JP2011222473A - リチウムイオン電池用電解液 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明のリチウムイオン電池用電解液は、有機溶媒にリチウム塩が溶解しているリチウムイオン電池用電解液であって、前記有機溶媒には、両末端にニトリル基が結合したジニトリル化合物が含まれており、前記リチウム塩としてLiBF4、LiTFSI、LiBETI、LiPF6及びLiBOBの少なくとも一種を含むことを特徴とする。
【選択図】図3
Description
こうであれば、ジニトリル化合物が電位窓を広げる効果を奏すると共に、粘度が低くなり、比伝導度も大きくなる。この場合、広い電位窓を有しない環状カーボネイト、環状エステル及び鎖状カーボネイトのうち少なくとも一つを含んでいるにもかかわらず、広い電位窓を有する理由については、必ずしも明確ではないが、次のように考えられる。すなわち、本発明のリチウムイオン電池用電解液に用いられる有機溶媒のうち、鎖式飽和炭化水素ジニトリル化合物は、電位窓を広げる役割を果たす。また、鎖状カーボネイトは粘度を下げるため、比伝導度を大きくする役割を果たすと推測される。そして、環状カーボネイトや環状エステルは、多くのリチウム塩を溶解する上、カーボン負極上にSEIといわれる保護皮膜を形成することで、耐還元性を向上させつつ、Liイオンを通過させることができる特性を付与することができる。そのため、負側および正側の電位窓拡大に効果を発揮することが可能となると考えられる。
また、環状カーボネイト、環状エステル及び鎖状カーボネイトに含まれる水素の一部をフッ素で置換した化合物についても用いることができるのは、これらフッ素を含む化合物はフッ素が導入されていない化合物に比べて化学的な安定性を増すので、充電時の正極において高い電位に曝されても、安定に存在することができるからである。
環状カーボネイト、環状エステル及び鎖状カーボネイトに含まれる水素の一部をフッ素で置換した化合物としては、例えば、フルオロエチレンカーボネート,ジフルオロエチレンカーボネート,フルオロプロピレンカーボネート,ジフルオロプロピレンカーボネート,トリフルオロプロピレンカーボネート,フルオロγ−ブチロラクトン,ジフルオロγ−ブチロラクトン等が挙げられる。
また、炭素数が10以上のジニトリル化合物を溶媒に含む場合には、有機溶媒に対するジニトリル化合物の割合は10容量%以上80容量%以下であることが望ましい。一方、炭素数が10未満の場合、ニトリル濃度は30容量%以上70容量%未満であることが好ましい。
鎖式飽和炭化水素ジニトリル化合物としては、例えば、スクシノニトリルNC(CH2)2CN、グルタロニトリルNC(CH2)3CN、アジポニトリルNC(CH2)4CN、ピメロニトリルNC(CH2)5CN、スベロニトリルNC(CH2)6CN、アゼラニトリルNC(CH2)7CN、セバコニトリルNC(CH2)8CN、ドデカンジニトリルNC(CH2)10CNなどのような直鎖状のジニトリル化合物の他、2−メチルグルタロニトリルNCCH(CH3)CH2CH2CN等のように分枝を有していても良い。これらの鎖式飽和炭化水素ジニトリル化合物は、炭素数は特に限定されないが、7〜20であることが好ましい。更に好ましくは10〜12である。
また、ジシアノエーテル化合物としては例えばオキシジプロピオニトリル等が挙げられる。
また、環状カーボネイト、環状エステル及び鎖状カーボネイトに含まれる水素の一部をフッ素で置換した化合物としては、例えば、フルオロエチレンカーボネート,ジフルオロエチレンカーボネート,フルオロプロピレンカーボネート,ジフルオロプロピレンカーボネート,トリフルオロプロピレンカーボネート,フルオロγ−ブチロラクトン,ジフルオロγ−ブチロラクトン等が挙げられる。
LBCB : lithium bis[croconato]borate
LBSB : lithium bis[slicylato(2-)]borate
LCSB : lithium [croconato salicylato]borate
