JP2011202782A - 振子式吸振器 - Google Patents
振子式吸振器 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2011202782A JP2011202782A JP2010073084A JP2010073084A JP2011202782A JP 2011202782 A JP2011202782 A JP 2011202782A JP 2010073084 A JP2010073084 A JP 2010073084A JP 2010073084 A JP2010073084 A JP 2010073084A JP 2011202782 A JP2011202782 A JP 2011202782A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- rolling
- outer peripheral
- side member
- rotating body
- inner peripheral
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Images
Abstract
【課題】異音を発生させず、また小型・軽量化の可能な振子式吸振器を提供する。
【解決手段】回転体1は、内周側部材2と、その内周側部材2と同心円上にトルク伝達可能に配置されかつ周側部材2と所定の範囲相対的回転可能な外周側部材7とを備え、外周側部材7の内周面には、回転体1の半径方向で外側に湾曲して窪んだ複数の転動面8が回転体1の回転方向に並んで連続して形成され、それらの各転動面8に対応して転動体9が配置され、内周側部材2の外周部に、転動面8との間に転動体9を挟み付けて固定するための突起部10が形成され、回転体1の回転数が低回転数の場合に突起部10と転動面8とで転動体9を挟み付けて固定するように外周側部材7と内周側部材2とを相対回転させ、かつ高回転数の場合にその固定を解除するように外周側部材7と内周側部材2とを相対回転させる固定切替機構13を更に備えている。
【選択図】図1
【解決手段】回転体1は、内周側部材2と、その内周側部材2と同心円上にトルク伝達可能に配置されかつ周側部材2と所定の範囲相対的回転可能な外周側部材7とを備え、外周側部材7の内周面には、回転体1の半径方向で外側に湾曲して窪んだ複数の転動面8が回転体1の回転方向に並んで連続して形成され、それらの各転動面8に対応して転動体9が配置され、内周側部材2の外周部に、転動面8との間に転動体9を挟み付けて固定するための突起部10が形成され、回転体1の回転数が低回転数の場合に突起部10と転動面8とで転動体9を挟み付けて固定するように外周側部材7と内周側部材2とを相対回転させ、かつ高回転数の場合にその固定を解除するように外周側部材7と内周側部材2とを相対回転させる固定切替機構13を更に備えている。
【選択図】図1
Description
この発明は、回転する部材の振動を抑制する吸振器に関し、特に捩り方向の振動を低減するための吸振器に関するものである。
回転する部材に作用するトルクが変動し、それに伴って共振現象が生じると騒音や振動が激しくなるだけでなく、機械装置類の耐久性が低下する可能性がある。例えば内燃機関のクランクシャフトは、複数のシリンダで繰り返し生じる爆発力を回転運動に変換してトルクとして出力するためのものであるから、そのトルクは脈動する。そこで、従来、クランクシャフトにフライホイールを取り付けるだけでなく、そのフライホイールに吸振器を内蔵することが行われている。
その吸振器の一例として振子式のものが知られており、その例が特許文献1ないし3に記載されている。特許文献1に記載された吸振器は、フライホイールなどの回転体の外周側の部分に形成された転動室と、その内部に転動自在に収容されたボールあるいはローラ(コロ)などの転動体とを備えており、回転部材が回転している際に、転動体が捩り振動に共振して転動室の内部を転動し、その動的吸振作用によって捩り振動を吸収するように構成されている。また、特許文献2に記載された装置では、転動体が一例として扇形状に形成され、その要(かなめ)に相当する部分が回転自在にピン留めして単振子として構成されている。したがって、特許文献2に記載された構成では、その単振子が転動室の内部で揺動することにより、回転体(フライホイール)の捩り振動を吸収する。さらに、特許文献3に記載された吸振器は、特許文献1に記載されたものと同様に、回転体の外周側の部分に形成された転動室に転動体を移動自在に収容して構成されている。
