JP5294963B2 - 標的物質の処理方法及び標的物質の総量を求める方法 - Google Patents
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Description
生命現象を正確に捉えるためには生体物質の量を正確に測定することが極めて重要であるが、生体物質は少数の基本分子が多様な組み合わせによって構成されていることが多いため、測定が困難な場合がある。
例えばDNAやRNAはA、T(U)、G、Cで表される4種類の塩基から構成される一次構造の違いにより、全く機能の異なる遺伝子を形成する。
近年では、生体関連物質の一次構造に関するデータの蓄積と共に、これらをハイスループットに調べる手法の開発が進み、プラットフォームの極小化を始め、多くの技術開発の結果、現在では多数の標的物質を同時に検出するマイクロアレイの作製が可能となった。
生体物質を検出するためのマイクロアレイとしては、すでに実用化されているものとして、核酸マイクロアレイが挙げられる。核酸マイクロアレイとは、担体上に多数の核酸プローブ(以下、プローブと称する場合もある)を高密度に、互いに混ざり合うことのないようにそれぞれ独立に搭載したものである。核酸マイクロアレイ上に搭載されるプローブは、その塩基配列と相補である配列によって構成される核酸分子をハイブリダイゼーションによってキャプチャーするためのセンサーとして働く。
核酸マイクロアレイの製造方法として、あらかじめ調製した核酸プローブをスライドガラスやシリコンなどの基板に固定する方法、及び核酸プローブを基板上で直接合成する方法が知られている。
しかしながら、これらのマイクロアレイは得られるデータ量や実験効率を追求するあまり、データの正確性を犠牲にすることが多かった。
そこで今日では、アレイ等を用いてより正確に分子の量を測定するための技術が開発されている。
特許文献1は、メッセンジャーRNAの絶対量を測定する方法及びシステムを開示している。特許文献1に記載の発明によれば、標的物質を補足するプローブの能力を、事前に参照データとして取得しておくことにより、cDNAマイクロアレイを用いてメッセンジャーRNAの絶対量を測定することができる。
従って、特許文献1に示された手法では、煩雑な工程を経た上でメッセンジャーRNAの絶対量を測定することにより、異なる種類の標的物質の量を比較することはできても、異なる種類の標的物質の量を簡便に比較することは困難である。
また、本発明の目的は、製造時のトラブル等によってプローブの固定化が不全である担体を使用した場合においても、あるいは異なる条件にて実験が行われた場合においても、標的物質の量を比較可能とする方法を提供することである。
(工程A) 標的物質を含有する試料を調製する工程。
(工程B) 試料とプローブとを接触させる工程。
(工程C) 試料中の標的物質とプローブとを結合させる工程。
(工程D) プローブに結合した標的物質を遊離させる工程。
(工程E) 試料中の標的物質とプローブとを結合させる工程。
(工程A) 標的物質を含有する試料を調製する工程。
(工程X) 試料を二分して一方の試料を工程Bに供する工程。
(工程B) 試料とプローブとを接触させる工程。
(工程C) 試料中の標的物質とプローブとを結合させる工程。
(工程Y) 標的物質結合プローブを試料から分離する工程。
(工程Z) 分離した標的物質結合プローブを前記二分した他方の試料と接触させる工程。
(工程D) プローブに結合した標的物質を遊離させる工程。
(工程E) 試料中の標的物質とプローブとを結合させる工程。
(工程A) 標的物質を含有する試料を調製する工程。
(工程B) 試料とプローブとを接触させる工程。
(工程C) 試料中の標的物質とプローブとを結合させる工程。
(工程L) 標的物質を標識する工程。
(工程D) プローブに結合した標的物質を遊離させる工程。
(工程E) 試料中の標的物質とプローブとを結合させる工程。
