JP2011208127A - ホイールキャップ用熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents

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寿 山ノ上
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隆正 大脇
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Abstract

【課題】ホイールキャップに求められる耐熱性、低温衝撃性、塗装性を併せ持つポリアミド/ABS系の熱可塑性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】ゴム質含有グラフト共重合体(A)20〜30重量部、ビニル系共重合体(B)0〜8重量部、変性ビニル系共重合体(C)1〜10重量部、ポリアミド(D)50〜70重量部、耐衝撃改良材(E)3〜12重量部、ならびに(A)〜(E)の合計100重量部に対して繊維強化材(F)3〜10重量部を含有してなるホイールキャップ用熱可塑性樹脂組成物。
【選択図】図1

Description

本発明は、ホイールキャップに用いられる熱可塑性樹脂組成物に関する。
ホイールキャップは樹脂材料を成形することにより得られるが、樹脂材料への要求特性として、特にボルトで固定する方式のホイールキャップでは、耐熱性、低温衝撃性、塗装性、成形加工時の流動性が求められる。一方、ポリアミド樹脂は、ガラス繊維を初めとする繊維状充填材による耐熱向上効果が高いが、これをホイールキャップに適用する場合、塗装性、低温衝撃性が不足するという問題点があった。
ポリアミド樹脂においてホイールキャップへの要求特性を満たすため、ポリアミドとABS系の樹脂で、塗装性、衝撃性、耐熱性を並立させる試みが為されており、特許文献1では、ポリアミド/ABS系の樹脂の塗装性と耐熱性を高いレベルで両立させることに成功している。しかし、この材料ではホイールキャップに求められる低温衝撃性が不足するという問題点があった。
特許文献2では、ポリアミド/ABS相互の特性を併せ持った樹脂組成物が提案され、耐衝撃性、耐薬品性、耐薬品性、流動性をバランスさせている。しかし、この材料は、ボルトで固定する方式のホイールキャップに用いるためには低温衝撃性と耐熱性を並立させるには不十分であった。
特許文献3、4では、高剛性や耐熱性の要求と、塗装外観や塗装密着を改善した熱可塑性樹脂組成物を得ることを目的に、ポリアミド、ABS樹脂、α、β−不飽和カルボン酸無水物および/またはその誘導体からなる変性ビニル系共重合体、および強化材を含有してなる熱可塑性樹脂組成物が提案されている。しかしながら、この提案のフィラーで強化した場合には、ホイールキャップに求められる低温衝撃性と耐熱性を並立させるには不十分であった。
特開2009−256647号公報 特開2005−220344号公報 特開2004−149791号公報 特開2000−212431号公報
本発明は、ホイールキャップに求められる耐熱性、低温衝撃性、塗装性を併せ持つポリアミド/ABS系の熱可塑性樹脂組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記問題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、特定のゴム質含有グラフト共重合体、ビニル系共重合体および変性ビニル系共重合体、ならびにポリアミド、耐衝撃改良材および繊維強化材からなる熱可塑性樹脂組成物が、ホイールキャップに求められる要求特性を発現できることを見出し本発明に到達した。
すなわち、本発明は以下の(1)〜(6)で構成される。
(1)ゴム質重合体(ア)40〜80重量%の存在下に、芳香族ビニル系単量体(イ)15〜45重量%、シアン化ビニル系単量体(ウ)5〜20重量%からなる単量体混合物をグラフト共重合してなるグラフト共重合体(A)20〜30重量部、芳香族ビニル系単量体(イ)とシアン化ビニル系単量体(ウ)からなるビニル系単量体混合物を共重合してなるビニル系共重合体(B)0〜8重量部、不飽和カルボン酸またはα、β−不飽和カルボン酸無水物(エ)0.1〜10重量%、芳香族ビニル系単量体(イ)およびシアン化ビニル系単量体(ウ)の合計90〜99.9重量%を共重合させてなる変性ビニル系共重合体(C)1〜10重量部、ポリアミド(D)50〜70重量部、耐衝撃改良材(E)3〜12重量部、ならびに(A)〜(E)の合計100重量部に対して繊維強化材(F)3〜10重量部を含有してなるホイールキャップ用熱可塑性樹脂組成物。
(2)変性ビニル系共重合体(C)が、芳香族ビニル系単量体(イ)50〜85重量%、シアン化ビニル系単量体(ウ)15〜40重量%および不飽和カルボン酸基またはα、β−不飽和カルボン酸無水物(エ)0.1〜10重量%とからなる単量体混合物を共重合してなる共重合体である、(1)に記載のホイールキャップ用熱可塑性樹脂組成物。
(3)ポリアミド(D)がポリアミド6であることを特徴とする、(1)または(2)に記載のホイールキャップ用熱可塑性樹脂組成物。
(4)ポリアミド(D)が、0.5g/dlの濃度に調製した硫酸溶液を25.0℃で測定したウベローデ粘度計で測定した粘度数が120ml/g〜145ml/gの範囲にあるポリアミド6であることを特徴とする、(1)〜(3)のいずれかに記載のホイールキャップ用熱可塑性樹脂組成物。
