JP2008296539A - 熱成形用ハードコートアクリル樹脂フィルム、その製造方法、およびそれを含む成形品 - Google Patents

熱成形用ハードコートアクリル樹脂フィルム、その製造方法、およびそれを含む成形品 Download PDF

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Abstract

【課題】インサート成形またはインモールド成形が可能であり、深絞り形状の成形品にした場合でもフィルム表面に割れが発生しない、車輌外装用途に好適な、擦傷性、表面硬度、成形性、耐候性を有する熱成形用ハードコートアクリル樹脂フィルムを提供する。
【解決手段】アクリル樹脂フィルム基体の一方の面上に、熱硬化性樹脂と無機微粒子(a−3)とを含有する硬化性樹脂層が形成されてなり、前記熱硬化性樹脂の固形分100質量部に対する前記無機微粒子(a−3)の含有量が60〜250質量部であり、前記硬化性樹脂層の厚さが1μm〜12μmであり、JIS K7136に基づく曇価(ヘーズ値)が1.0%以下であることを特徴とする本発明の熱成形用ハードコートアクリル樹脂フィルムである。
【選択図】なし

Description

本発明は、熱成形用ハードコートアクリル樹脂フィルム、その製造方法、およびこの熱成形用ハードコートアクリル樹脂フィルムを含む成形品に関する。
低コストで成形品に意匠性を付与する方法として、インサート成形法、またはインモールド成形法がある。インサート成形法は、印刷等の加飾を施したポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂などのフィルムまたはシートを、予め真空成形等によって三次元の形状に成形し、不要なフィルムまたはシート部分を除去した後、射出成形金型内に移し、基材となる樹脂を射出成形することにより一体化させた成形品を得るものである。一方、インモールド成形法は、印刷等の加飾を施したポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂などのフィルムまたはシートを射出成形金型内に設置し、真空成形を施した後、同じ金型内で基材となる樹脂を射出成形することにより一体化させた成形品を得るものである。
インサート成形またはインモールド成形に用いることができる表面硬度、耐熱性に優れたアクリル樹脂フィルム状物として、特定の組成からなるゴム含有重合体と、特定の組成からなる熱可塑性重合体とを特定の割合で混合してなるアクリル樹脂フィルム状物が開示されている(例えば、特許文献1、2参照)。このようなアクリル樹脂フィルム状物は、成形品に加飾性を付与するばかりでなく、クリア塗装の代替材料としての機能を有する。
また、インサート成形またはインモールド成形時の成形白化性に優れ、且つ表面硬度、耐熱性、透明性に優れたアクリル樹脂フィルム状物が開示されている(例えば、特許文献3)。
近年、インサート成形法またはインモールド成形法により成形された、表層にアクリル樹脂フィルム状物層を有する部材が、車輌用途の部品として用いられている。
特定の平均粒子径のゴム含有重合体を特定量含有することで、表面硬度、耐熱性に優れたアクリル樹脂フィルム状物が得られる(例えば、特許文献1参照)。特定の多層構造からなるゴム含有重合体を特定量含有することで、表面硬度、耐熱性に優れたアクリル樹脂フィルム状物が得られる(例えば、特許文献2参照)。特定の多層構造からなるゴム含有重合体を特定量含有することで、成形白化性、表面硬度、耐熱性に優れたアクリル樹脂フィルム状物が得られる(例えば、特許文献3参照)。
これらアクリル樹脂フィルム状物は、建材用途や車輌内装用途に用いられる場合、透明性、加工性、表面硬度および耐候性は、申し分のない性能を有しているが、車輌外装部品などに用いる場合は、耐擦傷性が不十分であり、砂や塵あるいはアスファルト粉といった付着物を布やスポンジあるいは洗車機による洗車等で取り除く際に擦傷痕が付いてしまう。このため、アクリル樹脂フィルム状物の表面が太陽光等の光により、ギラツキを生じ、下地の色や柄が認識し辛くなり意匠の低下を招いていた。また、照明装置等のカバーに用いた場合は、光源からの光を効率よく透過することが不可能となり、ヘッドランプによる視野の確保やテールランプ光の認識が低下するという問題点があった。
かかる問題を解決するために、本発明者らは、先に、側鎖に脂環式エポキシ基またはラジカル重合性不飽和基を有する樹脂と光重合開始剤からなる組成物を基材シート上に積層した、表面粘着性のない光硬化性シートを提案した(例えば、特許文献4および5参照)。これらの光硬化性樹脂組成物または光硬化性シートは、光硬化前の優れた成形性と光硬化後の優れた表面性状(硬度、耐擦傷性、耐候性、密着性等)を併せ持っており、ヘッドランプやテールランプ、センターピラー、サイドモール、ドアモール、コンソールボックス等の自動車内/外装材用途に好適に使用される。しかしながら、表面硬度を発現させるために光(電子線、紫外線、γ線等)による硬化処理を必要とするため、付帯設備の投資によるコスト面での問題があり、工業的に汎用性が低いといった問題があった。
一方で、光硬化を必要としない予め熱架橋することで従来の汎用樹脂製部材の表面硬度を向上させつつ、しかも伸展性があり成形性も具備した樹脂塗料組成物の検討がなされている(例えば、特許文献6および7参照)。特許文献6には、表面に二液型ポリウレタン樹脂を塗布し、熱硬化させることによって、伸展性があって部品形状への賦形性に優れたハードコートがされたアクリル系樹脂成形体が提案されている。また、特許文献7には、無機微粒子を添加することで耐擦傷性を改善させた検討も行われている。いずれの検討においても車輌に用いられるヘッドランプカバー等に用いる場合、表面硬度が低く耐擦傷性が不十分であるという問題点があった。このような自動車用外装部品等の高硬度が要求される部材について、従来の塗装代替フィルムの課題となっていた。
特開平8−323934号公報 特開平11−147237号公報 特開2005−163003号公報 特開2002−80550号公報 特開2002−79621号公報 特開平11−228719号公報 特開平2002−327146号公報
本発明は、従来の塗装代替フィルムに用いられるアクリル樹脂フィルムでは実現困難な耐擦傷性を発現し、且つ取り扱い性が良好であり、インサート成形またはインモールド成形を可能とし、深絞り形状の成形品にした場合でも、フィルム表面に割れが発生しない車輌外装用途に用いることができる擦傷性、表面硬度、成形性、耐候性を有する熱成形用ハードコートアクリル樹脂フィルムを提供することを目的とする。また、熱成形用ハードコートアクリル樹脂フィルムを得るために最適な製造方法を提供することを目的とする。さらに、本発明は、これらを基材に積層した成形品を提供することを目的とする。
本発明の上記目的は、以下の本発明により解決できる。
[1]アクリル樹脂フィルム基体の一方の面上に、熱硬化性樹脂と無機微粒子(a−3)とを含有する硬化性樹脂層が形成されてなり、前記熱硬化性樹脂の固形分100質量部に対する前記無機微粒子(a−3)の含有量が60〜250質量部であり、前記硬化性樹脂層の厚さが1〜12μmであり、JIS K7136に基づく曇価(ヘーズ値)が1.0%以下であることを特徴とする熱成形用ハードコートアクリル樹脂フィルム。
[2]前記無機微粒子(a−3)がコロイダルシリカであることを特徴とする前記[1]に記載の熱成形用ハードコートアクリル樹脂フィルム。
[3]前記熱硬化性樹脂が、ポリイソシアネート(a−1)とアクリルポリオール(a−2)からなるウレタンアクリレート系樹脂であることを特徴とする前記[1]または[2]に熱成形用ハードコートアクリル樹脂フィルム。
[4]アクリル樹脂フィルム基体の、前記熱硬化樹脂層を形成したもう一方の面上に、絵柄層および/または接着層を積層したことを特徴とする前記[1]〜[3]のいずれかに記載の熱成形用ハードコートアクリル樹脂フィルム。
[5]前記[1]〜[4]のいずれかに記載の熱成形用ハードコートアクリル樹脂フィルムの製造方法であって、前記硬化性樹脂層を印刷法またはコート法により形成することを特徴とする熱成形用ハードコートアクリル樹脂フィルムの製造方法。
[6]基材上に、前記[1]〜[4]のいずれかに記載した熱成形用ハードコートアクリル樹脂が積層されていることを特徴とする成形品。
本発明の熱成形用ハードコートアクリル樹脂フィルムを採用すると、従来のアクリル樹脂フィルム状物では実現困難な耐傷品性を発現し、且つ取り扱い性が良好であり、インサート成形またはインモールド成形を施し、深絞り形状の成形品に成形した場合でも、フィルム表面に割れが発生しない車輌外装用途に用いることができる擦傷性、表面硬度、成形性、耐候性を有する熱成形用ハードコートアクリル樹脂フィルム、およびこれらを基材に積層した成形品を提供することができる。また、本発明の方法を採用することで、熱成形用ハードコートアクリル樹脂フィルムを安定的に製造することが可能となる。
<熱成形用ハードコートアクリル樹脂フィルム>
本発明の熱成形用ハードコートアクリル樹脂フィルムは、アクリル樹脂フィルム基体の一方の面上に、熱硬化性樹脂と無機微粒子(a−3)とを含有する硬化性樹脂層が形成されている。無機微粒子(a−3)は、熱硬化性樹脂の固形分100質量部に対して60質量部以上250質量部以下で含有する。硬化性樹脂層は1〜12μmの厚さで形成される。
