JP2011206708A - 多層塗工膜の製造方法及び多層塗工膜 - Google Patents

多層塗工膜の製造方法及び多層塗工膜 Download PDF

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Abstract

【課題】粘度を調整して積層させるゼラチン等のゲル化剤や増粘剤等を用いる必要性がなく、かつ操作が簡易であり、さらには、例えばハードコート性や透明性等の各種機能を付与し得る多層塗工膜の製造方法であって、複数の塗工液を一括で塗布することにより、層間の密着性が良好な多層塗工膜を、簡便かつ生産性良く製造する方法を提供すること。
【解決手段】複数の塗工液を予め多層化し、多層化した塗工液を基材上に転移させる工程を有する多層塗工膜の製造方法において、接する2種の塗工液を親水性有機溶剤系塗工液と水系塗工液とに分け、少なくとも一方の塗工液に、該2種の塗工液の混合を防止する混合防止成分を予め混入しておくことにより、積層後の層界面を確保することを特徴とする、多層塗工膜の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、多層塗工膜の製造方法及び該製造方法により得られる多層塗工膜に関する。さらに詳しくは、複数の塗工液を一括で塗布することにより、層間の密着性が良好な多層塗工膜を、簡便かつ生産性良く製造する方法及び該方法により得られる多層塗工膜に関する。
多層塗工膜の形成には、「有機溶剤系」塗工液を用いる方法と、「水系」塗工液を用いる方法が知られているが、工業的に実施する場合における環境保全や健康の観点から、水系塗工液や、有害物質であるトルエン等を使わない、いわゆるノントル系の塗工液を用いる方法が好ましいと言える。
多層塗工膜の形成方法としては、複数の塗工液を用いて、塗布と乾燥処理を繰り返すタンデム塗工方式が知られている。該タンデム塗工方式では、下層塗工液が上層塗工液によって流されることのないよう、上層塗工液を塗布する前に下層を定着させておく必要がある。特に、水系塗工液を用いた多層塗工膜の製造では、1つの乾燥工程に非常に多くの時間及びエネルギーを要するため、塗布と乾燥処理を繰り返すタンデム塗工方式では極めて多くの時間及びエネルギーが必要となり、該タンデム塗工方式は水系塗工液を用いた多層塗工膜の製造には適さない。また、タンデム塗工方式では、塗布と乾燥処理を繰り返すために、層間に必然的に空気が入り込むため、層間密着性が不十分となる傾向にある。さらには、層数を増やすほど異物混入の確立が高まるため、このことが歩留まりの低下につながる。
一方、上記問題を解決する方法として、走行する基材上に1回の塗布プロセスにより多層を形成する多層塗工方式が知られており、該多層塗工方式は、写真フィルム等の塗工プロセスに広く利用されている。多層塗工方式は、例えば図1に示すように、塗布ヘッド1における複数の狭いスリットから塗工液A及びBを押し出し、傾斜したスライド面2上を重力の作用により自然流下させ、重なりあった塗工液A及びBをロール3によって、走行する基材4上に転移させて多層塗工膜を形成するものである。
水系塗工液を用いた方法であって、このような多層塗工方式を採用した方法としては、ゼラチンをバインダーとするハロゲン化乳化剤を同時多層塗布し、その後冷却する方法(特許文献1参照)が知られている。この方法は、ゼラチンのゾル−ゲル変換特性を利用して多層膜をゲル化させて超高粘状態にし、層間の混合を起こり難くした上で熱風乾燥等により塗膜(塗工膜)を形成するものである。
また、有機溶剤系塗工液を用いた方法では、水系に比較して表面張力が低いため、拡散混合が起こり易いため、増粘剤等の粘度調整成分を添加することにより、接する2層の界面における流動性や、混合の度合いを制御する方法(特許文献2参照)や、2種以上の非水系塗布液の少なくとも1種に電子線硬化性化合物を含有させ、同時多層塗布後、電子線を照射して塗布層を硬化あるいは増粘させ、乾燥することで多層塗工膜を得る方法(特許文献3参照)が提案されている。
特開昭58−199074号公報 特公昭63−20584号公報 特開昭61−74675号公報
