JP2005238128A - 水素化処理触媒前駆体およびその製造方法並びに精製炭化水素油の製造方法 - Google Patents

水素化処理触媒前駆体およびその製造方法並びに精製炭化水素油の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 水素化処理触媒を高性能化させるための水素化処理触媒前駆体を安価に提供する。
【解決手段】 タングステンおよびニッケルを含む水素化処理触媒前駆体を製造する方法は、60質量%以上の複合酸化物成分を含む担体に、EDTAを含む含浸液を含浸する工程および80〜220℃で乾燥処理する工程を含む。得られた水素化処理触媒前駆体の電子スペクトルが980〜1030nmおよび580〜620nmに吸収極大ピークを有する。水素化処理触媒前駆体を硫化処理して水素化処理触媒を製造し、水素化処理触媒を水素の存在下で原料炭化水素油と接触させることにより精製炭化水素油を製造する。硫黄分10質量ppm以下の低硫黄軽油が得られる。
【選択図】図14

Description

本発明は、担体にタングステンおよびニッケルを含む水素化処理触媒前駆体およびその製造方法に関し、さらに詳細には、複合酸化物成分を主成分として含む担体に、活性金属成分としてのタングステンおよびニッケルを含む水素化処理触媒前駆体およびその製造方法、ならびに当該水素化処理触媒前駆体から得られた水素化処理触媒を用いる精製炭化水素油の製造方法に関する。
タングステンおよびニッケルを主たる活性金属成分とする水素化処理触媒前駆体(NiW系触媒前駆体)を硫化処理して用いる水素化処理触媒は、水素の存在下で石油留分、石炭液化油、フィッシャー・トロプシュ合成油等の炭化水素油に対して、脱硫、脱窒素、芳香族化合物の水素化、水素化分解、異性化等の反応を行うために工業的に広く用いられている。このような反応に用いられる触媒では、シリカアルミナやゼオライト等の複合酸化物成分を含む担体が、反応の活性や選択性等の改善や制御のために多く用いられている。複合酸化物成分を主成分とする担体は、アルミナ担体やシリカ担体とは異なる固体酸性をもち、活性金属成分と組合せることにより、二元機能触媒として機能するためである。複合酸化物成分を含む担体にタングステンおよびニッケルを活性金属成分として含ませた水素化処理触媒前駆体の製造は、従来は、通常、メタタングステン酸アンモニウム(AMT)のようなタングステンを含む塩の水溶液と硝酸ニッケルのようなニッケル塩の水溶液を担体に含浸し、乾燥した後、300〜900℃程度の高温で焼成することによって行われていた(特許文献1〜3)。
特許359992号公報 特許公告昭57−16861号公報 米国特許4419271号公報
一方、モリブデンまたはタングステンとコバルトまたはニッケルを主たる活性金属成分とする水素化処理触媒前駆体を硫化処理して用いる水素化処理触媒を高性能化するための手法として、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、trans−1,2−シクロヘキサンジアミン−N,N,N’,N’−四酢酸(CyDTA)、ニトリロ三酢酸(NTA)等のキレート性の有機化合物を活性金属成分とともに水素化処理触媒前駆体に含ませ、有機化合物や活性金属成分を含ませた後には高温で焼成することなく、比較的低い温度で乾燥処理を施して水素化処理触媒前駆体とし、硫化処理を行って水素化処理触媒として反応に供する方法が開示されている(例えば、特許文献4及び5)。
特許文献4は、安定化剤としてEDTA、ジエチレントリアミン、或いはNTA等の窒素を含有する有機配位化合物を添加して含浸液を調製し、このような含浸液を用いて製造されたシリカ担持モリブデン系触媒を開示している。しかし、この特許文献は、Mo−EDTA錯体を形成することを意図しており、また、この錯体が担持される担体はシリカ坦体である。さらに、この特許文献の請求項2に記載の触媒の製造方法及び実施例の触媒(触媒C)の製造方法には、Mo−EDTA錯体を含浸させる前または後にNi塩溶液(硝酸ニッケル水溶液)を含浸することが開示されているものの、この特許文献の方法では本発明で意図する特定のスペクトルピークを有するNi−EDTA錯体は得られない。
欧州特許181035号公報
特許文献5は、EDTA等の有機化合物と水素化金属成分とを含ませた水素化処理触媒前駆体を硫化して水素化処理触媒を製造する方法を開示している。しかし、この特許文献は、専ら、50重量%以上のアルミナを含む担体を有する水素化処理触媒に向けられている。また、この特許文献の実施例では、予めNiが含まれた触媒が、EDTAを含むジアンモニウムEDTA溶液により含浸されているが、NiとEDTAを含む含浸液は使用されていない。さらに、この特許文献では代替法(c)として担体を有機化合物及び水素化金属成分と同時に組成化することは好ましくないことを述べている。
特開2000−325797号公報
特許文献6は、活性金属成分とキレート剤を含ませた水素化処理触媒前駆体を乾燥、硫化処理する水素化処理触媒の製造方法について、キレート剤として、モリブデンまたはタングステンのイオンとから生成される錯イオンの生成反応における平衡定数の対数が5以下で、かつこのキレート剤とコバルトまたはニッケルのイオンとから生成される錯イオンの生成反応における平衡定数の対数が15以上を満たす含浸液を用いて行う水素化処理触媒の製造方法を開示している。しかし、この特許文献は、錯イオンの生成反応における平衡定数に関する上記条件をEDTAが満たさないので、EDTAは当該水素化処理触媒の製造に不適切なキレート剤であると教示しており、EDTAより高価なCyDTAが好ましいキレート剤であると教示している。
特開2001−198471号公報
特許文献7は、80質量%より多く99.5質量%以下のアルミナと、0.5質量%以上20質量%未満のゼオライト、ボリア、シリカ、ジルコニアの何れかを少なくとも1つ有する複合酸化物担体に、周期律表第6族金属塩を含む第1の溶液を、触媒基準、酸化物換算で、該第6族金属が10〜30重量%となるように含浸担持させ、乾燥の後、周期律表第8族金属塩と、水酸基、エーテル結合、カルボキシル基、アミノ基の何れかを少なくとも1つ有する有機化合物とを含む第2の溶液を、触媒基準、酸化物換算で、該第8族金属が1〜15重量%となるように含浸担持させ、乾燥させることを特徴とする炭化水素油用水素化脱硫触媒の製造方法を開示している。しかし、この特許文献において、水素化脱硫触媒に用いられる担体は、専ら、アルミナを80重量%より多く含む担体である。また、この特許文献では、Ni―EDTA錯体についてはなんら言及されていない。
特開2002−239385号公報
複合酸化物成分を主成分として含む担体にタングステンおよびニッケルを活性金属成分として含ませた水素化処理触媒を高性能化させるために、EDTAのように比較的安価な有機化合物を用いて水素化処理触媒前駆体を製造する方法は未だ確立されていない。
本発明の目的は、かかる状況下、複合酸化物成分を主成分として含む担体にタングステンおよびニッケルを活性金属成分として含ませた水素化処理触媒を高性能化させるために、EDTAのように比較的安価な有機化合物を用いて水素化処理触媒前駆体を提供することにある。また、本発明の別の目的は、本発明の水素化処理触媒前駆体から、精製炭化水素油の製造に高い性能を示す水素化処理触媒を提供すること、およびその水素化処理触媒を用いる精製炭化水素油の製造方法を提供することにある。本発明のさらに別の目的は、本発明の水素化処理触媒を用いて10ppm以下、好ましくは5ppm以下、特に好ましくは1ppm以下の極めて低い硫黄分の精製炭化水素油を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、60質量%以上の複合酸化物成分を含む担体にタングステンおよびニッケルを活性金属成分として含ませた水素化処理触媒前駆体に特定の分光学的特徴を有する形態でEDTAが添加されたときに触媒が格段に高性能化することを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の第1の態様に従えば、5〜50質量%のタングステンおよび0.1〜10質量%のニッケルを含む水素化処理触媒前駆体の製造方法であって、
60質量%以上の複合酸化物成分を含む担体にEDTAを含む含浸液を含浸する工程と;
80〜220℃で乾燥処理する工程と;を含み、
得られた水素化処理触媒前駆体の電子スペクトルが980〜1030nmおよび580〜620nmに吸収極大ピークを有することを特徴とする水素化処理触媒前駆体の製造方法が提供される。本発明において、好ましくは、EDTAを含む含浸液の電子スペクトルが980〜1030nmおよび580〜620nmに吸収極大ピークを有する。この電子スペクトルはNi―EDTA錯体によるものと同定される。本発明では、このNi―EDTA錯体を前駆体に残留させるために80〜220℃で乾燥処理する工程を含むが、高温焼成工程は行わない。また、好ましくは、水素化処理触媒前駆体の細孔直径50〜1000nmの範囲の細孔容積が0.01〜0.5mL/gである。
本発明の第2の態様に従えば、上述の製造方法で得られた水素化処理触媒前駆体を硫化処理することを特徴とする水素化処理触媒の製造方法が提供される。
本発明の第3の態様に従えば、担体にタングステンおよびニッケルを含浸して含む水素化処理触媒前駆体であって、
前記担体が複合酸化物成分を60質量%以上含み、
タングステンの含有量が5〜50質量%であり、ニッケルの含有量が0.1〜10質量%であり、
さらに、水素化処理触媒前駆体がEDTAを含むことにより、980〜1030nmおよび580〜620nmに電子スペクトルの吸収極大ピークを呈することを特徴とする水素化処理触媒前駆体が提供される。
本発明の第4の態様に従えば、上記水素化処理触媒前駆体を硫化処理した後、水素の存在下で原料炭化水素油と接触させることを特徴とする精製炭化水素油の製造方法が提供される。
本発明の精製炭化水素油の製造方法では、前記原料炭化水素油が、モリブデンを含む水素化精製触媒を水素の存在下で軽油留分と接触させる粗精製工程で得られる粗精製軽油留分であり、前記精製炭化水素油が硫黄分10質量ppm以下の低硫黄軽油である。本発明のさらに好ましい精製炭化水素油の製造方法は、前記原料炭化水素油が、モリブデンを含む水素化精製触媒を水素の存在下で軽油留分と接触させる粗精製工程で得られる反応混合物を気液分離して得られる粗精製軽油留分であり、前記精製炭化水素油が硫黄分10質量ppm以下の低硫黄軽油である。
本発明の水素化処理触媒前駆体、その製造方法および水素化処理触媒の製造方法は、複合酸化物成分を主成分として含む担体にタングステンおよびニッケルを活性金属成分として含ませた水素化処理触媒の水素化活性を、CyDTAのように高価な有機化合物を用いることなく、比較的安価な有機化合物であるEDTAを用いることで格段に向上させることができる。また、本発明で製造される水素化処理触媒を用いる精製炭化水素油の製造方法によれば、高度に精製された炭化水素油を製造することができる。この方法により、硫黄分が10質量ppm以下、さらに5質量ppm以下、特には1質量ppm以下である低硫黄軽油の製造をマイルドな反応条件で実施することが可能になり、環境対応型の燃料を経済的に提供することができる。
〔担体の組成と物性〕
