JP2011225872A - フィルム用ポリアミド樹脂組成物 - Google Patents

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裕 山口
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Abstract

【課題】透明性、滑り性、印刷性及びレトルト殺菌処理後の強度低下が小さく、層間剥離(デラミ)を惹起することがなく耐熱水性に優れ、さらに、フィルム延伸時の破断の発生が少なく、連続生産性良好なフィルム用ポリアミド樹脂組成物を提供する。
【解決手段】ポリアミド樹脂、オルガノポリシロキサンにより表面処理された無機フィラー粒子(A)、特定のヒンダードフェノール系酸化防止剤(B)及びビスアミド化合物(C)を含有し、ポリアミド樹脂100質量部に対し、(A)が0.01〜0.5質量部、(B)が0.03〜0.3質量部、(C)が0.01〜0.1質量部であるフィルム用ポリアミド樹脂組成物。
【選択図】なし

Description

本発明はフィルム用ポリアミド樹脂組成物に関する。
ポリアミドフィルムは、ガスバリア性、強靭性、機械的、熱的特性に優れている。
そのため、ポリアミド樹脂は包装用フィルム、特に食品包装分野を中心に、単層フィルムあるいはラミネートフィルムの基材、さらに他樹脂との共押出による積層フィルムの構成素材として、様々な分野で使用されている。
こうしたポリアミドフィルムにおける滑り性は、フィルムの生産性や品質・商品価値の点から、重要な要求特性の一つとなっている。
滑り性が悪いと、後加工時の作業性、つまり、製袋時にフィルムが引っ掛かったり、多色印刷時にインクの印刷ズレが生じたりすることがある。
かかるポリアミドフィルムの滑り性向上のために、無機フィラー粒子を配合する方法(特許文献1参照)が提案されている。
無機フィラー粒子を配合させることで滑り性を向上する方法において、無機フィラー粒子を十分な量使用することで、満足しうる滑り性が付与されたフィルムを得ることが可能となるが、その配合量が多くなりすぎると、フィルム中での無機フィラー粒子の均一な分散が妨げられ、ポリアミドフィルムの特徴である透明性の著しい低下を招き、その商品価値が損なわれてしまうといった欠点を有しており、その配合量が制約されていた。
その上、無機フィラー粒子を配合する方法では、フィッシュアイと称される粒状欠陥や、ダイラインと称される筋状の外観不良が生じ易く、ダイのリップ口にポリマー劣化物、添加剤の凝集体が蓄積した目脂の発生が早くなるため、外観に優れた高品質フィルムを安定的に生産することは難しく、さらに、頻繁に押出機を停止させダイのリップ口を浄化することを強いられ、生産効率の低下を余儀なくされていた。
滑り性を損なわずダイライン、目脂の発生を抑える様々な方法として、
無機フィラー粒子及びヒドロキシ脂肪酸マグネシウム塩を配合する方法(特許文献2参照)、
無機フィラー粒子及び酸化亜鉛と塩基性脂肪酸マグネシウムの混合物を配合する方法(特許文献3参照)、
無機フィラー粒子、及びビスアミド化合物、3〜6価の脂肪族アルコールと炭素原子数10〜22の脂肪酸との部分エステル化合物を配合する方法(特許文献4参照)、
無機フィラー粒子、3〜6価の脂肪族アルコールと炭素原子数10〜22の脂肪酸との部分エステル化合物、及び炭素原子数12〜30のヒドロキシ脂肪酸のマグネシウム塩を配合する方法(特許文献5参照)が提案されている。
一方、耐熱水性に優れたポリアミドフィルムとして、末端アミノ基と末端カルボキシル基の量比が規定されたポリアミド樹脂とレトルト食品包装用フィルムが提案されている(特許文献6参照)。
さらに、ポリアミド樹脂にヒンダードフェノール系酸化防止剤を配合したフィルム用ポリアミド樹脂組成物及びそれよりなるポリアミド二軸延伸フィルム(特許文献7から9参照)やポリアミド樹脂にヒンダードフェノール系酸化防止剤と脂肪族系アミド化合物を特定量併用したポリアミド樹脂組成物よりなる優れた耐熱水性及び滑り性を両立するポリアミド二軸延伸フィルムが開示されている(特許文献10参照)。
特公昭54−4741号公報 特開平6―179813号公報 特開平8―73734号公報 特開平5−59274号公報 特開2005−132929号公報 特開平4−28727号公報 特開平4−4232号公報 特開平7−138472号公報 特開平7−268209号公報 特開2003−313321号公報
特許文献2〜5においては、ダイライン発生の抑制効果は得られるものの、フィルム生産機での長時間運転による目脂発生の防止効果が乏しく、実使用面では問題点を有していた。また、これらの文献においては、フィルム延伸時の破断防止効果に対する記載はない。
また、昨今、フィルム成形時の高吐出化や高速化に伴い、フィルム延伸時の破断防止効果については改善の余地があり、連続生産性についてはさらなる改良が望まれている。
これまで開示されてきたいずれの特許文献にも、フィルム延伸時の破断防止効果やその生産性に関しては、技術的記載も示唆もなされていない。
さらに、ヒンダードフェノール系酸化防止剤と脂肪族系アミド化合物を併用した場合、表面易滑性を担う脂肪族系アミド化合物(有機滑剤)を相当量配合することにより、滑り性を損なうことなく、耐熱水性を改善することができるが、脂肪族系アミド化合物がフィルム表面にブリードアウトし、ポリアミドフィルムの印刷性や接着性が損なわれる。特に、接着性が損なわれると、ポリアミドフィルムとこれに積層されるシーラントフィルム(例えば、ポリプロピレンフィルム)との接着面での層間剥離(デラミ)が発生するため、レトルト食品包装用途には致命的となり、レトルト殺菌処理後も層間剥離(デラミ)を惹起することがなく耐熱水性、滑り性及び印刷性を両立させたポリアミドフィルムの開発が望まれるところである。
本発明の目的は、
ポリアミド樹脂からなるフィルムが本来有する諸特性を維持し、
透明性、滑り性、印刷性及びレトルト殺菌処理後の強度低下が小さく、
層間剥離(デラミ)を惹起することがなく耐熱水性に優れ、
さらに、フィルム延伸時の破断の発生が少なく、連続生産性良好なフィルム用ポリアミド樹脂組成物を得ることである。
本発明は、ポリアミド樹脂、オルガノポリシロキサンにより表面処理された無機フィラー粒子(成分A)、
ヒンダードフェノール系酸化防止剤(成分B)及び
ビスアミド化合物(成分C)を含有するフィルム用ポリアミド樹脂組成物であって、
前記成分Bは、下記一般式(1)
Figure 2011225872

[式中、R11、R12はそれぞれ独立に水素原子又は炭素原子数1〜10のアルキル基を示し、Xは2価の有機残基、Yはn価の基又は結合を表し、m及びnはそれぞれ独立に1〜4の整数を示す。]で表され、
前記ポリアミド樹脂100質量部に対し、
前記成分Aが0.01〜0.5質量部、
前記成分Bが0.03〜0.3質量部、
前記成分Cが0.01〜0.1質量部であることを特徴とするフィルム用ポリアミド樹脂組成物に関するものである。
本発明によれば、
ポリアミド樹脂からなるフィルムが本来有する諸特性を維持し、
透明性、滑り性、印刷性及びレトルト殺菌処理後の強度低下が小さく、
層間剥離(デラミ)を惹起することがなく耐熱水性に優れ、
さらに、フィルム延伸時の破断の発生が少なく、連続生産性良好なフィルム用ポリアミド樹脂組成物を得ることができる。
本発明者らは、前述の問題点を解決するフィルム用ポリアミド樹脂組成物の開発を目的に鋭意検討した結果、
オルガノポリシロキサンにより表面処理された無機フィラー粒子と特定の構造を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤とビスアミド化合物を配合したポリアミド樹脂組成物よりなるポリアミドフィルムが上記課題を解決することを見い出し、本発明に到達した。
本発明者らは、オルガノポリシロキサンにより表面処理された無機フィラー粒子、特定の構造を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤とビスアミド化合物の種類とポリアミド系樹脂への配合濃度を適切に設定することにより、透明性、滑り性を損なうことなく印刷性が良好であり、レトルト殺菌処理後の強度低下が小さく、層間剥離(デラミ)を惹起することがなく耐熱水性に優れ、さらに、フィルム延伸時の破断の発生が少なく、連続生産性良好なフィルム用ポリアミド樹脂組成物を見出し、本発明に到達した。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のフィルム用ポリアミド樹脂組成物(以下、ポリアミド樹脂組成物ともいう)は、
ポリアミド樹脂、オルガノポリシロキサンにより表面処理された無機フィラー粒子(成分A)、
ヒンダードフェノール系酸化防止剤(成分B)及び
ビスアミド化合物(成分C)を含有するフィルム用ポリアミド樹脂組成物であって、
前記成分Bは、下記一般式(1)
Figure 2011225872

[式中、R11、R12はそれぞれ独立に水素原子又は炭素原子数1〜10のアルキル基を示し、Xは2価の有機残基、Yはn価の基又は結合を表し、m及びnはそれぞれ独立に1〜4の整数を示す。]で表され、
前記成分Aが0.01〜0.5質量部、
前記成分Bが0.03〜0.3質量部、
前記成分Cが0.01〜0.1質量部であることを特徴とする。
本発明の効果を安定して奏させる観点から、ポリアミド樹脂組成物中、成分A、B及びCの合計量は、80〜100質量%であることが好ましく、85〜99.98質量%であることがより好ましく、90〜99.95質量%であることがさらに好ましい。
ポリアミド樹脂は、ラクタム、アミノカルボン酸、又はジアミンとジカルボン酸とからなるナイロン塩を原料として、溶融重合、溶液重合や固相重合等の公知の方法で重合、又は共重合することにより得られる。
ラクタムとしては、カプロラクタム、エナントラクタム、ウンデカンラクタム、ドデカンラクタム、α−ピロリドン、α−ピペリドン等、アミノカルボン酸としては、6−アミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、9−アミノノナン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
