JP2011201303A - 樹脂シート被覆金属積層体およびその製造方法 - Google Patents

樹脂シート被覆金属積層体およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】耐候性、エンボス転写性、エンボス耐熱性、加工性、表面硬度について優れた樹脂シート被覆金属積層体の提供。
【解決手段】構造の一部に下記式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含むポリカーボネート樹脂を含む樹脂層(A層)10を、金属板50上に設けることを特徴とする樹脂シート被覆金属積層体110。
Figure 2011201303

(但し、前記式(1)で表される部位が−CH−O−Hの一部である場合を除く。)
【選択図】図1

Description

本発明は、電気電子機器または携帯電話の筐体、合板製家具または鋼製家具のパネル材、ユニットバスの壁または天井のパネル材、屋内ドアまたはパーティションの建材、更には比較的耐候性を要求される玄関ドアおよびその周辺の垂直板部材等に好適に用いることができ、意匠性を高めるエンボス加工性にも優れた樹脂シート被覆金属積層体およびその製造方法に関する。
従来前記用途にはエンボス意匠を付与した軟質塩化ビニル系樹脂シート(以下において「軟質PVCシ−ト」という。)を合成樹脂成形品または合板、木質繊維板および金属板等に被覆したものおよび塗装金属板などが用いられて来た。
また、印刷意匠を有するものでは、紫外線吸収剤を添加した透明なアクリルフィルムを軟質PVCシートの印刷層の上に被覆した構成も用いられていた。
軟質PVCシートは各種の優れた特徴を有するのであるが、近年塩化ビニル系樹脂の一部の安定剤に起因する重金属化合物の問題、一部の可塑剤または安定剤に起因するVOC問題および内分泌撹乱作用の問題、並びに燃焼時に塩化水素ガスその他の塩素含有ガスを発生する問題等から、塩化ビニル系樹脂はその使用に制限を受けるようになって来た。
そこで、本出願人は軟質PVCシートに代わる樹脂シートとして、ポリエステル系樹脂を用いた高表面硬度を有する樹脂シート被覆金属積層体およびポリオレフィン系樹脂を用いた豊富な色柄に対応した樹脂シート被覆金属積層体等を上市してきた。
さらに、本出願人は、芳香族ポリカーボネート系樹脂を主成分とする、耐候性およびエンボス加工性に優れた樹脂シートを開発すべく検討を行ってきた。
特許文献1は、芳香族ポリカーボネート系樹脂に、特定の紫外線吸収剤を含有させて耐候性を向上させたものである。
特許文献2は、透明な芳香族ポリカーボネート系樹脂層の下層に特定の光輝性粒子を含有した透明樹脂からなる樹脂層を備え、光輝性意匠を持たせたものである。
特許文献3は、芳香族ポリカーボネート系樹脂にポリエステル系樹脂をブレンドして引張弾性率を高くすることでエンボス加工性を向上させたものである。
特開2007−1022号公報 特開2007−326314号公報 特開2008−188970号公報
しかし、特許文献1に開示された技術では、黒など濃色に着色して使用したり、若干の色調変化が許容される用途であったりすれば極めて好適に使用できるが、白など淡色に着色して使用したり、色調変化が許容され難い用途であったりする場合で、なおかつ使用期
間が非常に長い場合は十分と言えない。
特許文献2に開示された技術では、透明表層の下層に光輝性粒子分散層を設けることで、深みのある光輝性意匠が得られるが、やはり下層が淡色である場合は長期間の経時的変化として黄変が徐々に進行して視認されるため、さらなる改良が求められている。
特許文献3に開示された技術では、シートの樹脂組成を改良することでエンボス加工性を改良でき、特にはユニットバス等エンボス耐熱性が要求される用途にも好適に用いられるようになったが、こうした用途は一般に淡色に着色して用いることが多く、さらなる耐候性が求められている。
従来は前記の技術をもって、前記の用途にかかる要求事項を満足できていたのに対し、商品の長寿命化、高意匠化および適用箇所の拡大などにより、これまでの性能に加えて、より一層の耐候性が求められるようになったのである。
一般に芳香族ポリカーボネート系樹脂は日射または白色光を受光すると、近紫外〜可視光波長領域で光吸収が起こり、分子構造が破壊され徐々に黄変劣化が進行する。該黄変劣化を抑制するために種々の知見を用いて紫外線吸収剤が芳香族ポリカーボネート系樹脂に添加されている。
しかし、紫外線吸収剤自体が光吸収で徐々に劣化するため、その効能は永続的なものではない。前記のさらなる課題を解決するためには、層構造および樹脂組成などを根本的に見直して、抜本的な解決方法を見いだすことが必要である。
そこで本発明は、芳香族ポリカーボネート系樹脂を主成分とする樹脂シートでは抜本的な解決が困難であった耐候性を改良し、かつエンボス加工性等製品に要求される各種性能を満足する樹脂シートを被覆した金属積層体(樹脂シート被覆金属積層体)を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、特定のポリカーボネート樹脂からなる樹脂層と、金属層とを積層することにより、耐候性、エンボス転写性、エンボス耐熱性、加工性および表面硬度がバランス良く優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
以下、本発明について説明する。なお、本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を明細書中に付記することがあるが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
本発明において「主成分とする」とは、当該部位における対象成分の比率が50重量%以上、好ましくは75重量%以上であることをいう。
また本発明において「シート」とは、厚さに関して一般に「フィルム」と呼称される範囲と「シート」と呼称される範囲との両方を包含し、便宜上本発明においては両者を「シート」と単一呼称する。
さらに、本発明において「可視光透過性を有する」層とは、当該層を通じて、その背面にある他の層又は金属層(50)が視認できるという意味である。
第1の発明によれば、構造の一部に下記式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含むポリカーボネート樹脂を含む樹脂層(A層)を、金属層
上に設けることを特徴とする樹脂シート被覆金属積層体が提供される。
Figure 2011201303
但し、前記式(1)で表される部位が−CH−O−Hの一部である場合を除く。
第2の発明によれば、第1の発明において、前記ジヒドロキシ化合物が、下記式(2)で表されるジヒドロキシ化合物である。
Figure 2011201303
第3の発明によれば、第1または第2の発明において、前記A層の100℃における引張弾性率が600MPa以上、6000MPa以下である。
第4の発明によれば、第1から第3のいずれか1の発明において前記A層と前記金属層の層間に、着色層(B層)を設ける。
第5の発明によれば、第4の発明において、前記B層の23℃における引張破断伸びが100%以上、350%以下である。
第6の発明によれば、第4または第5の発明において、前記B層が、架橋ゴム弾性体成分を含むアクリル系樹脂を主成分とする熱可塑性樹脂を含む。
第7の発明によれば、第6の発明において、前記架橋ゴム弾性体成分が、アクリル樹脂系架橋ゴム弾性体成分を核にして、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂をグラフト重合して得られるコア・シェル型の共重合組成物である。
第8の発明によれば、第1から第7のいずれか1の発明において前記A層と前記金属層の層間に、可視光透過層(C層)を設ける。
第9の発明によれば、第8の発明において前記C層が、可視光透過性を有する熱可塑性樹脂及び平板状の光揮性粒子を含み、前記平板状の光揮性粒子が前記可視光透過性を有する熱可塑性樹脂100重量%に対して、0.5重量%以上、5.0重量%以下である。
第10の発明によれば、第1から第9のいずれか1の発明において前記A層と前記金属層の層間に、印刷層(D層)を設ける。
第11の発明によれば、第1から第10のいずれか1の発明において前記A層に、エンボスが付与される。
第12の発明によれば、第1から第11のいずれか1の発明において前記A層の、前記
金属層側とは反対の表面に外層(E層)を設ける。
第13の発明によれば、第1から第12のいずれか1の発明にかかる樹脂シート被覆金属積層体は、前記A層からなる樹脂シート、または、前記A層と、前記B層、前記C層、前記D層、及び前記E層からなる群より選ばれた少なくとも1層とからなる樹脂シートを前記金属層上にラミネートすることにより製造される。