<アクリル樹脂フィルム基体>
本発明に用いるアクリル樹脂フィルム基体としては、公知のアクリル樹脂フィルムを用いることができるが、車輌用に使用可能な、耐擦傷性、鉛筆硬度、耐熱性、耐候性を有する、例えば、特開平8−323934号公報、特開平11−147237号公報、特開2002−80678号公報、特開2002−80679号公報、特開2005−97351号公報に開示されているものが好ましい。また、インサート成形やインモールド成形を行った場合の耐成形白化性の観点からは、特開2005−163003号公報、特開2005−139416号公報に開示されているものが好ましい。
(加熱収縮率)
アクリル樹脂フィルム基体としては、加熱時にできるだけ収縮しないようなものであることが好ましい。熱成形用ハードコートアクリル樹脂フィルムをABS等の基材シートに貼り合せてインサート成形を実施した場合に、アクリル樹脂フィルム基体の収縮が大きいと基材シートから剥がれてしまう場合がある。
アクリル樹脂フィルム基体としては、130℃雰囲気下60分間加熱処理による、MD方向加熱収縮率が50%以下であり、TD方向加熱収縮率が−10〜10%であるアクリル樹脂フィルム基体が好ましい。このようなアクリル樹脂フィルム基体は、加飾フィルムまたはシートとして、アクリル樹脂フィルムを基材シートに積層した積層シートを用いた場合、インサート成形またはインモールド成形時の加熱の際に、基材シートとアクリル樹脂フィルム基体との界面での剥離を抑える。アクリル樹脂フィルム基体の加熱時の収縮率は小さい方が好ましい。アクリル樹脂フィルム基体のMD方向加熱収縮率は30%以下が好ましく、15%以下がより好ましい。また、0%以上が好ましい。アクリル樹脂フィルム基体のTD方向加熱収縮率は0〜5%が好ましい。
加熱収縮率の測定は、つぎのように行う。まず、A4サイズに切り出したアクリル樹脂フィルム基体の表面に、MD方向(製膜時の流れ方向)およびTD方向(MD方向と垂直に交わる向き)に、5cm間隔に3本の平行な直線を引き、その間隔をノギスで正確に計測する。間隔の計測は2箇所で行い、計測した箇所に目印を付ける。その後、130℃雰囲気下に60分放置して、取り出した後、先に計測した箇所と同じ箇所の間隔をもう一度計測する。2箇所の間隔の平均値を用い、下記式より、加熱収縮率を計算する。
加熱収縮率(%)=((加熱前の間隔−加熱後の間隔)/加熱前の間隔)×100
MD方向およびTD方向が不明であるアクリル樹脂フィルムにおいて、MD方向およびTD方向を特定するには、例えばつぎのように行う。フィルム上に特定半径の円を描き、上記した条件の加熱処理をして、得られたフィルム上の円(異方性がある場合は楕円)の形状から、収縮率が最大となる方向を決定し、その方向をMD方向とし、その方向と垂直な方向をTD方向とする。
(鉛筆硬度)
アクリル樹脂フィルム基体の鉛筆硬度(JIS K5400に基づく測定)は、本発明の熱成形用ハードコートアクリル樹脂フィルムの鉛筆硬度を高めるために、2B以上であることが好ましく、HB以上であることがより好ましく、F以上であることが特に好ましい。
(アクリル樹脂フィルム基体の製造方法)
アクリル樹脂フィルム基体の製造方法としては、溶融流延法、Tダイ法、インフレーション法等の溶融押出法、カレンダー法等の公知の方法が挙げられる。これらのうち、経済性の点からTダイ法が好ましい。
Tダイ法によりアクリル樹脂フィルム基体を成形する場合、金属ロール、非金属ロールおよび金属ベルトから選ばれる複数のロールまたはベルトに狭持して製膜する方法を用いることが好ましい。この方法によれば、得られる熱成形用ハードコートアクリル樹脂フィルムの表面平滑性を向上させ、アクリル樹脂フィルム基体に硬化性樹脂層を形成する際のコーティング抜け、熱成形用ハードコートアクリル樹脂フィルムに印刷処理した際の印刷抜けを抑制することができる。金属ロールとしては、金属製の鏡面タッチロール;特許第2808251号公報または国際公開第97/28950号パンフレットに記載の金属スリーブ(金属製薄膜パイプ)と成型用ロールとからなるスリーブタッチ方式で使用されるロール等が挙げられる。非金属ロールとしては、シリコンゴム製等のタッチロール等が挙げられる。金属ベルトとしては、金属製のエンドレスベルト等が挙げられる。これらの金属ロール、非金属ロールおよび金属ベルトを複数組み合わせて使用してもよい。
金属ロール、非金属ロールおよび金属ベルトから選ばれる複数のロールまたはベルトに狭持して製膜する方法においては、溶融押出後の原料を、実質的にバンク(樹脂溜まり)がない状態で狭持し、実質的に圧延することなく面転写させて製膜することが好ましい。バンク(樹脂溜まり)を形成することなく製膜した場合は、冷却過程にある原料が圧延されることなく面転写されるため、この方法で製膜したアクリル樹脂フィルム基体の加熱収縮率を低減することができる。
また、Tダイ法等で溶融押し出しをする場合は、200メッシュ以上のスクリーンメッシュで溶融状態にあるアクリル樹脂原料を濾過しながら押し出しすることも好ましい。
(アクリル樹脂フィルム基体の厚さ)
アクリル樹脂フィルム基体の厚さは、10〜500μmが好ましい。アクリル樹脂フィルム基体の厚さを500μm以下とすることにより、インサート成形およびインモールド成形に適した剛性が得られ、より安定にフィルムを製造することができる。また、アクリル樹脂フィルム基体の厚みを10μm以上とすることにより、基材の保護性とともに、得られる成形品に深み感をより十分に付与することができる。アクリル樹脂フィルム基体の厚みは、30μm以上がより好ましく、50μm以上が特に好ましい。また、アクリル樹脂フィルム基体の厚みは、300μm以下がより好ましく、200μm以下が特に好ましい。
<硬化性樹脂層>
アクリル樹脂フィルム基体の一方の面上に設けられる硬化性樹脂層の厚さは、1〜12μmであることが必要である。硬化性樹脂層の厚さが1μm以上であれば、成形品となった場合の表面物性(特に耐擦傷性)を発現することができる。好ましくは2μm以上であり、より好ましくは3μm以上であり、さらに好ましくは4μm以上である。硬化性樹脂層の厚さが12μm以下であれば、インサート成形またはインモールド成形を施し、深絞り形状に成形した場合でも、硬化性樹脂層に割れが発生することを軽減できる。硬化性樹脂層の厚さは、好ましくは10μm以下であり、より好ましくは8μm以下である。また、塗工の際に用いる単位面積あたりの塗料量が少なくなるため、溶剤によるアクリル樹脂フィルム基体の物性低下を小さくすることができる。
硬化性樹脂層の厚さは、フィルムの断面を透過型電子顕微鏡で観察し、5箇所で厚さを測定し、それらを平均することにより求められる。
(熱硬化性樹脂)
熱硬化性樹脂としては、耐擦傷性、耐候性の観点から、公知の熱硬化性樹脂を用いることが好ましい。例えば、アクリル系樹脂、ウレタンアクリレート系樹脂、シリコーンアクリレート系樹脂、エポキシ系樹脂、エステル系樹脂を用いることができる。これらのうち、特に成形性の観点から、ポリイソシアネート(a−1)とアクリルポリオール(a−2)とを重合して得られるウレタンアクリレート系樹脂が物性面から好ましい。
ポリイソシアネート(a−1)としては、公知のものを用いることができ、特に、加熱時の黄変が少ないことから、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物からなるイソシアヌレート型ポリイソシアネート;前記ジイソシアネート化合物とトリメチロールプロパンとのアダクト型ポリイソシアネート;前記ジイソシアネート化合物からなるビューレット型ポリイソシアネートが好ましい。なお、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物をそのまま使用することもできる。
アクリルポリオール(a−2)としては、公知のものを用いることができ、特に、メタクリル酸アルキルエステル単位を主成分とし、水酸基価が20〜120mgKOH/gであり、ガラス転移温度が50〜110℃である水酸基含有アクリル樹脂が好ましい。
水酸基含有アクリル樹脂としては、メタクリル酸アルキルエステルモノマーと、水酸基含有ビニルモノマーと、共重合可能な他のモノマーとを共重合して得られる共重合体が挙げられる。メタクリル酸アルキルエステルモノマーとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸t−ブチルが挙げられる。水酸基含有ビニルモノマーとしては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルが挙げられる。共重合可能な他のモノマーとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、スチレン、α−メチルスチレンが挙げられる。これらのモノマーの共重合比は、所望の物性(水酸基価、ガラス転移温度など)を発現するように適宜設定できる。
アクリルポリオール(a−2)の水酸基価は、耐薬品性、耐擦傷性の観点から、20mgKOH/g以上が好ましく、50mgKOH/g以上がより好ましい。水酸基含有アクリル樹脂の水酸基価は、耐薬品性、密着性、成形時の硬化性樹脂層の割れの観点から、120mgKOH/g以下が好ましく、100mgKOH/g以下がより好ましい。
