JP2011208031A - スチームクラッカーにおけるhar油の処理方法 - Google Patents

スチームクラッカーにおけるhar油の処理方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2011208031A
JP2011208031A JP2010077582A JP2010077582A JP2011208031A JP 2011208031 A JP2011208031 A JP 2011208031A JP 2010077582 A JP2010077582 A JP 2010077582A JP 2010077582 A JP2010077582 A JP 2010077582A JP 2011208031 A JP2011208031 A JP 2011208031A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
oil
har
steam cracker
raw material
mass
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2010077582A
Other languages
English (en)
Other versions
JP5318019B2 (ja
Inventor
Wataru Sawara
渉 佐原
Shinya Takahashi
信也 高橋
Takashi Sano
孝 佐野
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Eneos Corp
Original Assignee
JX Nippon Oil and Energy Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by JX Nippon Oil and Energy Corp filed Critical JX Nippon Oil and Energy Corp
Priority to JP2010077582A priority Critical patent/JP5318019B2/ja
Publication of JP2011208031A publication Critical patent/JP2011208031A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5318019B2 publication Critical patent/JP5318019B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Abstract

【課題】スチームクラッカーのデコーキング間隔を短くさせることなく、スチームクラッカーのボトム油であるHAR(Heavy Aromatic Residue)油を処理する方法を提供すること。
【解決手段】HAR油を水素化処理した水素化HAR油の一部または全量をスチームクラッカーの原料油としてリサイクルさせることを特徴とするHAR油の処理方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、スチームクラッカーにおけるHAR油の処理方法に関する。さらに詳しくは、HAR油を水素化処理したのち得られる水素化HAR油を原料にリサイクルしてスチームクラッカーで処理するHAR油の処理方法に関する。
スチームクラッカーの原料は従来ナフサが主流であったが、昨今の原料多様化が進む中、中間留分処理比率が高まってきている。しかし、中間留分を処理するとスチームクラッカーボトムであるHAR油の得率が増加する。HAR油は臭気が強く、安定性が悪いため、従来はボイラー等で燃焼させる以外に使用方法がなかった。特に、所内にボイラーのない製油所においては、HAR油の処理ができず、スチームクラッカーの稼動に大きな制約を受けており、新たな処理方法が求められていた。
なお、HAR油の利用方法としては、エチレンヘビーエンドを固体酸触媒の存在下、水素雰囲気下で処理し、炭素繊維の原料となる500℃までの軽沸留分を除いた改質ピッチを得ることが知られているが(特許文献1、2)、さらなる利用方法が求められている。
特公平4−30436号公報 特公平4−30437号公報
スチームクラッカーのボトム油であるHAR油をうまく処理できれば、スチームクラッカーの原料多様化に貢献できるだけでなく、HAR油を燃焼させずにすむため、二酸化炭素の削減にも寄与できる。
本発明は、かかる実情に鑑みてなされたものであり、HAR油を新規に処理する方法を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究した結果、スチームクラッカーのボトム油であるHAR(Heavy Aromatic Residue)油を水素化処理した水素化HAR油の一部または全量をスチームクラッカーの原料としてリサイクルさせることにより、デコーキング間隔を長くし、エチレンとプロピレン収率を向上させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]スチームクラッカーのボトム油であるHAR(Heavy Aromatic Residue)油を水素化処理した水素化HAR油の一部または全量をスチームクラッカーの原料油としてリサイクルさせることを特徴とするHAR油の処理方法。