さらに、本発明のその他の要旨は、第1から第12のいずれか1の発明にかかる樹脂シート被覆金属積層体を含む玄関ドア、建材、ユニットバス、鋼製家具部材、電気電子機器筐体、及び自動車内装材にある。
本発明の樹脂シート被覆金属積層体によれば、従来公知の芳香族ポリカーボネート系樹脂を主成分とする樹脂シートと比べて、黄変劣化に関する耐候性が著しく改良されるため、玄関ドアまたはその周辺の垂直板部材といった、長期にわたり比較的耐候性が要求される用途にも好適に用いることができる。
さらに本発明の樹脂シート被覆金属積層体の表層を構成するA層は、エンボス意匠の付与が容易であり、B層は様々な色柄に着色して多品種少量生産に対応することが可能であり、A層と金属層の層間に、光輝性意匠を付与することが可能な可視光透過層(C層)および印刷層(D層)等を設けて、各種意匠性を高めることにも対応できる。
また、本発明の樹脂シート被覆金属積層体は、好ましい態様として、A層の、金属層側とは反対の表面に可視光透過性を有する外層を設けることで、表面硬度の向上、および特にエンボス意匠を付与したA層の保護が可能となり、より意匠性を高めることができる。
本発明のこのような作用及び利得は、次に説明する発明を実施するための最良の形態から明らかにされる。
図1(a)〜(e)は、本発明の樹脂シート被覆金属積層体の各種態様を示す概略断面図である。 図2は、エンボス付与機の概略側面図である。 図3は、実施例で付与したエンボス柄の模式図である。
以下本発明を図面に示す実施形態に基づき説明する。
図1(a)は、本発明の樹脂シート被覆金属積層体の基本構成をなす実施形態(110)を模式的に示した断面図であって、A層(10)/金属板(50)を積層する。
図1(b)は、基本構成に着色意匠を付与した実施形態(120)を模式的に示した断面図であって、A層(10)/B層(20)/金属層(50)を積層する。
図1(c)は、基本構成に着色意匠と光輝性意匠を付与した実施形態(130)を模式的に示した断面図であって、A層(10)/C層(30)/B層(20)/金属層(50)を積層する。
図1(d)は、基本構成に着色意匠と印刷意匠を付与した実施形態(140)を模式的に示した断面図であって、A層(10)/D層(40)/B層(20)/金属層(50)
を積層する。
図1(e)は、基本構成に着色意匠とA層(10)側表面にエンボス意匠を付与した実施形態(150)を模式的に示した断面図であって、A層(10)/B層(20)/金属層(50)を積層する。
図1(a)〜(e)は代表例を例示したに過ぎず、これら意匠性付与は複数を組み合わせてもよいし、また本発明の目的を損なわない範囲で別の層を配置して積層することができる。
図2は、軟質PVCシートへエンボス意匠を付与するために用いられるエンボス付与機(200)である。加熱ロール1上にA層(10)のみ、又はA層(10)/B層(20)の順に重ねて巻き取られて積層加熱された積層シート7が、テイクオフロール2を経て、赤外線ヒータ3により所定の処理を施され、ニップロール4、エンボスロール5および冷却ロール6へと送られる。
本発明の樹脂シート被覆金属積層体におけるA層とB層(場合により他の中間層を含む)との積層一体化は、エンボス付与機(200)内の加熱ロール1を通過する際の熱融着積層により行うことが可能である。事前に別工程でもって積層一体化を行うことも可能ではあるが、工程が煩雑になったり接着剤等の副資材が必要になったりするため、前記方法を選択することが好ましい。
C層または別の中間層を配置する場合は、A層またはB層と事前に積層一体化させておいてもよいし、エンボス付与機へ直接複数の原反を供給してもよい。あるいは印刷意匠を付与したA層又はB層を供給してもよい。
<ポリカーボネート樹脂層(A層)>
A層(10)は、本発明の樹脂シート被覆金属積層体の表層を構成するものであって、必要に応じエンボス付与機(200)にてエンボス意匠が付与される層である。
本発明の樹脂シート被覆金属積層体におけるA層(10)は、ポリカーボネート樹脂を含む。A層(10)に用いるポリカーボネート樹脂としては、構造の一部に下記式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含むポリカーボネート樹脂であり、典型的な実施形態においては可視光透過性を有する。
Figure 2011201303
但し、前記式(1)で表される部位が−CH−O−Hの一部である場合を除く。すなわち、前記ジヒドロキシ化合物は、二つのヒドロキシル基と、更に前記式(1)の部位を少なくとも含むものをいう。
構造の一部に前記式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物としては、分子内に式(1)で表される構造を有していれば特に限定されるものではなく、分子内にヘテロ原子として酸素原子を有し、この酸素原子が水酸基の一部ではないものである。
具体的には、例えば、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フル
オレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−イソプロピルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−イソブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−tert−ブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−シクロヘキシルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−フェニルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジメチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−tert−ブチル−6−メチルフェニル)フルオレン9,9−ビス(4−(3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロポキシ)フェニル)フルオレン等、側鎖に芳香族基を有し、主鎖に芳香族基に結合したエーテル基を有する化合物、下記式(2)で表されるジヒドロキシ化合物に代表される無水糖アルコール類および下記式(3)で表されるスピログリコールに代表される環状エーテル構造を有するジヒドロキシ化合物類などのように、エーテル構造を有するものが挙げられる。
無水糖アルコール類は、通常、糖類またはその誘導体を脱水環化することにより得られる複数のヒドロキシ基を有するものであって、環状エーテル構造を有するジヒドロキシ化合物類は、環状エーテル構造を有する構造部分と2つのヒドロキシ基を有する化合物である。
無水糖アルコール類も環状エーテル構造を有するジヒドロキシ化合物類も、いずれもヒドロキシ基は環状構造に直接結合していてもよいし、置換基を介して環状構造に結合していてもよい。
前記環状構造は単環であっても多環であってもよいが、無水糖アルコール類、および分子内に環状エーテル構造を有するジヒドロキシ化合物類では、環状構造が複数あるものが好ましく、更には環状構造を2つ有するものが好ましく、特にはそれら2つの環状構造が同じものであることが好ましい。
より具体的には、下記式(2)で表されるジヒドロキシ化合物としては、例えば、立体異性体の関係にある、イソソルビド、イソマンニドおよびイソイデットが挙げられる。
また、環状エーテル構造を有するジヒドロキシ化合物類としては、下記式(3)に代表される環状エーテル構造を有するジヒドロキシ化合物が挙げられる。環状エーテル構造を有するジヒドロキシ化合物としては、例えば、3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5.5)ウンデカン(慣用名:スピログリコール)、3,9−ビス(1,1−ジエチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5.5)ウンデカン、3,9−ビス(1,1−ジプロピル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5.5)ウンデカンおよび式(4)で表される化合物が挙げられる。
これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
Figure 2011201303
Figure 2011201303
式(3)中、R〜Rはそれぞれ独立に、炭素数1から炭素数3のアルキル基である。
