JP2012187765A - 傷修復型アクリル樹脂フィルムおよびその利用 - Google Patents

傷修復型アクリル樹脂フィルムおよびその利用 Download PDF

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Haruki Koyama
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Abstract

【課題】布やスチールウールで擦られてもアクリル樹脂フィルムに傷が付きづらく(耐傷つき性)、また、長期耐候性試験後においても耐傷つき性を維持出来る傷修復型アクリル樹脂フィルム及びその積層成形品を提供する。
【解決手段】アクリル樹脂層と硬化樹脂層とを有し、前記硬化樹脂層は、主成分としてメチルメタクリレート、ポリオール化合物、および、イソシアネート化合物を含む硬化性成分を硬化してなり、その厚さが12μmから35μmである、アクリル樹脂フィルム。
【選択図】なし

Description

本発明は、傷修復性アクリル樹脂フィルムおよびその積層体に関する。
低コストで成形品に意匠性を付与する方法として、インサート成形法及びインモールド成形法、NGF(TOM)成形法がある。インサート成形法は、印刷等により加飾を施したポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂などのフィルム又はシートを、予め真空成形等によって三次元形状に成形し、不要なフィルム又はシート部分を除去した後、射出成形金型内に移し、基材となる樹脂を射出成形することにより一体化させた成形品を得るものである。一方、インモールド成形法は、印刷等の加飾を施したポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂などのフィルム又はシートを射出成形金型内に設置し、真空成形を施した後、同じ金型内で基材となる樹脂を射出成形することにより一体化させた成形品を得るものである。
インサート成形又はインモールド成形に用いることができる表面硬度、耐熱性に優れたアクリル樹脂フィルムを用いた成形品(以下、アクリル樹脂フィルム成形品という)として、特定の組成からなるゴム含有重合体と、特定の組成からなる熱可塑性重合体とを特定の割合で混合してなるアクリル樹脂フィルム成形品が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。このようなアクリル樹脂フィルム成形品は、成形品に加飾性を付与するばかりでなく、クリア塗装の代替材料としての機能を有する。
近年、インサート成形法又はインモールド成形法により成形された表層にアクリル樹脂フィルム層を有する積層製品が車輌、パソコン筐体、携帯筐体、家電外層、浴室外層、光学部材用途の真空成形で製造される様々な部品として用いられている。しかしながら、アクリル樹脂フィルム成形品は、各種加飾部材として優れた特性を有しているものの、擦れによる傷付きやすい。特にフィルムの片面が金属蒸着などのめっき調のフィルムでは著しく目立つため市場の拡大が進んでいない。
特開平8−323934号公報 特開平11−147237号公報
本発明は、布やスチールウールで擦られてもアクリル樹脂フィルムに傷が付きづらく(耐傷つき性)、また、長期耐候性試験後においても耐傷つき性を維持出来る傷修復型アクリル樹脂フィルム及びその積層成形品を提供することを目的とする。
上記事情に鑑み、本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、アクリル樹脂フィルムに特定の硬化樹脂層を設けることによって、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、アクリル樹脂層と、硬化樹脂層とを有し、
前記硬化樹脂層は、主成分としてメチルメタクリレート、ポリオール化合物、および、イソシアネート化合物を含む硬化性成分を硬化してなり、その厚さが12μmから35μmである、アクリル樹脂フィルムである(以下、傷修復型アクリル樹脂フィルム)と称することがある。)。
本発明の傷修復型アクリル樹脂フィルムは、アクリル樹脂フィルムの硬化樹脂層から測定した鉛筆硬度がF以下であることが好ましい。
本発明の傷修復型アクリル樹脂フィルムは、アクリル樹脂層の鉛筆硬度がH以下であることが好ましい。
本発明の傷修復型アクリル樹脂フィルムは、アクリル樹脂層の厚みが50〜300μmであることが好ましい。
本発明の積層体は、本発明の傷修復型アクリル樹脂フィルムが真空成形で積層されてなる。
本発明のアクリル樹脂フィルムは、布やスチールウールで表面を擦った際に傷がつきづらい、つまり布やスチールウールで表面を擦った前後でのヘイズ値の変化が少なく、更に室内や屋外で長時間暴露した後にも傷つき性が低下しない。
<アクリル樹脂層>
本発明のアクリル樹脂層には、公知のアクリル樹脂フィルムを用いることができる。アクリル系樹脂フィルム層に用いられるアクリル系樹脂は、メタクリル酸エステル系重合体(以下、メタクリル酸エステル系重合体(A)と称することがある。)およびアクリル酸エステル系架橋弾性体粒子(以下、アクリル酸エステル系架橋弾性体粒子(B)と称することがある。)を含む樹脂組成物を使用することが好ましい。
メタクリル酸エステル系重合体(A)は、フィルムの耐熱性および硬度の観点から、メタクリル酸アルキルエステル50〜100重量%およびアクリル酸アルキルエステル0〜50重量%を含む単量体混合物(単量体混合物の合計100重量%)を、少なくとも1段以上で重合させてなるものが好ましい。メタクリル酸エステル系重合体(A)の単量体組成は、より好ましくは、メタクリル酸アルキルエステル60〜100重量%およびアクリル酸アルキルエステル0〜40重量%を含むものである。