(5)耐衝撃改良材(E)が、エチレン/ブテン−1/無水マレイン酸共重合体であることを特徴とする、(1)〜(4)のいずれかの記載のホイールキャップ用熱可塑性樹脂組成物。
(6)(1)〜(5)のいずれかに記載のホイールキャップ用熱可塑性樹脂組成物を成形してなるホイールキャップ。
本発明は、ホイールキャップ、特にボルトで固定する方式のホイールキャップ用の樹脂材料として有用である。
本発明に係るホイールキャップを示す正面図である。 本発明に係るホイールキャップを示す下面図である。 本発明に係るホイールキャップのスチールホイールへの装着状態を示す正面図である。 本発明に係るホイールキャップの低温衝撃性評価部位を示す正面図である。
本発明は、ホイールキャップ用熱可塑性樹脂組成物(以下、単に熱可塑性樹脂組成物ともいう)と該樹脂組成物を成形してなるホイールキャップに関する。以下、本発明について説明する。
本発明におけるグラフト共重合体(A)とは、ゴム質重合体(ア)40〜80重量%の存在下に、芳香族ビニル系単量体(イ)およびシアン化ビニル系単量体(ウ)を含有するビニル系単量体混合物20〜60重量%をグラフト共重合して得られたものである。ここでいうグラフト共重合体とは、ゴム質重合体(ア)にビニル系単量体混合物をグラフト共重合したものの他に、アセトンに溶解するグラフトしていないビニル系混合体から生成される共重合体を含むものであり、これらをグラフト共重合体(A)という。また、グラフト率は、衝突延性形態と成形加工性のバランスから、5〜60%であることが好ましく、さらに好ましくは10〜50%である。グラフト率(%)は、次式で示される。
グラフト率(%)=[ゴム質重合体にグラフト重合したビニル系重合体量]/[グラフト共重合体のゴム含有量]×100
なお、上記のゴム質重合体(ア)としては、ガラス転移温度が0℃以下のものが好適であり、その下限値は実用上−80℃程度である。
グラフト共重合体(A)を構成するゴム質重合体(ア)としては、具体的にはポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエンのブロック共重合体およびアクリル酸ブチル−ブタジエン共重合体などのジエン系ゴム質重合体が挙げられ、なかでもポリブタジエンが好ましく用いられる。
グラフト共重合体(A)を構成する芳香族ビニル系単量体(イ)としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、o−エチルスチレン、p−メチルスチレン、クロロスチレンおよびブロモスチレンなどが挙げられるが、特にスチレンが好ましく採用される。
シアン化ビニル系単量体(ウ)としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルおよびエタクリロニトリルなどが挙げられるが、特にアクリロニトリルが好ましく採用される。
また、本発明におけるグラフト共重合体(A)には、本発明の効果を失わない程度に他の共重合可能な単量体を用いても良い。例えば、N−フェニルマレイミド、N−メチルマレイミドおよびメタクリル酸メチルなどが挙げられ、それぞれの目的に応じて選択することができる。これらは単独でも複数でも用いることが可能である。耐熱性や難燃性を向上させる意図があれば、N−フェニルマレイミドが好ましい。また、硬度向上や透明感を重視させるのであれば、メタクリル酸メチルが好ましく用いられる。
ゴム質重合体(ア)のゴム粒子径は、重量平均粒子径が0.10〜0.50μmであることが好ましく、さらに好ましくは0.18〜0.40μmである。この重量平均粒子径は、「Rubbaer Age Vol.88 p.484〜490(1960)by E.Schmidt,P.H.Biddison」に記載のアルギン酸ナトリウム法(アルギン酸ナトリウムの濃度量割合とアルギン酸ナトリウム濃度の累積重量分率より累積重量分率50%の粒子径を求める。)により測定することができる。
グラフト共重合体(A)におけるゴム質重合体(ア)の重量分率は、40〜80重量%に調整することが必要であり、好ましくは45〜75重量%であり、より好ましくは50〜70重量%である。重量分率が40重量%未満では低温衝撃が低下し、一方80重量%を超えると成形加工性が損なわれ、また成形品の表面外観が低下することがある。
グラフト共重合体(A)における芳香族ビニル系単量体(イ)、シアン化ビニル系単量体(ウ)の重量分率は、芳香族ビニル系単量体(イ)15〜40重量%、シアン化ビニル系単量体(ウ)5〜20重量%の範囲とすることが好ましい。
本発明におけるビニル系共重合体(B)とは、芳香族ビニル系単量体(イ)、シアン化ビニル系単量体(ウ)を含有するビニル系単量体混合物を共重合して得られた共重合体である。
ビニル系共重合体(B)を構成する芳香族ビニル系単量体(イ)としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、o−エチルスチレン、p−メチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレンなどが挙げられるが、特にスチレンが好ましく採用される。
ビニル系共重合体(B)を構成するシアン化ビニル系単量体(ウ)としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルおよびエタクリロニトリルなどが挙げられるが、特にアクリロニトリルが好ましく採用される。