LBBB : lithium bis[1,2-benzenediolato(2-)-O,O']borate
LBNB : lithium bis [2,3-naphthalene-diolato(2-)-O,O']borato
LBBpB : lithium bis[2,2-biphenyldiolato(2-)O,O']borato
また、これらの固溶体(ここで固溶体とは、上記オリビンフッ化物系化合物において金属原子が自由な割合で混合された物質を指す。)も挙げることができる。さらに、これらのうちの金属原子を他の金属原子でドープしたものも含まれる。ドーパントとしては酸化還元反応において電気化学的な特性を変化させられるものであれば特に限定されるものではない。例えば、Mg、Al、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb及びMoの1種又はそれ以上を用いることができる。
このような高電位酸化還元正極活物質としては、例えば、Li2CoPO4F,Li2NiPO4F,LiCoPO4,LiNiPO4等が挙げられる。これらの正極活物質はエネルギー密度が高く、容量の大きなリチウムイオン電池とすることができる。例えば、Li2CoPO4Fは正極活物質としてのエネルギー密度がLiCoO2に対して理論値で2倍以上あることが予測されており、十分にポテンシャルを発揮できれば、容量の大きなリチウムイオン電池を作ることができる。また、Li2CoPO4Fが酸化される電位は高い電位領域にまで及ぶため、起電力の大きい電池とすることができる。さらに、Li2CoPO4Fは熱安定性に優れ、400°Cという高温になっても、発熱反応は示さないことが、熱分析結果から分かっており、電池温度の上昇を防ぐことができる。
実施例1では、以下の組成の電解液を調製した。
エチレンカーボネイト(EC)とジメチルカーボネイト(DMC)とセバコニトリル(SB)とを容量比で25:25:50の割合で混合した溶媒を用い、これにリチウム塩としてLiBF4を1mol/Lとなるように溶解させてリチウムイオン電池用電解液とした。
比較例1のリチウムイオン電池用電解液では、リチウム塩をLiPF6(1mol/L)とし、その他については実施例1のリチウムイオン電池用電解液と同様の組成とした。
上記実施例1及び比較例1のリチウムイオン電池用電解液を用い、以下のようにしてリチウムイオン電池を作製し、充放電特性について測定した。
LiFePO4の粉末とグラッシーカーボン粉とポリテトラフルオロエチレン(PTFE)粉とを70:25:5の重量割合で、メノウ乳鉢にて混合し、冷間圧延してシート状の電極を得た。これを径8mmに打ち抜き、正極ペレットとした。
図1に示すように、有底円筒状のSUS316L製の正極缶11と、有底円筒状で扁平状のSUS316L製の負極キャップ12とを用意する。ついで、図2に示すように、正極缶11内に、SUS316L製のスペーサー13、正極ペレット14及びセパレータ15を充填する。一方、負極キャップ12内に、SUS316L製の波座金16、SUS316L製のスペーサー17及びリチウム負極18を充填する。そして、正極缶11内に電解液を入れた後、絶縁ガスケット19を介して負極キャップ12を載置してかしめて密封してリチウムイオン電池とした。
以上のように構成された実施例1及び比較例1のリチウムイオン電池について、充放電を繰り返してその電池特性を測定した。充電は5.5Vの定電圧充電を175mAh/g(活物質量)まで行った。ただし、比較例1では、充電開始時は定電流制御で充電し、極間電圧が5.5Vに達したところからは、5.5Vの定電圧で充電を行った。一方、放電は放電レート0.05Cでカットオフ電圧は2.5Vで放電を停止した。
。その結果、図5に示すように、どちらの充電方法においても放電容量はほぼ一緒であり、電位窓が広いため、6Vにおける高電圧充電でも充分実用に耐え得ることが分かった。
・ニトリル類
スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、ピメロニトリル、スベロニトリル、セバコニトリル、ドデカンジニトリル、2−メチルグルタロニトリル、オキシジプロピオニトリル。
・リチウムイオン電解質
LiBF4、LiTFSI、LiBETI、LiBOB
・正極活物質
LiNi0.5Mn1.5O4、Li2CoPO4F
実施例として、リチウム電解質にLiBF4、LiTFSI、LiBETI又はLiBOBを含み、ジニトリル化合物として両端末にニトリル基を有する炭素数4〜炭素数12の直鎖ジニトリル化合物を含む一連の電解液を調製し、その充放電特性を調べた。また、リチウム電解質にLiPF6を選び、同様にして一連の電解液を調製し、その充放電特性を調べた。以下に、それらの電解液の組成及び充放電特性の測定方法及び結果の詳細を詳述する。
リチウム電解質としてLiBF4を1mol/L含み、ジニトリル化合物として、両端末にニトリル基を有する炭素数4〜炭素数12の直鎖ジニトリル化合物を含む一連の電解液を調製した。そして、実施例1と同様にしてコインセル型リチウムイオン電池を作製し、その充放電特性を調べた。
充放電特性の試験方法は、まず第1工程として充電レート0.5Cの定電流(CC)で充電し、電圧が4Vに達したら、4Vの定電圧(CV)で150mAh/gとなるまで充電した。そして第2工程として、放電レート0.05Cで定電流にて放電し、電圧が2.5Vに到達したとき放電を停止した。さらに第3工程として、5.5Vで10時間保持したのち、最後に第4工程として、放電レート0.05C、カットオフ電圧2.5Vの条件で定電流放電を行った。
以上の工程における(第4工程で放電した容量密度)を(第2工程で放電した容量密度)で除して、100を乗じた数を容量維持率(%)とした。
(充放電特性の試験方法)
第1工程:CC-CV充電 カットオフ4V 、150mAh/g
第2工程:CC-放電 放電レート0.05C カットオフ2.5V
第3工程:5.5V強制充電 5.5V保持時間 10時間
第4工程:CC-放電 放電レート0.05C カットオフ2.5V
ただし、炭素数が4の場合、ニトリル化合物の濃度は20容量%が望ましかった。
リチウム電解質としてLiTFSIを1mol/L含み、ジニトリル化合物として、両端末にニトリル基を有する炭素数4〜炭素数12の直鎖ジニトリル化合物を含む一連の電解液を調製し、ラミネイト封入タイプのセルを用い、集電体として負極側はSUS316L、正極側はDLCコート基板を使用し、正極及び負極は実施例1の場合と同様のものを用い、リチウムイオン電池を作製し、同様の方法で充放電特性の評価を行った。
リチウム電解質としてLiBETIを1mol/L含み、ジニトリル化合物として、両端末にニトリル基を有する炭素数8〜炭素数12の直鎖ジニトリル化合物を含む一連の電解液を調製し、上記リチウム電解質にLiTFSIを用いた電解液の場合と同様の方法によって、その充放電特性を調べた。
リチウム電解質としてLiBOBを1mol/L含み、ジニトリル化合物として、両端末にニトリル基を有する炭素数4〜炭素数12の直鎖ジニトリル化合物を含む一連の電解液を調製し、上記リチウム電解質にLiBF4を用いた電解液の場合と同様の方法によって、その充放電特性を調べた。
リチウム電解質としてLiPF6を1mol/L含み、ジニトリル化合物として両端末にニトリル基を有する炭素数4〜炭素数12の直鎖ジニトリル化合物を含む一連の電解液を調製し、上記リチウム電解質にLiBF4を用いた電解液の場合と同様の方法によって、その充放電特性を調べた。
1)上記実施例の電解液を混合して新たな電解液とする場合、それら混合する電解液の電解質が同じものであるならば、容量維持率の高い(例えば90%以上)ジニトリル溶液を、2種以上混合しても、容量維持率の高い電解液となる。但し、混合したニトリル濃度は、容量維持率90%以上を維持している範囲内である。