メタクリル酸エステル系重合体(A)を構成するメタクリル酸アルキルエステルは、重合反応性やコストの点からアルキル基の炭素数が1〜12であるものが好ましく、直鎖状でも分岐状でもよい。その具体例としては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル等があげられ、これらの単量体は1種で使用してもよいし、2種以上が併用されてもよい。
メタクリル酸エステル系重合体(A)を構成するアクリル酸アルキルエステルは、重合反応性やコストの点からアルキル基の炭素数が1〜12であるものが好ましく、直鎖状でも分岐状でもよい。その具体例としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル等があげられ、これらの単量体は1種で使用してもよいし、2種以上が併用されてもよい。
メタクリル酸エステル系重合体(A)においては、必要に応じて、メタクリル酸アルキルエステルおよびアクリル酸アルキルエステルに対して共重合可能なエチレン系不飽和単量体を共重合してもかまわない。これらの共重合可能なエチレン系不飽和単量体としては、例えば、塩化ビニル、臭化ビニル等のハロゲン化ビニル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル誘導体、塩化ビニリデン、弗化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン、アクリル酸、アクリル酸ナトリウム、アクリル酸カルシウム等のアクリル酸およびその塩、アクリル酸β−ヒドロキシエチル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸グリシジル、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド等のアクリル酸アルキルエステル誘導体、メタクリル酸、メタクリル酸ナトリウム、メタクリル酸カルシウム等のメタクリル酸およびその塩、メタクリルアミド、メタクリル酸β−ヒドロキシエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸グリシジル等のメタクリル酸アルキルエステル誘導体等があげられ、これらの単量体は1種で使用してもよいし、2種以上が併用されてもよい。
アクリル酸エステル系架橋弾性体粒子(B)は、フィルムの硬度、耐衝撃性の観点から、アクリル酸アルキルエステル50〜100重量%およびメタクリル酸アルキルエステル0〜50重量%を含む単量体混合物(b−1)、および、1分子あたり2個以上の非共役二重結合を有する多官能性単量体(b−2)からなる混合物を、少なくとも1段以上で共重合させてなるものが好ましい。単量体混合物(b−1)は、より好ましくは、アクリル酸アルキルエステル60〜100重量%およびメタクリル酸アルキルエステル0〜40重量%である。
本発明のアクリル酸エステル系架橋弾性体粒子(B)においては、必要に応じて、メタクリル酸アルキルエステルおよびアクリル酸アルキルエステルと共重合可能なエチレン系不飽和単量体を共重合してもかまわない。
本発明のアクリル酸エステル系架橋弾性体粒子(B)で用いられるアクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステルおよび、これらと共重合可能なエチレン系不飽和単量体の具体例は、前記メタクリル酸エステル系重合体(A)に使用したものがあげられる。
本発明において用いられる多官能性単量体(b−2)としては、アリルメタクリレ−ト、アリルアクリレ−ト、トリアリルシアヌレ−ト、トリアリルイソシアヌレ−ト、ジアリルフタレ−ト、ジアリルマレ−ト、ジビニルアジペ−ト、ジビニルベンゼンエチレングリコ−ルジメタクリレ−ト、ジビニルベンゼンエチレングリコ−ルジアクリレ−ト、ジエチレングリコ−ルジメタクリレ−ト、ジエチレングリコ−ルジアクリレ−ト、トリエチレングリコ−ルジメタクリレ−ト、トリエチレングリコ−ルジアクリレ−ト、トリメチロ−ルプロパントリメタクリレ−ト、トリメチロ−ルプロパントリアクリレ−ト、テトラメチロ−ルメタンテトラメタクリレ−ト、テトラメチロ−ルメタンテトラアクリレ−ト、ジプロピレングリコ−ルジメタクリレ−トおよびジプロピレングリコ−ルジアクリレ−ト等があげられ、これらは1種で使用してもよいし、2種以上が併用されてもよい。
本発明のアクリル系樹脂フィルム層に用いられるアクリル系樹脂には、必要に応じて、ポリグルタルイミド、無水グルタル酸ポリマー、ラクトン環化メタクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂等を配合することも可能である。ブレンドの方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
本発明のアクリル系樹脂には、着色のために無機系顔料または有機系染料を、熱や光に対する安定性を更に向上させるために抗酸化剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤などを、あるいは、抗菌、脱臭剤、滑剤等を、単独または2種以上組み合わせて添加してもよい。抗酸化剤としてはフェノール系、ヒンダードフェノール系、ヒンダードアミン系、リン系、イオウ系の酸化防止剤や熱安定剤、ラジカル補足剤が好ましく使用される。紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリチレート系、トリアジン系が好ましく使用され、ベンゾトリアゾール系やトリアジン系が特に好ましい。ベンゾトリアゾール系は長波長の吸収が大きく、トリアジン系は短波長の吸収が大きいことから2種以上を組み合わせることで相乗効果を期待できる。
