JP2011208767A - 変速歯車装置およびその製造方法 - Google Patents

変速歯車装置およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】組付け性を損なうことなく、高精度な変速歯車装置を提供することを目的とする。
【解決手段】変速歯車装置は、内歯歯車部材10と、偏心部材31,32と、揺動部材40,50と、一対の第一、第二回転部材60,70と、第一、第二回転部材60,70の挿入孔61,71に両持ち支持されるピン80と、を備える。挿入孔61および挿入孔71は同径に形成され、ピン80は、一側端部81が挿入孔61に圧入されるとともに、他側端部83が挿入孔71に支持されるように、他側端部83の外径φcが一側端部81の外径φaより小さくなるように形成されている。
【選択図】図1

Description

本発明は、変速歯車装置に関するものである。
変速歯車装置は、モータなどにより入力される回転を変速する減速装置または増速装置として用いられている。このような変速歯車装置において、高い変速比を得るために、例えば、特許文献1,2に示すように、遊星歯車機構を利用した減速装置が知られている。特許文献1,2の減速装置は、入力軸の回転により遊星歯車を揺動回転させ、遊星歯車に形成された貫通孔を貫通するピンを介して遊星歯車の自転成分のみを伝達して出力している。このような減速装置において、上記のピンは、遊星歯車を挟むように配置された出力側部材と支持部材により両持ち支持されることがある。
例えば、特許文献1には、段落[0043]において、ピン(内ピン107)の一端部が出力側部材(出力軸102)に固着又は嵌入され、他端部が支持部材(フランジ部材116)に保持される構成が記載されている。このような構成では、出力側部材のピン孔と支持部材のピン孔は、それぞれの孔径が異なるように設定されるものと考えられる。より具体的には、支持部材のピン孔の方が出力側部材のピン孔よりも孔径が大きくなるように形成される。
そうすると、支持部材のピン孔と出力側部材のピン孔が別々に加工されると、各ピン孔の中心がずれるといった加工誤差が生じることがある。そのため、孔径の大きい支持部材のピン孔は、出力側部材のピン孔の加工誤差を吸収するように比較的大きな寸法公差を設定される。これにより、ピンの外周面と支持部材のピン孔の内周面との距離が大きくなることがある。よって、減速装置の駆動状態において、適切にピンを支持することができないおそれがある。
また、ピンの両持ち支持の構成として、例えば、特許文献2には、段落[0048]において、ピン(キャリアピン316)は、分解組立を可能とするためにねじ部327とナット328を螺合締結する構成が記載されている。この構成におけるピンは、一端部に配置された止め輪324と、他端部のねじ部327に螺合されるナット328により、出力側部材(フランジ部314)、スペーサ325、および支持部材(支持リング317)を締め付けている。このような構成では、動力を伝達するピンが出力側部材に圧入されないことから、出力側部材のピン孔の孔径がピンの外径よりも大きくなるように設定される。そうすると、減速装置の駆動状態において、出力側部材のピン孔の中心に対してピンの中心が移動し、出力軸の周方向のガタが生じるおそれがある。
さらに、特許文献2には、従来の技術として段落[0023]において、ピン(キャリアピン116)が出力側部材(フランジ部114)および支持部材(支持リング117)に圧入され両持ち支持される構成が記載されている。このような構成では、ピンの外周面と出力側部材および支持部材のピン孔の内周面との間に隙間がないため、出力軸の周方向のガタを抑制できるものと考えられる。しかし、ピンの両端部が出力側部材および支持部材に圧入するため、装置の組付けが困難となるおそれがある。また、各部材に要求される寸法精度が高くなると、製造コストが高くなり、各部材に寸法誤差が生じた場合に装置の精度に反映してしまうことがある。
その他に、特許文献1には、段落[0044]において、連結部材(キャリアピン132)により出力側部材(出力軸102)と支持部材(フランジ部材116)を強固に連結する構成が記載されている。この連結部材は、その両端部を圧入される構成であるが、特許文献1の段落[0044]に記載されているように、遊星歯車(第1及び第2外歯歯車グループ105a、105b)に形成される貫通孔(共通キャリアピン孔134a、134b)を非接触状態で遊嵌していることから、動力の伝達に寄与していない部材である。仮に連結部材を遊星歯車の貫通孔と接触するようにし動力を伝達するものとした場合でも、両端部が圧入されていることから、特許文献2の従来の技術にある減速装置と同様の課題を有するものである。
さらに、特許文献2には、段落[0049]−[0059]において、各部位の径が異なる調整ピン(内ピン307)を備える構成が記載されている。この調整ピンは、動力の伝達を目的としたものではなく、減速装置に生じるバックラッシを調整するものである。そして、特に段落[0049]に記載されているように、出力側部材(フランジ部314)および支持部材(支持リング317)のピン孔(内ピン保持孔326a、326b)に滑り接触する程度に遊嵌されている。つまり、仮にこの調整ピンが動力の伝達に寄与するものとした場合でも、その両端部ともに出力側部材および支持部材に圧入されるものではないことから、出力軸の周方向のガタが生じるものと考えられる。
特開2002−266955号公報 特開平7−248046号公報