2)上記ニトリル以外の溶媒についての組み合わせは、鎖状カーボネイト、環状カーボネイト、環状エステルの1種類以上のどの組み合わせでも、同様の傾向の容量維持率となっている。このことから、容量維持率の高い電解質、ニトリルの種類及び濃度の組み合わせを選択すれば、鎖状カーボネイト、環状カーボネイト、環状エステルの1種類以上をどの用に組み合わせでも、容量維持率の高い電解液となる。
リチウム電解質としてLiPF6を0.5〜1.5mol/L含み、ジニトリル化合物としてスクシノニトリルを10〜30重量%又はアジポニトリルを20重量%含む一連の電解液を調製した。そして、実施例1と同様にしてコインセル型リチウムイオン電池を作製し、その充放電特性を調べた。充放電特性の試験方法は、実施例2〜26の充放電特性の測定法と同様であり、説明を省略する。結果を表6に示す。この表から、γブチルラクトンとスクシノニトリルの混合溶媒の場合、溶媒中のジニトリルの混合割合が10容量%以上で、容量維持率が100%となった。また、ジメチルカーボネイトとスクシノニトリルの混合溶媒の場合、溶媒中のジニトリルの混合割合が20容量%では容量維持率が76%、50容量%では容量維持率が10%となった。さらには、γブチルラクトンとアジポニトリルの混合溶媒の場合、溶媒中のジニトリルの混合割合が20容量%で、容量維持率が100%となった。
ここに、リチウムイオン電池は電解液、正極、負極、セパレータ及びケースを備えてなる。
電解液に各種添加剤(例えば、ビニレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、エチレンサルファイト、プロパンサルトン)を0.1−3重量%程度入れることも好ましい。これにより、負極側で耐食性皮膜が形成され、耐食性が向上する。
正極は正極活物質と集電体とを備える。
(正極活物質)
正極活物質とは「負極よりも高い電位で結晶構造内にリチウムが挿入/離脱され、それに伴って酸化/還元が行われる物質」をいう。
正極活物質としては(1)酸化物系、(2)オリビン型結晶構造を有するリン酸塩系、(3)オリビンフッ化物系、(4)メタルふっ化物、等を挙げることができる。
1−1具体的物質
酸化物系としては、Li1−xCoO2(x=0〜1:層状構造)、Li1−xNiO2(x=0〜1:層状構造)、Li1−xMn2O4(x=0〜1:スピネル構造)、Li2−yMnO3(y=0〜2)及びこれらの固溶体(ここで固溶体とは、上記酸化物系の正極活物質において金属原子が自由な割合で混合された物質を指す。)を挙げることができる。ここでxは充放電にともなうリチウムのインターカレーション−デインターカレーションによって変化する。また、これらのうちの金属原子を他の金属原子でドープしたものも含まれる。ドーパントとしては酸化還元反応において電気化学的な特性を変化させられるものであれば特に限定されるものではない。例えば、Li、Mg、Al、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb及びMoの1種又はそれ以上を用いることができる。
1−2 特性
この正極活物質の一般的な放電電位は5V (vs Li/Li+)未満である。但し、LiMn2O4系でNiに一部置換した、LiNi0.5Mn1.5O4は、放電電位が4.7Vであり、急速充電をおこなう際には過電圧分を加味し、5Vを超える充電電圧を必要とする場合がある。また、LiCoMnO4は放電電圧が5.2V程度から始まるため、これも充電電圧は5Vを超える。また、酸化物系は一般に300℃未満で分解し、酸素発生とともに比較的大きな発熱反応がある。このため、過充電が起こらないような制御回路が必要とされる。
2−1具体的物質