アクリル樹脂層の厚さは、50〜300μmが好ましい。アクリル樹脂層の厚さを300μm以下とすることにより、インサート成形及びインモールド成形に適した剛性が得られる。また、アクリル樹脂層の厚みを50μm以上とすることにより、フィルムの保護性とともに、得られる積層体に深み感をより十分に付与することができる。真空成形の延伸部での破断防止の点では、70〜300μmがより好ましい。
(アクリル樹脂フィルムの製造方法)
アクリル樹脂フィルムの製造方法としては、溶融流延法、Tダイ法、インフレーション法等の溶融押出法、カレンダー法等の公知の方法が挙げられる。これらのうち、経済性の点からTダイ法が好ましい。
Tダイ法によりアクリル樹脂フィルムを成形する場合、金属ロール、非金属ロール及び金属ベルトから選ばれる複数のロール又はベルトに狭持して製膜する方法を用いることが好ましい。この方法によれば、得られる傷修復型アクリル樹脂フィルムの表面平滑性を向上させ、アクリル樹脂フィルムに硬化樹脂層を形成する際のコーティング抜け、傷修復型アクリル樹脂フィルムに印刷処理した際の印刷抜けを抑制することができる。金属ロールとしては、金属製の鏡面タッチロール;特許第2808251号公報または国際公開第97/28950号パンフレットに記載の金属スリーブ(金属製薄膜パイプ)と成型用ロールとからなるスリーブタッチ方式で使用されるロール等が挙げられる。非金属ロールとしては、シリコンゴム製等のタッチロール等が挙げられる。金属ベルトとしては、金属製のエンドレスベルト等が挙げられる。これらの金属ロール、非金属ロール及び金属ベルトを複数組み合わせて使用してもよい。
金属ロール、非金属ロール及び金属ベルトから選ばれる複数のロール又はベルトに狭持して製膜する方法においては、溶融押出後の原料を、実質的にバンク(樹脂溜まり)が無い状態で狭持し、実質的に圧延することなく面転写させて製膜することが好ましい。バンク(樹脂溜まり)を形成することなく製膜した場合は、冷却過程にある原料が圧延されることなく面転写されるため、この方法で製膜したアクリル樹脂フィルム基体の加熱収縮率を低減することができる。また、Tダイ法等で溶融押出しをする場合は、200メッシュ以上のスクリーンメッシュやポリマーフィルター(長瀬産業(株)製デナフィルターなど)で溶融状態にあるアクリル樹脂原料を濾過しながら押出しすることも好ましい。
<硬化樹脂層>
硬化樹脂層は、硬化性成分に、主成分としてメチルメタクリレート、ポリオール化合物、および、イソシアネート化合物を使用して、硬化してなるアクリルウレタン樹脂で構成される。
硬化樹脂層の厚さは、12〜35μmである。硬化樹脂層の厚さが12μm以上であれば、積層体となった場合の傷修復性、および長期耐候性試験後の傷修復性を維持出来、35μm以下であれば、コーティング時の乾燥時間を短縮出来、ライン速度を上げることが出来、真空成形時に割れが発生しない。なお、硬化樹脂層の厚さは、フィルムの断面を透過型電子顕微鏡で観察し、5箇所で厚さを測定し、それらを平均することにより求められる。
(硬化性成分)
硬化性成分には、主成分としてメチルメタクリレート、ポリオール化合物、および、イソシアネート化合物が含有される。
イソシアネート化合物としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなどの公知のイソシアネート化合物を使用することが出来る。加熱時の黄変が少ない点で、ヘキサメチレンジイソシアネートを使用することが、加熱時の応変を抑制出来ることから好ましい。
ポリオール化合物は、ウレタン結合を形成する為に必要な水酸基成分として使用され、硬化膜の真空成形時の伸び性が良くなる点から、ポリカプロラクトンポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールが好ましく使用され、特に好ましくはポリカプロラクトンポリオールである。
<傷修復型アクリル樹脂フィルム>
本発明の傷修復型アクリル樹脂フィルムの好ましい一形態として、アクリル樹脂フィルム上に、硬化性成分としてメチルメタクリレートを主成分とするアクリル樹脂、ε−ポリカプロラクトンからなるポリオール、および、ヘキサメチレンジイソシアネートを使用して熱硬化させてなるアクリルウレタン樹脂で構成される硬化性樹脂層が形成されたものが例示される。
(硬化樹脂層の形成方法)
硬化樹脂層の形成としては、硬化樹脂層となる原料(硬化性成分)を溶剤に溶解又は分散して硬化性樹脂組成物を調製し、これをアクリル樹脂フィルムの一方の面に塗布し、溶剤除去のための加熱乾燥を行うことによって、硬化樹脂層を形成する方法が挙げられる。この方法は、硬化樹脂層とアクリル樹脂フィルムとの密着性が良好となるため好ましい。
塗布方法としては、コート法が挙げられ、ダイスコート法、フローコート法、スプレーコート法、バーコート法、グラビアコート法、グラビアリバースコート法、キスリバースコート法、マイクログラビアコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ロッドコート法、ロールドクターコート法、エアナイフコート法、コンマロールコート法、リバースロールコート法、トランスファーロールコート法、キスロールコート法、カーテンコート法、ディッピングコート法等の公知のコート方法が挙げられる。中でも、ダイスコート法又はロールコート法により硬化樹脂層を形成することが好ましい。
アクリル樹脂フィルム上に硬化性樹脂組成物を塗工する場合、溶剤によりアクリル樹脂フィルムが脆くなることから、保護フィルムを貼った状態でコーティングすることが好ましい。保護フィルムは公知のフィルムを使用出来るが耐熱性の観点からPETフィルムが好ましい。
溶剤としては、ガラス転移温度より80℃以上高くない、好ましくは30℃以上高くない沸点を有する溶剤が、傷修復型アクリル樹脂フィルムに溶剤が残存しにくく好ましい。特に、硬化性樹脂の各成分を溶解または均一に分散させることが可能で、且つ、アクリル樹脂フィルムの物性(機械的強度、透明性等)に実用上悪影響を及ぼさず、さらにアクリル樹脂フィルムの主たる構成成分である樹脂成分のガラス転移温度より80℃以上高くない、好ましくは30℃以上高くない沸点を有している揮発性の溶剤が好ましい。
