JP2011210667A - 非水系二次電池電極用バインダー樹脂組成物、非水系二次電池用負極及び非水系二次電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】低温での出力特性とサイクル特性に優れた非水系二次電池をもたらすことができる非水系二次電池電極用バインダー樹脂組成物を提供する。
【解決手段】セルロース系高分子又はその金属塩(A)、並びにヒドロキシ酸、ポリ(ヒドロキシ酸)及びそれらの金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種(B)を含有し、(B)成分が、バインダー樹脂組成物100質量%に対して1〜99質量%であることを特徴とする、非水系二次電池電極用バインダー樹脂組成物、並びにバインダー樹脂組成物を用いた非水系二次電池用負極及びこの負極を備えた非水系二次電池、とりわけリチウムイオン二次電池に関する。
【選択図】なし
【解決手段】セルロース系高分子又はその金属塩(A)、並びにヒドロキシ酸、ポリ(ヒドロキシ酸)及びそれらの金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種(B)を含有し、(B)成分が、バインダー樹脂組成物100質量%に対して1〜99質量%であることを特徴とする、非水系二次電池電極用バインダー樹脂組成物、並びにバインダー樹脂組成物を用いた非水系二次電池用負極及びこの負極を備えた非水系二次電池、とりわけリチウムイオン二次電池に関する。
【選択図】なし
Description
本発明は、非水系二次電池電極用バインダー樹脂組成物、それを用いた非水系二次電池用負極及びこの負極を備えた非水系二次電池に関する。
近年の電気製品の軽量化、小型化に伴い、高いエネルギー密度を持つ、非水系二次電池であるリチウムイオン二次電池の開発が進められている。リチウムイオン二次電池の適用分野の拡大に伴い、電池特性のさらなる向上が求められており、中でも、低温における出力特性に対する要望は強い。
これまで、リチウムイオン二次電池の特性向上の取り組みは、使用される非水系電解液の開発や、活物質の開発が中心になされてきたが、近年、電極の製造において使用されるバインダー樹脂の研究にも及んでいる。通常、リチウムイオン二次電池の正極及び負極は、それぞれ集電体上に、活物質とこの活物質を結着するバインダー樹脂組成物とを含むスラリーを塗布・乾燥することにより形成される。このバインダー樹脂としては、カルボキシメチルセルロース(CMC)等のセルロース系高分子、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)等のゴム系高分子、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)等のフッ素系高分子が多く用いられているが、最近では、安全性及び環境への配慮の点から、生分解性高分子からなるバインダー(特許文献1)も提案されている。
上記のような提案はあるものの、リチウムイオン二次電池の低温における出力特性及びサイクル特性に対して、一層の改善が求められているのが現状である。
本発明は、上記背景技術に鑑みて創案されたものであり、その課題は、優れた低温における出力特性とサイクル特性をもたらすことができる、非水系二次電池電極用バインダー樹脂組成物、それを用いた非水系二次電池用負極及びこの負極を備えた非水系二次電池、とりわけリチウムイオン二次電池を提供することにある。
本発明の発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行なった。その結果、セルロース系高分子又はその金属塩(A)を含み、かつヒドロキシ酸、ポリ(ヒドロキシ酸)及びそれらの金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種(B)を多量に含有するバインダー樹脂組成物を用いることにより、低温における出力特性とサイクル特性が改善されることを見出し、本発明を完成させた。
本発明は、セルロース系高分子又はその金属塩(A)、並びにヒドロキシ酸、ポリ(ヒドロキシ酸)及びそれらの金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種(B)を含有し、(B)成分が、バインダー樹脂組成物100質量%に対して1〜99質量%であることを特徴とする、非水系二次電池電極用バインダー樹脂組成物に関する。
本発明は、(B)成分における、ヒドロキシ酸及びポリ(ヒドロキシ酸)のモノマー単位を構成するヒドロキシ酸が、脂肪族ヒドロキシ酸又は芳香族ヒドロキシ酸である、上記の非水系二次電池電極用バインダー樹脂組成物に関する。
本発明は、(B)成分が、カルボキシ基のα位にヒドロキシ基を有する、α−ヒドロキシ酸であって、式(1):
(式中、Rは、水素であるか、あるいは非置換又は水酸基、カルボキシ基若しくはアミノ基で置換されている、アルキル基、アリール基若しくはシクロアルキル基である)のヒドロキシ酸、式(1)のヒドロキシ酸の1種以上をモノマーとするポリマー、及びそれらの金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種である、上記のいずれかの非水系二次電池電極用バインダー樹脂組成物に関する。
本発明は、バインダーと負極活物質とを含有する負極活物質層を集電体上に形成した負極であって、該バインダーが上記バインダー樹脂組成物である非水系二次電池用負極に関する。上記負極活物質層が、さらにゴム系高分子を含む、非水系二次電池用負極に関する。本発明は、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な正極、負極及び電解液を備えた電池であって、上記負極を備えた非水系二次電池、とりわけリチウムイオン二次電池に関する。
本発明は、(B)成分における、ヒドロキシ酸及びポリ(ヒドロキシ酸)のモノマー単位を構成するヒドロキシ酸が、脂肪族ヒドロキシ酸又は芳香族ヒドロキシ酸である、上記の非水系二次電池電極用バインダー樹脂組成物に関する。
本発明は、(B)成分が、カルボキシ基のα位にヒドロキシ基を有する、α−ヒドロキシ酸であって、式(1):
(式中、Rは、水素であるか、あるいは非置換又は水酸基、カルボキシ基若しくはアミノ基で置換されている、アルキル基、アリール基若しくはシクロアルキル基である)のヒドロキシ酸、式(1)のヒドロキシ酸の1種以上をモノマーとするポリマー、及びそれらの金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種である、上記のいずれかの非水系二次電池電極用バインダー樹脂組成物に関する。
