JP2011224505A - メタクリル酸製造用触媒およびその製造方法、ならびにメタクリル酸の製造方法 - Google Patents
メタクリル酸製造用触媒およびその製造方法、ならびにメタクリル酸の製造方法 Download PDFInfo
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Abstract
【解決手段】リン元素、モリブデン元素、X元素(ヒ素、ビスマス、テルル、ゲルマニウム、セレン、ケイ素、タングステンおよびホウ素からなる群より選ばれた少なくとも1種類の元素)およびアルカリ金属元素を含む触媒を製造するにあたり、水中に少なくともモリブデン原料およびリン原料を添加して、ヘテロポリ酸を含む水性スラリーまたは水溶液を調製し、その水性スラリーまたは水溶液にアルカリ金属化合物を添加して、ヘテロポリ酸の少なくとも一部がアルカリ金属塩になったヘテロポリ酸塩を析出させた後、X元素の原料を添加する。そして、この間の水性スラリーまたは水溶液のpHを3以下になるようにする。
【選択図】なし
Description
(a)触媒原料を溶解混合した溶液のpHをケギン型ヘテロポリ酸が安定に存在できる強酸性に保ち、85℃以上に加熱することによりケギン型ヘテロポリ酸を完成させ、次いで溶液を80℃以下に冷却した後にアルカリイオンおよびアンモニウムイオン等を添加する(特許文献1、2)。
(b)触媒成分を含む混合溶液の乾燥の際に乾燥物の粒子径を制御し、水や低級アルコールを添加して湿式成形を行う(特許文献3)。
(c)有効成分としてアンチモン、銅、コバルト、ビスマス、ヒ素を含み、pH4以下で調製を行う(特許文献4)。
(d)有効成分としてアンチモンを含み、アンチモン化合物以外の必須活性成分を添加した後、アンチモン化合物を混合する(特許文献5)。
(i)水中に少なくともモリブデン原料およびリン原料を添加して、ヘテロポリ酸を含む水性スラリーまたは水溶液を調製する工程と、
(ii)前記水性スラリーまたは水溶液にアルカリ金属化合物を添加して、前記ヘテロポリ酸の少なくとも一部がアルカリ金属塩になったヘテロポリ酸塩を析出させる工程と、
(iii)前記ヘテロポリ酸塩が析出している水性スラリーに、X元素の原料を添加する工程と、
(iv)全ての触媒原料を含む水性スラリーまたは水溶液を乾燥して、乾燥物を得る工程と、
(v)前記乾燥物を熱処理する工程と
を有し、前記工程(i)〜(iii)における水性スラリーまたは水溶液のpHが3以下であることを特徴とするメタクリル酸製造用触媒の製造方法である。
本発明は、リン元素、モリブデン元素、X元素(ヒ素、ビスマス、テルル、ゲルマニウム、セレン、ケイ素、タングステンおよびホウ素からなる群より選ばれた少なくとも1種類の元素)およびアルカリ金属元素を含む触媒であり、下記式(1)で表される組成を有することが好ましい。
式中、Mo、P、V、CuおよびOはそれぞれモリブデン、リン、バナジウム、銅および酸素を示す元素記号である。Xはヒ素、ビスマス、テルル、ゲルマニウム、セレン、ケイ素、タングステンおよびホウ素からなる群より選ばれた少なくとも1種類の元素を示し、Yはジルコニウム、銀、鉄、亜鉛、クロム、マグネシウム、コバルト、マンガン、バリウム、セリウムおよびランタンからなる群より選ばれた少なくとも1種類の元素を示し、Zはカリウム、ルビジウムおよびセシウムからなる群より選ばれた少なくとも1種類の元素を示す。a、b、c、d、e、f、gおよびhは各元素の原子比率を表し、a=12のとき、b=0.5〜3、c=0.01〜3、d=0.01〜2、e=0.1〜3、f=0〜3、g=0.01〜3であり、hは前記各元素の原子価を満足するのに必要な酸素の原子比率である。
・工程(i):水中に少なくともモリブデン原料およびリン原料を添加して、ヘテロポリ酸を含む水性スラリーまたは水溶液を調製する(調製工程)。
・工程(ii):前記水性スラリーまたは水溶液にアルカリ金属化合物を添加して、前記ヘテロポリ酸の少なくとも一部がアルカリ金属塩になったヘテロポリ酸塩を析出させる(析出工程)。
・工程(iii):前記ヘテロポリ酸塩が析出している水性スラリーに、X元素の原料を添加する(X元素添加工程)。