上記のように、動力を伝達するピンを両持ちする変速歯車装置では、ピンの各端部を支持する種々の構成によって周方向のガタが生じたり組付けが困難になったりするおそれがあった。
本発明は、このような事情を鑑みてなされたものであり、組付け性を損なうことなく、高精度な変速歯車装置を提供することを目的とする。
(変速歯車装置)
上記の課題を解決するため、請求項1に係る発明の特徴は、
共通の入出力軸線を中心として入力軸および出力軸を回転可能に支持し、内周面に内歯歯車が形成された内歯歯車部材と、
前記入出力軸線に対して偏心した偏心軸線を中心とする偏心部材と、
環状からなり、前記偏心部材の外周側に回転可能に支持され、外周面に形成され前記内歯歯車と噛合可能な外歯歯車と、前記入出力軸線から径方向に離間した位置を中心とする円筒内面の貫通孔と、を有し、前記入出力軸線回りに揺動回転する揺動部材と、
前記揺動部材を挟むように前記入出力軸線方向に対向して配置される一対の第一、第二回転部材であって、前記内歯歯車部材により前記入出力軸線を中心として回転可能にそれぞれ支持されるとともに、前記貫通孔よりも小径からなる円筒内面の挿入孔がそれぞれ形成された前記第一、第二回転部材と、
円柱状からなり、前記貫通孔を貫通するとともに、各端部が前記第一回転部材の前記挿入孔および前記第二回転部材の前記挿入孔に挿入されて両持ち支持されるピンと、
を備え、
前記第一回転部材の前記挿入孔および前記第二回転部材の前記挿入孔は、同径に形成され、
前記ピンは、各前記端部のうち一側端部が前記挿入孔に対して締め代をもって圧入され、他側端部が前記挿入孔に対して無圧状態で接触または隙間を有して挿入されるように、前記他側端部の外径が前記一側端部の外径より小さくなるように形成されていることである。
請求項2に係る発明の特徴は、請求項1において、
前記内歯歯車部材または前記偏心部材は、前記入力軸および前記出力軸のうち一方と連結され、
前記第一回転部材および前記第二回転部材のうち一方部材は、当該一方部材の前記挿入孔に前記ピンの前記一側端部が圧入されるとともに、前記入力軸および前記出力軸のうち他方と連結されることである。
請求項3に係る発明の特徴は、請求項1または2において、前記ピンの前記一側端部および前記他側端部の間の中間部は、前記一側端部および前記他側端部のうち一方と外径が等しくなるように形成され、他方と連結される部位に段部が形成されていることである。
請求項4に係る発明の特徴は、請求項1〜3の何れか一項において、前記ピンの前記他側端部は、前記第一回転部材の前記挿入孔または前記第二回転部材の前記挿入孔に隙間嵌めされることである。
(変速歯車装置の製造方法)
請求項5に係る発明の特徴は、請求項1〜4の何れか一項における変速歯車装置の製造方法であって、前記第一回転部材の前記挿入孔および前記第二回転部材の前記挿入孔は、共加工により形成されることである。
請求項1に係る発明によると、一対の第一、第二回転部材は、それぞれの挿入孔が同径に形成される。そして、各挿入孔に各端部が挿入されるピンは、他側端部の外径が一側端部の外径より小さくなるように形成されている構成としている。これにより、ピンは、各端部のうち一側端部が挿入孔に対して締め代をもって圧入されるとともに、他側端部が挿入孔に対して無圧状態で接触または隙間を有して挿入されることになる。
このような構成により、各挿入孔は、一方がピンを圧入されて支持し、他方がピンを無圧状態で接触または隙間を有する状態で支持するにも関わらず同径となるように設定することができる。従来のピンは、延伸方向に同径に形成されると、両持ち支持される両端部も同径となっている。そのため、上記のように一側端部を圧入、他側端部を遊嵌により両持ち支持する場合には、第一、第二回転部材に相当する部材に形成される挿入孔は、同径に設定することができなかった。そうすると、孔径の大きい回転部材の挿入孔は、孔径の小さい回転部材の挿入孔の加工誤差を勘案した公差、また所定の組付け性を確保した公差が設定される。そのため、孔径の大きい回転部材の挿入孔は、ピンを支持するピン孔としてはガタが大きくなってしまうことがあった。
これに対して、本発明の変速歯車装置における第一、第二回転部材の各挿入孔は、同径となるように設定することができるので、ピンの他側端部を支持する挿入孔においてもガタを小さくすることができる。これにより、変速歯車装置の駆動状態において、確実にピンを両持ち支持することができるので、変速歯車装置の動作の安定性を向上し装置全体として高精度にできる。また、第一、第二回転部材の各挿入孔は、同径に設定することができるので、共加工により形成するものとしてもよい。これにより、同一のピンが挿入される各挿入孔の中心を一致させることができるので、ピンが圧入される挿入孔の加工誤差を吸収するための公差が不要となる。従って、より確実にピンを両持ち支持できるとともに、装置全体としての精度を向上させることができる。
ここで、本発明の変速歯車装置は、内歯歯車部材と、偏心部材と、(第一、第二)回転部材とが入出力軸線回りに相対回転することにより入力軸の回転を変速して出力軸に駆動力を伝達するものである。そのため、入力軸および出力軸は、上記の何れかの部材に適宜連結される。つまり、例えば、入力軸に偏心部材を連結し、内歯歯車部材をハウジングに固定し、出力軸に連結された回転部材に揺動部材およびピンを介して駆動力を伝達する構成としてもよい。その他に、例えば、回転部材をハウジングに固定し、入力軸が連結された偏心部材から出力軸が連結された内歯歯車部材に駆動力を伝達する構成としてもよい。さらに、これらの入力軸と出力軸を入れ替えることにより、入力軸の回転を減速または増速するように切り換えるものとしてもよい。
