JP2010251060A - リチウムイオン二次電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】化学的安定性、サイクル耐久性、低温特性がより良好なリチウムイオン二次電池を提供する。
【解決手段】このリチウムイオン二次電池10は、集電体11に正極活物質12を形成した正極シート13と、集電体14の表面に負極活物質17を形成した負極シート18と、正極シート13と負極シート18との間に設けられたセパレータ19と、正極シート13と負極シート18の間を満たす非水電解液20と、を備えたものである。正極活物質12はオリビン構造を有するリチウム鉄複合酸化物と層状岩塩構造を有するリチウムニッケル複合酸化物とを含み、リチウムニッケル複合酸化物の割合が5重量%以上40重量%未満のものである。また、負極活物質17は非晶質炭素被覆黒鉛を有するものである。
【選択図】図1

Description

本発明は、リチウムイオン二次電池に関する。
従来、リチウムイオン二次電池の正極に用いられるリチウム化合物としては、リチウムニッケル複合酸化物やリチウムコバルト複合酸化物などが用いられている。また、近年、資源量の乏しいコバルトやニッケルに代わるリチウム化合物として、資源量が豊富で且つ安価であるリチウム鉄複合酸化物(LiFePO4など)が注目されている。このリチウム鉄複合酸化物は、コバルトやニッケルなどを含有するものに比してサイクル耐久性が劣る傾向にあることから、様々な改良が続けられている。
例えば特許文献1では、正極活物質としてリチウム鉄複合酸化物とニッケル酸リチウムとを所定の割合で混合したものを用い、負極活物質としてメソフェーズ炭素を黒鉛化したものを用いたものを提案している。ニッケル酸リチウムは化学的安定性が低いといわれているが、このような電池構成とすることで、サイクル耐久性や、化学的安定性が良好となっている。
特開2007−317534号公報
しかしながら、この特許文献1に記載されたリチウムイオン二次電池では、化学的安定性及びサイクル耐久性が優れているものの、まだ十分ではなく、より高い化学的安定性やサイクル耐久性を有するものが望まれていた。また、より高い低温特性を有するものであることも望まれていた。
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、リチウム鉄複合酸化物を含む正極活物質と黒鉛を含む負極活物質とを有するものにおいて、化学的安定性やサイクル耐久性をより向上するとともに、低温特性をより向上することができるリチウムイオン二次電池を提供することを主目的とする。
上述した目的を達成するために、本発明者らは、リチウムイオン二次電池において、オリビン構造を有するリチウム鉄複合酸化物と層状岩塩構造を有するリチウムニッケル複合酸化物とを所定の重量比で含む正極活物質を有する正極と、非晶質炭素被覆黒鉛を有する負極活物質を含む負極と、を有するものとすることで、サイクル耐久性や化学的安定性、低温特性をより良好にすることができることを見いだし、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明のリチウムイオン二次電池は、
オリビン構造を有するリチウム鉄複合酸化物と層状岩塩構造を有するリチウムニッケル複合酸化物とを含み、該リチウム鉄複合酸化物と該リチウムニッケル複合酸化物との総重量に対する該リチウムニッケル複合酸化物の割合が5重量%以上40重量%未満である正極活物質を有する正極と、
非晶質炭素被覆黒鉛を有する負極活物質を含む負極と、
前記正極と前記負極との間に介在し、リチウムイオンを伝導するイオン伝導媒体と、
を備えたものである。
このリチウムイオン二次電池では、化学的安定性及びサイクル耐久性、低温特性をより良好にすることができる。このような効果が得られる理由は定かではないが、サイクル耐久性の良好なリチウムニッケル複合酸化物と化学的安定性の良好なリチウム鉄複合酸化物とを適切な比率で組み合わせることにより、化学的安定性及びサイクル耐久性を良好にすることができると考えられる。また、リチウム鉄複合酸化物では、局所的なリチウムの吸蔵放出が起き、正極内でのリチウムの不均一が生じて化学的安定性やサイクル耐久性を低下させることがあるが、リチウムニッケル複合酸化物と組み合わせることで、これを緩和することができると考えられる。また、このリチウムの不均一は低温でより顕著になる傾向にあることから、リチウムニッケル複合酸化物を好適な範囲で添加することにより、低温特性もより良好となるものと考えられる。さらに非晶質炭素被覆黒鉛を含む負極活物質と組み合わせることで、正極と負極との容量バランスが良好となり、化学的安定性やサイクル耐久性、低温特性がより良好となると考えられる。