また、ビニル系共重合体(B)には、上記以外にも本発明の効果を失わない程度に他の共重合可能な単量体を用いても良い。使用可能な他の単量体としては、例えば、N−フェニルマレイミド、N−メチルマレイミドおよびメタクリル酸メチルなどが挙げられ、これらは必ずしも単独で使用する必要は無く、複数でも用いることも可能である。
ビニル系共重合体(B)を構成する単量体組成比は、芳香族ビニル系単量体(イ)60〜85重量%、シアン化ビニル系単量体(ウ)15〜40重量%を共重合して得た共重合体であることが好ましい。
本発明における変性ビニル系共重合体(C)とは、不飽和カルボン酸またはα、β−不飽和カルボン酸無水物(エ)0.1〜10重量%と、芳香族ビニル系単量体(イ)とシアン化ビニル系単量体(ウ)の合計90〜99.9重量%を共重合して得られる共重合体である。
変性ビニル系共重合体(C)を構成する上記の不飽和カルボン酸またはα、β−不飽和カルボン酸無水物(エ)としては、例えば、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、メチルマレイン酸、メチルフマル酸およびグルタコン酸等の不飽和カルボン酸や、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水イタコン酸、メチル無水マレイン酸およびメチル無水フマル酸等のα、β−不飽和カルボン酸無水物が挙げられる。これらの中では、メタクリル酸、マレイン酸および無水マレイン酸が好ましく、更に好ましくはメタクリル酸が使用される。これらは、1種または2種以上でも使用しても良い。
変性ビニル系共重合体(C)を構成する上記の芳香族ビニル系単量体(イ)としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、o−エチルスチレン、p−メチルスチレン、クロロスチレンおよびブロモスチレンなどが挙げられるが、特にスチレンが好ましく採用される。
変性ビニル系共重合体(C)を構成するシアン化ビニル系単量体(ウ)としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルおよびエタクリロニトリルなどが挙げられるが、特にアクリロニトリルが好ましく採用される。
変性ビニル系共重合体(C)における、不飽和カルボン酸またはα、β−不飽和カルボン酸無水物(エ)の重量分率は、0.1〜10重量%にすることが必要である。重量分率が0.1重量%未満では、ポリアミド(D)との相溶性や反応性が乏しく、低温衝撃性の低下や塗装密着性の低下が見られ、一方、使用割合が10重量%を超えると、成形加工性の時の流動性が損なわれ、成形品表面にフローマークが発生するおそれがある。したがって、変性ビニル系共重合体(C)における芳香族ビニル系単量体(イ)とシアン化ビニル系単量体(ウ)は合計90〜99.9重量%の範囲であることが好ましい。
さらに、本発明の変性ビニル系共重合体(C)を構成する不飽和カルボン酸またはα、β−不飽和カルボン酸無水物(エ)、芳香族ビニル系単量体(イ)、シアン化ビニル系単量体(ウ)の重量比率は、芳香族ビニル系単量体(イ)50〜84.9重量%、シアン化ビニル系単量体(ウ)15〜40重量%および不飽和カルボン酸基またはα、β−不飽和カルボン酸無水物(エ)0.1〜10重量%の範囲にあることが好ましい。
本発明において、グラフト共重合体(A)、ビニル系共重合体(B)および変性ビニル系共重合体(C)の製造方法に関しては特に制限はなく、塊状重合、懸濁重合、塊状懸濁重合、溶液重合、乳化重合、沈殿重合およびこれらの組み合わせ等が用いられる。単量体の仕込み方法に関しても特に制限はなく、初期に一括添加してもよく、共重合体の組成分布を付けるため、あるいは防止するために添加方法は数回に分けて重合してもよい。
本発明において、グラフト共重合体(A)、ビニル系共重合体(B)および変性ビニル共重合体(C)の重合に使用される開始剤としては、過酸化物またはアゾ系化合物などが好適に用いられる。
過酸化物の具体例としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカルボネート、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオクテート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3、3、5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、およびt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートなどが挙げられる。なかでもクメンハイドロパーオキサイドおよび1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3、3、5−トリメチルシクロヘキサンが、特に好ましく用いられる。