特許文献1に記載された方法のように、従来の水系塗工液を用いた多層塗工膜の製造方法は、積層構造を確保するために、ゼラチンに代表されるゲル化剤を多量に用いる。そのため、例えばハードコート性や透明性等の各種機能を付与することができず、さらにゲル化剤と相溶しない又は反応してしまう成分を用いることができない等の理由により、得られる多層塗工膜の用途が限定されてしまうという問題がある。
また、特許文献2に記載の有機溶剤系塗工液を用いた方法では、粘度調整用に一定量の増粘剤が必要であり、これら添加物は、一般に低分子量有機材料であり、多層塗工、積層体形成後に層中、層間を移動し、機械的特性や、層間の密着性低下が想定され、用途によっては適用できない場合があった。特許文献3に記載の有機溶剤系塗工液を用いた方法では、塗布工程の後、塗布液が拡散混合しないうちに、電子線照射工程を行う必要があり、操作が煩雑であると共に、大掛かりな装置が必要となるという問題点がある。
本発明は、このような状況下になされたものであり、1回の塗布プロセスにより多層を形成する多層塗工方式であり、粘度を調整して積層させるゼラチン等のゲル化剤や増粘剤等を用いる必要性がなく、かつ操作が簡易であり、さらには、例えばハードコート性や透明性等の各種機能を付与し得る多層塗工膜の製造方法であって、複数の塗工液を一括で塗布することにより、層間の密着性が良好な多層塗工膜を、簡便かつ生産性良く製造する方法を提供することを課題とする。
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、1回の塗布プロセスにより多層を形成する多層塗工方式において、接する2種の塗工液の少なくとも一方に、2種の塗工液の混合を防止する混合防止成分を予め混入しておくことにより、塗工液間の界面が確保され、層間の密着性が良好な多層塗工膜を、簡便かつ生産性良く製造し得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、下記[1]〜[7]に関する。
[1]複数の塗工液を予め多層化し、多層化した塗工液を基材上に転移させる工程を有する多層塗工膜の製造方法において、接する2種の塗工液を親水性有機溶剤系塗工液と水系塗工液とに分け、少なくとも一方の塗工液に、該2種の塗工液の混合を防止する混合防止成分を予め混入しておくことにより、積層後の層界面を確保することを特徴とする、多層塗工膜の製造方法。
[2]少なくとも一方の塗工液に混合防止成分を予め混入する方法が、(a)親水性有機溶剤に対する溶解度が50mg/100ml以上であり、且つ水に対する溶解度が1mg/100ml以下である混合防止成分を、親水性有機溶剤系塗工液に予め混入する方法、及び/又は(b)水に対する溶解度が50mg/100ml以上であり、且つ親水性有機溶剤に対する溶解度が1mg/100ml以下である混合防止成分を、水系塗工液に予め混入する方法である、上記[1]に記載の多層塗工膜の製造方法。
[3]親水性有機溶剤がアルコールである、上記[2]に記載の多層塗工膜の製造方法。
[4]親水性有機溶剤に対する溶解度が50mg/100ml以上であり、且つ水に対する溶解度が1mg/100ml以下である混合防止成分が、けん化度30〜45モル%のポリビニルアルコール、スルホン化度5〜20モル%のポリスチレンスルホン酸であり、水に対する溶解度が50mg/100ml以上であり、且つ親水性有機溶剤に対する溶解度が1mg/100ml以下である混合防止成分が、けん化度80〜100モル%のポリビニルアルコール、スルホン化度60〜100モル%のポリスチレンスルホン酸である、上記[2]又は[3]に記載の多層塗工膜の製造方法。
[5]接する2種の塗工液の少なくとも一方に混入する混合防止成分の含有量が、該混合防止成分を含む塗工液の固形分量に基づき、1〜30質量%である、上記[1]〜[4]のいずれかに記載の多層塗工膜の製造方法。
[6]複数の塗工液を予め多層化する際に傾斜したスライド面を使用し、該スライド面の傾斜角度が、水平方向に対して5〜40度である、上記[1]〜[5]のいずれかに記載の多層塗工膜の製造方法。
[7]上記[1]〜[6]のいずれかに記載の製造方法により得られる多層塗工膜。