また、ナイロン塩を構成するジアミンとしては、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、トリデカメチレンジアミン、テトラデカメチレンジアミン、ペンタデカメチレンジアミン、ヘキサデカメチレンジアミン、ヘプタデカメチレンジアミン、オクタデカメチレンジアミン、ノナデカメチレンジアミン、エイコサメチレンジアミン、2−/3−メチル−1,5−ペンタンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン、2,2,4−/2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、5−メチル−1,9−ノナンジアミン等の脂肪族ジアミン、1,3−/1,4−シクロヘキサンジアミン、1,3−/1,4−シクロヘキサンジメチルアミン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)プロパン、5−アミノ−2,2,4−トリメチル−1−シクロペンタンメチルアミン、5−アミノ−1,3,3−トリメチルシクロヘキサンメチルアミン(イソホロンジアミン)、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、ビス(アミノエチル)ピペラジン、ノルボルナンジメチルアミン、トリシクロデカンジメチルアミン等の脂環式ジアミン、m−/p−キシリレンジアミン等の芳香族ジアミンが挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
一方、ナイロン塩を構成するジカルボン酸としては、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、オクタデカン二酸、エイコサン二酸等の脂肪族ジカルボン酸、1,3−/1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ジシクロヘキサンメタン−4,4’−ジカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4−/2,6−/2,7−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
ポリアミド樹脂において、これらラクタム、アミノカルボン酸、又はジアミンとジカルボン酸とからなるナイロン塩から誘導される単位から構成される単独重合体又は共重合体を各々単独又は混合物の形で用いる事ができる。
使用されるポリアミド樹脂の具体例としては、ポリカプロラクタム(ポリアミド6)、ポリウンデカンラクタム(ポリアミド11)、ポリドデカンラクタム(ポリアミド12)、ポリエチレンアジパミド(ポリアミド26)、ポリテトラメチレンアジパミド(ポリアミド46)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ポリアミド66)、ポリヘキサメチレンアゼラミド(ポリアミド69)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ポリアミド610)、ポリヘキサメチレンウンデカミド(ポリアミド611)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ポリアミド612)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド(ポリアミド6T)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ポリアミド6I)、ポリヘキサメチレンヘキサヒドロテレフタラミド(ポリアミド6T(H))、ポリノナメチレンアジパミド(ポリアミド96)、ポリノナメチレンアゼラミド(ポリアミド99)、ポリノナメチレンセバカミド(ポリアミド910)、ポリノナメチレンドデカミド(ポリアミド912)、ポリノナメチレンテレフタラミド(ポリアミド9T)、ポリトリメチルヘキサメチレンテレフタラミド(ポリアミドTMHT)、ポリノナメチレンヘキサヒドロテレフタラミド(ポリアミド9T(H))、ポリノナメチレンナフタラミド(ポリアミド9N)、ポリデカメチレンアジパミド(ポリアミド106)、ポリデカメチレンアゼラミド(ポリアミド109)、ポリデカメチレンデカミド(ポリアミド1010)、ポリデカメチレンドデカミド(ポリアミド1012)、ポリデカメチレンテレフタラミド(ポリアミド10T)、ポリデカメチレンヘキサヒドロテレフタラミド(ポリアミド10T(H))、ポリデカメチレンナフタラミド(ポリアミド10N)、ポリドデカメチレンアジパミド(ポリアミド126)、ポリドデカメチレンアゼラミド(ポリアミド129)、ポリドデカメチレンセバカミド(ポリアミド1210)、ポリドデカメチレンドデカミド(ポリアミド1212)、ポリドデカメチレンテレフタラミド(ポリアミド12T)、ポリドデカメチレンヘキサヒドロテレフタラミド(ポリアミド12T(H))、ポリドデカメチレンナフタラミド(ポリアミド12N)、ポリメタキシリレンアジパミド(ポリアミドMXD6)、ポリメタキシリレンスベラミド(ポリアミドMXD8)、ポリメタキシリレンアゼラミド(ポリアミドMXD9)、ポリメタキシリレンセバカミド(ポリアミドMXD10)、ポリメタキシリレンドデカミド(ポリアミドMXD12)、ポリメタキシリレンテレフタラミド(ポリアミドMXDT)、ポリメタキシリレンイソフタラミド(ポリアミドMXDI)、ポリメタキシリレンナフタラミド(ポリアミドMXDN)、ポリビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド(ポリアミドPACM12)、ポリビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンテレフタラミド(ポリアミドPACMT)、ポリビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンイソフタラミド(ポリアミドPACMI)、ポリビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド(ポリアミドジメチルPACM12)、ポリイソホロンアジパミド(ポリアミドIPD6)、ポリイソホロンテレフタラミド(ポリアミドIPDT)やこれらの原料モノマーを用いたポリアミド共重合体等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
得られるフィルムの耐熱性、機械的強度、透明性、経済性、入手の容易さ等を考慮して、ポリアミド樹脂は、カプロラクタムから誘導される単位(カプロラクタム単位)、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸から誘導される単位(ヘキサメチレンアジパミド単位)、及びドデカンラクタムから誘導される単位(ドデカラクタム単位)からなる群より選ばれる少なくとも1種から構成される単独重合体又は共重合体が好ましく、具体的には、ポリアミド6、ポリアミド12、ポリアミド66、ポリアミド6/66、ポリアミド6/69、ポリアミド6/610、ポリアミド6/611、ポリアミド6/612、ポリアミド6/12、ポリアミド6/66/12、ポリアミド6/6T、ポリアミド6/6I、ポリアミド6/IPD6、ポリアミド6/IPDT、ポリアミド66/6T、ポリアミド66/6I、及びポリアミド66/6T/6Iからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、ポリアミド6、ポリアミド12、ポリアミド66、ポリアミド6/66、ポリアミド6/12、ポリアミド6/IPD6、ポリアミド6/IPDT、ポリアミド6/66/12であることがより好ましい。
ポリアミド6、ポリアミド6/66、ポリアミド6/12、及びポリアミド6/66/12からなる群より選ばれる少なくとも1種がさらに好ましい。
尚、ポリアミド樹脂の具体例の上記名称は、JIS K6920−1:2000「プラスチック−ポリアミド(PA)成形用及び押出用材料−第1部:呼び方のシステム及び仕様表記の基礎」に基づく。
ポリアミド樹脂からなるポリアミドフィルムの安定な機械的性質を確保し、ポリアミドフィルムを製造する際の安定な成形性を確保する観点から、JIS K−6920に準じて測定したポリアミド樹脂の相対粘度は、2.0〜5.0であることが好ましく、2.5〜4.5であることがより好ましい。
尚、ポリアミド樹脂の末端基の種類及びその濃度や分子量分布に特別の制約は無い。
分子量調節や成形加工時の溶融安定化のため、モノアミン、ジアミン、モノカルボン酸、ジカルボン酸のうちの1種あるいは2種以上を適宜組合せて添加することができる。
例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ステアリルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン等の脂肪族モノアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン等の脂環式モノアミン、アニリン、トルイジン、ジフェニルアミン、ナフチルアミン等の芳香族モノアミン、ヘキサメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン、シクロヘキサンジアミン、メチルシクロヘキサンジアミン、イソホロンジアミン等の脂環式ジアミン、m−/p−フェニレンジアミン、m−/p−キシリレンジアミン等の芳香族ジアミンや酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ピバリン酸、イソブチル酸等の脂肪族モノカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸等の脂環式モノカルボン酸、安息香酸、トルイル酸、α−/β−ナフタレンカルボン酸、メチルナフタレンカルボン酸、フェニル酢酸等の芳香族モノカルボン酸、アジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,3−/1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,4−/2,6−/2,7−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
これら分子量調節剤の使用量は分子量調節剤の反応性や重合条件により異なるが、最終的に得ようとするポリアミド樹脂の相対粘度が前記の範囲になるように適宜決められる。モノアミン、ジアミンのうちの1種あるいは2種以上を適宜組合せて添加、重合することにより得られる末端基濃度が調整されたポリアミド樹脂により、耐熱水性をさらに高めることも可能である。