リチウムイオン二次電池10の一例を示す模式図である。
本発明のリチウムイオン二次電池は、オリビン構造を有するリチウム鉄複合酸化物と層状岩塩構造を有するリチウムニッケル複合酸化物とを含み、リチウム鉄複合酸化物とリチウムニッケル複合酸化物との総重量に対するリチウムニッケル複合酸化物の割合が5重量%以上40重量%未満である正極活物質を有する正極と、非晶質炭素被覆黒鉛を有する負極活物質を含む負極と、正極と負極との間に介在し、リチウムイオンを伝導するイオン伝導媒体と、を備えている。
本発明のリチウムイオン二次電池において、正極は、例えば、正極活物質と導電助材と結着材とを混合し適当な溶剤を加えてスラリー状の正極合材としたものを集電体の表面に塗布乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成したものでもよい。この正極は、オリビン構造を有するリチウム鉄複合酸化物と層状岩塩構造を有するリチウムニッケル複合酸化物とを含み、リチウム鉄複合酸化物とリチウムニッケル複合酸化物との総重量に対するリチウムニッケル複合酸化物の割合が5重量%以上40重量%未満である正極活物質を有している。正極活物質は、リチウム鉄複合酸化物とリチウムニッケル複合酸化物との総重量に対するリチウムニッケル複合酸化物の割合が5重量%以上40重量%未満であればよい。このうち10重量%以上35重量%未満であることが好ましく、25重量%以上35重量%未満であることがより好ましい。5重量%以上であれば、サイクル耐久性の良好なリチウムニッケル複合酸化物の効果が得られるし、リチウム鉄複合酸化物で生じることがある局所的なリチウムの吸蔵放出をより抑制することができると考えられる。また、40重量%未満であれば、リチウムニッケル複合酸化物が過剰でなく、より高い化学的安定性が得られると考えられる。また、10重量%以上35重量%以下であれば低温特性も良好となるため好ましいし、25重量%以上35重量%以下であれば、サイクル耐久性がより良好となるため好ましい。また、例えば、コスト面を重視してリチウム鉄複合酸化物を多く用いたものとしてもよいし、リチウムの拡散性が高く電子伝導性が良好なリチウムニッケル複合酸化物を多く用いて高速充電に適したものとしてもよい。このように、リチウムニッケル複合酸化物の割合は、5重量%以上40重量%未満の範囲であれば求める特性に応じて適宜選択することができる。
オリビン構造を有するリチウム鉄複合酸化物としては、例えば、一般式LiaFe1-bM1bPO4 で表されるものが挙げられる。ここで、M1は、特に限定されるものではないが、Mn,Mg,Ni,Co,Cu,Zn,Ge,Cr,V,Mo,Tiから選ばれる少なくとも1種以上であることが好ましい。このうち、Mn,Mg,Ni,Coを含んでいることがより好ましい。また、aは0.5≦a≦1.2を満たすものであることが好ましく、bは0≦b<1.0を満たすものであることが好ましく、0.01≦b≦0.3であることがより好ましい。a≧0.5であれば、初回の充電時に負極側に吸蔵させるリチウム量として十分であるし、a≦1.2であればリチウムの量が過剰とならず、金属リチウムの析出による電池の短絡を抑制できると考えられるからである。なお、オリビン構造を有するリチウム鉄複合酸化物は上述した基本式により特定されるものに限定されない。例えば、LiFePO4であってもよいし、LiやP,M1の一部が他の元素に置換されていてもよいし、化学量論組成のものだけでなく、一部の元素が欠損または過剰となる非化学量論組成のものであってもよい。
層状岩塩構造を有するリチウムニッケル複合酸化物としては、例えば、一般式LiNixM21-x2 で表されるものが挙げられる。ここで、M2は特に限定されるものではないが、Mg,Co,Mn,Alから選ばれる少なくとも1種以上であることが好ましい。また、xは0.4<x<0.95を満たすものであることが好ましい。なかでも、一般式LiNixM21-x-yAly2 で表され、xが0.5<x<0.95を満たし、yが0.001<y<0.2を満たすものであることが好ましい。このようにNiの一部がAlに置換されると、層状岩塩構造が安定化され、サイクル耐久性及び熱的安定性が向上すると考えられるからである。なお、層状岩塩構造を有するリチウムニッケル複合酸化物は上述した基本式により特定されるものに限定されない。例えば、LiNiO2であってもよいし、LiやNi,M2の一部が他の元素に置換されていてもよいし、化学量論組成のものだけでなく、一部の元素が欠損または過剰となる非化学量論組成のものであってもよい。
