JP4979221B2 - 熱成形用艶消しアクリル樹脂フィルム、その製造方法、および積層体 - Google Patents
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Description
また、特定の艶消し用架橋アクリル系重合体とアクリル樹脂とを含有する熱可塑性樹脂組成物を、特定のロール温度に設定したロールで挟持して製膜して得られる艶消しアクリル樹脂フィルムが開示されている(例えば、特許文献8参照。)。
また、透明なアクリルフィルムの一方の面に艶消し層が形成され、他方の面に少なくとも絵柄層が形成された艶消しアクリルインサートフィルムが開示されている(例えば、特許文献10参照。)。
また、成形性のよい基材フィルム上に、特定の粒子径を有するビーズ顔料と電離放射線硬化性樹脂とからなる塗膜を設けたスエード調成形用シートが開示されている(例えば、特許文献11参照。)。
特許文献5に記載のアクリル樹脂フィルムは、艶消し材と特定の平均粒子径のゴム含有重合体とを特定量含有することで、艶消し性、表面硬度、耐熱性、成形性に優れているとされている。また、特許文献6記載のアクリル樹脂フィルムは、特定のフィルム表面光沢度を有することで、印刷適正が良好で、艶消し性、表面硬度、耐熱性、成形性に優れているとされている。
また、印刷法またはコート法により艶消し層を形成する場合、基材となるアクリル樹脂フィルムの物性が溶剤アタックにより低下する。そのため、使用する塗工液の溶剤組成、フィルムに塗工する際の塗工量が重要となるが、特許文献9には最適な塗工条件に関する記載がない。
また、特許文献10には、透明なアクリル樹脂フィルム基体に関して具体的な記載がない。例えば、特許文献1〜4に記載のアクリル樹脂フィルムをアクリル樹脂フィルム基体として用いると、インモールド成形またはインサート成形時の耐成形白化性に懸念がある。
また、アクリル樹脂フィルムと基材シートとからなる積層シートを用いてインサート成形を行う場合がある。このときアクリル樹脂フィルムの熱収縮率が大きいと、インサート成形の際に、アクリル樹脂フィルムが基材シートから剥離するが、特許文献9、10にはアクリル樹脂フィルムの熱収縮率に関して具体的な記載がない。
艶消し層は、さらにポリオレフィン系ワックスを含有していてもよい。
YI'(200℃)−YI ≦ 1.3 (i)
また、艶消し層が設けられた面とは反対側のアクリル樹脂フィルム基体の面上に、さらに絵柄層を有するものであってもよい。
この際、1インチあたり150本以上の線数の版目を有し、かつ該版目がロール軸方向に対して40〜50°の角度で彫刻された斜線型グラビアロールを用いて艶消し層を形成することが好ましい。
艶消し層表面の動摩擦係数は、0.23以下であることが好ましい。
本発明の積層体は、インモールド成形法またはインサート成形法により熱成形用艶消しアクリル樹脂フィルムを基材に積層したものであることが好ましい。
また、本発明の熱成形用艶消しアクリル樹脂フィルムの製造方法によれば、このような熱成形用艶消しアクリル樹脂フィルムを安定的に製造できる。
また、本発明の積層体は、意匠性に優れ、耐擦傷性、表面硬度、耐熱性、耐薬品性、耐熱黄変性、および艶消し性を有し、かつ表面の艶消し層に割れ等の欠陥がない。
アクリル樹脂フィルム基体としては、公知のアクリル樹脂フィルムが挙げられる。アクリル樹脂フィルム基体としては、車輌用に使用可能な、耐擦り傷性、鉛筆硬度、耐熱性、耐薬品性を有する点で、例えば、特開平8−323934号公報、特開平11−147237号公報、特開2002−80678号公報、特開2002−80679号公報、特開2005−97351号公報に記載されているものが好ましい。また、インサート成形またはインモールド成形を行った場合の耐成形白化性の点で、特開2005−163003号公報、特開2005−139416号公報に記載のものが好ましい。
アクリル樹脂フィルム基体としては、加熱時にできるだけ収縮しないものが好ましい。熱成形用艶消しアクリル樹脂フィルムを熱可塑性樹脂層に積層して積層フィルムまたはシートとした場合において、アクリル樹脂フィルム基体の加熱時の収縮率が大きいと、インサート成形の際に、アクリル樹脂フィルム基体が熱可塑性樹脂層から剥がれてしまう場合がある。
加熱収縮率(%)=((加熱前の間隔−加熱後の間隔)/加熱前の間隔)×100
アクリル樹脂フィルム基体の鉛筆硬度(JIS K5400に基づく測定)は、本発明の熱成形用艶消しアクリル樹脂フィルムの鉛筆硬度を高めるために、2B以上であることが好ましく、HB以上であることがより好ましく、F以上であることが特に好ましい。
アクリル樹脂フィルム基体の鉛筆硬度を2B以上にするために、アクリル樹脂フィルム基体は、以下のゴム含有重合体(I’)を含むアクリル樹脂組成物(III)からなるものであることが好ましい。