ポリアミド樹脂については、ポリアミドフィルムを製造する際のダイ付近へのオリゴマー成分の付着を低減し、これら付着物によるダイラインやフィッシュアイの発生による外観不良を低減する観点から、さらに、JIS K−6920に規定する低分子量物の含有量の測定方法に準じて測定した水抽出量は1.0%以下であることが好ましく、0.5%以下であることがより好ましい。
ポリアミド樹脂は、オレフィン樹脂と比較して吸湿性が大きく、吸湿したものを使用すると、原料を溶融押出しする際、加水分解が起こるためオリゴマーが発生し、フィルム製造が困難となるので事前に乾燥し、水分含有率が0.1質量%以下とすることが好ましい。
成分Aは、オルガノポリシロキサンにより表面処理された無機フィラー粒子である。
無機フィラー粒子は、表面突起が表面に形成され、滑り性に優れたポリアミドフィルムが得られさえすれば、その形状は特に制限されず、粉末状、粒子状、フレーク状、板状、繊維状、針状、クロス状、マット状、その他如何なる形状のものであってもよいが、粒子状、板状のものが好ましい。
無機フィラー粒子の平均粒径は、二次凝集を抑制してフッシュアイゲルの発生を低減し、フィルムの良好な透明性と外観を確保し、フィルム表面の凹凸効果を付与し、滑り性の向上効果を確保する観点から、0.1〜20μmであることが好ましく、0.5〜15μmであることがより好ましい。
尚、平均粒径は、後述するコールターカウンター法によって測定できる。
無機フィラー粒子の平均粒径が前記の範囲に入るように、予め粉砕処理や分級を行うことが望ましい。
無機フィラー粒子の具体例として、ゲルタイプシリカ、沈降タイプシリカ、球状シリカ等のシリカ、タルク、カオリン、モンモリロナイト、ゼオライト、マイカ、ガラスフレーク、ウォラストナイト、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、セピオライト、ゾノライト、ホウ酸アルミニウム、ガラスビーズ、ケイ酸カルシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛、水酸化マグネシウム等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、タルク、カオリン、ゼオライト、シリカが易分散性の点から好ましい。
特に、得られるフィルムの透明性、滑り性の観点から、シリカであることがより好ましい。
シリカは、SiO・nHOで表される二酸化ケイ素を主成分とするものであり、その製造方法により大別して、湿式法シリカと乾式法シリカの2つに分けられるがいずれも用いることができる。乾式法シリカは一般的には火炎加水分解法によって作られる。
具体的には四塩化ケイ素を水素及び酸素と共に燃焼して作る方法が一般的に知られているが、四塩化ケイ素の代わりにメチルトリクロロシランやトリクロロシラン等のシラン類も、単独又は四塩化硅素と混合した状態で使用することができる。
一方、湿式法シリカは、さらに製造方法によって沈降法シリカ、ゲル法シリカ、ゾル法シリカに分類される。沈降法シリカはケイ酸ソーダと硫酸をアルカリ条件で反応させて製造され、粒子成長したシリカ粒子が凝集・沈降し、その後濾過、水洗、乾燥、粉砕・分級の工程を経て製品化される。
この方法で製造されたシリカの二次粒子は緩やかな凝集粒子となり、比較的粉砕し易い粒子が得られる。ゲル法シリカはケイ酸ソーダと硫酸を酸性条件化で反応させて製造する。熟成中に微小粒子は溶解し、他の一次粒子同士を結合するように再析出するため、明確な一次粒子は消失し、内部空隙構造を有する比較的硬い凝集粒子を形成する。
ゾル法シリカは、コロイダルシリカとも呼ばれ、ケイ酸ソーダの酸等による複分解やイオン交換樹脂層を通して得られるシリカゾルを加熱熟成して得られる。
シリカの平均粒径は、最終的に得られるポリアミドフィルムの耐ブロッキング性を確保し、フィッシュアイの発生を抑制する観点から、0.1〜20μmであることが好ましく、0.5〜15μmであることがより好ましく、1〜10μmであることがさらに好ましい。
無機フィラー粒子の表面処理剤として使用されるオルガノポリシロキサンは、下記式(2)
Figure 2011225872
[式中、R〜Rはそれぞれ独立して水素原子又は有機基を表す。]で表される。
式(2)において、有機基としては特に限定されるものではないが、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、2−エチルブチル基、オクチル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ジフェニル基のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基等のシクロアルキル基、これらの基の水素原子の一部又は全部がハロゲン原子により置換された炭化水素基、置換あるいは非置換の水酸基、シロキシ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、メルカプト基、エポキシ基、(メタ)アクリロキシ基、アミノ基、−O−、−(CHO)−、−(OCH−、−(CHO)CH−等のエーテル結合部位を含む構造単位、−CO−、−COCO−、−CO(CHCO−、−CO(C)CO−等のカルボニル基を含む構造単位、アミド結合部位を含む構造単位、エステル結合部位を含む構造単位、ケトン結合部位を含む構造単位を含有する置換基等が挙げられる。尚、tは1〜20の整数を表す。
これらの中でも、製造時あるいは使用時の安定性、安全衛生の点から、R〜Rは水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、アリール基又はアラルキル基が好ましく、炭素原子数1〜10のアルキル基、アリール基又はアラルキル基がより好ましく、炭素原子数1〜6のアルキル基又はアリール基がさらに好ましく、メチル基がさらに好ましい。
オルガノポリシロキサンとしては、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、各種変性ポリシロキサン等が挙げられる。各種変性ポリシロキサンとしては、ポリシロキサン骨格の両末端にシラノール基が導入されたシラノール変性ポリシロキサン、ポリシロキサン骨格の側鎖にフロロアルキル基が導入されたフッ素変性ポリシロキサン、ポリシロキサン骨格の側鎖に長鎖アルキル基が導入されたアルキル変性ポリシロキサン、ポリシロキサン骨格の側鎖にアラルキル基が導入されたアラルキル変性ポリシロキサン、ポリシロキサン骨格の側鎖に高級脂肪酸エステル基が導入された脂肪酸エステル変性ポリシロキサン、ポリシロキサン骨格の側鎖に高級脂肪酸アミド基が導入された脂肪酸アミド変性ポリシロキサン、ポリエチレンオキサイドやポリプロピレンオキサイド等のポリエーテル基がポリシロキサン骨格の両末端あるいは側鎖に導入されたポリエーテル変性ポリシロキサン、ポリシロキサン骨格の両末端あるいは側鎖にアミノ基が導入されたアミノ変性ポリシロキサン、ポリシロキサン骨格の両末端あるいは側鎖にエポキシ基が導入されたエポキシ変性ポリシロキサン、ポリシロキサン骨格の両末端あるいは側鎖にエポキシ基とポリエーテル基が導入されたエポキシ−ポリエーテル変性ポリシロキサン、ポリシロキサン骨格の両末端にフェノール性水酸基が導入されたフェノール変性ポリシロキサン、ポリシロキサン骨格の両末端あるいは側鎖にカルボキシル基が導入されたカルボキシル変性ポリシロキサン、ポリシロキサン骨格の両末端に(メタ)アクリル基が導入された(メタ)アクリレート変性ポリシロキサン、ポリシロキサン骨格の両末端にアルコキシ基が導入されたアルコキシ変性ポリシロキサン、ポリシロキサン骨格の両末端あるいは側鎖にカルビノール基が導入されたカルビノール変性ポリシロキサン、ポリシロキサン骨格の両末端あるいは側鎖にメルカプト基が導入されたメルカプト変性ポリシロキサン等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、ジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサンが好ましく、ジメチルポリシロキサンがより好ましい。
また、上記一般式(2)中のp、qは自然数であり、pとqの合計数(p+q)は5〜500であることが好ましく、10〜300であることがより好ましく、20〜200であることがさらに好ましい。
pとqの比率(q/p)は、使用するポリアミド樹脂と無機フィラー粒子の親和性を考慮し、導入される有機基の種類、含有量により決定され、1/100〜10であることが好ましく、1/50〜5であることがより好ましい。
さらに、上記オルガノポリシロキサンは、引火点の低下を抑制し、高温加工の際の分解を抑制し、無機フィラー粒子表面を安定に均一処理し、粗大凝集粒子の発生を抑制する観点から、25℃における動粘度が5〜1,000cStであることが好ましく、8〜600cStであることがより好ましい。
表面処理に使用するオルガノポリシロキサンの添加量は、安定した延伸破断防止効果と連続生産性を確保し、ポリアミド樹脂と無機フィラー粒子の親和力を確保して安定した分散性と最終的に得られるポリアミドフィルムの機械的性質を十分に確保し、オルガノポリシロキサンのフィルムへのブリードアウトを抑制する観点から、無機フィラー粒子(乾燥物基準)100質量部に対して、0.5〜15質量部であることが好ましく、1〜12質量部であることがより好ましく、2〜10質量部であることがさらに好ましい。
無機フィラー粒子の比表面積は、表面処理剤による表面処理の効果を安定に確保し、二次粒子、三次粒子の内部まで表面処理剤を含浸し、フリーの表面処理剤のポリアミド樹脂組成物中での存在を抑制し、ポリアミドフィルムの良好な外観、物性を確保する観点から、5〜800m/gであることが好ましく、10〜500m/gであることがより好ましく、15〜400m/gであることがさらに好ましく、20〜300m/gであることがさらに好ましい。
尚、比表面積は、BET法により測定された値を意味する。
オルガノポリシロキサンで無機フィラー粒子を処理する方法は、溶媒中に無機フィラー粒子とオルガノポリシロキサンを加え、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等の高剪断力混合機を用いて均一に混合した後、溶媒を除去することによって表面処理を行う湿式処理法、あるいは、無機フィラー粒子をマイクロナイザー、ジェットミル、ヘンシェルミキサー等の流体エネルギー粉砕機で粉砕する際にオルガノポリシロキサンを添加し、均一になるように攪拌したのち次いで所定の温度で乾燥を行う乾式処理法等が挙げることができ、流体としては、通常は圧縮空気、加熱圧縮空気、スチーム等が用いられる。
無機フィラー粒子の表面処理後又は処理中に、加熱乾燥させることにより成分Aの疎水性表面がより強固なものとなるため、水分吸着等による含水量が大きく低減する。