(工程A) 標的物質を含有する試料を調製する工程。
(工程X) 試料を二分する工程。
(工程B) 二分された一方の試料とプローブとを接触させる工程。
(工程C) 試料中の標的物質とプローブとを結合させる工程。
(工程Y) 標的物質結合プローブを試料から分離する工程。
(工程L) 標的物質を標識する工程。
(工程Z) 分離した標的物質結合プローブを前記二分した他方の試料と接触させる工程。
(工程D) プローブに結合した標的物質を遊離させる工程。
(工程E) 試料中の標的物質とプローブとを結合させる工程。
(工程A) 標的物質を含有する試料を調製する工程。
(工程X) 試料を二分する工程。
(工程L) 標的物質を標識する工程。
(工程B) 前記二分された一方の試料とプローブとを接触させる工程。
(工程C) 試料中の標的物質とプローブとを結合させる工程。
(工程Y) 標的物質結合プローブを試料から分離する工程。
(工程Z) 分離した標的物質結合プローブを前記二分した他方の試料と接触させる工程。
(工程D) プローブに結合した標的物質を遊離させる工程。
(工程E) 試料中の標的物質とプローブとを結合させる工程。
(工程L) 標的物質を標識する工程。
(工程M) 工程Lで使用された標識物質とは異なる標識物質で標的物質を標識する工程。
(工程L) 標的物質を標識する工程。
(工程M) 工程Lで使用された標識物質とは異なる標識物質で標的物質を標識する工程。
(工程L) 標的物質を標識する工程。
(工程M) 工程Lで使用された標識物質とは異なる標識物質で標的物質を標識する工程。
本発明の第9の発明は、上述の第1から第8の発明において、プローブが担体に固定されたものである標的物質の処理方法である。
また、本発明の内、第1、第3、第6の発明、及び第10の発明を用いることにより、製造時のトラブル等によって、プローブの固定化が不全である担体を使用した場合においても、標的物質の量を比較することが可能となった。
また、本発明の内、第1から第9の発明、及び第10の発明を用いることにより、異なる条件にて実験が行われた場合においても、標的物質の量を比較することが可能となった。
そこで本発明においては、上記の状況であっても比較できるように、試料中の標的物質を、マイクロアレイに固定されているプローブに結合させた後、一旦プローブから標的物質を遊離させ、再度標的物質とプローブとを再結合させることを試みた。その結果、最初にプローブに結合したときの標的物質のシグナル、及び再結合させたときの標的物質のシグナルを所定の比例式に当てはめることにより、標的物質の総量を求めることに成功した。総量(絶対値)が求められると、総量を指標として標的物質の比較が可能となる。本発明はこのような知見に基づいて完成されたものである。
試料中に含まれる標的物質の総量をNと仮定したときの総量Nを求める場面を考える。試料をマイクロアレイに接触させ、試料中の標的物質をマイクロアレイ上のプローブと結合させたとする。このときにプローブに結合した標的物質の結合量をS1とする。次に、プローブに結合した標的物質をプローブから一旦遊離させる。このとき、遊離した標的物質の結合量S1の総量Nに対する比、すなわち、プローブに結合した標的物質の量S1と母集団である標的物質の総量Nとの比はS1/Nとなる。
標的物質をプローブから遊離させると、試料は、一度プローブに結合した標的物質と結合しなかった標的物質とが混在した状態となる。この試料をプローブに再結合させる。
プローブへの再結合反応を行うと、プローブに結合した標的物質の中には、再結合により初めてプローブに結合したものと、最初の結合反応及び再度の結合反応において両方に共通して結合したものとが含まれる。この共通して結合した標的物質の量をS2とすると、最初に結合した標的物質の量と共通して結合した標的物質の量比、すなわち、共通して結合した標的物質の量S2と母集団S1との比はS2/S1で表わされる。
「S1/N」と S2/S1とは比例関係にあるため、以下の等式で表わすことができる。