また、アゾ系化合物の具体例としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス(2,4ジメチルバレロニトリル)、2−フェニルアゾ−2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル、2−シアノ−2−プロピルアゾホルムアミド、1,1′−アゾビスシクロヘキサン−1−カーボニトリル、アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2′−アゾビスイソブチレート、1−t−ブチルアゾ−1−シアノシクロヘキサン、2−t−ブチルアゾ−2−シアノブタン、および2−t−ブチルアゾ−2−シアノ−4−メトキシ−4−メチルペンタンなどが挙げられる。なかでもアゾビスイソブチロニトリルが特に好ましく用いられる。
これらの開始剤を使用する場合、1種または2種以上を併用して使用される。
重合を行うに際しては、グラフト共重合体(A)、ビニル系共重合体(B)、変性ビニル系共重合体(C)の重合度調節を目的として、メルカプタンやテルペンなどの連鎖移動剤を使用することも可能である。連鎖移動剤の具体例としては、n−オクチルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、n−オクタデシルメルカプタンおよびテルピノレンなどが挙げられる。なかでも、n−オクチルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタンおよびn−ドデシルメルカプタンが好ましく用いられる。これらの連鎖移動剤を使用する場合は、1種または2種以上を併用して使用される。
本発明におけるポリアミド(D)には、例えば、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸などのアミノカルボン酸の重縮合物、ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタムなどのラクタムの重縮合物、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、アミノメチルシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、アミノエチルピペラジンなどの脂肪族、脂環族、芳香族のジアミンとアジピン酸、スぺリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2−クロロテレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、5−メチルイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などの脂肪族、脂環族、および芳香族のジカルボン酸との重縮合物を用いることができる。これらは必ずしも1種で使用する必要は無く、複数種混同して併用することもできる。
本発明におけるポリアミド(D)の具体例としては、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド6T、ポリアミド4,6、ポリアミド11、ポリアミド9Tなどが挙げられるが、好ましくはポリアミド6またはポリアミド66であり、より好ましくはポリアミド6である。
本発明における、ポリアミド(D)は0.005g/mlの濃度に調製した硫酸溶液を25.0℃で測定したウベローデ粘度計で測定して得られる粘度数が120ml/g〜145ml/gの範囲にあることが好ましい。粘度数が120ml/g未満である場合には、樹脂組成物の低温衝撃強度が低下し、一方145ml/gを超える場合には樹脂の流動性が低下し、成形品の大きさによっては完全に充填できなくなることがある。
粘度数は以下の式1で与えられる。
粘度数(ml/g)=(t/t−1)×1/0.005・・・(式1)
t:溶液のフロータイム、t:硫酸のフロータイム。
なお、粘度数はより好ましくは120ml/g〜140ml/g、さらに好ましくは125ml/g〜140ml/gである。
本発明における耐衝撃性改良材(E)としては、具体例として、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/メチルアクリレート共重合体、エチレン/エチルアクリレート共重合体、エチレン/ブチルアクリレート共重合体、エチレン/エチルアクリレート/一酸化炭素共重合体、エチレン/グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン/エチルアクリレート/グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン/メチルアクリレート/グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン/ブチルアクリレート/グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン/ブテン−1共重合体、エチレン/オクテン−1共重合体、エチレン/ブテン−1/無水マレイン酸共重合体、エチレン/オクテン−1/無水マレイン酸共重合体などが挙げられ、これらは必ずしも単独で使用する必要はなく、複数種混合して使用することもできる。
また、本発明において好ましい耐衝撃改良材(E)は、エチレン/エチルアクリレート共重合体、エチレン/ブチルアクリレート共重合体、エチレン/エチルアクリレート/一酸化炭素共重合体、エチレン/ブテン−1共重合体、エチレン/オクテン−1共重合体、エチレン/ブテン−1/無水マレイン酸共重合体、エチレン/オクテン−1/無水マレイン酸共重合体が挙げられ、更に好ましくはエチレン/ブテン−1、エチレン/エチルアクリレート/一酸化炭素共重合体、エチレン/ブテン−1/無水マレイン酸共重合体、エチレン/オクテン−1/無水マレイン酸共重合体、特に好ましくは、エチレン/ブテン−1/無水マレイン酸共重合体である。