ゴム含有重合体(I’)は、アクリル酸アルキルエステルを主成分とする単量体(i)を重合して得られた弾性重合体の存在下に、メタクリル酸アルキルエステルを主成分とする単量体(ii)をグラフト重合して硬質重合体を形成した、弾性重合体と硬質重合体とを有する重合体である。ここで、弾性重合体および硬質重合体は、それぞれの単量体を一括で重合してもよく、2段階以上に分けて重合してもよい。
アクリル酸アルキルエステルの使用量は、全単量体(i)(100質量%)中、35〜99.9質量%が好ましく、50〜99.9質量%がさらに好ましい。アクリル酸アルキルエステルの使用量が35質量%以上であると、フィルムの成形性が良好となる。弾性重合体を得る際に単量体(i)を2段階以上に分けて重合する場合も、アクリル酸アルキルエステルの使用量は、全単量体(i)(100質量%)中、35〜99.9質量%であればよい。例えば、単量体(i)を2段階以上に分けて重合した弾性重合体の場合、各重合段階でのアクリル酸アルキルエステルの使用量を合計した総使用量が35〜99.9質量%であれば、1段階目のアクリル酸アルキルエステルの使用量は任意に設定してよい。
ゴム含有重合体(I’)の平均粒子径は、0.01〜0.5μmが好ましく、0.08〜0.3μmがより好ましい。特に、製膜性、得られる熱成形用艶消しアクリル樹脂フィルムの取り扱い性の観点より、ゴム含有重合体(I’)の平均粒子径は、0.08μm以上が好ましい。
乳化重合に使用する乳化剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系の界面活性剤が挙げられ、特にアニオン系界面活性剤が好ましい。アニオン系界面活性剤としては、例えば、オレイン酸カリウム、ステアリン酸ナトリウム、ミリスチン酸ナトリウム、N−ラウロイルザルコシン酸ナトリウム、アルケニルコハク酸ジカリウム等のカルボン酸塩系界面活性剤;ラウリル硫酸ナトリウム等の硫酸エステル塩系界面活性剤;ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸塩系界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸ナトリウム等のリン酸エステル塩系界面活性剤;等が挙げられる。
ゴム含有重合体(I’)は、以下に示すゴム含有多段重合体(I)であることが、インモールド成形、インサート成形時の耐成形白化性の観点から好ましい。
ゴム含有多段重合体(I)は、表1の単量体成分を重合してなる、(1)弾性重合体(I−A)、(2)ガラス転移温度が25〜100℃であり、弾性重合体(I−A)とは異なる組成の中間重合体(I−B)、および(3)硬質重合体(I−C)がこの順に形成されたものである。ゴム含有多段重合体(I)において、弾性重合体(I−A)は、ゴム含有重合体(I’)における弾性重合体に相当し、中間重合体(I−B)および硬質重合体(I−C)は、ゴム含有重合体(I’)における硬質重合体に相当するものである。ここで「異なる組成」とは、各重合体の原料である単量体成分の少なくとも1成分の種類および/または量が異なることをいう。
弾性重合体(I−A)の原料である単量体成分は、連鎖移動剤の存在下で重合してもよい。
共重合可能な二重結合を有する他の単量体(I−A3)は、弾性重合体(I−A)の原料である単量体成分(100質量%)中、0〜20質量%が好ましい。より好ましくは15質量%以下である。
2段以上に分けて重合する場合、得られる熱成形用艶消しアクリル樹脂フィルムの耐成形白化性、耐衝撃性、耐熱性および表面硬度の観点から、1段階目の重合で得られた第1の弾性重合体(I−A−1)のTgは2段階目の重合で得られた第2の弾性重合体(I−A−2)のTgよりも低いことが好ましい。具体的には、第1の弾性重合体(I−A−1)のTgは、耐成形白化性および耐衝撃性の観点から、−30℃未満が好ましく、第2の弾性重合体(I−A−2)のTgは、表面硬度、耐熱性の観点から、−15℃〜10℃が好ましい。また、表面硬度、耐熱性の観点から、第1の弾性重合体(I−A−1)の原料である単量体成分の量は、弾性重合体(I−A)の原料である全単量体成分(100質量%)中、1〜20質量%が好ましく、第2の弾性重合体(I−A−2)の原料である単量体成分の量は、弾性重合体(I−A)の原料である全単量体成分(100質量%)中、80〜99質量%が好ましい。
中間重合体(I−B)の原料である単量体成分は、連鎖移動剤の存在下で重合してもよい。
多官能性単量体(I−B4)の含有量は、中間重合体(I−B)の原料である単量体成分(100質量%)中、0〜10質量%が好ましい。得られる熱成形用艶消しアクリル樹脂フィルムに十分な柔軟性、強靭さを付与する観点から、6質量%以下が好ましく、3質量%以下が特に好ましい。