請求項2に係る発明によると、内歯歯車部材または偏心部材は、入力軸および出力軸のうち一方と連結され、第一回転部材および第二回転部材のうち一方部材は、当該一方部材の挿入孔にピンの一側端部が圧入されるとともに、入力軸および出力軸のうち他方と連結される構成としている。本発明では、第一回転部材および第二回転部材がハウジングなどに固定されずに入力軸または出力軸と連結される構成を対象としている。そして、上記構成の場合に、入力軸および出力軸のうち他方は、ピンの一側端部が圧入される挿入孔を有する回転部材に連結される。これにより、揺動部材の揺動回転から自転成分のみをピンが取り出し、当該ピンを圧入されて支持する回転部材が駆動力を出力または入力することになるので、より確実に駆動力を伝達することができる。
請求項3に係る発明によると、ピンの一側端部および他側端部の間の中間部は、一側端部および他側端部のうち一方と外径が等しくなるように形成され、他方と連結される部位に段部が形成されている構成としている。ピンの中間部は、揺動部材の貫通孔の円筒内面と直接的または間接的に接触し、駆動力を伝達する部位である。そして、段部が形成されたピンは、中間部が貫通孔と確実に接触するとともに、同径に形成された各挿入孔により両端部を両持ち支持される。これにより、変速歯車装置の動作の安定性を向上し装置全体として高精度にできる。また、中間部の外径を一側端部および他側端部の何れかの外径と等しくするかについては、他部材との構成上の関係などから適宜設定される。中間部の外径は、例えば、中間部と貫通孔の間に介在させる転がり軸受けにより要求される寸法、圧入される一側端部の圧入代(締め代)などを勘案して設定される。
請求項4に係る発明によると、ピンの他側端部は、第一回転部材の挿入孔または第二回転部材の挿入孔に隙間嵌めされる構成としている。一般に、ピンなどの軸部材と孔とが嵌め合いの関係にある場合には、寸法関係により軸部材と孔の間に締め代ができる締まり嵌めと、軸部材と孔の間に隙間ができる隙間嵌めと、それらの中間の中間嵌めとの3種類があることが知られている。締まり嵌めは、本発明においてピンの一側端部が挿入孔に圧入されている状態である。そして、ピンの他側端部は、ピンと挿入孔の間に隙間を有して挿入されて嵌め合いの関係になるように隙間嵌めされる構成としている。これにより、例えば、変速歯車装置の組付けの最終段において、回転部材を内歯歯車部材の内部に組付ける場合に、突出するピンを挿入孔に挿入しやすくすることができる。このように、変速歯車装置の組付け性を損なうことなく、ピンを確実に両持ち支持することができる。
請求項5に係る発明によると、第一回転部材の挿入孔および第二回転部材の挿入孔は、共加工により形成される構成としている。本発明における変速歯車装置は、ピンの他側端部の外径が一側端部の外径より小さくなるように形成されている。そして、ピンを両持ち支持する第一回転部材および第二回転部材は、それぞれに形成されているピンの挿入孔が同径に形成されている。
このような構成とする場合に、例えば、第一回転部材および第二回転部材を治具などにより固定し、各挿入孔を共加工により形成する。これにより、同一のピンが挿入される各挿入孔の中心を一致させることができるので、ピンが圧入される挿入孔の加工誤差を吸収するための公差が不要となる。従って、より確実にピンを両持ち支持できるとともに、装置全体としての精度を向上させることができる。また、本発明の製造方法においては、その他に、挿入孔を形成した軸状部材から軸直交方向に切断加工することにより、第一回転部材および第二回転部材を製造してもよい。
実施形態:減速装置1の構成を示した断面図である。 減速装置1の基本構成を示す概念図である。 サポートプレート70を透視する図2におけるA方向矢視図である。 減速装置1におけるピン80を示す正面図である。 減速装置1におけるアウトプットプレート60およびサポートプレート70を示す側面図である。 実施形態の変形態様:減速装置101の構成を示した断面図である。
以下、本発明の変速歯車装置を具体化した実施形態について図面を参照しつつ説明する。
<実施形態>
本実施形態において、本発明の変速歯車装置を適用した減速装置1について、図1〜図5を参照して説明する。図1は、減速装置1の構成を示した断面図である。図2は、減速装置1の基本構成を示す概念図である。図3は、サポートプレート70を透視する図2におけるA方向矢視図である。図4は、減速装置1におけるピン80を示す正面図である。図5は、減速装置1におけるアウトプットプレート60およびサポートプレート70を示す側面図である。
(減速装置1の構成)
減速装置1は、主として、ハウジング10と、入力軸部材21と、出力軸部材22と、クランク軸30と、第一揺動部材40と、第二揺動部材50と、アウトプットプレート60と、サポートプレート70と、ピン80と、軸受け91〜93とから構成される。ハウジング10(本発明の「内歯歯車部材」に相当する)は、図1に示すように、共通の入出力軸線Loを中心として入力軸部材21および出力軸部材22を回転可能に支持し、各部材からなり減速を行う変速機構を収容するケースである。また、ハウジング10は、内周面に入出力軸線Loの方向に延伸する内歯歯車11が形成されている。
入力軸部材21は、図示しないモータのロータに連結され、モータが駆動することで回転する入力軸である。この入力軸部材21は、後述するサポートプレート70を介してハウジング10に回転可能に支持される。これにより、入力軸部材21は、入出力軸線Loの回りに回転可能となっている。また、入力軸部材21は、減速装置1の一方側(図1,2の左側)に配置され、他方側の端部が後述するクランク軸30に連結されている。