本発明は、バインダーと負極活物質とを含有する負極活物質層を集電体上に形成した負極であって、該バインダーが上記バインダー樹脂組成物である非水系二次電池用負極に関する。上記負極活物質層が、さらにゴム系高分子を含む、非水系二次電池用負極に関する。本発明は、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な正極、負極及び電解液を備えた電池であって、上記負極を備えた非水系二次電池、とりわけリチウムイオン二次電池に関する。
本発明の非水系二次電池電極用バインダー樹脂組成物によれば、低温での出力特性及びサイクル特性に優れた非水系二次電池、とりわけリチウムイオン二次電池を得ることができる。
本発明は、セルロース系高分子又はその金属塩(A)、並びにヒドロキシ酸、ポリ(ヒドロキシ酸)及びそれらの金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種(B)を含有し、(B)成分が、バインダー樹脂組成物100質量%に対して1〜99質量%であることを特徴とする、非水系二次電池電極用バインダー樹脂組成物に関する。
(A)成分におけるセルロース系高分子は、特に限定されない。例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース、エチルセルロース、アセチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、でんぷん、カラギナン、プルラン、グアーガム、ザンサンガム(キサンタンガム)、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースが挙げられる。(A)成分におけるセルロース系高分子の金属塩もまた、特に限定されず、例えば、上記セルロース系高分子の金属塩の形態が挙げられる。金属塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム等のアルカリ金属塩等が挙げられる。中でも、活物質との結着性に優れ、エチレンカーボネート等を含有する非水系電解液への膨潤性が低い、カルボキシメチルセルロース又はその金属塩(中でも、アルカリ金属塩、特にナトリウム塩)が好ましい。
ここで、カルボキシメチルセルロースは、特に限定されないが、無水グリコール1単量体単位に対してカルボキシメチル基がエーテル結合している数、すなわち、エーテル化度が、0.5〜1.5のものが好ましい。また、カルボキシメチルセルロースは、平均重合度が、好ましくは100〜2,000、より好ましくは800〜1,500のものである。カルボキシメチルセルロースの平均重合度が800〜1,500であると、粘度及び分散性が良好であり、活物質の結着性に優れる。
(A)成分は、単独でも、2種以上を併用してもよい。
(A)成分の含有量は、特に限定されないが、バインダー樹脂組成物100質量%に対して、好ましくは1〜99質量%である。(A)成分の含有量が上記範囲内であると、結着性に優れ、低温での出力特性の改善が可能なバインダー樹脂組成物が容易に得られる。含有量は、より好ましくは2〜98質量%、特に好ましくは3〜97質量%である。バインダー樹脂組成物が(A)成分と(B)成分のみで構成される場合、(A)成分と(B)成分の合計が、バインダー樹脂組成物100質量%に相当する。
(B)成分におけるヒドロキシ酸若しくはポリ(ヒドロキシ酸)又はそれらの金属塩は、特に限定されない。ヒドロキシ酸は、1個以上のヒドロキシ基を有するカルボン酸をいう。カルボン酸は、モノカルボン酸であっても、ポリカルボン酸であってもよい。
(B)成分は、その水酸基やカルボキシ基により、(A)成分に入り込んで、結晶性を低下させるため、(A)成分及び(B)成分を含むバインダー樹脂組成物を、非水系二次電池用負極や非水系二次電池に使用することにより、イオン伝導度の向上、ひいては入出力の改善が期待できる。また、水酸基やカルボキシル基によって形成される水素結合により、電極強度やサイクル特性の向上も図ることができる。
ヒドロキシ酸は、脂肪族ヒドロキシ酸であっても、芳香族ヒドロキシ酸であってもよい。また、ヒドロキシ酸はそれらの誘導体を含む。ポリ(ヒドロキシ酸)のモノマー単位を構成するヒドロキシ酸も同様に、脂肪族ヒドロキシ酸であっても、芳香族ヒドロキシ酸であってもよい。脂肪族ヒドロキシ酸としては、グリコール酸、乳酸、ヒドロキシ酪酸、リンゴ酸、グリセリン酸、クエン酸が挙げられ、芳香族ヒドロキシ酸としては、マンデル酸、サリチル酸、クマル酸、オルセリン酸等が挙げられる。中でも、好ましくはグリコール酸、乳酸、グリセリン酸である。
ヒドロキシ酸としては、カルボキシ基のα位にヒドロキシ基を有する、α−ヒドロキシ酸を使用することができ、具体的には、式(1):
(式中、Rは、水素であるか、あるいは非置換又は水酸基、カルボキシ基若しくはアミノ基で置換されている、アルキル基、アリール基若しくはシクロアルキル基である)で示されるヒドロキシ酸を使用することができる。Rがアルキル基の場合、分岐状又は直鎖状のC1〜C9アルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基である。Rがアリール基の場合、C6〜C22アリール基が好ましく、例えば、フェニル基、ナフチル基である。Rがシクロアルキル基の場合、C3〜12シクロアルキル基が好ましく、例えば、シクロへキシル基である。
ポリ(ヒドロキシ酸)としては、上記のヒドロキシ酸の1種以上をモノマーとするポリマーが挙げられる。このようなポリマーは、上記のヒドロキシ酸の1種のみをモノマーとするホモポリマーであっても、2種以上をモノマーとするコポリマーであってもよい。例えば、式(1)のヒドロキシ酸の1種のみからなるホモポリマー、式(1)のヒドロキシの2種以上をモノマーとするコポリマーが挙げられる。ポリ(ヒドロキシ酸)は、重量平均分子量が、1000〜300万が好ましく、より好ましくは、1万〜100万である。本明細書において、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算の値とする。
ポリ(ヒドロキシ酸)は、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリヒドロキシ酪酸、ポリリンゴ酸等が挙げられ、中でも、好ましくはポリグリコール酸である。
ヒドロキシ酸及びポリ(ヒドロキシ酸)の金属塩を使用することもでき、金属塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩等が挙げられ、中でも、好ましくは、アルカリ金属塩であり、特にリチウム塩、ナトリウム塩である。
(B)成分は、単独でも、2種以上を併用してもよい。
