させることができる。
共重合においては、単量体、多官能性単量体及び重合開始剤と共に共重合する方法、単量体及び重合開始剤と共に共重合したのち、架橋剤でゲル化する方法などがある。また、アガロースを臭化シアン法でイミドカルボネート化しておき、末端アミノ化した核酸のアミノ基と結合させてからゲル化することもできる。この際、ゲルは、核酸を固定化したアガロースと他のゲル(例えばアクリルアミドゲル等)との混合ゲルにしてもよい。
3.生体分子
本発明において、生体分子は、プローブ又はターゲット分子として本発明に用いることができるものであれば限定されるものではなく、例えば、核酸(DNA、RNA等)、タンパク質、ペプチド、抗体、糖鎖及びレクチン等が挙げられる。
本発明において、プローブとは、検体中に含まれるターゲット分子を特異的に捕捉するための生体分子であり、個々のターゲット分子に応じた構造を持った分子を指す。プローブは、所定のターゲット分子を特異的に認識できる生体分子であれば、どのような種類の分子種であっても良く、天然物であっても人工的に合成されたものであってもよい。このような生体分子プローブとしては、例えば、核酸プローブ、タンパク質プローブ、ペプチドプローブ、抗体プローブ、糖鎖プローブ、レクチンプローブ等が挙げられる。また、ターゲット分子とは、解析の対象となる任意の生体分子を指す。
本発明において、ある種のDNAやRNAなどの核酸がターゲット分子である場合、ターゲット分子の塩基配列に相補的な配列を有し、これらの塩基配列を特異的に認識して捕捉することができる核酸をプローブとして使用することができる。また、タンパク質やペプチドなどがターゲット分子である場合、それらを抗原として特異的に認識するような抗体をプローブとして使用することができる。また逆に、抗体をターゲット分子とし、それらの抗原となるようなタンパク質やペプチドなどをプローブとして使用することもできる。さらに、糖鎖をターゲット分子とする場合は、レクチンなどをプローブとして使用することができる。すなわち、ある特定の分子(A)がある特定の分子(B)に特異的に結合する性質がある場合、Aがターゲット分子として検出対象となるのであれば、Bがプローブとなり、逆にBがターゲット分子となるのであれば、Aがプローブとなる。
4.ターゲット分子検出用デバイスの製造方法
本発明のターゲット分子検出用デバイスは、形状によって互いに識別可能なターゲット分子検出用デバイスである。本発明は、このようなデバイスの製造方法を提供するものであり(「方法1」という)、以下の工程が含まれる。
<方法1>
(a) 複数の中空繊維を、各繊維軸が同一方向となるように配列させて中空繊維束とし、これを樹脂で固定して繊維配列体を得る工程、
(b) 前記中空繊維の中空部に、プローブを含有するゲル前駆体重合性溶液を充填し、該溶液をゲル化する工程、
(c) 前記ゲルを保持した中空繊維配列体を中空繊維の長手方向に直交する方向で切断して薄片を製造する工程、及び
(d) 得られる薄片を、一本の中空繊維の切断面が含まれるように切断するとともに当該切断片の前記樹脂部分を形状加工する工程。
上記方法においては、まず、中空繊維を束ねて樹脂で固定し中空繊維の長手方向に直交する方向にスライスする。これにより、中空繊維部分が規則的に配列した薄片を得ることができる。次に、これらの薄片を、中空繊維部分が個別に分離されるように、つまり一本の中空繊維の切断面が含まれるように切断する。例えば図6(a)に示すように薄片60を切断線62に沿って縦方向及び横方向に切断すると、中空繊維部分が1個1個含まれる方形の切断片65が得られる。さらに、得られた切断片を、それぞれ識別可能に形状加工すれば、本発明のデバイスを得ることができる。例えば、方形の切断片を図6(b)に示すような形状加工をすることにより、3種類の加工されたデバイスを得ることができる。
上記工程(a)は、複数の中空繊維を、各繊維軸が同一方向となるように配列させて中空繊維とし、これを樹脂等で固定して繊維配列体を製造する工程である。中空繊維束は、複数の中空繊維を各繊維軸が同一方向となるように配列及び固定したものであれば限定されるものではない。そして、上記中空繊維束を、樹脂等で固めることにより繊維配列体を得る。