本発明によれば、粘度を調整して積層させるゼラチン等のゲル化剤や増粘剤等を用いなくとも、接する2種の塗工液を親水性有機溶剤系塗工液と水系塗工液とに分け、少なくとも一方の塗工液に、該2種の塗工液の混合を防止する混合防止成分を予め混入しておくという簡易な操作により、積層後の層界面が確保され、層間の密着性が良好な多層塗工膜を、簡便かつ生産性良く製造する方法を提供することができる。本発明の製造方法では、多層塗工膜に例えばハードコート性や透明性等の各種機能を付与することも可能である。
なお、本発明で用いる混合防止成分の全固形分に対する含有割合は比較的小さくて済むため、積層構造体全体の機能に大きな影響を与えることなく積層構造体を形成することが可能である。
また、上記の通り、本発明ではゲル化剤等の添加剤を用いなくて済むため、添加剤による悪影響を排除でき、製造コストを低減することができる。
本発明の多層塗工膜を製造するための装置の一例を示す模式図である。
以下、本発明の多層塗工膜の製造方法について、詳細に説明する。なお、以下に、2層の同時多層塗工膜の製造方法を例として説明するが、本発明は2層に限定されるものではなく、3層以上の同時多層塗工膜の製造にも適用が可能である。
[多層塗工膜の製造方法]
本発明は、複数の塗工液を予め多層化し、多層化した塗工液を基材上に転移させる工程を有する多層塗工膜の製造方法において、接する2種の塗工液を親水性有機溶剤系塗工液と水系塗工液とに分け、少なくとも一方の塗工液に、該2種の塗工液の混合を防止する混合防止成分を予め混入しておくことにより、積層後の層界面を確保することを特徴とする、多層塗工膜の製造方法である。
本発明の多層塗工膜の製造方法は、上記の通り、塗工液A(上層塗工液)及び塗工液B(下層塗工液)を予め多層化し、多層化した塗工液を、基材上に転移させて多層塗工膜を製造する工程を含む。
上層用の塗工液A及び下層用の塗工液Bを予め多層化する方法に特に制限は無いが、例えば(1)傾斜したスライド面上にて多層化させる方法、(2)水平な平面状にて多層化させる方法、(3)円形シリンダー上にて多層化させる方法、(4)傾斜した放物面上にて多層化させる方法等が挙げられる。これらの中でも、通常、方法(1)が好ましく利用される。
塗工液A及び塗工液Bは、これらを積層した後に層界面を確保するために、一方が親水性有機溶剤系塗工液であり、他方が水系塗工液である必要がある。上層用の塗工液Aと下層用の塗工液Bは、いずれが親水性有機溶剤系塗工液であってもよいが、下層が親水性有機溶剤系塗工液であることが好ましい。
(親水性有機溶剤系塗工液の媒体)
親水性有機溶剤系塗工液が含有する親水性有機溶剤としては、積層する2層間のはじきを抑制する観点から、水に対する溶解度が1g/100ml以上のものが好ましく、50g/100ml以上のものがより好ましく、水と任意の量で混和するものがさらに好ましい。また、親水性有機溶剤系塗工液は、揮発性及び環境保全の観点から、アルコール系塗工液であることが好ましい。該アルコール系塗工液に用いるアルコールとしては、層間密着性の観点から、ヒドロキシル基を有する親水性の化合物が好ましく、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、イソブタノール、エチレングリコール等が挙げられる。後述する乾燥時間を短縮する観点から、アルコールの沸点は、40〜120℃が好ましく、50〜80℃がより好ましい。アルコールは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、親水性有機溶剤系塗工液には、媒体として、アルコール以外の有機溶剤であってアルコールと親和性のある溶剤や水を併用してもよいが、混合防止成分による層界面確保の効果の観点から、媒体全量に対するアルコールの含有量が80質量%以上(好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは実質100質量%)となっていることが好ましい。
(水系塗工液の媒体)