オリビン型結晶構造を有するリン酸塩系としては、Li1−xNiPO4(x=0〜1)、Li1−xCoPO4(x=0〜1)、Li1−xMnPO4(x=0〜1)、Li1−xFePO4(x=0〜1)及びこれらの固溶体(ここで固溶体とは、上記リン酸塩系の正極活物質において金属原子が自由な割合で混合された物質を指す。)を挙げることができる。ここでxは充放電にともなうリチウムのインターカレーション−デインターカレーションによって変化する。また、これらのうちの金属原子を他の金属原子でドープしたものも含まれる。ドーパントとしては酸化還元反応において電気化学的な特性を変化させられるものであれば特に限定されるものではない。例えば、Mg、Al、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb及びMoの1種又は2種以上を用いることができる(特開2008−130525号参照)。
2−2 特性
この正極活物質の酸化還元電位は、上記酸化物系とは異なり300℃未満では発熱反応が小さい上、酸素は発生せず、安全性が高いことから注目されている。また、リン酸塩系のうち、LiCoPO4系は放電電位が4.8V程度であり、急速充電に際しては5V以上で耐電圧を有する電解液が必要とされる。LiNiPO4の放電電位は5.2V(vs Li/Li+)が示唆されている。
3−1 具体的物質
Li2−xNiPO4F(x=0〜2)、Li2−xCoPO4F(x=0〜2)が知られており、その他Li2−xMnPO4F(x=0〜2)、Li2−xFePO4F(x=0〜2)が考えられる。ここでxは充放電にともなうリチウムのインターカレーション−デインターカレーションによって変化する。
また、これらの固溶体(ここで固溶体とは、上記オリビンフッ化物系の正極活物質において金属原子が自由な割合で混合された物質を指す。)も挙げることができる。さらに、これらのうちの金属原子を他の金属原子でドープしたものも含まれる。ドーパントとしては酸化還元反応において電気化学的な特性を変化させられるものであれば特に限定されるものではない。例えば、Mg、Al、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb及びMoの1種又はそれ以上を用いることができる。
3−2 特性
この正極活物質の酸化還元電位はオリビン系と同様に、上記酸化物系とは異なり、300℃未満の分解では、発熱反応が小さい上、酸素発生がないため、正極活物質由来の電池発火の影響は小さいと考えられ安全性の面で注目されている。また、電池の電気容量密度(mAh/g)を上記リン酸塩系よりも高くできる(特開2003−229126号公報参照)。しかし、例えばLi2CoPO4F系は、平均放電電位が4.8V程度であり、急速充電に際しては5V以上で耐電圧を有する電解液が必要とされる。また、Li2NiPO4F系の放電電位は5.3V(vs Li/Li+)程度であり、5V以上で耐電圧を有する電解液が必要とされる。
4−1 具体的物質及び特性
ペロブスカイト構造を有するFeF3が挙げられる。この化合物はLiイオンを一分子あたり一個挿入した場合の理論容量密度が220mAh/gと計算され、従来のオリビン型結晶構造を有するリン酸塩系の正極活物質の理論容量密度(例えば、LiFePO4では170mAh/g)よりも大きなエネルギー密度を有するという利点がある。
また、FeF3よりもさらに放電電位及びエネルギー密度(Wh/kg)が大きい正極活物質として、(LixKyNa1−x−y)nMF3(式中、x,y及びnは0以上1以下の数であり、MはMn,Co及びNiのいずれかであり、該Mの一部はMg,Cu,Co,Mn,Al,Cr,Ga,V及びInの一種又は二種以上で置換されていてもよい)が挙げられる。この正極活物質はフッ素系のペロブスカイト構造を有し、MとしてMnやCoやNiを構成元素としている。完全な充電状態ではMF3となり、Mは+3価の状態と考えられる。また、完全な放電状態では、n=1となり、Mは+2価の状態と考えられる。この正極活物質はサイクリックボルタンメトリーにおいて4V(vs Li/Li+)以上という高い電位において酸化還元波が観測され、4V(vs Li/Li+)を超える高い放電電位を有することとなる。この値は、FeF3の放電電圧3.3V(vs Li/Li+)と比べて高いため、エネルギー密度がFeF3よりも大きい正極活物質となる。さらには、リチウムイオンのみならず、ナトリウムイオンも出入りが可能であるため、リチウムイオン電池やナトリウムイオン電池の正極活物質として駆動させることができる。