本発明のリチウムイオン二次電池において、負極は、例えば、負極活物質と導電助材と結着材とを混合し適当な溶剤を加えてスラリー状の負極合材としたものを集電体の表面に塗布乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成したものでもよい。この負極は、非晶質炭素被覆黒鉛を有する負極活物質を含んでいる。非晶質炭素被覆黒鉛とは、結晶性の高い黒鉛を核としてその表面の全部又は一部が結晶性の低い非晶質炭素材料で被覆されているものをいう。一般に、黒鉛系の材料を負極として用いる場合には、初期の充放電サイクルにおいて充電電気量に不可逆容量(リテンション)と呼ばれる放電時に取り出せない容量が含まれるものの、その後の充放電サイクルにおいては可逆性が高い優れたサイクル耐久性を有する。また、低く平坦な放電特性を有する。一方で、黒鉛は活性な結晶子端面が結晶表面に配向しやすく、電解液と反応しやすい傾向にある。そこで、黒鉛の表面を電解液と反応しにくい非晶質炭素で覆うことにより、サイクル耐久性が良好で化学的安定性がより良好なものとすることができると考えられる。さらに、黒鉛の表面を非晶質炭素で被覆することにより、電池反応に関与する黒鉛の比表面積が過大となることを抑制することができ、不可逆容量を低減でき、正極と負極との容量のバランスをより良好なものとすることができると考えられる。核となる黒鉛は、天然黒鉛であることがコストの面からも好ましい。このような天然黒鉛としては、鱗状黒鉛や鱗片状黒鉛が挙げられる。天然黒鉛は機械的な形状制御を施して用いるものであってもく、例えば、黒鉛粒子の角をとったり、球状となるように丸めたり、粉砕したりして用いるものであってもよい。このような形状制御により、プレス工程で生じる鱗片状黒鉛等の選択的配向を抑制し、リチウムイオンの挿入・脱離の阻害を抑制することができると考えられる。これにより、初期のリテンションが高くなることに起因するその後の充放電容量の低下を抑制することができると考えられる。また、粒子の比表面積を小さくする場合には嵩密度が低くなり過ぎないようにすることもできる。黒鉛を被覆する非晶質炭素はその原料や製法が特に限定されるものではないが、石炭系あるいは石油系のタールや、ピッチ、アスファルトなど(以下これらを重質油とも称する)と、核となる黒鉛とを十分に混合撹拌したのち、不要な重質油成分を除去し、乾燥して焼成することにより、黒鉛の表面に被覆物として生成したものであることが好ましい。なお、焼成は重質油が非晶質になる温度、例えば600℃〜2000℃で行うものであってもよいし、被覆した重質油層に難黒鉛化処理を行った上で2000℃以上の高温で焼成するものであってもよい。難黒鉛化処理としては、酸素、オゾン、二酸化炭素、イオン酸化物などの酸化性ガス雰囲気下で低温(例えば50℃〜400℃)で熱処理する方法などが挙げられる。この非晶質炭素は、黒鉛の表面全体を均一に覆っているものであることが好ましい。このようにすれば、よりばらつきの少ない材料とすることができ、負極の容量をより適切に制御できると考えられるからである。この非晶質炭素被覆の厚みは特に限定されないが、被覆される黒鉛の粒子径の1/2以下であることが好ましく、1/4以下であることがより好ましい。非晶質炭素被覆黒鉛は、平均粒子径(D50%)が1μm以上100μm以下であることが好ましく、10μm以上50μm以下であることがより好ましく、15μm以上25μm以下であることがさらに好ましい。また、真比重は1.5〜2.3であることが好ましく、2.0〜2.3であることがより好ましい。また、BET法で測定した比表面積が0.1m2/g以上10m2/g以下であることが好ましく、0.5m2/g以上2.0m2/g以下であることがより好ましい。