水系塗工液が含有する水としては特に制限はなく、イオン交換水、蒸留水等を用いることができる。水系塗工液中の媒体としては、水以外に、アセトン、メタノール、メチルエチルケトン等の水溶性の有機溶剤が併用されていてもよいが、混合防止成分による層界面確保の効果の観点から、媒体全量に対する水の含有量が80質量%以上(好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは実質100質量%)となっていることが好ましい。
(塗工液中の被膜形成成分)
親水性有機溶剤系塗工液、水系塗工液に含有させる被膜形成成分としては、例えばヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール(PVA)及びその誘導体、ポリスチレンスルホン酸、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリアクリル酸及びその誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、アルギン酸塩類等が挙げられる。これらの中から、親水性の被膜形成成分と、アルコール親和性の高い被膜形成成分とを、適宜選択すればよい。また、水にもアルコールにも親和性がある成分については、いずれに使用してもよいし、両方に用いることもできる。
該被膜形成成分の水系塗工液中の濃度に特に制限はないが、通常、好ましくは20〜50質量%の範囲で塗工液の粘度等を考慮しながら適宜選択される。
本発明においては、接する2種の塗工液の少なくとも一方に、混合防止成分を予め混入する方法として、(a)親水性有機溶剤に対する溶解度が50mg/100ml以上であり、且つ水に対する溶解度が1mg/100ml以下である混合防止成分を、親水性有機溶剤系塗工液に予め混入する方法、及び/又は(b)水に対する溶解度が50mg/100ml以上であり、且つ親水性有機溶剤に対する溶解度が1mg/100ml以下である混合防止成分を、水系塗工液に予め混入する方法を用いることができる。該方法としては、方法(a)が好ましい。
親水性有機溶剤又は水に対する溶解度が50mg/100ml以上というのは、任意に溶解するものをも含むことを意味する。
なお、「親水性有機溶剤に対する溶解度が50mg/100ml以上であり、且つ水に対する溶解度が1mg/100ml以下である混合防止成分」は、好ましくは、親水性有機溶剤に対する溶解度が70mg/100ml以上であり、且つ水に対する溶解度が1mg/100ml以下である混合防止成分であり、より好ましくは、親水性有機溶剤に対する溶解度が80mg/100ml以上であり、且つ水に対する溶解度が1mg/100ml以下である混合防止成分であり、さらに好ましくは、親水性有機溶剤に対する溶解度が100mg/100ml以上であり、且つ水に対する溶解度が0.5mg/100ml以下である混合防止成分である。
また、「水に対する溶解度が50mg/100ml以上であり、且つ親水性有機溶剤に対する溶解度が1mg/100ml以下である混合防止成分」は、好ましくは、「水に対する溶解度が70mg/100ml以上であり、且つ親水性有機溶剤に対する溶解度が1mg/100ml以下である混合防止成分」であり、より好ましくは、「水に対する溶解度が80mg/100ml以上であり、且つ親水性有機溶剤に対する溶解度が1mg/100ml以下である混合防止成分」であり、さらに好ましくは、「水に対する溶解度が100mg/100ml以上であり、且つ親水性有機溶剤に対する溶解度が0.5mg/100ml以下である混合防止成分」である。
(混合防止成分)
親水性有機溶剤に対する溶解度が50mg/100ml以上であり、且つ水に対する溶解度が1mg/100ml以下である混合防止成分としては、けん化度30〜45モル%(好ましくは30〜40モル%)のポリビニルアルコール(PVA)、スルホン化度5〜20モル%のポリスチレンスルホン酸及びその塩、スルホン化度5〜20モル%のポリビニルスルホン酸及びその塩等が挙げられる。前記その塩としては、いずれも、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩等が挙げられる。
なお、前記PVA、ポリスチレンスルホン酸及びその塩、ポリビニルスルホン酸及びその塩の重量平均分子量は、1万〜10万が好ましい。ここで、本明細書において、重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の値である。