(5)その他
その他、リチウム非含有のFeF3、有機導電性物質を用いた共役系ポリマー、シェブレル相化合物等を用いることもできる。また、遷移金属カルコゲン化物、バナジウム酸化物およびそのリチウム塩、ニオブ酸化物およびそのリチウム塩、さらには、複数の異なった正極活物質を混合して用いることも可能である。
正極活物質粒子の平均粒径は、特に限定はされないが、10nm〜30μmであることが好ましい。
例えば、電解質としてLiPF6、LiBF4を使用する場合、オーステナイト系ステンレス、Ni、Al、Ti等を用いることができるが、使用する正極活物質の動作電位を考慮し、適宜選択することが好ましい。例えば、電解質としてLiPF6を用いる場合は、Li/Li+電極に対して6Vでも使用することができるが、電解質としてLiBF4を用いる場合、SUS304はLi/Li+電極に対し5.8V以下で充放電可能な場合のみ用いることができる。さらに好ましいのは、耐食性向上のためにモリブデンが添加されたSUS316、SUS316L及びSUS317が挙げられる。また、電解質としてLiTFSIを使用する場合、正極集電体表面に耐食性皮膜を形成させるべく、LiPF6を共存させることが好ましい。LiBETI及びLiTFSもLiTFSIの場合と同様である。
また、Al、Ni、チタン、オーステナイト系ステンレス等の導電金属材料へ導電性DLC(ダイヤモンドライクカーボン)、グラッシーカーボン、金及び白金のうちの一種又は二種以上からなる導電性の耐食性皮膜が形成されたものを集電体として用いることもできる。電解質がLiBF4やLiPF6など、容易にフッ化物皮膜を形成するようなリチウム塩の場合は、アルミニウム上へ厚いフッ化皮膜が形成し、耐食性は向上するものの、電子伝導性が低下し、ひいてはオーミック過電圧増加に伴う、高出力化が阻害されることとなる。Al等の導電金属材料へ導電性DLCを被覆すれば、フッ化物皮膜は導電性DLCの欠陥部分の極わずかな面積でのみ発生するだけである。このため、高電圧化しても電子伝導性の低下は無視できる程度となり、懸念されている高電圧化による出力低下は防ぐことが可能となる。
ここで、導電性ダイヤモンドライクカーボンとは、ダイヤモンド結合(炭素同士のSP3混成軌道結合)とグラファイト結合(炭素同士のSP2混成軌道結合)の両方の結合が混在しているアモルファス構造をとるカーボンのうち、導電性が1000Ωcm以下のものをいう。ただし、アモルファス構造以外に、部分的にグラファイト構造からなる結晶構造(すなわちSP2混成軌道結合からなる六方晶系結晶構造)からなる相を有し、これにより導電性が発揮されるものも含まれる。グラファイトとダイヤモンドの中間の性質を有するダイヤモンドライクカーボンは、成膜時にダイヤモンドライクカーボンを構成する炭素原子のSP2混成軌道結合とSP3混成軌道結合の比率を調整することで、導電性を調節することができる。
勿論、上記耐食性導電性金属材料を導電性DLCで被覆してもよい。
集電体の形状及び構造は、正極活物質や電池の構造に応じて、任意に設計可能である。
リチウムイオン電池用正極は、リチウムイオン電池に組み込む前に、ニトリル化合物を1容量%以上含む有機溶媒中にリチウム塩が溶解した前処理用電解液中に正電極を浸漬する浸漬処理工程を行い、さらに電極に正電圧を付与する正電圧処理工程を行なう。こうして前処理された電極は、ニトリル化合物を全く含まない電解液や、ニトリル化合物の添加量の少ない電解液を用いたリチウムイオン電池に用いても、電位窓が広く、高い電位においても電解液を分解し難くなる(特願2009−180007号参照)。このような広い電位窓の電極となる理由は、電極上に窒素を成分として含む耐食性の皮膜が形成されるためであると推測される。
負極は負極活物質と集電体とを備える。
(負極活物質)
負極活物質とは「正極よりも低い電位で結晶構造内にリチウムが挿入/離脱され、それに伴って酸化/還元が行われる物質」をいう。