本発明のリチウムイオン二次電池において、正極及び負極に含まれる導電助材は、正極の電池性能に悪影響を及ぼさない電子伝導性材料であれば特に限定されず、例えば、天然黒鉛(鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛)や人造黒鉛などの黒鉛、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンウィスカ、ニードルコークス、炭素繊維、金属(銅、ニッケル、アルミニウム、銀、金など)などの1種又は2種以上を混合したものを用いることができる。これらの中で、導電助材としては、電子伝導性及び塗工性の観点より、カーボンブラック及びアセチレンブラックが好ましい。結着材は、活物質粒子及び導電助材粒子を繋ぎ止める役割を果たすものであり、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、あるいはポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、エチレン−プロピレン−ジエンマー(EPDM)、スルホン化EPDM、天然ブチルゴム(NBR)等を単独で、あるいは2種以上の混合物として用いることができる。また、水系バインダーであるセルロース系やスチレンブタジエンゴム(SBR)の水分散体等を用いることもできる。活物質、導電助材、結着材を分散させる溶剤としては、例えばN−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、アクリル酸メチル、ジエチルトリアミン、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン、エチレンオキシド、テトラヒドロフランなどの有機溶剤を用いることができる。また、水に分散剤、増粘剤等を加え、SBRなどのラテックスで活物質をスラリー化したものであってもよい。増粘剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロースなどの多糖類を単独で、あるいは2種以上の混合物として用いることができる。塗布方法としては、例えば、アプリケータロールなどのローラコーティング、スクリーンコーティング、ドクターブレイド方式、スピンコーティング、バーコータなどが挙げられ、これらのいずれかを用いて任意の厚さ・形状とすることができる。集電体としては、アルミニウム、チタン、ステンレス鋼、ニッケル、鉄、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラスなどのほか、接着性、導電性及び耐酸化性向上の目的で、アルミニウムや銅などの表面をカーボン、ニッケル、チタンや銀などで処理したものを用いることができる。これらについては、表面を酸化処理することも可能である。集電体の形状については、箔状、フィルム状、シート状、ネット状、パンチ又はエキスパンドされたもの、ラス体、多孔質体、発泡体、繊維群の形成体などが挙げられる。集電体の厚さは、例えば1〜500μmのものが用いられる。
本発明のリチウムイオン二次電池において、イオン伝導媒体は、支持塩を有機溶媒に溶かした非水電解液やイオン液体、ゲル電解質、固体電解質などを用いることができる。このうち、非水電解液であることが好ましい。支持塩としては、例えば、LiPF6,LiClO4,LiAsF6,LiBF4,Li(CF3SO22N,Li(CF3SO3),LiN(C25SO2)などの公知の支持塩を用いることができる。支持塩の濃度としては、0.1〜2.0Mであることが好ましく、0.8〜1.2Mであることがより好ましい。有機溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、プロピレンカーボネート(PC)、γ−ブチロラクトン(GBL)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)など従来の二次電池やキャパシタに使われる有機溶媒が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、複数を混合して用いてもよい。また、イオン液体としては、特に限定されるものではないが、1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムビス(トリフルオロスルホニル)イミドや1−エチル−3−ブチルイミダゾリウムテトラフルオロボレートなどを用いることができる。ゲル電解質としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリフッ化ビニリデンやポリエチレングリコール、ポリアクリロニトリルなどの高分子類またはアミノ酸誘導体やソルビトール誘導体などの糖類に、支持塩を含む電解液を含ませてなるゲル電解質が挙げられる。