また、水に対する溶解度が50mg/100ml以上であり、且つ親水性有機溶剤に対する溶解度が1mg/100ml以下である混合防止成分としては、けん化度80〜100モル%のポリビニルアルコール(PVA)、スルホン化度60〜100モル%のポリスチレンスルホン酸及びその塩、スルホン化度60〜100モル%のポリビニルスルホン酸及びその塩等が挙げられる。なお、前記PVAの重量平均分子量は1万〜10万が好ましく、ポリスチレンスルホン酸の重量平均分子量は1万〜10万が好ましい。
接する2種の塗工液の少なくとも一方に混入する混合防止成分の含有量に特に制限はないが、過剰に添加せずに塗工液間の拡散混合を防止する観点から、該混合防止成分を含む塗工液の固形分量に基づき、通常、好ましくは1〜30質量%、より好ましくは1〜20質量%、より好ましく3〜18質量%、さらに好ましくは5〜16質量%である。
水系塗工液と親水性有機溶剤系塗工液は、互いに親和性があるため、通常であれば両者は混ざり合うが、本発明では、混合防止成分を用いることにより、2種の塗工液の拡散混合を防止又は抑制し、界面を安定的に確保することができた。中間層を挿入するといった実施形態ではないにも関わらず、なぜ混合を効率的に防止又は抑制できたかは明確にはわからないが、混入した混合防止成分が塗工液全体の性質に影響を及ぼし、その結果、層界面を確保できる程度に、他方の塗工液に対する親和性を効率的に低下させることができたためと推測される。
(その他の成分)
前記各塗工液には、さらに必要に応じて、各種添加剤、例えば酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、レベリング剤、消泡剤、充填剤、潤滑剤、滑剤等を含有させることができる。
なお、本発明における塗工液の固形分濃度及び粘度については、塗工可能な濃度及び粘度であればよく、特に制限されず、状況に応じて適宜選定することができる。
(基材)
多層化した塗工液を転移させる基材に特に制限はなく、多層塗工膜を有する部材の用途によって適宜選択することができる。基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム等のポリエステル系フィルム;ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等のポリオレフィン系フィルム;セロファン、ジアセチルセルロースフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、アセチルセルロースブチレートフィルム等のセルロース系フィルム;ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム等の塩化ビニル系フィルム;ポリビニルアルコールフィルム;エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム等のビニル系共重合体フィルム;ポリスチレンフィルム;ポリカーボネートフィルム;ポリメチルペンテンフィルム;ポリスルホンフィルム;ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリエーテルイミドフィルム等のポリエーテル系フィルム;ポリイミドフィルム;フッ素樹脂フィルム;ポリアミドフィルム;アクリル樹脂フィルム;ノルボルネン系樹脂フィルム;シクロオレフィン樹脂フィルム等が挙げられる。
これらの基材は、透明、半透明のいずれであってもよく、また、着色されていてもよいし、無着色のものでもよく、用途に応じて適宜選択すればよい。
これらの基材の厚さに特に制限はなく、状況に応じて適宜選定されるが、通常、15〜250μm、好ましくは30〜200μmの範囲である。また、この基材は、その表面に設けられる層との密着性を向上させる目的で、所望により片面又は両面に、酸化法や凹凸化法等により表面処理を施すことができる。上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、クロム酸処理(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射処理等が挙げられ、また、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法等が挙げられる。これらの表面処理法は基材の種類に応じて適宜選ばれるが、一般にはコロナ放電処理法が効果及び操作性等の面から、好ましく用いられる。