[2]スチームクラッカーの熱分解反応温度が770℃以上850℃以下であることを特徴とする前記[1]に記載のHAR油の処理方法。
[3]スチームクラッカーの原料油におけるリサイクルさせる水素化HAR油の割合が1容量%以上50容量%以下であることを特徴とする前記[1]1または[2]に記載のHAR油の処理方法。
[4]HAR油の水素化処理が、水素存在下、水素化処理用触媒を用いて、水素分圧4〜20MPa、LHSV0.05〜2h−1、反応温度200℃〜450℃、水素/油比100〜1300NL/Lの条件下に行われることを特徴とする前記[1]〜[3]のいずれかに記載のHAR油の処理方法。
[5]水素化処理用触媒が、アルミニウム酸化物を含む無機担体に、全触媒質量を基準として、周期表第6族金属から選択される少なくとも1種の金属を10〜30質量%と、周期表第8〜10族金属から選択される少なくとも1種の金属を1〜7質量%とを担持させて得られる触媒であることを特徴とする前記[4]に記載のHAR油の処理方法。
[6]周期表第6族金属から選ばれる少なくとも1種の金属がモリブデンおよび/又はタングステンであり、周期表第8〜10族金属から選ばれる少なくとも1種の金属がコバルト及び/又はニッケルであることを特徴とする前記[5]に記載のHAR油の処理方法。
本発明の方法により、HAR油を水素化処理して水素化HAR油とし、これをスチームクラッカーの原料としてリサイクルさせることにより、デコーキング間隔を長くし、エチレンとプロピレン収率を向上させることができる。
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
本発明においてHAR油とはHeavy Aromatic Residue油のことであり、ナフサ留分等の原料を熱分解してエチレン、プロピレン等の化学品を製造するスチームクラッカーのボトム油(塔底油ともいう。)である。なお、スチームクラッカーは、スチームクラッキング装置、エチレンクラッカー、エチレンクラッキング装置、エチレン製造装置、オレフィン製造装置と呼ぶこともある。これらのオレフィン製造プロセスの代表的なものとして、S&W法、ルンマス(Lummus)法、ケロッグ(Kellogg)法等を挙げることができる。
スチームクラッカーの原料油は特に限定されないが、ナフサ留分、分解ガソリン、種々の灯・軽油留分等の中間留分などが挙げられる。
本発明に係るスチームクラッカーの熱分解反応温度については特に限定されるものではないが、770℃以上850℃以下が好ましい。熱分解温度が770℃を下回ると分解が進まず、目的生産物が得られないことから、熱分解反応温度の下限は、775℃以上がより好ましく、780℃以上がさらに好ましい。一方、熱分解温度が850℃を超えると、ガス生成量が急増するため、スチームクラッカーの運転に支障が出るため、熱分解反応温度の上限は、845℃以下がより好ましく、840℃以下がさらに好ましい。
スチームクラッカーのスチーム/原料(質量比)は特に限定されないが、0.2〜0.9が望ましく、より望ましくは0.25〜0.8、さらに望ましくは0.3〜0.7である。
原料の滞留時間(反応時間)は特に限定されないが0.1〜0.5秒が好ましく、より望ましくは0.15〜0.45秒であり、さらに望ましくは0.2〜0.4秒である。
本発明において水素化処理されるHAR油の性状は、特に限定されるものではないが、以下の性状を有することが好ましい。
蒸留試験における初留点(IBP)は180℃以上205℃以下、10容量%留出温度(T10)は190℃以上230℃以下、50容量%留出温度(T50)は210℃以上300℃以下、90容量%留出温度(T90)は480℃以上540℃以下、終点(EP)は550℃以上650℃以下の範囲のものが好ましく使用される。終点が650℃を上回ると、原料油中に含まれる重金属などの触媒に対する被毒物の含有量が大きくなり、上記触媒の寿命が大きく低下するため好ましくない。15℃における密度は1.03g/cm以上1.08g/cm以下、50℃における動粘度は20mm/s以上45mm/s以下、硫黄含有量(硫黄分)は200質量ppm以上600質量ppm以下、窒素含有量(窒素分)は20質量ppm以下、芳香族分は80容量%以上であることが好ましい。
なお、蒸留試験とは、JIS K 2254に規定する「石油製品―蒸留試験方法」のに準拠して測定されるもの、15℃における密度とは、JIS K 2249に規定する「原油及び石油製品−密度試験方法及び密度・質量・容量換算表(抜粋)」の「振動式密度試験方法」に準拠して測定されるもの、50℃における動粘度とは、JIS K 2283「原油及び石油製品−動粘度試験方法及び粘度指数算出方法」に準拠して得られる値を、硫黄含有量とは、JIS K 2541―1992に規定する「原油及び石油製品―硫黄分試験方法」の「放射線式励起法」に準拠して測定される硫黄含有量を、窒素含有量とは、JIS K 2609「原油及び石油製品−窒素分試験方法」に準拠して測定される窒素含有量を、芳香族分とは、石油学会法JPI−5S−49−97「石油製品−炭化水素タイプ試験方法−高速液体クロマトグラフ」で測定される全芳香族分の含有量を意味する。