(B)成分の含有量は、バインダー樹脂組成物100質量%に対して、1〜99質量%である。(B)成分の含有量が上記範囲内であると、結着性に優れ、低温での出力特性とサイクル特性に優れたバインダー樹脂組成物が容易に得られる。含有量は、より好ましくは2〜98質量%、特に好ましくは3〜97質量%である。
バインダー樹脂組成物中の(B)成分の含有量を調整する方法としては、例えば、セルロース系高分子の粉体又はその水溶液に、(B)成分を混合する方法や、セルロース系高分子を用いて作製した電極スラリーに(B)成分を添加する方法等が挙げられる。
バインダー樹脂組成物は、活物質100質量部に対して、0.01〜30質量部とすることができる。量は、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上であり、また、好ましくは25質量部以下、より好ましくは20質量部以下である。
以下、本発明のバインダー樹脂組成物を用いた非水系二次電池用電極を製造する方法の一実施の形態について、リチウムイオン二次電池用電極を製造する方法を例にとって説明する。なお、本発明のバインダー樹脂組成物は、特に限定されないが、負極活物質の結着に好適に用いることができる。
<負極>
負極は、負極集電体上に、バインダー樹脂組成物等を含む負極活物質層を備えたものが使用される。
負極は、負極集電体上に、バインダー樹脂組成物等を含む負極活物質層を備えたものが使用される。
負極活物質としての炭素材料は、特に限定されず、人造黒鉛、天然黒鉛等の黒鉛(グラファイト)、様々な熱分解条件での有機物の熱分解物が挙げられる。有機物の熱分解物としては、石炭系コークス、石油系コークス、石炭系ピッチの炭化物、石油系ピッチの炭化物、又はこれらのピッチを酸化処理したものの炭化物、ニードルコークス、ピッチコークス、フェノール樹脂、結晶セルロース等の炭化物等及びこれらを一部黒鉛化した炭素材料、ファーネスブラック、アセチレンブラック、ピッチ系炭素繊維等が挙げられる。中でも黒鉛が好ましく、種々の原料から得た易黒鉛性ピッチに高温熱処理を施すことによって製造された、人造黒鉛、精製天然黒鉛、又はこれらの黒鉛にピッチを含む黒鉛材料等がより好ましく、種々の表面処理が施されたものであってもよい。これらの炭素材料は、単独でも、2種以上を併用してもよい。
黒鉛材料を用いる場合、学振法によるX線回折で求めた格子面(002面)のd値(面間隔)は、好ましくは0.335nm以上であり、また、好ましくは0.34nm以下、より好ましくは0.337nm以下である。
黒鉛材料の灰分は、黒鉛材料の質量に対して、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、特に好ましくは0.1質量%以下である。
学振法によるX線回折で求めた黒鉛材料の結晶子サイズ(Lc)は、好ましくは30nm以上、より好ましくは50nm以上、特に好ましくは100nm以上である。
レーザー回折・散乱法により求めた黒鉛材料のメジアン径は、好ましくは1μm以上、より好ましくは3μm以上、さらに好ましくは5μm以上、特に好ましくは7μm以上であり、また、好ましくは100μm以下であり、より好ましくは50μm以下、さらに好ましくは40μm以下、特に好ましくは30μm以下である。
黒鉛材料のBET法比表面積は、好ましくは0.5m2/g以上、より好ましくは0.7m2/g以上、さらに好ましくは1.0m2/g以上、特に好ましくは1.5m2/g以上であり、また、好ましくは25.0m2/g以下、より好ましくは20.0m2/g以下、さらに好ましくは15.0m2/g以下、特に好ましくは10.0m2/g以下である。
黒鉛材料は、アルゴンレーザー光を用いたラマンスペクトル分析を行った場合に、1580〜1620cm−1の範囲で検出されるピークPAの強度IAと、1350〜1370cm−1の範囲で検出されるピークPBの強度IBとの強度比IA/IBが、0以上0.5以下であるものが好ましい。また、ピークPAの半価幅は26cm−1以下が好ましく、25cm−1以下がより好ましい。
なお、上述の各種の炭素材料の他に、負極活物質として公知のリチウムの吸蔵及び放出が可能なその他の材料を使用することもできる。例えば、酸化スズや酸化ケイ素等の金属酸化物、硫化物や窒化物、リチウム単体やリチウムアルミニウム合金等のリチウム合金等が挙げられる。これらの炭素材料以外の材料についても、単独でも、2種以上を併用してもよい。また、上述の炭素材料と組み合わせて用いてもよい。
活物質は、粉末状のものを用いることが好ましい。粉末状の場合、一次粒子の平均粒子径が0.5〜100μmであることが好ましく、より好ましくは、2〜30μmである。
上記の活物質を用いて、活物質層を集電体上に形成することにより、電極とすることができる。電極の製造方法は、特に限定されず、例えば、活物質、バインダー樹脂組成物等を乾式で混合してシート状とし、これを集電体に圧着する方法、活物質、バインダー樹脂組成物等に、溶媒を加えてスラリーとし、これを集電体の基板に塗布し、乾燥させる方法が挙げられる。
負極集電体の材料は、特に限定されず、銅、ニッケル、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼等の金属材料、カーボンクロス、カーボンペーパー等の炭素材料が挙げられる。中でも、金属材料が好ましく、より好ましくは銅である。
負極集電体の形状は、特に限定されず、薄膜状、円柱状、板状が挙げられる。薄膜の場合、厚さは、特に限定されないが、通常、5〜30μmである。厚さは、好ましくは9μm以上であり、また、好ましくは20μm以下である。中でも金属薄膜が好ましく、とりわけ銅箔が好ましい。薄膜は、適宜、メッシュ状にすることができる。
負極活物質の量は、通常、負極活物質層中、70〜99.99質量%である。量は、好ましくは75質量%以上、より好ましくは80質量%以上であり、また、好ましくは99.9質量%以下である。
バインダー樹脂組成物の量は、特に限定されないが、負極活物質の保持及び機械的強度、並びにサイクル特性、容量、導電性といった電池性能を確保する点から、負極活物質100質量部に対して、0.01〜30質量部とすることができる。量は、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上であり、また、好ましくは25質量部以下、より好ましくは20質量部以下である。
負極活物質層には、本発明のバインダー樹脂組成物以外の他のバインダーとして、他の有機化合物、無機化合物又は天然化合物を含有していてもよい。