固体電解質としては、無機固体電解質や有機固体電解質などが挙げられる。無機固体電解質としては、例えば、Liの窒化物、ハロゲン化物、酸素酸塩などがよく知られている。なかでも、Li4SiO4、Li4SiO4−LiI−LiOH、xLi3PO4−(1−x)Li4SiO4、Li2SiS3、Li3PO4−Li2S−SiS2、硫化リン化合物などが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、複数を混合して用いてもよい。有機固体電解質としては、例えば、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、ポリホスファゼン、ポリエチレンスルフィド、ポリヘキサフルオロプロピレンなどやこれらの誘導体が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、複数を混合して用いてもよい。
本発明のリチウムイオン二次電池は、負極と正極との間にセパレータを備えていてもよい。セパレータとしては、二次電池の使用範囲に耐え得る組成であれば特に限定されないが、例えば、ポリプロピレン製不織布やポリフェニレンスルフィド製不織布などの高分子不織布、ポリエチレンやポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂の微多孔フィルムが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、複合して用いてもよい。
本発明のリチウムイオン二次電池の形状は、特に限定されないが、例えばコイン型、ボタン型、シート型、積層型、円筒型、偏平型、角型などが挙げられる。また、電気自動車等に用いる大型のものなどに適用してもよい。図1は、本発明のリチウムイオン二次電池10の一例を示す模式図である。このリチウムイオン二次電池10は、集電体11に正極活物質12を形成した正極シート13と、集電体14の表面に負極活物質17を形成した負極シート18と、正極シート13と負極シート18との間に設けられたセパレータ19と、正極シート13と負極シート18の間を満たす非水電解液20と、を備えたものである。このリチウムイオン二次電池10では、正極シート13と負極シート18との間にセパレータ19を挟み、これらを捲回して円筒ケース22に挿入し、正極シート13に接続された正極端子24と負極シートに接続された負極端子26とを配設して形成されている。
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
以下には、本発明のリチウムイオン二次電池を具体的に作製した例を実施例として説明する。
[実施例1]
正極は以下のように作製した。まず、正極活物質としては、オリビン構造のリチウム鉄複合酸化物(LiFePO4)と、リチウムニッケル複合酸化物(Li1.05Ni0.75Co0.15Al0.05Mg0.052)とを95:5の重量比で混合したものを用いた。この正極活物質と、導電助材としてのカーボンブラック(東海カーボン製TB5500)と、バインダとしてのポリフッ化ビニリデン(呉羽化学工業製KFポリマ)とを、78.5:13.8:11.7の重量比で混合して正極合材とした。このようにして作製した正極合材をN−メチル−2−ピロリドンに分散させてペースト状にし、厚さ20μmのアルミニウム箔の両面に塗工して乾燥させ、ロールプレスして54mm×450mmの正極シートを得た。負極は以下のように作製した。負極活物質としての非晶質炭素被覆黒鉛(大阪ガスケミカル製OMAC−2)と、バインダとしてのポリフッ化ビニリデンとを、95:5の重量比で混合して負極合材とした。作製した負極合材をN−メチル−2−ピロリドンに分散させてペースト状にし、厚さ10μmの銅箔の両面に塗工して乾燥させ、ロールプレスして56mm×500mmの負極シートを得た。このように作製した正極シート及び負極シートを25μm厚のポリエチレン製セパレータを挟んで捲回し、ロール状電極体を作製した。これを18650型円筒ケースに挿入し、エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とを体積比で3:7の割合で混合した溶液(キシダ薬品製)に1MのLiPF6を加えて調整した非水電解液を含浸させ、密閉して円筒形の電池を作製した。このようにして実施例1の電池を得た。なお、実験に用いた非晶質炭素被覆黒鉛は、平均粒子径(D50)が21.2μm、真比重が2.16、BET法により測定した比表面積が1.03m2/gであった。