このようにして得られた低含水量の成分Aは樹脂へ混練分散の際、樹脂劣化が抑えられるため、分散力や分散時間を上げられる等様々な利点がある。
成分Bは、下記一般式(1)
Figure 2011225872
[式中、R11、R12はそれぞれ独立に水素原子又は炭素原子数1〜10のアルキル基を示し、Xは2価の有機残基、Yはn価の基又は結合を表し、Yはn価の有機残基とすることができ、m及びnはそれぞれ独立に1〜4の整数を示す。]で表される化合物である。
11、R12は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜10のアルキル基であり、炭素原子数1〜6のアルキル基が好ましく、炭素原子数1〜4のアルキル基がより好ましい。
炭素原子数1〜10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、t−ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、n−ヘプチル基、イソヘプチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、t−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、イソノニル基、n−デシル基、イソデシル基等が挙げられ、
メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、t−ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基が好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基がより好ましく、
11はメチル基又はt−ブチル基であり、R12はt−ブチル基であることがさらに好ましい。
また、mは2〜4の整数であり、1〜3であることが好ましく、1又は2であることがより好ましく、2であることがさらに好ましい。nは1〜4の整数を示す。
Xは、炭素原子数1〜24の炭化水素基であることが好ましく、該炭化水素基は、ヘテロ原子及び/又は環状基を含んでいてもよく、Yが炭素原子数1〜10の炭化水素基、炭素原子、硫黄原子又は単結合であることが好ましく、該炭化水素基は、ヘテロ原子を含んでいてもよい。
Xは、下記式(3)
Figure 2011225872
[式中、R21は水素原子又は炭素原子数1〜30の酸素原子を含んでもよい炭化水素基であり、炭素原子数1〜25の酸素原子を含んでもよい炭化水素基が好ましく、炭素原子数1〜18の酸素原子を含んでもよい炭化水素基がより好ましい。]で表わされる構造、下記式(4)
Figure 2011225872
[式中、R22、R23はそれぞれ独立して水素原子又は炭素原子数1〜4のアルキル基であり、炭素原子数1〜4のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。sは1〜4の整数であり、1〜3であることが好ましい。]で表わされる構造、又は
下記式(5)
Figure 2011225872
[式中、R24は単結合又は炭素原子数1〜4のアルキレン基であり、単結合又は炭素原子数3のアルキレン基が好ましい。]で表わされる構造を有することが好ましい。
上記式(3)で表される構造を含む成分Bの具体例としては、
オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(製品名:IRGANOX1076)、
イソオクチル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(製品名:IRGANOX1135)、
トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](製品名:IRGANOX245)、
1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](製品名:IRGANOX259)、
トリエチレングリコール−ビス[3−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、
トリエチレングリコール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、
2,2’−チオ−ジエチルビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](製品名:IRGANOX1035)、
ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](製品名:IRGANOX1010、ADEKASTAB AO−60又はSUMILIZER BP−101)等が挙げられる。
上記式(4)で表される構造を含む(B)ヒンダードフェノール系酸化防止剤の具体例としては、3,9−ビス〔2−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニロキシ]−1,1−ジメチルエチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン(製品名:ADEKASTAB AO−80又はSUMILIZER GA−80)等が挙げられる。
上記式(5)で表される構造を含む成分Bの具体例としては、
N,N’−ビス[3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン(製品名:IRGANOX MD 1024)、
N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマイド)(製品名:IRGANOX1098)等が挙げられる。
これらは1種又は2種以上を用いることができる。
特に食品包装用途に使用する場合には、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]及び/又はN,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマイド)が好ましい。
成分Cは、下記の一般式(6)
Figure 2011225872
[式中、Rは2価の炭化水素残基、R及びRは一価の炭化水素残基、R及びR10は水素原子又は一価の炭化水素残基を示す。]で表されるビスアミド化合物及び/又は一般式(7)
Figure 2011225872
[式中、式中、Rは2価の炭化水素基、R及びRは1価の炭化水素基、R及びR10は水素原子又は1価の炭化水素基を示す。]
で表されるビスアミド化合物である。
一般式(6)で表されるビスアミド化合物は、ジアミンとモノカルボン酸との反応によって得られ、代表的には、アルキレンビス脂肪酸アミド、アリーレンビス脂肪酸アミド等が挙げられる。原料のジアミンとしては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン等のアルキレンジアミン、フェニレンジアミン、ナフタレンジアミン等のアリーレンジアミン、キシリレンジアミン等のアリーレンアルキルジアミン等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
原料のモノカルボン酸としては、ステアリン酸、ヘキサン酸、オクタン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、アルキジン酸、ベヘン酸、オレイン酸、エライジン酸、モンタン酸等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
一般式(3)で表されるビスアミド化合物としては、N,N’−メチレンビスステアリン酸アミド、N,N’−エチレンビスステアリン酸アミド、N,N’−エチレンビスベヘン酸アミドが好ましい。
一般式(7)で表されるビスアミド化合物は、モノアミンとジカルボン酸との反応によって得られ、代表的には、ジオクタデシル二塩基酸アミド等が挙げられる。原料のモノアミンとしては、エチレンアミン、メチルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、デシルアミン、ペンタデシルアミン、オクタデシルアミン、ドデシルアミン等のアルキルアミン、アニリン、ナフチルアミン等のアリールアミン、ベンジルアミン等のアラルキルアミン、シクロヘキシルアミン等のシクロアルキルアミン等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
原料のジカルボン酸としては、テレフタル酸、p−フェニレンジプロピオン酸、コハク酸、アジピン酸等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
一般式(7)で表されるビスアミド化合物としては、N,N’−ジオクタデシルアジピン酸アミドが好ましい。一般式(6)及び/又は一般式(7)で表されるビスアミド化合物は、1種又は2種以上を用いることができる。
成分Aの配合量は、ポリアミドフィルムの滑り性改良の効果を十分に確保し、良好な透明性、外観を確保する観点から、ポリアミド樹脂100質量部に対し、0.01〜0.5質量部であり、0.03〜0.3質量部であることが好ましく、0.05〜0.2質量部であることがより好ましい。
成分Bの配合量は、レトルト処理後の安定したフィルム物性を確保し、酸化防止剤のフィルム表面へのブリードアウトを抑制し、ポリアミドフィルムの透明性、印刷性を十分に確保する観点から、特に、レトルト食品の包装用途において、安定した接着性を確保して、ポリアミドフィルムとこれに積層されるシーラントフィルム(例えば、ポリプロピレンフィルム)との接着面での層間剥離(デラミ)の発生を抑制する観点から、ポリアミド樹脂100質量部に対し、0.03〜0.3質量部であり、0.05〜0.2質量部であることが好ましく、0.07〜0.15質量部であることがより好ましい。
成分Cの配合量は、ポリアミド樹脂からなるポリアミドフィルムの良好な透明性、滑り性改良効果を確保し、フィルムの印刷性や接着性を十分に確保する観点、特に、レトルト食品の包装用途において、ポリアミドフィルム保管時の成分Cのフィルム表面へのブリードアウトを抑制し、印刷性の指標である濡れ指数の経時変化を抑制し、実使用時の安定した印刷性を確保し、接着性の低下を抑止して、ポリアミドフィルムとこれに積層されるシーラントフィルム(例えば、ポリプロピレンフィルム)との接着面での層間剥離(デラミ)の発生を抑止する観点から、ポリアミド樹脂100質量部に対し、0.01〜0.1質量部であることが好ましく、0.02〜0.09質量部であることがより好ましく、0.03〜0.08質量部であることがさらに好ましい。