本発明のHAR油の処理方法では、HAR油を後述の方法で水素化処理して得られた水素化HAR油の一部または全量をスチームクラッカーの原料としてリサイクルさせる。水素化HAR油をスチームクラッカーの原料としてリサイクルさせることにより、デコーキング間隔を長くし、エチレン・プロピレンといったオレフィン収率を向上させることができる。
スチームクラッカーの原料油中に占める水素化HAR油の割合は、好ましくは1容量%以上50容量%以下であり、下限としては2容量%以上がより好ましく、3容量%以上がさらに好ましく、上限としては48容量%以下がより好ましく、46容量%以下がさらに好ましい。リサイクルさせる水素化HAR油の原料に占める割合が1容量%未満の場合はHAR油をスチームクラッカーにチャージする際のポンプミニマム量を下回る点で好ましくなく、50容量%を超える場合はスチームクラッカーでのデコーキング間隔が短くなるため好ましくない。
HAR油の水素化処理における反応器入口における水素分圧は4〜20MPaであることが好ましく、下限としては4.5MPa以上がより好ましく、5MPa以上がさらに好ましく、上限としては19.5MPa以下がより好ましく、19MPa以下がさらに好ましい。水素分圧が4MPa未満の場合は触媒上のコーク生成が激しくなり触媒寿命が短くなる。一方、水素分圧が20MPaを超える場合は反応器や周辺機器等の建設費が上昇し、経済性が失われる懸念がある。
HAR油の水素化処理におけるLHSVは0.05〜2h−1であることが好ましく、下限としては0.1h−1以上がより好ましく、0.2h−1以上がさらに好ましく、上限としては1.9h−1以下がより好ましく、1.8h−1以下がさらに好ましい。LHSVが0.05h−1未満の場合には、反応器の建設費が過大となり経済性が失われる懸念がある。一方、LHSVが2h−1を超える場合には原料油の水素化処理が十分に達成されず、安定性が悪化する懸念がある。
HAR油の水素化処理における反応温度は200℃〜450℃であることが好ましく、下限としては220℃以上がより好ましく、250℃以上がさらに好ましく、上限としては440℃以下がより好ましく、430℃以下がさらに好ましい。反応温度が200℃を下回る場合には、原料油の水素化処理が十分に達成されない傾向にある。一方、反応温度が450℃を上回る場合には、副生成物であるガス分の発生が増加するため、目的とする生成油の収率が低下することとなり望ましくない。
HAR油の水素化処理における水素/油比は100〜1300NL/Lであることが好ましく、下限としては110NL/L以上がより好ましく、120NL/L以上がさらに好ましく、上限としては1200NL/L以下がより好ましく、1000NL/L以下がさらに好ましい。水素/油比が100NL/L未満の場合には、リアクター出口での触媒上のコーク生成が進行し、触媒寿命が短くなる傾向にある。一方、水素/油比が1300NL/Lを超える場合には、リサイクルコンプレッサーの建設費が過大になり、経済性が失われる懸念がある。
HAR油の水素化処理における反応形式は特に限定されないが、通常は、固定床、移動床等の種々のプロセスから選ぶことができるが、固定床が好ましい。また反応器は塔状であることが好ましい。
HAR油の水素化処理に使用される水素化処理用触媒は、少なくとも1種の周期表第6族金属及び少なくとも1種の周期表第8〜10族金属を含有する。周期表第6族金属としてはモリブデン、タングステン、クロムが好ましく、モリブデン、タングステンが特に好ましい。周期表第8〜10族金属としては、鉄、コバルト、ニッケルが好ましく、コバルト、ニッケルがより好ましい。これらの金属はそれぞれ単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。具体的な金属の組み合わせ例としては、モリブデン−コバルト、モリブデン−ニッケル、タングステン−ニッケル、モリブデン−コバルト−ニッケル、タングステン−コバルト−ニッケルなどが好ましく用いられる。なお、ここで周期表とは、国際純正・応用化学連合(IUPAC)により規定された長周期型の周期表をいう。
前記水素化処理用触媒は、上記金属がアルミニウム酸化物を含む無機担体に担持されたものであることが好ましい。前記アルミニウム酸化物を含む無機担体の好ましい例としては、アルミナ、アルミナ−シリカ、アルミナ−ボリア、アルミナ−チタニア、アルミナ−ジルコニア、アルミナ−マグネシア、アルミナ−シリカ−ジルコニア、アルミナ−シリカ−チタニア、あるいは各種ゼオライト、セビオライト、モンモリロナイト等の各種粘土鉱物などの多孔性無機化合物をアルミナに添加した担体などを挙げることができ、中でもアルミナが特に好ましい。