・工程(iv):全ての触媒原料を含む水性スラリーまたは水溶液を乾燥して、乾燥物を得る(乾燥工程)。
・工程(v):前記乾燥物を熱処理する(熱処理工程)。
この工程では、水中に少なくともモリブデン原料およびリン原料を添加して、ヘテロポリ酸を含む水性スラリーまたは水溶液を調製する。すなわち、調製工程では、X元素の原料を添加しない。
この工程では、調製工程で得られた水性スラリーまたは水溶液にアルカリ金属化合物を添加して、ヘテロポリ酸の少なくとも一部がアルカリ金属塩になったヘテロポリ酸塩を析出させる。アルカリ金属化合物を添加する前に、水性スラリーまたは水溶液を冷却することが好ましい。冷却温度は20〜80℃が好ましく、20〜60℃がより好ましい。
この工程では、ヘテロポリ酸塩が析出している水性スラリーに、X元素の原料を添加する。X元素の原料の添加量は、目的とする触媒の組成に応じて適宜決定すればよい。
この工程では、全ての原料を含む水性スラリーを加熱して乾燥することで、乾燥物を得ることができる。乾燥方法は特に限定されず、例えば、スプレー乾燥法、ドラム乾燥法、蒸発乾固法、気流乾燥法等の公知の方法が挙げられる。乾燥と同時に粒子が得られること、得られる粒子の形状が整った球形であることから、スプレー乾燥法を用いることが好ましい。乾燥条件は乾燥方法により異なるが、スプレー乾燥法を用いる場合、乾燥機入口温度は200〜400℃、好ましくは220〜370℃の温度範囲である。
得られた乾燥物をそのまま熱処理してもよいが、その乾燥物を成形し、得られた成形品を熱処理してもよい。また、乾燥物を後述する熱処理工程で熱処理したものを成形してもよい。成形方法としては、押出成形、打錠成型、担持成形、転動造粒等の公知の方法が挙げられる。乾燥粒子の崩壊が少なく、反応に有効な細孔が得やすいことから、押出成形法を用いることが好ましい。成形品の形状としては特に制限はなく、球状、リング状、円柱状、星型状等の任意の形状が挙げられる。
この工程では、乾燥物または乾燥物の成形品を熱処理することで、触媒を得ることができる。熱処理条件としては、特に限定はなく、公知の熱処理条件を適用できる。熱処理は、通常、空気等の酸素含有ガス流通下および/または不活性ガス流通下で、200〜500℃、好ましくは300〜450℃で、0.5時間以上、好ましくは1〜40時間で行う。
本発明のメタクリル酸の製造方法は、上記本発明のメタクリル酸製造用触媒を用いて、メタクロレインを分子状酸素により気相接触酸化してメタクリル酸を製造することを特徴とする。
メタクロレインの反応率(%)=(B/A)×100、
メタクリル酸の選択率(%)=(C/B)×100、
メタクリル酸の収率(%)=(C/A)×100。
式中、Aは供給したメタクロレインのモル数、Bは反応したメタクロレインのモル数、Cは生成したメタクリル酸のモル数である。
[調製工程]
純水400部に、三酸化モリブデン100部、メタバナジン酸アンモニウム3.1部、85質量%リン酸水溶液7.3部および硝酸銅1.5部を溶解し、これを攪拌しながら95℃に昇温し、液温を95℃に保ちつつ3時間攪拌した。このとき得られた水性スラリーのpHは0.86であった。
続いて、この混合液を50℃まで冷却し、回転翼攪拌機を用いて攪拌しながら、純水20部に溶解した重炭酸セシウム12.4部および純水20部に溶解した硝酸アンモニウム11.6部を滴下して、ヘテロポリ酸塩を析出させた。このとき得られた水性スラリーのpHは0.98であった。
この混合液を15分間攪拌した後、60質量%ヒ酸水溶液8.9部を滴下し、さらに15分間攪拌した。このとき得られた水性スラリーのpHは0.88であった。
この混合液を、乾燥機入口温度270℃、噴霧用回転円盤16000回転/分の条件で、並流式スプレー乾燥機を用いて乾燥した。
得られた触媒乾燥粒子100部に対してエチルアルコール45部を添加混合し、押し出し成形機により外径6mm、内径3mm、平均長さ4mmのリング状に成形した。得られた成形品の酸素以外の元素組成(以下同じ)は、次の通りであった。
[熱処理工程]
続いて、この成形品を60℃で16時間乾燥し、次いで空気流通下に380℃で12時間熱処理した。得られた触媒の元素組成は、次の通りであった。
<メタクリル酸の製造>