S1/N=S2/S1
従って、標的物質の総量Nは
N=S1×(S1/S2)
となる。
上記考え方を本発明の基本概念とすると、本発明は以下の態様が含まれる。本発明の態様をまとめた図を図7に示す。
本発明の第1の発明は、下記の工程を順に含む標的物質の処理方法である。
(工程A) 標的物質を含有する試料を調製する工程。
(工程B) 試料とプローブとを接触させる工程。
(工程C) 試料中の標的物質とプローブとを結合させる工程。
(工程D) プローブに結合した標的物質を遊離させる工程。
(工程E) 試料中の標的物質とプローブとを結合させる工程。
「標的物質」とは、試料中における総量を求める対象となる物質のことである。また、一般的には標的物質とは、試料中における存在の確認や、定性的もしくは定量的検出の対象となる特定の分子を指す。
また、「標的物質」とは、後述するプローブと結合するものであり、プローブと標的物質の結合は、1種類のプローブに対して1種類の標的物質が対応するものである。このような標的物質を含むものとしては、生体関連物質が挙げられる。生体関連物質は、例えばゲノムDNAやメッセンジャーRNA、またはこれらを再構成、増幅して得られるPCR産物、人工的に合成されたDNA、もしくはインビトロ転写産物としてのRNAや、PNA、LNAなどの核酸類似物を含む核酸、タンパク質、抗体、ペプチド、糖鎖など、一次構造、およびそれに起因する高次構造に多様性が認められる分子種であることが望ましい。標的物質とは、このように一次構造やそれに起因する構造の多様性を指標として、プローブと特異的に結合するものである。
標的物質は、それらが構造上区別可能であり、かつ、構造上の違いをもとにして、独立に検出する方法がある限り、複数であってもかまわない。
これらの標的物質は、それを構成する分子の中に、直接的に検出可能であるか否かにかかわらず、何らかの標識がなされていてもよい。標識の例としては、ビオチンや蛍光物質、酵素、もしくはラジオアイソトープなどが挙げられる。これらの標識は、標的物質のみになされていてもよいし、標的物質の属する生体関連物質全体になされていてもよい。
「プローブ」とは、標的物質との結合に供される分子を指す。例えば標的物質が核酸であれば、標的物質と少なくとも部分的に相補である配列をもった核酸、タンパク質であればそれに対応した抗体、糖鎖であればレクチン等、あるいはそれぞれその逆の組み合わせが挙げられる。
標的物質と結合させるために、プローブは取り扱いを容易にするために担体として固定化されていることが好ましい。
マイクロアレイは、一種類あたりのプローブ固定可能量がより多いほど好ましい。
「結合させる」とは、任意の一般的な結合様式で結合させることを意味し、ファンデルワールス力によるもの、水素結合によるもの、疎水効果によるもの、イオン結合によるもの、共有結合によるものなど、どのような結合であってもかまわない。後の工程において、標的物質をプローブからの遊離を効率的に行うためには、結合は水素結合によるものであることが望ましい。このような結合の態様としては、例えば核酸であれば相補鎖をハイブリダイゼーションによって可逆的に結合させる態様、タンパク質や抗体であれば、抗原決定部位と抗体とを結合させ、抗原抗体反応させる態様、糖鎖であればレクチンなどと相互作用させ、結合させる態様などがある。
「標的物質を遊離させる」とは、一旦形成されたプローブと標的物質の結合を、物理的、化学的な手段を用いてプローブから解離させる手法である。このような方法としては、たとえば標的物質の結合したプローブ固定化担体を加熱する方法、塩濃度の低い溶媒に浸漬する方法などが挙げられるが、実施の容易さの点で加熱することが望ましい。