溶剤の具体例としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、エチレングリコール等のアルコール系溶剤;キシレン、トルエン、ベンゼン等の芳香族系溶剤;ヘキサン、ペンタン等の脂肪族炭化水素系溶剤;クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素系溶剤;フェノール、クレゾール等のフェノール系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;ジエチルエーテル、メトキシトルエン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジブトキシエタン、1,1−ジメトキシメタン、1,1−ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル系溶剤;ギ酸、酢酸、プロピオン酸等の脂肪酸系溶剤;無水酢酸等の酸無水物系溶剤;酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸ブチル、ギ酸ブチル等のエステル系溶剤;エチルアミン、トルイジン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等の窒素含有溶剤;チオフェン、ジメチルスホキシド等の硫黄含有溶剤;ジアセトンアルコール、2−メトキシエタノール(メチルセロソルブ)、2−エトキシエタノール(エチルセロソルブ)、2−ブトキシエタノール(ブチルセロソルブ)、ジエチレングリコール、2−アミノエタノール、アセトシアノヒドリン、ジエタノールアミン、モルホリン、1−アセトキシ−2−エトキシエタン、2−アセトキシ−1−メトキシプロパン等の2種以上の官能基を有する溶剤;水等、各種公知の溶剤が挙げられる。これらは、単独で、または2種以上組み合わせて使用することができる。これらのうち、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、イソプロピルアルコール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンを主成分とする溶剤が、溶剤によるアクリル樹脂フィルの物性低下の影響が少なく好ましい。また、硬化樹脂層とアクリル樹脂フィルムとの密着性の観点から、酢酸ブチル、メチルイソブチルケトンを併用することが好ましい。また、塗工後の艶斑の観点からも、酢酸ブチル、メチルイソブチルケトン等の中沸点溶剤と、2−アセトキシ−1−メトキシプロパン、シクロヘキサノン等の高沸点溶剤を併用することが好ましい。また、硬化性樹脂組成物は、塗工抜けの軽減、ドクター筋発生軽減の観点から、異物を取り除く目的で、濾過を実施することが好ましい。濾過は、硬化性樹脂組成物の調製後に行ってもよいし、塗工直前或いは塗工しながら行ってもよい。この濾過は公知の濾過装置で濾過することができるが、チッソフィルター(株)製のCPII−10、03、01が適している。
硬化樹脂層には、皮張り防止剤、増粘剤、沈降防止剤、タレ防止剤、消泡剤、レベリング剤、指紋付着防止剤、拡散剤、艶消し剤、無機粒子、帯電防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、抗菌剤、防カビ剤、難燃剤等の塗膜性能を改善するための公知の添加剤を含有させてもよい。塗工後、硬化樹脂層の架橋密度を十分なものとするために、30〜80℃の雰囲気下で、数時間から数日間静置することが好ましい。静置時間は、アクリル樹脂フィルムの耐熱性等により設定されるが、ポリヘキサメチレンジイソシアネートを用いた場合、40℃、48時間の条件で十分な架橋密度を有する硬化樹脂層が得られる。
通常、成形品に塗装によって十分な厚みの塗膜を形成するためには、十数回の重ね塗りが必要になることがあり、この場合、コストがかかり、生産性があまりよくない。それに対して、本発明の積層体は、傷修復型アクリル樹脂フィルム自体が塗膜となるため、重ね塗り回数が少なくて済み工業的利用価値が高い。
(傷修復型アクリル樹脂フィルムの鉛筆硬度)
本発明の傷修復型アクリル樹脂フィルムは、硬化樹脂層側から測定した鉛筆硬度(JIS K5600に基づく測定)がF以下であることが好ましい。鉛筆硬度をF以下にすることで、傷修復性能が高くなることから好ましい。鉛筆硬度がF以下であると、スチールウールやガーゼなどで擦傷しても傷が目立たない。鉛筆硬度がF以下の傷修復型アクリル樹脂フィルムを用いた積層体は、携帯筐体、パソコン筐体、家電筐体、自動車外装、自動車内装、光学部材、メッキ代替用途等の部材に好適に使用することができる。用途拡大の観点から工業上非常に有用である。
硬化樹脂層をコートする基材となるアクリル樹脂フィルムの鉛筆硬度(JIS K5600に基づく測定)は、H以下であることが好ましい。H以下の場合は、硬化樹脂層の鉛筆硬度が低くなりやすく、それにより傷修復性が高くなり好ましく、更に成形時のトリミング時に割れにくいことから好ましい。
(ヘイズ値)
傷修復型アクリル樹脂フィルムのヘイズ値は、傷修復型アクリル樹脂フィルムをとおして加飾層を見たときの意匠性の観点から、3%以下が好ましく、2%以下がより好ましい。ヘイズ値は、JIS K7136の試験方法にて測定した値である。
<加飾層>
本発明の傷修復型アクリル樹脂フィルムには、各種基材に意匠性を付与するために絵柄層や金属蒸着層、ヘアライン層、エンボス柄層を形成してもよい。特に金属蒸着層がある場合は傷が非常に目立ちやすいことから、本発明の傷修復型アクリル樹脂フィルムが好適に使用出来る。
(印刷層)