Figure 2011201303
前記式(2)で表されるジヒドロキシ化合物は、生物起源物質を原料として糖質から製造可能なエーテルジオールである。とりわけ、イソソルビドは、澱粉から得られるD−グルコースを水添してから脱水することにより安価に製造可能であって、資源として豊富に入手することが可能である。これら事情により、イソソルビドが最も好ましい。
A層(10)に用いるポリカーボネート樹脂は、前記式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位以外の構造単位を、更に含んでいてもよい。前記式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位以外の構造単位を更に含むことで、加工容易性および耐衝撃性を改良することが可能となる。
前記式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位以外の構造単位のなかでも、芳香族環を有さないジヒドロキシ化合物に由来する構造単位が好ましく用いられる。
より具体的に例えば、国際公開第2004/111106号に記載の脂肪族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位および国際公開第2007/148604号パンフレットに記載の脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を挙げることができる。
前記脂肪族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の中でも、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオールおよび1,6−ヘキサンジオールから選ばれる少なくとも1種のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含むことが好ましい。
前記脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の中でも、5員環構造又は6員環構造を含むものであることが好ましい。6員環構造は共有結合によって椅子形又は舟形に固定されていてもよい。
5員環構造又は6員環構造である脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含むことにより、得られるポリカーボネートの耐熱性を高くすることができる。
脂環式ジヒドロキシ化合物に含まれる炭素原子数は通常70以下であることが好ましく、50以下であることがより好ましく、30以下であることがさらに好ましい。
前記5員環構造又は6員環構造を含む脂環式ジヒドロキシ化合物としては、上述の国際公開第2007/148604号に記載のものを挙げることができる。
中でも、シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、アダマンタンジオール及びペンタシクロペンタデカンジメタノールを好適に例示することができる。これらの中でも、シクロヘキサンジメタノール又はトリシクロデカンジメタノールが経済性および耐熱性などから最も好ましい。これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
尚、シクロヘキサンジメタノールの中でも、工業的に入手が容易である、1,4−シクロヘキサンジメタノールが好ましい。
前記ポリカーボネート樹脂の、構造の一部に前記式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の含有割合としては、好ましくは30モル%以上、より好ましくは50モル%以上であって、また、好ましくは90モル%以下、より好ましくは80モル%以下であればよい。
このような範囲とすることによって、カーボネート構造に由来する着色、生物起源物質を原料に用いる故に微量に含有する不純物に由来する着色等を抑制することができ、通常A層(10)に要求される透明さを損なわない可能性がある。また、構造の一部に前記式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位のみで構成されるポリカーボネート樹脂等では達成が困難な、適当な成形加工性、機械強度および耐熱性等のバランスを取ることができる。
前記ポリカーボネート樹脂は、構造の一部に前記式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、更に脂肪族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位及び/又は脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位とからなることが好ましいが、本発明の目的を損なわない範囲で、更にそれら以外のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位が含まれていてもよい。
前記ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)により測定される。前記ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度は、通常45℃以上、155℃以下であることが好ましく、80℃以上、155℃以下であることがより好ましく、100℃以上、155℃以下であることがさらに好ましい。尚、通常は単一のガラス転移温度を有することが好ましい。
前記ガラス転移温度は、構造の一部に前記式(1)で表される部位に由来するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位、脂肪族ジヒドロキシ化合物及び/又は脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の種類および含有量を適宜選択することで調整が可能である。
前記ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度を前記範囲とすることによって、その前後でポリカーボネート樹脂の弾性率が顕著に変化することから、樹脂シートの加熱軟化によるエンボス意匠の付与と、冷却によるエンボス柄の固定が容易となり、転写性が良好となる。さらに、耐熱性も良好となり、沸騰水に浸漬してもエンボス戻りを発生しないエンボス意匠を得ることができる。
従来のアクリル系樹脂が最表層となる構成では、そのガラス転移温度が100℃付近であることからエンボス耐熱が不足となりやすく、またゴム弾性が強いことから、軟質PVC系シートへのエンボス付与に用いられて来た従来のエンボス付与機では良好なエンボス意匠の転写も得難い等の問題点が有るのに対し、本発明におけるA層(10)にエンボス意匠を付与するために従来のエンボス付与機を転用することが可能である点についても好適である。
前記ポリカーボネート樹脂は、一般に用いられる重合方法で製造することができ、ホスゲン法または炭酸ジエステルと反応させるエステル交換法のいずれでもよい。なかでも、重合触媒の存在下に、構造の一部に前記式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物と、脂肪族及び/又は脂環式ジヒドロキシ化合物と、必要に応じて用いられるその他のジヒドロキシ化合物と、炭酸ジエステルとを反応させるエステル交換法が好ましい。
エステル交換法は、構造の一部に前記式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物と、脂肪族及び/又は脂環式ジヒドロキシ化合物と、必要に応じて用いられるその他のジヒドロキシ化合物と、炭酸ジエステルとを塩基性触媒、さらにはこの塩基性触媒を中和する酸性物質を添加し、エステル交換反応を行う製造方法である。
炭酸ジエステルの代表例としては、ジフェニルカーボネート、ジトリールカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m−クレジルカーボネート、ジナフチルカーネート、ビス(ビフェニル)カーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジブチルカーボネートおよびジシクロヘキシルカーボネートなどが挙げられる。これらのうち、特にジフェニルカーボネートが好ましく用いられる。
このようにして得られた本発明で用いるポリカーボネート樹脂の分子量は、還元粘度で表すことができ、還元粘度の下限は、0.20dl/g以上が好ましく、0.30dL/g以上がより好ましく、0.35dL/g以上が更に好ましく、還元粘度の上限は、1.20dL/g以下が好ましく、1.00dL/g以下がより好ましく、0.80dL/g以下が更に好ましい。