本発明における繊維強化材(F)は、炭素繊維、ガラス繊維、ステンレス繊維、ウィスカーおよびワラステナイトなどが挙げられる。低温衝撃性と耐熱性を兼備するためには、炭素繊維またはガラス繊維が好ましく、ガラス繊維がより好ましく用いられる。
また、本発明で用いられる繊維強化材(F)には、カップリング剤や収束剤で処理されていることが好ましい。処理方法としては、例えば、イソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物、アクリル系化合物およびエポキシ系化合物などの官能基導入による処理法が挙げられる。特に、アクリル系化合物で繊維強化材(F)が処理されていると、変性ビニル系化合物(C)およびポリアミド(D)と接着性が向上し、剛性、低温衝撃性の点からも好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物におけるグラフト共重合体(A)の配合比率は、20〜30重量部であり、好ましくは20〜27重量部、より好ましくは22〜25重量部である。グラフト共重合体(A)の配合比率が20重量部未満の場合には、熱可塑性樹脂組成物の衝撃性が低下し、30重量部を超えると熱可塑性樹脂組成物の流動性が低下し、成形品表面にフローマーク等が現れることがある。
本発明の熱可塑性樹脂組成物におけるビニル系共重合体(B)の配合比率は、0〜8重量部である。ビニル系共重合体(B)の配合比率が8重量部を超えると、熱可塑性樹脂組成物の低温衝撃性が低下するおそれがある。
本発明の熱可塑性樹脂組成物における変性ビニル系共重合体(C)の配合比率は、1〜10重量部である。好ましくは2〜8重量部であり、より好ましくは4〜8重量部である。変性ビニル系共重合体(C)の配合比率が1重量部より少ないと、ポリアミド(D)との相溶性および反応性に乏しくなり、低温衝撃性や塗装密着性が低下することがあり。一方、10重量部より多く使用すると、溶融混合時にゲル化することがあり、操業面での問題や成形外観悪化の問題が起きることがある。
本発明の熱可塑性樹脂組成物におけるポリアミド(D)の配合比率は、50〜70重量部であり、好ましくは52〜68重量部、より好ましくは55〜65重量部である。ポリアミド(D)の配合比率が50重量部より少ないと、成形加工時の流動性が不足し、樹脂の耐熱性が低下するおそれがあり。一方、70重量部を超える量使用すると、低温衝撃性と塗装性が低下するおそれがある。
本発明の熱可塑性樹脂組成物における耐衝撃改良材(E)の配合比率は3〜12重量部であり、好ましくは4〜11重量部、より好ましくは5〜10重量部である。3重量部未満では、樹脂組成物の低温衝撃性が低下し、一方、12重量部を越えると低温衝撃性は問題ないが、樹脂の流動性が低下するため、成形できない場合や塗装の密着性が低下することがある。また、耐衝撃改良材(E)の配合比率を7〜9重量部とすると特に好ましい。7重量部以上では低温衝撃性が更に向上し、9重量部以下で塗装の密着性の更なる向上効果が得られるからである。
さらに、本発明の樹脂組成物に使用する繊維強化材(F)は、樹脂部分(A)〜(D)の合計100重量部に対し、3〜10重量部の範囲で使用し、好ましくは4〜9重量部、より好ましくは4〜8重量部である。繊維強化材(F)の使用量が3重量部未満である場合には、耐熱性が低下し、一方10重量部を超える量を添加した場合には、低温衝撃性が低下するおそれがある。また、繊維強化材(F)の使用量が4〜6重量部であると特に好ましい。4重量部以上の添加で耐熱性が大幅に向上し、6重量部以下で低温衝撃性が高くなるからである。
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、必要に応じて、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、含硫黄化合物系酸化防止剤、ヨウ化銅、ヨウ化カリなどの耐熱材、含リン有機化合物系酸化防止剤、フェノール系、アクリレート系などの熱酸化防止剤、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サクシレート系などの紫外線吸収剤、デカブロモビフェニルエーテル、テトラブロモビスフェノールA、塩素化ポリエチレン、臭素化エポキシオリゴマー、臭素化ポリカーボネート、三酸化アンチモン、縮合リン酸エステルなどの難燃剤・難燃助剤、銀系抗菌剤に代表される抗菌剤、抗カビ剤、カーボンブラック、酸化チタン、離型剤、潤滑剤、顔料および染料などを添加することもできる。
また、本発明では、熱可塑性樹脂組成物に、必要に応じて結晶核剤を混合することができ、結晶核剤としてナイロンの結晶化を促進する結晶核剤を用いることができる。その結晶核剤の具体例としては、例えば、タルク、シリカ、グラファイトなどの無機微粒子、酸化マグネシウム、酸化アルミニウムなどの金属酸化物などが挙げられる。これらの中でも無機微粒子が好ましく、特にタルクが好ましく用いられる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、構成する各共重合体成分を溶融混合して得ることができる。溶融混合方法に関しては、特に制限は無いが、加熱装置、ベントを有するシリンダーで単軸または二軸のスクリューを使用して溶融混合する方法などが採用可能である。溶融混合の際の加熱温度は、通常210〜320(℃)の範囲から選択されるが、本発明の目的を損なわない範囲で、溶融混合時の温度勾配等を自由に設定することも可能である。また、二軸のスクリューを用いる場合は、同一回転方向でも異回転方向でも良い。