[実施例2〜7]
リチウム鉄複合酸化物とリチウムニッケル複合酸化物との重量比を90:10としたこと以外は実施例1と同様に実施例2の電池を得た。また、リチウム鉄複合酸化物とリチウムニッケル複合酸化物との重量比を85:15としたこと以外は実施例1と同様に実施例3の電池を得た。また、リチウム鉄複合酸化物とリチウムニッケル複合酸化物との重量比を80:20としたこと以外は実施例1と同様に実施例4の電池を得た。また、リチウム鉄複合酸化物とリチウムニッケル複合酸化物との重量比を75:25としたこと以外は実施例1と同様に実施例5の電池を得た。また、リチウム鉄複合酸化物とリチウムニッケル複合酸化物との重量比を70:30としたこと以外は実施例1と同様に実施例6の電池を得た。また、リチウム鉄複合酸化物とリチウムニッケル複合酸化物との重量比を65:35としたこと以外は実施例1と同様に実施例7の電池を得た。
[比較例1〜7]
リチウム鉄複合酸化物とリチウムニッケル複合酸化物との重量比を100:0としたこと以外は実施例1と同様に比較例1の電池を得た。また、リチウム鉄複合酸化物とリチウムニッケル複合酸化物との重量比を98:2としたこと以外は実施例1と同様に比較例2の電池を得た。また、リチウム鉄複合酸化物とリチウムニッケル複合酸化物との重量比を60:40としたこと以外は実施例1と同様に比較例3の電池を得た。また、リチウム鉄複合酸化物とリチウムニッケル複合酸化物との重量比を50:50としたこと以外は実施例1と同様に比較例4の電池を得た。また、リチウム鉄複合酸化物とリチウムニッケル複合酸化物との重量比を40:60としたこと以外は実施例1と同様に比較例5の電池を得た。また、リチウム鉄複合酸化物とリチウムニッケル複合酸化物との重量比を20:80としたこと以外は実施例1と同様に比較例6の電池を得た。また、リチウム鉄複合酸化物とリチウムニッケル複合酸化物との重量比を0:100としたこと以外は実施例1と同様に比較例7の電池を得た。
[サイクル耐久性の評価]
実施例1〜7、比較例1〜7の電池を用いて、60℃の温度条件下で、電流密度2.0mA/cm2の定電流で4.1Vまでの満充電を行い、次いで、電流密度2.0mA/cm2の定電流で2.5Vまで放電を行う充放電を1サイクルとし、このサイクルを合計500サイクル行った。このとき、一サイクル目の放電容量及び500サイクル目の放電容量を測定し、(500サイクル目の放電容量/1サイクル目の放電容量)×100で表される容量維持率WHF(%)を求めた。作製した実施例1〜7、比較例1〜7の電池を用いて、60℃の温度条件下で、電流密度2.0mA/cm2の定電流で3.6Vまで部分充電を行い、次いで、電流密度2.0mA/cm2の定電流で2.5Vまで放電を行う充放電を1サイクルとし、このサイクルを合計500サイクル行った。このとき、1サイクル目の放電容量及び500サイクル目の放電容量を測定し、(500サイクル目の放電容量/1サイクル目の放電容量)×100で表される容量維持率WHP(%)を求めた。また、実施例1〜7、比較例1〜7の電池を用いて、0℃の温度条件下で、電流密度5.0mA/cm2の定電流で4.2Vまでの満充電を行い、次いで、電流密度5.0mA/cm2の定電流で2.5Vまで放電を行う充放電を1サイクルとし、このサイクルを合計200サイクル行った。このとき、1サイクル目の放電容量及び200サイクル目の放電容量を測定し、(200サイクル目の放電容量/1サイクル目の放電容量)×100で表される容量維持率WLF(%)を求めた。
[低温特性の評価]
初期低温出力を以下のようにして求めた。実施例1〜7、比較例1〜7の電池を用い、電池容量の50%(SOC=50%)まで充電したあとに、−30℃の温度条件下で、0.1A、0.5A、1.0A、2.0A、3.0A、5.0Aの電流を流して10秒後の電池電圧を測定した。流した電流値と電圧値とを直線近似により外挿し、10秒後の電池電圧が2.5Vとなるであろう電流値を求めた。そして、求めた電流値と2.5Vを乗じて−30℃での出力値である初期低温出力を求めた。また、高温下での充放電サイクル試験(満充放電)に使用した電池を用いて、初期低温出力と同様に高温サイクル後の低温出力を求めた。