アクリルポリオール(a−2)のガラス転移温度は、耐薬品性、耐熱性、フィルムブロッキング性、鉛筆硬度、耐擦傷性の観点から、50℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましい。
ポリイソシアネート(a−1)は、アクリルポリオール(a−2)の水酸基モル量に対して、イソシアネート基のモル量として0.5〜1.5倍の範囲に相当する添加量となるように使用することが好ましい。0.5倍以上1.5倍以下とすることで、水酸基に対して、十分なイソシアネート基量となるため、硬化が進み耐擦傷性、耐候性は良好となり、成形時の熱硬化性樹脂層の割れが起こり難くなる。
(無機微粒子(a−3))
無機微粒子(a−3)としては、熱硬化性樹脂の透明性に影響を与えないものが好適に使用でき、コロイダルシリカ、アルミナ、酸化チタン、酸化スズ、異種元素ドープ酸化スズ(ATO等)、酸化インジウム、異種元素ドープ酸化インジウム(ITO等)、酸化カドミウム、酸化アンチモン等のうち1種以上を使用できる。なかでも、入手の容易さや価格面、得られる硬化性樹脂層の光線透過率や耐薬品性、耐擦傷性の観点から、コロイダルシリカが特に好ましい。
コロイダルシリカの粒子径は、硬化性樹脂の光線透過率の観点から、200nm以下が好ましく、より好ましくは100nm以下、さらに好ましくは50nm以下である。
無機微粒子(a−3)の添加量は、熱硬化性樹脂の固形分100質量部に対して、60〜250質量部の範囲が好ましく、100〜200質量部の範囲が特に好ましい。このような添加量であれば、添加効果が十分に発現するとともに、硬化性樹脂層による熱成形用ハードコートアクリル樹脂フィルムの成形性の低下を引き起こすおそれもない。
さらに無機微粒子(a−3)表面は、各種のシラン化合物によって、予め表面処理されたものを用いてもよい。表面処理することで、硬化性樹脂の保存安定性をより高めるとともに、得られる成形品の耐薬品性、耐候性もより良好となる。例えばコロイダルシリカは、通常の水性分散液の形態や、有機溶媒に分散させた形態で用いることができるが、熱硬化性樹脂の成分であるウレタンアクリレート系樹脂とともに均一かつ安定に分散させるためには、有機溶媒に分散させたコロイダルシリカを用いることが好ましい。
そのような有機溶媒としては、メタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、エチレングリコール、キシレン/ブタノール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンを例示することができる。なかでも、アクリル樹脂とともに均一に分散させるためには、アクリル樹脂を溶解可能な有機溶媒を選択することが好ましい。
有機溶媒に分散させた形態のコロイダルシリカとしては、分散媒に分散されている市販品、例えば、メタノール分散シリカゾルMA−ST、イソプロピルアルコール分散シリカゾルIPA−ST、n−ブタノール分散シリカゾルNBA−ST、エチレングリコール分散シリカゾルEG−ST、キシレン/ブタノール分散シリカゾルXBA−ST、エチルセロソルブ分散シリカゾルETC−ST、ブチルセロソルブ分散シリカゾルBTC−ST、ジメチルホルムアミド分散シリカゾルDBF−ST、ジメチルアセトアミド分散シリカゾルDMAC−ST、メチルエチルケトン分散シリカゾルMEK−ST、メチルイソブチルケトン分散シリカゾルMIBK−ST(以上商品名、日産化学社製)を用いることができる。
(硬化性樹脂層の形成方法)
印刷法またはコート法により硬化性樹脂層を形成することが好ましい。この場合、硬化性樹脂層となる原料を溶剤に溶解または分散して塗料を調製し、これをアクリル樹脂フィルム基体の一方の面に塗布し、溶剤除去のための加熱乾燥を行うことによって、硬化性樹脂層が形成される。この方法は、硬化性樹脂層とアクリル樹脂フィルム基体との密着性が良好となるため好ましい。
印刷法としては、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法等の公知の印刷方法が挙げられる。
コート法としては、フローコート法、スプレーコート法、バーコート法、グラビアコート法、グラビアリバースコート法、キスリバースコート法、マイクログラビアコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ロッドコート法、ロールドクターコート法、エアナイフコート法、コンマロールコート法、リバースロールコート法、トランスファーロールコート法、キスロールコート法、カーテンコート法、ディッピングコート法等の公知のコート方法が挙げられる。
アクリル樹脂フィルム基体上に、塗料を塗工する場合、溶剤によるアクリル樹脂フィル基体の物性低下軽減の観点から、アクリル樹脂フィル基体1m2あたりに塗工される塗料に含まれる溶剤量は、30g以下が好ましく、20g以下がより好ましく、10g以下が特に好ましい。また、塗工される塗料量は、乾燥・硬化後の硬化性樹脂層の厚さが前述の範囲になるように適宜調整する。
溶剤としては、バインダー樹脂(例えば、アクリルポリオール樹脂)のガラス転移温度より80℃以上高くない、好ましくは30℃以上高くない沸点を有する溶剤が、熱成形用ハードコートアクリル樹脂フィルムに溶剤が残存しにくく好ましい。特に、硬化性樹脂の各成分およびを溶解または均一に分散させることが可能で、かつアクリル樹脂フィルム基体の物性(機械的強度、透明性等)に実用上甚大な悪影響を及ぼさず、さらにアクリル樹脂フィルム基体の主たる構成成分である樹脂成分のガラス転移温度より80℃以上高くない、好ましくは30℃以上高くない沸点を有している揮発性の溶剤が好ましい。
溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、エチレングリコール等のアルコール系溶剤;キシレン、トルエン、ベンゼン等の芳香族系溶剤;ヘキサン、ペンタン等の脂肪族炭化水素系溶剤;クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素系溶剤;フェノール、クレゾール等のフェノール系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;ジエチルエーテル、メトキシトルエン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジブトキシエタン、1,1−ジメトキシメタン、1,1−ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル系溶剤;ギ酸、酢酸、プロピオン酸等の脂肪酸系溶剤;無水酢酸等の酸無水物系溶剤;酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸ブチル、ギ酸ブチル等のエステル系溶剤;エチルアミン、トルイジン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等の窒素含有溶剤;チオフェン、ジメチルスホキシド等の硫黄含有溶剤;ジアセトンアルコール、2−メトキシエタノール(メチルセロソルブ)、2−エトキシエタノール(エチルセロソルブ)、2−ブトキシエタノール(ブチルセロソルブ)、ジエチレングリコール、2−アミノエタノール、アセトシアノヒドリン、ジエタノールアミン、モルホリン、1−アセトキシ−2−エトキシエタン、2−アセトキシ−1−メトキシプロパン等の2種以上の官能基を有する溶剤;水等、各種公知の溶剤が挙げられる。これらは、単独で、または2種以上組み合わせて使用することができる。
これらのうち、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、イソプロピルアルコール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンを主成分とする溶剤が、溶剤によるアクリル樹脂フィル基体の物性低下を軽減することができるため好ましい。また、硬化性樹脂層とアクリル樹脂フィル基体との密着性の観点から、酢酸ブチル、メチルイソブチルケトンを併用することが好ましい。また、塗工後の艶斑の観点からも、酢酸ブチル、メチルイソブチルケトン等の中沸点溶剤、2−アセトキシ−1−メトキシプロパン、シクロヘキサノン等の高沸点溶剤を併用することが好ましい。
使用する塗料は、塗工抜けの軽減、ドクター筋発生軽減の観点から、異物を取り除く目的で、濾過を実施することが好ましい。濾過は、塗料調製後に実施しても良いし、塗工直前または塗工しながら実施することもできる。公知の濾過装置で濾過することができるが、例えば、チッソフィルター(株)製のCPII−10、03、01(商品名)を用いることが好ましい。
塗料には、皮張り防止剤、増粘剤、沈降防止剤、タレ防止剤、消泡剤、レベリング剤等の溶液性状を改善するための公知の添加剤;光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、抗菌剤、防カビ剤、難燃剤等の塗膜性能を改善するための公知の添加剤を添加することができる。
塗工後に、硬化性樹脂層の架橋密度を十分なものとするために、30〜80℃の雰囲気下で、数時間から数日間静置することが好ましい。使用するポリイソシアネートの種類、アクリル樹脂フィルム基体の耐熱性により条件を変えることが好ましい。一例として、ポリヘキサメチレンジイソシアネートを用いた場合、40℃、48時間の条件で十分な架橋密度を有する硬化性樹脂層が得られる。