解離した標的物質及びプローブは、結合前と化学構造が変化していないことが望ましいが、プローブと結合した標的物質を検出可能に標識する場合においては、その限りでない。但し、標的物質を何らかの形で標識した場合においても、標的物質のプローブに対する結合のしやすさが、標識前と変わらないことが望ましい。具体的には、あらかじめ標的物質に存在するビオチンに対して、蛍光物質(たとえばCy5)のついたストレプトアビジンを反応させることによって標識する程度であれば、特に問題は無い。
「遊離した標的物質をプローブと結合させる」とは、工程Dにおいて、プローブから遊離した標的物質、及び工程Cの結合反応で結合しなかった標的物質を含む試料をプローブと接触させ、再度プローブとの結合反応を行うことである。
遊離した標的物質は、はじめからプローブと結合しなかった標的物質と均一に混合され、工程Eにおける結合時には、はじめからプローブと結合しなかった標的物質とともに、工程Dにおいて、プローブから放出された標的物質が、資料中での存在比に対応した割合で再度プローブと結合することとなる。この時、工程Dにおいてプローブから放出した標的物質を、その他の標的物質と区別して検出できるように標識されていることが好ましい。
本発明の第2の発明は、下記の工程を順に含む標的物質の処理方法である。
(工程A) 標的物質を含有する試料を調製する工程。
(工程X) 試料を二分して一方の試料を工程Bに供する工程。
(工程B) 試料とプローブとを接触させる工程。
(工程C) 試料中の標的物質とプローブとを結合させる工程。
(工程Y) 標的物質結合プローブを試料から分離する工程。
(工程Z) 分離した標的物質結合プローブを前記二分した他方の試料と接触させる工程。
(工程D) プローブに結合した標的物質を遊離させる工程。
(工程E) 試料中の標的物質とプローブとを結合させる工程。
工程Xについて説明する。
「試料を二分する」とは、溶液である試料を、物理的にお互いが混ざり合わないように異なる容器に分け入れることである。等量に分けてもよく、一方の試料の量と他方の試料の量を変えてもよい。量を変えて二分する場合は、所定の量比(例えば1:2、1:3、1:4等)で分けることが好ましい。物理的に混ざり合わないように分けることによって、それぞれの試料に独立な処理を行うことができる。独立な処理とは、例えば標識が挙げられる。また、プローブやそれをとの接触も独立に実施することができる。
「標的物質結合プローブを試料から分離する」とは、標的物質とプローブの結合を解離させることなく、試料からプローブを物理的に離すことである。これは、液体である試料中から、固体であるプローブ固定化担体を取り出すことである。
「他方の試料」とは、工程Xにおいて二分された試料溶液のうち、工程B、工程C、工程Yにおいて使用しなかった試料のことである。試料残液は、本工程Zにおけるプローブとの接触までに、工程B、工程Cで使用したプローブと同一ではないが、実質的に同等なプローブであれば、接触させることが可能である。
本発明の第3の発明は、下記の工程を順に含む標的物質の処理方法である。
(工程A) 標的物質を含有する試料を調製する工程。
(工程B) 試料とプローブとを接触させる工程。
(工程C) 試料中の標的物質とプローブとを結合させる工程。
(工程L) 標的物質を標識する工程。
(工程D) プローブに結合した標的物質を遊離させる工程。
(工程E) 試料中の標的物質とプローブとを結合させる工程。
ここで、工程A、B、C、D、Eについては先に説明した通りである。
「標的物質を標識する」とは、プローブと結合した標的物質を検出、評価することを可能とするために、標的物質を特徴付けることである。標識手法として、例えば、ビオチンや蛍光物質、酵素、又はラジオアイソトープを物理的・化学的な反応を経て結合させることによる標識が挙げられる。標識物質は、標的物質を含む試料を作製する際にあらかじめ取り込ませておくことも可能である。標識物質をあらかじめ標的物質に取り込ませておく場合は、工程Lを省略し、工程Aまたは工程Cの段階でそれぞれの工程において並行して標識することができる。また、あらかじめビオチンなどで修飾されている標的物質については、新たに蛍光物質の結合したストレプトアビジンなどによって間接的に標識することも可能である。前述の通り、これらの標識は、標的物質のみになされていてもよいし、標的物質の属する生体関連物質全体になされていてもよい。