有機化合物としては、特に限定されず、SBR(スチレン・ブタジエンゴム)、NBR(アクリロニトリル・ブタジエンゴム)、フッ素ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン・プロピレンゴム等のゴム系高分子;スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体又はその水素添加物、EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体)、スチレン・エチレン・ブタジエン・エチレン共重合体、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体又はその水素添加物等の熱可塑性エラストマー系高分子;シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン、ポリ酢酸ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体、プロピレン・α−オレフィン共重合体等の軟質樹脂系高分子等が挙げられ、中でも、ゴム系高分子が好ましく、より好ましくはSBRである。無機化合物としては、シリケート、水ガラス等が挙げられ、天然化合物としては、アルギン酸又はその塩等が挙げられる。上述したバインダーは、重量平均分子量が1万〜300万のものを使用することができ、好ましくは10万以上であり、また、好ましくは100万以下である。ここで、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(ポリスチレン換算)によって求めた値とする。上述したバインダーは、単独でも、2種以上を併用してもよい。
有機化合物としては、特に限定されず、SBR(スチレン・ブタジエンゴム)、NBR(アクリロニトリル・ブタジエンゴム)、フッ素ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン・プロピレンゴム等のゴム系高分子;スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体又はその水素添加物、EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体)、スチレン・エチレン・ブタジエン・エチレン共重合体、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体又はその水素添加物等の熱可塑性エラストマー系高分子;シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン、ポリ酢酸ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体、プロピレン・α−オレフィン共重合体等の軟質樹脂系高分子等が挙げられ、中でも、ゴム系高分子が好ましく、より好ましくはSBRである。無機化合物としては、シリケート、水ガラス等が挙げられ、天然化合物としては、アルギン酸又はその塩等が挙げられる。上述したバインダーは、重量平均分子量が1万〜300万のものを使用することができ、好ましくは10万以上であり、また、好ましくは100万以下である。ここで、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(ポリスチレン換算)によって求めた値とする。上述したバインダーは、単独でも、2種以上を併用してもよい。
負極の導電性を向上させるために、負極活物質層には導電材を含有させることができる。導電材は、特に限定されず、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック等のカーボンブラック、Cu及びNi、又はこれらの合金からなる微粉末(平均粒子径1μm以下)等が挙げられる。導電材は、単独でも、2種以上を併用してもよい。導電材は、負極活物質に対して、10質量%以下であることが好ましい。
スラリーを使用して負極活物質層を形成する場合、その溶媒は、負極活物質等を溶解又は分散することが可能であれば、特に限定されず、水系溶媒、有機系溶媒のいずれも使用することができる。本発明のバインダー樹脂組成物は、水系溶媒を用いてスラリーとして、負極を調製するのに好適である。水系溶媒は、環境への負荷低減の点からも好ましい。
水系溶媒としては水、アルコール(例えば、エタノール等の低級アルコール)等が挙げられ、有機系溶媒としては、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、アクリル酸メチル、ジエチルトリアミン、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン、エチレンオキシド、テトラヒドロフラン(THF)、トルエン、アセトン、ジメチルエーテル、ジメチルアセタミド、ヘキサメチルホスファルアミド、ジメチルスルホキシド、ベンゼン、キシレン、キノリン、ピリジン、メチルナフタレン、ヘキサン等が挙げられる。溶媒は、単独でも、2種以上を併用してもよい。
スラリーを集電体上に塗布した後、乾燥空気又は不活性雰囲気下で乾燥し、負極活物質層を形成させて負極を得ることができる。乾燥温度は、60℃〜200℃であり、好ましくは80℃以上であり、また、好ましくは195℃以下である。
負極活物質層の厚さは、負極としての実用性及び高密度の電流値に対する十分なリチウムの吸蔵・放出の機能を確保するために、通常、5〜200μmである。厚さは、好ましくは20μm以上、より好ましくは30μm以上、また、好ましくは100μm以下、より好ましくは75μm以下である。
本発明は、上記負極を備えたリチウムイオン二次電池にも関する。リチウムイオン二次電池の基本的構成は、公知のものと同様であり、通常、上記負極の他に、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な正極及び電解質を備える。
<正極>
正極として、通常、正極活物質を含む活物質層を集電体上に形成したものが使用される。正極の製造方法は、特に限定されず、例えば、正極活物質、バインダー等を乾式で混合してシート状とし、これを正極集電体に圧着する方法、正極活物質、バインダー等に、溶媒を加えてスラリーとし、これを正極集電体の基板に塗布し、乾燥させる方法が挙げられる。
正極として、通常、正極活物質を含む活物質層を集電体上に形成したものが使用される。正極の製造方法は、特に限定されず、例えば、正極活物質、バインダー等を乾式で混合してシート状とし、これを正極集電体に圧着する方法、正極活物質、バインダー等に、溶媒を加えてスラリーとし、これを正極集電体の基板に塗布し、乾燥させる方法が挙げられる。
正極集電体の材料は、特に限定されず、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケルメッキ、チタン、タンタル等の金属材料、カーボンクロス、カーボンペーパー等の炭素材料が挙げられる。中でも、金属材料が好ましく、より好ましくはアルミニウムである。