通常、成形品に塗装によって十分な厚みの塗膜を形成するためには、十数回の重ね塗りが必要になることがあり、この場合、コストがかかり、生産性があまりよくない。それに対して、本発明の成形品は、熱成形用ハードコートアクリル樹脂フィルム自体が塗膜となるため、容易に非常に厚い塗膜を形成することができ、工業的利用価値が高い。
(熱成形用ハードコートアクリル樹脂フィルムの鉛筆硬度)
本発明の熱成形用ハードコートアクリル樹脂フィルムは、鉛筆硬度(JIS K5400に基づく測定)が2B以上であることが好ましい。鉛筆硬度が2B以上の熱成形用ハードコートアクリル樹脂フィルムとすることで、インサート成形またはインモールド成形を施す工程中で、熱成形用ハードコートアクリル樹脂フィルム表面に傷がつきにくく、さらに成形品の耐擦傷性も良好となる。
車輌用部材等の成形品に使用される場合を考慮すると、本発明の熱成形用ハードコートアクリル樹脂フィルムの鉛筆硬度は、HB以上であることが好ましい。鉛筆硬度がHB以上の熱成形用ハードコートアクリル樹脂フィルムを用いた成形品は、ドアウエストガーニッシュ、フロントコントロールパネル、パワーウィンドウスイッチパネル、エアバッグカバー等、各種車輌用部材に好適に使用することができる。用途拡大の観点から工業上非常に有用である。
さらに、本発明の熱成形用ハードコートアクリル樹脂フィルムの鉛筆硬度がF以上であると、ガーゼなど表面の粗い布で擦傷しても傷が目立たなく、鉛筆硬度が2Hの熱成形用ハードコートアクリル樹脂フィルムを用いた成形品と同等の実用上の耐擦傷性能を付与することができるため、工業的利用価値は非常に高い。
このような鉛筆硬度を有する熱成形用ハードコートアクリル樹脂フィルムを得るためには、基材となるアクリル樹脂フィルムの鉛筆硬度が重要である。基材となるアクリル樹脂フィルムの鉛筆硬度は2B以上であることが好ましく、HB以上であることがより好ましく、F以上であることが最も好ましい。
(熱成形用ハードコートアクリル樹脂フィルムのヘーズ値)
熱成形用ハードコートアクリル樹脂フィルムのヘーズ値は、照明装置の光の透過性、あるいは、熱成形用ハードコートアクリル樹脂フィルムを透して下地の絵柄層を見たときの意匠性の観点から、1%以下が好ましく、0.8%以下がより好ましい。ヘーズ値は、JIS K7136の試験方法にて測定した値である。このようなヘーズ値を有する熱成形用ハードコートアクリル樹脂フィルムは、ヘーズ値の小さいアクリル樹脂フィルム基体及び/又はヘーズ値の小さい硬化性樹脂層を適宜組合せることにより得られる。
<絵柄層>
本発明の熱成形用ハードコートアクリル樹脂フィルムには、各種基材に意匠性を付与するために絵柄層を形成してもよい。この場合、硬化性樹脂層が設けられた面とは反対側のアクリル樹脂フィルム基体の面上に絵柄層を形成することが好ましい。また、成形品の製造時には、絵柄層を基材との接着面に配することが加飾面の保護および高級感の付与の点から好ましい。
絵柄層は公知の方法で形成することができる。絵柄層としては、印刷法で形成された印刷層、および/または蒸着法で形成された蒸着層が好ましい。
(印刷層)
印刷層は、インサートまたはインモールド成形によって得られた成形品表面で模様または文字等となる。印刷柄としては、例えば、木目、石目、布目、砂目、幾何学模様、文字、全面ベタ等からなる絵柄が挙げられる。
印刷層の形成には、バインダー、および適切な色の顔料または染料を着色剤として含有する着色インキを用いるとよい。
印刷層のバインダーとしては、塩化ビニル/酢酸ビニル系共重合体等のポリビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリエステルウレタン系樹脂、セルロースエステル系樹脂、アルキッド樹脂、塩素化ポリオレフィン系樹脂等の樹脂が挙げられる。
顔料としては、例えば、つぎのものが挙げられる。黄色顔料としては、ポリアゾ等のアゾ系顔料、イソインドリノン等の有機顔料;黄鉛等の無機顔料が挙げられる。赤色顔料としては、ポリアゾ等のアゾ系顔料、キナクリドン等の有機顔料;弁柄等の無機顔料が挙げられる。青色顔料としては、フタロシアニンブルー等の有機顔料;コバルトブルー等の無機顔料が挙げられる。黒色顔料としては、アニリンブラック等の有機顔料が挙げられる。白色顔料としては、二酸化チタン等の無機顔料が挙げられる。
染料としては、本発明の効果を損なわない範囲で、各種公知の染料を使用することができる。
印刷層の形成方法としては、オフセット印刷法、グラビア輪転印刷法、スクリーン印刷法等の公知の印刷法;ロールコート法、スプレーコート法等の公知のコート法;フレキソグラフ印刷法等が挙げられる。
印刷層は、インサートまたはインモールド成形によって得られた成形品において所望の表面外観が得られるよう、インサートまたはインモールド成形時の伸張度合いに応じて、適宜その厚さを選択すればよい。印刷層の厚さは、通常、0.5〜30μm程度である。
印刷層における印刷抜けの個数は、意匠性、加飾性の観点から、10個/m2以下が好ましい。印刷抜けの個数を10個/m2以下とすることにより、熱成形用ハードコートアクリル樹脂フィルムを用いた成形品の外観がより良好となる。印刷層における印刷抜けの個数は、5個/m2以下がより好ましく、1個/m2以下が特に好ましい。
(蒸着層)
蒸着層は、アルミニウム、ニッケル、金、白金、クロム、鉄、銅、インジウム、スズ、銀、チタニウム、鉛、亜鉛等からなる群から選ばれる少なくとも一つの金属、またはこれらの合金、または化合物で形成される。蒸着層の形成方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、メッキ法等の方法が挙げられる。
蒸着層は、インサートまたはインモールド成形によって得られた成形品において所望の表面外観が得られるよう、インサートまたはインモールド成形時の伸張度合いに応じて、適宜その厚みを選択すればよい。
<他の層>
(接着層)
本発明の熱成形用ハードコートアクリル樹脂フィルムには、必要に応じて接着層を設けてもよい。接着層は、硬化性樹脂層が設けられた面とは反対側の表面に形成することが好ましい。
(カバーフィルム)
また、本発明の熱成形用ハードコートアクリル樹脂フィルムには、さらにカバーフィルムを設けてもよい。このカバーフィルムは、熱成形用ハードコートアクリル樹脂フィルムの表面の防塵に有効である。カバーフィルムは、硬化性樹脂層の表面、硬化性樹脂層が設けられた面とは反対側の表面のいずれにも設けることができる。少なくとも硬化性樹脂層の表面に設けることが好ましい。
カバーフィルムを硬化性樹脂層の表面に設けた場合、カバーフィルムは、インモールド、インサート成形する前まで硬化性樹脂層に密着し、インモールド、インサート成形する際は直ちに剥離するため、硬化性樹脂層に対して適度な密着性および良好な離型性を有していることが必要である。カバーフィルムとしては、このような条件を満たしたフィルムであれば、任意のフィルムを選択して用いることができる。そのようなフィルムとしては、例えば、ポリエチレン系フィルム、ポリプロピレン系フィルム、ポリエステル系フィルム等が挙げられる。
<積層フィルムまたはシート>
本発明の熱成形用ハードコートアクリル樹脂フィルムを、さらに熱可塑性樹脂層に積層して、積層フィルムまたはシートとしてもよい。熱成形用ハードコートアクリル樹脂フィルムを熱可塑性樹脂層に積層する向きとしては、硬化性樹脂層が設けられた面とは反対側の表面が熱可塑性樹脂層に接するように積層することが好ましい。
熱可塑性樹脂層は、成形品となる基材との密着性を高める目的から、基材との相溶性を有する材料からなるものが好ましい。熱可塑性樹脂層は、基材と同じ材料からなるものがより好ましい。熱可塑性樹脂層としては、公知の熱可塑性樹脂フィルムまたはシート用いることができ、例えば、アクリル樹脂;ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体);AS樹脂(アクリロニトリル−スチレン共重合体);塩化ビニル樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂;エチレン−酢酸ビニル共重合体またはその鹸化物、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体等のポリオレフィン系共重合体;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート、ポリカーボネート等のポリエステル系樹脂;6−ナイロン、6,6−ナイロン、6,10−ナイロン、12−ナイロン等のポリアミド系樹脂;ポリスチレン樹脂;セルロースアセテート、ニトロセルロース等の繊維素誘導体;ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフロロエチレン、エチレン−テトラフロロエチレン共重合体等のフッ素系樹脂等;またはこれらから選ばれる2種、または3種以上の共重合体または混合物、複合体、積層体等が挙げられる。
これらのうち、熱可塑性樹脂層としては、絵柄層の形成性、積層フィルムまたはシートの二次成形性の観点から、アクリル樹脂、ABS樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン、ポリカーボネートが好ましい。