印刷層は、インサート又はインモールド成形によって得られた積層体表面で模様又は文字等となる。印刷柄としては、例えば、木目、石目、布目、砂目、幾何学模様、文字、全面ベタ、漆黒調、メタリック調、メッキ調等からなる絵柄が挙げられる。
印刷層のバインダーとしては、塩化ビニル/酢酸ビニル系共重合体等のポリビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリエステルウレタン系樹脂、セルロースエステル系樹脂、アルキッド樹脂、塩素化ポリオレフィン系樹脂等の樹脂が挙げられる。
印刷層の形成には、バインダー及び適切な色の顔料又は染料を着色剤として含有する着色インキを用いるとよい。
顔料としては、例えば、ポリアゾ等のアゾ系顔料、イソインドリノン等の有機顔料;黄鉛等の無機顔料が挙げられる。赤色顔料としては、ポリアゾ等のアゾ系顔料、キナクリドン等の有機顔料;弁柄等の無機顔料が挙げられる。青色顔料としては、フタロシアニンブルー等の有機顔料;コバルトブルー等の無機顔料が挙げられる。黒色顔料としては、アニリンブラック等の有機顔料が挙げられる。白色顔料としては、二酸化チタン等の無機顔料が挙げられる。
また、染料としては、本発明の効果を損なわない範囲で、各種公知の染料を使用することができる。
印刷層の形成方法としては、オフセット印刷法、グラビア輪転印刷法、スクリーン印刷法等の公知の印刷法;ダイスコート法、ロールコート法、スプレーコート法等の公知のコート法;フレキソグラフ印刷法等が挙げられる。印刷層の厚さは、必要に応じて適宜決めればよく、通常、0.5〜30μm程度である。
印刷層における印刷抜けの個数は、意匠性、加飾性の観点から、10個/m以下が好ましい。印刷抜けの個数を10個/m以下とすることにより、傷修復型アクリル樹脂フィルムを用いた積層体の外観がより良好となる。印刷層における印刷抜けの個数は、5個/m以下がより好ましく、1個/m以下が特に好ましい。
印刷層は、インサート又はインモールド成形によって得られた積層体において所望の表面外観が得られるよう、インサート又はインモールド成形時の伸張度合いに応じて、適宜その厚さを選択すればよい。
(蒸着層)
蒸着層は、アルミニウム、ニッケル、金、白金、クロム、鉄、銅、インジウム、スズ、銀、チタニウム、鉛、亜鉛等からなる群から選ばれる少なくとも一つの金属、又はこれらの合金、化合物で形成される。蒸着層の形成方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、メッキ法等の方法が挙げられる。金属を蒸着した場合、特に傷が目立つことから本発明の傷修復型アクリル樹脂フィルムは好適に使用出来る。
蒸着層の厚みは、インサート又はインモールド成形によって得られた積層体において所望の表面外観が得られるようインサート又はインモールド成形時の伸張度合いに応じて適宜選択する。
<他の層>
(接着層)
本発明の傷修復型アクリル樹脂フィルムには、必要に応じて接着層を設けてもよい。接着層は、硬化樹脂層が設けられた面とは反対側の表面に形成することが好ましい。
(カバーフィルム)
本発明の傷修復型アクリル樹脂フィルムには、さらにカバーフィルムを設けてもよい。このカバーフィルムは、表面の防塵に有効である。カバーフィルムは、硬化樹脂層の表面、硬化樹脂層が設けられた面とは反対側の表面のいずれにも設けることができるが、硬化樹脂層の表面に設けることが好ましい。カバーフィルムを硬化樹脂層の表面に設けた場合、カバーフィルムは、インモールド、インサート成形する前まで硬化樹脂層に密着し、インモールド、インサート成形する際は直ちに剥離するため、硬化樹脂層に対して適度な密着性及び良好な離型性を有していることが必要である。カバーフィルムとしては、このような条件を満たしたフィルムであれば、任意のフィルムを選択して用いることができる。そのようなフィルムとしては、ポリエチレン系フィルム、ポリプロピレン系フィルム、ポリエステル系フィルム等が挙げられる。
(熱可塑性樹脂層)
本発明の傷修復型アクリル樹脂フィルムを、さらに熱可塑性樹脂層に積層して、積層フィルム又はシートとしてもよい。傷修復型アクリル樹脂フィルムを熱可塑性樹脂層に積層する向きとしては、硬化樹脂層が設けられた面とは反対側の表面が熱可塑性樹脂層に接するように積層することが好ましい。熱可塑性樹脂層は、基材との密着性を高める目的から、基材との相溶性を有する材料からなるものが好ましい。熱可塑性樹脂層は、基材と同じ材料からなるものがより好ましい。熱可塑性樹脂層としては、公知の熱可塑性樹脂フィルム又はシート用いることができ、例えば、アクリル樹脂;ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体);AS樹脂(アクリロニトリル−スチレン共重合体);塩化ビニル樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂;エチレン−酢酸ビニル共重合体またはその鹸化物、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体等のポリオレフィン系共重合体;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート、ポリカーボネート等のポリエステル系樹脂;6−ナイロン、6,6−ナイロン、6,10−ナイロン、12−ナイロン等のポリアミド系樹脂;ポリスチレン樹脂;セルロースアセテート、ニトロセルロース等の繊維素誘導体;ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフロロエチレン、エチレン−テトラフロロエチレン共重合体等のフッ素系樹脂等;またはこれらから選ばれる2種又は3種以上の共重合体または混合物、複合体、積層体等が挙げられる。
これらのうち、熱可塑性樹脂層としては、絵柄層の形成性、積層フィルム又はシートの二次成形性の観点から、アクリル樹脂、ABS樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン、ポリカーボネートが好ましい。