このように、振子式の吸振器は、転動室が回転体の外周側の部分に形成されており、その内部に転動体が移動自在に収容されているから、回転体の回転速度が速い状態では、転動体が遠心力によって転動室の内壁面に押し付けられ、その内壁面に沿って移動する。しかしながら、回転体の回転速度が遅い場合には転動体に作用する遠心力が小さいために、回転体の回転に伴って自重落下して転動室を区画している各内壁面に当接し、これが原因で騒音もしくは異音が生じることがある。このような事態を防止するために、特許文献1に記載された吸振器では、転動室を形成している壁面のうち、回転体の半径方向で外側に位置する内壁面(すなわち、転動体の転動面)を、回転体の半径方向に移動できるように構成し、その転動面をその外周側に配置した弾性体によって転動体側に押圧するように構成されている。したがって、遠心力が小さい場合には、転動体が上記の弾性体の弾性力によって押さえ込まれ、その自由な移動が制限されるので、転動体の衝突による異音が防止される。
このような構成は、特許文献2に記載された吸振器においても同様であって、転動面がフライホイールの半径方向に移動できるようになっており、その転動面を板バネによって単振子に押し付けるように構成されている。これに対して特許文献3に記載された吸振器は、転動体が転動室の内壁面に衝突することを許容するように構成され、その衝突による異音を抑制するために、転動室の内面が樹脂によって形成されている。
上述したように特許文献1あるいは特許文献2に記載された構成は、回転体の回転に伴う遠心力が大きい場合には、転動体(もしくは単振子)の自由な移動を規制するように転動体(もしくは単振子)を押さえ付けるための弾性力を遠心力によって解消し、これとは反対に遠心力が小さい場合には上記の弾性力を転動体(もしくは単振子)に作用させるものである。したがって、その弾性力は、遠心力とは反対の方向に作用させる必要があり、そのために弾性部材あるいは弾性機構を回転体の半径方向で外側に配置している。その結果、特許文献1あるいは2に記載されているように構成すると、転動体が相対的に内周側に配置されることになり、転動体による慣性力およびそれに伴う吸振作用が小さくなる可能性がある。これを解消するためには、転動体の質量を大きくしたり、あるいは回転体の外径を大きくすることになり、そうすると装置の全体としての構成が大型化し、また重量が増大することになる。
一方、特許文献3に記載されているように、衝撃力を緩和するべく、転動室の内面を樹脂製とすると、回転体とは異なる材料を併用することになるために、製造のための工数や部品の種類が増加する可能性があり、さらには樹脂は金属に比較して亀裂が発生したり、劣化が進行しやすいので、装置の全体としての耐久性が低下する可能性がある。
この発明は上記の技術的課題に着目してなされたものであり、全体としての構成の大型化や重量の増大あるいは耐久性の低下を招来することなく、優れた吸振作用を生じ、また異音を抑制することのできる振子式吸振器を提供することを目的とするものである。
この発明は、上記の課題を解決するために、回転体の外周部に、その回転体の回転方向に相対的に移動可能な転動体が保持されている振子式吸振器において、前記回転体は、内周側部材と、その内周側部材と同心円上にトルク伝達可能に配置されかつ前記内周側部材と所定の範囲相対的回転可能な外周側部材とを備えるとともに、前記外周側部材の内周面には、前記回転体の半径方向で外側に湾曲して窪んだ複数の転動面が前記回転体の回転方向に並んで連続して形成され、それらの各転動面に対応して各転動面毎に前記転動体が配置され、前記内周側部材の外周部に、前記転動面との間に前記転動体を挟み付けて固定するための突起部が形成され、前記回転体の回転数が低回転数の場合に前記突起部と前記転動面とで前記転動体を挟み付けて固定するように前記外周側部材と前記内周側部材とを相対回転させ、かつ前記回転体の回転数が高回転数の場合に前記突起部と前記転動面とが前記転動体を挟み付けて固定しないように前記外周側部材と前記内周側部材とを相対回転させる固定切替機構を更に備えていることを特徴とするものである。
この発明における前記固定切替機構は、請求項2に記載してあるように、前記回転体が回転することにより遠心力を受ける質量体と、前記遠心力とは反対の方向に前記質量体に対して弾性力を付与する弾性部材と、前記遠心力が前記弾性力に打ち勝って前記質量体が前記回転体の半径方向で外側に移動することにより前記外周側部材と内周側部材とを、前記突起部と前記転動面とが前記転動体を挟み付けないように相対回転させるリンク機構とを備えた構成とすることができる。