出力軸部材22は、ハウジング10に収容された変速機構により減速された回転を出力する出力軸である。この出力軸部材22は、減速装置1の他方側(図1,2の右側)に配置され、一方側の端部が後述するアウトプットプレート60に連結されている。そして、出力軸部材22は、このアウトプットプレート60を介してハウジング10に回転可能に支持される。これにより、出力軸部材22は、入出力軸線Loの回りに回転可能となっている。
クランク軸30は、第一偏心部31と、第二偏心部32を有する。この第一偏心部31および第二偏心部32は、本発明の「偏心部材」に相当する。第一偏心部31は、クランク軸30の軸心(入出力軸線Lo)に対して偏心した偏心形状をなしている。この第一偏心部31は、クランク軸30の入力側(図1の左側)に配置され、クランク軸30に一体的に形成されている。また、第一偏心部31の断面形状は、入出力軸線Loに対してクランク軸30の径方向に偏心した第一偏心軸線Laを中心とした真円状に形成されている。そして、第一偏心部31は、入出力軸線Loを中心としたクランク軸30の回転に伴い、入出力軸線Loを中心として回転する。
第二偏心部32は、第一偏心部31と同様に、クランク軸30の軸心(入出力軸線Lo)に対して偏心した偏心形状をなしている。この第二偏心部32は、第一偏心部31に対して出力側(図1の右側)に配置されている。そして、第二偏心部32は、第一偏心部31と連結されるとともに、クランク軸30に一体的に形成されている。また、第二偏心部32の断面形状は、入出力軸線Loに対してクランク軸30の径方向に偏心した第二偏心軸線Lbを中心とした真円状に形成されている。そして、第二偏心部32は、入出力軸線Loを中心としたクランク軸30の回転に伴い、入出力軸線Loを中心として回転する。
このように、クランク軸30は、入出力軸線Loの方向に連設される第一偏心部31および第二偏心部32を有している。また、第一偏心部31と第二偏心部32は、入出力軸線Loに対する偏心方向が互いに逆方向となるように連結されている。換言すると、本実施形態において、2つの偏心部材である第一偏心部31と第二偏心部32は、アウトプットプレート60の周方向に等間隔となるように、180(deg)間隔で連結される。
また、クランク軸30は、その一方側(図1の左側)の端部が入力軸部材21と連結されている。これにより、クランク軸30は、入力軸部材21の回転に伴い入出力軸線Loを中心として回転する。また、このような構成により、クランク軸30の第一偏心部31および第二偏心部32は、クランク軸30を介して入力軸部材21に連結されることになる。
第一揺動部材40は、環状からなり、図1,2に示すように、外歯歯車41と、貫通孔42を有し、第一偏心部31の外周側に回転可能に支持される遊星歯車である。外歯歯車41は、第一揺動部材40の外周面に形成されハウジング10の内歯歯車11と噛合可能な歯車である。貫通孔42は、入出力軸線Loからクランク軸30の径方向に離間した位置を中心とする円筒内面の孔である。この第一揺動部材40の貫通孔42の内径は、貫通するピン80の直径と、第一揺動部材40の偏心量(入出力軸線Loと第一偏心軸線Laの離間距離)との和にほぼ等しい。ここで、本実施形態におけるピン80には軸受け93が外挿されることから、上記の「ピン80の直径」とは、実質的に軸受け93の直径に相当する。
より詳細には、第一揺動部材40の貫通孔42の内周面は、減速装置1の駆動状態において、ピン80に外挿される軸受け93の外周面と当接し駆動力を伝達する。このような構成により、第一揺動部材40は、入出力軸線Loを中心とする第一偏心部31の回転に伴い、第一偏心軸線Laの回りに自転しながら入出力軸線Loの回りを公転するように揺動回転することになる。そして、揺動回転する第一揺動部材40の自転成分がピン80に伝達され、第一揺動部材40の自転の回転数でアウトプットプレート60が回転する。
第二揺動部材50は、第一揺動部材40と同様に、環状からなり、図1,2に示すように、外歯歯車51と、貫通孔52を有し、第二偏心部32の外周側に回転可能に支持される遊星歯車である。外歯歯車51は、第二揺動部材50の外周面に形成されハウジング10の内歯歯車11と噛合可能な歯車である。貫通孔52は、入出力軸線Loからクランク軸30の径方向に離間した位置を中心とする円筒内面の孔である。この第二揺動部材50の貫通孔52の内径は、挿入されるピン80の直径と、第二揺動部材50の偏心量(入出力軸線Loと第二偏心軸線Lbの離間距離)との和にほぼ等しい。
より詳細には、第二揺動部材50の貫通孔52の内周面は、減速装置1の駆動状態において、ピン80に外挿される軸受け93の外周面と当接し駆動力を伝達する。このような構成により、第二揺動部材50は、入出力軸線Loを中心とする第二偏心部32の回転に伴い、第二偏心軸線Lbの回りに自転しながら入出力軸線Loの回りを公転するように揺動回転することになる。そして、揺動回転する第二揺動部材50の自転成分がピン80に伝達され、第二揺動部材50の自転の回転数でアウトプットプレート60が回転する。