この触媒を反応管に充填し、メタクロレイン5容量%、酸素10容量%、水蒸気30容量%、窒素55容量%の原料ガスを反応温度290℃、接触時間3.6秒で通じた。生成物を捕集し、ガスクロマトグラフィーで分析してメタクロレインの反応率、メタクリル酸の選択率、およびメタクリル酸の収率を求めた。結果を表1に示す。
純水400部に、三酸化モリブデン100部、メタバナジン酸アンモニウム3.1部、85質量%リン酸水溶液7.3部、60質量%ヒ酸水溶液8.9部および硝酸銅1.5部を溶解し、これを攪拌しながら95℃に昇温し、液温を95℃に保ちつつ3時間攪拌した。このとき得られた混合液のpHは0.91であった。続いて、この混合液を50℃まで冷却後、回転翼攪拌機を用いて攪拌しながら、純水20部に溶解した重炭酸セシウム12.4部および純水20部に溶解した硝酸アンモニウム11.6部を滴下して、ヘテロポリ酸塩を析出させ、さらに15分間攪拌した。このとき得られた混合液のpHは1.05であった。
続いて、この成形品を用いた以外は、実施例1と同様にして熱処理を行った。得られた触媒の元素組成は、次の通りであった。
この触媒を用いた以外は、実施例1と同様にしてメタクリル酸の製造を行い、メタクロレインの反応率、メタクリル酸の選択率、およびメタクリル酸の収率を求めた。結果を表1に示す。
[調製工程]
純水200部に、三酸化モリブデン100部、メタバナジン酸アンモニウム3.1部、85%質量リン酸水溶液7.3部および硝酸銅1.5部を溶解し、これを攪拌しながら95℃に昇温し、液温を95℃に保ちつつ3時間攪拌した。このとき得られた混合液のpHは1.09であった。
続いて、この混合液を50℃まで冷却し、回転翼攪拌機を用いて攪拌しながら、純水20部に溶解した硝酸セシウム12.4部および28質量%アンモニア水18.0部を滴下して、ヘテロポリ酸塩を析出させた。このとき得られた混合液のpHは2.48であった。
この混合液を15分間攪拌した後、60質量%ヒ酸水溶液8.9部を滴下し、さらに15分間攪拌した。このとき得られた混合液のpHは2.50であった。
続いて、この成形品を用いた以外は、実施例1と同様にして熱処理を行った。得られた触媒の元素組成は、次の通りであった。
この触媒を用いた以外は、実施例1と同様にしてメタクリル酸の製造を行い、メタクロレインの反応率、メタクリル酸の選択率、およびメタクリル酸の収率を求めた。結果を表1に示す。
純水200部に、三酸化モリブデン100部、メタバナジン酸アンモニウム3.1部、85%質量リン酸水溶液7.3部、60質量%ヒ酸水溶液8.9部および硝酸銅1.5部を溶解し、これを攪拌しながら95℃に昇温し、液温を95℃に保ちつつ3時間攪拌した。このとき得られた混合液のpHは1.15であった。続いて、この混合液を50℃まで冷却し、回転翼攪拌機を用いて攪拌しながら、純水20部に溶解した硝酸セシウム12.4部および28質量%アンモニア水18.0部を滴下して、ヘテロポリ酸塩を析出させ、さらに15分間攪拌した。このとき得られた混合液のpHは2.55であった。
続いて、この成形品を用いた以外は、実施例1と同様にして熱処理を行った。得られた触媒の元素組成は、次の通りであった。
この触媒を用いた以外は、実施例1と同様にしてメタクリル酸の製造を行い、メタクロレインの反応率、メタクリル酸の選択率、およびメタクリル酸の収率を求めた。結果を表1に示す。
28質量%アンモニア水の量を18.0部から19.0部に変更した以外は、実施例2と同様にして混合液を調製した。ヘテロポリ酸塩を析出させたときの混合液のpHは3.69であり、最終的に得られた混合液のpHは3.70であった。
続いて、この成形品を用いた以外は、実施例1と同様にして熱処理を行った。得られた触媒の元素組成は、次の通りであった。
この触媒を用いた以外は、実施例1と同様にしてメタクリル酸の製造を行い、メタクロレインの反応率、メタクリル酸の選択率、およびメタクリル酸の収率を求めた。結果を表1に示す。
28質量%アンモニア水の量を18.0部から19.0部に変更した以外は、比較例2と同様にして混合液を調製した。最終的に得られた混合液のpHは3.72であった。
続いて、この成形品を用いた以外は、実施例1と同様にして熱処理を行った。得られた触媒の元素組成は、次の通りであった。