工程(a)における中空繊維束の製造は、例えば、図7に示す配列固定器具を利用して行うことができる。具体的には、まず、二枚の多孔板70を孔72が一致するように重ね合わせ、その孔に中空繊維74を挿入し、挿入後に多孔板70の間隔を広げ、多孔板70間の空間の周囲3面を板状物76で囲うことにより容器を作製する。次に、前記容器に樹脂原料を流し、樹脂を硬化させ、多孔板70と板状物76とを取り除く。これにより、複数の中空繊維74が三次元に配列及び固定された中空繊維束80を製造することができる。なお、中空繊維を固定する際、工程(b)においてゲル前駆体重合性溶液の充填を容易にするため、中空繊維の全長を固定するのではなく、片端を固定しないで自由端とすることが好ましい。
中空繊維の原材料としては、例えば、ナイロン6、ナイロン66、芳香族ポリアミド等のポリアミド系中空繊維、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカーボネート等のポリエステル系中空繊維、ポリアクリロニトリル等のアクリル系中空繊維、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系中空繊維、ポリメタクリル酸メチル等のポリメタクリレート系中空繊維、ポリビニルアルコール系中空繊維、ポリ塩化ビニリデン系中空繊維、ポリ塩化ビニル系中空繊維、ポリウレタン系中空繊維、フェノール系中空繊維、ポリフッ化ビニリデンやポリテトラフルオロエチレン等からなるフッ素系中空繊維、ポリアルキレンパラオキシベンゾエート系中空繊維等が挙げられる。
上記工程(b)は、中空繊維の中空部に、プローブを含有するゲル前駆体重合性溶液を充填し、該溶液をゲル化する工程である。
本発明の方法に中空繊維束を用いた場合、中空繊維ごとにそれぞれ別の種類のプローブを含有するゲル前駆体重合性溶液を充填することが可能であるため、特定の種類のプローブを個々の繊維の中空部に固定することが容易である。
本発明において、「ゲル前駆体重合性溶液」とは、プローブ、単量体、多官能性単量体、重合開始剤、及び水等を含むものである。単量体としては、例えばアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−アクリロイルアミノエトキシエタノール、N−アクリロイルアミノプロパノール、N−メチロールアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメチルメタクリレート、メチルピロリドン、(メタ)アクリル酸、アリルデキストリン等の単量体の一種類または二種類以上、並びにメチレンビス(メタ)アクリルアミド、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の多官能性単量体を挙げることができる。重合開始剤としては、例えば、過硫酸塩等のレドックス系や、2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジハイドロクロライド、2,2'-アゾビス(4-シアノペンチルカルボン酸)、2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)ジハイドロクロライド等のアゾ系の開始剤が挙げられる。
ゲル前駆体重合性溶液の充填は、例えば以下の方法により行うことができる。まず、低温で保存しておいたゲル前駆体重合性溶液と中空繊維束をデシゲーター内に設置する。ゲル前駆体重合性溶液は予め十分脱気しておく。ここで、窒素、ヘリウム等の不活性ガスを導入し、デシゲーター内を前記ガスで置換しておく。不活性ガスへの置換は、10〜20時間で実施される。次にデシゲーター内を減圧状態とし、中空繊維束の中空繊維が固定されていない自由端を、重合性溶液中に浸す。次にデシゲーター内に不活性ガスを吹き込むことにより加圧状態にし、各中空繊維の中空部に溶液を充填する。
本発明において、「ゲル化」は、各中空繊維の中空部にゲル前駆体重合性溶液を充填した後、中空繊維束を加温し、重合反応を行うことにより実施される。重合温度は使用する単量体等により適宜選択される。この操作により、ゲルが中空繊維束に保持される。
上記工程(c)は、前記ゲルを保持した中空繊維束を中空繊維の長手方向に直交する方向で切断して薄片60を製造する工程である。薄片60の製造においては、ミクロトーム、レーザー等を使用することができる。薄片60の厚さは、1μm以上5,000μm以下であることが望ましく、10μm以上500μm以下であることがより望ましい。
上記工程(d)は、得られる薄片60を、各中空繊維部分が個々に含まれるように切断して当該切断片の前記樹脂部分を形状加工するものである。薄片60は、中空部にプローブが固定されている中空繊維74が配列した状態となっている。そこで、図6の破線で示すように、縦及び横方向に切断することにより、個々の切断片を得ることができる。この切断片に所定の形状加工を行うことで、それぞれ形状により識別可能な切片を得ることができる。
ここで、方法1において、工程(a)と(b)とは順序を逆にしてもよい。従って、中空繊維74の中空部に、プローブを含有するゲル前駆体重合性溶液を充填し、該溶液をゲル化し、次に、前記ゲルを保持した繊維を集束させ、集束させた繊維束を長手方向(繊維方向)に対して直交する方向にスライスしてもよい。
このように、個々の切片をそれぞれ識別可能に加工しておくことにより、生体分子固定化担体を形状により識別可能に作製することができる。さらに、中空繊維束80は、多量に生産することが容易であるため、これらを用いることにより、生体分子固定化アレイを短時間で簡便かつ安価に製造できる点で有効である。
<方法2>
また、本発明の方法においては、繊維自体に形状加工を施しておくことにより、上記樹脂で固定した部分を加工することなく、形状により識別し得るデバイスを製造することができる。すなわち、本発明の別の態様として、以下の工程を含む方法(方法2)を提供する。
(a) 複数の中空繊維のそれぞれに、各繊維軸方向に所定の形状加工を施す工程、
(b) 前記形状加工した複数の中空繊維を、各繊維軸が同一方向となるように配列させて中空繊維束を得る工程、
(c) 前記中空繊維の中空部に、プローブを含有するゲル前駆体重合性溶液を充填し、該溶液をゲル化する工程、及び
(d) 前記ゲルを保持した中空繊維束を中空繊維の長手方向に直交する方向で切断する工程。
上記工程(a)は、複数の中空繊維の各繊維に、繊維の長手方向に所定の形状加工を施すというものである。例えば図8(a)に示すように、中空繊維の外周部に長手方向Pに沿った1本の溝を形成しておくと、工程(d)において中空繊維の長手方向Pに直交する方向で切断したときに図9(a)に示すように、1つの溝による目印ができる。また、中空繊維の外周部に長手方向Pに沿った2本の溝を形成しておくと(図8(b))、工程(d)の後には、2つの溝による目印ができる(図9(b))。従って、前記1つの溝による目印と、2つの溝による目印により両者は識別が可能となる。溝の数を増やすことにより、また、溝のパターン(溝の形状、幅、間隔、本数等)を変えることにより、多様な種類の目印ができ、それぞれ形状による識別が可能となる。
また、上記で溝を長手方向Pに沿って形成したが、長手方向Pに沿って長手方向Pと略平行な平面を形成してもよい(図8(c))。これにより工程(d)の後には、平面による目印ができる。また、他の担体が全て形状加工されている場合であっても、形状加工を施さない担体を用いることによって(図9(d))、この担体も他の担体と識別可能となる。
以上のように、4通りの断面形状を有する繊維体を長手方向と垂直をなす方向にスライスすることにより、ユニークな外形を有する4つのプローブ担体を効率よく作製することができる。
5.検出
本発明において、ターゲット分子の検出方法は、以下の工程を含む。
(a)前記本発明のデバイスにターゲット分子を接触させる工程、
(b)プローブ固定化担体を形状によって識別する工程、
(c)前記識別されたプローブ固定化担体に結合したターゲット分子に由来するシグナルを検出する工程。
本発明の検出方法において、工程(a)を行う方法は本発明のデバイスとターゲット分子とが接触し得る限り特に限定されるものではない。例えば、ターゲット分子が含まれる溶液をデバイスにふりかける方法、ターゲット分子が含まれる溶液とデバイスとを同一容器内に混合する方法などが挙げられる。
工程(b)は、プローブ固定化担体を形状によって識別する工程である。形状によって識別する工程は、担体を肉眼により観察して識別する方法、担体を顕微鏡により観察して識別する方法、担体を形状センサ(フォトセンサ、ラインセンサ、又はイメージセンサ等)により識別する方法などがある。形状センサは、予め、担体をどのような形状加工するのかをセンサのプログラムに記憶させておくことにより、自動識別が可能である。
工程(c)は、ターゲット分子とプローブとの接触により、ターゲットから発せられたシグナルを検出するというものである。
ターゲット分子が核酸の場合、ターゲット核酸の検出は、ターゲット核酸を蛍光ラベル、放射標識等により標識し、検出装置により、あるいは目視によりシグナルを検出すればよい。プローブ核酸とターゲット核酸とのハイブリッド形成を、蛍光、化学発光、ラジオアイソトープなど、あらかじめターゲット核酸に標識された物質に由来するシグナルにより定量化又は定性化することにより、プローブ核酸に対応するターゲット核酸の存在を確認することができる。また、検出の方法は上記に限定されない。例えば、ブロッキング核酸の方を標識しておき、ターゲット核酸がハイブリすることによるブロッキング核酸の脱落をシグナルの低下で確認することも可能である。
上記、「標識」方法は、核酸のハイブリダイゼーションを検出することができる限り特に限定されるものではない。標識に使用される標識物質としては、例えばCy3、Cy5、Alexa Fluorなどの蛍光物質、アルカリフォスファターゼやホースラディッシュペルオキシターゼを使用した基質分解に伴う化学発光を利用するための酵素又はタンパク質、γ-32Pやα-32P等のラジオアイソトープなどが挙げられるが、蛍光物質を使用することが簡便である点で好ましい。
これらの標識物質を核酸分子に取り込ませる際には、標識方法が安定であり、プローブ核酸との特異的なハイブリダイゼーションを阻害しない限りにおいては、直接的、間接的または物理的、化学的結合に関わらずどのような方法であっても使用可能である。化学的な修飾を行う方法として、例えば、予め蛍光物質で標識された塩基を反応時に取り込ませる方法、ビオチンやアミノアリル基によって修飾されたアナログ塩基を反応時に取り込ませ、それを介して標識物質を取り込ませる方法などが挙げられる。また、SYBR Green、アクリジンオレンジ、SYBR Goldなどを用いて標識物質を相補核酸分子にインターカレートさせる方法、ULYSISのように標識物質を相補核酸分子に対して白金を介して結合させる方法などを採用することもできる。
本発明においては、担体が基板に固定(不動化)されていないため、形状の識別と標識の検出を同時に行うことができる。形状により、プローブの種類を識別することができるとともに、標識物質により、そのプローブに結合したターゲット分子を検出することができる。
なお、上記ではターゲット分子として核酸を例示したが、タンパク質や糖鎖をターゲット分子としてもよい。この場合、ターゲット分子を結合させるためのプローブを変える必要があるが、担体の形状加工の態様については応用できる。
例えば、抗原と特異的に結合する抗体を含有したゲルを担体の開口内に配置したプローブ担体を作製する。このとき、担体の形状が同じものについては同じプローブを含有したゲルを開口内に配置し、担体の形状が異なるものについては異なるプローブを含有したゲルを開口内に配置する。
これにより、担体の形状からプローブの種類を識別することが可能となり、利便性の高いデバイスを提供することができる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
実施例
(1)プローブの合成
表1に示す配列番号1から配列番号3で示されるオリゴヌクレオチドを合成した。合成の際、最終段階で、アミノリンクTM(PEバイオシステムズ社製)を前記オリゴヌクレオチドに反応させ、次いで脱保護操作を行うことにより、各オリゴヌクレオチドの末端にアミノヘキシル基が導入された5’−O−アミノヘキシルオリゴヌクレオチドを調製した。次いで、5’−O−オリゴヌクレオチドに、無水メタクリル酸を反応させ、5’末端ビニル化オリゴヌクレオチドを調製し、これらをプローブとした。
(2)中空繊維束の製造
次に、図7に示す配列固定器具を利用して中空繊維束を製造した。なお、図7中のx、y、zは直交の3次元軸であり、x軸は繊維の長手方向と一致する。まず、直径0.32mmの孔72が、孔の中心間距離を0.42mmとして、縦3列、横3列で合計9個設けられた厚さ0.1mmの多孔板70を2枚準備した。これらの多孔板70を重ね合わせて、そのすべての孔72に、内径がおよそ0.18mmのポリカーボネート中空繊維74(三菱エンジニアリングプラスチック社製 カーボンブラック1質量%添加)を1本ずつ、通過させた。X軸方向に各繊維に0.1Nの張力をかけた状態で2枚の多孔板70の位置を移動させて、中空繊維74の一方の端部から20mmの位置と100mmの位置の2ヶ所に固定した。即ち、2枚の多孔板70の間隔を80mmとした。次いで、多孔板70間の空間の周囲3面を板状物76で囲った。このようにして上部のみが開口状態にある容器を得た。この容器の上部から容器内に樹脂原料を流し込んだ。樹脂としては、ポリウレタン樹脂接着剤(日本ポリウレタン工業(株)ニッポラン4276、コロネート4403)の総重量に対し、2.5質量%のカーボンブラックを添加したものを使用した。25℃で1週間静置して樹脂を硬化させた。次いで多孔板70と板状物76を取り除き、中空繊維束80を得た。
次に、表2に示す質量比で混合した単量体及び開始剤を含むゲル前駆体重合性溶液をプローブ毎にそれぞれ調製した。
上記で作製した配列番号1から配列番号3で示されるオリゴヌクレオチドを含むゲル前駆体重合性溶液を、それぞれ図6に示した配置(図6中の数字は各プローブの塩基配列の配列番号を示す。Bはオリゴヌクレオチドを含まないブランクの箇所を示す)になるように、中空繊維束80における中空繊維74の中空部に充填した。具体的には、まず、前記重合性溶液の入った容器及び上記で作製した中空繊維束80を、図6に示した配置になるようにデシケーター内に設置した。デシケーター内を減圧状態にしたのち、中空繊維束80の各糸の封止されていない端部を所定の前記重合性溶液の入った容器に浸漬した。デシケーター内に窒素ガスを封入し、中空繊維74の中空部にプローブを含むゲル前駆体重合性溶液を導入した。次いで、容器内を70℃とし、3時間かけて重合反応を行った。このようにして、プローブがゲル状物を介して中空繊維74の中空部に保持された中空繊維束80を得た。
次に、得られた中空繊維束80を、ミクロトームを用いて繊維の長手方向と直交する方向でスライスし、厚さ0.25mmの薄片シート60(貫通孔型生体分子固定化アレイ)を複数枚得た。プローブの固定化は、図6(a)に示す配置で作製した。図6における開口内の数字「1」、「2」、「3」は配列表の配列番号を示し、「B」はブランクを表す。作製した貫通孔型生体分子固定化アレイには、それぞれの配列番号で示される塩基配列を有するプローブが、図6に示される配列番号に対応するように配置されている。
(3)プローブ固定化担体の細分化(図6)
得られた貫通孔型生体分子固定化アレイを、各プローブがばらばらになるよう、図6(a)の破線で示された形状に沿ってマトリクス部分を切断し、切断面が四角形となるプローブ固定化担体を得た(図6(b))。10枚分の貫通孔型生体分子固定化アレイについて同様の処置を行い、得られたプローブ固定化担体を混同しないよう、プローブの種類ごとに分けて2xSSC溶液中で保存した。
(4)プローブ固定化担体の特徴づけ
続いて、以下の通りプローブ固定化担体の形状による特徴づけを行った。配列番号1、配列番号2、配列番号3のプローブを固定化している担体については、それぞれ図1(c)、図2、図3のようにプローブ固定化担体の一部(破線部)を切断することにより、形状による特徴づけをおこなった。プローブを固定化していない担体については、特段の処理を行わなかったため、図1(d)に示すような形状となった。
各プローブ固定化担体をひとつのチューブにまとめ、2xSSC溶液中で保存し、プローブ固定化担体群とした。
(5)モデル検体の作製
プローブ固定化担体群を評価するためのモデル検体を以下の通りに作製した。まず、表3に記載の配列番号4から配列番号6で示されるオリゴヌクレオチドを合成した。これらのオリゴヌクレオチドの中には、プローブであるオリゴヌクレオチドと相補的な配列のものが含まれる。
表3に記載のオリゴヌクレオチドは、全て100pmol/μlに調製した。これらのオリゴヌクレオチドは、各2μlづつ用い、これに水を加えてそれぞれ500μlのオリゴヌクレオチド混合溶液を作製した。このオリゴヌクレオチド混合溶液を5μl使用し、標識試薬PlatinumBrightTM Nucleic Acid Labeling Kit(型番:GLK−003)(Kreatech Biotechnology社製)を用いて蛍光標識を行った。具体的には、まず、表4の組成となるようにキットに付属の標識剤及びバッファーと混合し、反応液とした。
次いで、反応液を85℃のヒートブロック上で30分間加熱し、その後4℃に冷却した。冷却後の反応液は、キットに付属の精製カラムを用いて、キット付属のプロトコールに従って精製を行い、およそ20μlの標識済みオリゴヌクレオチド混合溶液(モデル検体)を得た。
(6)ハイブリダイゼーション
モデル検体とプローブ固定化担体群との接触及び反応に際し、まず表5の組成のハイブリダイゼーション溶液を調製した。このハイブリダイゼーション溶液を、上記で作製したプローブ固定化担体群に対して接触させ、ハイブリダイゼーションを行った。ハイブリダイゼーションは、プローブ固定化担体群とハイブリダイゼーション溶液250μlとをプラスチックチューブ内において密封した状態で50℃、16時間接触させることで実施した。
(7)洗浄
洗浄溶液として2xSSC・0.2%SDS溶液、保存液として2xSSCを各10mlづつ用意した。ハイブリダイゼーション終了後のプラスチックチューブから、ハイブリダイゼーション溶液を抜き取った後、プローブ固定化担体群を、50℃に保温した250μlの洗浄溶液に20分間浸漬し、過剰のハイブリダイゼーション溶液を洗い流した。同じ操作を更にもう一回繰り返した後、プローブ固定化担体群を50℃に保温した250μlの保存液に10分間浸漬し、その後室温で冷却した。
(8)蛍光の検出
検出操作は、冷却CCDカメラ方式の核酸アレイ自動検出装置を用いて、プローブ固定化担体群を上述の保存液に浸漬した状態でカバーガラスをかぶせた後に、標識核酸試料分子からの蛍光画像を撮像した。検出画像を図10に示す。ここで、各担体の形状より、三角形で囲まれたものはプローブ1を、円形で囲まれたものはプローブ2を、四角形で囲まれたものはプローブ3を固定化していることがわかる。また、囲いのない担体にはプローブが固定化されていないことがわかる。個々のプローブ固定化担体においてはそれぞれに蛍光シグナルの値を計算することができるため、各担体の形状およびハイブリダイゼーション由来のシグナル強度が同時に検出できたと言える。
比較例
プローブ固定化担体の特徴づけを行わない以外は、実施例と同様にして行った。各担体については同一形状であるため、蛍光が検出されている場合においても、担体がプローブを固定化しているか否か、また、どの担体が何れの種類のプローブを固定化しているものか不明であった(図11)。
本発明のデバイスは、簡便かつ正確に生体試料などのターゲット分子を検出する方法に利用される。
配列番号1〜6:合成DNA

Claims (6)

  1. 形状によって互いに識別可能に加工された複数の担体にそれぞれプローブを固定化してなるプローブ固定化担体を含むターゲット分子検出用デバイス。
  2. 以下の工程を含むターゲット分子の検出方法:
    (a)請求項1に記載のデバイスにターゲット分子を接触させる工程、
    (b)プローブ固定化担体を形状によって識別する工程、
    (c)前記識別されたプローブ固定化担体に結合したターゲット分子に由来するシグナルを検出する工程。
  3. 工程b及び工程cが同時に行われる、請求項2に記載の検出方法。
  4. プローブ固定化担体を不動化せずに行う、請求項2又は3に記載の方法。
  5. 形状によって互いに識別可能なターゲット分子検出用デバイスの製造方法であって、以下の工程:
    (a) 複数の中空繊維を、各繊維軸が同一方向となるように配列させて中空繊維束とし、これを樹脂で固定して繊維配列体を得る工程、
    (b) 前記中空繊維の中空部に、プローブを含有するゲル前駆体重合性溶液を充填し、該溶液をゲル化する工程、
    (c) 前記ゲルを保持した中空繊維配列体を中空繊維の長手方向に直交する方向で切断して薄片を製造する工程、及び
    (d) 得られる薄片を、一本の中空繊維の切断面が含まれるように切断するとともに当該切断片の前記樹脂部分を形状加工する工程
    を含む前記方法。
  6. 形状によって互いに識別可能なターゲット分子検出用デバイスの製造方法であって、以下の工程:
    (a) 複数の中空繊維のそれぞれに、各繊維軸方向に所定の形状加工を施す工程、
    (b) 前記中空繊維の中空部に、プローブを含有するゲル前駆体重合性溶液を充填し、該溶液をゲル化する工程、及び
    (c) 前記ゲルを保持した中空繊維を中空繊維の長手方向に直交する方向で切断する工程
    を含む前記方法。
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