また、クランク軸30の第一偏心部31と第二偏心部32は、アウトプットプレート60の周方向に等間隔となるように連結されている。よって、第一、第二偏心部31,32の外周側にそれぞれ支持される第一、第二揺動部材40,50は、アウトプットプレート60の周方向に等間隔に位置する関係となる。ここで、減速装置1の駆動状態において、クランク軸30の回転により第一、第二偏心部31,32が回転し、この回転に伴い第一、第二揺動部材40,50が揺動回転したとする。この場合に、第一、第二揺動部材40,50の各自転軸(第一偏心軸線Laおよび第二偏心軸線Lb)は、上記の位置関係により、入出力軸線Loに対称の位置を維持しつつ入出力軸線Loの回りを回転する。
アウトプットプレート60(本発明の「第一回転部材」に相当する)は、図1に示すように、軸受け91を介してハウジング10により入出力軸線Loを中心として回転可能に支持される円盤状の部材である。このアウトプットプレート60は、第一、第二揺動部材40,50の貫通孔42,52よりも小径からなる円筒内面の挿入孔61が形成されている。アウトプットプレート60は、減速装置1における一方側の盤面から入出力軸線Loの方向にピン80が突出するように、挿入孔61にピン80の一側端部81が圧入される。
よって、アウトプットプレート60の挿入孔61の内径D1は、ピン80の一側端部81の外径φaよりも締め代の分だけ小径に設定されている。また、本実施形態において、図3に示すように、6本のピン80がアウトプットプレート60の周方向に等間隔となるように上記盤面に固定されている。また、他方側の盤面は、出力軸部材22と連結されている。
サポートプレート70(本発明の「第二回転部材」に相当する)は、軸受け92を介してハウジング10により入出力軸線Loを中心として回転可能に支持される円板状の部材である。このサポートプレート70は、第一、第二揺動部材40,50の貫通孔42,52よりも小径からなる円筒内面の挿入孔71が形成されている。サポートプレート70は、第一、第二揺動部材40,50の貫通孔42,52を貫通したピン80の他側端部83を挿入孔71に挿入され、他側端部83を支持する。これにより、サポートプレート70は、アウトプットプレート60に固定された6本のピン80を支持するとともに、アウトプットプレート60の回転に伴いアウトプットプレート60と同じ回転数で回転する。
また、サポートプレート70の挿入孔71は、ピン80の他側端部83がゼロタッチ(無圧状態で接触する状態)、または隙間を有して挿入されるように内径D2が設定されている。本実施形態において、内径D2は、ピン80の他側端部83が挿入孔71に隙間嵌めされるように設定されている。つまり、サポートプレート70の挿入孔71の内径D2は、ピン80の他側端部83の外径φcよりも大径に設定されている。さらに、挿入孔71の内径D2は、アウトプットプレート60の挿入孔61の内径D1と同径に設定されている。上記構成のアウトプットプレート60とサポートプレート70は、第一、第二揺動部材40,50を挟むように入出力軸線Lo方向に対向して配置される一対の回転部材である。
ピン80は、図1に示すように、一側端部81と、中間部82と、他側端部83と、段部84とから構成され、一体の段付き柱状部材である。ピン80は、一側端部81がアウトプットプレート60の挿入孔61に挿入され、他側端部83がサポートプレート70の挿入孔71に挿入されて両持ち支持される。また、一側端部81および他側端部83の間の中間部82は、第一、第二揺動部材40,50の貫通孔42,52を貫通している。
ここで、ピン80の一側端部81が挿入されるアウトプットプレート60の挿入孔61の内径D1と、他側端部83が挿入されるサポートプレート70の挿入孔71の内径D2とは、同径に形成されるものとした。さらに、一側端部81は、アウトプットプレート60の挿入孔61に対して所定の締め代をもって圧入される。これに対して、他側端部83は、サポートプレート70の挿入孔71に対して隙間嵌めされる。そのため、ピン80は、図4に示すように、他側端部83の外径φcが一側端部81の外径φaより小さくなるように形成されている。また、中間部82の外径φbは、本実施形態において、一側端部81の外径φaと等しくなるように形成されている。これにより、中間部82が他側端部83と連結される部位に段部84が形成されている。
上記の寸法関係により隙間嵌めされた他側端部83の外周面と挿入孔71の内周面との距離である隙間は、組付け時においては圧入ほどの圧力を要さず嵌め合いが可能な量である。そのため、減速装置1が組付いた状態からサポートプレート70の取り外しが可能となっている。また、当該隙間は、減速装置1の駆動状態には、実質的に接触状態にあるような程度の量に設定され、駆動力を伝達しているピン80の他側端部83を挿入孔71が支持している。このように、ピン80は、アウトプットプレート60およびサポートプレート70によって両持ち支持されている。
また、中間部82は、転がり軸受けである軸受け93が中間部82の外周側に回転可能な状態で外挿される。これにより、ピン80は、軸受け93の一部分がこれら各貫通孔42,52の内周面と当接し、当接位置が変化しながら第一、第二揺動部材40,50との間で軸受け93を介して駆動力を伝達する。
(減速装置1の動作)
続いて、本実施形態の減速装置1の動作について説明する。まず、図示しないモータを作動させると、モータのロータに連結された入力軸部材21が回転する。入力軸部材21が回転すると、入力軸部材21に連結されたクランク軸30が入出力軸線Loを中心として回転する。これにより、クランク軸30を構成する第一偏心部31および第二偏心部32が回転することになる。