上記によって得られた本発明の熱可塑性樹脂組成物は、射出成形より成形体とすることができる。射出成形は、好ましくは220〜300℃の通常成形する温度範囲で実施することができる。さらに好ましくは240〜280℃、特に好ましくは240〜270℃である。また、射出成形時の金型温度は、好ましくは30〜80℃の通常成形に使用される温度範囲である。更に好ましい金型温度範囲は40〜70℃、特に好ましくは50〜70℃である。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、射出成形品の剛性、衝突延性、成形加工性、塗装外観および塗装密着性の特性を良好な状況で、各部位による差異がなく設計することができるため、自動車外装のホイールキャップ、好ましくはボルトで固定する方式のホイールキャップに成形される。
本発明をさらに具体的に説明するため、以下に実施例を挙げるが、これらの実施例は本発明を何ら制限するものではない。ここで特に断りのない限り「%」は重量%を表し、「部」は重量部を表す。次に、熱可塑性樹脂組成物の樹脂特性の分析方法を下記する。
(1)グラフト率
グラフト共重合体の所定量(m;約1g)にアセトン200mlを加え、70℃の温度の湯浴中で3時間還流し、この溶液を8800r.p.m.(10000G)で40分間遠心分離した後、不溶分を濾過し、この不溶分を60℃の温度で5時間減圧乾燥し、その重量(n)を測定した。グラフト率は、下記式より算出した。ここでLは、グラフト共重合体のゴム含有量である。
グラフト率(%)={[(n)−(m)×L]/[(m)×L]}×100
(2)耐熱性
熱変形温度:ASTM(0.46MPa条件で測定)に準じて測定した。
(3)衝撃性1(テストピース)
40mm×50mm×3mmtの試験片を準備し、−30℃の雰囲気下、デュポン衝撃:直径16mm、重さ2kgの錘を20cmの位置から落下させ、破壊形態観察した。破壊形態は、次の基準により目視で判定を行った。○と△を合格レベルとし、×を不合格レベルとした。
○:錘径と同じ大きさ以内で材料を貫通した。
△:錘径よりも大きな範囲でひびが入った。
×:錘径よりも大きな範囲でひびと破損が確認された。
(4)衝撃性2(ホイールキャップ)
射出成形機を使用して、シリンダー温度を250℃および金型温度を60℃にそれぞれ設定し、図1、2に示した形状の15インチのホイールキャップを成形した。成形したホイールキャップをスチールホイールにボルト、ナットで図3のように固定した。これを−30℃の雰囲気下、図4に示した4カ所のポイント(ゲート部、通常部、末端部、ウェルド部)に直径60mm、重さ2kgの錘を20cmの位置から落下させ、割れ、ひびの有無を目視にて確認した。判定基準は、割れ、ひびがない場合○、ある場合に×とした。
(5)メルトフローレート
メルトフローレート:ISO1133(温度240℃、49N荷重条件で測定)に準じて測定した。
(6)成形品の塗装表面外観
成形品の塗装性評価試験は、次のように評価した。射出成形機を使用して、シリンダー温度を250℃および金型温度を60℃にそれぞれ設定し、70×240×2mmt角板を成形した。その角板に、アクリル−ウレタン2液塗料(ウレタンPG60/ハードナー、関西ペイント(株)製)を塗布した後、乾燥温度80℃で30分乾燥させた。室温23℃で湿度50%の環境で24時間以上処理を行った。得られた塗装成形品の鮮明度と外観を以下基準により目視で判定を行った。◎と○を合格レベルとし、△と×を不合格レベルとした。
◎:高光沢感が確認される。
○:光沢感はあるが高光沢ではない。
△:一部分に塗装ムラ、表面ざらつき(繊維強化材の浮き)などがある。問題あり。
×:全体的に塗装ムラ、表面ざらつき(繊維強化材の浮き)が目立つ。問題あり。
(参考例1)[グラフト共重合体(A)の製造]
(1)グラフト共重合体(A−1)の調製
ポリブタジエンラテックス(重量平均ゴム粒子径0.21μm)60重量%(固形分換算)の存在下で、スチレン29重量%とアクリロニトリル11重量%からなる単量体混合物を、ステアリン酸カリウムを使用して乳化重合してゴム強化スチレン樹脂ラテックスを得た。これを、90℃の温度の0.3%希硫酸水溶液中に添加して凝集後、水酸化ナトリウム水溶液により中和後に洗浄・脱水・乾燥工程を経て、グラフト共重合体(A−1)を調製した。グラフト率は36%であった。
(2)グラフト共重合体(A−2)の調製
ポリブタジエンラテックス(重量平均ゴム粒子径0.21μm)60重量%(固形分換算)の存在下で、スチレン34重量%、アクリロニトリル6重量%からなる単量体混合物を、ステアリン酸カリウムを使用して乳化重合してゴム強化スチレン樹脂ラテックスを得た。これを、90℃の温度の0.3%希硫酸水溶液中に添加して凝集後、水酸化ナトリウム水溶液により中和後に洗浄・脱水・乾燥工程を経て、グラフト共重合体(A−2)を調製した。グラフト率は42%であった。
(3)グラフト共重合体(A−3)の調製