成分A、成分B、成分Cをポリアミド樹脂に配合(添加)する方法としては、ポリアミド樹脂の重合工程の任意の段階で成分A、成分B、成分Cを添加する重合内添法や予め高濃度の成分A、成分B、成分Cをポリアミド樹脂に1軸又は二軸の押出機を使用して練り込み、これを成形時に希釈して使用するいわゆるマスターバッチ法、成形に使用する添加剤濃度で成分A、成分B、成分Cを予めポリアミド樹脂に練り込み使用する練り込み法、成形時に、ポリアミド樹脂に対して、成分A、成分B、成分Cを添加するドライブレンド法等が挙げられる。また、成分A、成分B、成分Cのポリアミド樹脂への配合は、同時に行なっても、別々に異なる方法で行なってもどちらでも構わない。
本発明においてはさらに、オルガノポリシロキサンにより表面処理されていない無機フィラー粒子であって、比表面積が200m/g以下である無機フィラー粒子(成分D)を配合することが滑り性を改良する観点から好ましい。
無機フィラー粒子としては、前記と同様に例示できるが、シリカ及び/又はカオリン及び/又はゼオライト、即ち、シリカ、カオリン及びゼオライトよりなる群から選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。
また、成分Dの比表面積は、ポリアミドフィルムの延伸時のボイドの発生や延伸切れを防止し、2次凝集物による目脂の発生を低減する観点から、200m/g以下であり、180m/g以下であることが好ましく、160m/g以下であることがより好ましい。
尚、比表面積は、BET法により測定された値を意味する。
成分Dとしては、オルガノポリシロキサン以外の表面処理剤、例えばシランカップリング剤等により表面処理された無機フィラー粒子を使用することもできる。
シランカップリング剤としては、一般にアミノ基あるいはエポキシ基、メルカプト基、イソシアナト基、水酸基等を含有するアルコキシシラン化合物が挙げられる。
具体的には、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノジチオプロピルトリヒドロキシシラン、γ−(ポリエチレンアミノ)プロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノプロピル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(トリメトキシシリルプロピル)−エチレンジアミン、γ−ジブチルアミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基含有アルコキシシラン化合物、
γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−ウレイドエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン等のウレイド基含有アルコキシシラン化合物、
γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ基含有アルコキシシラン化合物、
γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等のメルカプト基含有アルコキシシラン化合物、
γ−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルエチルジメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルエチルジエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリクロロシラン等のイソシアナト基含有アルコキシシラン化合物、
γ−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン等の水酸基含有アルコキシシラン化合物が挙げられる。
これらは1種又は2種以上を用いることができる。
これらの中でも、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基含有アルコキシシラン化合物がより好ましい。
また、シランカップリング剤の添加量は、無機フィラー粒子とポリアミド樹脂との親和力を十分に確保し、分散性の低下を抑制し、添加量を増加しても分散性向上効果を確保して、最終的に得られるポリアミドフィルムの良好な機械的性質を確保し、シランカップリング剤のフィルムへのブリードアウトを低減する観点から、無機フィラー粒子(乾燥物基準)100質量部に対して、1〜10質量部であることが好ましく、2〜8質量部であることがより好ましく、3〜7質量部であることがさらに好ましい。
シランカップリング剤で無機フィラー粒子を処理する方法は、例えば、無機フィラー粒子にシランカップリング剤又はシランカップリング剤溶液を滴下あるいはスプレーにより添加し、ヘンシェルミキサー等の適当な装置で均一になるように攪拌したのち次いで所定の温度で乾燥を行う乾式処理法、あるいは無機フィラー粒子を水等に分散させてスラリー化し、これを攪拌しながらシランカップリング剤を加え、その後脱水、乾燥を行う湿式処理法等が挙げられる。
成分Dの配合量は、ポリアミド樹脂100質量部に対し、0.01〜0.2質量部であることが好ましく、ポリアミド樹脂組成物からなるポリアミドフィルムの安定した滑り性改良効果を確保し、ポリアミドフィルムの安定した透明性、外観を確保する観点から、0.03〜0.18質量部であることがより好ましく、0.05〜0.15質量部であることがさらに好ましい。
ポリアミド樹脂組成物には、得られるフィルムの特性を損なわない範囲内で、通常配合される各種の添加剤及び改質剤、例えば、熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤、フィラー、粘着性付与剤、シール性改良剤、防曇剤、結晶核剤、離型剤、可塑剤、架橋剤、発泡剤、着色剤(顔料、染料等)、耐屈曲疲労性改良材等を添加することができる。
ポリアミド樹脂組成物には、目脂発生防止のため、ヒドロキシ脂肪酸マグネシウム塩を添加することが好ましい。
ヒドロキシ脂肪酸マグネシウム塩は、ヒドロキシ飽和又は不飽和脂肪酸カルボン酸とマグネシウムの塩であり、具体的には、ヒドロキシラウリン酸マグネシウム塩、ヒドロキシミリスチン酸マグネシウム塩、ヒドロキシパルミチン酸マグネシウム塩、ヒドロキシステアリン酸マグネシウム塩、ヒドロキシベヘン酸マグネシウム塩等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
ヒドロキシ脂肪酸マグネシウム塩の配合量は、ポリアミド樹脂組成物によりポリアミドフィルムを製造する際に、目脂防止効果を確保して、ポリアミドフィルムの良好な透明性や印刷性を確保する観点から、ポリアミド樹脂100質量部に対し、0.003〜0.3質量部であることが好ましく、0.004〜0.2質量部であることがより好ましく、0.005〜0.1質量部であることがさらに好ましい。
ポリアミド樹脂組成物には、成分Bと共に有機リン系化合物を併用することにより、耐熱水性をさらに高めることが可能となる。
有機リン系化合物としては、例えばトリエチルホスファイト、トリ−n−ブチルホスファイト、トリフェニルホスファイト、ジフェニルモノオクチルホスファイト、トリ(p−クレジル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、ジフェニルモノデシルホスファイト、ジフェニルモノ(トリデシル)ホスファイト、トリス(2−エチルヘキシル)ホスファイト、フェニルジデシルホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、トリオレイルホスファイト、トリステアリルホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジイルビスホスファイト、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、テトラフェニルジプロピレングリコールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチル−6−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4,6−トリ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(トリデシル)ホスファイト、ビス[2,4−ジ(1−フェニルイソプロピル)フェニル]ペンタエリスリトールジホスファイト、トリステアリルソルビトールトリホスファイト、トリラウリルトリチオホスファイト、トリス(モノノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニルオキシ)−4,4’−ビフェニレン−ジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニルオキシ)−4,4’−ビフェニレン−ジホスホナイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)2−エチルヘキシルホスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ヘキサ(トリデシル)−1,1,3−トリス(2−メチル−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ブタン−トリホスファイト、テトラ(トリデシル)−4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)ジホスファイト、2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フルオロホスファイト、ビス(2,4,6−トリ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチル−6−メチルフェニル)エチルホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチル−6−メチルフェニル)メチルホスファイト、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニルジトリデシル)ホスファイト、テトラ(C12−C15混合アルキル)−4,4’−イソプロピリデンジフェニルジホスファイト、トリス[2−[[2,4,8,10−テトラ−tert−ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサフォスフェフィン−6−イル]オキシ]エチル]アミン(2,2’,2’’−ニトリロ[トリエチル−トリス(3,3’,5,5’−テトラ−t−ブチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル)]ホスファイト)、2−(2,4,6−トリ−t−ブチルフェニル)−5−エチル−5−ブチル−1,3,2−オキサホスホリナン、サイクリックネオペンタンテトライルビス(オクタデシル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