そうすると、第一偏心部31の外周側に支持される第一揺動部材40は、第一偏心部31の回転に伴い揺動回転する。同様に、第二偏心部32の外周側に支持される第二揺動部材50は、第二偏心部32の回転に伴い揺動回転する。この時、第一揺動部材40および第二揺動部材50は、それぞれの外歯歯車41,51の円周上の一部のみがハウジング10の内歯歯車11と噛合し、内歯歯車11との歯数差に基づく回転数で入力軸部材21の回転方向とは反対方向(入力軸部材21が時計回りであれば反時計回り)に自転している。
ここで、ピン80は、第一、第二揺動部材40,50の各貫通孔42,52に挿入されている。そして、中間部82に外挿された軸受け93の外周面は、円周上の一部のみが各貫通孔42,52の内周面と当接し駆動力を伝達する。これにより、第一、第二揺動部材40,50が揺動回転すると、自転成分がピン80に伝達される。そうすると、アウトプットプレート60は、第一、第二揺動部材40,50の自転の回転数で回転する。
このようにして、減速装置1は、アウトプットプレート60がピン80を介して第一、第二揺動部材40,50の揺動回転から自転成分を取り出し、クランク軸30に入力された回転を減速してアウトプットプレート60から出力している。そして、アウトプットプレート60に連結された出力軸部材22が入出力軸線Loの回りに回転する。これにより、減速装置1は、入力軸部材21の回転を減速し、出力軸部材22から出力している。
また、減速装置1による変速において、アウトプットプレート60が入出力軸線Loの回りに回転すると、ピン80の他側端部83の外周面がサポートプレート70の挿入孔71の内周面と接触する。サポートプレート70は、ハウジング10により軸受け92を介して入出力軸線Loを中心として回転可能に支持されている。つまり、サポートプレート70は、減速装置1の駆動状態において、ピン80の他側端部83と接触し、アウトプットプレート60に従動回転する。これにより、サポートプレート70は、例えば、減速装置1に強い駆動力が伝達されピン80を撓ませるような外力が加えられた場合に、挿入孔71と接触するピン80の他側端部83を支持する構成となっている。
(減速装置1の組付け)
減速装置1の組付けについて説明する。先ず、アウトプットプレート60に出力軸部材22を嵌合固定する。このアウトプットプレート60に形成された複数の挿入孔61に、複数のピン80の一側端部81をそれぞれ圧入して固定する。続いて、予めハウジング10の内部における所定位置に、アウトプットプレート60を回転可能に支持するための軸受け91を配置する。そして、ハウジング10の内部に、複数のピン80が圧入された状態のアウトプットプレート60を挿入し、アウトプットプレート60が軸受け91により支持されるように組付ける。
次に、入力軸部材21が一体的に形成されたクランク軸30の第一、第二偏心部31,32の外周面に、軸受けを介して第一、第二揺動部材40,50を嵌合する。そして、第一、第二揺動部材40,50の貫通孔42,52に軸受け93を挿入する。続いて、第一、第二揺動部材40,50が組付けられたクランク軸30をハウジング10の内部に組付ける。この時、複数のピン80が貫通孔42,52に挿入された軸受け93の内周面にそれぞれ挿入されるようにする。これにより、ピン80の中間部82に軸受け93が外挿されることになる。さらに、第一、第二揺動部材40,50の外歯歯車41,51がハウジング10の内歯歯車11と噛合するように適宜調整される。
このハウジング10の内部における所定位置に、サポートプレート70を回転可能に支持するための軸受け92を配置する。最後に、ハウジング10の内部に、サポートプレート70を挿入し、サポートプレート70が軸受け92により支持されるように組付ける。この時、サポートプレート70の円筒内面により軸受けを介して入力軸部材21を回転可能に支持するように、サポートプレート70の内周部に入力軸部材21を貫通させる。
さらに、第一、第二揺動部材40,50の貫通孔42,52を貫通した複数のピン80の他側端部83をサポートプレート70の挿入孔71に挿入する。これにより、ピン80の他側端部83は、サポートプレート70の挿入孔71に隙間嵌めされる。この時、挿入孔71とピン80の他側端部83の間には、隙間嵌めとなるように所定の隙間が設けられているので、圧入ほどの圧力を要さず嵌め合わされる。
上述したように、減速装置1の組付けの最終段において、サポートプレート70がハウジング10の内部に配置される。この時、サポートプレート70は、ピン80の他側端部83を隙間嵌めするため、挿入孔71の内径D2が他側端部83の外径φcよりも大きく設定されている。ここで、挿入孔71の内径D2は、減速装置1の駆動状態においてピン80を支持するため、ガタを低減するようになるべく小径である方が好ましい。これは、隙間嵌めの隙間が小さければ、それだけピン80を支持しやすくなるからである。同様に、ピン80の他側端部83の外径φcがなるべく大径であれば、隙間嵌めの隙間が小さくなる。しかし、挿入孔71の内径D2が他側端部83の外径φcに近過ぎるとクリアランスが減少するため、挿入孔71に加工誤差などが含まれると組付けが困難となるおそれがある。
そこで、本実施形態では、ピン80を圧入するアウトプットプレート60の挿入孔61と、ピン80を隙間嵌めするサポートプレート70の挿入孔71とを共加工により形成する製造方法を適用している。これにより、図5に示すように、アウトプットプレート60の挿入孔61およびサポートプレート70の挿入孔71は、その円筒内面における中心が一致させることができるので、上記の加工誤差を大幅に低減できる。これにより、サポートプレート70の挿入孔71の内径D2とピン80の他側端部83の外径φcを従来よりも近付けることができる(クリアランスを小さくできる)。よって、組付け性を損なうことなく、挿入孔71と他側端部83のガタを低減できる。