ポリブタジエンラテックス(重量平均ゴム粒子径0.21μm)45重量%(固形分換算)の存在下で、スチレン40重量%とアクリロニトリル15重量%からなる単量体混合物を、ステアリン酸カリウムを使用して乳化重合してゴム強化スチレン樹脂ラテックスを得た。これを、90℃の温度の0.3%希硫酸水溶液中に添加して凝集後、水酸化ナトリウム水溶液により中和後に洗浄・脱水・乾燥工程を経て、グラフト共重合体(A−3)を調製した。グラフト率は42%であった。
(4)グラフト共重合体(A−4)の調製
ポリブタジエンラテックス(重量平均ゴム粒子径0.21μm)75重量%(固形分換算)の存在下で、スチレン18重量%とアクリロニトリル7重量%からなる単量体混合物を、ステアリン酸カリウムを使用して乳化重合してゴム強化スチレン樹脂ラテックスを得た。これを、90℃の温度の0.3%希硫酸水溶液中に添加して凝集後、水酸化ナトリウム水溶液により中和後に洗浄・脱水・乾燥工程を経て、グラフト共重合体(A−4)を調製した。グラフト率は25%であった。
(5)グラフト共重合体(A−5)の調製
ポリブタジエンラテックス(重量平均ゴム粒子径0.21μm)60重量%(固形分換算)の存在下で、スチレン18重量%とアクリロニトリル22重量%からなる単量体混合物を、ステアリン酸カリウムを使用して乳化重合してゴム強化スチレン樹脂ラテックスを得た。これを、90℃の温度の0.3%希硫酸水溶液中に添加して凝集後、水酸化ナトリウム水溶液により中和後に洗浄・脱水・乾燥工程を経て、グラフト共重合体(A−5)を調製した。グラフト率は5%であった。
(6)グラフト共重合体(A−6)の調製
ポリブタジエンラテックス(重量平均ゴム粒子径0.21μm)60重量%(固形分換算)の存在下で、スチレン重量40%からなる単量体混合物を、ステアリン酸カリウムを使用して乳化重合してゴム強化スチレン樹脂ラテックスを得た。これを、90℃の温度の0.3%希硫酸水溶液中に添加して凝集後、水酸化ナトリウム水溶液により中和後に洗浄・脱水・乾燥工程を経て、グラフト共重合体(A−6)を調製した。グラフト率は34%であった。
(参考例2)[ビニル系共重合体(B)の製造]
(1)ビニル系共重合体(B−1)の調製
スチレン70重量%とアクリロニトリル30重量%からなる単量体混合物を懸濁重合して得られたスラリーを洗浄・脱水・乾燥工程を経て、ビニル系共重合体(B−1)を調製した。メチルエチルケトン溶媒(温度30℃)で測定した極限粘度は、0.53dl/gであった。
(参考例3)[変性ビニル系共重合体(C)の製造]
(1)変性ビニル系共重合体(C−1)の調製
スチレン68重量%、アクリロニトリル30重量%およびメタクリル酸2重量%からなる単量体混合物を懸濁重合して得られたスラリーを、洗浄・脱水・乾燥工程を経て、変性ビニル系共重合体(C−1)を調製した。
(2)変性ビニル系共重合体(C−2)の調製
スチレン68重量%、アクリロニトリル30重量%および無水マレイン酸2重量%からなる単量体混合物を塊状重合で得た後、懸濁重合で仕上げて、スラリーを洗浄・脱水・乾燥工程を経て、変性ビニル系共重合体(C−2)を調製した。
(3)変性ビニル系共重合体(C−3)の調製
スチレン65重量%、アクリロニトリル30重量%およびメタクリル酸5重量%からなる単量体混合物を塊状重合で得た後、懸濁重合で仕上げて、スラリーを洗浄・脱水・乾燥工程を経て、変性ビニル系共重合体(C−3)を調製した。
(4)変性ビニル系共重合体(C−4)の調製
スチレン65重量%、アクリロニトリル25重量%およびメタクリル酸10重量%からなる単量体混合物を懸濁重合して得られたスラリーを、洗浄・脱水・乾燥工程を経て、変性ビニル系共重合体(C−4)を調製した。
(5)変性ビニル系共重合体(C−5)の調製
スチレン64重量%、アクリロニトリル24重量%およびメタクリル酸12重量%からなる単量体混合物を懸濁重合して得られたスラリーを、洗浄・脱水・乾燥工程を経て、変性ビニル系共重合体(C−5)を調製した。
(参考例4)[ポリアミド(D)]
(1)ポリアミド6(D−1)
東レ(株)製“アミラン”(登録商標)CM1001を使用(粘度数:108ml/g)。
(2)ポリアミド6(D−2)
東レ(株)製“アミラン”(登録商標)CM1010を使用(粘度数:135ml/g)。
(3)ポリアミド6(D−3)
東レ(株)製“アミラン”(登録商標)CM1021を使用(粘度数:180ml/g)。
上記のD−1〜D−3のポリアミド6の比率を変更することで、粘度数を調整して使用した。(CM1001/CM1010=5/5の場合の粘度数=108×0.5+135×0.5=122のように算出できる)
(参考例5)[耐衝撃性改良材(E)]
(1)デュポン社製 エチレン/エチルアクリレート/一酸化炭素共重合体 「エルバロイHP4051」(E−1)
(2)三井化学製 エチレン/ブテン−1 「タフマA4085」(E−2)
(3)三井化学製 エチレン/ブテン−1/無水マレイン酸 「タフマMH7020」(E−3)
(4)アルケマ製 エチレン/ブチルアクリレート「35BA40」(E−4)。
(5)ダウケミカル社製 エチレン/オクテン−1「エンゲージ8200」(E−5)。
(参考例6)[繊維強化材(F)]
(1)日本電気硝子社製 ガラス繊維T−351
以下、実施例と比較例について説明する。
(実施例:例(a)1〜24、比較例:例(b)1〜14)