[化学的安定性の評価]
初期の過充電試験を以下のようにして行った。実施例1〜7、比較例1〜7の電池を用いて、50℃の温度条件下、電流密度2mA/cm2の定電流で充電を行った。この充電を2.5時間継続し、発火の有無を確認した。また、上述した低温下での充放電サイクル試験に使用した電池を用いて、初期の過充電試験と同様に低温耐久後の過充電試験を行った。
[実験結果]
表1は、実施例1〜7及び比較例1〜7の実験結果をまとめたものである。この表1には初期の低温出力、高温耐久後の低温出力、高温満充放電サイクルでの容量維持率、高温部分充放電サイクルでの容量維持率、低温満充放電サイクルでの容量維持率、初期の過充電試験、低温耐久後の過充電試験の試験結果を示した。60℃で満充放電を繰り返すと、リチウムニッケル複合酸化物の割合が多いほど容量維持率が良好となった。また、60℃で部分充放電を繰り返した場合にも、リチウムニッケル複合酸化物の割合が多いほど容量維持率が良好となった。これに対して、0℃で満充放電を繰り返すと、リチウムニッケル複合酸化物の割合が50重量%以下の範囲(実施例1〜7、比較例1〜4)ではリチウムニッケル複合酸化物の割合が多いほど容量維持率が良好となったが、それを超えると(比較例5〜7)容量維持率が低下した。このうち、リチウムニッケル複合酸化物の割合が5重量%以上60重量%以下の範囲で、容量維持率が40%以上となり、良好であった。以上のことから、リチウムニッケル複合酸化物が5重量%以上60重量%以下の範囲(実施例1〜7,比較例3〜5)では低温、高温に関わらず容量維持率が良好となることがわかった分。このような範囲では、容量維持率が低下しやすい高温や低温での充放電サイクルにおいて容量維持率が良好であったことから、常温であっても同様に容量維持率が良好となることが推察された。
Figure 2010251060
初期の低温出力はリチウムニッケル複合酸化物が5重量%以上40重量%以下の範囲(実施例1〜7,比較例3)で5.5W以上の高い値を示した。また、高温耐久後の低温出力はリチウムニッケル複合酸化物が5重量%以上の範囲(実施例1〜7,比較例3〜7)で良好であった。以上のことから、リチウムニッケル複合酸化物が5重量%以上40重量%以下の範囲(実施例1〜7,比較例3)で低温出力が良好となることがわかった。
初期の過充電試験ではリチウムニッケル複合酸化物が0重量%以上40重量%未満の範囲(実施例1〜7,比較例1,2)で発火・発煙がなく良好であった。リチウムニッケル複合酸化物が40重量%以上80重量%未満の範囲(比較例3〜5)では発煙し、80重量%以上の範囲(比較例6,7)では発火した。また、低温耐久後の過充電試験では、リチウムニッケル複合酸化物が5重量%以上40重量%未満の範囲(実施例1〜7)で発火・発煙がなく良好であったが、リチウムニッケル複合酸化物が40重量%以上60重量%未満の範囲(比較例3,4)では発煙が生じ、0重量%以上5重量%未満の範囲(比較例1,2)及び60重量%以上の範囲(比較例6,7)では発火が生じた。以上のことから、電池の化学的安定性を考えると、リチウムニッケル複合酸化物の割合は少なくとも初期の過充電試験で発火を生じない0重量%以上80重量%未満の範囲(実施例1〜7、比較例1〜5)であることが必要であり、低温耐久後において発煙、発火を生じない5重量%以上40重量%未満の範囲(実施例1〜7)であることがより好ましいと考えられた。
このように、負極活物質として、非晶質炭素被覆黒鉛を含むものとし、正極活物質として、オリビン構造を有するリチウム鉄複合酸化物に対するリチウムニッケル複合酸化物の割合が5重量%以上40重量%未満とすると、過充電時の化学的安定性が良好であり、且つ低温出力や容量維持率も良好であることがわかった。このような結果が得られた理由は以下のように推察された。まず、高温サイクルでの容量維持率については、好適な性能を示すリチウムニッケル複合酸化物をリチウム鉄複合酸化物に添加することで、より向上したものと推察された。また、充放電時の電位窓を狭めた部分充放電での高温サイクルでの容量維持率について、リチウム鉄複合酸化物は、SOCが0%や100%の領域を除いて充放電曲線が平坦な形状を示し、部分充放電を繰り返し行うと局所的な充放電(不均一な充放電)が起き劣化が促進されることがある。これは、リチウム鉄複合酸化物の電子伝導性が低いことが一因と考えられる。