(減速装置1の効果)
本発明の変速歯車装置が適用された減速装置1によると、一対の回転部材であるアウトプットプレート60およびサポートプレート70は、それぞれの挿入孔61,71が同径に形成される。そして、各挿入孔61,71に各端部81,83が挿入されるピン80は、他側端部83の外径φcが一側端部81の外径φaより小さくなるように形成されている構成としている。これにより、ピン80は、一側端部81が挿入孔61に対して締め代をもって圧入されるとともに、他側端部83が挿入孔71に対して無圧状態で接触または隙間を有して挿入されることになる。
減速装置1は、アウトプットプレート60の挿入孔61がピン80を圧入されて支持し、サポートプレート70の挿入孔71がピン80を無圧状態で接触または隙間を有する状態で支持する。ピン80をこのように支持するにも関わらず、上記のピン80の構成により、各挿入孔61,71は、同径となるように設定することができる。従来のピンは、延伸方向に同径に形成されると、両持ち支持される両端部も同径となっている。そのため、上記のように一側端部81を圧入、他側端部83を遊嵌により両持ち支持する場合には、両持ち支持する支持部材に形成される挿入孔は、同径に設定することができなかった。そうすると、孔径の大きい支持部材の挿入孔は、孔径の小さい支持部材の挿入孔の加工誤差を勘案した公差、また所定の組付け性を確保した公差が設定される。そのため、孔径の大きい支持部材の挿入孔は、ピンを支持するピン孔としてはガタが大きくなってしまうことがあった。
これに対して、減速装置1の各挿入孔61,71は、同径となるように設定することができる。よって、ピン80を支持する挿入孔71の内径D2と他側端部83の外径φcが近い値となりクリアランスを小さくし、ガタを小さくすることができる。これにより、減速装置1の駆動状態において、確実にピン80を両持ち支持し、減速装置1の動作の安定性を向上し装置全体として高精度にできる。
また、クランク軸30を構成する第一、第二偏心部31,32は、入力軸部材21と連結される。さらに、アウトプットプレート60は、挿入孔61にピン80の一側端部81が圧入されるとともに、出力軸部材22と連結される構成としている。そして、上記構成の場合に、出力軸部材22は、ピン80の一側端部81が圧入される挿入孔61を有するアウトプットプレート60に連結される。これにより、第一、第二揺動部材40,50の揺動回転から自転成分のみをピン80が取り出し、当該ピン80を圧入されて支持するアウトプットプレート60が駆動力を出力することになるので、より確実に駆動力を伝達することができる。
さらに、ピン80の中間部82は外径φbは、一側端部81の外径φaと等しくなるように形成されている。そして、中間部82と他側端部83が連結される部位に段部84が形成されている構成としている。ピン80の中間部82は、第一、第二揺動部材40,50の貫通孔42,52の円筒内面と軸受け93を介して間接的に接触し、駆動力を伝達する部位である。そして、段部84が形成されたピン80は、中間部82が貫通孔42,52と確実に接触するとともに、同径に形成された各挿入孔61,71により両端部81,83を両持ち支持される。これにより、減速装置1の動作の安定性を向上し装置全体として高精度にできる。
また、ピン80の他側端部83は、サポートプレート70の挿入孔71に隙間嵌めされる構成としている。一般に、ピン80などの軸部材と孔とが嵌め合いの関係にある場合には、寸法関係により軸部材と孔の間に締め代ができる締まり嵌めと、軸部材と孔の間に隙間ができる隙間嵌めと、それらの中間の中間嵌めとの3種類があることが知られている。締まり嵌めは、本発明においてピン80の一側端部81が挿入孔61に圧入されている状態である。そして、ピン80の他側端部83は、挿入孔71との間に隙間を有して挿入されて嵌め合いの関係になるように隙間嵌めされる構成としている。よって、減速装置1の組付けの最終段において、サポートプレート70をハウジング10の内部に組付ける際に、突出するピン80を挿入孔71に挿入しやすくすることができる。このように、減速装置1の組付け性を損なうことなく、ピン80を確実に両持ち支持することができる。
さらに、アウトプットプレート60の挿入孔61およびサポートプレート70の挿入孔71は、共加工により形成される構成とした。これにより、同一のピン80が挿入される各挿入孔61,71の中心を一致させることができる。よって、隙間嵌めする挿入孔71においては、ピン80が圧入される挿入孔61の加工誤差を吸収するための公差が不要となる。よって、挿入孔71の内径D2と他側端部83の外径φcが近い値に設定できる。従って、減速装置1の駆動状態におけるガタを低減し、より確実にピン80を両持ち支持できるとともに、装置全体としての精度を向上させることができる。
<実施形態の変形態様>
実施形態の変形態様について、図6を参照して説明する。図6は、減速装置101の構成を示した断面図である。本実施形態において、減速装置1のピン80は、中間部82の外径φbを一側端部81の外径φaと等しくなるように形成される構成とした。これに対して、変形態様の減速装置101のピン180は、図6に示すように、中間部182の外径φdが他側端部83の外径φcと等しくなるように形成されている。これに伴い、ピン180の中間部182が一側端部81と連結される部位に段部184が形成されている。