ポリカーボネート樹脂の還元粘度が低すぎると成形品の機械的強度が小さい可能性があり、大きすぎると、成形する際の流動性が低下し、生産性や成形性を低下させる傾向がある。
なお、ポリカーボネート樹脂の還元粘度は、中央理化社製DT−504型自動粘度計にてウベローデ型粘度計を用い、溶媒として塩化メチレンを用い、ポリカーボネート濃度が0.60g/dlになるように精密に調整した後に、温度20.0℃±0.1℃で、下記に基づき測定する。
溶媒の通過時間t0、溶液の通過時間tから、下記式:
ηrel=t/t0
より相対粘度ηrelを求め、 相対粘度ηrelから、下記式:
ηsp=(η−η0)/η0=ηrel−1
より比粘度ηspを求める。
比粘度ηspを濃度c(g/dl)で割って、下記式:
ηred=ηsp/c
より還元粘度(換算粘度)ηredを求める。
本発明の樹脂シート被覆金属積層体におけるA層(10)は、近紫外〜可視光波長領域において光吸収が殆ど起こらず、受光による黄変劣化に対する耐候性に優れるため、特段の紫外線吸収剤を配合させる必要が無い。しかし、樹脂シート被覆金属積層体の意匠性中
間層が黄変劣化しやすい場合、色調の経時変化を取り分け抑制する必要がある場合等には、A層(10)内に紫外線吸収剤を必要最低限配合させることがある。
A層(10)に添加する紫外線吸収剤としては、公知のもの、例えば各種市販のものを特に制限なく使用できる。中でも、公知の芳香族ポリカーボネート樹脂への添加に通常用いられるものを好適に用いることができる。例えば、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3−tert−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス(4−クミル−6−ベンゾトリアゾールフェニル)等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤;2,2’−p−フェニレンビス(1,3−ベンゾオキサジン−4−オン)等のベンゾオキサジン系紫外線吸収剤;2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−(ヘキシル)オキシ−フェノール等のヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤、を挙げることができる。紫外線吸収剤の融点としては、特に120℃〜250℃の範囲にあるものが好ましい。融点が120℃以上の紫外線吸収剤を使用することにより、紫外線吸収剤が時間経過とともに成形品表面に凝集するブリードアウト現象により成形体表面が汚れたり、口金や金属ロールを用いて成形する場合には、ブリードアウトによりそれらが汚れたりすることを防止し、成形品表面の曇りを減少させ改善することが容易になる。
より具体的には、2−(2'−ヒドロキシ−5'−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
、2−(2 '−ヒドロキシ−3'−tert−ブチル−5'−メチルフェニル) −5−クロ
ロベンゾトリアゾール、2−[2'−ヒドロキシ−3'−(3",4",5",6"−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5'−メチルフェニル]ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビ
ス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)]フェノール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジクミルフェニル)ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤や、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−(ヘキシル)オキシ−フェノール等のヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤を好ましく使用でき、これらの中でも、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジクミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル) −6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)]
フェノール、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−(ヘキシル)オキシ−フェノールが特に好ましい。これらの紫外線吸収剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記紫外線吸収剤の添加量は、本発明で用いるポリカーボネート樹脂100重量部に対して、0.0001重量部以上、1重量部以下の割合で添加することが好ましく、0.0005重量部以上、0.5重量部以下の割合で添加することがより好ましく、0.001重量部以上、0.2重量部以下の割合で添加することがさらに好ましい。かかる範囲で紫外線吸収剤を添加することにより、A層(10)表面への紫外線吸収剤のブリードやA層(10)の機械特性低下を生じることなく、本発明の樹脂シート被覆金属積層体の耐候性を向上することができる。
商業的に入手可能な紫外線吸収剤の一例としては、BASF社製の商品名「チヌビン1577FF」を挙げることができる。
A層(10)には紫外線吸収剤以外の添加成分として、各種添加剤を適宜な量添加してもよい。例えば、意匠性付与の目的で染料系などの透明着色剤、蛍光剤および青み付与剤などで着色を行ってもよく、ホログラム箔、表面修飾処理を施した光輝性マイカおよび光輝性ガラスフレーク等の添加によって一層の意匠効果を発現することができる粒子状物を添加してもよい。
また、A層(10)は、前記ポリカーボネート樹脂を主成分とする層であれば、単層でもよく、また例えば構造の一部に前記式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の含有量が異なる複数のポリカーボネート樹脂の層を各々1層以上積層するものであっても構わない。
A層(10)の厚さは、30μm以上であることが好ましい。樹脂シート被覆金属積層体の表面硬度を確実に確保する点からは、A層(10)の厚さは40μm以上であることが特に好ましい。また、比較的深いエンボス意匠を付与したい場合などは、A層(10)の厚さは50μm以上あることが好ましい。また上限としては、特に制限はないが好ましくは120μm以下、特に好ましくは105μm以下とすれば、樹脂シート被覆金属積層体の表面硬度および折り曲げ加工性を十分確保しながら薄肉化を図ることができる。
A層(10)に関して、ユニットバスの壁材などで特に要求される沸騰水中への浸漬下でエンボス戻りを抑制したい場合は、100℃での引張弾性率を600MPa以上、6000MPa以下とすることが好ましい。下限値としては、より好ましくは800MPa以上、さらに好ましくは1000MPa以上であり、上限値としては、より好ましくは5000MPa以下であり、さらに好ましくは4000MPa以下であればよい。A層(10)を構成する樹脂の重合組成を適宜調節することにより引張弾性率を前記の範囲とすることができる。
A層(10)の100℃における引張弾性率を600MPa以上、6000MPa以下とすることにより、ユニットバスの壁材等の用途においてエンボス戻りを抑制することができる。なお、A層(10)の100℃における引張弾性率は、JISK 7161に規定の方法により測定する。
A層(10)の製膜方法は特に制限を受けることが無く、例えば、押出成形法およびカレンダー法等の各種製膜方法を用いることが可能だが、特にTダイキャスト法を用いることが好ましい。
<着色層(B層)>
本発明の樹脂シート被覆金属積層体には、さらに着色層としてB層(20)を設けることができる。B層(20)は熱可塑性樹脂に対して必要に応じて意匠性の付与、金属板の視覚的隠蔽効果の付与および印刷層を構成するD層(40)の発色向上等の目的で顔料を添加した樹脂組成物からなることが好ましいが、必ずしも限定されるものではない。
B層(20)は、アルミニウム等の金属および酸化アルミニウム等の金属酸化物の薄膜からなるものでもよく、該薄膜はいわゆるアルミ箔等を必要であれば接着剤を用いて設けるものであってもよいし、各種蒸着法によって設けるものでも構わない。