これに対して、リチウムニッケル複合酸化物は、リチウム鉄複合酸化物より電子伝導性が良好であるため、リチウム鉄複合酸化物にリチウムニッケル複合酸化物を添加することにより、不均一な充放電を抑制して部分充放電における容量維持率の低下を抑制することができたと推察された。また、低温サイクルでの容量維持率について、リチウム鉄複合酸化物は、充電末期において抵抗値の変動が少ないことから、充電末期では負極側での電位降下が大きくなり、リチウム析出電位に到達した場合にはリチウムの析出が生じて容量の低下や化学的安定性の低下が生じることがある。これに対して、リチウムニッケル複合酸化物では、充電末期での抵抗増加が大きいため、これを添加することにより、充電末期での電位変動をより小さくすることができ、この結果、低温サイクルでの容量維持率をより高めることができたと推察された。但し、リチウムニッケル複合酸化物の添加量が60重量%を超えると、低温サイクルでの容量維持率が低下することから、好適な添加範囲においてリチウム鉄複合酸化物とリチウムニッケル複合酸化物との混合による何らかの相乗効果があるものと推察された。また、初期電池の過充電試験について、リチウムニッケル複合酸化物は、過充電状態ではリチウムが引き抜かれ、この引き抜かれたリチウムが負極上に堆積するなどして不具合が生じうる。また、高温下では酸素を生じて発熱することがある。これに対して、リチウム鉄複合酸化物は、過充電安定性が高く、構造が安定であり例えば高温下でも酸素の放出などが生じにくい。このため、リチウム鉄複合酸化物に対してリチウムニッケル複合酸化物を好適な添加範囲で添加することによって、化学的安定性を向上することができたと推察された。また、低温サイクル後の過充電試験について、リチウム鉄複合酸化物は、低温での充放電サイクル時に局所的な充放電が顕著となり、負極上に熱的に不安定な金属Liが析出するなどして化学的安定性が低下することが考えられる。これに対して、リチウムニッケル複合酸化物を添加すると、例えば金属Liの析出が抑制されるなどして、化学的安定性を向上することができたと推察された。但し、リチウムニッケル複合酸化物の添加量が60重量%を超えると、低温サイクル後の化学安定性が低下することから、好適な添加範囲においてリチウム鉄複合酸化物とリチウムニッケル複合酸化物との混合による何らかの相乗効果があるものと推察された。
なお、本発明のリチウムイオン二次電池は、負極活物質として用いる炭素が非晶質炭素被覆黒鉛である点で、特開2007−317534号公報(特許文献1)に記載された電池とは異なる。本発明における非晶質炭素被覆黒鉛は、メソフェーズ黒鉛を非晶質炭素で被覆したものであってもよいが、非晶質炭素で被覆することについては、特許文献1に記載も示唆もない。また、非晶質炭素被覆黒鉛を使用すれば、特許文献1に記載の条件と比較してより厳しい条件下でのサイクル耐久性がより良好となり、電池の化学的安定性をより高めることができる正極を選択することが可能となる。このような効果は当然に予測されるものではない。
10 リチウムイオン二次電池、11 集電体、12 正極活物質、13 正極シート、14 集電体、17 負極活物質、18 負極シート、19 セパレータ、20 非水電解液、22 円筒ケース、24 正極端子、26 負極端子。

Claims (3)

  1. オリビン構造を有するリチウム鉄複合酸化物と層状岩塩構造を有するリチウムニッケル複合酸化物とを含み、該リチウム鉄複合酸化物と該リチウムニッケル複合酸化物との総重量に対する該リチウムニッケル複合酸化物の割合が5重量%以上40重量%未満である正極活物質を有する正極と、
    非晶質炭素被覆黒鉛を有する負極活物質を含む負極と、
    前記正極と前記負極との間に介在し、リチウムイオンを伝導するイオン伝導媒体と、
    を備えたリチウムイオン二次電池。
  2. 前記リチウムニッケル複合酸化物は、一般式LiNixM21-x2(M2はMg,Co,Mn,Alから選ばれる少なくとも1種以上であり、xは0.4<x<0.95を満たす)で表されるものである、請求項1に記載のリチウムイオン二次電池。
  3. 前記正極活物質は、前記リチウム鉄複合酸化物と前記リチウムニッケル複合酸化物との総重量に対する該リチウムニッケル複合酸化物の割合が10重量%以上35重量%以下である、請求項1又は2に記載のリチウムイオン二次電池。
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