熱可塑性樹脂層には、必要に応じて、一般の配合剤、例えば、安定剤、酸化防止剤、滑剤、加工助剤、可塑剤、耐衝撃剤、発泡剤、充填剤、抗菌剤、防カビ剤、離型剤、帯電防止剤、着色剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、難燃剤等を配合してもよい。
熱可塑性樹脂層の厚さは、必要に応じて適宜決めればよく、通常、25〜400μm程度とすることが好ましい。熱可塑性樹脂層は、熱可塑用アクリル樹脂フィルムの外観が完全に円滑な上面を呈する、基材の表面欠陥を吸収する或いは射出成形時に絵柄層が消失しない程度の厚さを有することが好ましい。
積層フィルム又はシートを得る方法としては、熱ラミネーション、ドライラミネーション、ウェットラミネーション、ホットメルトラミネーション等の公知の方法が挙げられる。また、押出しラミネーションにより傷修復型アクリル樹脂フィルムと熱可塑性樹脂層とを積層することもできる。
本発明の傷修復型アクリル樹脂フィルムを積層フィルム又はシートとすることで、衝撃、変形等の外力に対して取り扱い上十分な強度が発現する。例えば、インサート成形等でフィルムを真空成形した後に金型から取り外したり、その真空成形品を射出成形用金型に装着したりするときに被る衝撃、変形等に対しても、割れ等が生じ難く、取り扱い性が良好となる。さらに、例えば射出成形された基材の表面欠陥が、傷修復型アクリル樹脂フィルムに伝搬されることを最少にする、或いは基材を射出成形する際に、絵柄層が消失しにくくなるといった利点を与える。
傷修復型アクリル樹脂フィルムの片面、積層フィルム又はシートの熱可塑性樹脂層の表面には、必要に応じて、例えばコロナ処理、オゾン処理、プラズマ処理、電離放射線処理、重クロム酸処理、アンカー、プライマー処理等の表面処理を施してもよい。これらの処理は、傷修復型アクリル樹脂フィルムと硬化樹脂層又は絵柄層との間、熱可塑性樹脂層と絵柄層や蒸着層との間、傷修復型アクリル樹脂フィルムと熱可塑性樹脂層との間等の密着性を向上させる。
<積層体>
本発明の積層体は、傷修復型アクリル樹脂フィルム、その積層フィルム又はシートを、真空成形で基材に積層したものである。このとき、硬化樹脂層が設けられている面とは反対側の面が基材に接するように積層して積層体とすることが好ましい。基材の樹脂としては、特に種類を問わない。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体、オレフィン系熱可塑性エラストマー等のポリオレフィン系樹脂;ポリスチレン樹脂、ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)、AS樹脂(アクリロニトリル−スチレン共重合体)、アクリル樹脂、ウレタン系樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等の汎用の熱可塑性または熱硬化性樹脂;ポリフェニレンオキシド・ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール、ポリカーボネート変性ポリフェニレンエーテル、ポリエチレンテレフタレート等の汎用エンジニアリング樹脂;ポリスルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンオキシド、ポリエーテルイミド、ポリイミド、液晶ポリエステル、ポリアリル系耐熱樹脂等のスーパーエンジニアリング樹脂等;ガラス繊維または無機フィラー(タルク、炭酸カルシウム、シリカ、マイカ等)等の補強材、ゴム成分等の改質剤を添加した複合樹脂又は各種変性樹脂等が挙げられる。
これらのうち、基材の材料としては、真空成形が可能な樹脂が好ましい。例えば、ABS樹脂、AS樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂又はこれらを主成分とする樹脂が挙げられる。接着性の点でABS樹脂、AS樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂又はこれらを主成分とする樹脂が好ましく、特にABS樹脂、ポリカーボネート樹脂又はこれらを主成分とする樹脂がより好ましい。ポリオレフィン系樹脂等の熱融着しない樹脂であっても、接着層を設けることで、傷修復型アクリル樹脂フィルム、その積層フィルム又はシートと基材とを成形時に接着させることは可能である。
本発明の積層体の製造方法としては、インサート成形法、インモールド成形法、NGF成形法、TOM成形法等の公知の方法を用いることができる。
インモールド成形時の加熱温度は、傷修復型アクリル樹フィルム、その積層フィル又はシートが軟化する温度以上が好ましい。具体的には、フィルムの熱的性質又は積層体の形状によって適宜設定すればよく、通常70℃以上である。また、あまり温度が高いと、表面外観が悪化したり、離型性が悪くなる傾向がある。これもフィルムの熱的性質又は積層体の形状によって適宜設定すればよく、通常は170℃以下である。さらに、エネルギー効率の観点からは、真空成形時の予備加熱温度は低い方が好ましい。具体的には135℃以下が好ましい。また、予備加熱温度が低くとも成形できるフィルムは、予備加熱温度を低くする代わりに予備加熱時間を短くすることもできる。この場合は、真空成形のハイサイクル化が可能となり工業的利用価値が高い。
真空成形によりフィルムに三次元形状を付与する場合、本発明の傷修復型アクリル樹脂フィルム、その積層フィルム又はシートは、高温時の伸度に富んでおり、非常に有利である。