(多層塗工膜の形成)
本発明においては、前述の通り、複数の塗工液を予め多層化し、多層化した塗工液を基材上に転移させる方法が採られる。
多層化する際に傾斜したスライド面を利用する場合、塗工液を流動させるための、傾斜したスライド面を有するものとしては、例えば図1に示すようなスライドコーターが好ましく挙げられる。
効率的に多層塗工膜を形成する観点から、スライド面の傾斜角度は、水平方向に対して5〜40度が好ましく、10〜35度がより好ましく、15〜35度がさらに好ましい。また、効率的に多層塗工膜を形成する観点から、スライド面上への塗工液の吐出口の中心と、隣り合う塗工液の吐出口の中心との距離は、8〜30cmが好ましく、10〜28cmがより好ましく、12〜26cmがさらに好ましい。さらに、効率的に多層塗工膜を形成する観点から、複数のスライド面上への塗工液の吐出口の内、塗工液を基材へ転移する部位に最も近い吐出口の中心と、基材との距離は、2〜14cmが好ましく、3〜12cmがより好ましく、4〜11cmがさらに好ましい。特に、このように設計されたスライドコーターを使用した場合に、本発明の効果が顕著に現れる傾向にある。
以下に、図1のスライドコーターを参照して、塗工液を多層化する方法の一例を詳細に説明する。
塗布ヘッド1における2つのスリット状の吐出口から、それぞれ塗工液A及びBを押し出し、傾斜したスライド面2上を重力の作用により自然流下させ、塗工液A及びBを多層化する。多層化した塗工液(塗工膜)は、ロール3によって走行する基材4上に転移させる。
多層化した塗工液(塗工膜)を基材4上に転移させた後、加熱乾燥させることにより、多層塗工膜を形成することができる。加熱乾燥温度は、通常、好ましくは50〜130℃、より好ましくは60〜120℃、さらに好ましくは70〜100℃である。加熱乾燥時間に特に制限は無いが、通常、1分〜5分間程度必要である。
このようにして形成された乾燥後の多層塗工膜の厚さは、通常、0.1μm〜10μm程度、好ましくは1μm〜5μmであり、各塗工液からなる層が分離している。
この層分離構造は、例えばスラブ型光導波路分光法を利用した界面紫外可視分光測定装置を用いて確認することができる。また、断面の走査型電子顕微鏡(SEM)や光学顕微鏡によっても確認することができる。
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によって何ら限定されるものではない。
製造例1
ヒドロキシエチルセルロース(ダイセル化学工業(株)製)35g、純水(関東化学(株)製)65g、及び識別用着色剤としてアントラキノン(関東化学(株)製)0.5gを室温で混合及び攪拌し、赤色の水系塗工液1(ヒドロキシエチルセルロースの濃度:約35質量%)を得た。
製造例2
ヒドロキシエチルセルロース(ダイセル化学工業(株)製)30g、ポリビニルアルコール「ゴーセノールL−5407」(混合防止成分、日本合成化学工業(株)製、けん化度=約34mol%、高アルコール親和性かつ疎水性)5g、メタノール(関東化学(株)製)65g、及び識別用着色剤としてインジゴ(関東化学(株)製)0.5gを混合及び攪拌し、青色のアルコール系塗工液1(ヒドロキシエチルセルロースの濃度:約30質量%、ポリビニルアルコールの含有量:固形分に対して約14質量%)を得た。
製造例3
ヒドロキシエチルセルロース(ダイセル化学工業(株)製)30g、メタノール(関東化学(株)製)70g、及び識別用着色剤としてインジゴ(関東化学(株)製)0.5gを混合及び攪拌し、青色のアルコール系塗工液2(ヒドロキシエチルセルロースの濃度:約30質量%)を得た。
上記製造例1〜3で得た水系塗工液1及びアルコール系塗工液1〜2の組成等について、以下の表1にまとめる。
Figure 2011206708