この触媒を用いた以外は、実施例1と同様にしてメタクリル酸の製造を行い、メタクロレインの反応率、メタクリル酸の選択率、およびメタクリル酸の収率を求めた。結果を表1に示す。
60質量%ヒ酸水溶液8.9部を酸化ビスマス8.1部に変更した以外は、実施例1と同様にして混合液を調製した。最終的に得られた混合液のpHは1.14であった。
続いて、この成形品を用いた以外は、実施例1と同様にして熱処理を行った。得られた触媒の元素組成は、次の通りであった。
この触媒を用いた以外は、実施例1と同様にしてメタクリル酸の製造を行い、メタクロレインの反応率、メタクリル酸の選択率、およびメタクリル酸の収率を求めた。結果を表1に示す。
60質量%ヒ酸水溶液8.9部を酸化ビスマス8.1部に変更した以外は、比較例1と同様にして混合液を調製した。最終的に得られた混合液のpHは1.22であった。
続いて、この成形品を用いた以外は、実施例1と同様にして熱処理を行った。得られた触媒の元素組成は、次の通りであった。
この触媒を用いた以外は、実施例1と同様にしてメタクリル酸の製造を行い、メタクロレインの反応率、メタクリル酸の選択率、およびメタクリル酸の収率を求めた。結果を表1に示す。
60質量%ヒ酸水溶液8.9部をテルル酸5.3部に変更した以外は、実施例1と同様にして混合液を調製した。最終的に得られた混合液のpHは1.01であった。
続いて、この成形品を用いた以外は、実施例1と同様にして熱処理を行った。得られた触媒の元素組成は、次の通りであった。
この触媒を用いた以外は、実施例1と同様にしてメタクリル酸の製造を行い、メタクロレインの反応率、メタクリル酸の選択率、およびメタクリル酸の収率を求めた。結果を表1に示す。
60質量%ヒ酸水溶液8.9部をテルル酸5.3部に変更した以外は、比較例1と同様にして混合液を調製した。最終的に得られた混合液のpHは1.12であった。
続いて、この成形品を用いた以外は、実施例1と同様にして熱処理を行った。得られた触媒の元素組成は、次の通りであった。
この触媒を用いた以外は、実施例1と同様にしてメタクリル酸の製造を行い、メタクロレインの反応率、メタクリル酸の選択率、およびメタクリル酸の収率を求めた。結果を表1に示す。
60質量%ヒ酸水溶液8.9部を三酸化アンチモン3.4部に変更した以外は、実施例1と同様にして混合液を調製した。最終的に得られた混合液のpHは0.99であった。
続いて、この成形品を用いた以外は、実施例1と同様にして熱処理を行った。得られた触媒の元素組成は、次の通りであった。
この触媒を用いた以外は、実施例1と同様にしてメタクリル酸の製造を行い、メタクロレインの反応率、メタクリル酸の選択率、およびメタクリル酸の収率を求めた。結果を表1に示す。
Claims (3)
- メタクロレインを分子状酸素により気相接触酸化してメタクリル酸を製造する際に用いられる、リン元素、モリブデン元素、X元素(ヒ素、ビスマス、テルル、ゲルマニウム、セレン、ケイ素、タングステンおよびホウ素からなる群より選ばれた少なくとも1種類の元素)およびアルカリ金属元素を含む触媒の製造方法であって、
(i)水中に少なくともモリブデン原料およびリン原料を添加して、ヘテロポリ酸を含む水性スラリーまたは水溶液を調製する工程と、
(ii)前記水性スラリーまたは水溶液にアルカリ金属化合物を添加して、前記ヘテロポリ酸の少なくとも一部がアルカリ金属塩になったヘテロポリ酸塩を析出させる工程と、
(iii)前記ヘテロポリ酸塩が析出している水性スラリーに、X元素の原料を添加する工程と、
(iv)全ての触媒原料を含む水性スラリーまたは水溶液を乾燥して、乾燥物を得る工程と、
(v)前記乾燥物を熱処理する工程と
を有し、前記工程(i)〜(iii)における水性スラリーまたは水溶液のpHが3以下であるメタクリル酸製造用触媒の製造方法。 - 請求項1に記載のメタクリル酸製造用触媒の製造方法で製造されたメタクリル酸製造用触媒。
- 請求項1に記載のメタクリル酸製造用触媒の製造方法で製造されたメタクリル酸製造用触媒を用いて、メタクロレインを分子状酸素により気相接触酸化するメタクリル酸の製造方法。
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