あるいはこの発明における前記固定切替機構は、請求項3に記載してあるように、前記外周側部材と前記内周側部材とを連結するように設けられ、かつ前記回転体の回転数が低回転数の場合に前記突起部と前記転動面とで前記転動体を挟み付けて固定するように前記外周側部材と前記内周側部材とを相対回転させ、かつ前記回転体の回転数が高回転数の場合に前記突起部と前記転動面とが前記転動体を挟み付けて固定しないように前記外周側部材と前記内周側部材とを相対回転させるアクチュエータを含むことができる。
この発明においては、回転体の回転数が高回転数の場合、転動体の固定が解除されるので、転動体は遠心力によって、外側部材の内周面に形成された転動面に押し付けられ、かつその転動面に沿って移動する。したがって、転動体が回転体の回転とは異なる挙動を示すので、その吸振作用によって回転体の捩り振動が防止もしくは抑制される。また、回転体の回転数が低回転数になると、外周側部材と内周側部材とが相対的に回転し、その結果、外周側部材の内周面に形成された転動面と内周側部材の外周部に形成された突起部との間に転動体が挟み付けられて固定される。したがって、回転体の回転数もしくは回転方向などが変化しても、転動体が自由運動することがないので、異音が生じることはない。さらに、転動体もしくは転動面よりも更に外周側に配置するべき部材が特には存在しないので、転動体を回転体の可及的に外周側の部分に配置でき、その結果、転動体による慣性モーメント(すなわち制振効果)が相対的に大きくなる。そのため、転動体を小さくすることができ、また回転体の外径を小さくすることができるので、全体としての構成を小型化し、また軽量化することができる。
つぎにこの発明をより具体的に説明する。この発明に係る吸振器は、いわゆる振子式と称されるものであって、トルクを受けて回転する回転体に、その回転体に対して相対的に自由運動できる錘に相当する転動体を保持させて構成されている。この発明に係る吸振器では、その回転体が、相対的に所定の角度範囲、相対的に回転でき、かつ相互にトルク伝達可能に連結された二つの部材を備えている。その二つの部材は、互いに同心円上に配置された内周側部材と、その外周側に配置されている外周側部材とであり、その一例を図1に示してある。図1は、回転体1をその回転中心軸線の近辺で切断し、かつ軸線方向から見た模式的な断面図であって、内周側部材2は環状に形成されていて、トルクが入力され、あるいはトルクを出力する回転軸3に回転自在に嵌合させられている。その回転軸3には、半径方向で外側に突出したフランジ部4が形成され、そのフランジ部4の所定半径の円周上には一定間隔で複数の窓孔が形成され、その窓孔の内部にコイルスプリング5などの弾性を示す緩衝部材が配置されている。その緩衝部材(以下、仮にコイルスプリング5とする)の外径は、フランジ部4の厚さより大きく、フランジ部4の左右両側に突出している。
これに対して、内周側部材2には、フランジ部4を挿入させたスリット部6が形成されており、そのスリット部6の互いに対向する内壁面のうち前記窓孔に対応する位置は、コイルスプリング5の左右両側の部分を挿入させてコイルスプリング5を包持している凹部が形成されている。その凹部は前記窓孔とほぼ同形状の窪み部分であり、コイルスプリング5の前後両端部は、窓孔の両端部および各凹部の両端部に当接している。したがって、回転軸3と内周側部材2とが相対的に回転することにより、前記窓孔と凹部とが重なる長さが短くなって、コイルスプリング5が窓孔の一方の端部と凹部の他方の端部とによって圧縮されるようになっている。すなわち、コイルスプリング5が緩衝作用を行い、これがダンパースプリングとなっている。したがって、内周側部材2と外周側部材7とは、前記窓孔と凹部とが一致している状態からコイルスプリング5を完全に圧縮するまでの範囲で相対回転できるようになっている。
図1に示す例では、外周側部材7は、中空の環状に形成され、前記内周側部材2を覆うように回転軸3の外周側に取り付けられ回転軸3と一体化されている。その外周側部材7の内周面には、複数の転動面8が形成されている。これらの転動面8は、後述する転動体9の外周面の曲率半径より大きい曲率半径の円弧面であって、図1に示すように、回転体1の半径方向で外側に窪んだいわゆる凹曲面として形成されている面である。そして、その円弧面の幅(円弧の両端部を結んだ弦の長さ)は、転動体9の外径程度もしくはそれより幾分長く設定されている。このような転動面8が外周側部材7の内周面に円周方向に並んで連続して形成されていることにより、外周側部材7の内周面はその円周方向にいわゆる波状に連続した凹凸面となっている。