前記水素化処理用触媒は、アルミニウム酸化物を含む無機担体に、全触媒質量を基準として、周期表第6族金属から選択される少なくとも1種の金属を10〜30質量%と、周期表第8〜10族金属から選択される少なくとも1種の金属を1〜7質量%とを担持させて得られる触媒であることが好ましい。周期表第6族金属及び周期表第8〜10族金属それぞれの担持量が、それぞれの下限未満である場合には、触媒が充分な水素化処理活性を発揮しない傾向にあり、一方、それぞれの上限を超える場合には、触媒コストが上昇する上に、担持金属の凝集等が起こり易く、触媒が充分な水素化処理活性を発揮しない傾向にある。
前記金属を前記無機担体に担持する際に用いる前記金属種の前駆体は限定されないが、該金属の無機塩、有機金属化合物等が使用され、水溶性の無機塩が好ましく使用される。担持工程においては、これら金属前駆体の溶液、好ましくは水溶液を用いて担持を行うことが好ましい。担持操作としては、例えば、浸漬法、含浸法、共沈法等の公知の方法が好ましく採用される。
前記金属前駆体が担持された担体は、乾燥後、好ましくは酸素の存在下に焼成され、金属種は一旦酸化物とされることが好ましい。さらにHAR油の水素化処理を行う前に、予備硫化と呼ばれる硫化処理により、前記金属種を硫化物とすることが好ましく行われる。
予備硫化の条件は特に限定されないが、留出石油留分またはHAR油(以下、予備硫化原料油という。)に硫黄化合物を添加し、これを温度200〜380℃、LHSVが1〜2h−1、圧力は水素化処理運転時と同一、処理時間48時間以上の条件にて、前記水素化処理用触媒に連続的に接触せしめることが好ましい。前記予備硫化原料油に添加する硫黄化合物としては限定されないが、ジメチルジスルフィド(DMDS)、サルファゾール、硫化水素等が好ましく、これらを予備硫化原料油に対して予備硫化原料油の質量基準で1質量%程度添加することが好ましい。
前記水素化処理により得られる水素化HAR油は、以下の性状を有することが好ましい。
蒸留性状の初留点(IBP)は160℃以上180℃以下、10容量%留出温度(T10)は170℃以上190℃以下、50容量%留出温度(T50)は195℃以上220℃以下、90容量%留出温度(T90)は260℃以上360℃以下、終点(EP)は400℃以上550℃以下であることが好ましい。
また、15℃における密度は0.88g/cm以上1.05g/cm以下であることが好ましく、50℃における動粘度は12mm/s以上25mm/s以下であることが好ましい。硫黄含有量(硫黄分)は10質量ppm以上100質量ppm以下であることが好ましく、窒素含有量(窒素分)は20質量ppm以下であることが好ましく、芳香族分は20容量%以上80容量%以下であることが好ましい。
なお、蒸留試験とは、JIS K 2254に規定する「石油製品―蒸留試験方法」に準拠して測定されるもの、15℃における密度とは、JIS K 2249に規定する「原油及び石油製品−密度試験方法及び密度・質量・容量換算表(抜粋)」の「振動式密度試験方法」に準拠して測定されるもの、50℃における動粘度とは、JIS K 2283「原油及び石油製品−動粘度試験方法及び粘度指数算出方法」に準拠して得られる値を、硫黄含有量とは、JIS K 2541―1992に規定する「原油及び石油製品―硫黄分試験方法」の「放射線式励起法」に準拠して測定される硫黄含有量を、窒素含有量とは、JIS K 2609「原油及び石油製品−窒素分試験方法」に準拠して測定される窒素含有量を、芳香族分とは、石油学会法JPI−5S−49−97「石油製品−炭化水素タイプ試験方法−高速液体クロマトグラフ」で測定される全芳香族分の含有量を意味する。
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
(水素化処理用触媒の調製)
濃度5質量%のアルミン酸ナトリウム水溶液1kgに水ガラス3号を加え70℃に保温した容器に入れた。濃度2.5質量%の硫酸アルミニウム水溶液1kgに硫酸チタン(IV)水溶液(TiO含有量として24質量%)を加えた溶液を、70℃に保温した別の容器において調製し、前述のアルミン酸ナトリウムを含む水溶液に15分間で滴下した。水ガラスおよび硫酸チタン水溶液の量は所定のシリカ、チタニアの含有量となるよう調整した。混合溶液のpHが6.9〜7.5になる時点を終点とし、得られたスラリー状生成物をフィルターに通して濾取し、ケーキ状のスラリーを得た。ケーキ状スラリーを還流冷却器を取り付けた容器に移し、蒸留水300mlと27%アンモニア水溶液3gを加え、70℃で24時間加熱攪拌した。該スラリーを混練装置に入れ、80℃以上に加熱し水分を除去ながら混練し、粘土状の混練物を得た。得られた混練物を押出し成形機によって直径1.5mmシリンダーの形状に押出し、110℃で1時間乾燥した後、550℃で焼成し、成形担体を得た。得られた成形担体300gを取り、蒸留水150mlに三酸化モリブデン、硝酸コバルト(II)6水和物、リン酸(濃度85%)を加え、溶解するまでリンゴ酸を加えて調製した含浸溶液をスプレーしながら含浸した。
使用する三酸化モリブデン、硝酸コバルト(II)6水和物およびリン酸の量は、所定の担持量となるよう調整した。含浸した試料を110℃で1時間乾燥した後、550℃で焼成し、触媒Aを得た。触媒Aは、担体基準で、SiOの含有量が1.9質量%、TiOの含有量が2.0質量%、触媒基準でMoOの担持量は22.9質量%、CoOの担持量は2.5質量%、P担持量は4.0質量%であった。