熱可塑性樹脂層には、必要に応じて、一般の配合剤、例えば、安定剤、酸化防止剤、滑剤、加工助剤、可塑剤、耐衝撃剤、発泡剤、充填剤、抗菌剤、防カビ剤、離型剤、帯電防止剤、着色剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、難燃剤等を配合してもよい。
熱可塑性樹脂層の厚さは、必要に応じて適宜決めればよく、通常、20〜500μm程度とすることが好ましい。熱可塑性樹脂層は、熱可塑用アクリル樹脂フィルムの外観が完全に円滑な上面を呈する、基材の表面欠陥を吸収する、または射出成形時に絵柄層が消失しない、程度の厚さを有することが好ましい。
積層フィルムまたはシートを得る方法としては、熱ラミネーション、ドライラミネーション、ウェットラミネーション、ホットメルトラミネーション等の公知の方法が挙げられる。また、押し出しラミネーションにより熱成形用ハードコートアクリル樹脂フィルムと熱可塑性樹脂層とを積層することもできる。
本発明の熱成形用ハードコートアクリル樹脂フィルムを積層フィルムまたはシートとすることで、衝撃、変形等の外力に対して取り扱い上十分な強度が発現する。例えば、インサート成形等でフィルムを真空成形した後に金型から取り外したり、その真空成形品を射出成形用金型に装着したりするときに被る衝撃、変形等に対しても、割れ等が生じ難く、取り扱い性が良好となる。さらに、例えば射出成形された基材の表面欠陥が、熱成形用ハードコートアクリル樹脂フィルムに伝搬されることを最少にする、または基材を射出成形する際に、絵柄層が消失しにくくなるといった利点を与える。
必要に応じて、熱成形用ハードコートアクリル樹脂フィルムの片面、積層フィルムまたはシートの熱可塑性樹脂層の表面に、例えばコロナ処理、オゾン処理、プラズマ処理、電離放射線処理、重クロム酸処理、アンカー、プライマー処理等の表面処理を施してもよい。熱成形用ハードコートアクリル樹脂フィルムと硬化性樹脂層または絵柄層との間、熱可塑性樹脂層と絵柄層との間、熱成形用ハードコートアクリル樹脂フィルムと熱可塑性樹脂層との間等の密着性を向上させることができる。
<成形品>
本発明の成形品は、本発明の熱成形用ハードコートアクリル樹脂フィルム、その積層フィルムまたはシートを、基材に積層したものである。このとき、硬化性樹脂層が設けられた面とは反対側の面が基材に接するように、熱成形用ハードコートアクリル樹脂フィルムを基材に積層して成形品とすることが好ましい。
基材の材質としては、樹脂;木材単板、木材合板、パーティクルボード、中密度繊維板(MDF)等の木材板;木質繊維板等の水質板;鉄、アルミニウム等の金属等が挙げられる。
樹脂としては、種類は問わず、公知の樹脂が使用可能である。樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体、オレフィン系熱可塑性エラストマー等のポリオレフィン系樹脂;ポリスチレン樹脂、ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)、AS樹脂(アクリロニトリル−スチレン共重合体)、アクリル樹脂、ウレタン系樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等の汎用の熱可塑性または熱硬化性樹脂;ポリフェニレンオキシド・ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール、ポリカーボネート変性ポリフェニレンエーテル、ポリエチレンテレフタレート等の汎用エンジニアリング樹脂;ポリスルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンオキシド、ポリエーテルイミド、ポリイミド、液晶ポリエステル、ポリアリル系耐熱樹脂等のスーパーエンジニアリング樹脂等;ガラス繊維または無機フィラー(タルク、炭酸カルシウム、シリカ、マイカ等)等の補強材、ゴム成分等の改質剤を添加した複合樹脂または各種変性樹脂等が挙げられる。
これらのうち、基材の材料としては、熱成形用ハードコートアクリル樹脂フィルム、その積層フィルムまたはシートと溶融接着可能なものが好ましい。例えば、ABS樹脂、AS樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、またはこれらを主成分とする樹脂が挙げられる。接着性の点でABS樹脂、AS樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂、またはこれらを主成分とする樹脂が好ましく、特にABS樹脂、ポリカーボネート樹脂、またはこれらを主成分とする樹脂がより好ましい。
ポリオレフィン系樹脂等の熱融着しない樹脂であっても、接着層を設けることで、熱成形用ハードコートアクリル樹脂フィルム、その積層フィルムまたはシートからなる群より選ばれる1つと基材とを成形時に接着させることは可能である。
本発明の成形品の製造方法としては、二次元形状の成形品の場合で、かつ基材が熱融着できるものの場合は、熱ラミネーション等の公知の方法を用いることができる。例えば、木材単板、木材合板、パーティクルボード、中密度繊維板(MDF)等の木材板、木質繊維板等の水質板、鉄、アルミニウム等の金属等、熱融着しない基材に対しては、接着層を介して貼り合わせることが可能である。
三次元形状の成形品の場合は、インサート成形法、インモールド成形法等の公知の方法を用いることができる。
インモールド成形法は、熱成形用ハードコートアクリル樹脂フィルム、またはその積層フィルムまたはシートを加熱した後、真空引き機能を持つ金型内で真空成形を行い、ついで、同じ金型内において基材となる樹脂を射出成形することにより、熱成形用ハードコートアクリル樹脂フィルム、またはその積層フィルムまたはシートと基材とを一体化させた成形品を得る方法である。インモールド成形法は、フィルムの成形と射出成形を一工程で行えるため、作業性、経済性の点から好ましい。
熱可塑性樹脂層を有する積層フィルムまたはシートは、熱可塑性樹脂層が存在するために絵柄層の消失をより軽減することができる点で好ましい。
インモールド成形時の加熱温度は、熱成形用ハードコートアクリル樹フィルムまたはシートが軟化する温度以上が好ましい。具体的には、フィルムの熱的性質または成形品の形状によって適宜設定すればよく、通常70℃以上である。また、あまり温度が高いと、表面外観が悪化したり、離型性が悪くなる傾向にある。これもフィルムの熱的性質または成形品の形状によって適宜設定すればよく、通常は170℃以下である。さらに、エネルギー効率の観点からは、真空成形時の予備加熱温度は低い方が好ましい。具体的には135℃以下が好ましい。また、予備加熱温度が低くとも成形できるフィルムは、予備加熱温度を低くする代わりに予備加熱時間を短くすることもできる。この場合は、真空成形のハイサイクル化が可能となり、工業的利用価値が高い。
真空成形によりフィルムに三次元形状を付与する場合、本発明の熱成形用ハードコートアクリル樹脂フィルム、またはその積層フィルムまたはシートは、高温時の伸度に富んでおり、非常に有利である。
射出成形される樹脂としては、種類は問わず、射出成形可能な全ての樹脂が使用可能である。射出成形後の樹脂の収縮率を、熱成形用ハードコートアクリル樹脂フィルム、またはその積層フィルムまたはシートの収縮率に近似させることが、インモールド成形、インサート成形によって得られた成形品の反り、またはフィルムまたはシートの剥がれ等の不具合を解消できるため好ましい。
本発明の成形品は、特に、車輌用部材、建材に適している。具体例としては、インストルメントパネル、コンソールボックス、メーターカバー、ドアロックペゼル、ステアリングホイール、パワーウィンドウスイッチベース、センタークラスター、ダッシュボード等の自動車内装用部材;ウェザーストリップ、バンパー、バンパーガード、サイドマッドガード、ボディーパネル、スポイラー、フロントグリル、ストラットマウント、ホイールキャップ、センターピラー、ドアミラー、センターオーナメント、サイドモール、ドアモール、ウインドモール等、窓、ヘッドランプカバー、テールランプカバー、風防部品等の自動車外装用部材;AV機器、家具製品等のフロントパネル、ボタン、エンブレム、表面化粧材等;携帯電話等のハウジング、表示窓、ボタン等;家具用外装材;壁面、天井、床等の建築用内装材;サイディング等の外壁、塀、屋根、門扉、破風板等の建築用外装材;窓枠、扉、手すり、敷居、鴨居等の家具類の表面化粧材;各種ディスプレイ、レンズ、ミラー、ゴーグル、窓ガラス等の光学部材;電車、航空機、船舶等の自動車以外の各種乗り物の内外装用部材;瓶、化粧品容器、小物入れ等の各種包装容器、包装材料;景品、小物等の雑貨等のその他各種用途等に好適に使用することができる。
本発明の熱成形用ハードコートアクリル樹脂フィルムを採用すると、従来のアクリル樹脂フィルムでは実現困難な耐薬品性を発現し、且つ取り扱い性が良好であり、インサート成形またはインモールド成形を施し、深絞り形状の成形品に成形した場合でも、フィルム表面に割れが発生しない、かつ車輌用途に用いることができる耐擦傷性、表面硬度、耐熱性を有する熱成形用ハードコートアクリル樹脂フィルム、およびこれらを基材に積層した成形品を提供することができる。また、本発明の方法を採用することで、熱成形用ハードコートアクリル樹脂フィルムを安定的に製造することが可能となる。従来のアクリル樹脂フィルムに比べ、使用用途を飛躍的に広げることが可能である。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は実施例により限定されるものではない。実施例中の「部」とあるのは「質量部」を表し、「%」は「質量%」を表す。また、実施例中の略号は表1の通りである。