B層(20)が前記樹脂組成物からなる場合に用いられる熱可塑性樹脂は、特に限定されるものではないが、(メタ)アクリル系樹脂または(メタ)アクリル酸エステル系樹脂と総称される樹脂から選択することが好ましく、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂であることが好ましい。
前記熱可塑性樹脂は、特には、架橋ゴム弾性体成分を含むアクリル系樹脂であることが好ましい。該架橋ゴム弾性体成分は、アクリル樹脂系架橋ゴム弾性体成分を核として、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂をグラフト重合したコア・シェル型の共重合組成物であることが好ましい。したがって、前記熱可塑性樹脂としては、該共重合組成物を含有する(メタ)アクリル酸エステル系樹脂が好ましい。
これらの架橋ゴム弾性体成分を含むアクリル系樹脂は、ソフトアクリル、軟質アクリルおよび柔軟性アクリル等の呼称で市販され、最近はカレンダーアクリルなどの呼称でも市販されているものもある。
前記架橋ゴム弾性体成分を含有することでシートに溶融張力が付与することができ、カレンダー成形時に溶融張力の不足からドローダウンで製膜困難となる場合が少ない。また、架橋ゴム弾性体成分は金属ロールからの離型性を付与する機能も有し、滑剤等に特別な工夫をしなくとも容易にカレンダー成形が可能であるという利点がある。
溶融張力が高く、加熱された金属に対して粘着性が低いという特徴は、本発明においてA層(10)とB層(20)とを積層した樹脂シートに図2に示すエンボス付与機(200)でエンボス意匠を付与する際に、加熱された樹脂シートの幅縮み、皺入りおよび破断等を防止できる等の、エンボス加工性向上の観点からも好ましいものである。
B層(20)が前記樹脂組成物からなる場合に使用される顔料は、前記目的の為に一般的に用いられているものでよい。その添加量に関しても前記目的の為に一般的に添加される量でよい。
白系の着色を行う場合、例えば、隠蔽効果が高く、且つ粒径が微細であることから樹脂シートの加工性に与える影響の少ない酸化チタン顔料をベースとして、色味の調整を有彩色の有機、無機の顔料を少量添加すればよい。
下地の視覚的隠蔽効果に関しては、用途によって重要度が異なる。一つの目安としては内装建材用途の樹脂シート被覆金属積層体に於いては、JIS K5600に準拠して測定した隠蔽率が0.98以上あることを求められる場合が多い。ただし、逆に下地の有する色彩または模様の意匠を反映させる為、敢えてB層(20)の着色隠蔽性を低下させることも考えられる。
B層(20)には、その性質を損なわない範囲に於いて、各種添加剤を適宜な量添加してもよい。一般的な添加剤としては、例えば、燐系、フェノール系他の各種酸化防止剤、ラクトン系他のプロセス安定剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系ラジカル補足剤、衝撃改良剤、加工助剤、金属不活化剤、抗菌・防かび剤、帯電防止剤、難燃剤、顔料分散性改良剤および充填・増量剤等を挙げることができる。
B層(20)の製膜方法に関しては特に制限は無く、例として前記樹脂組成物からなる場合には、Tダイ成形法、インフレーション成形法およびカレンダー法並びにその他の押出成形法を採用することができる。A層(10)とB層(20)との間に中間層を含まない場合は、共押出成形により製膜してもよい。これらの中でも、小ロット対応性に優れるカレンダー成形法によって製膜することが好ましい。
B層(20)は、シートとして又はシート被覆金属積層体としての加工性を確保するために23℃での引張破断伸びが100%以上、350%以下であることが好ましい。下限値として、より好ましくは125%以上、さらに好ましくは150%以上であり、上限値として、より好ましくは325%以下、さらに好ましくは300%以下である。なお、B層(20)の23℃での引張破断伸びは実施例で後述する方法により測定する。
引張破断伸びの下限値が前記範囲にあれば、積層一体化およびエンボス付与などの加工性に優れる。また、上限値が前記範囲にあれば、表面硬度の高いA層(10)と積層した場合にも、該樹脂シート被覆金属積層体の表面硬度を高い状態で維持することが可能である。
また、B層(20)をカレンダー成形法で製膜する場合の製膜安定性、および図2に示すエンボス付与機(200)で加熱された積層シートにエンボス意匠を付与する際に、B層(20)が張力付与層として作用すること等を考慮すると、B層(20)の厚さの下限値としは、45μm以上であることが好ましく、70μm以上の厚さがあることが特に好ましい。
一方、B層(20)の厚さの上限値としては270μm以下であることが好ましく、200μm以下であることが特に好ましい。かかる範囲の厚さであることによって、樹脂シート被覆金属積層体の表面硬度および折り曲げ加工性を十分確保しながら薄肉化を図ることができる。
<可視光透過層(C層)>
本発明の樹脂シート被覆金属積層体には、さらに可視光透過層(C層)を設けることができる。C層(30)は、A層と金属層との間に設けられることが好ましい。また、C層(30)は、平板状の光輝性粒子を含むことが好ましい。
C層(30)に用いられる熱可塑性樹脂は、可視光透過性を有する熱可塑性樹脂であることが好ましく、可視光透過性を有し、かつ23℃での引張破断伸びが100%以上である熱可塑性樹脂であることがより好ましい。
すなわちC層(30)の樹脂成分としては、例えば、A層(10)を構成する樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)系樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)系樹脂等の結晶性ポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレートのジオール成分の一部、又はジカルボン酸成分の一部を置換した構造の非晶性・低結晶性のポリエステル樹脂、芳香族ポリカーボネート系樹脂、および、それらのブレンド組成物、ポリメチル(メタ)アクリレート(PMMA)などのアクリル系樹脂、アクリロニトリル・スチレン共重合系樹脂(AS樹脂)、メチル(メタ)アクリレート・スチレン共重合系樹脂(MS樹脂)等の透明性を維持したまま、ゴム成分の添加により柔軟性を付与した樹脂組成物、ポリ4−メチル−1−ペンテン等、各種低晶性並びに非晶性の比較的透明性の良好なポリオレフィン樹脂等を挙げることができる。
これらの中でも、A層(10)を構成する樹脂を用いることが、A層(10)との共押出成形法により一度に製膜と積層を容易に達成可能な点から最も好ましい。
なお、本発明の樹脂シート被覆金属積層体を折り曲げ加工性を要しない用途に用いる場合は、前述した樹脂以外の、破断伸びを有しない透明樹脂材料をC層(30)の樹脂成分として用いることができる。
C層(30)に添加される光輝性粒子としては、平板状のガラスフレークの表面に金属薄膜をコーティングしたものが好ましい。
平板状のガラスフレークの表面に金属箔膜をコーティングした光輝性粒子は、一般的に光輝性粒子として用いられることの多い酸化チタン被覆のマイカおよびアルミ粉に比べて、表面の平滑度が高いことから、非常に高い輝度感を得ることができ、本発明のような、星がちりばめられたような光輝性意匠を得るには好適に用いることができる。
光輝性粒子として従来から酸化チタン被覆マイカ等が多く用いられているが、酸化チタンの光触媒作用によりマトリクスの樹脂を分解劣化させる場合があった。しかし、本発明で用いる前記光輝性粒子はこうした問題が発生することが少ない。
光輝性粒子の平均粒径は20μmより大きく、100μm以下であることが好ましい。また、光輝性粒子の平均厚さは1μm以上、10μm以下であることが好ましい。
前記光輝性粒子の平均粒径を20μm以上とすることによって、全体として星がちりばめられたような光輝性意匠を現出させることができる。
一方、光輝性粒子の平均粒径が100μm以下であることによって、個々の光輝性粒子の視認度は良好に保ちつつ、C層(30)を構成する樹脂組成物のマスターバッチの作成時または押出成形時等の剪断が加えられるプロセスにおいて光輝性粒子の破砕を抑制し、十分な意匠効果を発現させることができる。また、本発明の樹脂シート被覆金属積層体を折り曲げ加工等の2次加工に供した場合の、大径粒子を起点とした樹脂層のクラックの発生による加工性不良を抑制することができる。
また、前記光輝性粒子の平均厚さが1μm以上であることにより、やはり剪断が加えられるプロセスにおいて、光輝性粒子の破砕および変形を抑制することができる。