(スチームクラッカーの初期運転)
スチームクラッカーに原料として表2に示すナフサAまたはナフサBを、スチーム/原料(質量比)0.5で投入し、熱分解反応温度800℃で0.3秒滞留させた。生成物としてエチレン・プロピレンに代表されるオレフィン炭化水素、芳香族炭化水素、ボトム油としてHAR油AまたはHAR油Bを得た。得られたHAR油AおよびHAR油Bの性状を表1に示す。
[実施例1]
(HAR油の水素化処理反応)
固定床連続流通式反応装置に触媒Aを充填し、まず触媒の予備硫化を行った。すなわち、15℃における密度851.6kg/m、蒸留試験における初留点231℃、終留点376℃、予備硫化原料油の質量を基準とした硫黄原子としての硫黄分1.18質量%、色相L1.5である直留系軽油相当の留分(予備硫化原料油)に、該留分の質量基準で1質量%のDMDSを添加し、これを48時間前記触媒に対して連続的に供給した。その後、表1に示すHAR油Aを原料油として用い、反応温度290℃、水素分圧7MPa、LHSV1h−1、水素/油比500NL/Lの条件にて水素化処理反応を行い、水素化HAR油A−1を得た。この水素化HAR油A−1をスチームクラッカーの原料としてリサイクルし、水素化HAR油A−1と表2に示すナフサAをそれぞれ25容量%と75容量%で混合した原料を、スチームクラッカーにて、原料をスチーム/原料(質量比)0.5で導入し、熱分解反応温度800℃で0.3秒滞留させて再度処理した。このときの結果を表3に示す。
なお、デコーキング間隔とは、スチームクラッカー装置の輻射管の温度が最も高い部分の差圧(ΔP)が任意の管理値を超えた場合に、スチームを投入しコークを除去する日数の間隔のことをいう。
エチレンおよびプロピレン得率(質量%)とは、24時間の間にスチームクラッカーに投入した原料の質量とスチームクラッカーから製品として出てくるエチレンおよびプロピレン生成量の質量比により求めた値のことをいう。具体的には、以下の式で求めることができる。
エチレン得率(質量%)=(エチレン生成量@24時間)/(スチームクラッカー原料の投入量@24時間)×100
プロピレン得率(質量%)=(プロピレン生成量@24時間)/(スチームクラッカー原料の投入量@24時間)×100
[実施例2]
表1に示すHAR油Aを原料油として用い、反応温度350℃、水素分圧9MPa、LHSV0.6h−1、水素/油比200NL/Lの条件にて水素化処理反応を行い、水素化HAR油A−2を得た。この水素化HAR油A−2をスチームクラッカーの原料としてリサイクルし、水素化HAR油A−2と表2に示すナフサAをそれぞれ40容量%と60容量%で混合した原料を、実施例1と同様にスチームクラッカーにて処理した。このときの結果を表3に示す。
[実施例3]
表1に示すHAR油Bを原料油として用い、反応温度380℃、水素分圧15MPa、LHSV0.2h−1、水素/油比750NL/Lの条件にて水素化処理反応を行い、水素化HAR油B−1を得た。この水素化HAR油B−1をスチームクラッカーの原料としてリサイクルし、水素化HAR油B−1と表2に示すナフサBと灯油留分をそれぞれ10容量%:70容量%:20容量%で混合した原料を、実施例1と同様にスチームクラッカーにて処理した。このときの結果を表3に示す。
[実施例4]
表1に示すHAR油Bを原料油として用い、反応温度390℃、水素分圧11MPa、LHSV0.3h−1、水素/油比700NL/Lの条件にて水素化処理反応を行い、水素化HAR油B−2を得た。この水素化HAR油B−2をスチームクラッカーの原料としてリサイクルし、水素化HAR油B−2と表2に示すナフサBと軽油留分をそれぞれ5容量%:90容量%:5容量%で混合した原料を、実施例1と同様にスチームクラッカーにて処理した。このときの結果を表3に示す。
[比較例1]
HAR油Aを水素化しなかったこと以外は、実施例1と同様の手法で実施した。その結果を表3に示す。
[比較例2]
HAR油Aを水素化しなかったこと以外は、実施例2と同様の手法で実施した。その結果を表3に示す。
[比較例3]
HAR油Bを水素化しなかったこと以外は、実施例3と同様の手法で実施した。その結果を表3に示す。
[比較例4]
HAR油Bを水素化しなかったこと以外は、実施例4と同様の手法で実施した。その結果を表3に示す。
Figure 2011208031
Figure 2011208031
Figure 2011208031
表3の結果から、本発明のスチームクラッカーにおけるHAR油の処理方法に従い、水素化HAR油を原料にリサイクルした実施例1〜4は、デコーキング間隔を大幅に増加させることができ、エチレンやプロピレン得率も高くできる。一方、本発明のスチームクラッカーにおけるHAR油の処理方法によらない比較例1〜4においては、デコーキング間隔が短く、エチレンやプロピレン得率が低い。
本発明の方法により、HAR油の有効利用が図られ、オレフィンの増産、コスト削減、廃棄物排出量の低減の点で非常に有用である。