本発明の第4の発明は、下記の工程を順に含む標的物質の処理方法である。
(工程A) 標的物質を含有する試料を調製する工程。
(工程X) 試料を二分する工程。
(工程B) 二分された一方の試料とプローブとを接触させる工程。
(工程C) 試料中の標的物質とプローブとを結合させる工程。
(工程Y) 標的物質結合プローブを試料から分離する工程。
(工程L) 標的物質を標識する工程。
(工程Z) 分離した標的物質結合プローブを前記二分した他方の試料と接触させる工程。
(工程D) プローブに結合した標的物質を遊離させる工程。
(工程E) 試料中の標的物質とプローブとを結合させる工程。
ここで、工程A、B、C、D、E、L、X、Y、Zについては先に説明した通りである。
本発明の第5の発明は、下記の工程を順に含む標的物質の処理方法である。
(工程A) 標的物質を含有する試料を調製する工程。
(工程X) 試料を二分する工程。
(工程L) 標的物質を標識する工程。
(工程B) 前記二分された一方の試料とプローブとを接触させる工程。
(工程C) 試料中の標的物質とプローブとを結合させる工程。
(工程Y) 標的物質結合プローブを試料から分離する工程。
(工程Z) 分離した標的物質結合プローブを前記二分した他方の試料と接触させる工程。
(工程D) プローブに結合した標的物質を遊離させる工程。
(工程E) 試料中の標的物質とプローブとを結合させる工程。
ここで、工程A、B、C、D、E、L、X、Y、Zについては先に説明した通りである。
本発明の第6の発明は、第1の発明において、工程Bと並行して又は工程Bより前に下記工程Lを含み、工程Cと工程Dとの間に下記工程Mを含む、標的物質の処理方法である。
(工程L) 標的物質を標識する工程。
(工程M) 工程Lで使用された標識物質とは異なる標識物質で標的物質を標識する工程。
ここで、工程A、B、C、D、E、L、については先に説明した通りである。図7の態様6には、説明の便宜上、工程Lは工程Bよりも前に記載されているが、工程Bとともに処理することができる。
「工程Lとは異なる標識」とは、工程Lにおいて標的物質に施した標識とは独立に評価可能な方法による標識である。例えば分子構造が異なったとしても、同じ波長で検出可能な蛍光物質では、異なる標識とはなりえない。一方で、検出の方法がまったく異なる標識、例えば、ラジオアイソトープと蛍光、蛍光と化学発光、といった検出原理が異なるものでも、独立に評価可能な方法であれば、標識手法は問わない。生体物質を測定するに際しては、感度や簡便性の面から、励起波長や蛍光波長の異なる蛍光物質を使用することが好ましく、汎用性の面から、さらに好ましくは、Cy5およびAlexa Fluor 647などから選ばれる蛍光物質と、Cy3およびAlexa Fluor 546などから選ばれる蛍光物質との組み合わせであることが望ましい。先にも述べたとおり、蛍光等による標識は、間接的な標識であってもかまわない。例えば、あらかじめビオチンのついた標的物質に対して、ストレプトアビジンと上述の蛍光物質が結合したもので間接的に標識することは、作業効率の面から有利であり、好ましい。
本発明の第7の発明は、第2の発明において、工程Xと並行して又は工程Xより前に下記工程Lを含み、工程Yと工程Zとの間に下記工程Mを含む、標的物質の処理方法である。
(工程L) 標的物質を標識する工程。
(工程M) 工程Lで使用された標識物質とは異なる標識物質で標的物質を標識する工程。
ここで、すべての工程は、先に説明した通りである。図7の態様7には、説明の便宜上、工程Lは工程Xよりも前に記載されているが、工程Xとともに処理することができる(後述の第8の発明における工程Lについても同様である)。