負極活物質としては、例えば、人造黒鉛、天然黒鉛、ハードカーボン等の種々の炭素材料やチタン酸リチウム(Li4Ti5O12)、H2Ti12O25、H2Ti6O13、Fe2O3などが挙げられる。また、これらを適宜混合した複合体も挙げることができる。さらには、Si微粒子やSi薄膜、これらのSiがSi−Ni、Si−Cu、Si−Nb、Si−Zn、Si−Sn等のSi系合金となった微粒子や薄膜が挙げられる。さらには、SiO酸化物、Si−SiO2複合体、Si−SiO2−カーボンなどの複合体等を挙げることができる。
負極用の集電体は汎用的な導電性金属材料、Cu、Al、Ni、Ti、オーステナイト系ステンレス等で形成することができる。
但し、電解液にニトリル化合物を用いたとき(他の有機溶剤との併用を含む)には、電解液中のLi塩に応じて適宜選択する必要がある。すなわち、電解質としてLiPF6、LiBF4を使用する場合、オーステナイト系ステンレス、Ni、Al、Ti等の使用が可能となる。ただし、使用する負極活物質の動作電位に応じて、適宜選択する必要がある。負極活物質としてカーボン系やSi系を使用する場合において、電解質としてLiBF4を使用した場合は、Cu以外のAl、Ni、Ti、オーステナイト系ステンレス等からなる集電体を使用することができる。負極活物質としてチタン酸リチウムやFe2O3系の化合物を用いた場合は、Cuを含む上記材料の全てが適用可能である。一方、電解質としてLiPF6使用時はAl、Ni及びTiが好ましく、オーステナイト系ステンレス及びCuは好ましくない。また、電解質としてLiTFSIや、LiBETI、やLiTFSを使用する場合、Ni、Ti、Al、Cu、オーステナイト系ステンレスの何れも使用することができる。
正極活物質には導電性の小さいものがある。従って、正極活物質と集電体との間に導電性の電子伝導部材を介在させて、両者の間に十分な電子伝導パスを確保することが好ましい。
ここで電子伝導部材は正極活物質と集電体との間に電子伝導パスを形成できればその形態は特に限定されるものではなく、例えばアセチレンブラック等のカーボンブラック、グラファイト粉、ダイヤモンドライクカーボン、グラッシーカーボン等の導電性粉体(導電助剤)を用いることができる。ダイヤモンドライクカーボン及びグラッシーカーボンは、カーボンブラックやグラファイトよりもはるかに広い電位窓を有しており、高電位を付与した場合の耐食性に優れているため、好適に用いることができる。また、これらの導電助剤に金属微粒子が担持されていることも好ましい。金属微粒子としては、例えばPt、Au、Ni等が挙げられる。これらは、単独で用いても良いし、これらの合金であっても良い。
また、正極活物質からなる粒子に、乾式めっき法によって導電性ダイヤモンドライクカーボンを付着させてもよい。こうであれば、導電性ダイヤモンドライクカーボンが導電助剤の役割を果たし、二次電池用正極のために必要な特性である電子伝導性が付与される。さらに、導電性ダイヤモンドライクカーボンは電位窓が広くて高い電位に対する耐久性に優れているため、高い電位で充電反応が行われる、エネルギー密度の高い正極活物質を有効に活用することができる。同様に、ダイヤモンドライクカーボンの代わりにグラッシーカーボンを用いることもできる。
電子伝導材料として、正極活物質を被覆する導電性皮膜(DLC膜等)、正極活物質を埋入させた導電性薄膜(金の薄膜等)を用いることができる。
特に、Li2NiPO4F系の正極活物質はそれ自身の及び/又はその表面皮膜の導電性が小さいので、これを集電体へ単に担持させてなるものではリチウムイオン電池の正極として機能しない場合がある。Li2NiPO4F系の正極活物質の性能評価のために、これを金等の導電薄膜へハンマー等で物理的に打ち込み、電池の正極を形成することができる。
ここにLi2NiPO4F系正極活物質とはLi2NiPO4F及びこれへ適宜ドーパントをドープしたものを指す。
正極用電子伝導部材と同様な物を用いることができる。