一方、平均厚さが10μm以下であることにより、C層(30)を押出成形法で製造する際のC層(30)の流動性の不良、スジ入りおよび穴開き等の不良を抑制することができる。平均厚さに関しては、6μm以下であることがさらに好ましい。
本発明で用いる光輝性粒子は、大きさの分布に関して、粒径はある程度の幅の分布を有しているが、厚さは超薄膜ガラスを破砕してフレークを得るという製法上の特長から極めて良好な均一性を有しており、極端に肉厚な粒子が混在することに起因する押出成形時の不良が発生しにくい特徴を有している。
該光輝性粒子の添加量は、C層(30)の樹脂成分全体を100重量%として、0.5重量%以上であることが好ましく、0.8重量%以上であることがより好ましく、また5.0重量%以下であることが好ましく、2.5重量%以下であることがより好ましい。添加量がかかる範囲にあることによって、得られる輝度感が弱すぎることも一様に強すぎることも無く、充分かつ良好な意匠感を得ることができるため好適である。
また、C層(30)が可視光透過性を有する熱可塑性樹脂を含む場合、C層(30)における平板状の光輝性粒子の含有量は、可視光透過性を有する熱可塑性樹脂100重量%に対して、0.5重量%以上、5.0重量%以下であることが好ましい。
平板状の光輝性粒子の添加量を前記範囲とすることにより、優れた可視光透過性を維持しながらも、星がちりばめられたような光輝性意匠を得ることができる。
また、本発明で用いる光輝性粒子は、アスペクト比[平均粒径(μm)/平均厚さ(μm)]が15〜40であることが好ましい。該アスペクト比をこの範囲とすることにより、押出成形時の流動配向で、光輝性粒子の平板状の面が製膜シートの面と平行に配向しやすく、効率的に高い輝度感が得られる。
本発明で用いる光輝性粒子の一例として、日本板硝子社製の商品名「メタシャイン」を挙げることができ、各種粒径・厚さのものを入手することができる。また、この「メタシャイン」の中でも、金属箔膜として、銀およびニッケルの薄膜を用いたものが、強い輝度感が得られるため好ましく用いることができる。
C層(30)の製膜方法に関しては特に制限はなく、Tダイ成形法およびカレンダー成
形法等の通常の薄いシートを製膜する手法を制限なく用いることができる。その中でも、前記したように、A層(10)を構成する樹脂をマトリクスに用い、マルチマニホールドまたはフィードブロックを用いた共押出成形法によりA層(10)と積層一体化された状態で製膜することが、生産効率の点で特に好ましい。
<印刷層(D層)>
本発明の樹脂シート被覆金属積層体には、さらに印刷層(D層)を設けることができる。D層(40)は、グラビア印刷、オフセット印刷およびスクリーン印刷等の公知の印刷の方法で設けられる。
D層(40)の絵柄は、石目調、木目調、幾何学模様および抽象模様等任意である。部分印刷でも全面ベタ印刷でもよく、部分印刷層とベタ印刷層の両方が設けられていてもよい。
また、D層(40)はA層(10)の表面に印刷して設けてもよいし、B層、C層等の中間層、又は金属層のA層(10)側表面に印刷して設けてもよい。
D層(40)に用いられる印刷用インクに含有される顔料および溶剤は特に限定されること無く、一般的に使用されるものを適用することができる。特に、アクリル系樹脂またはウレタン系樹脂を含むものは、D層(40)を設けた場合においても、本発明の樹脂シート被覆金属積層体を層間剥離等の支障なく作製することが可能となることから好適である。
<外層(E層)>
本発明の樹脂シート被覆金属積層体には、さらに外層(E層)を設けることができる。該E層は、本発明の樹脂シート被覆金属積層体において、前記A層の、前記金属層側とは反対の表面に設けるものであって、可視光透過性を有していることが好ましい。
E層を設けることによって、前記A層に後述するようなエンボス意匠を付与する場合の、表面保護の機能を付与することが可能となる。さらに、可視光透過性を有することで、前記エンボス意匠を十分可視化することができ、より意匠性に優れた樹脂シート被覆金属積層体を提供することができる。また、本発明の樹脂シート被覆金属積層体の表面硬度をさらに向上させることも可能となる。
E層に用いることが好ましい樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、可視光透過性を有する熱可塑性樹脂が挙げられる。可視光透過性を有する熱可塑性樹脂としては、例えば、A層(10)を構成する樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)系樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)系樹脂等の結晶性ポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレートのジオール成分の一部、又はジカルボン酸成分の一部を置換した構造の非晶性・低結晶性のポリエステル樹脂、芳香族ポリカーボネート系樹脂、および、それらのブレンド組成物、ポリメチル(メタ)アクリレート(PMMA)などのアクリル系樹脂、アクリロニトリル・スチレン共重合系樹脂(AS樹脂)並びにメチル(メタ)アクリレート・スチレン共重合系樹脂(MS樹脂)等が挙げられる。
また、一般に広く使用される熱硬化性樹脂および紫外線硬化性樹脂等も適用することができる。
本発明の樹脂シート被覆金属積層体にE層を設ける方法としては、特に限定されることなく、後述するように前記樹脂シート被覆金属積層体の表面(A層)にエンボスを付与し
た後に、さらにE層を熱ラミネート法、押出ラミネート法、各種コーティング法等によって設けることができる。
<金属層>
本発明の樹脂シート被覆金属積層体の構成に用いる金属層としては、例えば、熱延鋼板、冷延鋼板、溶融亜鉛メッキ鋼板、電気亜鉛メッキ鋼板、スズメッキ鋼板およびステンレス鋼板等の各種鋼板、アルミニウム板並びにアルミニウム系合金板が挙げられる。これらの金属層は、通常の化成処理を施した後に使用してもよい。
また、樹脂シートの少なくとも一方の面に、金属を蒸着したり、金属化合物含有溶液を塗布した後に、還元するなどして金属層を析出させたりして層形成したものも使用することもできる。金属層の厚さは、用途等により異なるが、0.1〜10mmの範囲で選ぶことができる。
<樹脂シートの積層一体化と、A層(10)側表面へのエンボス意匠付与>
押出成形法によって製膜されたA層(10)とカレンダー成形法等によって別途製膜されたB層(20)及び/又はC層(30)とを熱融着積層により積層一体化させる場合は、図2に示すエンボス付与機(200)における余熱エリアでこれを行うことができる。
即ち図2に示すエンボス付与機(200)にA層(10)とB層(20)及び/又はC層(30)と必要に応じて各種中間層を重ねて積層シート7として導入し、加熱された金属ロール1に接触させて余熱した後、非接触式の赤外線ヒータ3により更にシート温度を上げる。しかる後、エンボスロール5とニップロール4の間に通すことによりエンボス柄がA層(10)側に転写され、更に冷却ロール6で冷却されて、付与されたエンボス柄が固定される構造になっている。
なお、D層(40)を設ける場合は、前記熱融着積層を行う前に、A層(10)の表面や、B層(20)およびC層(30)等の中間層、又は金属層のA層(10)側表面に印刷して設けておくことが好ましい。
B層(20)を積層しない場合も同様に、図2に示すエンボス付与機(200)に通紙してエンボス意匠を付与することができるが、加熱軟化したA層(10)が幅縮み、皺入り、破断等を生じるおそれがあるので、温度設定等の制御が難しい。よって前述の通りB層(20)を積層配置し、エンボス加工性を向上させることが好ましい。
エンボス柄の付与に関しては、A層(10)のガラス転移温度(Tg)より15℃以上高い温度にシートを加熱して実施する。A層(10)単層であれば、該温度域ではシートの弾性率が温度に対して鋭敏に変化することで、シートの伸びおよび皺入り等の問題を生じ易いが、架橋弾性体成分を含むカレンダーアクリルからなるB層(20)が基材シートとして機能し、安定してエンボス付与することができる。
さらに前述したようなE層を設ける場合は、A層(10)にエンボスを付与した後に、A層の前記金属層側とは反対の表面に、熱ラミネート法、押出ラミネート法および各種コーティング法等の公知の方法によって積層一体化することができる。
本発明の樹脂シート被覆金属積層体に用いる樹脂シートの積層一体化の方法はこれらに限定されるものではなく、ドライラミ接着剤等を用いて湿式のラミネートを行うなどしてもよい。
本発明の樹脂シート被覆金属積層体に用いる樹脂シートの総厚さは、60μm以上、3