正極集電体の形状は、特に限定されず、薄膜状、円柱状、板状が挙げられる。薄膜の場合、厚さは、特に限定されないが、正極集電体として必要な強度及び取り扱い性の点から、通常、1μm〜100mmである。厚さは、好ましくは3μm以上、より好ましくは5μm以上であり、また、好ましくは1mm以下であり、より好ましくは50μm以下である。中でも、金属薄膜が好ましく、適宜、メッシュ状にすることができる。
正極活物質は、リチウムイオンを充放電時に吸蔵・放出できる物質であれば、特に限定されず、金属カルコゲン化合物等が挙げられる。金属カルコゲン化合物としては、バナジウムの酸化物、モリブデンの酸化物、マンガンの酸化物、クロムの酸化物、チタンの酸化物、タングステンの酸化物等の遷移金属酸化物、バナジウムの硫化物、モリブデンの硫化物、チタンの硫化物、CuS等の遷移金属硫化物、NiPS3、FePS3等の遷移金属のリン−硫黄化合物、VSe2、NbSe3等の遷移金属のセレン化合物、Fe0.25V0.75S2、Na0.1CrS2等の遷移金属の複合酸化物、LiCoS2、LiNiS2等の遷移金属の複合硫化物等が挙げられる。中でも、V2O5、V5O13、VO2、Cr2O5、MnO2、TiO、MoV2O8、LiCoO2、LiNiO2、LiMn2O4、TiS2、V2S5、Cr0.25V0.75S2、Cr0.5V0.5S2等が好ましく、より好ましくはLiCoO2、LiNiO2、LiMn2O4、及びこれらの遷移金属の一部を他の金属で置換したリチウム遷移金属複合酸化物である。正極活物質は、単独でも、2種以上を併用してもよい。
正極活物質の量は、通常、正極活物質層中、10〜99.9質量%である。量は、好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上であり、また、好ましくは99質量%以下である。
バインダーは、本発明のバインダー樹脂組成物以外に他のバインダーを用いることもできる。バインダーは、正極活物質を結着できる物質であれば、特に限定されず、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、芳香族ポリアミド、セルロース、ニトロセルロース等の樹脂系高分子;SBR(スチレン・ブタジエンゴム)、NBR(アクリロニトリル・ブタジエンゴム)、フッ素ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン・プロピレンゴム等のゴム系高分子;スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体又はその水素添加物、EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体)、スチレン・エチレン・ブタジエン・エチレン共重合体、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体又はその水素添加物等の熱可塑性エラストマー系高分子;シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン、ポリ酢酸ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体、プロピレン・α−オレフィン共重合体等の軟質樹脂系高分子;ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン・エチレン共重合体等のフッ素系高分子;アルカリ金属イオン(特にリチウムイオン)のイオン伝導性を有する高分子組成物が挙げられ、中でも重量平均分子量が1万〜300万ものを使用することができる。重量平均分子量は、好ましくは10万以上であり、また、好ましくは100万以下である。ここで、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(ポリスチレン換算)によって求めた値とする。バインダーは、単独でも、2種以上を併用してもよい。
バインダーの量は、特に限定されないが、正極活物質の保持及び機械的強度、並びにサイクル特性、容量、導電性といった電池性能を確保する点から、通常、正極活物質中、0.1〜80質量%である。量は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上であり、また、好ましくは60質量%以下、より好ましくは40質量%以下、特に好ましくは10質量%以下である。
正極の導電性を向上させるために、正極活物質層には導電材を含有させることができる。導電材は、特に限定されず、アセチレンブラック、カーボンブラック、黒鉛等の炭素粉末、金属繊維、金属粉末、金属箔等が挙げられる。導電材は、単独でも、2種以上を併用してもよい。
スラリーを使用して正極活物質層を形成する場合、その溶媒は、正極活物質等を溶解又は分散することが可能であれば、特に限定されず、水系溶媒、有機系溶媒のいずれも使用することができる。水系溶媒が、環境への負荷低減の点から好ましい。
水系溶媒としては水、アルコール(例えば、エタノール)等が挙げられ、有機系溶媒としては、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、アクリル酸メチル、ジエチルトリアミン、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン、エチレンオキシド、テトラヒドロフラン(THF)、トルエン、アセトン、ジメチルエーテル、ジメチルアセタミド、ヘキサメチルホスファルアミド、ジメチルスルホキシド、ベンゼン、キシレン、キノリン、ピリジン、メチルナフタレン、ヘキサン等が挙げられる。溶媒は、単独でも、2種以上を併用してもよい。
特に、水系溶媒を用いる場合、増粘剤を併用することが好ましい。特に、増粘剤をSBR等のゴム系高分子との組み合わせて用いることが好ましい。増粘剤は、特に限定されず、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロースのような水溶性セルロース系高分子、ポリビニルアルコール、酸化スターチ、リン酸化スターチ、カゼイン及びこれらの塩等が挙げられる。増粘剤は、単独でも、2種以上を併用してもよい。
増粘剤を使用する場合、その量は、良好な塗布性を確保し、正極活物質層に占める活物質の割合を適正に保ち、電池の容量が低下したり、正極活物質間の抵抗が増大するといった問題を回避するために、通常、正極活物質層中、0.1〜5質量%である。量は、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは0.6質量%以上であり、また、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下である。