参考例に記載のグラフト共重合体(A)、ビニル系共重合体(B)、変性ビニル系共重合体(C)ポリアミド(D)、耐衝撃性改良材(E)を、表1に示した比で配合した後に、スクリュー径30mmの同方向回転の二軸押出機(温度範囲:240℃〜250℃)で溶融混練を行った。その途中に設定されたサイドフィーダーから、繊維強化材(F)を投入して、ペレットを得た。得られたペレットを各物性評価に適するように、成形機(成形温度250℃、金型温度50℃)にて試験片を作成し、その評価を行った。また、実際のホイールキャップの成形は成形温度260℃、金型温度60℃で行い、低温衝撃試験を実施した。実施例(例(a)1〜24)の結果を表1、比較例(例(b)1〜14)の結果を表2に示す。
低温衝撃試験の結果、以下のことが分かった。
実施例(例(a)1〜7)、比較例(例(b)1,2)との比較から、耐衝撃改良材が少ない場合は−30℃の衝撃性が低下し、耐衝撃改良材が10重量部を超えると流動性が低下傾向にあり、成形品表面の外観が悪化した。
実施例(例(a)8〜10,23,24)との比較から、ポリアミドの粘度数が低いほどメルトフローレートが高くなる傾向が見られた。
実施例(例(a)3,11,12)と比較例(例(b)3,4)との比較から、ポリアミド樹脂の添加量が50重量部を下回ると耐熱性が低下し、70重量部を超えると低温衝撃性と塗装外観が低下した。
実施例(例(a)3,13〜17)と比較例(例(b)5,6)との比較から、変性ビニル系共重合体の添加量が1重量部を下回る場合には低温衝撃性が低下し、一方、添加量が10重量部を越えると成形品表面の外観が低下し、かつ(A)成分のグラフト共重合体の比率が低下することから低温衝撃性も低下した。
実施例(例(a)3,13〜17)と比較例(例(b)7)との比較から、変性ビニル系共重合体の不飽和カルボン酸成分が多いものを使用すると、成形品表面の外観が低下した。
実施例(例(a)3,18〜20)と比較例(例(b)11,12)の比較から、グラフト共重合体成分中に芳香族ビニル単量体とシアン化ビニル単量体が所定の範囲にない場合には、低温衝撃性が低下する傾向にあった。
実施例(例(a)3,11,16)と比較例(例(b)8)の比較から、ビニル系共重合体(B)の添加量が多いと低温衝撃性が低下する傾向にあった。
実施例(例(a)3,12)と比較例(例(b)9,10)との比較から、グラフト共重合体成分(A)が20重量部未満である場合には、低温衝撃性が低下し、一方、30重量部を越えて使用すると樹脂組成物の成形品表面の外観が低下した。
実施例(例(a)3,21,22)と比較例(例(b)13,14)との比較から、繊維状充填材の添加量が3重量部未満である場合には耐熱性が低下し、10重量部を越えて使用すると低温衝撃性が低下した。
Figure 2011208127
Figure 2011208127
本発明に係るホイールキャップ用熱可塑性樹脂組成物はあらゆる種類のホイールキャップに適用可能であり、特に、ボルトで固定する方式のホイールキャップ用の樹脂材料として好適である。
1 測定部位(ゲート部)
2 測定部位(一般部)
3 測定部位(末端部)
4 測定部位(ウェルド部)
5 ホイールキャップ
6 ホイール

Claims (6)

  1. ゴム質重合体(ア)40〜80重量%の存在下に、芳香族ビニル系単量体(イ)15〜45重量%、シアン化ビニル系単量体(ウ)5〜20重量%からなる単量体混合物をグラフト共重合してなるグラフト共重合体(A)20〜30重量部、芳香族ビニル系単量体(イ)とシアン化ビニル系単量体(ウ)からなるビニル系単量体混合物を共重合してなるビニル系共重合体(B)0〜8重量部、不飽和カルボン酸またはα、β−不飽和カルボン酸無水物(エ)0.1〜10重量%、芳香族ビニル系単量体(イ)およびシアン化ビニル系単量体(ウ)の合計90〜99.9重量%を共重合させてなる変性ビニル系共重合体(C)1〜10重量部、ポリアミド(D)50〜70重量部、耐衝撃改良材(E)3〜12重量部、ならびに(A)〜(E)の合計100重量部に対して繊維強化材(F)3〜10重量部を含有してなるホイールキャップ用熱可塑性樹脂組成物。
  2. 変性ビニル系共重合体(C)が、芳香族ビニル系単量体(イ)50〜85重量%、シアン化ビニル系単量体(ウ)15〜40重量%および不飽和カルボン酸基またはα、β−不飽和カルボン酸無水物(エ)0.1〜10重量%とからなる単量体混合物を共重合してなる共重合体である、請求項1に記載のホイールキャップ用熱可塑性樹脂組成物。
  3. ポリアミド(D)がポリアミド6であることを特徴とする、請求項1または2に記載のホイールキャップ用熱可塑性樹脂組成物。
  4. ポリアミド(D)が、0.5g/dlの濃度に調製した硫酸溶液を25.0℃で測定したウベローデ粘度計で測定した粘度数が120ml/g〜145ml/gの範囲にあるポリアミド6であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のホイールキャップ用熱可塑性樹脂組成物。
  5. 耐衝撃改良材(E)が、エチレン/ブテン−1/無水マレイン酸共重合体であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のホイールキャップ用熱可塑性樹脂組成物。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載のホイールキャップ用熱可塑性樹脂組成物を成形してなるホイールキャップ。
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