射出成形される樹脂としては、種類は問わず、射出成形可能な全ての樹脂が使用可能である。射出成形後の樹脂の収縮率を、傷修復型アクリル樹脂フィルム、その積層フィルム又はシートの収縮率に近似させることが、インモールド成形あるいはインサート成形によって得られた積層体の反り、フィルム又はシートの剥がれ等の不具合が解消されるため好ましい。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、実施例中の「部」は「質量部」を表し、「%」は「質量%」を表す。
〔物性の測定、評価方法〕
傷修復型アクリル樹脂フィルムの物性は、以下の方法によって測定、評価した。
(1)硬化樹脂層の厚さ
傷修復型アクリル樹脂フィルムを断面方向に切断したサンプルを、透過型電子顕微鏡(日本電子(株)製 J100S)にて観察し、5箇所で厚さを測定し、それらを平均することにより硬化樹脂層の厚さを求めた。
(2)鉛筆硬度
傷修復型アクリル樹脂フィルムの硬化樹脂層の表面の鉛筆硬度を、JIS K5400に従って測定した。
硬化樹脂層を形成する前のアクリル樹脂フィルムの鉛筆硬度についても同様にした。
(3)ヘイズ
得られた傷修復型アクリル樹脂フィルムのヘイズをJIS K7136に従って測定した(日本電色工業株式会社製、NDH−2000)。
(4)耐傷付き性(耐候性試験前)
スチールウール♯0000を傷修復型アクリル樹脂フィルムの硬化樹脂層側に200gの荷重をかけて押さえ付け、100mmピッチで30往復/1分間のペースで摩擦する、擦り試験を実施し、試験前後のヘイズ値をJIS K7136に従って測定した(日本電色工業株式会社製、NDH−2000)。
試験前後の擦り試験部分のヘイズ値の変化量で、以下のように評価した。
ヘイズ値は3箇所の平均値である。
◎:試験後のヘイズ値から試験前のヘイズ値を引いた数値が2未満
○:試験後のヘイズ値から試験前のヘイズ値を引いた数値が2以上3未満
△:試験後のヘイズ値から試験前のヘイズ値を引いた数値が3以上5未満
×:試験後のヘイズ値から試験前のヘイズ値を引いた数値が5以上
(5)耐候性試験後の耐傷付き性
耐候性促進試験キセノン試験機(スガ試験機製)を用い、RAL−GZ716/1 照射強度:60W/m、ブラックパネル温度60℃、湿度65%、インナーフィルターとアウターフィルターはボロシリケートガラスを使用した条件で、照射108分、雨12分のサイクルの試験を実施し、2000時間経過後のサンプルを取り出し、(3)の方法でフィルムの耐傷つき性を評価した。
(6)傷修復型アクリル樹脂フィルムの柔軟性
ISO527−3の条件で、試験速度200mm/min、試験温度23℃で5回実施して平均した引張破断点伸度の値が15%以上を○、10%以上15%未満を△、10%未満を×とした。
(アクリル樹脂層)
傷修復型アクリル樹脂フィルムのアクリル樹脂層には、次のアクリル樹脂フィルムを使用した。
アクリル樹脂フィルム(A):市販されているSD009NCH(株式会社カネカ製 アクリル系ゴム粒子含有アクリル系樹脂フィルム)
アクリル樹脂フィルム(B):市販されているSD010NDH(株式会社カネカ製 アクリル系ゴム粒子含有アクリル系樹脂フィルム)
アクリル樹脂フィルム(C):
アクリル系ゴム粒子としてM−210(株式会社カネカ製 アクリル系ゴム粒子)40重量部とアクリル系樹脂としてスミペックスEX(住友化学製 PMMA樹脂)60重量部と、配合剤としてチヌビン234(BASF社製 ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤)1.0部とチヌビン1577(BASF社製 トリアジン系紫外線吸収剤)0.5部、イルガノックス1010(BASF社製 酸化防止剤)0.4部、スミライザーGM(住友化学製 熱安定剤)0.3部を添加した後、ヘンシェルミキサーを用いて混合した。この混合物を240℃に加熱した脱気式二軸押出機(東芝機械株式会社製 TEM58SS)に供給し、混練し、ろ過精度10μmのポリマーフィルター〔長瀬産業株式会社製 商品名デナフィルター〕で異物を取り除きながら押出し、ペレットを得た。
得られたペレットを80℃で一昼夜乾燥し、1000mm巾のTダイを取り付けた90mmφのノンベントスクリュー型押出機(L/D=26)を用いて、シリンダー温度180〜250℃の条件で、400メッシュのスクリーンメッシュで異物を取り除きながら押し出し、Tダイ温度240℃、Tダイのスリット幅0.4mmの条件で押し出しした溶融状態のアクリル樹脂フィルムを金属製冷却ロールと金属製弾性ロール(日立造船製 UFロール)間に通し、面転写した後、これを巻き取り機で紙巻に巻き取ることによって厚さ100μmのアクリル樹脂フィルム(C)を製膜した。なお、このアクリル樹脂フィルム(C)の鉛筆硬度は2Bであった。
アクリル樹脂フィルム(D):
M−210の配合部数を5重量部、スミペックスEXの配合部数を95重量部に変更した以外は、アクリル樹脂フィルム(C)の製法と同様の方法でペレット、およびフィルムを製造した。
なお、このアクリル樹脂フィルム(D)の鉛筆硬度は2Hであった。
〔実施例1〕
メチルメタクリレート85部、4官能カプロラクトンポリオール(ダイセル化学工業株式会社製,プラクセル410D,分子量:1000,OH価:220 )15部を配合するとともに、ヘキサメチレンジイソシアネート(武田薬品工業株式会社製,タクネートD−170N,固形分:100 %,NCO%:20.7)36部とを、酢酸エチル2.4部、酢酸ブチル30部、メチルエチルケトン25部、メチルイソブチルケトン35部からなる溶剤に分散させて硬化性樹脂組成物を得た。次に、厚さ75μmのアクリル樹脂フィルム(A)の片面に、硬化性樹脂組成物をバーコーターを使用して塗布した後、80℃、10分の雰囲気下で溶剤を揮発させた。さらに、40℃の雰囲気下で2日間エージングを実施し、硬化性樹脂組成物を硬化させて、傷修復型アクリル樹脂フィルムを得た。得られた傷修復型アクリル樹脂フィルムの硬化樹脂層の厚さは12μmであった。
〔実施例2〕