Claims (6)

  1. スチームクラッカーのボトム油であるHAR(Heavy Aromatic Residue)油を水素化処理した水素化HAR油の一部または全量をスチームクラッカーの原料油としてリサイクルさせることを特徴とするHAR油の処理方法。
  2. スチームクラッカーの熱分解反応温度が770℃以上850℃以下であることを特徴とする請求項1に記載のHAR油の処理方法。
  3. スチームクラッカーの原料油におけるリサイクルさせる水素化HAR油の割合が1容量%以上50容量%以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のHAR油の処理方法。
  4. HAR油の水素化処理が、水素存在下、水素化処理用触媒を用いて、水素分圧4〜20MPa、LHSV0.05〜2h−1、反応温度200℃〜450℃、水素/油比100〜1300NL/Lの条件下に行われることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載のHAR油の処理方法。
  5. 水素化処理用触媒が、アルミニウム酸化物を含む無機担体に、全触媒質量を基準として、周期表第6族金属から選択される少なくとも1種の金属を10〜30質量%と、周期表第8〜10族金属から選択される少なくとも1種の金属を1〜7質量%とを担持させて得られる触媒であることを特徴とする請求項4に記載のHAR油の処理方法。
  6. 周期表第6族金属から選ばれる少なくとも1種の金属がモリブデンおよび/又はタングステンであり、周期表第8〜10族金属から選ばれる少なくとも1種の金属がコバルト及び/又はニッケルであることを特徴とする請求項5に記載のHAR油の処理方法。
JP2010077582A 2010-03-30 2010-03-30 スチームクラッカーにおけるhar油の処理方法 Expired - Fee Related JP5318019B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2010077582A JP5318019B2 (ja) 2010-03-30 2010-03-30 スチームクラッカーにおけるhar油の処理方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2010077582A JP5318019B2 (ja) 2010-03-30 2010-03-30 スチームクラッカーにおけるhar油の処理方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2011208031A true JP2011208031A (ja) 2011-10-20
JP5318019B2 JP5318019B2 (ja) 2013-10-16