実施例1
上層塗工液(塗工液A)として製造例1で調製した水系塗工液1を、下層塗工液(塗工液B)として製造例2で調製したアルコール系塗工液1を用い、図1に示すスライドコーター(スライド面の傾斜角度;水平方向に対して25度、隣り合う吐出口の距離;8cm、塗工液を基材へ転位する部位に最も近い吐出口の中心と基材との距離;10cm)を使用して、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム「コスモシャイン(登録商標)A4100」(東洋紡績(株)製)上に塗工した。塗工後、80℃のオーブン中で1分間乾燥させることにより、2層塗工膜を形成した。
得られた2層塗工膜の断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、良好な積層構造が確認された。
比較例1
実施例1において、下層塗工液(塗工液B)として、アルコール系塗工液1の代わりに製造例3で調製したアルコール系塗工液2を用いたこと以外は同様にして、塗工膜を形成した。
得られた塗工膜の断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、層界面は無くなり、2層が混合しており、層分離構造を有していなかった。
本発明の製造方法は、有害物質であるトルエン等を用いない、いわゆるノントル系塗工液と水系塗工液とを用いるため、健康及び環境保全の観点からも、工業的に広く利用され得る方法である。また、本発明により得られる多層塗工膜には、例えばハードコート性や透明性等の各種機能を付与し得るため、各種光学フィルム、フィルムアンテナ、放熱シート、熱線反射フィルム等として利用可能である。
1:塗布ヘッド
2:スライド面
3:ロール
4:基材
A:上層塗工液
B:下層塗工液

Claims (7)

  1. 複数の塗工液を予め多層化し、多層化した塗工液を基材上に転移させる工程を有する多層塗工膜の製造方法において、接する2種の塗工液を親水性有機溶剤系塗工液と水系塗工液とに分け、少なくとも一方の塗工液に、該2種の塗工液の混合を防止する混合防止成分を予め混入しておくことにより、積層後の層界面を確保することを特徴とする、多層塗工膜の製造方法。
  2. 少なくとも一方の塗工液に混合防止成分を予め混入する方法が、(a)親水性有機溶剤に対する溶解度が50mg/100ml以上であり、且つ水に対する溶解度が1mg/100ml以下である混合防止成分を、親水性有機溶剤系塗工液に予め混入する方法、及び/又は(b)水に対する溶解度が50mg/100ml以上であり、且つ親水性有機溶剤に対する溶解度が1mg/100ml以下である混合防止成分を、水系塗工液に予め混入する方法である、請求項1に記載の多層塗工膜の製造方法。
  3. 親水性有機溶剤がアルコールである、請求項2に記載の多層塗工膜の製造方法。
  4. 親水性有機溶剤に対する溶解度が50mg/100ml以上であり、且つ水に対する溶解度が1mg/100ml以下である混合防止成分が、けん化度30〜45モル%のポリビニルアルコール、スルホン化度5〜20モル%のポリスチレンスルホン酸であり、水に対する溶解度が50mg/100ml以上であり、且つ親水性有機溶剤に対する溶解度が1mg/100ml以下である混合防止成分が、けん化度80〜100モル%のポリビニルアルコール、スルホン化度60〜100モル%のポリスチレンスルホン酸である、請求項2又は3に記載の多層塗工膜の製造方法。
  5. 接する2種の塗工液の少なくとも一方に混入する混合防止成分の含有量が、該混合防止成分を含む塗工液の固形分量に基づき、1〜30質量%である、請求項1〜4のいずれかに記載の多層塗工膜の製造方法。
  6. 複数の塗工液を予め多層化する際に傾斜したスライド面を使用し、該スライド面の傾斜角度が、水平方向に対して5〜40度である、請求項1〜5のいずれかに記載の多層塗工膜の製造方法。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法により得られる多層塗工膜。
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