このような構成により、本実施形態と同様の効果を奏する。即ち、減速装置101の動作の安定性を向上し装置全体として高精度にできる。また、中間部182の外径を一側端部81の外径φaと他側端部83の外径φcの何れかと等しくするかについては、他部材との構成上の関係などから適宜設定される。中間部82の外径φbは、例えば、中間部82と貫通孔42,52の間に介在させる軸受け93により要求される寸法、圧入される一側端部81の圧入代(締め代)などを勘案して設定される。例えば、中間部82,182に外挿される軸受け93により、中間部82,182の外径φb,φdに制約があるとする。この場合に、一側端部81が十分な締め代をもって圧入されるために、中間部82,182の外径φb,φdよりも一側端部81の外径φaを大径にすることがある。
以上、本発明の変速歯車装置について、減速装置1,101として説明した。本実施形態では、ハウジング10を内歯歯車部材とし、減速装置1における固定部材とした。ここで、減速装置1,101は、内歯歯車部材としたハウジング10と、第一、第二偏心部31,32と、アウトプットプレート60およびサポートプレート70とが入出力軸線Lo回りに相対回転することにより入力軸部材21の回転を変速して出力軸部材22に駆動力を伝達するものである。そのため、入力軸部材21および出力軸部材22は、上記の何れかの部材(ハウジング10、偏心部材31,32、回転部材60,70)に適宜連結される構成としてもよい。
つまり、本実施形態では、入力軸部材21に偏心部材31,32から構成されるクランク軸30を連結し、出力軸部材22に回転部材であるアウトプットプレート60を連結した。そして、内歯歯車部材を固定部材であるハウジング10とすることにより、減速装置1,101として例示した。その他に、例えば、回転部材60,70をハウジングに固定し、入力軸部材21に偏心部材31,32から構成されるクランク軸30に連結し、出力軸部材22に連結された内歯歯車部材へ駆動力を伝達する構成としてもよい。その他に、入力軸部材21および出力軸部材22の入出力の関係を逆方向とすることにより、本発明の変速歯車装置を適用した増速装置としてもよい。このような構成においても同様の効果を奏する。
1,101:減速装置(変速歯車装置)
10:ハウジング(内歯歯車部材)、 11:内歯歯車
21:入力軸部材、 22:出力軸部材
30:クランク軸、 31:第一偏心部(偏心部材)
32:第二偏心部(偏心部材)
40:第一揺動部材、 41:外歯歯車、 42:貫通孔
50:第二揺動部材、 51:外歯歯車、 52:貫通孔
60:アウトプットプレート(第一回転部材)、 61:挿入孔
70:サポートプレート(第二回転部材)、 71:挿入孔
80,181:ピン、 81:一側端部、 82,182:中間部
83:他側端部、 84,184:段部
91〜93:軸受け
Lo:入出力軸線、 La:第一偏心軸線、 Lb:第二偏心軸線

Claims (5)

  1. 共通の入出力軸線を中心として入力軸および出力軸を回転可能に支持し、内周面に内歯歯車が形成された内歯歯車部材と、
    前記入出力軸線に対して偏心した偏心軸線を中心とする偏心部材と、
    環状からなり、前記偏心部材の外周側に回転可能に支持され、外周面に形成され前記内歯歯車と噛合可能な外歯歯車と、前記入出力軸線から径方向に離間した位置を中心とする円筒内面の貫通孔と、を有し、前記入出力軸線回りに揺動回転する揺動部材と、
    前記揺動部材を挟むように前記入出力軸線方向に対向して配置される一対の第一、第二回転部材であって、前記内歯歯車部材により前記入出力軸線を中心として回転可能にそれぞれ支持されるとともに、前記貫通孔よりも小径からなる円筒内面の挿入孔がそれぞれ形成された前記第一、第二回転部材と、
    円柱状からなり、前記貫通孔を貫通するとともに、各端部が前記第一回転部材の前記挿入孔および前記第二回転部材の前記挿入孔に挿入されて両持ち支持されるピンと、
    を備え、
    前記第一回転部材の前記挿入孔および前記第二回転部材の前記挿入孔は、同径に形成され、
    前記ピンは、各前記端部のうち一側端部が前記挿入孔に対して締め代をもって圧入され、他側端部が前記挿入孔に対して無圧状態で接触または隙間を有して挿入されるように、前記他側端部の外径が前記一側端部の外径より小さくなるように形成されていることを特徴とする変速歯車装置。
  2. 請求項1において、
    前記内歯歯車部材または前記偏心部材は、前記入力軸および前記出力軸のうち一方と連結され、
    前記第一回転部材および前記第二回転部材のうち一方部材は、当該一方部材の前記挿入孔に前記ピンの前記一側端部が圧入されるとともに、前記入力軸および前記出力軸のうち他方と連結されることを特徴とする変速歯車装置。
  3. 請求項1または2において、
    前記ピンの前記一側端部および前記他側端部の間の中間部は、前記一側端部および前記他側端部のうち一方と外径が等しくなるように形成され、他方と連結される部位に段部が形成されていることを特徴とする変速歯車装置。
  4. 請求項1〜3の何れか一項において、
    前記ピンの前記他側端部は、前記第一回転部材の前記挿入孔または前記第二回転部材の前記挿入孔に隙間嵌めされることを特徴とする変速歯車装置。
  5. 請求項1〜4の何れか一項における変速歯車装置の製造方法であって、
    前記第一回転部材の前記挿入孔および前記第二回転部材の前記挿入孔は、共加工により形成されることを特徴とする変速歯車装置の製造方法。
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