本発明の水素化処理触媒前駆体に用いられる担体は、複合酸化物の粒子およびその粒子間に存在するバインダー部分からなり、複合酸化物を60質量%以上含む。好ましくは、複合酸化物は、担体中に65〜95質量%、さらには70〜90質量%含まれる。複合酸化物が60質量%未満では、複合酸化物がもつ特性が触媒反応に十分反映されない。また、好ましくは、担体の細孔直径50〜1000nmの範囲の細孔容積は、0.01〜0.5mL/g、より好ましくは、0.02〜0.3mL/gである。細孔直径50nm以上の細孔は、マクロポアと呼ばれ、反応分子の拡散を促進し、炭化水素油の反応の促進に好ましいが、担体の細孔直径50〜1000nmの範囲の細孔容積が0.5mL/gより大きいと、水素化処理触媒前駆体の機械的強度が低下したり、水素化処理触媒のかさ密度が低下して単位体積当たりの触媒性能が低下するので好ましくない。マクロポア特性は、水銀圧入法を用いて測定でき、水銀の接触角を140゜、表面張力を480dynes/cmとし、全ての細孔は円筒形であると仮定して算出できる。また、担体は、好ましくは、いわゆるメソポアの細孔特性について、中央細孔直径が4〜20nmであり、さらに好ましくは4〜15nmである。メソポア細孔特性は、窒素ガス吸着法によって測定され、BJH法などによって細孔容積と細孔直径の関係を算出することができる。また、中央細孔直径は、窒素ガス吸着法において相対圧0.9667の条件で得られる細孔容積をVとするとき、細孔直径の大きい側からの累積細孔容積がV/2となる細孔直径をいう。また、担体の比表面積は、好ましくは100〜1000m/gであり、さらに好ましくは150〜800m/gである。
〔複合酸化物〕
本発明でいう複合酸化物とは、固体酸性を有する複合酸化物である。例えば、二元複合酸化物では、K. Shibata, T. Kiyoura, J. Kitagawa, K. Tanabe, Bull. Chem. Soc. Jpn.,
46, 2985 (1973)にて酸性発現が確認されているものをはじめ数多くのものが知られているが、シリカ−アルミナ、シリカ−チタニア、シリカ−ジルコニア、シリカ−マグネシアが好ましく用いられる。三元複合酸化物としては、シリカ−アルミナ−チタニア、シリカ−アルミナ−ジルコニアが好ましく用いられる。また、本発明でいう複合酸化物には、固体酸性を有するゼオライトを含む。ゼオライトとしては、フォージャサイトX型ゼオライト、フォージャサイトY型ゼオライト、βゼオライト、モルデナイト型ゼオライト、ZSM系ゼオライト(ZSM−4、5、8、11、12、20、21、23、34、35、38、46等がある)、MCM−41,MCM−22、MCM−48、SSZ−33、UTD−1、CIT−5、VPI−5、TS−1、TS−2等が本発明における複合酸化物として使用でき、特に、Y型ゼオライト、安定化Y型ゼオライト、βゼオライト、モルデナイト型ゼオライトまたはMCM−22が好ましい。また、ゼオライトは、プロトン型またはアンモニウムイオン型が好ましい。本発明の水素化処理触媒前駆体の担体は、これら複合酸化物を合計量で60質量%以上含む。また、複合酸化物の凝集粒子の平均直径が、好ましくは15μm以下、特には1〜10μmであることが好ましい。
〔バインダー〕
本発明の水素化処理触媒前駆体に用いられる担体に使用されるバインダーは、アルミナ、シリカおよびチタニアから選ばれる1種または2種以上から構成され、特にアルミナが好ましい。アルミナとしては、α−アルミナ、β−アルミナ、γ−アルミナ、δ−アルミナ等の種々のアルミナを使用することができるが、多孔質で高比表面積であるアルミナが好ましく、中でもγ−アルミナが適している。アルミナの純度は、約98質量%以上、好ましくは約99質量%以上のものが適している。アルミナ中の不純物としては、SO 2−、Cl、Fe、NaO等が挙げられるが、これらの不純物はできるだけ少ないことが望ましく、不純物全量で2質量%以下、より好ましくは1質量%以下である。アルミナをバインダーとする場合の原料は、アルミニウム水酸化物および/または水和酸化物からなる粉体(以下、単にアルミナ粉体ともいう)、特には、擬ベーマイトなどのベーマイト構造を有するアルミニウム水和酸化物を用いることが好ましい。
〔担体の製造方法〕
担体の製造方法は特に限定されないが、複合酸化物粉体とバインダー成分を混練し、成形した後、乾燥、焼成して担体とすることが好ましい。混練には、一般に触媒調製に用いられている混練機を用いることができる。通常は原料を投入し、水を加えて攪拌羽根で混合するような方法が好適に用いられるが、原料および添加物の投入順序など特に限定はない。混練の際には通常水を加えるが、原料がスラリー状の場合などには特に水を加える必要はない。混練時の温度や混練時間は、原料となる複合酸化物、バインダー成分により異なるが、好ましい細孔構造が得られる条件であれば、特に制限はない。また、上述の好ましい担体特性を得たり、生産性を改善するために、硝酸などの酸やアンモニアなどの塩基、セルロースエーテル類やポリビニルアルコールのような水溶性高分子化合物、セラミックス繊維などを加えて混練しても構わない。
混練後の成形は、一般に触媒調製に用いられている成形方法を用いることができる。特に、ペレット状の種々の形状に効率よく成形できるスクリュー式押出機などを用いた押出成形や球状に効率よく成形できるオイルドロップ法による成形が好ましく用いられる。押出成形する場合の断面形状に特に制限はないが、円型、三つ葉型、四つ葉型等が好ましい。成形物のサイズに特に制限はないが、円型の断面形状で押出成形した場合、断面直径が0.5〜20mm、長さ0.5〜20mm程度とすることが好ましい。三つ葉型や四つ葉型の断面形状で押出成形した場合は、断面積が0.25〜400mm、長さ0.5〜20mm程度とすることが好ましい。
上記のようにして得られた成形物は、乾燥、焼成処理をすることにより、担体とされる。この焼成処理は、空気または窒素などのガス雰囲気中において、好ましくは300℃〜900℃、さらに好ましくは400〜700℃の温度で、0.1〜20時間焼成することが好ましい。
〔水素化処理触媒前駆体の組成〕
本発明の水素化処理触媒前駆体は、5〜50質量%のタングステンおよび0.1〜10質量%のニッケルを含む。好ましくは、タングステンを8〜40質量%、さらには10〜30質量%、特には12〜25質量%、ニッケルを0.5〜8質量%、さらには1〜6質量%、特には1.5〜5質量%含む。また、タングステン含有量に対するニッケル含有量は、モル比で、好ましくは0.1〜1、さらには0.2〜0.8、特には0.25〜0.75であることが好ましい。好ましくは、本発明の水素化処理触媒前駆体は、リンまたはホウ素を0.1〜10質量%含む。リンを含ませる場合、より好ましくは、0.2〜5質量%である。また、タングステン含有量に対するリン含有量は、モル比で、好ましくは0.02〜0.5、さらには0.02〜0.3、一層好ましくは0.08〜0.2、特には0.1〜0.18であることが好ましい。
〔水素化処理触媒前駆体の電子スペクトル〕
本発明の水素化処理触媒前駆体は、その電子スペクトルが980〜1030nmおよび580〜620nmに吸収極大ピークを有する。この吸収極大ピークは、Ni2+イオンのd電子の遷移に起因する配位子場吸収帯によるもので、含浸液に添加したEDTAがニッケルと錯体を形成した形態で水素化処理触媒前駆体中に存在していることを示す特徴であり、本発明の水素化処理触媒前駆体が水素化処理触媒として高い性能を示すために不可欠である。可視・近赤外領域には、水素化処理触媒前駆体に含まれるニッケルおよびEDTA以外の他の成分に起因する吸収や他の成分とニッケルイオンとの相互作用に起因する吸収等のピークやショルダーが上記の吸収極大ピーク以外に観測されうるが、980〜1030nmおよび580〜620nmに吸収極大ピークがあれば構わない。また、340〜1200nmの領域の電子スペクトルにおいて、本発明の水素化処理触媒前駆体は、好ましくは、おおよそ450〜520nmでの吸収が最も小さくなり、980〜1030nmおよび580〜620nmに吸収極大波長での吸光度は、500nmでの吸光度の1.5倍以上、より好ましくは2倍以上である。さらに、好ましくは、980〜1030nmの吸収極大波長の吸光度は、580〜620nmの吸収極大波長の吸光度よりも大きい。
〔水素化処理触媒前駆体の細孔特性〕
本発明の水素化処理触媒前駆体は、好ましくは、細孔直径50〜1000nmの範囲の細孔容積が0.01〜0.5mL/gであり、さらに好ましくは、0.02〜0.3mL/gである。また、好ましくは、メソポアの中央細孔直径が、4〜20nmであり、さらに好ましくは4〜15nmである。さらに、好ましくは、比表面積が、30〜800m/gであり、一層好ましくは50〜600m/gである。
〔水素化処理触媒前駆体の製造方法〕
水素化処理触媒前駆体には、タングステン、ニッケルおよびEDTAを含ませることが不可欠であり、水素化処理触媒前駆体が上述の電子スペクトルを示すような製造方法であれば特に制限はないが、タングステン、ニッケルまたはEDTA、所望であればリンやホウ素を含む1種または2種以上の含浸液を調製し、その含浸液を担体に含浸させ、乾燥処理することによって製造することが好ましい。含浸液を担体に含浸させる工程においては、同一の含浸液を複数回に分けて含浸させてよい。また、含浸液を担体に含浸させた後、乾燥処理を施して、その後に同じ含浸液または別の含浸液をさらに含浸させてよく、含浸と乾燥処理を繰り返すことにより、より多くの金属成分等を水素化処理触媒前駆体に含ませることができる。乾燥処理は、所望の成分をすべて含ませた後においても、逐次含浸液を含浸させる途中の段階においても、220℃を越えない温度で行うことが好ましい。220℃を超える温度で処理すると、EDTAが形成している錯体あるいはEDTAが分解して、水素化処理触媒としたときの性能が低下してしまうので好ましくない。したがって、より好ましくは、200℃以下の温度で乾燥処理を行うとよい。乾燥処理は、風乾、熱風乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥、凍結乾燥等の種々の乾燥方法により行うことができ、空気中で行っても不活性ガス雰囲気下で行ってもよい。乾燥処理する時間は、処理温度が上述の範囲内であれば、任意に設定してよいが、0.1〜100時間の範囲であることが好ましい。含浸液を担体に含浸させる方法に特に制限はないが、スプレー、浸漬などによる含浸法やイオン交換法等が好適に用いられる。担体や水素化処理触媒前駆体製造途上の乾燥物(水素化処理触媒前駆体中間品)の吸水量に相当する液量の含浸液を含浸させるポアフィリング法が特に好ましい。
タングステン、ニッケルおよびEDTAの3成分を水素化処理触媒前駆体に含ませる方法としては、(1)3成分を別々に含む含浸液を順次担体や水素化処理触媒前駆体中間品に含浸する方法、(2)3成分のうち2成分を含む含浸液と他の1成分を含む含浸液を順次担体や水素化処理触媒前駆体中間品に含浸する方法、(3)3成分すべてを含む含浸液を担体や水素化処理触媒前駆体中間品に含浸する方法が考えられるが、(1)の方法を適用する場合にあっては、例えば、メタタングステン酸アンモニウム(AMT)水溶液、硝酸ニッケルのようなニッケル塩の水溶液、アンモニア水にEDTAを溶解させた水溶液を任意の順序で担体や水素化処理触媒前駆体中間品に含浸して3成分を含ませることでは、ニッケルとEDTAとを含む含浸液を用いるものでないため適用できない。本発明の水素化処理触媒前駆体では、EDTAがニッケルに対して錯体を形成した形態で存在するので、(2)の方法のうち、ニッケルとEDTAを含む含浸液とタングステンを含む含浸液とを任意の順序で含浸させる方法を適用することや(3)の方法を適用することがより好ましく、とりわけ、ニッケルとEDTAとを含む含浸液またはタングステン、ニッケルおよびEDTAを含む含浸液の電子スペクトルが、980〜1030nmおよび580〜620nmに吸収極大ピークを有するような含浸液を調製し、担体や水素化処理触媒前駆体中間品に含浸させることが好ましい。ニッケルとEDTAを含む含浸液を調製する方法に特に制限はないが、(A)アンモニア水にEDTAを添加して均一な溶液とした後、硝酸ニッケルのようなニッケル塩を添加して均一な水溶液とする方法や(B)硝酸水溶液またはリン酸水溶液にEDTAを添加してスラリーを得た後、炭酸ニッケルを添加して加熱混合し、均一な水溶液とする方法が好ましい方法として挙げられる。(2)の方法を適用する場合にあっては、ニッケルとEDTAを含む含浸液とタングステンを含む含浸液を任意の順序で担体に含浸させることができ、特に、上記(A)または(B)の方法で得た含浸液を担体に含浸させた後にAMT水溶液を含浸する方法またはその逆の順序で担体に含浸させる方法が好ましい。(3)の方法を適用する場合、均一な含浸液が得られれば含浸液の調製法に制限はないが、上記(A)または(B)の方法で調製したニッケルとEDTAを含む水溶液にAMTまたはAMT水溶液を添加する方法が好ましい。AMTは酸性水溶液には容易に溶解するが、塩基性水溶液に溶解させることは困難なので、ニッケルとEDTAを含むpH7未満の水溶液とAMTまたはAMT水溶液を混合するとよい。上記(A)または(B)の方法によれば、ニッケルとEDTAを含むpH7未満の水溶液を容易に調製できるので好ましい。水素化処理触媒前駆体にリンまたはホウ素を含ませる場合は、タングステン、ニッケルまたはEDTAを含む含浸液とは別に、リン酸またはホウ酸の水溶液を含浸液として含浸させてもよいが、水素化処理触媒前駆体の製造工程を簡略化させるため、タングステン、ニッケルまたはEDTAを含む水溶液にリン酸またはホウ酸を混合して含浸液を調製して含浸させてもよい。リンを添加する方法として、上記(B)の方法を適用することは好ましい方法の1つである。
含浸液を調製する際に用いるタングステン化合物に特に制限はないが、ドデカタングストケイ酸、ドデカタングストリン酸のようにタングステンをアニオン骨格中に含むヘテロポリ酸、メタタングステン酸のようにタングステンをアニオン骨格中に含むイソポリ酸およびそれらの酸のプロトンの全部または一部がアンモニウムイオンに置換えられたアンモニウム塩が好ましく、特に、メタタングステン酸のアンモニウム塩であるメタタングステン酸アンモニウム(AMT)が好ましい。
含浸液を調製する際に用いるニッケル化合物に特に制限はないが、硝酸ニッケル、炭酸ニッケル、硫酸ニッケル、リン酸ニッケル、酢酸ニッケル、蟻酸ニッケル等の無機酸塩や有機酸塩が好ましい。
含浸液を調製する際に用いるEDTAは、エチレンジアミン四酢酸およびそのプロトンの一部または全部がアンモニウムイオンで置換えられたアンモニウム塩が好ましい。EDTAは、工業的には通常、アルカリ金属塩を酸処理して酸型の製品に誘導されるが、EDTAに不純物としてアルカリ金属が含まれていると、本発明の水素化処理触媒の性能を低下させるので、その含有量が1000質量ppm以下であることが好ましく、さらには100質量ppm、特には10質量ppm以下であることが好ましい。
含浸液を調製する際に用いるリン化合物に特に制限はないが、オルトリン酸、メタリン酸、ピロリン酸、三リン酸、四リン酸、ポリリン酸等の種々のリン酸、リン酸三アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸二水素アンモニウムが好ましい。
含浸液を調製する際に用いるホウ素化合物に特に制限はないが、オルトホウ酸、メタホウ酸、四ホウ酸等の種々のホウ酸およびホウ酸のプロトンの一部または全部がアンモニウムイオンで置換えられた塩も好ましい。
水素化処理触媒前駆体に含ませるEDTAの総量とニッケルの総量は、ニッケルに対するEDTAのモル比が0.1〜1の範囲であることが好ましく、0.3〜1であるとさらに好ましい。0.1未満では、EDTA添加による水素化処理触媒の性能向上効果が十分でなく、1を超えると含浸液を均一な溶液とすることが困難になったり、含浸液の粘度が上昇して添加成分を水素化処理触媒前駆体中に均一に分散することが困難になったりするため、水素化処理触媒の性能が低下する。
〔水素化処理触媒前駆体の硫化処理〕
本発明の水素化処理触媒は、水素化処理触媒前駆体を硫化処理することによって製造される。通常、硫化処理は、水素化処理触媒前駆体を、本発明の精製炭化水素油の製造方法に用いる反応装置中に充填した後に行われる。この硫化処理は、約75〜400℃、好ましくは約100〜350℃で、常圧あるいはそれ以上の水素分圧の水素雰囲気下、硫黄化合物を含む石油蒸留物、それに硫黄含有化合物を添加したもの、あるいは硫化水素を用いて行う。石油蒸留物に硫黄含有化合物を添加して用いる場合の硫黄含有化合物は、硫化処理条件下で分解して硫化水素に転化し得るものであれば特に限定はないが、好ましくは、チオール類、二硫化炭素、チオフェン類、ジメチルスルフィド、ジメチルジスルフィドおよび種々のポリスルフィド類である。水素化処理触媒前駆体を反応装置に充填した後、硫化処理を開始する前に、水素化処理触媒前駆体に付着した水分を除去するための乾燥処理を行ってもよい。この乾燥処理は、水素または不活性ガスの雰囲気下で、常圧あるいはそれ以上の圧力でガスを流通させ、常温〜220℃、好ましくは150℃以下で行う。220℃を超える高温で乾燥処理を行うと、水素化処理触媒前駆体に含まれるEDTAが形成している錯体あるいはEDTAが分解して、水素化処理触媒としての性能が低下してしまうので好ましくない。
〔水素化処理触媒を用いる精製炭化水素油の製造方法〕
本発明の水素化処理触媒は、水素化精製(水素化脱硫、水素化脱窒素、芳香族水素化、オレフィン水素化)触媒機能、水素化分解触媒機能、水素化異性化触媒機能を有するので、原料炭化水素油と反応条件を適切に選択することにより、水素化処理触媒を水素の存在下で原料炭化水素油と接触させることで、様々な精製炭化水素油を製造することができる。得られる精製炭化水素油は、軽油、灯油、ジェット燃料、ガソリン、LPG、重油等の燃料、燃料電池システム用燃料、潤滑油、溶剤等やそれらの基材として、好ましく用いることができる。また、接触改質原料油や接触分解原料油等、石油精製プロセス原料油として好ましく用いることができる。
本発明の精製炭化水素油の製造方法における原料炭化水素油は、バナジウム分とニッケル分の合計が5質量ppm以下の炭化水素油であれば、特に制限はなく、原油、原油を常圧蒸留または減圧蒸留して得られるLPG留分、ナフサ留分、灯油留分、軽油留分、減圧軽油留分、常圧残油、減圧残油等の石油留分、それら石油留分を熱分解、接触分解、水素化精製、脱レキ、溶剤脱ろう、フルフラール等による溶剤抽出等の処理を行った各種石油留分、フィーシャー・トロプシュ合成油(FT合成油)、オレフィン重合物、石炭液化油、プラスチック分解油、オイルサンドやオイルシェールの分解油等が好ましく用いられる。バナジウム分とニッケル分の合計が5質量ppmを超える炭化水素油を水素の存在下で本発明の水素化処理触媒と接触させると、バナジウム分とニッケル分が触媒上に堆積して触媒を著しく失活させるので好ましくない。
本発明でいう精製炭化水素油とは、水素化処理で得られた炭化水素油の全量または一部であって、原料炭化水素油に比べて、硫黄分低減、窒素分低減、全芳香族分低減、多環芳香族分低減、オレフィン分低減、臭素価低下、流動点低下、目詰まり点低下または粘度指数向上のうち少なくとも1つが達成された炭化水素油をいう。なお、本発明でいう全芳香族分とは、JPI−5S−49−97「石油製品−炭化水素タイプ試験方法−高速液体クロマトグラフ法」で測定された1環芳香族分、2環芳香族分および3環以上芳香族分の合計、JIS K 2536で測定された芳香族分またはガスクロマトグラフ法によって定量される芳香族化合物の合計を指す。本発明でいう多環芳香族分とは、JPI−5S−49−97「石油製品−炭化水素タイプ試験方法−高速液体クロマトグラフ法」で測定された2環芳香族分と3環以上芳香族分の合計を指す。オレフィン分とは、JPI−5S−49−97「石油製品−炭化水素タイプ試験方法−高速液体クロマトグラフ法」で測定されたオレフィン分またはJIS K 2536で測定されたオレフィン分またはガスクロマトグラフ法によって定量されるオレフィン化合物の合計を指す。本発明でいう臭素価、流動点、目詰まり点とは、各々、JIS K 2605で測定された臭素価、JIS K 2269で測定された流動点、JIS K 2288で測定された目詰まり点を指す。硫黄分低減においては、好ましくは原料炭化水素油の硫黄分の10%以下、さらには1%以下、特には0.1%以下に低減できる。窒素分低減においては、好ましくは原料炭化水素油の窒素分の30%以下、さらには10%以下、特には1%以下に低減できる。全芳香族分低減においては、好ましくは原料炭化水素油の全芳香族分の70%以下、さらには50%以下、特には30%以下に低減できる。多環芳香族分低減においては、好ましくは原料炭化水素油の多環芳香族分の70%以下、さらには50%以下、特には30%以下に低減できる。オレフィン分低減および臭素価低下においては、好ましくは原料炭化水素油の10%以下、さらには1%以下に低減できる。流動点低下においては、好ましくは原料炭化水素油の流動点に比べ、5℃以上、さらには10℃以上、特には20℃以上低下できる。目詰まり点低下においては、好ましくは原料炭化水素油の目詰まり点に比べ、5℃以上、さらには10℃以上、特には20℃以上低下できる。粘度指数向上においては、好ましくは原料炭化水素油の粘度指数に比べ、10以上、さらには20以上、特には30以上向上できる。
本発明の精製炭化水素油の製造方法における水素化処理は、バッチ式、流通式、固定床式、流動床式等の反応形式に特に制限はないが、固定床流通式反応装置に充填された水素化処理触媒に水素と原料炭化水素油とを連続的に供給して接触させる形式が好ましい。水素化処理の反応条件は、水素分圧0.1〜30MPa、水素/オイル比1〜5000NL/L、液空間速度(LHSV)0.1〜30h−1の、反応温度100〜500℃の範囲から、原料炭化水素油と目的物となる精製炭化水素油に応じて選ぶことができる。
以下に、本発明の精製炭化水素油の製造方法の好ましい実施形態を示すが、本発明は、それらに限定されるものではない。
〔減圧軽油留分の水素化分解処理による精製軽質留分の製造方法〕
本発明の精製炭化水素油の製造方法における好ましい実施形態の1つとして、250℃以上の沸点を有する留分を主成分とする留分の水素化分解処理による精製軽質留分の製造方法が挙げられる。本発明の精製炭化水素油の製造方法によれば、減圧軽油留分を原料炭化水素油とし、これを本発明の水素化処理触媒で水素化処理することによって、精製炭化水素油として硫黄分が10質量ppm以下、好ましくは5質量ppm以下、さらに好ましくは1質量ppm以下の精製軽質留分を製造することができる。ここでいう精製軽質留分とは、精製軽油留分、精製灯油留分、精製ナフサ留分を指す。
この実施形態においては、原料炭化水素油として、250℃以上の沸点を有する留分を80重量%以上含有するものが好ましく用いられる。原料炭化水素油の由来に特に制限はないが、原油、石炭液化油、オイルシェール、オイルサンドなどから誘導されるものやFT合成油などが好ましく用いられる。特に原油の常圧蒸留残油を減圧蒸留して留出する減圧軽油留分が特に好ましい。原料炭化水素油は、炭化水素以外の不純物を含むものであっても構わないが、不純物含有量が少ないほうが好ましく、脱硫、脱窒素、脱金属などの水素化精製や脱レキなどの前処理をしたものが好ましく用いられる。硫黄分は0.01〜5質量%の範囲であることが好ましい。
この実施形態の水素化分解処理においては、原料炭化水素油を、特定の温度よりも高い沸点を有する留分を減少させた生成物に変換するが、ここでいう特定の温度には、所望の目的物に応じて任意の温度を選ぶことができ、180℃以上400℃以下の温度を選ぶことが好ましい。また、原料として用いる炭化水素油は、ここで選ばれた特定の温度以上の沸点を有する留分を50重量%以上含有することが好ましく、さらには80重量%以上、特には90重量%以上含有することが好ましい。
この実施形態においては、水素の存在下で水素化分解反応が行われるが、全圧が2MPa〜30MPa、特に10〜25MPaであるような加圧条件下で実施されることが好ましい。この実施形態の水素化分解処理に適した液空間速度(LHSV)は、0.2h−1〜5.0h−1であり、特に0.3h−1〜3.0h−1以下が好ましい。この実施形態の水素化分解処理に適した水素/オイル比は、100〜5000NL/Lである。この実施形態の水素化分解処理は、250℃以上500℃以下の温度で反応を行うことが好ましく、特に300℃以上450℃以下で行うことが好ましい。また、この実施形態においては、水素化処理触媒前駆体が、ゼオライト、特に、Y型ゼオライト、安定化Y型ゼオライト、βゼオライト、モルデナイト型ゼオライトまたはMCM−22を含むことが好ましい。
〔ノルマルパラフィンを主成分とする原料炭化水素油の水素化分解および水素化異性化処理による精製軽油留分の製造〕
本発明の精製炭化水素油の製造方法における好ましい実施形態の1つとして、ノルマルパラフィンを主成分とする原料炭化水素油を本発明の水素化処理触媒で水素化分解処理および水素化異性化処理することによる精製軽油留分の製造方法が挙げられる。
この実施形態に用いるノルマルパラフィンを主成分とする原料炭化水素油は、軽質なノルマルパラフィンの水素化分解および水素化異性化の反応性が低いので、必要に応じてあらかじめ蒸留等により原料油の軽質留分をカットしたものが好ましく、具体的には初留点が300℃以上、特には310℃以上、10容量%留出温度が350℃以上、特には360℃以上の原料を使用することが好ましい。また、重質なノルマルパラフィンは、分解により軽油留分より軽質なノルマルパラフィンに転換されるので、蒸留などにより重質過ぎる留分をカットすることが好ましく、終点としては600℃以下、特には590℃以下、90容量%留出温度としては560℃以下、特には550℃以下とすることが好ましい。これらにより水素化分解および水素化異性化の反応率、軽油収率を高くすることができる。さらに、この実施形態においては、原料炭化水素油中のノルマルパラフィン含有量が85質量%以上、特には95質量%以上が好ましい。不純物含有量としては、硫黄分が500質量ppm以下、特には50質量ppm以下、また、窒素分が100質量ppm以下、特には10質量ppm以下であることが好ましい。ノルマルパラフィン原料は、特にその由来を限定するものではないが、石油精製工程、例えば潤滑油製造工程の1つである溶剤脱ろう工程から得られるスラックワックスや、FT合成油、オレフィン重合物などを用いることができる。これらの原料炭化水素油は、単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。特には、FT合成油を単独で用いることが好ましい。なお、FT合成油とは、一酸化炭素と水素を、触媒を用いて反応させて得られる合成液体炭化水素油で、ノルマルパラフィンを主成分とし、合成方法によって少量副生成物としてオレフィンやアルコール等含むものである。
この実施形態の水素化分解処理および水素化異性化処理は、反応温度が300〜400℃、特には320〜350℃、水素圧力が1〜20MPa、特には3〜9MPa、水素/オイル比が100〜2000NL/L、特には300〜1500NL/L、LHSVが0.5〜5h−1の反応条件で行うことが好ましい。
この実施形態においては、水素化分解処理および水素化異性化処理によって得られる生成油から、10容量%留出温度が200℃以上好ましくは240℃以上、90容量%留出温度が340℃以下好ましくは330℃以下の軽油留分を分留する。なお、この軽油留分よりも重質な留分は、原料として再度使用することもできる。
この実施形態で製造される精製軽油留分は、目詰まり点が−5℃以下、好ましくは−15℃〜−30℃であり、流動点は−10℃以下、特には−25℃〜−50℃であり、水素化分解処理および水素化異性化処理によって低温特性が改善された軽油留分が得られる。また、曇り点は−10℃以下、好ましくは−15℃〜−35℃であり、硫黄分は5質量ppm以下、好ましくは1質量ppm以下である。
〔軽油留分の水素化精製処理による低硫黄軽油の製造〕
本発明の精製炭化水素油の製造方法における好ましい実施形態の1つとして、軽油留分の水素化精製処理による低硫黄軽油の製造方法が挙げられる。この実施形態の精製炭化水素油の製造方法によれば、軽油留分を原料炭化水素油とし、これを水素化精製処理することによって、精製炭化水素油として硫黄分が50質量ppm以下、好ましくは10質量ppm以下、さらに好ましくは5質量ppm以下の低硫黄軽油を製造することができる。
原料炭化水素油となる軽油留分は、硫黄分が0.5質量%以上である軽油留分であり、通常、硫黄分が0.5〜5質量%、特には1〜3質量%であり、窒素分が50質量ppm以上、特には80〜500質量ppmであり、密度(15℃)が0.75g/cm以上、特には0.80〜0.92g/cmである。原料炭化水素油となる軽油留分としては、直留軽油留分を用いることが好ましく、直留軽油留分単独でもよいが、熱分解油や接触分解油を直留軽油留分に混合した混合軽油留分でもよい。この直留軽油留分は、原油を常圧蒸留して得られ、おおよそ10容量%留出温度が200〜290℃、50容量%留出温度が260〜320℃、90%容量留出温度が300〜370℃である。熱分解油とは、重質油留分に熱を加えて、ラジカル反応を主体にした反応により得られる軽質留分油で、例えば、ディレードコーキング法、ビスブレーキング法あるいはフルードコーキング法等により得られる留分をいう。これらの留分は得られる全留分を熱分解油として用いてもよいが、留出温度が150〜520℃の範囲内にある留分を用いることが好適である。接触分解油とは、中間留分や重質留分、特には減圧軽油留分や常圧蒸留残油等をゼオライト系触媒と接触分解する際に得られる留分、特に高オクタン価ガソリン製造を目的とした流動接触分解装置において副生する分解軽油留分である。この留分は、一般に、沸点が相対的に低い軽質接触分解油と沸点が相対的に高い重質接触分解油とが別々に採取されている。本発明においては、これらの留分のいずれをも用いることができるが、前者の軽質接触分解油、いわゆるライトサイクルオイル(LCO)を用いることが好ましい。このLCOは、一般に、10容量%留出温度が220〜250℃、50容量%留出温度が260〜290℃、90容量%留出温度が310〜355℃の範囲内にある。また、重質接触分解油、いわゆるヘビーサイクルオイル(HCO)は、10容量%留出温度が280〜340℃、50容量%留出温度が390〜420℃、90容量%留出温度が450℃以上にある。
この実施形態における水素化精製処理は、反応温度が280〜450℃、好ましくは300〜420℃、特には320〜400℃、水素圧力が3〜10MPa、好ましくは4〜9MPa、特には4.5〜8.5MPaの反応条件で行われる。反応温度が280℃未満では、硫黄分を5質量ppm以下にすることが困難になり、450℃を超えると分解反応が著しく起こり軽油得率低下やコーキングが発生し、好ましくない。また、水素/オイル比が50〜2000NL/L、特には100〜1500NL/L、LHSVが0.1〜5h−1、特には0.3〜3h−1の反応条件で行うことが好ましい。
〔粗精製軽油留分の水素化精製処理による低硫黄軽油の製造〕
本発明の精製炭化水素油の製造方法における好ましい実施形態の1つとして、粗精製軽油留分の水素化精製処理による低硫黄軽油の製造方法が挙げられる。この実施形態の低硫黄軽油の製造方法は、原料炭化水素油が、モリブデンを含む水素化精製触媒を水素の存在下で軽油留分と接触させる粗精製工程で得られる粗精製軽油留分であり、精製炭化水素油が硫黄分10質量ppm以下の低硫黄軽油である低硫黄軽油の製造方法である。この実施形態によれば、硫黄分が10質量ppm以下、好ましくは5質量ppm以下、さらに好ましくは1質量ppm以下の低硫黄軽油を製造することができる
この実施形態の低硫黄軽油の製造方法に用いられる粗精製軽油留分は、前述の「軽油留分の水素化精製処理による低硫黄軽油の製造」において好適とした軽油留分を、モリブデンを含む水素化精製触媒と水素の存在下と接触させる粗精製工程で得られる粗精製軽油留分であり、好ましくは硫黄分を2000質量ppm以下に低減した軽油留分であり、さらには硫黄分が50〜2000質量ppm、特には50〜1000質量ppmである。
本発明の水素化処理触媒は、軽油留分中に含まれるいわゆる難脱硫性硫黄化合物の脱硫に優れる。一方、難脱硫性硫黄化合物に分類されない、より脱硫反応性の高い硫黄化合物(易脱硫性硫黄化合物)の脱硫は、公知のモリブデン系水素化処理触媒の方が優れていることが多い。硫黄分を2000質量ppm以下、特には1000質量ppm以下に低減することにより、いわゆる難脱硫性硫黄化合物が選択的に残留することになるため、本発明の水素化処理触媒が脱硫性能を発揮する。
軽油留分を上述の硫黄分レベルの粗精製軽油留分に粗精製する工程には、モリブデン系水素化精製触媒が用いられるが、特にはモリブデンとコバルトおよび/またはニッケルを含む水素化精製触媒が好ましい。好ましい水素化精製触媒としては、無機多孔質酸化物からなる担体とその担体に担持された金属成分としてニッケル、コバルトの少なくとも一方とモリブデンとを含むものである。また他の成分として、リン、ホウ素、フッ素のうちいずれか一つあるいはこれらの元素を組み合わせて用いてもよい。当該モリブデン系水素化精製触媒は、通常、水素化精製触媒前駆体を硫化処理することによって得られる。その硫化処理は、本発明の水素化処理触媒と同様に行うことが好ましい。
当該モリブデン系水素化精製触媒前駆体は、比表面積が100〜450m/g、特には150〜300m/gであり、かつ細孔容積が0.1〜2mL/g、特には0.2〜1.5mL/gであり、かつ中央細孔直径が3〜20nm、特には4〜13nm、さらには5〜10nmの範囲にあるものが好ましい。また、この触媒の形状は、球状、円柱状、三葉型または四葉型等の形状が好ましい。その断面寸法は、0.1mm〜10mmが好ましく、0.7〜3mmがより好ましい。
無機多孔質酸化物としては、周期律表第2、第4、第13、および第14族の元素の酸化物を用いることができる(周期律表はIUPAC、1990年勧告のものによる)。このうちでも、シリカ、アルミナ、マグネシア、ジルコニア、ボリア、カルシア等が好適であり、これらは単独或いは2種類以上を組み合わせて使用すると良い。アルミナ(γ、δ、η、χ等の各結晶構造を有するもの)、シリカ−アルミナ、シリカ、アルミナ−マグネシア、シリカ−マグネシア、アルミナ−シリカ−マグネシアが好ましい。さらに、アルミナ、特にはγ-構造を含むアルミナが好ましい。担体に対して、アルミナ部分が80質量%以上含まれていることが好ましい。
当該モリブデン系水素化精製触媒に用いられる担体の細孔分布は、中央細孔直径が好ましくは3〜20nm、さらには4〜13nm、特には5〜10nmの範囲にあるものが好ましい。担体の比表面積が100m/g以上であることが好ましく、さらには200m/g、特には、230m/g以上であることが好ましい。担体の細孔容積は、0.3〜1.5mL/gであることが好ましく、さらには0.4mL/g以上、特には0.5mL/g以上であることが好ましい。
当該モリブデン系水素化精製触媒前駆体は、金属成分としてモリブデンを含み、含有量は金属元素換算で5〜30質量%、特には8〜20質量%とすることが好ましい。タングステンなどの他の周期律表第6族金属元素を含んでいてもよいが、この場合、モリブデンが第6族金属元素に占める割合が金属元素に換算して60質量%以上、特に80質量%以上、さらには95質量%以上が好ましい。他の金属成分としてニッケルまたはコバルトのいずれかあるいはこの両元素を含んでおり、その合計含有量は金属元素換算で1〜10質量%、特には2〜8質量%とすることが好ましい。また、リン、ホウ素、フッ素などの元素を含むものであってよい。さらに、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、trans−1,2−シクロヘキサンジアミン−N,N,N’,N’−四酢酸、ニトリロ三酢酸、クエン酸等、キレート性の有機化合物を含ませた水素化処理触媒も好ましく用いられる。これらのキレート性の有機化合物は、コバルトまたはニッケルと錯体を形成した形態で水素化処理触媒に含まれていると一層好ましい。他の成分として、リン、ホウ素、フッ素のうちいずれかあるいはこれらの元素を組み合わせて用いてもよく、その合計含有量は金属元素重量に換算して0.1〜10重量%、特にリンを含有する場合は、リンの重量は0.1〜5重量%とすることが好ましい。他の金属成分として、白金などの貴金属を含ませることもできるが、原料油中の硫黄化合物や窒素化合物による被毒を受けるため、実質的に貴金属を含んでいないことが好ましい。
粗精製のための水素化精製処理は、原料油と上述のモリブデン系水素化精製触媒を水素の存在下で接触させて水素化精製を行うことであり、その結果、本発明が水素化処理触媒を用いて処理すべき粗精製軽油留分を得る。得られる粗精製軽油留分中に含まれるアルキル置換基のないDBT(易脱硫性硫黄化合物に分類される)が、硫黄分として、好ましくは10質量ppm以下、さらには5質量ppm以下、特には1質量ppm以下であることが好ましい。DBTが極めて低濃度になるまで脱硫されていると、難脱硫性硫黄化合物が粗精製油中に選択的に残留することになり、本発明の水素化処理触媒によって難脱硫性硫黄化合物が効率よく脱硫されるので好ましい。得られる粗精製軽油留分の硫黄分は、好ましくは2000質量ppm以下、さらには50〜2000質量ppm、特には50〜1000質量ppmとすることが好ましい。通常、このような硫黄分レベルにまで脱硫された粗精製油中には難脱硫性硫黄化合物が選択的に残留することになり、第3の工程の反応条件下で難脱硫性硫黄化合物が効率よく脱硫されるので好ましい。
粗精製軽油留分を得るための水素化精製処理の好ましい反応条件としては、反応温度250〜500℃、特には300〜420℃の範囲、水素圧力として1〜30MPa、特には3〜20MPa、さらには4〜10MPaの範囲、水素/オイル比50〜2000NL/L、特には100〜1000NL/L、さらには150〜500NL/Lの範囲、液空間速度(LHSV)0.1〜10h−1、特には1〜8h−1、さらには1.5〜6h−1の範囲とすることが好ましい。
粗精製によって得られる粗精製軽油留分と水素、硫化水素、アンモニア、炭化水素ガス等との気液混合物は、(1)全量をそのまま本発明の水素化処理触媒と接触させてもよいし、(2)水素を追加して本発明の水素化処理触媒と接触させてもよいし、(3)気液分離処理を行った後に水素を追加して本発明の水素化処理触媒と接触させてもよい。水素/オイル比が高い方が水素化処理に有利なため、(1)より(2)が好ましく、硫化水素やアンモニアは本発明の水素化処理触媒による脱硫反応を阻害するので、これらを低減する方法が有利なことから、さらに(2)より(3)が好ましい。
(1)〜(3)のいずれにおいても、粗精製の工程と粗精製軽油留分を硫黄分10質量ppm以下に水素化精製する工程は同一の反応器内で行ってもよいし、異なる反応器で行ってもよい。
(1)の方法において、粗精製によって得られる粗精製軽油留分と水素、硫化水素、アンモニア、炭化水素ガス等との気液混合物の全量をそのまま本発明の水素化処理触媒と接触させる際の反応形式は、バッチ式、流通式、固定床式、流動床式等、特に制限はないが、固定床流通式反応装置に充填された水素化処理触媒に水素と原料油とを連続的に供給して接触させる形式が好ましい。本発明の水素化処理触媒を用いた水素化精製は、反応温度が280〜450℃、好ましくは300〜420℃、特には320〜400℃、水素圧力が3〜10MPa、好ましくは4〜9MPa、特には4.5〜8.5MPaの反応条件で行われる。水素圧力が3MPaより低いと、精製炭化水素油の硫黄分を10質量ppm以下にすることが困難になり、10MPaを超えると水素化反応が過剰に進行し、製造上高コストとなり好ましくない。本発明の水素化処理触媒を用いた水素化精製は、好ましくは、液空間速度(LHSV)が0.1〜5h−1、特には0.3〜4h−1の反応条件で行うことが好ましい。LHSVが0.1h−1未満では、一定量の精製炭化水素油を製造するための反応装置が大きくなり過ぎ、LHSVが5h−1を超えると、精製炭化水素油の硫黄分を10質量ppm以下にすることが困難になり、好ましくない。また、本発明の水素化処理触媒を用いた水素化精製は、好ましくは、水素/オイル比が100〜2000NL/L、特には100〜1000NL/Lの反応条件で行う。水素/オイル比が100NL/L未満では、精製炭化水素油の硫黄分を10質量ppm以下にすることが困難になり、2000NL/Lを超えると、水素供給のためのコストが嵩み、経済的に製造することが困難になり、好ましくない。
固定床流通式反応装置で水素化精製を行う場合、水素化処理触媒は、単一触媒床に充填してもよいし、2つ以上の触媒床に分割して充填してもよい。2つ以上の触媒床に分割して水素化処理触媒を充填する場合においては、触媒床間にクエンチ水素を供給することが好ましい。触媒床間にクエンチ水素を供給する場合にあっては、反応器入口に原料油とともに供給する水素とクエンチ水素の合計量と原料油の供給量の比が、100〜2000NL/L、特には100〜1000NL/Lとすることが好ましい。
(2)の方法において、粗精製によって得られる粗精製軽油留分と水素、硫化水素、アンモニア、炭化水素ガス等との気液混合物に水素を追加して本発明の水素化処理触媒と接触させる際の反応形式は、バッチ式、流通式、固定床式、流動床式等特に制限はないが、固定床流通式反応装置に充填された水素化処理触媒に水素と原料油とを連続的に供給して接触させる形式が好ましい。本発明の水素化処理触媒を用いた水素化精製は、反応温度が280〜450℃、好ましくは300〜420℃、特には320〜400℃、水素圧力が追加した水素を含めて3〜10MPa、好ましくは4〜9MPa、特には4.5〜8.5MPaの反応条件で行われる。水素圧力が3MPaより低いと、精製炭化水素油の硫黄分を10質量ppm以下にすることが困難になり、10MPaを超えると水素化反応が過剰に進行し、製造上高コストとなり好ましくない。本発明の水素化処理触媒を用いた水素化精製は、好ましくは、液空間速度(LHSV)が0.1〜5h−1、特には0.3〜3h−1の反応条件で行うことが好ましい。LHSVが0.1h−1未満では、一定量の精製炭化水素油を製造するための反応装置が大きくなり過ぎ、LHSVが5h−1を超えると、精製炭化水素油の硫黄分を10質量ppm以下にすることが困難になり、好ましくない。また、本発明の水素化処理触媒を用いた水素化精製は、追加した水素を含めた水素/オイル比が100〜2000NL/L、特には100〜1000NL/Lの反応条件で行う。水素/オイル比が100NL/L未満では、精製炭化水素油の硫黄分を10質量ppm以下にすることが困難になり、2000NL/Lを超えると、水素供給のためのコストが嵩み、経済的に製造することが困難になり、好ましくない。本発明の精製炭化水素油の製造方法における水素化精製は、好ましくは、液空間速度(LHSV)が0.1〜5h−1、特には0.3〜4h−1の反応条件で行うことが好ましい。固定床流通式反応装置で水素化精製を行う場合、水素化処理触媒は、単一触媒床に充填してもよいし、2つ以上の触媒床に分割して充填してもよい。2つ以上の触媒床に分割して水素化処理触媒を充填する場合においては、触媒床間にクエンチ水素を供給することが好ましい。触媒床間にクエンチ水素を供給する場合にあっては、反応器入口に原料油とともに供給する水素とクエンチ水素の合計量と原料油の供給量の比が、100〜2000NL/L、特には100〜1000NL/Lとすることが好ましい。
(3)の方法においては、粗精製工程と本発明の水素化処理触媒による水素化精製処理の工程は異なる反応器を用いて行ってもよいし、同一の反応器内で行ってもよい。異なる反応器を用いて行う場合にあっては、粗精製工程のための反応器と本発明の水素化処理触媒による水素化精製処理の工程のための反応器の間に、粗精製工程から得られる反応混合物の気液分離を行う気液分離装置と、気液分離装置から得られる粗精製油を水素とともに本発明の水素化処理触媒による水素化精製処理の工程のための反応器に供給する装置を備えた一連の装置を用いて水素化処理を行うことが好ましい。粗精製工程で得られる粗精製軽油留分と水素、硫化水素、アンモニア、炭化水素ガス等との気液混合物を気液分離処理した後に水素を追加して本発明の水素化処理触媒と接触させるが、気液分離処理を行う方法は、静置型の分離槽、ストリッパー、フラッシャー、蒸留等による方法が挙げられ、2つ以上の分離装置を組合せて用いてもよい。例えば、高圧分離槽での気液分離で得られた粗精製油をさらにストリッパーを用いて気液分離すると硫化水素やアンモニアを、効果的に除去できるので、特に好ましい。ストリッパーによるストリッピング処理のために供給するガス流としては、水素、不活性ガスまたはスチームが好ましい。不活性ガスとしては、窒素、ヘリウム、アルゴン、二酸化炭素などの粗精製油と化学反応を起こさないガスであれば用いることができる。粗精製工程と本発明の水素化処理触媒による水素化精製処理の工程を同一の反応器内で行う場合は、1つの反応器内に気液分離のための装置を設けて行うが、触媒層間にトレイを設ける方法、触媒層間にシーブトレイを設ける方法等が挙げられ、再表2000−42130号公報および国際公開特許2002−31088号公報のような公知の方法を適用できる。
粗精製工程から単位時間あたりに得られる硫化水素量、アンモニア量に対する本発明の水素化処理触媒による水素化精製処理の工程に単位時間あたりに供給される硫化水素量、アンモニア量の比率を、本発明では、各々、硫化水素の残存率、アンモニアの残存率と呼ぶが、これらの残存率は、好ましくは0〜50%である。これら残存率が50%より高いと、気液分離による本発明の水素化処理触媒による水素化精製処理の工程での反応阻害低減効果が小さくなり好ましくない。これらの残存率は低いほど反応阻害低減効果が高いが、残存率を0%に近づけると低硫黄軽油の製造におけるエネルギー消費量が増加し、経済性を損ねるので、これらの残存率は、より好ましくは1〜40%、特には3〜20%とすることが好ましい。
本発明の水素化処理触媒を用いた水素化精製は、反応温度が280〜450℃、好ましくは300〜420℃、特には320〜400℃、気液分離処理した後に追加した水素を含めた水素圧力が3〜10MPa、好ましくは4〜9MPa、特には4.5〜8.5MPaの反応条件で行われる。水素圧力が3MPaより低いと、精製炭化水素油の硫黄分を10質量ppm以下にすることが困難になり、10MPaを超えると水素化反応が過剰に進行し、製造上高コストとなり好ましくない。本発明の水素化処理触媒を用いた水素化精製は、好ましくは、液空間速度(LHSV)が0.1〜5h−1、特には0.3〜3h−1の反応条件で行うことが好ましい。LHSVが0.1h−1未満では、一定量の精製炭化水素油を製造するための反応装置が大きくなり過ぎ、LHSVが5h−1を超えると、精製炭化水素油の硫黄分を10質量ppm以下にすることが困難になり、好ましくない。また、本発明の水素化処理触媒を用いた水素化精製は、気液分離処理した後に追加した水素を含めた水素/オイル比が、好ましくは20〜1000NL/L、さらには40〜800NL/L、特には50〜500NL/Lの反応条件で行う。水素/オイル比が20NL/L未満では、精製炭化水素油の硫黄分を10質量ppm以下にすることが困難になり、2000NL/Lを超えると、水素供給のためのコストが嵩み、経済的に製造することが困難になり、好ましくない。本発明の水素化処理触媒を用いた水素化精製は、好ましくは、液空間速度(LHSV)が0.1〜5h−1、特には0.3〜4h−1の反応条件で行うことが好ましい。固定床流通式反応装置で水素化精製を行う場合、水素化処理触媒は、単一触媒床に充填してもよいし、2つ以上の触媒床に分割して充填してもよい。2つ以上の触媒床に分割して水素化処理触媒を充填する場合においては、触媒床間にクエンチ水素を供給することが好ましい。触媒床間にクエンチ水素を供給する場合にあっては、反応器入口に原料油とともに供給する水素とクエンチ水素の合計量と原料油の供給量の比を、好ましくは20〜1000NL/L、さらには40〜800NL/L、特には50〜500NL/Lとすることが好ましい。
気液分離における液相の温度は特に制限はないが、30〜450℃、さらには200〜420℃、特には220〜400℃、の範囲から選択することが好ましく、粗精製工程の出口反応温度と同じかまたは100℃以内の範囲でより低い温度であることが特に好ましい。気液分離における液相の温度が低過ぎると、本発明の水素化処理触媒による水素化精製の工程に供給する粗精製軽油留分や水素を加熱するために必要なエネルギーが大きくなり、好ましくない。
気液分離において、ストリッピング処理を行う場合にストリッパーに供給される水素または不活性ガスの温度に特に制限はないが、常温より高い温度であることが好ましく、100℃〜粗精製工程の出口反応温度の範囲であることが特に好ましい。ストリッピング処理を行う場合にストリッパーに供給される水素または不活性ガスの流量は、粗精製工程に供給される水素の流量に対して0.01〜2倍、さらには0.1〜1倍の範囲から選択することが好ましい。
以下、実施例、比較例および参考例に基づき本発明を詳細に説明するが、この実施例により、本発明が限定されるものではない。
〔担体Aの調製〕
乾燥担体基準でシリカアルミナ80質量%およびアルミナ20質量%からなるような配合比で、シリカアルミナ粉体および擬ベーマイト粉体を混合し、硝酸水溶液を添加して混練し、呼び寸法1/20インチ三つ葉型のダイスを通して押出成形した後、乾燥し、空気気流下、600℃で1時間焼成することで担体Aを調製した。シリカアルミナ粉体としては、シリカ/アルミナモル比4.4、平均粒経8.8μm、強熱減量15.3質量%の粉体を用いた。担体Aのメソポア構造を窒素吸着法で分析したところ、細孔容積は0.626mL/g、比表面積は469m/g、中央細孔径は47Åであった。担体Aのマクロポア構造を水銀圧入法で分析したところ、細孔直径500〜10000Åのマクロポア容積は0.166mL/g、細孔直径500〜5000Åのマクロポア容積は0.089mL/gであった。
〔水素化処理触媒前駆体1の製造〕
関東化学株式会社製アンモニア水(28%)9.0gを約20mLのイオン交換水に加えて攪拌した。このとき、溶液のpHは11.9であった。ここに、EDTA(関東化学株式会社製鹿特級)14.0g(0.0479mol)を加えて攪拌し、EDTAを溶解させた。このとき、溶液のpHは5.48であった。この溶液に硝酸ニッケル六水和物(関東化学株式会社製鹿特級)29.51g(0.1014mol)を加えて攪拌し、青緑色の均一な溶液を得た。このとき、溶液のpHは0.8であった。この溶液にAMT水溶液(日本無機化学工業株式会社製MW−2、W濃度693g/L)47.26mLを添加して、均一な含浸液A約130mLを得た。含浸液の電子スペクトルは、他の例で得られた含浸液との関係で後述する。この溶液のpHは0.93であった。この含浸液Aを担体Aの吸水率に合わせてイオン交換水で希釈し、全量の60%を担体A100gに対してスプレー含浸して得られたペレットを130℃で24時間乾燥した。残りの含浸液をペレットの吸水率に合わせてイオン交換水で希釈して乾燥させたペレットにさらに含浸して得られたペレットを130℃で24時間乾燥し、水素化処理触媒前駆体1を得た。水素化処理触媒前駆体1のマクロポア構造を水銀圧入法で分析したところ、細孔直径500〜10000Åのマクロポア容積は0.085mL/g、細孔直径500〜5000Åのマクロポア容積は0.042mL/gであった。水素化処理触媒前駆体1の電子スペクトルは、他の例で得られた水素化処理触媒前駆体との関係で後述する。
〔水素化処理触媒前駆体2の製造〕
実施例1で得た含浸液Aにリン酸(関東化学株式会社製特級、リン酸含有率85質量%)3.11gを加えて攪拌し、含浸液Bを得た。この溶液のpHは、1.10であった。この含浸液Bを、実施例1と同様に希釈し、2回に分けて担体Aに含浸させ、乾燥して水素化処理触媒前駆体2を得た。
〔水素化処理触媒前駆体3の製造〕
関東化学株式会社製リン酸(85%)3.11gを約60mLのイオン交換水に加えて加熱攪拌した。10分後、ここにEDTA(関東化学株式会社製鹿特級)14.0g(0.0479mol)を加えて60〜70℃で1時間加熱攪拌した。このとき、EDTAはスラリー状であった。この溶液に炭酸ニッケル(日本化学産業株式会社製)13.23g(0.101mol)を加えて攪拌し、青色の均一な溶液を得た。この溶液にAMT水溶液(日本無機化学工業株式会社製MW−2、W濃度693g/L)47.26mLを添加して、含浸液Cを得た。この溶液のpHは、3.51であった。この含浸液Cを、実施例1と同様に、希釈し、2回に分けて担体Aに含浸させ、乾燥して水素化処理触媒前駆体3を得た。水素化処理触媒前駆体3のマクロポア構造を水銀圧入法で分析したところ、細孔直径500〜10000Åのマクロポア容積は0.091mL/g、細孔直径500〜5000Åのマクロポア容積は0.050mL/gであった。
〔水素化処理触媒前駆体4の製造〕
担体Aの吸水率に合わせてAMT水溶液(日本無機化学工業株式会社製MW−2、W濃度693g/L)47.26mLをイオン交換水で希釈し、全量を担体A100gに対してスプレー含浸して得られたペレットを130℃で24時間乾燥した。これを水素化処理触媒前駆体中間品Aとした。関東化学株式会社製特級硝酸(硝酸含有率60〜61質量%)2.0gを約60mLのイオン交換水に加えて加熱攪拌した。10分後、ここにEDTA(関東化学株式会社製 鹿特級 製品名)14.0g(0.0479mol)を加えて60〜70℃で1時間加熱攪拌した。このとき、EDTAはスラリー状であった。この溶液に炭酸ニッケル(日本化学産業株式会社製)13.85g(0.105mol)を加えて攪拌し、青色の均一な含浸液Dを得た。この溶液のpHは、5.90であった。この含浸液Dを、水素化処理触媒前駆体中間品Aの吸水率に合わせてイオン交換水で希釈して水素化処理触媒前駆体中間品Aのペレットに含浸して得られたペレットを130℃で24時間乾燥し、水素化処理触媒前駆体4を得た。
[比較例1]
〔水素化処理触媒前駆体5の製造〕
実施例1で得た水素化処理触媒前駆体1を、ロータリーキルンで、500℃で30分焼成して水素化処理触媒前駆体5を得た。水素化処理触媒前駆体5のマクロポア構造を水銀圧入法で分析したところ、細孔直径500〜10000Åのマクロポア容積は0.113mL/g、細孔直径500〜5000Åのマクロポア容積は0.058mL/gであった。
[比較例2]
〔水素化処理触媒前駆体6の製造〕
複合酸化物成分を添加することなく、擬ベーマイト粉に硝酸水溶液を添加して混練し、呼び寸法1/20インチ三つ葉型のダイスを通して押出成形した後、乾燥し、600℃で1時間焼成することで、複合酸化物成分を添加していないアルミナ担体である担体Bを得た。担体Bのメソポア構造を窒素吸着法で分析したところ、細孔容積は0.651mL/g、比表面積は256m/g、中央細孔径は81Åであった。担体Bのマクロポア構造を水銀圧入法で分析したところ、細孔直径500〜10000Åのマクロポア容積は0.003mL/g、細孔直径500〜5000Åのマクロポア容積は0.003mL/gであった。実施例1で用いた担体Aの代わりに、担体Bを用いること以外は、実施例1と同様にして、含浸液Aを用いて、水素化処理触媒前駆体6を得た。水素化処理触媒前駆体6のマクロポア構造を水銀圧入法で分析したところ、細孔直径500〜10000Åのマクロポア容積は0.003mL/g、細孔直径500〜5000Åのマクロポア容積は0.003mL/gであった。
[比較例3]
〔水素化処理触媒前駆体7の製造〕
実施例1の含浸液Aの調製にEDTAを用いる代わりに、CyDTA一水和物16.6g(関東化学株式会社製鹿特級、0.0479mol)を用いて含浸液Eを調製した。含浸液EのpHは、1.26であった。実施例1で含浸液Aを用いる代わりに含浸液Eを用いること以外は実施例1と同様にして、担体Aを用いて水素化処理触媒前駆体7を得た。水素化処理触媒前駆体7のマクロポア構造を水銀圧入法で分析したところ、細孔直径500〜10000Åのマクロポア容積は0.102mL/g、細孔直径500〜5000Åのマクロポア容積は0.041mL/gであった。
[比較例4]
〔水素化処理触媒前駆体8の製造〕
関東化学株式会社製特級硝酸(硝酸含有率60〜61質量%)2.0gを約60mLのイオン交換水に加えて加熱攪拌した。10分後、ここに炭酸ニッケル(日本化学産業株式会社製)13.23g(0.111mol)を加えて60〜70℃で1時間加熱攪拌した。このとき、混合物はスラリー状であった。ここにクエン酸一水和物(関東化学株式会社製特級)16.17g(0.077mol)を加えて60〜70℃で10分間加熱攪拌し、青色の均一な含浸液Fを得た。この溶液のpHは、2.74であった。この含浸液Fを、実施例4記載の水素化処理触媒前駆体中間品Aの吸水率に合わせてイオン交換水で希釈して、水素化処理触媒前駆体中間品Aのペレットに含浸して得られたペレットを130℃で24時間乾燥し、水素化処理触媒前駆体8を得た。
[比較例5]
〔水素化処理触媒前駆体9の製造〕
関東化学株式会社製特級硝酸(硝酸含有率60〜61質量%)2.0gを約60mLのイオン交換水に加えて加熱攪拌した。10分後、ここにNTA(関東化学株式会社製 鹿特級)9.81g(0.0513mol)を加えて60〜70℃で1時間加熱攪拌した。このとき、混合物はスラリー状であった。ここに炭酸ニッケル(日本化学産業株式会社製)13.23g(0.101mol)を加えて、さらにクエン酸一水和物(関東化学製特級)3.00g(0.0143mol)を加えて60〜70℃で10分間加熱攪拌し、青色の均一な含浸液Gを得た。この溶液のpHは、2.78であった。この含浸液Gを、実施例4記載の水素化処理触媒前駆体中間品Aの吸水率に合わせてイオン交換水で希釈して、水素化処理触媒前駆体中間品Aのペレットに含浸して得られたペレットを130℃で24時間乾燥し、水素化処理触媒前駆体9を得た。水素化処理触媒前駆体9のマクロポア構造を水銀圧入法で分析したところ、細孔直径500〜10000Åのマクロポア容積は0.094mL/g、細孔直径500〜5000Åのマクロポア容積は0.045mL/gであった。
[比較例6]
〔水素化処理触媒前駆体10の製造〕
実施例3で得た水素化処理触媒前駆体3を、ロータリーキルンで、500℃で30分焼成して水素化処理触媒前駆体10を得た。水素化処理触媒前駆体9のマクロポア構造を水銀圧入法で分析したところ、細孔直径500〜10000Åのマクロポア容積は0.107mL/g、細孔直径500〜5000Åのマクロポア容積は0.059mL/gであった。
[比較例7]
〔水素化処理触媒前駆体11の製造〕
AMT水溶液(日本無機化学工業株式会社製MW−2、W濃度693g/L)47.26mLを担体Aの吸水率に合わせてイオン交換水で希釈した含浸液を、担体A100gに対してスプレー含浸して得られたペレットを130℃で24時間乾燥した。硝酸ニッケル六水和物(関東化学株式会社製鹿特級)29.51g(0.1014mol)イオン交換水に溶解してペレットの吸水率に合わせて希釈した含浸液Hをペレットに含浸して得られたペレットを130℃で24時間乾燥し、ロータリーキルンで500℃で30分焼成して、水素化処理触媒前駆体11を得た。
[参考例1]
〔水素化処理触媒前駆体12の製造〕
この参考例では、タングステンおよびEDTAを使用せずに含浸液を調製し、水素化処理触媒前駆体を製造した。硝酸ニッケル六水和物(関東化学株式会社製特級)6.26g(0.0215mol)をイオン交換水に溶解してペレットの担体Aの吸水率に合わせて希釈した含浸液Iを、担体A30gに対してスプレー含浸して得られたペレットを130℃で24時間乾燥して、水素化処理触媒前駆体12を得た。
[参考例2]
〔水素化処理触媒前駆体13の製造〕
この参考例では、ニッケルおよびEDTAを使用せずに含浸液を調製し、水素化処理触媒前駆体を製造した。AMT水溶液(日本無機化学工業株式会社製MW−2、W濃度693g/L)13.2mLをイオン交換水に溶解して担体Aの吸水率に合わせて希釈した含浸液Jを、担体A30gに対してスプレー含浸して得られたペレットを130℃で24時間乾燥して、水素化処理触媒前駆体13を得た。
[参考例3]
〔水素化処理触媒前駆体14の製造〕
この参考例では、タングステンを使用せずに含浸液を調製し、水素化処理触媒前駆体を製造した。エチレンジアミン四酢酸二ナトリウムニッケル(東京化成工業株式会社製)9.88g(0.0215mol)をイオン交換水に溶解して担体Aの吸水率に合わせて希釈した含浸液Kを、担体A30gに対してスプレー含浸して得られたペレットを130℃で24時間乾燥して、水素化処理触媒前駆体14を得た。
[参考例4]
〔水素化処理触媒前駆体15の製造〕
この参考例では、タングステンを使用せずに含浸液を調製し、水素化処理触媒前駆体を製造した。関東化学株式会社製アンモニア水(28%)2.7gを約10mLのイオン交換水に加えて攪拌した。このとき、溶液のpHは11.9であった。この溶液に、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウムニッケル(東京化成工業株式会社製)9.88g(0.0215mol)を加えて攪拌して溶解させ、イオン交換水を加えて担体Aの吸水率に合わせて希釈した含浸液Lを、担体A30gに対してスプレー含浸して得られたペレットを130℃で24時間乾燥して、水素化処理触媒前駆体15を得た。
実施例1〜4、比較例3〜5,7および参考例1〜4に用いた含浸液A〜Lの可視・近赤外領域の電子スペクトルを図2〜13にそれぞれ示す。また、それらの電子スペクトルから求めた含浸液A〜Lの吸収極大波長とその吸光度を、表1に示す。NiとEDTAを共に含む含浸液は、Ni−EDTA錯体に特有のピークが580〜620nmおよび980〜1030nmの波長領域に現れていることが分る(含浸液A〜E,KおよびL)。一方、タングステンを含まない含浸液KおよびLでも、580〜620nmおよび980〜1030nmの波長領域にピークが現れているので、これらのピークに同定される錯体の電子状態にはタングステンは寄与していないと考えられる。
Figure 2005238128
実施例1〜4および比較例1〜7で得られた水素化処理触媒前駆体1〜11の可視・近赤外領域の電子スペクトルを、図14〜24に示す。また、水素化処理触媒前駆体1〜11の組成、電子スペクトルから求めた吸収極大波長とその吸光度、窒素吸着法で測定した細孔容積、比表面積および中央細孔径の分析結果を、表2〜4に示す。図14〜17に示した水素化処理触媒前駆体1〜4の電子スペクトルには、それらの前駆体を形成する含浸液A〜Dと同じ位置にピークが現れていることから、含浸液A〜Dから水素化処理触媒前駆体1〜4を形成してもNi−EDTA錯体はそのまま担体に維持されていることが分る。
Figure 2005238128
Figure 2005238128
Figure 2005238128
参考例1〜4の水素化処理触媒前駆体12〜15の可視・近赤外領域の電子スペクトルを図25〜28に示す。また、水素化処理触媒前駆体12〜15の組成および可視・近赤外領域の電子スペクトルの吸収極大波長とその吸光度を、表5に示す。
Figure 2005238128
〔水素化処理触媒の製造および軽油留分の水素化精製による低硫黄軽油の製造〕
実施例1で得られた水素化処理触媒前駆体1を10mL、固定床流通式反応装置に充填し、水素圧力5MPa、10L/hで水素を流通させながら室温から150℃まで昇温し、150℃で2時間、水素を流通させた。その後、以下の手順で水素化処理触媒前駆体1を硫化処理して、硫化された水素化処理触媒とした。硫化剤(市販軽油に1質量%の二硫化炭素を混合したもの)を水素圧力5MPa、水素/オイル比500NL/L、LHSV
2.0h−1、150℃の条件下で2時間通油した。その後、温度以外の条件を一定として硫化剤と水素の供給を継続し、20℃/hで230℃まで昇温して、4時間、230℃で一定とした。その後さらに、17.5℃/hで300℃まで昇温して、11時間、300℃で一定とした。この後、この硫化処理された水素化処理触媒を用いて軽油留分の水素化精製反応を行った。
アルミナ担体にコバルト、モリブデンおよびリンを担持してなる市販の触媒を用いて、水素圧力5.0MPa、水素/オイル比200NL/L、LHSV4.5h−1の条件で、中東系直留軽油である軽油留分Aを処理して、軽油留分Bを得た。軽油留分AおよびBの性状は、表6のとおりである。この軽油留分Bにジメチルジスルフィドを硫黄分として1500質量ppm添加したものを原料油とし、水素化処理触媒前駆体1を硫化処理して得られた水素化処理触媒を用いて、水素圧力5.0MPa、水素/オイル比200NL/L、LHSV2.0h−1、反応温度330℃の条件で、反応を行った。得られた生成油の硫黄分を表2に示す。なお、軽油留分Bに添加したジメチルジスルフィドは、反応器入口で硫化水素に転化して水素化処理触媒上に供給される。
Figure 2005238128
実施例2〜4で得られた水素化処理触媒前駆体2〜4および比較例1〜7で得られた水素化処理触媒前駆体5〜11も、実施例1で得られた水素化処理触媒前駆体1と同様の手順で、硫化処理した。
実施例1で得られた水素化処理触媒前駆体1の代わりに実施例2〜4で得られた水素化処理触媒前駆体2〜4を用いること以外は、実施例5と同様の方法で硫化処理して、硫化された水素化処理触媒とし、実施例5と同様の条件で水素化精製反応を行った。得られた生成油の硫黄分を表2に示す。
[比較例8]
実施例1で得られた水素化処理触媒前駆体1の代わりに比較例1〜7で得られた水素化処理触媒前駆体5〜11を用いること以外は、実施例5と同様の方法で硫化処理して、硫化された水素化処理触媒とし、実施例5と同様の条件で水素化精製反応を行った。得られた生成油の硫黄分を表3及び4に示す。
実施例1〜4で得られた水素化処理触媒前駆体1〜4を硫化処理して得られた水素化処理触媒に対して、実施例5と同様の方法で硫化処理して、硫化された水素化処理触媒とし、軽油留分Bにジメチルジスルフィドを硫黄分として1500質量ppm添加したものを原料油とし、水素圧力5.0MPa、水素/オイル比200NL/L、LHSV2.0h−1、反応温度340℃の条件で水素化精製反応を行った。生成油の硫黄分は、水素化処理触媒前駆体1〜4を用いた場合に対して、各々、6質量ppm、4質量ppm、3質量ppmおよび3質量ppmであった。
〔気液分離機構を備えていない反応装置を用いた軽油留分の水素化精製による低硫黄軽油の製造〕
1塔目の反応器での反応で得られる中間生成油をサンプリングできる二塔式固定床流通式反応装置の1塔目の反応器に水素化処理触媒前駆体16を50mL、2塔目の反応器に水素化処理触媒前駆体1を50mL充填し、水素圧力5.0MPa、40L/hで水素を流通させながら2時間で室温から120℃まで昇温した。その後、以下の手順で水素化処理触媒前駆体1を硫化処理して、硫化された水素化処理触媒とした。硫化剤(市販軽油に1質量%の二硫化炭素を混合したもの)を水素圧力5.0MPa、水素/オイル比200NL/L、LHSV2.0h−1、120℃の条件下で2時間通油した。その後、温度以外の条件を一定として硫化剤と水素の供給を継続し、27.5℃/hで230℃まで昇温して、4時間、230℃で一定とした。その後さらに、42.5℃/hで300℃まで昇温して、7時間、300℃で一定とした。この後、この硫化処理された水素化処理触媒を用いて軽油留分Aの水素化精製反応を行った。水素圧力5.0MPa、水素/原料油供給比200NL/L、反応器1と2触媒充填量合計に対するLHSV1.5h−1および反応器1および2の温度をいずれも350℃として反応を行った。得られた生成油の硫黄分は7質量ppmであった。中間生成油の硫黄分は614質量ppmであった。
[比較例9]
水素化処理触媒前駆体1の代わりに、水素化処理触媒前駆体5を用いること以外は実施例8と同様にして、反応器1および反応器2の温度をいずれも350℃として軽油留分Aの水素化精製反応を行ったところ、得られた生成油の硫黄分は12質量ppmであった。
〔気液分離機構を備えた反応装置を用いた軽油留分の水素化精製による低硫黄軽油の製造〕