上記の各転動面8に接するように転動体9が配置されている。その転動体9は、回転体1に加速度が生じた場合に、転動面8に沿って転動することにより、言い換えれば回転体1とは異なる動作をすることにより吸振作用を行う質量体であり、球体あるいは円柱軸状(ローラ状)に形成されている。その転動体9を転動面8との間に挟み付けて固定するための突起部10が、前述した内周側部材2の外周部に形成されている。その突起部10は、回転体1の回転数が低回転数の場合に内周側部材2と外周側部材7との相対的な回転が生じて、転動体9をそれぞれに対応する転動面8との間に挟み込むように構成された部分であり、要は、内周側部材2の外周部にその外周面から半径方向で外側に突出した部分であればよい。図1に示す例では、突起部10は、内周側部材2の外周面にその円周方向に一定の間隔を空け、かつ軸線方向に延びた複数の突条として形成されている。これらの突起部10は、前述した各転動面8同士の境界部分と回転体1の回転中心とを結んだ線上に配置されている。言い換えれば、各転動面8の中心角度と各突起部10の開き角度とがほぼ等しくなっている。
内周側部材2と外周側部材7とに相対回転が生じていないいわゆる定常状態では、各転動面8同士の境界部分と上記の突起部10とが半径方向で対向しており、したがって内周側部材2の外周面と外周側部材7の内周面との間に環状の空間部分は、これらの境界部分と突起部10とで複数の転動室に区画され、それぞれの転動室に転動体9が一つずつ配置されている。また、各転動面8同士の境界部分とそれに対向する突起部10の先端との間隔は、転動体9の外径より小さくなっている。したがって、各転動体9は各転動面8同士の境界部分と突起部10とによって転動室内に保持されている。
つぎに、内周側部材2と外周側部材7とに相対回転を生じさせて、転動面8と突起部10とによって転動体9を挟み付けて固定する機構について説明する。前述したように回転軸3と内周側部材2との間、すなわち回転軸3に一体化されている外周側部材7と内周側部材2との間にはダンパー機構を構成しているコイルスプリング5が配置されているので、そのコイルスプリング5を大きく圧縮する捩りトルクが回転体1に作用していない状態では、各突起部10が各転動面8同士の境界部分に対向している。これが定常状態であり、各転動室の形状にゆがみがなく、各転動室の内部で転動体9が自由に移動できる状態になっている。転動体9を固定するための機構は、その定常状態から内周側部材2と外周側部材7との相対的な回転を生じさせるための機構であり、内周側部材2と外周側部材7との間に設けられ、これらの部材2,7に捩りトルクを付与するように構成されている。
その機構の一例を図1および図2に示してある。前述した外周側部材7の内周面のうち、前記転動体9に軸線方向で隣接する所定の箇所に、押圧力を生じる弾性体(例えばスプリング)11が、回転体1のほぼ中心部に向けて取り付けられており、その弾性体11に錘(マス)12が取り付けられている。この錘12は、回転体1が回転することによる遠心力を、弾性体11の押圧力を減殺する荷重とするためのものであり、この錘12と前記内周側部材2とは、前記弾性体による押圧力を内周側部材2を回転させるトルクとして内周側部材2に伝達するリンク機構によって連結されている。このリンク機構は、テコ・レバー機構、テコ・スライダー機構、カム機構など、直線的な推力をトルクに変化できる機構であればよく、図1および図2に示す例では、カム機構が採用されている。すなわち、内周側部材2の側面には、楕円形状もしくは卵形状のカム13が取り付けられて一体化されており、そのカム13の先端部側の外面に、前記錘12に一体化されているロッド14が突き当てられている。したがってロッド14がカム13の回転中心から離れた先端部を押圧するので、弾性体11の弾性力が内周側部材2を外周側部材7に対して回転させるモーメント(トルク)として作用するように構成されている。そして、弾性体11の弾性力は、回転体1が低回転数で回転している状態で錘12による遠心力によって幾分減殺されるとしても、上記のモーメント(トルク)が、前述したコイルスプリング5によるトルクより大きくなるように設定されている。すなわち、いわゆる低回転数の状態もしくは回転しない状態では、内周側部材2が外周側部材7に対して回転して前記突起部10が各転動面8同士の境界部分に対向する位置から円周方向にずれ、突起部10と転動面8との間に転動体9を挟み付けるように構成されている。これとは反対に回転体1の回転数が相対的に高回転数になった場合には、錘12による遠心力が大きくなって弾性体11による押圧力が大きく減殺され、その結果、その押圧力によるモーメント(トルク)よりも前記コイルスプリング5によるトルクが大きくなり、転動体9の固定が解除されるように構成されている。
つぎに上述した構成の吸振器の作用について説明する。上記の内周側部材2と外周側部材7とのいずれか一方がエンジンなどの動力源(図示せず)に連結されて入力要素となり、これに対して他方が図示しない他の部材にトルクを出力する出力要素となるようにして所定の動力伝達経路に組み込まれる。その回転体1が一定の高速回転をしている状態では、前述した錘12によって生じる遠心力が大きく、その結果、弾性体11による押圧力が大きく減殺される。これに対して内周側部材2と外周側部材7との間にはコイルスプリング5によるトルクが作用するので、コイルスプリング5によるトルクが弾性体11によるトルクに打ち勝ち、内周側部材2と外周側部材7とは、コイルスプリング5を配置してある窓孔と凹部とが一致するいわゆる定常状態に保持されている。すなわち、内周側部材2と外周側部材7とには相対回転が生じず、図1に示すように、各転動室の形状にゆがみがない状態に保持される。
このように、回転数がある程度以上の高回転数であれば、転動体9の固定が解除され、転動体9は遠心力によって転動面8に押し付けられ、かつその状態で転動面8に沿って自由に転動できる状態になる。そのため、ある程度以上の高回転数の状態で、回転体1の回転数に変化が生じると、転動体9は回転体1の回転数の変化とは異なった挙動を行い、そのような吸振作用によって回転体1もしくはこれを含む動力伝達経路の捩り振動が抑制もしくは防止される。その場合、上述した構成では、転動体9や転動面8の外周側には、何らの機構も配置する必要がないので、転動体9を回転体1の可及的に外周側に配置することができる。そして、転動体9によって生じる慣性モーメントは、その質量と回転体1の回転中心からの半径に比例するから、転動体9による慣性モーメントが大きくなる。そのため、転動体9を相対的に小さいものとしても必要十分な吸振作用を得ることができ、ひいては、全体としての構成を小型・軽量化できる。
一方、回転体1の回転数が低回転数になると、前述した錘12による遠心力が小さくなる。そのため、弾性体11の押圧力によるモーメント(トルク)が増大し、これが前述したコイルスプリング5によるトルクより大きくなると、内周側部材2と外周側部材7との間に相対的な回転が生じる。その結果、内周側部材2の外周部に設けられている突起部10が、各転動面8同士の境界部分に対向している位置からずれるので、転動室の形状にゆがみが生じ、各転動体9が突起部10と転動面8との間に挟み込まれて固定される。その状態を図3に模式的に示してある。このように、遠心力が小さいことにより転動体9の自由な移動が遠心力によっては規制されてないとしても、転動体9は突起部10と転動面8との間に挟み込まれて固定されるから、回転数の変化などが生じても転動体9が内周側部材2の外周面や外周側部材7の内周面のいずれかの箇所に衝突したり、それにともなって異音が生じたりすることが回避される。したがって、上述した弾性体11および錘12ならびにロッド14およびカム13、あるいはこれらに加えて前記コイルスプリング5が、この発明における固定切替機構を構成している。
なお、この発明は上述した具体例に限定されないのであり、転動体を選択的に固定する固定切替機構は、遠心力を利用せずに、回転体1の回転数に応じて切り替わる手段によって構成することもできる。例えば、前述した弾性体11および錘12を、油圧シリンダやエアシリンダなどの流体圧アクチュエータや、電磁気力で動作する電動アクチュエータなどのアクチュエータに置き換え、低回転数の場合にはそのアクチュエータによって押圧力を発生させて内周側部材2と外周側部材7との相対回転を生じさせ、高回転数の場合には、その押圧力を低下させて内周側部材2と外周側部材7との相対回転を解消するように構成することができる。
この発明における固定切替機構はこのようなアクチュエータ、あるいはそれに適宜のリンク機構を加えた機構を含む。固定切替機構を上記のアクチュエータによって構成すれば、転動体の固定およびその解除の制御の自由度が高くなるから、過渡的な遠心力や捩りトルクの影響を排除することができる。例えばこの発明に係る吸振器を車両に搭載し、その車両の急発進や急停止の場合に回転数が急激に増大したり、回転体に作用する捩りトルクが大きくなったりするが、そのような場合であっても固定切替機構を直前の状態に維持することにより、転動体の固定状態あるいは自由移動状態を維持することができる。さらに、動力伝達経路にトルクコンバータなどの他の振動吸収手段が配置され、その振動吸収手段が有効に機能している場合には転動体を固定し、これとは反対にロックアップクラッチが係合してトルクコンバータなどの他の振動吸収手段が機能していない場合には、転動体の固定を解除するなど、振動の発生の状況に応じて転動体の固定とその解除とを適宜に選択することができる。
また、上記の具体例では、自由に移動できるボールやローラを転動体としたが、この発明ではピン留めして揺動自在に構成した転動体であってもよい。
1…回転体、 2…内周側部材、 3…回転軸、 4…フランジ部、 5…コイルスプリング、 6…スリット部、 7…外周側部材、 8…転動面、 9…転動体、 10…突起部、 11…弾性体(例えばスプリング)、 12…錘(マス)、 13…カム、 14…ロッド。
Claims (3)
- 回転体の外周部に、その回転体の回転方向に相対的に移動可能な転動体が保持されている振子式吸振器において、
前記回転体は、内周側部材と、その内周側部材と同心円上にトルク伝達可能に配置されかつ前記内周側部材と所定の範囲相対的回転可能な外周側部材とを備えるとともに、
前記外周側部材の内周面には、前記回転体の半径方向で外側に湾曲して窪んだ複数の転動面が前記回転体の回転方向に並んで連続して形成され、
それらの各転動面に対応して各転動面毎に前記転動体が配置され、
前記内周側部材の外周部に、前記転動面との間に前記転動体を挟み付けて固定するための突起部が形成され、
前記回転体の回転数が低回転数の場合に前記突起部と前記転動面とで前記転動体を挟み付けて固定するように前記外周側部材と前記内周側部材とを相対回転させ、かつ前記回転体の回転数が高回転数の場合に前記突起部と前記転動面とが前記転動体を挟み付けて固定しないように前記外周側部材と前記内周側部材とを相対回転させる固定切替機構を更に備えている
ことを特徴とする振子式吸振器。 - 前記固定切替機構は、前記回転体が回転することにより遠心力を受ける質量体と、前記遠心力とは反対の方向に前記質量体に対して弾性力を付与する弾性部材と、前記遠心力が前記弾性力に打ち勝って前記質量体が前記回転体の半径方向で外側に移動することにより前記外周側部材と内周側部材とを、前記突起部と前記転動面とが前記転動体を挟み付けないように相対回転させるリンク機構とを備えていることを特徴とする請求項1に記載の振子式吸振器。
- 前記固定切替機構は、前記外周側部材と前記内周側部材とを連結するように設けられ、かつ前記回転体の回転数が低回転数の場合に前記突起部と前記転動面とで前記転動体を挟み付けて固定するように前記外周側部材と前記内周側部材とを相対回転させ、かつ前記回転体の回転数が高回転数の場合に前記突起部と前記転動面とが前記転動体を挟み付けて固定しないように前記外周側部材と前記内周側部材とを相対回転させるアクチュエータを含むことを特徴とする請求項1に記載の振子式吸振器。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2010073084A JP2011202782A (ja) | 2010-03-26 | 2010-03-26 | 振子式吸振器 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2010073084A JP2011202782A (ja) | 2010-03-26 | 2010-03-26 | 振子式吸振器 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2011202782A true JP2011202782A (ja) | 2011-10-13 |
Family
ID=44879630
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2010073084A Pending JP2011202782A (ja) | 2010-03-26 | 2010-03-26 | 振子式吸振器 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2011202782A (ja) |
Cited By (6)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP5555784B1 (ja) * | 2013-02-26 | 2014-07-23 | 株式会社エクセディ | ダイナミックダンパ装置 |
JP2016205519A (ja) * | 2015-04-23 | 2016-12-08 | トヨタ自動車株式会社 | 捩り振動低減装置 |
JP2017133548A (ja) * | 2016-01-26 | 2017-08-03 | トヨタ自動車株式会社 | 捩り振動低減装置 |
JP2019163817A (ja) * | 2018-03-20 | 2019-09-26 | 株式会社エクセディ | 動力伝達装置 |
JP2019163815A (ja) * | 2018-03-20 | 2019-09-26 | 株式会社エクセディ | 動力伝達装置 |
CN112303146A (zh) * | 2019-08-02 | 2021-02-02 | 株式会社艾科赛迪 | 旋转装置及其定心结构 |