正極活物質層の厚さは、通常、10〜200μmである。正極集電体へのスラリーの塗布、乾燥によって得られた正極活物質層は、正極活物質の充填密度を上げるために、ローラープレス等により圧密化することが好ましい。
<電解質>
電解質として、通常、非水系溶媒にリチウム塩を溶解させた非水系電解液、ゲル状電解質、ゴム状電解質、固体シート状電解質等が使用される。
電解質として、通常、非水系溶媒にリチウム塩を溶解させた非水系電解液、ゲル状電解質、ゴム状電解質、固体シート状電解質等が使用される。
非水系電解液に使用される非水系溶媒は、特に限定されず、当該分野で公知の非水系溶媒を使用することができる。例えば、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等の鎖状カーボネート類;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート等の環状カーボネート類;1,2−ジメトキシエタン等の鎖状エーテル類;テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、スルホラン、1,3−ジオキソラン等の環状エーテル類;ギ酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸メチル等の鎖状エステル類;γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等の環状エステル類等が挙げられる。これらの非水系溶媒は、単独でも、2種以上を併用してもよい。中でも、環状カーボネートと鎖状カーボネートを含む混合溶媒が好ましい。
非水系電解液に使用されるリチウム塩は、特に限定されず、当該分野で公知のリチウム塩を使用することができる。例えば、LiCl、LiBr等のハロゲン化物、LiClO4、LiBrO4、LiClO4等の過ハロゲン酸塩、LiPF6、LiBF4、LiAsF6等の無機フッ化物塩、リチウムビス(オキサラトホウ酸塩)LiBC4O8等の無機リチウム塩、LiCF3SO3、LiC4F9SO3等のパーフルオロアルカンスルホン酸塩、リチウムトリフルオロスルフォンイミド((CF3SO2)2NLi)等のパーフルオロアルカンスルホン酸イミド塩等の含フッ素有機リチウム塩が挙げられる。リチウム塩は、単独でも、2種以上を併用してもよい。非水系電解液中におけるリチウム塩の濃度は、通常、0.5M以上、2.0M以下である。
上記非水系電解液に、有機高分子化合物を含有させて、ゲル状電解質、ゴム状電解質又は固体シート状電解質とすることもできる。この場合、有機高分子化合物としては、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のポリエーテル系高分子化合物;ポリエーテル系高分子化合物の架橋体高分子;ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等のビニルアルコール系高分子化合物;ビニルアルコール系高分子化合物の不溶化物;ポリエピクロルヒドリン;ポリフォスファゼン;ポリシロキサン;ポリビニルピロリドン、ポリビニリデンカーボネート、ポリアクリロニトリル等のビニル系高分子化合物;ポリ(ω−メトキシオリゴオキシエチレンメタクリレート)、ポリ(ω−メトキシオリゴオキシエチレンメタクリレート−co−メチルメタクリレート)、ポリ(ヘキサフルオロプロピレン−ビニリデンフルオライド)等のポリマー共重合体等が挙げられる。
非水系電解液には、さらに被膜形成剤を含有させることができる。被膜形成剤としては、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、ビニルエチルカーボネート、メチルフェニルカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、ジフルオロエチレンカーボネート等のカーボネート化合物、エチレンサルファイド、プロピレンサルファイド等のアルケンサルファイド;1,3−プロパンスルトン、1,4−ブタンスルトン等のスルトン化合物;マレイン酸無水物、コハク酸無水物等の酸無水物等が挙げられる。
被膜形成剤を使用する場合、その量は、適正な初期不可逆容量の確保し、かつ低温特性、レート特性といった電池特性の低下を回避する点から、通常、10質量%以下であり、好ましくは8質量%以下、より好ましくは5質量%以下、特に好ましくは2質量%以下である。
電解質として、リチウムイオン等のアルカリ金属カチオンの導電体である高分子固体電解質を用いることもできる。高分子固体電解質としては、前述のポリエーテル系高分子化合物にリチウム塩を溶解させたものや、ポリエーテルの末端水酸基がアルコキシドに置換されているポリマー等が挙げられる。
<セパレータ>
正極と負極との間には、短絡を防止するために、通常、セパレータを介在させる。非水系電解液は、通常、このセパレータに含浸させて用いる。セパレータの材料は、特に限定されず、当該分野で公知の材料を使用することができ、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエーテルスルホン等が挙げられ、好ましくはポリオレフィンである。
正極と負極との間には、短絡を防止するために、通常、セパレータを介在させる。非水系電解液は、通常、このセパレータに含浸させて用いる。セパレータの材料は、特に限定されず、当該分野で公知の材料を使用することができ、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエーテルスルホン等が挙げられ、好ましくはポリオレフィンである。
本発明において、リチウムイオン二次電池の形態は、特に限定されず、当該分野で公知の形態とすることができる。例えば、シート電極及びセパレータをスパイラル状にしたシリンダータイプ、ペレット電極及びセパレータを組み合わせたインサイドアウト構造のシリンダータイプ、ペレット電極及びセパレータを積層したコインタイプ等が挙げられる。また、これらの形態の電池を任意の外装ケースに収めることにより、コイン型、円筒型、角型等の任意の形状にして用いることができる。
本発明において、リチウムイオン二次電池を組み立てる手順は、特に限定されず、電池の構造に応じて適切な手順で組み立てることができる。例えば、外装ケース上に負極を乗せ、その上に電解液とセパレータを設け、さらに負極と対向するように正極を乗せて、ガスケット、封口板と共にかしめて電池にすることができる。
次に実施例により本発明の具体的態様をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
[実施例1]
(バインダー樹脂組成物の調製)