00μm以下とするのが好ましい。総厚さを60μm以上とすることによって、被覆する基材に対する保護効果を発現することができる。また、総厚さを300μm以下とすることによって、従来から軟質PVC樹脂被覆金属板の折り曲げ加工などの成形加工に用いて来た成形金型を適用できることから、樹脂シートの加工設備適応性を維持することが可能である。
<樹脂シート被覆金属積層体の製造方法と用途>
本発明の樹脂シート被覆金属積層体は、前記樹脂シートと前記金属板とを、従来公知の方法によってラミネートすることにより製造することができる。また、樹脂シートの少なくとも一方の面に、金属を蒸着したり、金属化合物含有溶液を塗布し、還元するなどして金属層を析出させたりして金属層を形成することにより製造することもできる。
エンボス付与機(200)によりエンボス柄が付与された樹脂シ−トを金属板にラミネートする際に、必要に応じて接着剤を塗布してもよい。
前記接着剤としては、例えば、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、ウレタン系接着剤およびポリエステル系接着剤等の一般的に使用される熱硬化型接着剤を挙げることができる。B層(20)がアクリル系樹脂であることからアクリル系接着剤を用いることが良好な密着性を得る点から好ましいが、特にこれに限定されるものでは無い。
接着剤を使用して樹脂シート被覆金属積層体を製造するには、リバースコータ、キスコータ等の一般的に使用されるコーティング設備を使用する。樹脂シートを貼り合せる金属面に乾燥後の接着剤膜厚が2〜10μm程度になるように、先出の接着剤を塗布する。
次いで、赤外線ヒータ又は熱風加熱炉により塗布面の乾燥及び加熱を行い、金属板の表面温度を、190℃〜250℃程度の温度に保持しつつ、直ちにロールラミネータを用いて樹脂シ−トのA層(10)側が表面となるように被覆、冷却することにより樹脂シート被覆金属積層体を得る。本発明においてA層(10)に使用する前記ポリカーボネート樹脂は、前述の通りその耐熱性が良好であることから、この過程におけるエンボス戻りを抑制・防止することができる。
本発明の樹脂シート被覆金属積層体の用途としては、特に限定されるものではないが、住宅における玄関ドアや、各種建材、ユニットバス、鋼製家具部材、電気電子機器筐体、自動車内装材等として、好適に利用可能である。
例えば住宅における玄関ドアや各種建材においては一般に商品寿命が長いため、金属を被覆する樹脂シートに関して、黄変、割れ、剥がれおよび脆化などの経年劣化に対する耐性が取り分け求められる。本発明の樹脂シート被覆金属積層体は耐候性が極めて優れるため、こうした要求特性を十分に満足することができる。
ユニットバスにおいては、一般に白色などの淡色に調色されることから耐黄変が、また温水使用環境であるため昇温時のエンボス戻り耐性が取り分け求められる。本発明の樹脂シート被覆金属積層体は耐候性に加えてエンボス耐熱性も極めて優れるため、こうした要求特性を十分に満足することができる。
他に、家具、筐体および自動車内装材等においては頻繁に人の手が触れたり布巾等で拭き掃除したりするため、耐候性に加えて表面硬度が取り分け求められる。本発明の樹脂シート被覆金属積層体は耐候性に加えて表面硬度が高く、特には硬質樹脂層やハードコート層等の外層を設けて表面硬度を極めて高くすることもできるため、こうした要求特性を十分に満足することができる。
本発明をより具体的かつ詳細に説明するために、以下に実施例を示すが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。なお、実施例及び比較例に示した樹脂シート被覆金属積層体の物性の測定規格、試験法は以下の通りである。
(a)樹脂シート及び樹脂シート被覆金属積層体の作成
1)A層の原料混練と押出製膜
ジヒドロキシ化合物としてイソソルビドと、1,4−シクロヘキサンジメタノールを用い、ポリカーボネート共重合体(イソソルビドに由来する構造単位:1,4−シクロヘキサンジメタノールに由来する構造単位=70:30(mol%))を溶融重合法により得た。得られたポリカーボネート共重合体のガラス転移温度は120℃、還元粘度は0.56dl/gであった。
前記共重合体100重量%に紫外線吸収剤であるBASF社製の商品名「チヌビン1577FF」を4重量%事前混合し、口径35mmφの同方向二軸押出機を用いて、シリンダー温度200〜230℃で溶融混練しペレット化した。
次いで、口径65mmφのベント付き単軸押出機にTダイを接続し、キャスティングロールによる引き取りで、厚さ50μm、幅1100mmの透明シート(A−1)を得た。紫外線吸収剤を2重量%混合したものを(A−2)、混合しなかったものを(A−3)として、同様に透明シートを製膜した。
前記共重合体組成を50:50(mol%)(ガラス転移温度=101℃、還元粘度=0.57dl/g)とし、紫外線吸収剤を4重量%混合したもの(A−4)、同組成を30:70(mol%)(ガラス転移温度=80℃、還元粘度=0.69dl/g)とし、紫外線吸収剤を4重量%混合したもの(A−5)についても、同様に透明シートを製膜した。
A層の比較例に、ジヒドロキシ化合物としてビスフェノール−Aを用いたポリカーボネート重合体として、三菱エンジニアリングプラスチックス社製「ユーピロン H4000」を使用し、紫外線吸収剤を4重量%混合したもの(A−6)についても、同様に透明シートを製膜した。
2)B層のカレンダー製膜
三菱レイヨン社製「メタブレン W−377」を70重量%、クラレ社製「パラペット
SA」を30重量%、三菱レイヨン社製「メタブレン L−1000」を0.5重量%、白色顔料酸化チタンを20重量%、を事前混合した。
前記混合物を、前工程に予備混練ロールを有する、金属ロール4本からなるカレンダー成形装置を用いて、ロール温度170℃〜185℃の条件下でシート圧延を行い、厚さ150μm、幅1200mmの白色シート(B−1)を製膜した。
「メタブレン W−377」は、アクリル樹脂系架橋ゴム弾性体成分を多量に含むアクリル系樹脂であり、カレンダー成形用の軟質アクリル樹脂として市販されている。
「パラペット SA」は、アクリル樹脂系架橋ゴム弾性体成分を多量に含み、高い柔軟性を有しつつ、良好な流動性を兼ね備えている軟質アクリル樹脂として市販されており、射出成形用で軟質PVC代替用途に特に好適である。
「メタブレン L−1000」は、アクリル系外部滑剤であり、安定生産性やブリード抑制のために少量添加する用途で市販されている。
3)C層の原料混練とAC層の共押出製膜
A層に使用したポリカーボネート共重合体を100重量%、光輝性粒子として日本板硝子社製「メタシャイン MC5090PS」1.0重量%を事前混合し、A層の原料と同様の製造条件でペレット化した。2台の65mmφのベント付き単軸押出機にマルチマニホールドTダイを接続し、キャスティングロールによる引き取りで、A層厚さ30μm、C層厚さ60μm、幅1100mmの積層シートを得た。
4)A層とB層との積層一体化とエンボス意匠の付与
図2に例示する軟質PVCシートへのエンボス付与に一般的に使用されている連続法によるエンボス付与機にて、A層(又はC層と共押出したAC層)とB層(又はB層に印刷を施したBD層)との熱融着積層一体化、及びエンボス意匠(300)の付与を行った。
加熱ドラムは140℃に設定し、A層、及びB層を図2に示すように2本の巻きだし軸から供給し、加熱ドラムへの接触部分で熱融着積層により一体化した。引き続き積層一体化されたシートを非接触式の赤外線ヒータで、シート表面温度が180℃になる迄加熱し、エンボスロールによりエンボス意匠を付与した。
エンボス柄は8mm×8mmの正方形の精密エンボス部(310)及びエンボスが施されていない鏡面部(320)とからなる。精密エンボス部にはRy(最大高さ)=14μm、Ra(中心線平均粗さ)=2.2μmのプリズム状の微細突起が配置されている。
5)樹脂シート被覆金属積層体の作成
次にPVCシート被覆金属板用として一般的に用いられているアクリル系熱硬化型接着剤を、亜鉛めっき鋼板に乾燥後の接着剤膜厚が2〜4μm程度になる様に塗布し、次いで熱風加熱炉及び赤外線ヒータにより塗布面の乾燥及び加熱を行い、厚さ0.45mmの亜鉛めっき鋼板の表面温度を225℃に設定し、直ちにロールラミネータを用いて積層シートを被覆、水冷にて冷却することによりエンボス意匠性樹脂シート被覆鋼板を作製した。
(b)樹脂シート被覆金属積層体の評価
得られた樹脂シート被覆金属積層体の物性を下記試験により評価した。表1に得られた樹脂シート被覆金属積層体の層構成を示し、表2に樹脂シート被覆金属積層体の物性を評価した結果を示す。
1)23℃での引張破断伸び
B層単体に関して、23℃の恒温室内に設置した万能試験機(インテスコ社製)を用いて、JIS K7127に準拠した試験片形状により引張試験を行い、破断伸びを測定した。試験速度=200mm/分で、製膜時の流れ方向(MD)、及びそれに直交する方向(TD)で、施行数(n=5)で実施し平均値を示した。結果、MD方向に289%、TD方向に252%だった。