Family

ID=44939424

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2010077582A Expired - Fee Related JP5318019B2 (ja) 2010-03-30 2010-03-30 スチームクラッカーにおけるhar油の処理方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5318019B2 (ja)

Citations (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS49133305A (ja) * 1972-11-08 1974-12-21
JPS5399204A (en) * 1977-02-11 1978-08-30 Inst Francais Du Petrole Steam cracking of heavy hydrocarbons
JPH10121058A (ja) * 1996-08-23 1998-05-12 Exxon Res & Eng Co 段階的接触分解と水素化処理の統合方法
JP2001521556A (ja) * 1996-08-15 2001-11-06 エクソンモービル・ケミカル・パテンツ・インク 炭化水素転化方法
JP2008266438A (ja) * 2007-04-19 2008-11-06 Showa Denko Kk 水素化方法及び石油化学プロセス
JP2011208030A (ja) * 2010-03-30 2011-10-20 Jx Nippon Oil & Energy Corp 水素化har油の製造方法

Patent Citations (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS49133305A (ja) * 1972-11-08 1974-12-21
JPS5399204A (en) * 1977-02-11 1978-08-30 Inst Francais Du Petrole Steam cracking of heavy hydrocarbons
JP2001521556A (ja) * 1996-08-15 2001-11-06 エクソンモービル・ケミカル・パテンツ・インク 炭化水素転化方法
JP2002501551A (ja) * 1996-08-15 2002-01-15 エクソンモービル・ケミカル・パテンツ・インク 炭化水素転化法
JPH10121058A (ja) * 1996-08-23 1998-05-12 Exxon Res & Eng Co 段階的接触分解と水素化処理の統合方法
JP2008266438A (ja) * 2007-04-19 2008-11-06 Showa Denko Kk 水素化方法及び石油化学プロセス
JP2011208030A (ja) * 2010-03-30 2011-10-20 Jx Nippon Oil & Energy Corp 水素化har油の製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP5318019B2 (ja) 2013-10-16

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6400172B2 (ja) 触媒支持体及びそれから調製される触媒
JP5535845B2 (ja) 芳香族炭化水素の製造方法
TWI599401B (zh) 高加氫脫氮選擇性之氫處理觸媒及其製備方法
WO2011004690A1 (ja) 再生水素化処理用触媒の製造方法及び石油製品の製造方法
JP2013544923A (ja) 液体フル反応器での重質炭化水素原料の水素処理
JP5196734B2 (ja) 水素化精製方法
JP5537222B2 (ja) 水素化har油の製造方法
JP5417329B2 (ja) 低硫黄軽油基材の製造方法及び低硫黄軽油
JPWO2014065419A1 (ja) 単環芳香族炭化水素の製造方法
JP5318019B2 (ja) スチームクラッカーにおけるhar油の処理方法
JP2020520335A (ja) メソ細孔性fauゼオライト、その製造、および重質油をアップグレードするためのそれらの使用
JP4680520B2 (ja) 低硫黄軽油の製造方法および環境対応軽油
JP5961423B2 (ja) 高芳香族炭化水素油の水素化処理方法
JP5296404B2 (ja) 超低硫黄燃料油の製造方法およびその製造装置
JP4567877B2 (ja) 重質油の水素化処理触媒及び重油基材の製造方法
JP2022513952A (ja) 再生触媒を用いる硫黄含有オレフィン性ガソリン留分の水素化脱硫方法
JP3978064B2 (ja) 重質炭化水素油の2段階水素化処理方法
JP3955990B2 (ja) 軽油留分の超深度脱硫方法
JP5334903B2 (ja) A重油組成物
JP2005238128A (ja) 水素化処理触媒前駆体およびその製造方法並びに精製炭化水素油の製造方法
JP2010221117A (ja) 水素化精製用触媒およびその製造方法、炭化水素油の水素化精製方法
WO2014087364A2 (en) Hydrotreating catalyst, process for preparing the same and use thereof
JP5016331B2 (ja) 超深度脱硫軽油の製造方法
RU2575120C2 (ru) Гидрообработка тяжелого углеводородного сырья в заполненных жидкостью реакторах

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20120629

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20130628

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20130709

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20130709

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5318019

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

S531 Written request for registration of change of domicile

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313531

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees