JP5016331B2 - 超深度脱硫軽油の製造方法 - Google Patents

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本発明は、直留軽油留分、接触分解軽油、熱分解軽油などの軽油留分を硫黄分50ppm以下に脱硫する超深度脱硫方法により得られた精製油を用いて製造される超深度脱硫軽油の製造方法に関する。
近年、環境保護の観点から軽油中に含まれる硫黄分を500ppm以下に低減させる、いわゆる軽油深度脱硫が要請され、法制化とともにこのための精製プロセスが確立された。このようなプロセスは、アルミナ、シリカ−アルミナなどで構成される無機多孔質酸化物の担体に水素化能を有する水素化活性金属であるモリブデン、タングステン、ニッケル、コバルトなどを担持した触媒を水素雰囲気下において軽油留分と接触させることで行われる。特に軽油深度脱硫においては、コバルトおよびモリブデンを含む触媒が好適に用いられている。
また、このような軽油深度脱硫を行うプロセスとして、(1)2段水素化処理方法、(2)下段反応塔において原料油と水素を向流接触させる方法、(3)上段反応塔の生成油中に含まれている硫化水素を一旦気液分離槽で抜き出し、その後、下段反応塔へフィードする硫化水素濃度の低減方法などが考案されている。
それらについて例示すると、特開平3−86793において、硫黄分を0.8〜1.2%含む石油蒸留物を水素化処理触媒の存在下、2段階で水素化処理する方法が開示されている。この方法において、1段目で水素化脱硫を行い、2段目では1段目よりも低い反応温度で水素化処理することで、色相を悪化させずに脱硫できるとしている。この方法では、2段目では実質的に脱硫されていない(開示された硫黄濃度の変化よりわかる)ために、精製された軽油の硫黄分は200ppm程度であった。
特開平5−78670において、硫黄分0.1〜2重量%の範囲にある石油蒸留留出油を、水素化活性金属を担持させた水素化処理触媒の存在下、温度375℃〜450℃、圧力45〜100kg/cmの条件で水素と接触させて硫黄分を0.05重量%以下にする第一工程と、水素化処理触媒の存在下、温度200〜300℃、圧力45〜100kg/cmの条件で第一工程で生成した物質を水素と接触させる第二工程とからなる低硫黄軽油の製造方法が開示されている。この文献の内容からすれば第二工程では実質的な脱硫反応は進行しておらず、精製された軽油の硫黄分を100ppm以下とするためには、反応温度を高く設定しなければならないため、触媒寿命が短いという問題があった。
特開平9−176661において、原料軽油を、第VI族および第VIII族の金属を無機酸化物担体に担持した触媒上で水素化脱硫する第一工程の後、白金等、または、ニッケル及びタングステンを含んでなる水素化触媒上で水素化処理する第二工程からなる軽油の高品質化処理方法が開示されている。ここでは、第一および第二工程において実質的に水素化脱硫される温度で反応を行っているが、第一工程と第二工程との間において脱硫反応を阻害する硫化水素を除去する工程を設けている。このような装置を設ける設備費や運転費が生じ、コストがかかるという問題があった。
一方、環境負荷軽減の観点から、特にディーゼルエンジン排気ガスからの二酸化窒素及び粒子状物質の排出を低減することが求められている。その燃料である軽油中の硫黄分をさらに低減して50ppm以下にすることにより硫酸塩の生成を抑え、窒素酸化物還元触媒の劣化を抑制することや、後処理触媒上での粒子状物質の生成を低減することで二酸化窒素及び粒子状物質の排出を抑制することが期待できる。
しかしながら、軽油中の硫黄濃度を50ppm以下とする場合、500ppmの深度脱硫に比べて脱硫の難易度は格段に高くなる。このようないわゆる超深度脱硫領域では、もはや脱硫の対象となる硫黄化合物として、チオール類、スルフィド類、チオフェン類、ベンゾチオフェン類、ジベンゾチオフェンのような易脱硫硫黄化合物をほとんど含んでおらず、4−メチルジベンゾチオフェン、4、6−ジメチルジベンゾチオフェンなどの4、6位に置換基を有するアルキルジベンゾチオフェン類のような難脱硫硫黄化合物類しか残存していない。このような難脱硫硫黄化合物を除去するためには脱硫性能の飛躍的な改善が求められている。
本願の優先日後に公開された特開2000−313890号は、炭化水素供給原料の硫黄含有量を、200ppm未満、好ましくは50ppm未満の値にまで減少するために、担体上に第VIB族金属成分、第VIII族金属成分及び有機添加剤を含む触媒を硫化段階に供すること、並びに、450℃以下の95%沸点を有し且つ500ppm以下の硫黄含量を有する供給原料を、高められた温度及び圧力の条件下で、上記硫化した触媒と接触させて200ppm未満の硫黄含量を有する生成物を生じることを含む方法を開示している。しかしながら、この出願の比較例では、有機添加剤を含まない触媒を用いた場合では有機添加剤を含む触媒を用いた場合(実施例)に比べて硫黄除去率が著しく低下することが示されている。
以上のことから、軽油中の硫黄分を50ppm以下とする超深度脱硫において、従来の軽油深度脱硫技術では生産性の低い運転条件や低硫黄分の原油を選択、または設備改造などの高コストの対策を取る必要があった。すなわち、比較的入手の容易な硫黄分0.5%以上の軽油留分を用い、LHSVが0.5/時以上のような生産性の高い運転条件で、かつ、従来の深度脱硫プロセスと同等の設備により、硫黄分50ppm以下の軽油留分を製造するプロセスの開発が切望されている。
本発明は上記従来技術の問題を解決するためになされたもので、その目的は硫黄分0.5重量%以上の軽油留分を用いて生産性の高い運転条件で、硫黄分50ppm以下の軽油留分を得るための超深度脱硫方法を行い、得られた精製油を用いて製造される超深度脱硫軽油の製造方法を提供することにある。本発明に従えば、ジベンゾチオフェンの含有量が硫黄分換算で1ppm以下であり、硫黄分5〜20ppm以下の精製油を得ることと、前記精製油を50容量%以上配合して、硫黄分50ppm以下の超深度脱硫軽油を製造することを含む超深度脱硫軽油の製造方法であり、前記精製油は、硫黄分0.5〜2%の軽油留分である原料油を、アルミニウムを含む無機多孔質酸化物から形成された担体とその担体に担持されたモリブデン及びコバルトとを含む第1触媒に、水素と共に接触させて、350〜375℃の反応温度において、硫黄分が200〜2000ppmであり且つジベンゾチオフェンの含有量が硫黄分換算で1ppm以下に水素化脱硫する工程と;第1触媒で脱硫された原料油を、アルミニウムを含む無機多孔質酸化物から形成された担体とその担体に担持されたモリブデン及びニッケルを含む第2触媒に、水素と共に接触させて、350〜375℃の反応温度において、水素化脱硫する工程と;さらに、アルミニウムを含む無機多孔質酸化物からなる担体とその担体に担持されたモリブデン及びニッケルを含む第3触媒に、水素と共に接触させて、350〜375℃の反応温度において水素化脱硫する工程を含む方法により製造される、超深度脱硫軽油の製造方法が提供される。
本発明の第1の参考態様に従えば、軽油留分を含む原料油の超深度脱硫方法であって:原料油を、水素と共に有機添加剤を含まない第1触媒に接触させて硫黄分が100〜5000ppmであり且つジベンゾチオフェン(DBT)の含有量が硫黄分換算で10ppm以下に水素化脱硫する工程と;第1触媒で脱硫された原料油を、アルミニウムを含む無機多孔質酸化物から形成された担体とその担体に担持されたモリブデン及びタングステンの少なくとも一方並びにニッケルを含み且つ有機添加剤を含まない第2触媒に、水素と共に、接触させて硫黄分50ppm以下の精製油に水素化脱硫する工程とを含む超深度脱硫方法が提供される。
本発明の第1の参考態様では、超深度脱硫により軽油中の硫黄分を50ppm以下とするために、軽油中に含まれる易脱硫性硫黄化合物と難脱硫性化合物を脱硫する役割を異なる2種の触媒に割り当てている。この際、軽油中での易脱硫性硫黄化合物の一種であるジベンゾチオフェンの含有量に着目して、最初に、第1触媒を用いてDBTの含有量(硫黄分を基準)を10ppm以下になるように水素化脱硫する。第1触媒は、水素化活性金属成分としてモリブデンおよびコバルトを含む触媒が好ましい。第1触媒によりDBTの含有量が10ppm以下に低減された軽油には難脱硫性化合物が残留しているが、このような軽油をMo−NiまたはW−Ni系の第2触媒を用いて水素化精製することにより難脱硫性化合物を有効に除去することができる。このように本発明の第1の参考態様では、DBTの含有量に着目して第1触媒及び第2触媒を組み合わせて用いることにより、特開2000−313890号で使用されたような有機添加物を含む触媒を用いることなく、硫黄分50ppm以下、特に硫黄分20ppm以下の精製油を得ることに成功した。
本発明の第2の参考態様に従えば、硫黄分0.5〜2%の軽油留分である原料油の超深度脱硫方法であって:原料油を、アルミニウムを含む無機多孔質酸化物から形成された担体とその担体に担持されたモリブデン及びコバルトとを含み且つ有機添加剤を含まない第1触媒に、水素と共に接触させて、硫黄分が100〜5000ppmであり且つジベンゾチオフェンの含有量が硫黄分換算で10ppm以下に水素化脱硫する工程と;第1触媒で脱硫された原料油を、アルミニウムを含む無機多孔質酸化物から形成された担体とその担体に担持されたモリブデン及びニッケルを含み且つ有機添加剤を含まない第2触媒に、水素と共に接触させて、水素化脱硫する工程と;さらに、アルミニウムを含む無機多孔質酸化物からなる担体とその担体に担持されたモリブデン及びタングステンの少なくとも一方並びにニッケルとを含み且つ有機添加剤を含まない第3触媒に、水素と共に接触させて水素化脱硫して硫黄分50ppm以下の精製油を得る工程とを含む超深度脱硫方法が提供される。
硫黄化合物を硫黄分として0.5〜2%含む原料油を処理する際、反応器入口付近においては硫黄化合物濃度が高く、硫化水素濃度が低い。反応器流通方向に進むに従い、硫黄化合物濃度は脱硫されて減少し、脱硫反応で発生する硫化水素濃度は増加する。その結果、反応器出口付近では硫黄化合物濃度が低くなり、反対に硫化水素濃度が高くなる。このように反応器中において硫黄化合物濃度および硫化水素濃度が流通方向に沿って変化していることから、反応器上段(第1触媒)には硫黄化合物濃度が高く且つ硫化水素濃度が低い環境で高い活性を示す触媒を、中段(第2触媒)には硫黄化合物濃度がある程度低く、且つ硫化水素濃度が高い環境で高い活性を示す触媒を、そして、下段(第3触媒)には硫黄濃度が非常に低く且つ硫化水素濃度が非常に高い環境で高い活性を示す触媒を用いることで、効果的な超深度脱硫が可能となる。本発明の第2の参考態様によれば、硫黄分0.5重量%以上の軽油留分を用いて生産性の高い運転条件で、硫黄分50ppm以下、特には30ppm以下、さらには20ppm以下の軽油留分を製造することが可能となる。
本発明の参考態様の方法に使用される第1、第2または第3触媒にリン成分が担持されていることが好ましい。第1触媒に導入される水素中の硫化水素濃度が水素1molに対して1mmol(0.001mol)以下であり、第2及び/または第3触媒での水素化脱硫工程における硫化水素濃度が水素1molに対して3mmol(0.003mol)以上であることが好ましい。
第1触媒の容積と、第2触媒の容積(第3触媒を用いる場合には第2及び第3触媒の合計容積)との比が10:90〜70:30、特には30:70〜70:30であることが好ましい。さらに、第2触媒を用いた水素化脱硫工程における水素圧が2〜8MPa、液空間速度が0.5〜2.5/時、水素油比が100〜500NL/Lかつ反応温度が310〜400℃であることが、特には、水素圧が5〜8MPa、液空間速度が0.8〜2.5/時(0.8〜2.5hr−1)、水素油比が200〜350NL/Lかつ反応温度が320〜375℃であることが好ましい。
本発明に従う軽油は、本発明の第1及び第2の参考態様の超深度脱硫方法により得られた精製油を含み、硫黄分が50ppm以下、好ましくは30ppm以下、特に好ましくは20ppm以下である。
[軽油留分]
本発明の対象となる軽油留分は、直留軽油留分を用いることが好ましく、直留軽油留分単独でもよいが、軽質熱分解油軽油や軽質接触分解(軽)油(LCO)、または水素化精製油軽油を直留軽油留分に混合した混合軽油留分でもよい。この直留軽油留分とは、原油を常圧蒸留して得られる。軽油留分の終点は395℃以下、特には385℃以下が好ましい。軽油留分は通常、10%留出点が180〜300℃、50%留出点が250〜320℃、90%留出点が325〜370℃であるが、好ましくは10%留出点が240〜270℃、50%留出点が280〜320℃、90%留出点が330〜370℃である。なお、沸点および留出点は特に断らない限り、JIS K 2254「燃料油蒸留試験方法」による値である。
熱分解油とは、重質油留分に熱を加えて、ラジカル反応を主体にした反応により得られた軽質留分油で、例えば、ディレードコーキング法、ビスブレーキング法あるいはフルードコーキング法等により得られる留分をいう。これらの留分は得られる全留分を熱分解油として用いてもよいが、留出温度が150〜520℃の範囲内にある留分を用いることが好適である。また、水素化精製油軽油とは、減圧軽油や常圧残油、減圧残油等を水素化精製する際に得られる軽油留分である。これらの留分のうち、留出温度が150〜450℃の範囲内の留分を用いることが好適である。
接触分解油とは、中間留分や重質留分、特には減圧蒸留留分等をゼオライト系触媒と接触分解する際に得られる留分、特に高オクタン価ガソリン製造を目的とした流動接触分解装置において副生する分解軽油留分である。この留分は、一般に、沸点が相対的に低い軽質接触分解油と沸点が相対的に高い重質接触分解油とが別々に採取されている。本発明においては、これらの留分のいずれをも用いることができるが、前者の軽質接触分解油、いわゆるライトサイクルオイル(LCO)を用いることが好ましい。このLCOは、一般に、10%留出点が220〜250℃、50%留出点が260〜290℃、90%留出点が310〜355℃の範囲内にある。また、重質接触分解油、いわゆるヘビーサイクルオイル(HCO)は、10%留出点が280〜340℃、50%留出点が390〜420℃、90%留出点が450℃以上である。
[ジベンゾチオフェンの含有量]
易脱硫硫黄化合物が十分に除去されている指標として、ジベンゾチオフェンの含有量を用いる。第1の水素化精製触媒、または、中段用・下段用触媒を用いる水素化脱硫では、軽油留分中のジベンゾチオフェンの含有量を硫黄分換算で10ppm以下、好ましくは3ppm以下、さらに好ましくは1ppm以下とする。ジベンゾチオフェンの含有量は、硫黄分換算、すなわち、ジベンゾチオフェンに含まれる硫黄元素重量として定量され、ガスクロマトグラフィー原子発光検出器(GC/AED)などにより分析することができ、測定方法の詳細は、例えば、Tajima,H.,Kabe,T.,Ishihara,A.,分析化学,42,p.67−74(1993)、Aoyagi,K.,Imagishi,K.,Mitani,H.,石油学会誌,39(6),p.418−425(1996)に開示されている。
[原料油]
本発明の原料油は、硫黄分が0.5〜2%である上述の軽油留分を用いる。通常、硫黄分換算で50〜1000ppm、特には70〜500ppmのジベンゾチオフェンを含んでいる。原料油は、通常、窒素分が50ppm以上、特に100〜500ppmであり、比重が0.80以上、特には0.82〜0.92であり、多環芳香族分(多環芳香族含有量)は3〜20%である。なお、本明細書において、硫黄分(硫黄含有量)の測定はASTM D2622、芳香族含有量の測定はIP 391に準拠して行った。
[反応器]
本発明に用いる反応器は、公知の石油精製に用いられる反応器を用いることができる。水素と軽油留分とを向流、並流どちらの方法で接触させることもできるが、本発明では、並流接触でも十分に脱硫することができる。通常、水素化脱硫された粗製軽油留分には硫化水素が含まれており、水素化脱硫の中間でその硫化水素をストリッピングなどで除去・低減するプロセスが提案されているが、本発明においては特にその必要はない。上段、中段、下段の触媒が単一の反応器に充填されても、複数の反応器に分けて充填されても構わない。反応器内で分割した各触媒床間あるいは複数の反応器間において、水素クエンチを行う方法も好適に用いられる。中段、下段での硫化水素濃度は水素1molに対して3mmol(0.003mol)以上、特には水素1molに対して6mmol(0.006mol)以上であってもよい。
反応塔への触媒の充填は、触媒層内における効率のよい気液接触を確保するため、触媒充填機を用いるとよい。この充填機の使用によって充填時の反応塔内における触媒層面はほぼ水平となり、触媒層内における流体の偏流やこのような偏流に起因すると考えられているホットスポットの発生を防止することができるだけでなく、反応塔に密に触媒が充填されるために触媒活性や触媒寿命に好ましい影響を与える。触媒層内の水平方向面内の複数ヶ所で測定した温度差が10℃以下、特には5℃以下であることが好ましい。
本発明による水素化精製条件では、原料油中に含まれる硫黄化合物の水素化脱硫反応やアロマ分への水素添加反応などの進行に伴う発熱量が大きく、この発熱によって反応器内の触媒層が急激な温度上昇にさらされる可能性が大きい。この温度上昇は、多環アロマの生成やそれに起因する生成油の色相悪化、触媒活性の低下や触媒寿命の短命化などの原因となる。そこで本発明では、水素化精製反応装置として通常水素化精製に用いられる反応器を用いることができるが、上記の様な温度上昇を効果的に防止するために、反応器内の触媒層を必要に応じて複数の床に分割し、かつ必要に応じて各床の間に水素を供給できることが好ましい。
上段、中段、下段各段における水素化脱硫の好ましい反応条件としては、各段の反応温度(本明細書中、反応温度は各段における触媒重量平均温度で定義される。)は全て250〜500℃、特には310〜400℃、さらには320〜375℃の範囲にあることが好ましい。好ましい水素圧(水素分圧)は、1〜10MPaさらには2〜8MPaの範囲であり、特に本発明の方法では8MPa以下の低圧における効果が著しいため、5〜8MPaが好ましく用いられる。好ましい水素流量は、水素油比として50〜1000NL/L、特には100〜500NL/L、さらには200〜350NL/Lの範囲である。この水素油比は、単位時間流量において、1気圧0℃に換算した水素容積[NL]を原料油の容積[L]で割った値である。上段、中段、下段の全触媒充填容積に対する液空間速度(LHSV)は、0.1〜10hr−1、特には0.5〜2.5hr−1、さらには0.8〜2.5hr−1の範囲とすることが好ましい。また、中段および下段の合計触媒充填容積に対する液空間速度(LHSV)は、0.1〜10hr−1、特には0.5〜9.0hr−1、さらには0.7〜8.3hr−1の範囲とすることが好ましい。
中段と上段との反応温度の差(〔中段の反応温度〕−〔上段の反応温度〕)および下段と中段との反応温度の差(〔下段の反応温度〕−〔中段の反応温度〕)が、−20〜50℃、好ましくは−10〜30℃の範囲で運転することが望ましい。これにより各段において同程度の脱硫反応を行うことができ、本発明の利点をより生かすことができる。上段用触媒の容積と、中段用触媒および下段用触媒の合計の容積との比が10:90〜70:30、特には30:70〜70:30、さらには40:60〜60:40であることが好ましい。この容積比は、上段の出口油の硫黄分が100〜5000ppm、好ましくは200〜2000ppmであり、ジベンゾチオフェンの含有量が10ppm以下、特には3ppm以下となるように選ばれる。また、中段用触媒の容積と下段用触媒の容積との比が25:75〜75:25であること、特には40:60〜60:40であることが好ましい。なお、さらに、粗製軽油留分としては、上段の出口油の硫黄分が100〜5000ppm、好ましくは200〜2000ppmであり、ジベンゾチオフェンの含有量が10ppm以下、特には3ppm以下である軽油留分であれば、他の水素化精製処理により得られた軽油留分、または、水素化精製処理されていない軽油留分を用いることもできる。
[上段での水素化脱硫]
本発明における上段での水素化脱硫は、上述の原料油と上段用触媒を水素の存在下で接触させて水素化脱硫を行うことで、粗製軽油留分を得る。導入される水素中の硫化水素濃度は、通常水素1molに対して1mmol(0.001mol)以下、好ましくは水素1molに対して0.1mmol(0.0001mol)以下である。得られる粗製軽油留分の硫黄分は、100〜5000ppm以下、さらには200〜2000ppmとすることができる。粗製軽油留分のジベンゾチオフェンの含有量は10ppm以下、特には3ppm以下、さらには1ppm以下が好ましい。
[上段用触媒]
本発明の上段用触媒は、アルミニウムを含む無機多孔質酸化物からなる担体とその担体に担持された水素化活性金属成分としてモリブデンおよびコバルトを含むものである。上段用触媒は、比表面積が100〜450m/g、特には150〜300m/g、細孔容積が0.1〜2cm/g、特には0.3〜1.5cm/g、中央細孔径が3〜20nm、特には4〜10nmの範囲にあるものが好ましい。また、この触媒の形状は、球状、円柱状、三葉型または四葉型等の形状からなるものが好ましい。断面寸法は、0.1〜10mmにすることができるが、0.7〜3mmが好ましい。
アルミニウムを含む無機多孔質酸化物は、γアルミナなどの結晶性のアルミナが好ましい。担体には、ケイ素成分、具体的には非晶質シリカ、非晶質シリカアルミナなどの非晶質シリカ成分を、ケイ素重量として、40重量%以下含ませることもできる。ゼオライトなどの結晶性シリカアルミナは含まれていないこと、具体的には結晶性シリカアルミナによるケイ素元素重量として、0.5重量%以下、特には0.1重量%以下が好ましい。担体にはアルミニウムの酸化物以外は含まれていない方が好ましく、その重量は金属重量として1重量%以下、特には0.2重量%以下が好ましい。
上段用触媒は水素化活性金属成分としてモリブデンを含み、含有量は金属元素換算で5〜20重量%、特に8〜18重量%とすることが好ましい。タングステンなどの他の周期律表第6族金属元素を含んでいてもよいが、この場合、モリブデンが第6族金属元素に占める割合が金属元素換算で80重量%以上、特に95重量%以上が好ましい。他の水素化活性金属成分としてコバルトを含んでおり、その含有量は金属元素換算で1〜10重量%特に2〜8重量%とすることが好ましい。ニッケルなどの他の周期律表第8〜10族金属元素を含んでいてもよいが、この場合、コバルトが第8〜10族金属元素に占める割合が金属元素換算で80重量%以上、特に95重量%以上が好ましい。他の金属成分が担持されていないこと、具体的には金属元素重量として、1重量%以下、特には0.1重量%以下が好ましい。他の成分として、リン成分が含まれていることが好ましく、含有量としてはリン元素換算で0.1〜10重量%特に0.5〜5重量%とすることが好ましい。さらに、ホウ素、フッ素のうちいずれかあるいはこれらの元素を組み合わせて用いてもよく、その合計含有量は元素重量換算で0.1〜10重量%特に0.5〜5重量%とすることが好ましい。なお、上段用触媒には有機添加剤を含める必要はない。このため、上段用触媒中の有機物含有量は、炭素重量として0.2重量%以下である。
[中段の水素化脱硫]
本発明における中段での水素化精製方法は、上段の水素化脱硫での出口成分についてその一部分を除去することなく中段用触媒と接触させることが好ましい。上段の水素化脱硫での出口成分は、硫化水素などの不純物を含んだ水素や粗製軽油留分を含んでいる。この水素に含まれる硫化水素濃度は、通常、導入される水素1molに対して3mmol(0.003mol)以上、好ましくは30mmol(0.03mol)以上である。中段部分の硫黄分、硫化水素濃度、およびジベンゾチオフェンの含有量については、中段部においてガス・油を抜き出すことができる装置を用いて直接測定することも可能だが、LHSVを変化させた実験等を行うことにより上段触媒の性能評価から中段部分での硫黄分、硫化水素濃度、およびジベンゾチオフェンの含有量を推定することが可能である。
[中段用触媒]
本発明に用いる中段用触媒は、アルミニウムを含む無機多孔質酸化物からなる担体とその担体に担持された水素化活性金属成分としてニッケルおよびモリブデンを含むものである。中段用触媒の担体、比表面積、中央細孔径、触媒の形状は、上段用触媒と同様とすることが好ましい。中段用触媒にも有機添加剤を含める必要はない。
中段用触媒は水素化活性金属成分としてモリブデンを含み、含有量は金属元素換算で5〜20重量%、特に8〜18重量%とすることが好ましい。タングステンなどの他の周期律表第6族金属元素を含んでいてもよいが、この場合、モリブデンが第6族金属元素に占める割合が金属元素換算で80重量%以上、特に95重量%以上が好ましい。他の水素化活性金属成分としてニッケルを含んでおり、その含有量は金属元素換算で1〜10重量%特に2〜8重量%とすることが好ましい。コバルトなどの他の周期律表第8〜10族金属元素を含んでいてもよいが、この場合、ニッケルが第8〜10族金属元素に占める割合が金属元素換算で80重量%以上、特に95重量%以上が好ましい。他の金属成分が担持されていないこと、具体的には金属元素重量として、1重量%以下、特には0.1重量%以下が好ましい。他の成分として、リン成分が含まれていることが好ましく、含有量としてはリン元素換算で0.1〜10重量%特に0.5〜5重量%とすることが好ましい。さらに、ホウ素、フッ素のうちいずれかあるいはこれらの元素を組み合わせて用いてもよく、その合計含有量は元素重量換算で0.1〜10重量%特に0.5〜5重量%とすることが好ましい。
[下段の水素化脱硫]
本発明における下段での水素化精製方法は、中段の水素化脱硫での出口成分を、その一部分を除去することなく下段用触媒と接触させることが好ましい。中段の水素化脱硫での出口成分は、硫化水素などの不純物を含んだ水素や軽油留分を含んでいる。下段から得られる精製油の硫黄分は、50ppm以下、特には5〜30ppm、さらには5〜20ppmとすることができる。
[下段用触媒]
本発明に用いる下段用触媒は、アルミニウムを含む無機多孔質酸化物からなる担体とその担体に担持された水素化活性金属成分としてニッケルとモリブデン、タングステンの少なくとも一方を含むものである。下段用触媒の担体、比表面積、中央細孔径、触媒の形状は、上段用触媒、中段用触媒と同様とすることが好ましい。上段用触媒にも有機添加剤を含める必要はない。
下段用触媒は水素化活性金属成分としてモリブデン、タングステンの少なくとも一方を含み、含有量は金属元素換算で5〜30(20)重量%、特に8〜25(18)重量%とすることが好ましい。他の水素化活性金属成分としてニッケルを含んでおり、その含有量は金属元素換算で1〜10重量%、特に2〜8重量%とすることが好ましい。コバルトなどの他の周期律表第8〜10族金属元素を含んでいてもよいが、この場合、ニッケルが第8〜10族金属元素に占める割合が金属元素換算で80重量%以上、特に95重量%以上が好ましい。他の金属成分が担持されていないこと、具体的には金属元素重量として、1重量%以下、特には0.1重量%以下が好ましい。他の成分として、リン成分が含まれていることが好ましく、含有量としてはリン元素換算で0.1〜7重量%、特に0.5〜5重量%が好ましい。さらに、ホウ素、フッ素のうちいずれかあるいはこれらの元素を組み合わせて用いてもよく、その合計含有量は元素重量換算で0.1〜10重量%、特に0.5〜5重量%とすることが好ましい。
[水素化脱硫触媒の製造方法]
上段用触媒、中段用触媒ならびに下段用触媒の製造方法としては、以下のように担体に水素化活性金属成分を担持して製造することが好ましい。本発明に用いる担体の製造方法は特に規定しないが、共沈法や混練法等により無機含水酸化物を製造し、これを成形した後、乾燥・焼成を行う方法が好適に用いられる。また、あらかじめ水素化活性金属成分を含んだ溶液から無機含水酸化物を製造し、これを成形した後、乾燥・焼成を行うことにより触媒を直接製造することも好適に用いられる。なお、本明細書での無機多孔質酸化物を構成する酸化物には、含水酸化物も含まれる。
担持される水素化活性金属成分以外に、さらに窒素、炭素、塩素等を添加することにより脱硫活性を向上することができる。上記水素化活性金属成分を触媒に導入する過程において、各成分の単独金属化合物を担持する方法であっても、成分を混合することによりヘテロポリ酸等の複合金属化合物を担持する方法であっても構わない。
水素化活性金属成分の担持方法は特に限定しないが、通常用いられるスプレー含浸、浸漬法等が好適である。金属の担持状態を制御するために、有機化合物、有機塩類、無機塩類等を金属担持液に共存させることも好適に用いられる。ここで用いる有機化合物として、ギ酸、シュウ酸、クエン酸、酒石酸、酢酸、リンゴ酸等のヒドロキシカルボン酸類や、アセチルアセトン等のジケトン類が好適に用いられる。または有機塩類としては、酢酸塩、ギ酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩などが、無機塩としては、硝酸塩、アンモニウム塩、リン酸塩などが例として挙げられる。また、活性金属成分の活性を向上するために、担持液に過酸化水素、過マンガン酸塩等の酸化剤または還元剤を添加することも好適に用いられる。特には、担持液にクエン酸などのヒドロキシカルボン酸を配合することが好ましい。過酸化水素とヒドロキシカルボン酸とを配合することが特に好ましい。また、水素化活性金属分の凝集を防ぐために、高分子有機化合物を添加する方法も好適に用いられる。特には、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール等の水溶性ポリマーを添加することが好ましい。本発明に用いる水素化精製触媒を製造するための担持液は、担持液中のモリブデン/リンのモル比が0.5〜10であり、さらには1〜7であることが好ましい。また、担持液中の(コバルト及びニッケル)/リンのモル比が0.3〜5であることが好ましく、さらには0.5〜3であることが特に好ましい。(コバルト及びニッケル)/ヒドロキシカルボン酸のモル比が0.5〜3であることが好ましい。
金属成分を含む溶液を担体に含浸した後、通常50〜300℃、好ましくは80〜250℃の温度範囲で、10分〜24時間乾燥する。また、焼成は220〜600℃、特には400〜580℃の温度範囲で行われ、焼成温度までの昇温時間は10〜240分、焼成温度での保持時間は1〜240分が好適である。
[超深度脱硫軽油の製造]
上述の超深度脱硫方法により得られた精製油は、そのまま、または、他の基材を配合することで硫黄分50ppm以下、特には20ppm以下の超深度脱硫軽油が製造される。この精製油の配合量は、50容量%以上、特には80容量%以上が好ましい。本発明に用いる精製油を、貴金属系触媒などを用いてさらに水素化精製することもできる。この水素化精製は、色相の改善や芳香族含有量の低減などのために行われる。必要に応じて公知の軽油用添加剤を添加することができる。これらの添加剤としては、例えばエチレン酢酸ビニル共重合体、アルケニルコハク酸アミドなどの低温流動性向上剤、硝酸エステル、有機過酸化物などのセタン価向上剤、アルケニルコハク酸イミド、ポリアルキルアミンなどの清浄分散剤、フェノール系、アミン系などの酸化防止剤、サリチリデン誘導体などの金属不活性化剤、アゾ染料などの着色剤などがある。この配合量は任意であるが、各々の添加剤の配合量は軽油全量基準で0.5重量%以下、好ましくは0.2重量%以下である。
本発明を実施例により詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
水素化精製方法1、2および8
[触媒Aの調製]
触媒Aを以下の手順で調製した。市販ベーマイト粉および市販シリカアルミナ粉を混練して調製した多孔質シリカアルミナ担体M:150gに、MoO39.1g、炭酸コバルト13.1g、85%リン酸6.0g、34%過酸化水素水10.0gおよびクエン酸30gから調製した担持液Sをスプレー含浸し、130℃で12時間の乾燥および550℃で30分間焼成することにより触媒Aを得た。触媒Aは、γアルミナ中に非晶質シリカアルミナ部分が分散しており、触媒中の元素含有量はCo:3重量%、Mo:13重量%、P:0.8重量%、Si:2.8重量%、Al:41重量%であった。窒素吸着法で測定した比表面積は220m/g、細孔容積は0.435cm/g、中央細孔径は6.8nmであった。
[触媒Bの調製]
触媒Bを以下の手順で調製した。市販ベーマイト粉を混練して調製したγアルミナからなる多孔質アルミナ担体N:150gにMoO、30.0g、炭酸ニッケル13.8g、85%リン酸19.2g、クエン酸30.0gから調製した担持液Tをスプレー含浸し、130℃で12時間の乾燥および550℃で30分間焼成することにより触媒Bを得た。触媒中の元素含有量はNi:3重量%、Mo:12重量%、P:2.5重量%、Al:44重量%であった。窒素吸着法で測定した比表面積は245m/g、細孔容積は0.617cm/g、中央細孔径は7.7nmであった。
[触媒Cの調製]
触媒Cを以下の手順で調製した。市販シリカアルミナ粉と市販擬ベーマイト粉を混練して調製した多孔質シリカアルミナ担体O:150gに、メタタングステン酸アンモニウム水溶液123.7g、硝酸ニッケル水溶液(硝酸ニッケル44.6g)の順にスプレー含浸し、130℃で12時間の乾燥および550℃で30分間焼成することにより触媒Cを得た。触媒Cは、γアルミナ中に非晶質シリカアルミナ部分が分散しており、触媒中の元素含有量はW:23重量%、Ni:4重量%、Al:16重量%、Si:18重量%であった。窒素吸着法で測定した比表面積は221m/g、細孔容積は0.431cm/g、中央細孔径は6.8nmであった。
[難脱硫硫黄化合物に対する脱硫活性の把握]
難脱硫硫黄化合物に対する脱硫活性の把握するため、既に脱硫処理され難脱硫硫黄化合物が濃縮された軽油留分Xを用いて、触媒A、BならびにCの脱硫活性を調べた。軽油留分Xの性状を表1に、実験条件を表2に、そして評価結果を表3に示す。その結果、触媒A < 触媒B < 触媒Cの順であり、難脱硫硫黄化合物に対する脱硫活性は、触媒C、触媒B、触媒Aの順に高い活性であることが明らかになった。
Figure 0005016331
Figure 0005016331
Figure 0005016331
[硫化水素による被毒効果の把握]
硫化水素による被毒効果の把握するために、表1に示す軽油留分Xに直留軽油相当の硫化水素を発生する硫化剤(二硫化炭素)を添加した軽油留分X’(硫黄濃度:17200ppm、水素1molに対して硫化水素0.050molに相当)を用いて、触媒A、BならびにCの脱硫活性を調べた。実験条件は表2に示す通りである。結果を表4に示す。その結果、脱硫活性は、触媒A < 触媒B ≦ 触媒Cの順であり、触媒C、触媒B、触媒Aの順に高い活性であることが明らかになった。硫化水素の存在により各触媒は脱硫活性が低下するが、触媒Aと比べて、触媒BおよびCは硫化水素による被毒に対して相対的に高い耐性があり引き続き脱硫活性を維持することがわかった。
Figure 0005016331
[硫黄化合物による被毒効果の把握]
硫黄化合物による被毒効果の把握するために、表1に示す軽油留分Yを用いて触媒A、BならびにCの脱硫活性を調べた。実験条件は表2に示す通りである。結果を表5に示す。その結果、脱硫活性は触媒A > 触媒B > 触媒Cの順であり、触媒A、触媒B、触媒Cの順に高い活性であり、難脱硫硫黄化合物の脱硫性能における差と比べて著しく異なり、硫黄化合物による被毒に対して、触媒A > 触媒B > 触媒Cの順に耐性があることが判明した。
Figure 0005016331
[軽油留分の水素化精製]
上記結果に基づき、触媒A〜Cを組み合わせて用いた水素化精製を行った。軽油留分Yを原料油として、固定床高圧流通系反応装置を用いて、水素圧:5MPa、LHSV:1.0hr−1、水素油比:200 NL/L、触媒量:100mL、反応温度:330および350℃の条件で行った。上段に50ml、中段に25ml、下段に25mlの触媒を表6に示す組み合わせでそれぞれ充填して上段側から原料油および水素を導入することにより水素化精製を行い、下段出口から得られた生成油を窒素でストリッピングすることにより硫化水素を除去して得られた精製油の硫黄濃度をASTM D2622に準拠し蛍光X線装置にて測定した。上段出口油(粗製軽油留分、中段入口油)に相当する硫黄分は、比較例における触媒Aについて、LHSV:2.0hr−1条件で行った実験の結果を用いた。反応温度を330および350℃とした場合の結果を表6に併せて示す。なお、硫化水素濃度は水素1molに対するモル濃度で示した。
Figure 0005016331
表6からわかるように、触媒Aのみを用いる水素化精製方法(水素化精製方法8)に比べて、触媒Aの下流側に触媒Bを組み合わせた方法(水素化精製方法1)、および触媒Aの下流側に触媒B、触媒Cを順次組み合わせた方法(水素化精製方法2)が、高い脱硫活性を示した。
水素化精製方法3−7
[触媒Dの調製]
触媒Dを以下の手順で調製した。市販ベーマイト粉を混練して調製した多孔質アルミナ担体P:150gに、触媒Aの調製に用いた担持液Sをスプレー含浸し、130℃で12時間の乾燥および550℃で30分間焼成することにより触媒Dを得た。触媒Dは、触媒中の元素含有量はCo:3重量%、Mo:13重量%、P:0.8重量%、Al:44重量%であった。窒素吸着法で測定した比表面積は205m/g、細孔容積は0.408cm/g、中央細孔径は6.7nmであった。
[触媒Eの調製]
触媒Eを以下の手順で調製した。触媒Aの調製で用いたシリカアルミナ担体M:150gに、触媒Bの調製に用いた担持液Tをスプレー含浸し、130℃で12時間の乾燥および550℃で30分間焼成することにより触媒Eを得た。触媒Eは、触媒中の元素含有量はNi:3重量%、Mo:12重量%、P:2.5重量%、Al:42重量%、Si:2.5重量%であった。窒素吸着法で測定した比表面積は214m/g、細孔容積は0.368cm/g、中央細孔径は6.4nmであった。
[触媒Fの調製]