これらの中でも、耐熱性やポリアミド樹脂との相溶性から、トリス[2−[[2,4,8,10−テトラ−tert−ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサフォスフェフィン−6−イル]オキシ]エチル]アミン、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイトが好ましく、安全衛生の点からトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイトがより好ましい。
本発明においては、ポリアミド樹脂、成分A、成分B及び成分Cからなるポリアミド樹脂組成物(以下、原料ポリアミド樹脂組成物と称する場合がある。)を使用して、公知のフィルム製造方法を適用し、製膜することによりポリアミド樹脂組成物からなるポリアミドフィルム(以下、ポリアミドフィルムともいう。)が得られる。
例えば、原料ポリアミド樹脂組成物を押出機で溶融混練し、T−ダイあるいはコートハンガーダイによりフラットフィルム状に押出し、キャスティングロール面上にキャスティング、冷却してフィルムを製造するキャスティング法、リング状ダイにより筒状に溶融押出したチューブ状物を空冷あるいは水冷してフィルムを製造するチューブラー法等がある。
製造されたフィルムは実質的に無配向の未延伸フィルムとして使用できるが、得られるフィルムの強度及びガスバリア性の観点から二軸延伸フィルムであることが好ましい。
得られた未延伸フィルムを延伸するには、従来から知られている工業的方法により行うことができる。
例えば、キャスティング法によって製造するフィルムは、未延伸シートをテンター式同時二軸延伸機で縦横同時に延伸する同時二軸延伸法、Tダイより溶融押出しした未延伸シートをロール式延伸機で縦方向に延伸した後、テンター式延伸機で横方向に延伸する逐次二軸延伸法、環状ダイより成形したチューブ状シートを気体の圧力でインフレーション式に縦横同時に延伸するチューブチューブラー延伸法が挙げられる。
延伸工程はポリアミドフィルムの製造に引続き、連続して実施しても良いし、ポリアミドフィルムを一旦巻き取り、別工程として延伸を実施しても良い。
延伸フィルムの延伸倍率は使用用途によって異なるが、テンター式二軸延伸法、チューブチューブラー法において、通常、縦方向、横方向ともに1.5〜4.5倍であることが好ましく、2.5〜4.0倍であることがより好ましい。延伸温度は、30〜210℃であることが好ましく、50〜200℃であることがより好ましい。
上記方法により延伸されたフィルムは、引続き熱処理をすることが望ましい。
熱処理することにより常温における寸法安定性を付与することができる。
この場合の熱処理温度は、110℃を下限として該原料ポリアミド樹脂組成物の融点より5℃低い温度を上限とする範囲を選択するのがよく、これにより常温寸法安定性のよい、任意の熱収縮率をもった延伸フィルムを得ることができる。延伸フィルムは、熱収縮性が乏しいか、あるいは実質的に有していないものが望ましい。
よって、延伸後に行なわれる熱処理条件において、熱処理温度は150℃以上であることが好ましく、180〜220℃であることがより好ましく、緩和率は、幅方向に20%以内であることが好ましく、3〜10%であることがより好ましい。
熱処理操作により、充分に熱固定された延伸フィルムは、常法に従い、冷却して巻き取ることができる。
さらに、ポリアミドフィルムは、印刷性、ラミネート、粘着剤付与性を高めるため、コロナ放電処理、プラズマ処理、火炎処理、酸処理等の表面処理を行うことができる。また、必要に応じて、このような処理がなされた後、印刷、ラミネート、粘着剤塗布、ヒートシール等の二次加工工程を経てそれぞれの目的とする用途に使用することができる。
本発明のポリアミドフィルムは、透明性、滑り性、印刷性、耐熱水性に優れ、単独での利用価値が高いが、これに他の熱可塑性樹脂を積層することにより、さらに多くの特性を付加させることが可能である。具体的には本発明のポリアミドフィルムの少なくとも片面に熱可塑性樹脂層を積層して、積層フィルムとして使用することもできる。
該積層フィルムを製造するにあたっては、該原料ポリアミド樹脂組成物よりなる層の片面又は両面に他の基材を積層するが、その積層方法としては、共押出法、押出ラミネート法、ドライラミネート法等が挙げられる。
共押出法は、該原料ポリアミド樹脂組成物と他の熱可塑性樹脂とを共押出する方法であり、共押出シート成形、共押出キャスティングフィルム成形、共押出インフレーションフィルム成形等が挙げられる。
押出ラミネート法は、本発明のポリアミドフィルムと熱可塑性樹脂等の基材に、それぞれアンカーコート剤を塗布し、乾燥後、その間に熱可塑性樹脂等を溶融押出しながらロール間で冷却し圧力をかけて圧着することによりラミネートフィルムを得る方法である。
ドライラミネート法は、有機チタン化合物、イソシアネート化合物、ポリエステル系化合物、ポリウレタン化合物等の公知の接着剤を本発明のポリアミドフィルムに塗布し、乾燥後、熱可塑性樹脂等の基材と張り合わせることによりラミネートフィルムを得る方法である。
ラミネート後のフィルムは、エージングすることで、接着強度を上げることができる。ラミネートする際には、ポリアミドフィルムの片面又は両面をコロナ処理して使用することが好ましい。
積層される熱可塑性樹脂としては、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン/プロピレン共重合体(EPR)、エチレン/ブテン共重合体(EBR)、エチレン/酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン/酢酸ビニル共重合体鹸化物(EVOH)、エチレン/アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン/メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン/アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン/メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、エチレン/アクリル酸エチル共重合体(EEA)等のポリオレフィン系樹脂及び、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、メサコン酸、シトラコン酸、グルタコン酸、シス−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、エンドビシクロ−[2.2.1]−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸等のカルボキシル基及びその金属塩(Na、Zn、K、Ca、Mg)、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、エンドビシクロ−[2.2.1]−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸無水物等の酸無水物基、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、エタクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、シトラコン酸グリシジル等のエポキシ基等の官能基が含有された化合物により変性された、上記ポリオレフィン系樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンイソフタレート(PEI)、PET/PEI共重合体、ポリアリレート(PAR)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、液晶ポリエステル(LCP)等のポリエステル系樹脂、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンオキシド(PPO)等のポリエーテル系樹脂、ポリスルホン(PSF)、ポリエーテルスルホン(PES)等のポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリチオエーテルスルホン(PTES)等のポリチオエーテル系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアリルエーテルケトン(PAEK)等のポリケトン系樹脂、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメタクリロニトリル、アクリロニトリル/スチレン共重合体(AS)、メタクリロニトリル/スチレン共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体(ABS)、メタクリロニトリル/スチレン/ブタジエン共重合体(MBS)等のポリニトリル系樹脂、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリメタクリル酸エチル(PEMA)等のポリメタクリレート系樹脂、ポリ酢酸ビニル(PVAc)等のポリビニルエステル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、塩化ビニル/塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニリデン/メチルアクリレート共重合体等のポリビニル系樹脂、酢酸セルロース、酪酸セルロース等のセルロース系樹脂、ポリカーボネート(PC)等のポリカーボネート系樹脂、熱可塑性ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド等のポリイミド系樹脂、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン/クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(TFE/HFP,FEP)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン/フッ化ビニリデン共重合体(TFE/HFP/VDF,THV)、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体(PFA)等のフッ素系樹脂、熱可塑性ポリウレタン系樹脂、ポリウレタンエラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマー等を挙げられる。また、本発明において規定した前記ポリアミド樹脂を積層することも可能であり、フィルム強度のバランス、ガスバリア性の観点からポリメタキシリレンアジパミド(ポリアミドMXD6)やエチレン/酢酸ビニル共重合体鹸化物(EVOH)を積層することが好ましい。