カルボキシメチルセルロース(重合度:1000、エーテル化度:0.8、純分:99.4質量%)0.95gに、グリコール酸0.05gを添加・混合することによって、カルボキシメチルセルロースを95質量%含み、かつグリコール酸を5質量%含むバインダー樹脂組成物を調製した。
上述のとおり調製したバインダー樹脂組成物1gを、水99gに混合し、総質量に対して、カルボキシメチルセルロースの濃度が0.95質量%の混合溶液を得た。
(バインダー樹脂組成物の調製)
カルボキシメチルセルロース(重合度:1000、エーテル化度:0.8、純分:99.4質量%)0.95gに、グリコール酸0.05gを添加・混合することによって、カルボキシメチルセルロースを95質量%含み、かつグリコール酸を5質量%含むバインダー樹脂組成物を調製した。
上述のとおり調製したバインダー樹脂組成物1gを、水99gに混合し、総質量に対して、カルボキシメチルセルロースの濃度が0.95質量%の混合溶液を得た。
(負極活物質の製造)
天然に産出する黒鉛で、X線広角回折法による002面の面間隔(d002)が3.36ÅでLcが1000Å以上、タップ密度が0.46g/cm3、アルゴンイオンレーザーラマンスペクトルにおける1580cm−1付近のピーク強度に対する1360cm−1付近のピーク強度比であるラマンR値が0.13、平均粒径28.7μm、真密度2.27g/cm3にある鱗片状黒鉛粒子を、(株)奈良機械製作所製ハイブリダイゼーションシステムを用いて、ローターの周速度60m/秒、10分の条件で20kg/hrの処理速度で鱗片状黒鉛粒子を連続的に処理することで、黒鉛粒子表面にダメージを与えながら球形化処理を行い、その後さらに分級処理により微粉の除去を行った。得られた球形化黒鉛質炭素は、X線広角回折法による002面の面間隔(d002)が3.36ÅでLcが1000Å以上、タップ密度が0.83g/cm3、アルゴンイオンレーザーラマンスペクトルにおける1580cm−1付近のピーク強度に対する1360cm−1付近のピーク強度比であるラマンR値が0.24、平均粒径11.6μm、BET法比表面積7.7m2/g、真密度2.27g/cm3、平均円形度が、0.909であった。
次にこの球形化黒鉛質炭素100質量部と石炭由来のピッチ9.4質量部を捏合機で160℃で加熱混合行い、次いで非酸化性雰囲気で2週間かけて1000℃まで焼成し、その後室温まで冷却し、さらに粉砕分級を行うことで、複層構造球形化炭素材料を得た。この複層構造球形化炭素材料はX線広角回折法による002面の面間隔(d002)が3.36ÅでLcが1000Å以上、タップ密度が0.98g/cm3、アルゴンイオンレーザーラマンスペクトルにおける1580cm−1付近のピーク強度に対する1360cm−1付近のピーク強度比であるラマンR値が0.31、平均粒径11.6μm、d10粒径7.6μm、d90粒径17.5μm、BET法比表面積は3.5m2/g、被覆率は5.0%で、X線広角回折法による菱面体3Rと六方晶体2Hとの比3R/2Hが0.26、10nm〜100000nmの範囲の細孔容量は0.74ml/gであった。また、使用した石炭由来のピッチを単独で窒素性雰囲気中1300℃まで焼成し、その後室温まで冷却し、粉砕を行うことで得た非晶質炭素単独材のX線広角回折法による002面の面間隔(d002)は3.45Å、Lcは24Åであった。
天然に産出する黒鉛で、X線広角回折法による002面の面間隔(d002)が3.36ÅでLcが1000Å以上、タップ密度が0.46g/cm3、アルゴンイオンレーザーラマンスペクトルにおける1580cm−1付近のピーク強度に対する1360cm−1付近のピーク強度比であるラマンR値が0.13、平均粒径28.7μm、真密度2.27g/cm3にある鱗片状黒鉛粒子を、(株)奈良機械製作所製ハイブリダイゼーションシステムを用いて、ローターの周速度60m/秒、10分の条件で20kg/hrの処理速度で鱗片状黒鉛粒子を連続的に処理することで、黒鉛粒子表面にダメージを与えながら球形化処理を行い、その後さらに分級処理により微粉の除去を行った。得られた球形化黒鉛質炭素は、X線広角回折法による002面の面間隔(d002)が3.36ÅでLcが1000Å以上、タップ密度が0.83g/cm3、アルゴンイオンレーザーラマンスペクトルにおける1580cm−1付近のピーク強度に対する1360cm−1付近のピーク強度比であるラマンR値が0.24、平均粒径11.6μm、BET法比表面積7.7m2/g、真密度2.27g/cm3、平均円形度が、0.909であった。
次にこの球形化黒鉛質炭素100質量部と石炭由来のピッチ9.4質量部を捏合機で160℃で加熱混合行い、次いで非酸化性雰囲気で2週間かけて1000℃まで焼成し、その後室温まで冷却し、さらに粉砕分級を行うことで、複層構造球形化炭素材料を得た。この複層構造球形化炭素材料はX線広角回折法による002面の面間隔(d002)が3.36ÅでLcが1000Å以上、タップ密度が0.98g/cm3、アルゴンイオンレーザーラマンスペクトルにおける1580cm−1付近のピーク強度に対する1360cm−1付近のピーク強度比であるラマンR値が0.31、平均粒径11.6μm、d10粒径7.6μm、d90粒径17.5μm、BET法比表面積は3.5m2/g、被覆率は5.0%で、X線広角回折法による菱面体3Rと六方晶体2Hとの比3R/2Hが0.26、10nm〜100000nmの範囲の細孔容量は0.74ml/gであった。また、使用した石炭由来のピッチを単独で窒素性雰囲気中1300℃まで焼成し、その後室温まで冷却し、粉砕を行うことで得た非晶質炭素単独材のX線広角回折法による002面の面間隔(d002)は3.45Å、Lcは24Åであった。
(負極作製)
負極活物質100gと、上記混合溶液100g、及び、スチレン・ブタジエンゴム(不飽和度:75%、重量平均分子量:12万)の水分散液(固形分濃度50質量%)2gを、ハイスピードミキサーを用いて混合し、スラリーとした。このスラリーを銅箔(集電体)上にドクターブレード法で塗布し、110℃で乾燥した。これをロールプレスにより線密度20〜300kg/cmでプレスすることにより、活物質層を形成した。乾燥後の活物質層の質量は10mg/cm2、密度は1.6g/cm3、平均電極厚みは68μmであった。以上の手順により作製された負極(リチウムイオン二次電池用負極)を、実施例1の負極とした。
負極活物質100gと、上記混合溶液100g、及び、スチレン・ブタジエンゴム(不飽和度:75%、重量平均分子量:12万)の水分散液(固形分濃度50質量%)2gを、ハイスピードミキサーを用いて混合し、スラリーとした。このスラリーを銅箔(集電体)上にドクターブレード法で塗布し、110℃で乾燥した。これをロールプレスにより線密度20〜300kg/cmでプレスすることにより、活物質層を形成した。乾燥後の活物質層の質量は10mg/cm2、密度は1.6g/cm3、平均電極厚みは68μmであった。以上の手順により作製された負極(リチウムイオン二次電池用負極)を、実施例1の負極とした。