触媒Fを以下の手順で調製した。触媒Aの調製で用いたシリカアルミナ担体M:150gに、触媒Bの調製に用いた担持液Tに34%過酸化水素水10.0gを加えた担持液Uをスプレー含浸し、130℃で12時間の乾燥および550℃で30分間焼成することにより触媒Fを得た。触媒Fは、触媒中の元素含有量はNi:3重量%、Mo:12重量%、P:2.5重量%、Al:42重量%、Si:2.4重量%であった。窒素吸着法で測定した比表面積は198m/g、細孔容積は0.365cm/g、中央細孔径は6.7nmであった。
[触媒Gの調製]
触媒Gを以下の手順で調製した。触媒Bの調製で用いたアルミナ担体N:150gに、触媒Aの調製に用いた担持液Sをスプレー含浸し、130℃で12時間の乾燥および550℃で30分間焼成することにより触媒Gを得た。触媒Gは、触媒中の元素含有量はCo:3重量%、Mo:13重量%、P:0.8重量%、Al:44重量%であった。窒素吸着法で測定した比表面積は194m/g、細孔容積は0.394cm/g、中央細孔径は6.9nmであった。
[触媒Hの調製]
触媒Hを以下の手順で調製した。触媒Bの調製で用いたアルミナ担体N:150gに、MoO、37.9g、炭酸ニッケル15.4g、85%リン酸21.9g、クエン酸30.0gおよび34%過酸化水素水10.0gから調製した担持液Vをスプレー含浸し、130℃で12時間の乾燥および550℃で30分間焼成することにより触媒Hを得た。触媒Hは、触媒中の元素含有量はNi:3重量%、Mo:12重量%、P:2.5重量%、Al:44重量%であった。窒素吸着法で測定した比表面積は185m/g、細孔容積は0.365cm/g、中央細孔径は7.1nmであった。
[触媒Iの調製]
触媒Iを以下の手順で調製した。市販ベーマイト粉を混練して調製した多孔質アルミナ担体Q:150gに、触媒Hの調製に用いた担持液Vをスプレー含浸し、130℃で12時間の乾燥および500℃で30分間焼成することにより触媒Iを得た。触媒Iは、触媒中の元素含有量はNi:3重量%、Mo:12重量%、P:2.5重量%、Al:44重量%であった。窒素吸着法で測定した比表面積は206m/g、細孔容積は0.377cm/g、中央細孔径は7.1nmであった。
[軽油留分の水素化精製]
触媒A〜Iを2段(上下段)の触媒層に、種々の組み合わせで用いて水素化精製を行った。軽油留分Yを原料油として、固定床高圧流通系反応装置を用いて、水素圧:5MPa、LHSV:1.0hr−1、水素流量:200
NL/L、触媒量:100mL、反応温度:330および350℃(水素化精製方法6及び7は345℃)の条件で行った。上段及び下段に表7及び8に示す触媒組み合わせ及び容量でそれぞれ充填して、上段側から原料油および水素を導入することにより水素化精製を行い、下段出口から得られた生成油を窒素でストリッピングすることにより硫化水素を除去して得られた精製油の硫黄濃度をASTM
D2622に準拠し蛍光X線装置にて測定した。それらの結果を表7及び8に併せて示す。また、表中に後段入口における硫黄(S)及びDBTの含有量を示した。
Figure 0005016331
Figure 0005016331
表7及び8から、水素化精製方法4−6では反応温度350℃にて、水素化精製方法7−8では反応温度345℃にて、硫黄含有量50ppm以下の超深度脱硫を実現していることがわかる。これは、表7及び8に示すように、前段触媒(Co−Mo)によりDBTを含む易脱硫性化合物の脱硫が確実に実行されて後段触媒(Ni−Mo)に供されるDBT濃度が2ppm以下に低減されたためであると考えられる。水素化精製方法3及び5では水素化精製方法1と同様に硫黄含有量20ppm以下を達成していることに注目されたい。
本発明に用いられる精製油の精製方法は、有機添加剤を含まない触媒を用いて、軽油中の硫黄分を50ppm以下、特に20ppm以下に低減する超深度脱硫を実現している。それゆえ、方法を用いて精製した軽油は、ディーゼルエンジン排気ガスから二酸化窒素及び粒子状物質の排出を著しく低減することができる。また、方法は、硫化水素の存在する雰囲気下でも有効であるために、既存の水素化精製装置を用いて実行することができる。

Claims (1)

  1. ジベンゾチオフェンの含有量が硫黄分換算で1ppm以下であり、硫黄分5〜20ppm以下の精製油を得ることと、
    前記精製油を50容量%以上配合して、硫黄分50ppm以下の超深度脱硫軽油を製造することを含む超深度脱硫軽油の製造方法であり、
    前記精製油は、
    硫黄分0.5〜2%の軽油留分である原料油を、アルミニウムを含む無機多孔質酸化物から形成された担体とその担体に担持されたモリブデン及びコバルトとを含む第1触媒に、水素と共に接触させて、350〜375℃の反応温度において、硫黄分が200〜2000ppmであり且つジベンゾチオフェンの含有量が硫黄分換算で1ppm以下に水素化脱硫する工程と;
    第1触媒で脱硫された原料油を、アルミニウムを含む無機多孔質酸化物から形成された担体とその担体に担持されたモリブデン及びニッケルを含む第2触媒に、水素と共に接触させて、350〜375℃の反応温度において、水素化脱硫する工程と;
    さらに、アルミニウムを含む無機多孔質酸化物からなる担体とその担体に担持されたモリブデン及びニッケルを含む第3触媒に、水素と共に接触させて、350〜375℃の反応温度において水素化脱硫する工程を含む方法により製造される、超深度脱硫軽油の製造方法。
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