Figure 2008296539
〔物性の測定、評価方法〕
ゴム含有多段重合体(I)およびゴム含有重合体(II)、熱可塑性重合体(III)、熱可塑性重合体(IV)および熱可塑性重合体(V)の物性、作製したアクリル樹脂フィルム基体(A)、アクリル樹脂フィルム基体(B)、実施例1〜5、比較例1〜3において得られた熱成形用ハードコートアクリル樹脂フィルム、および成形品(積層体)等の物性は、以下のように測定、評価した。なお、積層体による評価は、以下の(11)に示した成形性の評価用に作製した積層体を用いて行った。
(1)ゴム含有多段重合体(I)およびゴム含有重合体(II)の質量平均粒子径:
乳化重合にて得られたゴム含有多段重合体(I)およびゴム含有重合体(II)の重合体ラテックスについて、大塚電子(株)製、光散乱光度計DLS−700(商品名)を用い、動的光散乱法で測定した。
(2)ゴム含有多段重合体(I)およびゴム含有重合体(II)のゲル含有率:
所定量(抽出前質量)のゴム含有多段重合体(I)およびゴム含有重合体(II)(重合後、得られた凝固粉)をアセトン溶媒中、還流下で抽出処理し、この処理液を遠心分離により分別し、乾燥後、アセトン不溶分の質量を測定し(抽出後質量)、下記式にて算出した。
ゲル含有率(%)=抽出後質量(g)/抽出前質量(g)×100
(3)ゴム含有多段重合体(I)およびゴム含有重合体(II)、バインダー樹脂のガラス転移温度(Tg):
ポリマーハンドブック〔Polymer HandBook(J.Brandrup,Interscience,1989)〕に記載されている値を用いてFOXの式から算出した。
(4)熱可塑性重合体(III)、熱可塑性重合体(IV)、熱可塑性重合体(V)の還元粘度:
重合体0.1gをクロロホルム100mLに溶解し、25℃で測定した。
(5)アクリルポリオールの水酸基価:
JIS K0070に従って測定した。
(6)アクリルポリオールの重量平均分子量:
Shimadzu LC−6Aシステム(商品名、(株)島津製作所製)を用い、GPCカラムとしてKF−805L(商品名、昭和電工(株)製)を3本連結したものを用い、溶媒としてTHFを用い、ポリスチレン換算で測定した。
(7)熱成形用ハードコートアクリル樹脂フィルムの硬化性樹脂層の厚さ:
熱成形用ハードコートアクリル樹脂フィルムを断面方向に70nmの厚みに切断したサンプルを、透過型電子顕微鏡(日本電子(株)製、J100S(商品名))にて観察し、5箇所で厚さを測定し、それらを平均することにより硬化性樹脂層の厚さを求めた。
(8)熱成形用ハードコートアクリル樹脂フィルムの鉛筆硬度:
JIS K5400に従って測定した。なお、硬化性樹脂層の表面の鉛筆硬度を測定した。
(9)熱成形用ハードコートアクリル樹脂フィルムの表面光沢:
JIS Z8741に従い、グロスメーター(ミノルタ製、Multi−Gloss268型(商品名))を用い、60°での表面光沢を測定した。なお、フィルムを60°光沢度が1%以下の黒紙の上に置いて測定した。
(10)熱成形用ハードコートアクリル樹脂フィルムのヘーズ:
JIS K7136に従って評価した。
(11)熱成形用ハードコートアクリル樹脂フィルムの積層体による評価:
(熱成形用ハードコートアクリル樹脂フィルムのインモールド成形性)
熱成形用ハードコートアクリル樹脂フィルムを用いてインモールド成形を行った。
具体的には、真空引き機能を有し、キャビティー側の金型の底、かつ中央のゲートから横方向に3cmの位置に、1cm2、深さ1mmの凹みがある金型を用い、J85ELII型射出成形機(商品名、(株)日本製鋼所製)およびホットパックシステム(商品名、日本写真印刷(株)製)を組み合わせたインモールド成形装置により、インモールド成形を行った。
詳細な積層体の形状は、縦150mm×横120mm×厚さ2mm、深さ10mmの箱型であり、金型のゲート位置は、積層体中央に1箇所、中央ゲートの上下(積層体縦方向)40mmの位置に各1箇所の計3箇所であり、ゲート形状は、直径1mmのピンポイントゲートである。また、金型のキャビティー側の底面と側面を結ぶ角のコーナーRは約3である。つまり、アクリル樹脂フィルムがラミネートされる側の積層体のコーナーRは約3である。コーナーRは、FUJI TOOL製、RADIUS GAGE(商品名)で測定した。
熱成形用ハードコートアクリル樹脂フィルムの真空成形は、ヒーター設定温度約330℃、加熱時間15秒、ヒーターとフィルムとの距離15mmの条件で行い、硬化性樹脂層が金型と接する向きに真空成形を実施した。
また、引き続き同一金型内で実施する射出成形は、シリンダー温度250℃、射出速度30%、射出圧力43%、金型温度60℃の条件で、硬化性樹脂層と反対側から基材樹脂を射出した。基材樹脂としては、ポリカーボネート樹脂(帝人化成株式会社製、商品名「パンライト−L1225Z」)を用いた。
得られた積層体に形成された1cm2、高さ1mmの凸部分、または積層体エッジ部のコーナー付近の状態を観察し、以下のように評価した。
(コーナー付近の割れについて)
○:割れなし。
×:硬化性樹脂層に割れが発生。
(コーナー付近の白化に関して)
○:フィルム白化なし。
×:フィルム強い白化あり。
(耐擦傷性)
#000スチールウールを直径1インチの円形パッドに装着し、往復式摩耗試験機台上に保持した試料表面にこのパッドを置いて、パッドとスチールウールの質量を含めた単位面積あたりの荷重が14KPaになるようにし、往復速度10cm/secで10回往復させ擦傷した。この試料をエタノールで洗浄した後、ヘーズメーターでヘーズ値を測定した。そして(擦傷後のヘーズ値)−(擦傷前のヘーズ値)で表される数値を耐擦傷性(%)として示した。
○:試験前のヘーズから試験後のヘーズを引いた数値が3未満。
△:試験前のヘーズから試験後のヘーズを引いた数値が3以上、10未満。
×:試験前のヘーズから試験後のヘーズを引いた数値が10以上。
(耐候性)
サンシャインウエザーメーター(スガ試験機製)を用い、乾燥48分、雨12分のサイクルで3000時間および4000時間曝露試験したときの外観を目視評価した。
○:良好。
△:水垢付着や白化またはクラック有り。
×:著しく白化または無数のクラック有り。
(密着性)
JIS K 5400に準じて、成形樹脂とアクリル樹脂フィルムとの界面に達する切込みをカッターで入れて、1mm×1mmの碁盤目を100マス作製し、ニチバン製セロテープ(登録商標)を圧着後、90度の角度に剥離した。
○:外観変化なし。
△:碁盤目周囲の剥離、もしくは碁盤目剥離少し有り。
×:碁盤目周囲の剥離、および/もしくは碁盤目剥離が著しい。
〔製造例1〕
(ゴム含有多段重合体(I)の製造)
攪拌機を備えた容器に脱イオン水10.8部を仕込んだ後、MMA 0.3部、n−BA 4.5部、1,3−BD 0.2部、AMA 0.05部およびCHP 0.025部からなる単量体成分を投入し、室温下にて攪拌混合した。ついで、攪拌しながら、乳化剤(東邦化学工業(株)製、商品名「フォスファノールRS610NA」)1.3部を上記容器内に投入し、攪拌を20分間継続して乳化液を調製した。
つぎに、冷却器付き重合容器内に脱イオン水139.2部を投入し、75℃に昇温した。さらに、イオン交換水5部にソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.20部、硫酸第一鉄0.0001部およびEDTA0.0003部を加えて調製した混合物を重合容器内に一度に投入した。ついで、窒素下で攪拌しながら、調製した乳化液を8分間にわたって重合容器に滴下した後、15分間反応を継続させ、弾性重合体の第1段階目の重合(第1段階目重合体(I−A−1))を完結した。続いて、MMA 9.6部、n−BA 14.4部、1,3−BD 1.0部およびAMA 0.25部からなる単量体成分を、CHP 0.016部とともに、90分間にわたって重合容器に滴下した後、60分間反応を継続させ、弾性重合体の2段目重合体の重合(第2段階目重合体(I−A−2))を完結させ、弾性重合体(I−A)を得た。
続いて、MMA 6部、MA 4部およびAMA 0.075部からなる単量体成分を、CHP 0.0125部とともに、45分間にわたって重合容器に滴下した後、60分間反応を継続させ、中間重合体(I−B)を形成させた。
続いて、MMA 57部、MA 3部、n−OM 0.264部およびt−BH 0.075部からなる単量体成分を140分間にわたって重合容器に滴下した後、60分間反応を継続させ、硬質重合体(I−C)を形成して、ゴム含有多段重合体(I)の重合体ラテックスを得た。硬質重合体(I−C)単独のTgは99℃であった。また、重合後に測定したゴム含有多段重合体(I)の質量平均粒子径は0.11μmであった。
得られたゴム含有多段重合体(I)の重合体ラテックスを、濾材としてSUS製のメッシュ(平均目開き:62μm)を取り付けた振動型濾過装置を用いて濾過した後、酢酸カルシウム3.5部を含む水溶液中で塩析させ、水洗して回収した後、乾燥し、粉体状のゴム含有多段重合体(I)を得た。ゴム含有多段重合体(I)のゲル含有率は、70%であった。