(性能評価用電池の作製)
LiCoO2 100質量部に、ポリ四フッ化エチレンの50質量%水分散液10質量部、カルボキシメチルセルロースの1質量%水溶液40質量部及びカーボンブラック3重量部を加えて混練し、スラリーとした。アルミニウム箔の両面にこのスラリーをドクターブレード法で塗布した。110℃で乾燥し、さらに層の密度が3.5g/cm3となるようにロールプレスで圧密化した。これを140℃で乾燥して正極とした。作製した正極の両面にプロピレンカーボネート:エチレンカーボネート:ジエチレンカーボネートの2:3:5(体積比)の混合液に、これに対して1質量%のビニレンカーボネート及び0.8MのLiPF6を混合した電解液を含浸させたポリエチレンセパレータを介して実施例1記載の負極を重ねて、評価用電池とした。
LiCoO2 100質量部に、ポリ四フッ化エチレンの50質量%水分散液10質量部、カルボキシメチルセルロースの1質量%水溶液40質量部及びカーボンブラック3重量部を加えて混練し、スラリーとした。アルミニウム箔の両面にこのスラリーをドクターブレード法で塗布した。110℃で乾燥し、さらに層の密度が3.5g/cm3となるようにロールプレスで圧密化した。これを140℃で乾燥して正極とした。作製した正極の両面にプロピレンカーボネート:エチレンカーボネート:ジエチレンカーボネートの2:3:5(体積比)の混合液に、これに対して1質量%のビニレンカーボネート及び0.8MのLiPF6を混合した電解液を含浸させたポリエチレンセパレータを介して実施例1記載の負極を重ねて、評価用電池とした。
(低温出力特性の評価)
25℃環境下で、0.2Cの定電流により150分間充電を行ない、その後−30℃の恒温槽に3時間以上保管した後に、各々0.25C、0.50C、0.75C、1.00C、1.25C、1.50C、1.75C、2.00Cで2秒間放電させ、その2秒目の電圧を測定した。電流−電圧直線と下限電圧(3V)とで囲まれる3角形の面積を出力(W)とした。
25℃環境下で、0.2Cの定電流により150分間充電を行ない、その後−30℃の恒温槽に3時間以上保管した後に、各々0.25C、0.50C、0.75C、1.00C、1.25C、1.50C、1.75C、2.00Cで2秒間放電させ、その2秒目の電圧を測定した。電流−電圧直線と下限電圧(3V)とで囲まれる3角形の面積を出力(W)とした。
(サイクル維持率の評価)
上記のとおり作製した評価用電池について、まず0.2Cで4.2Vまで充電し、さらに4.2Vで4mAとなるまで充電した後、0.2Cで3.0Vまで放電する予備充放電を行った。ついで、0.7Cで4.2Vまで充電し、さらに4.2Vで4mAとなるまで充電した後、1Cで3.0Vまで放電するサイクル充放電を300回行った。1回目の放電容量に対する300回目の放電容量の比を求め、これをサイクル維持率とした。
上記のとおり作製した評価用電池について、まず0.2Cで4.2Vまで充電し、さらに4.2Vで4mAとなるまで充電した後、0.2Cで3.0Vまで放電する予備充放電を行った。ついで、0.7Cで4.2Vまで充電し、さらに4.2Vで4mAとなるまで充電した後、1Cで3.0Vまで放電するサイクル充放電を300回行った。1回目の放電容量に対する300回目の放電容量の比を求め、これをサイクル維持率とした。
[実施例2]
バインダー樹脂組成物の調製において、カルボキシメチルセルロースの量を0.75gに、グリコール酸の量を0.25gにしたこと以外は実施例1と同様にして、作製した負極を実施例2の負極とした。
バインダー樹脂組成物の調製において、カルボキシメチルセルロースの量を0.75gに、グリコール酸の量を0.25gにしたこと以外は実施例1と同様にして、作製した負極を実施例2の負極とした。
[実施例3]
バインダー樹脂組成物の調製において、グリコール酸の代わりにグリセリン酸0.05gを用いたこと以外は実施例1と同様にして、作製した負極を実施例3の負極とした。
バインダー樹脂組成物の調製において、グリコール酸の代わりにグリセリン酸0.05gを用いたこと以外は実施例1と同様にして、作製した負極を実施例3の負極とした。
[実施例4]
バインダー樹脂組成物の調製において、グリコール酸の代わりにポリグリコール酸(重量平均分子量:50000)0.05gを用いたこと以外は実施例1と同様にして、作製した負極を実施例3の負極とした。
バインダー樹脂組成物の調製において、グリコール酸の代わりにポリグリコール酸(重量平均分子量:50000)0.05gを用いたこと以外は実施例1と同様にして、作製した負極を実施例3の負極とした。
[比較例1]
バインダー樹脂組成物の調製において、グリコール酸を添加しなかったこと以外は実施例1と同様にして、作製した負極を比較例1の負極とした。
バインダー樹脂組成物の調製において、グリコール酸を添加しなかったこと以外は実施例1と同様にして、作製した負極を比較例1の負極とした。
表1の結果から、実施例1〜4は、比較例1に対し、低温出力特性とサイクル特性に優れており、本発明の非水系二次電池電極用バインダー樹脂組成物を用いることにより低温出力及びサイクル特性を改善することができることがわかる。
本発明のバインダー樹脂組成物によれば、低温での出力特性とサイクル特性に優れた非水系二次電池、とりわけリチウムイオン二次電池を得ることができる。本発明のバインダー樹脂組成物を用いた電極は、水系溶媒を用いて電極を調製することができ、環境への負荷も小さく、産業上有用である。
Claims (6)
- セルロース系高分子又はその金属塩(A)、並びにヒドロキシ酸、ポリ(ヒドロキシ酸)及びそれらの金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種(B)を含有し、
(B)成分が、バインダー樹脂組成物100質量%に対して1〜99質量%であることを特徴とする、非水系二次電池電極用バインダー樹脂組成物。 - (B)成分における、ヒドロキシ酸及びポリ(ヒドロキシ酸)のモノマー単位を構成するヒドロキシ酸が、脂肪族ヒドロキシ酸又は芳香族ヒドロキシ酸である、請求項1記載の非水系二次電池電極用バインダー樹脂組成物。
- バインダーと負極活物質とを含有する負極活物質層を集電体上に形成した負極であって、該バインダーが、請求項1〜3のいずれか1項記載のバインダー樹脂組成物であることを特徴とする、非水系二次電池用負極。
- 負極活物質層が、さらにゴム系高分子を含む、請求項4記載の非水系二次電池用負極。
- リチウムイオンを吸蔵・放出可能な正極、負極及び電解液を備えた電池であって、該負極が、請求項5記載の負極であることを特徴とする非水系二次電池。
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