-
2010
- 2010-03-26 JP JP2010073084A patent/JP2011202782A/ja active Pending
Cited By (11)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP5555784B1 (ja) * | 2013-02-26 | 2014-07-23 | 株式会社エクセディ | ダイナミックダンパ装置 |
WO2014132906A1 (ja) * | 2013-02-26 | 2014-09-04 | 株式会社エクセディ | ダイナミックダンパ装置 |
CN105308355A (zh) * | 2013-02-26 | 2016-02-03 | 株式会社艾科赛迪 | 动态阻尼器装置 |
US10047844B2 (en) | 2013-02-26 | 2018-08-14 | Exedy Corporation | Dynamic damper device |
JP2016205519A (ja) * | 2015-04-23 | 2016-12-08 | トヨタ自動車株式会社 | 捩り振動低減装置 |
JP2017133548A (ja) * | 2016-01-26 | 2017-08-03 | トヨタ自動車株式会社 | 捩り振動低減装置 |
JP2019163817A (ja) * | 2018-03-20 | 2019-09-26 | 株式会社エクセディ | 動力伝達装置 |
JP2019163815A (ja) * | 2018-03-20 | 2019-09-26 | 株式会社エクセディ | 動力伝達装置 |
JP7144165B2 (ja) | 2018-03-20 | 2022-09-29 | 株式会社エクセディ | 動力伝達装置 |
JP7144166B2 (ja) | 2018-03-20 | 2022-09-29 | 株式会社エクセディ | 動力伝達装置 |
CN112303146A (zh) * | 2019-08-02 | 2021-02-02 | 株式会社艾科赛迪 | 旋转装置及其定心结构 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
KR102265136B1 (ko) | 개선된 댐핑 수단을 구비하는 이중 댐핑 플라이휠 | |
JP6147752B2 (ja) | 改良ガイド装置を備えた振り子式振動子タイプのダンパシステム | |
US8021234B2 (en) | Spring seat and damper disk assembly | |
JP2011202782A (ja) | 振子式吸振器 | |
JP5382207B2 (ja) | ダイナミックダンパ | |
WO2015020102A1 (ja) | 遠心振子式吸振装置 | |
CN105042030B (zh) | 用于无游隙的传动级的齿轮以及配设有所述齿轮的传动级 | |
US8029370B2 (en) | Spring seat and damper disk assembly | |
US20170227086A1 (en) | Damper, in particular for an automobile clutch | |
KR20200138232A (ko) | 마찰 장치를 가진 진자 로커 댐퍼를 구비한 클러치 디스크 및 마찰 클러치 | |
WO2015020086A1 (ja) | 遠心振子式吸振装置 | |
US20080036128A1 (en) | Spring seat and spring assembly | |
JP6617739B2 (ja) | 遠心振り子式ダンパ装置 | |
JP2001074102A (ja) | トルク変動吸収装置 | |
EP2796741A1 (en) | Torsional vibration dampening device | |
JP2009150471A (ja) | ダンパ装置 | |
JP2009115262A (ja) | フライホイール | |
JP2014206237A (ja) | 捩り振動減衰装置 | |
JP2012057701A (ja) | ダイナミックダンパ | |
JP2020133814A (ja) | 回転装置 | |
JP5030846B2 (ja) | 捩り振動低減装置 | |
JP7215983B2 (ja) | 動力伝達装置 | |
WO2016167013A1 (ja) | 動吸振装置 | |
WO2018037821A1 (ja) | 振動低減装置 | |
JP2019019918A (ja) | 減衰機構 |