また、得られたゴム含有多段重合体(I)214.3gを目開き25μmのナイロンメッシュで濾過したアセトン1500mlに投入し、3時間攪拌して、ゴム含有多段重合体(I)のアセトン分散液を調製した。ついで、この分散液を目開き32μmのナイロンメッシュで濾過した後、ナイロンメッシュごとクロロホルム中で15分間超音波洗浄することでメッシュ上の捕捉物をクロロホルム洗浄した。ついで、目開き25μmのナイロンメッシュで濾過したアセトン150mlに上記超音波洗浄後の捕捉物をナイロンメッシュごと投入し、この液を15分間超音波処理した後、ナイロンメッシュを除去して、メッシュ上の捕捉物のアセトン分散液150mlを調製した。ついで、この分散液70mlについて、リオン(株)製、自動式液中微粒子計測器(型式:KL−01)にて25℃下で測定し、直径55μm以上の粒子の数を求めたところ、10個であった。
〔製造例2〕
(ゴム含有重合体(II)の製造)
窒素雰囲気下、還流冷却器付き反応容器内に脱イオン水244部を入れ、80℃に昇温した。そして、表2に示す(イ)を添加し、撹拌しながら、表2に示す弾性重合体の第1段階目重合体(II−A−1)用の原料(ロ)の1/15を仕込み、15分間保持した。ついで、残りの原料(ロ)を、水に対する単量体成分[原料(ロ)]の増加率が8%/時間となる速度で、連続的に添加した後、60分間保持し、弾性重合体の第1段階目重合体(II−A−1)のラテックスを得た。続いて、このラテックスにソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.6部を加え、15分間保持した。そして、窒素雰囲気下、80℃で撹拌しながら、表2に示す弾性重合体の第2段階目重合体(II−A−2)用の原料(ハ)を、水に対する単量体成分[原料(ハ)]の増加率が4%/時間となる速度で、連続的に添加した後、120分間保持し、弾性重合体の2段階目重合体(II−A−2)を形成し、弾性重合体(II−A)のラテックスを得た。
続いて、このラテックスにソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.4部を加え、15分間保持した。そして、窒素雰囲気下、80℃で撹拌しながら、表2に示す硬質重合体(II−C)用の原料(ニ)を、水に対する単量体成分[原料(ニ)]の増加率が10%/時間となる速度で、連続的に添加した後、60分間保持し、硬質重合体(II−C)を形成し、ゴム含有重合体(II)の重合体ラテックスを得た。硬質重合体(II−C)単独のTgは99℃であった。また、重合後に測定したゴム含有重合体(II)の質量平均粒子径は0.28μmであった。
得られたゴム含有重合体(II)の重合体ラテックスに酢酸カルシウムを添加し、凝析、凝集、固化反応を行い、濾過、水洗後、乾燥して、粉体状のゴム含有重合体(II)を得た。ゴム含有重合体(II)のゲル含有率は、90%であった。
Figure 2008296539
〔製造例3〕
(熱可塑性重合体(III)の製造)
反応容器に窒素置換したイオン交換水200部を仕込み、さらに乳化剤として花王(株)製、商品名「ラテムルASK」1部および過硫酸カリウム0.15部を仕込んだ。
つぎに、MMA 40部、n−BA 2部およびn−OM 0.004部を仕込み、窒素雰囲気下、65℃で3時間攪拌し、重合を完結させた。
続いて、MMA 44部およびn−BA 14部からなる単量体成分を2時間にわたって滴下した後、2時間保持し、重合を完結した。
得られた熱可塑性重合体(III)の重合体ラテックスを0.25%硫酸水溶液に添加し、重合体を酸析させた後、脱水、水洗、乾燥し、粉体状の熱可塑性重合体(III)を回収した。得られた熱可塑性重合体(III)の還元粘度は、0.38L/gであった。
〔製造例4〕
(熱可塑性重合体(IV)の製造)
(i)分散安定剤であるアニオン系高分子化合物水溶液(A1)の製造
攪拌機を備えた重合装置に、メタクリル酸2−スルホエチルナトリウム58部、メタクリル酸カリウム水溶液(メタクリル酸カリウム分30%)31部、メタクリル酸メチル11部からなる単量体混合物と、脱イオン水900部とを加えて攪拌溶解させた。その後、窒素雰囲気下で混合物を攪拌しながら60℃まで昇温し、6時間攪拌しつつ60℃で保持させてアニオン系高分子化合物水溶液を得た。この際、温度が50℃に到達した後、重合開始剤として過硫酸アンモニウム0.1部を添加し、さらに別に計量したメタクリル酸メチル11部を75分間かけて、上記の反応系に連続的に滴下した。上記した製造方法により得られたアニオン系高分子化合物水溶液を、(A1)とする。
(ii)分散安定剤であるアニオン系高分子化合物水溶液(A2)の製造
攪拌機を備えた重合装置に、水酸化カリウム水溶液(水酸化カリウム分17.1%)68部、メタクリル酸メチル32部を加えてなる混合物を攪拌した。ケン化反応終了後、混合物の温度を80℃まで昇温し、4時間攪拌しつつ80℃で保持させてアニオン系高分子化合物水溶液を得た。この際、温度が72℃に到達した後、重合開始剤として過硫酸アンモニウム0.1部を添加した。その後、攪拌機を備えた重合装置内に脱イオン水1000部を分割投入すると同時に、攪拌機を備えた容器にアニオン系高分子化合物水溶液を移液・回収した。上記した製造方法により得られたアニオン系高分子化合物水溶液を、(A2)とする。
(iii)懸濁重合方法
攪拌機を備えた内容積10リットルのセパラブルフラスコに、脱イオン水6000mlを入れ、分散安定剤として上記(i)で得られたアニオン系高分子化合物水溶液(A1)4g、上記(ii)で得られたアニオン系高分子化合物水溶液(A2)1g、分散安定助剤として硫酸ナトリウム9gを加え攪拌・溶解させた。また、攪拌機を備えた別容器に用意した、MMA2700g、MA300gの単量体混合物に、重合開始剤としてAIBN3g、連鎖移動剤としてn−OM6.6g、離型剤としてリケマールS−100A(商品名、理研ビタミン株式会社製)6gを加え、攪拌・溶解させた。この単量体混合物を前記攪拌機の設備を備えた内容積10Lのセパラブルフラスコに投入し、窒素置換しながら攪拌機の回転数300rpmで15分間攪拌した。その後、80℃に加温して重合を開始させ、重合発熱ピーク終了後、95℃で60分間の熱処理を行い、重合を完結させた。
この懸濁重合方法で得られた重合体含有水溶液を脱水、水洗、乾燥した後、粉体状の熱可塑性重合体(IV)を回収した。この熱可塑性重合体(IV)を0.1gクロロホルム100mlに溶解し、25℃で還元粘度を測定した結果、0.06L/gであった。
〔製造例5〕
(熱可塑性重合体(V)の製造)
上記〔製造例4〕の熱可塑性重合体(IV)の製造方法のうち、MMAを2940g、MAを60gに変更した以外は、同様の懸濁重合方法で実施した。この熱可塑性重合体(V)を0.1gクロロホルム100mlに溶解し、25℃で還元粘度を測定した結果、0.06L/gであった。
〔製造例6〕
(アクリル樹脂フィルム基体(A)の製造)
ゴム含有多段重合体(I)75部および熱可塑性重合体(V)[MMA/MA共重合体(MMA/MA=99/1(質量比)、還元粘度ηsp/c=0.06L/g)]25部に、配合剤としてチバスペシャリティケミカルズ社製、商品名「チヌビン234」1.4部、旭電化工業(株)製、商品名「アデカスタブAO−50」0.1部、および旭電化工業(株)製、商品名「アデカスタブLA−67」0.3部を添加した後、ヘンシェルミキサーを用いて混合した。この混合物を230℃に加熱した脱気式押出機(池貝鉄工(株)製、PCM−30(商品名))に供給し、混練して、300メッシュのスクリーンメッシュで異物を取り除きながら押し出し、ペレットを得た。
上記の方法で製造したペレットを80℃で一昼夜乾燥し、300mm巾のTダイを取り付けた40mmφのノンベントスクリュー型押出機(L/D=26)を用いて、シリンダー温度180〜240℃の条件で、500メッシュのスクリーンメッシュで異物を取り除きながら押し出し、Tダイ温度240℃、Tダイのスリット幅0.3mmの条件で押し出しした溶融状態のアクリル樹脂フィルムを2本の金属製冷却ロール間に通し、バンク(樹脂溜まり)のない状態で樹脂を挟持し、圧延せずに面転写した後、これを巻き取り機で紙巻に巻き取ることによって厚さ125μmのアクリル樹脂フィルム基体(A)を製膜した。なお、このアクリル樹脂フィルム基体(A)の鉛筆硬度はHであった。
〔製造例7〕
(アクリル樹脂フィルム基体(B)の製造)
ゴム含有重合体(II)16部および熱可塑性重合体(IV)[MMA/MA共重合体(MMA/MA=90/10(質量比)、還元粘度ηsp/c=0.06L/g)]84部に、配合剤として熱可塑性重合体(III)1部、チバスペシャリティケミカルズ社製、商品名「チヌビン234」1.4部、旭電化工業(株)製、商品名「アデカスタブAO−50」0.1部、および旭電化工業(株)製、商品名「アデカスタブLA−67」0.3部を添加した後、ヘンシェルミキサーを用いて混合した。この混合物を230℃に加熱した脱気式押出機(池貝鉄工(株)製、PCM−30(商品名))に供給し、混練して、300メッシュのスクリーンメッシュで異物を取り除きながら押し出し、ペレットを得た。
上記の方法で製造したペレットを用いる以外は、アクリル樹脂フィルム基体(A)の製膜と同様にして、厚さ125μmのアクリル樹脂フィルム基体(B)を製膜した。なお、このアクリル樹脂フィルム基体(B)の鉛筆硬度は2Hであった。
〔実施例1〕
MMA85%、HEMA12%およびn−BA3%の共重合体であるアクリルポリオール(水酸基価80mgKOH/g、ガラス転移温度90℃、重量平均分子量約8万)30部と、ポリイソシアネートとしてのヘキサメチレンジイソシアネート(イソシアヌレート型、三井武田ケミカル株式会社製、商品名:D−170N)の3量体6部と、無機微粒子としてのメチルエチルケトン分散コロイダルシリカゾル(日産化学工業株式会社製、商品名:MEK−ST、シリカ粒子径=10〜20nm)をコロイダルシリカ分で54部とを酢酸ブチル19.6部、メチルエチルケトン151.2部、メチルイソブチルケトン25.2部からなる溶剤に分散させて塗料を得た。
つぎに、厚さ125μmのアクリル樹脂フィルム基体(A)の片面に、バーコーター(RODNO.10、Wet膜厚:22.9μm)を用いて塗布した後、80℃の雰囲気下で10分間溶剤を揮発させた。さらに、40℃の雰囲気下で2日間エージングを実施し、硬化性樹脂層を硬化させて熱成形用ハードコートアクリル樹脂フィルムを得た。硬化後の硬化性樹脂層の厚さは3.7μmであった。
その後、得られた熱成形用ハードコートアクリル樹脂フィルムをインモールド成形し、積層体を得た。
〔実施例2〕
メチルエチルケトン分散コロイダルシリカゾルをコロイダルシリカ分で36部、メチルエチルケトンを109.2部に変更して塗料を得て、バーコーター(RODNO.7、Wet膜厚:16.0μm)を用いて塗布した以外は、実施例1と同様に実施した。硬化後の硬化性樹脂層の厚さは3.5μmであった。
〔実施例3〕
メチルエチルケトン分散コロイダルシリカゾルをコロイダルシリカ分で72部、メチルエチルケトンを193.2部に変更して塗料を得て、バーコーター(RODNO.12、Wet膜厚:27.4μm)を用いて塗布した以外は、実施例1と同様に実施した。硬化後の硬化性樹脂層の厚さは2.9μmであった。
〔実施例4〕
メチルエチルケトン分散コロイダルシリカゾルをコロイダルシリカ分90部、メチルエチルケトンを235.2部に変更して塗料を得て、バーコーター(RODNO.12、Wet膜厚:27.4μm)を用いて塗布した以外は、実施例1と同様に実施した。硬化後の硬化性樹脂層の厚さは2.4μmであった。
〔実施例5〕
ポリイソシアネートを、ヘキサメチレンジイソシアネート(アダクト型、三井武田ケミカル株式会社製、商品名:D−165N)の3量体6部に変更した以外は、実施例1と同様に実施した。硬化後の硬化性樹脂層の厚さは3.8μmであった。
〔実施例6〕
アクリルポリオールを、MMA77%、HEMA20%、n−BA3%の共重合体である水酸基含有アクリル樹脂(水酸基価104mgKOH/g、ガラス転移温度86℃、重量平均分子量約8万)29.3部に変更した以外は、実施例1と同様に実施した。硬化後の硬化性樹脂層の厚さは2.9μmであった。
〔実施例7〕
バーコーター(RODNO.24、Wet膜厚:54.8μm)を用いて塗布した以外は、実施例1と同様の評価を実施した。硬化後の硬化性樹脂層の厚さは7.9μmであった。
〔実施例8〕
厚さ125μmのアクリル樹脂フィルム基体(B)を用いる以外は実施例1と同様に実施した。硬化後の硬化性樹脂層の厚さは3.1μmであった。
表3に評価結果を示すように、実施例1〜7で得られた熱成形用ハードコートアクリル樹脂フィルムは、成形性が良好であり、耐擦傷性にも優れていることを確認した。
〔比較例1〕
コロイダルシリカを添加せずに、メチルエチルケトンを25.2部に変更して塗料を得て、バーコーター(RODNO.10、Wet膜厚:22.9μm)を用いて塗布した以外は、実施例1と同様の評価を実施した。硬化の硬化性樹脂層の厚さは5.1μmであった。
表3に評価結果を示すように、成形性評価の擦傷痕が著しく付き、試験後のヘーズ値が増加することを確認した。
〔比較例2〕
メチルエチルケトン分散コロイダルシリカゾルをコロイダルシリカ分で18部、メチルエチルケトンを67.2部に変更して塗料を得て、バーコーター(RODNO.7、Wet膜厚:16.0μm)を用いて塗布した以外は、実施例1と同様に実施した。硬化後の硬化性樹脂層の厚さは3.5μmであった。
表3に評価結果を示すように、成形性評価の擦傷痕が著しく付き、試験後のヘーズ値が増加することを確認した。
〔比較例3〕
メチルエチルケトン分散コロイダルシリカゾルをコロイダルシリカ分で108部、メチルエチルケトンを277.2部に変更して塗料を得て、バーコーター(RODNO.10、Wet膜厚:22.9μm)を用いて塗布した以外は、実施例1と同様に実施した。硬化後の硬化性樹脂層の厚さは4.2μmであった。
表3に評価結果を示すように、塗工直後から硬化樹脂層に無数のクラックが発生しており、透明性は低下した。
〔比較例4〕
バーコーター(RODNO.30、Wet膜厚:68.6μm)を用いて塗布した以外は、実施例1と同様に実施した。硬化後の硬化性樹脂層の厚さは12.4μmであった。
表3に評価結果を示すように、成形性評価において、積層体のコーナー部分の割れを確認した。
〔比較例5〕
バーコーター(RODNO.3、Wet膜厚:6.86μm)を用いて塗布した以外は、実施例1と同様に実施した。硬化後の硬化性樹脂層の厚さは0.4μmであった。
表3に評価結果を示すように、成形性評価の擦傷痕が著しく付き、試験後のヘーズ値が増加することを確認した。
以上で得られた熱成形用ハードコートアクリル樹脂フィルムおよび積層体の評価結果をまとめて表3に示す。
Figure 2008296539
以上のように、本発明の構成を有する熱成形用ハードコートアクリル樹脂フィルムを採用することで、従来のアクリル樹脂フィルムでは実現困難な耐薬品性を発現し、且つ取り扱い性が良好であり、インサート成形またはインモールド成形を施し、深絞り形状の成形品に成形した場合でも、フィルム表面に割れが発生しない、かつ車輌用途に用いることができる耐擦傷性、表面硬度、耐熱性を有する熱成形用ハードコートアクリル樹脂フィルム、およびこれらを基材に積層した成形品を提供することができる。また、本発明の方法を採用することで、熱成形用ハードコートアクリル樹脂フィルムを安定的に製造することが可能となる。従来のアクリル樹脂フィルムに比べ、使用用途を飛躍的に広げることが可能である。
本発明の熱成形用ハードコートアクリル樹脂フィルムを有する成形品は、特に車輌用途、建材用途に適している。具体例としては、インストルメントパネル、コンソールボックス、メーターカバー、ドアロックペゼル、ステアリングホイール、パワーウィンドウスイッチベース、センタークラスター、ダッシュボード等の自動車内装用途、ウェザーストリップ、バンパー、バンパーガード、サイドマッドガード、ボディーパネル、スポイラー、フロントグリル、ストラットマウント、ホイールキャップ、センターピラー、ドアミラー、センターオーナメント、サイドモール、ドアモール、ウインドモール等、窓、ヘッドランプカバー、テールランプカバー、風防部品等の自動車外装用途、AV機器や家具製品のフロントパネル、ボタン、エンブレム、表面化粧材等の用途、携帯電話等のハウジング、表示窓、ボタン等の用途、さらには家具用外装材用途、壁面、天井、床等の建築用内装材用途、サイディング等の外壁、塀、屋根、門扉、破風板等の建築用外装材用途、窓枠、扉、手すり、敷居、鴨居等の家具類の表面化粧材用途、各種ディスプレイ、レンズ、ミラー、ゴーグル、窓ガラス等の光学部材用途、あるいは電車、航空機、船舶等の自動車以外の各種乗り物の内外装用途、瓶、化粧品容器、小物入れ等の各種包装容器および材料、景品や小物等の雑貨等のその他各種用途等に好適に使用することができる。

Claims (6)

  1. アクリル樹脂フィルム基体の一方の面上に、熱硬化性樹脂と無機微粒子(a−3)とを含有する硬化性樹脂層が形成されてなり、
    前記熱硬化性樹脂の固形分100質量部に対する前記無機微粒子(a−3)の含有量が60〜250質量部であり、前記硬化性樹脂層の厚さが1〜12μmであり、
    JIS K7136に基づく曇価(ヘーズ値)が1.0%以下であることを特徴とする熱成形用ハードコートアクリル樹脂フィルム。
  2. 前記無機微粒子(a−3)がコロイダルシリカであることを特徴とする請求項1に記載の熱成形用ハードコートアクリル樹脂フィルム。
  3. 前記熱硬化性樹脂が、ポリイソシアネート(a−1)とアクリルポリオール(a−2)からなるウレタンアクリレート系樹脂であることを特徴とする請求項1または2に熱成形用ハードコートアクリル樹脂フィルム。
  4. アクリル樹脂フィルム基体の、前記熱硬化樹脂層を形成したもう一方の面上に、絵柄層および/または接着層を積層したことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の熱成形用ハードコートアクリル樹脂フィルム。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の熱成形用ハードコートアクリル樹脂フィルムの製造方法であって、前記硬化性樹脂層を印刷法またはコート法により形成することを特徴とする熱成形用ハードコートアクリル樹脂フィルムの製造方法。
  6. 基材上に、請求項1〜4のいずれかに記載した熱成形用ハードコートアクリル樹脂が積層されていることを特徴とする成形品。
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