セパレータは電解液中へ浸漬され、正極と負極とを分離し両者の短絡を防ぐとともに、Liイオンの通過を許容する。
かかるセパレータには、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂から成る多孔質フィルムが挙げられる。
ケースは電解液に対する耐食性を有する材質で形成される。その形状は、電池の目的用途に応じて任意に設計できる。
リチウム塩が溶解している電解液を使用する場合には、オーステナイト系ステンレスからなる基材、Ti、Ni及び/又はAlからなるケースを用いることができる。但し使用する正極、負極活物質の動作電位により適宜選択しなければならない場合もある。
ケースが集電体を兼ねる場合や集電体に電気的に結合される場合は、各電極の集電体形成材料と同一若しくは同種の材料で形成される。
ケースはAl箔をポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)で覆ったAlラミネートフィルムを用いてもよい。その形状は、電池の目的用途に応じて任意に設計できる。
Claims (10)
- 有機溶媒にリチウム塩が溶解しているリチウムイオン電池用電解液であって、
前記有機溶媒には、両末端にニトリル基が結合したジニトリル化合物が含まれており、前記リチウム塩としてLiBF4、LiTFSI、LiBETI、LiPF6及びLiBOBの少なくとも一種を含むことを特徴とするリチウムイオン電池用電解液。 - 前記有機溶媒には、
前記ジニトリル化合物の他に、環状カーボネイト、環状エステル及び鎖状カーボネイト、並びに、環状カーボネイト、環状エステル及び鎖状カーボネイトに含まれる水素の一部をフッ素で置換した化合物のうち少なくとも一つが含まれていることを特徴とする請求項1記載のリチウムイオン電池用電解液。 - 前記ジニトリル化合物は鎖式飽和炭化水素の両末端にニトリル基が結合した鎖式飽和炭化水素ジニトリル化合物であることを特徴とする請求項1又は2記載のリチウムイオン電池用電解液。
- 前記ジニトリル化合物は炭素数が6以上12以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のリチウムイオン電池用電解液。
- 前記有機溶媒に対する前記ジニトリル化合物の割合は2.5容量%以上80容量%未満であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載のリチウムイオン電池用電解液。
- 前記リチウム塩はLiTFSI及び/又はLiBETIであり、前記有機溶媒に対する前記ジニトリル化合物の割合は10容量%以上60容量%未満であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載のリチウムイオン電池用電解液。
- 前記リチウム塩はLiBOBであり、前記ジニトリル化合物は炭素数が6以上12以下であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載のリチウムイオン電池用電解液。
- 前記リチウム塩はLiBOBであり、前記有機溶媒に対する前記ジニトリル化合物の割合は30容量%以上70容量%未満であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載のリチウムイオン電池用電解液。
- 前記リチウム塩はLiPF6であり、前記有機溶媒に対する前記ジニトリル化合物の割合は2.5容量%以上20容量%未満であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載のリチウムイオン電池用電解液。
- 前記リチウム塩としてLiTFSI及び/又はLiBETIを含み、さらにLiBF4及び/又はLiPF6を含むことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のリチウムイオン電池用電解液。
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