また、得られたポリアミドフィルムには、ヒートシール性を付与する観点から、シーラント層を設けることが望ましい。
シーラント層として使用される材料は、熱融着できる樹脂であればよく、一般にポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂等が挙げられ、ポリオレフィン系樹脂を使用することが好ましい。具体的には、ポリプロピレン(PP)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、エチレン/酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン/アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン/メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン/アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン/メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、エチレン/アクリル酸エチル共重合体(EEA)、アイオノマー樹脂、アモルファスポリエステル(A−PET)等が好ましいものとして挙げられる。
さらに、無延伸、一軸又は二軸延伸熱可塑性樹脂フィルム又はシートや熱可塑性樹脂以外の任意の基材、例えば、紙、金属系材料、織布、不織布、金属綿、木材等を積層することも可能である。
金属系材料としては、アルミニウム、鉄、銅、ニッケル、金、銀、チタン、モリブデン、マグネシウム、マンガン、鉛、錫、クロム、ベリリウム、タングステン、コバルト等の金属や金属化合物及びこれら2種類以上からなるステンレス鋼等の合金鋼、アルミニウム合金、黄銅、青銅等の銅合金、ニッケル合金等の合金類等が挙げられる。
特に、ガスバリアや水蒸気バリア性を向上させるために、金属及び/又は金属化合物を蒸着することも可能である。
蒸着する材料としては、Siや、Al、Ti、Zn、Zr、Mg、Sn、Cu、Fe等の金属や、これらの酸化物、窒化物、フッ素物、硫化物等が挙げられる。具体的には、SiOx(x=1.0〜2.0)、アルミナ、マグネシア、硫化亜鉛、チタニア、ジルコニア、酸化セリウム等の無機酸化物や、HMDSO(ヘキサメチルジシロキサン)等の有機化合物、シランガスのような無機ガスをキャリアガス及び酸化させるための酸素と混合後、反応により得られる酸化ケイ素等が挙げられる。蒸着簿膜の作製方法としては、公知の方法、物理的堆積法(PVD法)として真空蒸着法、EB蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、化学的堆積法(CVD)法としてプラズマCVD法や化学反応法等を用いることができる。
ポリアミドフィルムの厚みは用途により適宜決定すればよく、特に制限されないが、ポリアミドフィルムの厚さは、厚ければポリアミドフィルムの強度は向上するが、透明性や耐屈曲疲労性は低下するので、これらを勘案すれば、ポリアミド単層フィルムの場合、5〜100μmであることが好ましく、10〜80μmであることがより好ましく、10〜60μmであることがさらに好ましい。
また、積層フィルムの場合、該原料ポリアミド樹脂組成物層の厚みとして、同様の観点から、2〜100μmであることが好ましく、3〜80μmであることがより好ましく、5〜60μmであることがさらに好ましい。
本発明のポリアミドフィルムは、ポリアミド樹脂本来有する諸特性を維持し、透明性、滑り性、印刷性及びレトルト殺菌処理後の強度低下が小さく、かつ層間剥離(デラミ)を惹起することがなく耐熱水性に優れ、さらに延伸時の破断が少なく、連続生産性が良好である。
特に、オルガノポリシロキサンにより表面処理された無機フィラー粒子と特定構造を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤とビスアミド化合物の種類とポリアミド系樹脂への配合濃度を適切に設定することにより、フィルムの透明性、印刷性を維持しつつ、滑り性やレトルト殺菌処理後の強度低下が小さく、層間剥離(デラミ)を惹起することがなく耐熱水性が優れ、延伸時の破断といった製膜操業時のトラブルを最小限に抑え、長時間安定して生産することが可能となる。
以下において実施例及び比較例を掲げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明の要旨を越えない限り以下の例に限定されるものではない。フィルムの各種評価方法と使用した材料を次に示す。
[ヘイズ値](透明性)
ASTMD−1003に準じ、直読ヘイズコンピューター(スガ試験機(株)製、HGM−2DP)を使用して、ヘイズ値を測定した。ヘイズ値が3.0%以下の場合、フィルムの透明性に優れていると判断した。
[動摩擦係数](滑り性)
ASTMD−1894に準じ、23℃、50%RHにおいて、フィルム表面同士の動摩擦係数をそれぞれ測定した。測定は5回行い、その平均値を求めた。動摩擦係数が0.4以下の場合、フィルムの滑り性に優れていると判断した。
[濡れ指数](印刷性)
ポリアミド二軸延伸フィルムの片面をコロナ処理し、このコロナ処理面の濡れ指数をJIS K−6768に準拠して測定した(未処理)。
また、得られたポリアミド二軸延伸フィルムを40℃、120日間熱処理を行なった。
処理後、フィルムを取り出し、コロナ処理面の濡れ指数を上記の方法にて測定した(熱処理後)。
濡れ指数が、36mN/m以上の場合、印刷性に優れていると判断した。
[延伸破断回数](延伸性、連続生産性)
該原料樹脂組成物を使用して、円形ダイを備えた40mmφの押出機において、押出温度260℃にて溶融させ、20℃の水により冷却しながら、引き取りを行い、未延伸フィルムを連続して製造した。
引き続き、気体の圧力でインフレーション式に縦横同時に延伸するチューブチューブラー延伸法にて、延伸温度180℃、延伸倍率(縦、横ともに)3.0倍にて延伸を行った。
24時間運転を継続し、延伸工程における破断回数を記録した。
24時間以内の破断回数が3回以下の場合、連続生産性(延伸性)に優れていると判断した。
[耐熱水性]
(1)引張強度保持率
ポリアミド二軸延伸フィルム(縦300mm、横400mm)を金属製の枠に固定した後、レトルト食品用オートクレーブ(トミー精工(株)製、SR−240)に入れ、135℃の条件で30分間処理した。レトルト処理前後のフィルムの引張伸度を、ASTM D−882に準じ、万能試験機(オリエンテック社製、テンシロンUTM III−200)にて測定した。
レトルト処理前後でのフィルムの引張強度の保持率を以下の式にて算出した。
引張強度保持率
=[(レトルト処理後引張強度)/(レトルト処理前引張強度)]×100 (%)
引張強度の保持率の値が高いほどレトルト処理による影響が小さく、耐熱水性に優れていると判断した。
(2)デラミ有無(耐層間剥離性)
ポリアミド二軸延伸フィルムの片面をコロナ処理し、このコロナ処理面にイソシアネート 系のアンカーコート剤(武田薬品(株)製、タケラックA−310)を用いて、ポリプロピレン未延伸フィルム(東洋紡(株)製、P1146)をドライラミネートして、積層フィルムを得た。
次に、この積層フィルムを、40℃、3日間のエージング後、上記の「耐熱水性」試験の方法に従ってレトルト処理を行い、レトルト処理後のポリプロピレン未延伸フィルムとポリアミド二軸延伸フィルムとの層間剥離(デラミ)の有無を目視観察した。
デラミの有無を目視観察によって判定した。
[使用した材料]
(成分A)
オルガノポリシロキサンにより表面処理された無機フィラー粒子
(A−1)オルガノポリシロキサンにより表面処理されたシリカ(水澤化学工業(株)製、ミズカシルPM−363DS、比表面積300m、平均粒径4.0μm、オルガノポリシロキサン処理量:シリカに対して10質量%)
(A−2)オルガノポリシロキサンにより表面処理されたシリカ(水澤化学工業(株)製、ミズカシルC−102DS、比表面積20m、平均粒径3.0μm、オルガノポリシロキサン処理量:シリカに対して5質量%)
尚、シリカにおける前記比表面積、及び平均粒径は、それぞれ以下の方法によって測定した。
[比表面積]
JIS K−1150に準拠し、窒素の吸着量からBET法で測定した。
[平均粒径]
コールターカウンター法にて、粒度分布測定装置(ベックマン・コールター社製、Multisizer4)により体積平均粒径を測定した。
(成分B)ヒンダードフェノール系酸化防止剤
(B−1)N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマイド)(チバスペシャリティケミカル社製、IRGANOX1098)
(B−2)ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート] (チバスペシャリティケミカル社製、IRGANOX1010)
(B−3)3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルフォスフォネート−ジエチルエステル (チバスペシャリティケミカル社製、IRGANOX1222)
(B−4)1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジル)ベンゼン (チバスペシャリティケミカル社製、IRGANOX1330)
(成分C)ビスアミド化合物