2)エンボス転写性
樹脂シート被覆金属積層体を目視観察し、十分にエンボス転写がなされているものを「○」、エンボス凹凸が丸みを帯びるなど転写性が不十分なものを「△」、エンボス柄が不鮮明又はエンボス柄に関係なく収縮したり荒れていたりしているものを「×」として評価した。
3)エンボス耐熱性
樹脂シート被覆金属積層体を沸騰水中に1時間浸漬した後に目視観察し、浸漬前後で殆
ど変化が無いものを「○」、ややエンボス戻りが起こっているものを「△」、エンボス柄が不鮮明になっているものを「×」として評価した。
4)加工性評価
樹脂シート被覆金属積層体に衝撃密着曲げ試験を行い、曲げ加工部の樹脂シートの面状態を目視観察し、樹脂層に割れが発生し実用的な加工性を有しないと判断されたものを「×」、ごく微細なクラックが発生したものや目視ではクラックと確認できないが白化を生じたものを「△」、これらの異常が認められないものを「○」として評価した。
試験は以下のようにして実施した。樹脂シート被覆金属積層体の長さ方向(MD)、及び幅方向(TD)からそれぞれ50mm×150mmの試料を切り出し、23℃の恒温室内に1時間以上静置し、手動式折り曲げ試験器を用いて180°(内半径2mm)に折り返したものを作成、その試料に直径75mm、質量5kgの円柱形の重錘を50cmの高さから自由落下させた。
5)表面硬度
2B、Bの鉛筆を用いて、JIS S1005に準拠して、80mm×60mmに切り出した樹脂シート被覆金属積層体に対し45°の角度を保ちつつ1kgの荷重を掛けた状態で線引きができる治具を使用して線引きを行い、該部分の樹脂シートの面状態を目視観察し、Bの鉛筆で傷が付かなかったものを「○」、Bでは傷が付くが、2Bの鉛筆では傷が付かなかったものを「△」、2Bの鉛筆でも傷が付いたものを「×」として評価した。
6)促進耐侯性試験
樹脂シート被覆金属積層体を60mm×50mmに切り出し、JIS K6744で引用するJIS B7729に規定されるエリクセン試験装置を用いて、サンシャインウェザーメータ促進耐侯性試験機(スガ試験機社製)を用いて促進耐侯性試験を実施した。
促進耐侯性試験の条件はブラックパネル温度63℃、120分サイクル(照射102分、スプレー18分)とし、曝露3000時間後の試料と曝露前の試料との色差を色彩色差計CR−200(ミノルタ社製)で測定した。
色差が3以下のものを「○」、3を超えるが10以下であるものを「△」、10を超えるものを「×」として評価した。
Figure 2011201303
Figure 2011201303
※1:実用に耐えるが、B層に極僅かな変色が見られた。
※2:A層が著しく黄変し、実用に耐えなかった。
表1及び表2に示すように、本発明の樹脂シート被覆金属積層体は、本発明の規定の範囲内であれば、耐候性についていずれも特に優れていた。また、エンボス転写性、エンボス耐熱性、加工性および表面硬度について、いずれもバランス良く優れていた。一方、比較例は耐候性および表面硬度について実施例より劣っていた。
この結果から、本発明の樹脂シート被覆金属積層体は、耐候性、エンボス転写性、エンボス耐熱性、加工性、表面硬度について優れた樹脂シート被覆金属積層体であることがわかった。
以上、現時点において、最も実践的であり、且つ好ましいと思料する実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う樹脂シート、及び該樹脂シート被覆金属積層体もまた本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
本発明を特定の態様を用いて詳細に説明したが、本発明の意図と範囲を離れることなく様々な変更および変形が可能であることは、当業者にとって明らかである。
1 加熱ロール
2 テイクオフロール
3 赤外線ヒータ
4 ニップロール
5 エンボスロール
6 冷却ロール
7 樹脂シート
10 A層
20 B層
30 C層:可視光透過層
40 D層:印刷層
50 金属板
110 基本構成の樹脂シート被覆金属積層体
120 着色意匠を付与した樹脂シート被覆金属積層体
130 光輝性意匠を付与した樹脂シート被覆金属積層体
140 印刷意匠を付与した樹脂シート被覆金属積層体
150 エンボス意匠を付与した樹脂シート被覆金属積層体
200 エンボス付与機
300 エンボス柄
310 エンボス柄の精密エンボス部(図3中にある8個のエンボス部は全て同じ)
320 エンボス柄の鏡面部

Claims (19)

  1. 構造の一部に下記式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含むポリカーボネート樹脂を含む樹脂層(A層)を、金属板上に設けることを特徴とする樹脂シート被覆金属積層体。
    Figure 2011201303
    (但し、前記式(1)で表される部位が−CH−O−Hの一部である場合を除く。)
  2. 前記ジヒドロキシ化合物が、下記式(2)で表されるジヒドロキシ化合物であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂シート被覆金属積層体。
    Figure 2011201303
  3. 前記A層の100℃における引張弾性率が600MPa以上、6000MPa以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂シート被覆金属積層体。
  4. 前記A層と前記金属板の層間に、着色層(B層)を設けることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の樹脂シート被覆金属積層体。
  5. 前記B層の23℃における引張破断伸びが100%以上、350%以下であることを特徴とする請求項4に記載の樹脂シート被覆金属積層体。
  6. 前記B層が、架橋ゴム弾性体成分を含むアクリル系樹脂を主成分とする熱可塑性樹脂を含むことを特徴とする請求項4または5に記載の樹脂シート被覆金属積層体。
  7. 前記架橋ゴム弾性体成分が、アクリル樹脂系架橋ゴム弾性体成分を核にして、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂をグラフト重合して得られるコア・シェル型の共重合組成物であることを特徴する請求項6に記載の樹脂シート被覆金属積層体。
  8. 前記A層と前記金属板の層間に、可視光透過層(C層)を設けることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の樹脂シート被覆金属積層体。
  9. 前記C層が、可視光透過性を有する熱可塑性樹脂及び平板状の光輝性粒子を含み、前記平板状の光輝性粒子の含有量が前記可視光透過性を有する熱可塑性樹脂100重量%に対して、0.5重量%以上、5.0重量%以下であることを特徴とする請求項8に記載の樹脂シート被覆金属積層体。
  10. 前記A層と前記金属板の層間に、印刷層(D層)を設けることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の樹脂シート被覆金属積層体。
  11. 前記A層にエンボスが付与されてなることを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の樹脂シート被覆金属積層体。
  12. 前記A層の、前記金属板側とは反対の表面に外層(E層)を設けることを特徴とする、請求項1から11のいずれか1項に記載の樹脂シート被覆金属積層体。
  13. 前記A層からなる樹脂シート、または、前記A層と、前記B層、前記C層、前記D層、及び前記E層からなる群より選ばれた少なくとも1層とからなる樹脂シートを前記金属板上にラミネートすることを特徴とする樹脂シート被覆金属積層体の製造方法。
  14. 請求項1から12のいずれか1項に記載の樹脂シート被覆金属積層体を含む玄関ドア。
  15. 請求項1から12のいずれか1項に記載の樹脂シート被覆金属積層体を含む建材。
  16. 請求項1から12のいずれか1項に記載の樹脂シート被覆金属積層体を含むユニットバス部材。
  17. 請求項1から12のいずれか1項に記載の樹脂シート被覆金属積層体を含む鋼製家具部材。
  18. 請求項1から12のいずれか1項に記載の樹脂シート被覆金属積層体を含む電気電子機器筐体。
  19. 請求項1から12のいずれか1項に記載の樹脂シート被覆金属積層体を含む自動車内装材。
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