硬化樹脂層の乾燥後の厚みを15μmにした以外は実施例1と同様に実施して、傷修復型アクリル樹脂フィルムを作製した。
〔実施例3〕
硬化樹脂層の乾燥後の厚みを25μmにした以外は実施例1と同様に実施して、傷修復型アクリル樹脂フィルムを作製した。
〔実施例4〕
アクリル樹脂層として、厚み300μmのアクリル樹脂フィルム(A)を使用した以外は実施例2と同様にして、傷修復型アクリル樹脂フィルムを作製した。
〔実施例5〕
アクリル樹脂フィルム(B)に変更した以外は実施例2と同様に実施して、傷修復型アクリル樹脂フィルムを作製した。
〔実施例6〕
硬化樹脂層の乾燥後の厚みを25μmにした以外は実施例5と同様に実施して、傷修復型アクリル樹脂フィルムを作製した。
〔実施例7〕
アクリル樹脂層として、アクリル樹脂フィルム(C)を使用した以外は実施例2と同様にして、傷修復型アクリル樹脂フィルムを作製した。
〔実施例8〕
硬化樹脂層の乾燥後の厚みを25μmにした以外は実施例7と同様にして、傷修復型アクリル樹脂フィルムを作製した。
〔比較例1〕
硬化樹脂層の乾燥後の厚みを5μmにした以外は実施例1と同様にして、傷修復型アクリル樹脂フィルムを作製した。
〔比較例2〕
硬化樹脂層の乾燥後の厚みを10μmにした以外は実施例1と同様にして、傷修復型アクリル樹脂フィルムを作製した。
〔比較例3〕
硬化樹脂層の乾燥後の厚みを40μmにした以外は実施例1と同様にして、傷修復型アクリル樹脂フィルムを作製した。
〔比較例4〕
硬化樹脂層の乾燥後の厚みを10μmにした以外は実施例4と同様にして、傷修復型アクリル樹脂フィルムを作製した。
〔比較例5〕
硬化樹脂層の乾燥後の厚みを10μmにした以外は実施例5と同様にして、傷修復型アクリル樹脂フィルムを作製した。
〔比較例6〕
硬化樹脂層の乾燥後の厚みを10μmにした以外は実施例7と同様にして、傷修復型アクリル樹脂フィルムを作製した。
〔比較例7〕
アクリル樹脂層としてアクリル樹脂フィルム(D)を使用し、硬化樹脂層の乾燥後の厚みを10μmにした以外は実施例1と同様にして、傷修復型アクリル樹脂フィルムを作製した。
〔比較例8〕
硬化樹脂層の乾燥後の厚みを15μmにした以外は比較例7と同様にして、傷修復型アクリル樹脂フィルムを作製した。
〔比較例9〕
硬化樹脂層の乾燥後の厚みを25μmにした以外は比較例7と同様にして、傷修復型アクリル樹脂フィルムを作製した。
〔比較例10〜13〕
硬化樹脂層を設けずにアクリル樹脂フィルム(A)〜(D)を評価した。
実施例1〜8および比較例1〜13の傷修復型アクリル樹脂フィルムおよびアクリル樹脂フィルムの評価結果をまとめて表1および2に示す。
Figure 2012187765
Figure 2012187765
以上のように、本発明の傷修復型アクリル樹脂フィルムを採用することで、従来のアクリル樹脂フィルムに比して優れた傷付き性を発現し、且つ、柔軟性を持ちトリミング性や取り扱い性が良好であり、インサート成形、インモールド成形、TOM成形を施し、深絞り形状の成形品に成形した場合でも、フィルム表面に割れが発生しない、且つ、PC、携帯、家電、家具のハウジングや車輌用途に用いることができる傷付き性、柔軟性を有する傷修復型アクリル樹脂フィルム及びこれらを基材に積層した積層体を提供することができる。
本発明の傷修復型アクリル樹脂フィルムを有する積層成形品は、特に各種ハウジングや車輌用途、建材用途に適している。具体例としては、携帯電話やパソコン等のハウジング、表示窓、ボタン等の用途、インストルメントパネル、コンソールボックス、メーターカバー、ドアロックペゼル、ステアリングホイール、パワーウィンドウスイッチベース、センタークラスター、ダッシュボード等の自動車内装用途、ウェザーストリップ、バンパー、バンパーガード、サイドマッドガード、ボディーパネル、スポイラー、フロントグリル、ストラットマウント、ホイールキャップ、センターピラー、ドアミラー、センターオーナメント、サイドモール、ドアモール、ウインドモール等、窓、ヘッドランプカバー、テールランプカバー、風防部品等の自動車外装用途、AV機器や家具製品のフロントパネル、ボタン、エンブレム、表面化粧材等の用途、さらには家具用外装材用途、壁面、天井、床等の建築用内装材用途、サイディング等の外壁、塀、屋根、門扉、破風板等の建築用外装材用途、窓枠、扉、手すり、敷居、鴨居等の家具類の表面化粧材用途、各種ディスプレイ、レンズ、ミラー、ゴーグル、窓ガラス等の光学部材用途、あるいは電車、航空機、船舶等の自動車以外の各種乗り物の内外装用途、瓶、化粧品容器、小物入れ等の各種包装容器および材料、景品や小物等の雑貨等のその他各種用途等に好適に使用することができる。

Claims (5)

  1. アクリル樹脂層と、硬化樹脂層とを有し、
    前記硬化樹脂層は、主成分としてメチルメタクリレート、ポリオール化合物、および、イソシアネート化合物を含む硬化性成分を硬化してなり、
    その厚さが12μmから35μmである、
    アクリル樹脂フィルム。
  2. アクリル樹脂フィルムの硬化樹脂層から測定した鉛筆硬度がF以下である、請求項1記載のアクリル樹脂フィルム。
  3. アクリル樹脂層の鉛筆硬度がH以下である、請求項1又は2に記載のアクリル樹脂フィルム。
  4. アクリル樹脂層の厚みが50〜300μmである、請求項1〜3のいずれか一項に記載のアクリル樹脂フィルム。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載のアクリル樹脂フィルムが真空成形で積層されてなる、積層体。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2019093976A (ja) * 2017-11-24 2019-06-20 川崎重工業株式会社 鞍乗型乗物及びその外観部品

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