(C−1)N,N’−エチレンビスステアリン酸アミド(日本化成(株)製、スリパックスE)
(C−2)N,N’−エチレンビスベヘン酸アミド(日本化成(株)製、スリパックスB)
(成分D)比表面積が200m/g以下である無機フィラー粒子
(D−1)シリカ(水澤化学工業(株)製、ミズカシルC−002、平均粒径:2.0μm、比表面積43m/g)
(D−2)ゼオライト(水澤化学工業(株)製、シルトンAMT−25、平均粒径約2.5μm、比表面積3m/g)
(D−3)シリカ(水澤化学工業(株)製、ミズカシルP−707、平均粒径:2.2μm、比表面積300m/g)
(D−4)シリカ(水澤化学工業(株)製、ミズカシルC−402、平均粒径:2.2μm、比表面積300m/g)
実施例1
内容積70リットルの攪拌機付き耐圧力反応容器に
カプロラクタム10kg、
水1kg、
オルガノポリシロキサンにより表面処理されたシリカ(A−1)15.0g
を入れ、100℃に加熱し、この温度で反応系内が均一な状態になるように攪拌した。
引き続き、さらに温度を260℃まで昇温させ、2.0MPaの圧力下で1時間攪拌した。
その後、放圧して水分を反応容器から揮散させながら常圧下、260℃で2時間重合反応を行い、さらに260℃、53kPaの減圧下で2時間重合反応させた。反応終了後、反応容器の下部ノズルからストランド状に取り出した反応物を水槽に導入して冷却し、カッティングして、シリカが均一に分散したポリアミド樹脂ペレットを得た。
そこで、このペレットを熱水中に浸漬し、未反応モノマーを抽出して除去した後、減圧乾燥した。得られたポリアミド樹脂の相対粘度は3.4であった。
次に、円筒型混合機を用いて、該ポリアミド樹脂組成物に対して、表1に示す量の(B−1)と(C−1)を配合し、同組成物を使用して、円形ダイを備えた40mmφ一軸フルフライトスクリューの押出機にて、押出温度260℃にて溶融させ、20℃の水により冷却しながら、引き取りを行い、実質的に無定形で配向していないチューブチューブラー状のポリアミド未延伸フィルムを得た。引き続き、気体の圧力でインフレーション式に縦横同時に延伸するチューブチューブラー延伸法にて、延伸温度180℃、延伸倍率(縦、横ともに)3.0倍にて延伸を行った。
その後、チューブ状フィルムの端を切り開き、フラット状のフィルムをテンター内に導入し、幅方向に緩和処理を行ないつつ、210℃にて熱固定処理を行なった。
フィルム両端をクリップから解放し、耳部をトリミングして巻き取り、厚み15μmの二軸延伸ポリアミドフィルムを得た。
実施例2〜3
実施例1において、(A−1)の配合量を表1に示す量に変更した以外は、実施例1と同様の方法にて二軸延伸ポリアミドフィルムを得た。
実施例4
実施例1において、(A−1)を(A−2)に変更した以外は、実施例1と同様の方法にて二軸延伸ポリアミドフィルムを得た。
実施例5〜6
実施例1において、(B−1)の配合量を表1に示す量に変更した以外は、実施例1と同様の方法にて二軸延伸ポリアミドフィルムを得た。
実施例7
実施例1において、(B−1)を(B−2)に変更した以外は、実施例1と同様の方法にて二軸延伸ポリアミドフィルムを得た。
実施例8
実施例1において、(C−1)の配合量を表1に示す量に変更した以外は、実施例1と同様の方法にて二軸延伸ポリアミドフィルムを得た。
実施例9
実施例8において、(C−1)を(C−2)に変更した以外は、実施例8と同様の方法にて二軸延伸ポリアミドフィルムを得た。
実施例10
実施例1において、(A−1)とともに、(D−1)を表1に示す割合にて配合した以外は、実施例1と同様の方法にて二軸延伸ポリアミドフィルムを得た。
実施例11
実施例10において、(D−1)を(D−2)に変更した以外は、実施例10と同様の方法にて二軸延伸ポリアミドフィルムを得た。
比較例1
実施例1において、(A−1)を使用しない以外は、実施例1と同様の方法にて二軸延伸ポリアミドフィルムを得た。
比較例2〜3
実施例1において、(A−1)の配合量を表1に示す量に変更した以外は、実施例1と同様の方法にて二軸延伸ポリアミドフィルムを得た。
比較例4
実施例1において、(A−1)を(D−3)に変更した以外は、実施例1と同様の方法にて二軸延伸ポリアミドフィルムを得た。
比較例5
実施例1において、(A−1)を(D−4)に変更した以外は、実施例1と同様の方法にて二軸延伸ポリアミドフィルムを得た。
比較例6
実施例1において、(B−1)を使用しない以外は、実施例1と同様の方法にて二軸延伸ポリアミドフィルムを得た。
比較例7〜8
実施例1において、(B−1)の配合量を表1に示す量に変更した以外は、実施例1と同様の方法にて二軸延伸ポリアミドフィルムを得た。
比較例9
実施例1において、(B−1)を(B−3)に変更した以外は、実施例1と同様の方法にて二軸延伸ポリアミドフィルムを得た。
比較例10
実施例1において、(B−1)を(B−4)に変更した以外は、実施例1と同様の方法にて二軸延伸ポリアミドフィルムを得た。
比較例11
実施例1において、(C−1)を使用しない以外は、実施例1と同様の方法にて二軸延伸ポリアミドフィルムを得た。
比較例12〜13
実施例1において、(C−1)の配合量を表1に示す量に変更した以外は、実施例1と同様の方法にて二軸延伸ポリアミドフィルムを得た。
実施例1〜10及び比較例1〜13について、得られた二軸延伸ポリアミドフィルムの物性測定結果と、上記の方法にて連続生産性について調査した結果を表1に示す。
Figure 2011225872
表1から明らかなように、成分Aを使用しない比較例1は滑り性に劣り、また、成分Aの配合量が規定範囲未満である比較例2は、滑り性に劣り、成分Aの配合量が規定範囲を超える比較例3は、フィルムの透明性が悪く、延伸破断回数が多く、連続生産性にも劣っていた。
本発明に規定以外の無機フィラー粒子を使用した比較例4、5は、フィルムの透明性が悪く、延伸破断回数が多く、連続生産性にも劣っていた。成分Bを使用しない比較例6は、機械的強度の保持率が低く、耐熱水性に劣っていた。
また、成分Bの配合量が規定範囲未満である比較例7は、機械的強度の保持率が低く、耐熱水性に劣り、成分Bの配合量が規定範囲を超える比較例8は、印刷性に劣り、デラミ現象が観察され耐熱水性に劣っていた。本発明に規定以外の成分Bを使用した比較例9、10は機械的強度の保持率が低く、耐熱水性に劣っていた。
成分Cを使用しない比較例11は、透明性に劣っていた。
また、成分Cの配合量が規定範囲未満である比較例12は、透明性に劣り、成分Cの配合量が規定範囲を超える比較例13は、印刷性に劣り、デラミ現象が観察され耐熱水性に劣っていた。
一方、本発明に規定されているポリアミド樹脂組成物より得られる実施例1から11のフィルムは、透明性、滑り性、印刷性及びレトルト殺菌処理後の強度低下が小さく、層間剥離(デラミ)を惹起することがなく耐熱水性に優れ、さらにフィルム製膜時の延伸破断回数が少なく、長時間の連続生産性に優れていることは明らかである。

Claims (12)

  1. ポリアミド樹脂、オルガノポリシロキサンにより表面処理された無機フィラー粒子(成分A)、
    ヒンダードフェノール系酸化防止剤(成分B)及び
    ビスアミド化合物(成分C)を含有するフィルム用ポリアミド樹脂組成物であって、
    前記成分Bは、下記一般式(1)
    Figure 2011225872

    [式中、R11、R12はそれぞれ独立に水素原子又は炭素原子数1〜10のアルキル基を示し、Xは2価の有機残基、Yはn価の基又は結合を表し、m及びnはそれぞれ独立に1〜4の整数を示す。]で表され、
    前記ポリアミド樹脂100質量部に対し、
    前記成分Aが0.01〜0.5質量部、
    前記成分Bが0.03〜0.3質量部、
    前記成分Cが0.01〜0.1質量部であることを特徴とするフィルム用ポリアミド樹脂組成物。
  2. 前記成分Bの一般式中のR11がメチル基又はt−ブチル基であり、R12がt−ブチル基であり、かつ、m=2である請求項1に記載のフィルム用ポリアミド樹脂組成物。
  3. 前記成分Bの一般式中のXが、炭素原子数1〜24の炭化水素基であり、炭化水素基は、ヘテロ原子及び/又は環状基を含んでいてもよく、Yが、炭素原子数1〜10の炭化水素基、炭素原子、硫黄原子又は単結合であり、炭化水素基は、ヘテロ原子を含んでいてもよい、請求項1又は2に記載のフィルム用ポリアミド樹脂組成物。
  4. 前記成分Aが、シリカ100質量部に対して、オルガノポリシロキサン0.5〜15質量部にて表面処理されたシリカである請求項1〜3のいずれかに記載のフィルム用ポリアミド樹脂組成物。
  5. 前記成分Bが、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]及び/又はN,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマイド)である請求項1〜4のいずれかに記載のフィルム用ポリアミド樹脂組成物。
  6. 前記ポリアミド樹脂100質量部に対して、さらに、(D)前記成分A以外の無機フィラー粒子であって、比表面積が200m/g以下である無機フィラー粒子を0.01〜0.2質量部含有する請求項1〜5のいずれかに記載のフィルム用ポリアミド樹脂組成物。
  7. 前記(D)無機フィラー粒子が、シリカ、カオリン、及びゼオライトからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1〜6のいずれかに記載のフィルム用ポリアミド樹脂組成物。
  8. ポリアミド樹脂が、カプロラクタムから誘導される単位、ヘキサメチレンアジパミドから誘導される単位、及びドデカンラクタムから誘導される単位からなる群より選ばれる少なくとも1種から構成される単独重合体又は共重合体である請求項1〜7のいずれかに記載のフィルム用ポリアミド樹脂組成物。
  9. ポリアミド樹脂が、ポリアミド6、ポリアミド6/66、ポリアミド6/12、及びポリアミド6/66/12からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項8に記載のフィルム用ポリアミド樹脂組成物。
  10. 請求項1〜9のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物からなるポリアミドフィルム。
  11. 二軸延伸ポリアミドフィルムである請求項10に記載のポリアミドフィルム。
  12. 食品包装用ポリアミドフィルムである請求項10又は11に記載のポリアミドフィルム。
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