用いた反応装置の概略フローを図3に示す。本反応装置は、反応器1および反応器2の2つの反応器を備え、その間に高圧分離槽3とストリッパー4を備え、反応器2は高圧分離槽5、ミスト分離槽6及びストリッパー7に連結されており、それらは配管16〜42で連結されている。反応器1および2に対する水素供給は、各々、配管14および配管29、30から行われる。原料油は、配管13,15を通じて反応器1に送られる。ストリッパー4には配管23から水素ガスを供給して、ストリッパー4内に滞留する液体と気液接触させることができる。高圧分離槽3およびストリッパー4からは、各々、配管21および配管24を通して水素化精製反応で生成した硫化水素やアンモニアを含むガスを反応系外に(オフガス)除去することができる。ストリッパー4から取り出された液体は、配管26〜28,31を通じて反応器2に供給される。反応器2で水素化処理された反応混合物は、高圧分離槽5およびミスト分離槽6で気液分離され、液体成分がストリッパー7に送られてストリッピングされた後に、生成油として取り出される。
反応器1にアルミナ担体にNi、Co、MoおよびPを担持してなる水素化処理触媒前駆体16を50mL、反応器2に水素化処理触媒前駆体1を50mL充填し、開閉バルブ8および10を閉じ、開閉バルブ9を開いた状態で、水素圧力5.0MPa、40L/hで水素を流通させながら2時間で室温から120℃まで昇温した。その後、以下の手順で水素化処理触媒前駆体1を硫化処理して、硫化された水素化処理触媒とした。硫化剤(市販軽油に1質量%の二硫化炭素を混合したもの)を水素圧力5.0MPa、水素/オイル比200NL/L、LHSV2.0h−1、120℃の条件下で2時間通油した。その後、温度以外の条件を一定として硫化剤と水素の供給を継続し、27.5℃/hで230℃まで昇温して、4時間、230℃で一定とした。その後さらに、42.5℃/hで300℃まで昇温して、7時間、300℃で一定とした。この後、硫化処理された水素化処理触媒を用いて軽油留分Aの水素化精製反応を行った。開閉バルブ8、10および11を開き、開閉バルブ9を閉じて、反応器1の水素圧力5.1MPa、反応器2の水素圧力5.0MPa、反応器1および反応器2各々に対する水素/原料油供給比200NL/L、反応器1と反応器2の触媒充填量合計に対するLHSV1.5h−1およびストリッパー4に対する配管23からの水素供給30L/hとし、反応器1、反応器2、高圧分離槽3およびストリッパー4の温度をいずれも330℃として反応を行った。配管38から得られた生成油の硫黄分は9質量ppmであった。また、開閉バルブ11を閉じ、開閉バルブ12を開いてサンプリングされた中間生成油を窒素ガスでストリッピング処理して中間生成油の硫黄分を分析したところ、硫黄分は369質量ppmであった。他の反応条件や操作は上記と同様とし、反応器1、反応器2、高圧分離槽3およびストリッパー4の温度をいずれも340℃として反応を行った。得られた生成油の硫黄分は4質量ppm、中間生成油の硫黄分は157質量ppmであった。他の反応条件は上記と同様とし、反応器1、反応器2、高圧分離槽3およびストリッパー4の温度をいずれも345℃として反応を行った。得られた生成油の硫黄分は0.4質量ppm中間生成油の硫黄分は121質量ppmであった。なお、生成油の性状は以下の通りである。炭化水素の組成:飽和分85.0%、オレフィン分0.0%、1環芳香族分13.9%、2環芳香族分0.99%、3環以上芳香族分0.10%、多環芳香族分1.09%、全芳香族分15.0%、真発熱量:35400J/cm、密度(15℃):0.8218g/cm
[比較例10]
水素化処理触媒前駆体1の代わりに、水素化処理触媒前駆体5を用いること以外は実施例9と同様にして、反応器1、反応器2、高圧分離槽3およびストリッパー4の温度をいずれも330℃として軽油留分Aの水素化精製反応を行ったところ、配管38から得られた生成油の硫黄分は24質量ppmであった。
実施例、比較例および参考例での測定法などは、以下の方法によった。
〔水素化処理触媒前駆体の可視〜近赤外領域の電子スペクトルの測定〕
水素化処理触媒前駆体を粉砕した後、直径30mmの円板上に加圧成形したものを測定試料とし、大型試料室積分球付属装置を備えた株式会社日立製作所製U−3410型自記分光光度計を用いて、340〜1200nmの波長範囲を白色板をレファレンスとして、反射法で電子スペクトルを測定した。なお、スキャンスピードは、340〜800nm範囲を120nm/分、800〜1200nm範囲を240nm/分とした。
〔含浸液の可視〜近赤外領域の電子スペクトルの測定〕
含浸液を内厚0.5mmの石英セルに入れ、株式会社日立製作所製U−3410型自記分光光度計を用いて、340〜1200nmの波長範囲を水をレファレンスとして電子スペクトルを測定した。なお、スキャンスピードは、340〜800nm範囲を120nm/分、800〜1200nm範囲を240nm/分とした。
〔凝集粒子の粒度分布測定方法〕
日機装株式会社製MICROTRAC粒度分析計を用い、湿式測定法で測定した。これは、粉体を水中に分散させ、流れる凝集粒子群にレーザー光を照射し、その前方散乱光により粒度分析を行うものである。
〔細孔特性の測定方法〕
水銀圧入法による細孔特性の測定には、Micromeritics社製AutoPore9200型測定器を用いた。窒素ガス吸着法による細孔特性の測定には、Micromeritics社製ASAP2400型測定器を用いた。
〔硫黄分の測定方法〕
軽油留分の硫黄分の測定は、理学電機工業株式会社製ZSX101e型蛍光X線分析装置を用いて行った。
本発明の水素化処理触媒前駆体、その製造方法および水素化処理触媒の製造方法では、水素化処理触媒の水素化活性を、CyDTAのように高価な有機化合物を用いることなく、比較的安価な有機化合物であるEDTAを用いることで格段に向上させることができる。また、本発明で製造される水素化処理触媒を用いる精製炭化水素油の製造方法によれば、高度に精製された炭化水素油を製造することができる。特に、本発明により得られた精製炭化水素油は、硫黄分が5質量ppm以下、さらには1質量ppm以下と極めて低く、かつ従来市販されている軽油と同等の単位体積あたりの真発熱量を確保しているので、ディーゼル自動車の環境汚染物質の排出量の削減と二酸化炭素排出量の削減を両方同時に実現することができ、それによって地球環境の保護に貢献することができる。
本発明の実施例および比較例に用いた反応器間に気液分離機構を備えた反応装置の概略フローを示す図である。 本発明の実施例1で調製した含浸液Aの可視・近赤外領域の電子スペクトルを示すグラフである。 本発明の実施例2で調製した含浸液Bの可視・近赤外領域の電子スペクトルを示すグラフである。 本発明の実施例3で調製した含浸液Cの可視・近赤外領域の電子スペクトルを示すグラフである。 本発明の実施例4で調製した含浸液Dの可視・近赤外領域の電子スペクトルを示すグラフである。 比較例3で調製した含浸液Eの可視・近赤外領域の電子スペクトルを示すグラフである。 比較例4で調製した含浸液Fの可視・近赤外領域の電子スペクトルを示すグラフである。 比較例5で調製した含浸液Gの可視・近赤外領域の電子スペクトルを示すグラフである。 比較例7で調製した含浸液Hの可視・近赤外領域の電子スペクトルを示すグラフである。 参考例1で調製した含浸液Iの可視・近赤外領域の電子スペクトルを示すグラフである。 参考例2で調製した含浸液Jの可視・近赤外領域の電子スペクトルを示すグラフである。 参考例3で調製した含浸液Kの可視・近赤外領域の電子スペクトルを示すグラフである。 参考例4で調製した含浸液Lの可視・近赤外領域の電子スペクトルを示すグラフである。 本発明の実施例1で製造した水素化処理触媒前駆体1の可視・近赤外領域の電子スペクトルを示すグラフである。 本発明の実施例2で製造した水素化処理触媒前駆体2の可視・近赤外領域の電子スペクトルを示すグラフである。 本発明の実施例3で製造した水素化処理触媒前駆体3の可視・近赤外領域の電子スペクトルを示すグラフである。 本発明の実施例4で製造した水素化処理触媒前駆体4の可視・近赤外領域の電子スペクトルを示すグラフである。 比較例1で製造した水素化処理触媒前駆体5の可視・近赤外領域の電子スペクトルを示すグラフである。 比較例2で製造した水素化処理触媒前駆体6の可視・近赤外領域の電子スペクトルを示すグラフである。 比較例3で製造した水素化処理触媒前駆体7の可視・近赤外領域の電子スペクトルを示すグラフである。 比較例4で製造した水素化処理触媒前駆体8の可視・近赤外領域の電子スペクトルを示すグラフである。 比較例5で製造した水素化処理触媒前駆体9の可視・近赤外領域の電子スペクトルを示すグラフである。 比較例6で製造した水素化処理触媒前駆体10の可視・近赤外領域の電子スペクトルを示すグラフである。 比較例7で製造した水素化処理触媒前駆体11の可視・近赤外領域の電子スペクトルを示すグラフである。 参考例1で製造した水素化処理触媒前駆体12の可視・近赤外領域の電子スペクトルを示すグラフである。 参考例2で製造した水素化処理触媒前駆体13の可視・近赤外領域の電子スペクトルを示すグラフである。 参考例3で製造した水素化処理触媒前駆体14の可視・近赤外領域の電子スペクトルを示すグラフである。 参考例4で製造した水素化処理触媒前駆体15の可視・近赤外領域の電子スペクトルを示すグラフである。
符号の説明
1および2: 反応器、3: 高圧分離槽、4: ストリッパー、5: 高圧分離槽、6:
ミスト分離槽、7: ストリッパー、8〜12: 開閉バルブ、 13〜42: 配管

Claims (8)

  1. 5〜50質量%のタングステンおよび0.1〜10質量%のニッケルを含む水素化処理触媒前駆体の製造方法であって、
    60質量%以上の複合酸化物成分を含む担体にEDTAを含む含浸液を含浸する工程と;
    80〜220℃で乾燥処理する工程と;を含み、
    得られた水素化処理触媒前駆体の電子スペクトルが980〜1030nmおよび580〜620nmに吸収極大ピークを有することを特徴とする水素化処理触媒前駆体の製造方法。
  2. 前記EDTAを含む含浸液の電子スペクトルが980〜1030nmおよび580〜620nmに吸収極大ピークを有することを特徴とする請求項1に記載の水素化処理触媒前駆体の製造方法。
  3. 水素化処理触媒前駆体の細孔直径50〜1000nmの範囲の細孔容積が0.01〜0.5mL/gであることを特徴とする請求項1または2に記載の水素化処理触媒前駆体の製造方法。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法で得られた水素化処理触媒前駆体を硫化処理することを特徴とする水素化処理触媒の製造方法。
  5. 担体にタングステンおよびニッケルを含浸して含む水素化処理触媒前駆体であって、
    前記担体が複合酸化物成分を60質量%以上含み、
    タングステンの含有量が5〜50質量%であり、ニッケルの含有量が0.1〜10質量%であり、
    さらに、水素化処理触媒前駆体がEDTAを含むことにより、980〜1030nmおよび580〜620nmに電子スペクトルの吸収極大ピークを呈することを特徴とする水素化処理触媒前駆体。
  6. 請求項5に記載の水素化処理触媒前駆体を、硫化処理した後、水素の存在下で原料炭化水素油と接触させることを特徴とする精製炭化水素油の製造方法。
  7. 前記原料炭化水素油が、軽油留分を水素の存在下でモリブデンを含む水素化精製触媒と接触させる粗精製工程で得られる粗精製軽油留分であり、前記精製炭化水素油が硫黄分10質量ppm以下の低硫黄軽油である請求項6に記載の精製炭化水素油の製造方法。
  8. 前記原料炭化水素油が、前記粗精製工程の反応混合物を気液分離して得られる粗精製軽油留分であり、前記精製炭化水素油が硫黄分10質量ppm以下の低硫黄軽油である請求項7に記載の精製炭化水素油の製造方法。
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