本発明の第8の発明は、第2の発明において、工程Xと並行して又は工程Xより前に下記工程Lを含み、工程Xと工程Bとの間に下記工程Mを含む、標的物質の処理方法である。
(工程L) 標的物質を標識する工程。
(工程M) 工程Lで使用された標識物質とは異なる標識物質で標的物質を標識する工程。
ここで、すべての工程は、先に説明した通りである。
資料中の標的物質の総量は、上述の第1から第8の発明の何れにおいても、工程Cにおける標的物質の結合量と、工程Eにおける標的物質の結合量を元に、試料中に含まれるすべての標的物質がプローブと結合した場合に想定される当該標識物質のシグナル量を算出することができる。
本件発明の内、第3、第4の発明において、工程Cにおける標的物質の結合量は、工程Lの標識処理の後に標識を検出することによって数値化できる。この値をS1とし、さらに、工程Eの後に同一の標識を検出した値をS2とした場合、試料中の標的物質の総量は、S1×(S1/S2)にて算出できる。工程Cにおける標的物質の結合量と、工程E後の標的物質の結合量が等しい場合、この値は一次構造のことなる標的物質であっても比較することが可能となる。
核酸マイクロアレイを作製するために、表1に示す配列番号1および2で示されるオリゴDNAを合成した。ここで合成されたオリゴDNAをプローブとした。
図1に示す配列固定器具を利用して中空繊維束を製造した。なお、図中のx、y、zは直交の3次元軸であり、x軸は繊維の長手方向と一致する。
まず、直径0.32mmの孔(11)が、孔の中心間距離を0.42mmとして、縦12列、横各19列で合計228個設けられた厚さ0.1mmの多孔板(21)を2枚準備した。これらの多孔板を重ね合わせて、そのすべての孔に、ポリカーボネート中空繊維(31)(三菱エンジニアリングプラスチック社製 カーボンブラック1質量%添加)を1本づつ、通過させた。
次いで、多孔板間の空間の周囲3面を板状物(41)で囲った。このようにして上部のみが開口状態にある容器を得た。
次に、表2に示す組成及び質量比で混合した単量体及び開始剤を含むゲル前駆体重合性溶液をアレイに固定する核酸プローブ毎にそれぞれ調製した。
このようにして核酸プローブがゲル状物を介して中空繊維の中空部に保持された中空繊維束を得た。
表3に示したオリゴDNAを合成した。これらのオリゴDNAは、3’末端がビオチン標識されている。工程Lとして、これらのオリゴDNAをULYSIS−Alexa Fluor 546(インビトロジェン社製)にて標識を行った。この操作により、これらのオリゴDNAは、Alexa Fluor 546の蛍光によって検出することが可能となった。
工程Aとして、表4の通り、モデルとなるオリゴDNAを混合し、試料溶液を作製した。
工程Bとして、作製した試料溶液をハイブリダイゼーション用のプラスチック容器に入れ、上記で作製した核酸マイクロアレイを当該プラスチック容器中にて試料溶液に対して接触・浸漬させた。
工程Cとして、プラスチック容器は試料溶液の蒸発がおきないようによく密閉し、50℃の恒温槽中にて16時間保温することにより、プローブと標的物質のモデルをハイブリダイゼーション(結合)させた。
ハイブリダイゼーション後の核酸マイクロアレイは、下表5に示す洗浄液、10mL中に浸漬し、55℃にて20分間洗浄を行った。なお、このときに、ハイブリダイゼーションに用いたプラスチック容器およびハイブリダイゼーション後の試料溶液は4℃に保管した。
上記洗浄終了後、さらに表5に記載の保存液10mL中に核酸マイクロアレイを浸漬し、55℃にて10分間の液置換を行った。
Streptavidin−Cy5(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)1mgを1mLの水に溶解したものを標識剤として用意した。
標識剤を上述の保存液で500倍希釈したものを標識液として6mL用意した。工程Mとして、保存液置換後の上記の核酸マイクロアレイを染色液に室温にて30分間浸漬した。この操作により、ビオチンに対してストレプトアビジン−Cy5が結合し、ハイブリダイゼーションした核酸をCy5の蛍光を指標として検出することが可能となった。
染色後のチップは、洗浄液6mLにて室温で5分間の洗浄を4回繰り返した後、保存液6mLを用いて液置換を行った。
蛍光検出器を用いて、Alexa Fluor 546の蛍光の検出および、Cy5の蛍光の検出を行い、得られた画像を元に蛍光強度の数値化を行った。検出結果を図2及び図3に示す。
上記で検出の終わったチップを、先ほどのハイブリダイゼーション後の洗浄工程において保管しておいた、使用済みの試料溶液に再度浸漬し、蒸発の起きないように密封した。
工程Eとして、標的物質を放出させた後、試料溶液とともに密封した検出済みの核酸マイクロアレイを、再度55℃にて16時間インキュベーションし、プローブとモデルとなるオリゴDNA(標的物質)のハイブリダイゼーション(結合)を行った。
ハイブリダイゼーション後の洗浄は、前述の操作と同様にして行った。
検出は、上述の操作と同様にして行った。
Alexa Fluor 546の検出結果を図4、Cy5の検出結果を図5に示す。
Alexa Fluor 546のシグナル強度は、1回目の検出結果と比較して若干低くなった。これは、1回目の検出に至る実験操作と、2回目の検出に至る実験操作の微妙な違いから生じるものと考えられる。
Cy5のシグナル強度は、1回目の検出結果と比較して極めて低下した。Cy5の蛍光は、1回目のハイブリダイゼーションにおいて、プローブと結合した標的物質にのみなされているため、一旦プローブから放出され、再度ハイブリダイゼーションしたものは、試料中の標的物質の総量に比較して、極めて少ないためである。
1回目と2回目における標的物質ハイブリダイゼーションの総量に関しては、1回目の検出におけるAlexa Fluor 546のシグナル強度を「S’1」、2回目の検出におけるAlexa Fluor 546のシグナル強度を「S’2」、1回目の検出におけるCy5シグナル強度を「S1」、2回目の検出におけるCy5シグナル強度「S2」とし、各標的物質について、以下の計算式を用いて算出した。
ここで得られた値は、試料中に含まれる標的物質がすべてプローブに結合(ハイブリダイゼーション)した場合の標識由来の推定シグナル値をあらわしているため、ハイブリダイゼーション効率の異なる異種のプローブ間においても比較が可能となる。本方法による具体的な計算は、以下の表6の通りとなる。
本実施例により、検体中の標的物質の総量を求めることができることが証明された。検体中の標的物質の総量は、チップ担体の構造や、ハイブリダイゼーション等の実験条件とは独立に規定されているものであるため、本手法を使用することで、プローブ固定化担体の製造状態にばらつきがあるような場合でも、データを比較できる。
また、ハイブリダイゼーションバッファーや、実験時の温度条件などが異なる場合においても、本手法を用いて得られた値は、比較可能である。
21・・・・多孔板
31・・・・中空繊維
41・・・・板状物
配列番号2:合成DNA
配列番号3:合成DNA
配列番号4:合成DNA
Claims (1)
- 以下の工程を含む、標的物質の総量を求める方法。
(1)試料中の標的物質とプローブとを結合させ、プローブに結合した標的物質の量に対応するシグナル強度を取得する工程、
(2)前記標的物質をプローブから遊離させ、一度プローブに結合した標的物質と、プローブに結合しなかった標的物質との混在した試料を調製する工程、
(3)前記標的物質の混在した試料に対して、プローブへの再結合反応を行い、この再結合反応によりプローブに結合した標的物質のうち、(1)の結合反応においてプローブに結合した標的物質の量に対応するシグナル強度を取得し、(1)で取得したシグナル強度と(3)で取得したシグナル強度とから、標的物質の総量を求める工程
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