このように、特定の組成およびTgを有する中間重合体(I−B)を設けることで、これまで実現困難であった、耐成形白化性と、表面硬度および耐熱性とが両立した熱成形用艶消しアクリル樹脂フィルムを得ることができる。
中間重合体(I−B)の原料である単量体成分は、一括で重合してもよく、2段以上に分けて重合してもよい。
共重合可能な二重結合を有する他の単量体(I−C3)の含有量は、硬質重合体(I−C)の原料である単量体成分(100質量%)中、0〜20質量%が好ましい。より好ましくは15質量%以下である。
硬質重合体(I−C)の原料である単量体成分の量は、ゴム含有多段重合体(I)の原料である全単量体成分(100質量%)中、15〜80質量%が好ましい。硬質重合体(I−C)の原料である単量体成分の量が15質量%以上であれば、得られる熱成形用艶消しアクリル樹脂フィルムの表面硬度および耐熱性が良好となる。より好ましくは45質量%以上である。硬質重合体(I−C)の原料である単量体成分の量が80質量%以下であれば、得られる熱成形用艶消しアクリル樹脂フィルムに耐成形白化性、インサート成形およびインモールド成形に必要な靭性を付与することができる。
硬質重合体(I−C)の原料である単量体成分は、一括で重合してもよく、2段以上に分けて重合してもよい。
ゲル含有率(%)=抽出後質量(g)/抽出前質量(g)×100
ゴム含有多段重合体(I)を乳化重合により製造する場合は、ゴム含有多段重合体(I)中の弾性重合体(I−A)の原料である単量体成分をあらかじめ水および界面活性剤と混合して調製した乳化液を、反応器に供給して重合した後、中間重合体(I−B)の原料である単量体成分、および硬質重合体(I−C)の原料である単量体成分をそれぞれ順に反応器に供給し、重合する方法が好ましい。
乳化液を調製するための混合装置としては、攪拌翼を備えた攪拌機、ホモジナイザー、ホモミキサー等の各種強制乳化装置、膜乳化装置等が挙げられる。
乳化液は、単量体成分の油中に水滴が分散したW/O型、水中に単量体成分の油滴が分散したO/W型のいずれの分散構造でもよく、特に水中に単量体成分の油滴が分散したO/W型で、かつ分散相の油滴の直径が100μm以下であるものが好ましい。
重合開始剤の添加方法としては、水相、単量体相(油相)のいずれか片方または双方に添加する方法が挙げられる。
重合温度は、用いる重合開始剤の種類および量によって異なり、通常、40℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましく、また、120℃以下が好ましく、95℃以下がより好ましい。
濾材を配した濾過装置としては、袋状のメッシュフィルターを利用したISPフィルターズ・ピーテーイー・リミテッド社のGAFフィルターシステム;円筒型濾過室内の内側面に円筒型の濾材を配し、濾材内に攪拌翼を配した遠心分離型濾過装置;または、濾材が濾材面に対して水平の円運動および垂直の振幅運動をする振動型濾過装置が好ましい。
アクリル樹脂フィルム基体の原料として、ゴム含有重合体(I’)(好ましくはゴム含有多段重合体(I))を単独で用いてもよいが、ゴム含有重合体(I’)(好ましくはゴム含有多段重合体(I))と以下に示す熱可塑性重合体(II)とを含有するアクリル樹脂組成物(III)を用いることが好ましい。
共重合可能な二重結合を有する他の単量体(II−C)の含有量は、熱可塑性重合体(II)の原料である単量体成分(100質量%)中、0〜50質量が好ましい。
熱可塑性重合体(II)の製造方法としては、特に限定されず、通常の懸濁重合、乳化重合、塊状重合等の方法が挙げられる。
アクリル樹脂組成物(III)中のゴム含有重合体(I’)の含有量は、製膜性、鉛筆硬度、成形性の観点から、アクリル樹脂組成物(III)(100質量%)中、5〜30質量部が好ましい。製膜性、成形性の観点から10質量部以上がより好ましく、鉛筆硬度の観点から25質量部以下がより好ましい。
ゲル含有率(%)=抽出後質量(g)/抽出前質量(g)×100
アクリル樹脂フィルム基体の原料として、熱可塑性重合体(II)とは別に、還元粘度(重合体0.1gをクロロホルム100mLに溶解し、25℃で測定)が0.15L/gを超える熱可塑性重合体(IV)を使用してもよい。
熱可塑性重合体(IV)は、具体的には、メタクリル酸メチル50〜100質量%、これと共重合可能な二重結合を有する他の単量体0〜50質量%、の組成で構成される単量体成分を重合して得られるものである。共重合可能な二重結合を有する他の単量体は、単独で、または、2種以上を混合して使用することができる。
アクリル樹脂フィルム基体は、必要に応じて、一般の配合剤、例えば、安定剤、滑剤、加工助剤、可塑剤、発泡剤、充填剤、抗菌剤、防カビ剤、離型剤、帯電防止剤、着色剤、紫外線吸収剤、光安定剤等を含んでいてもよい。
ヒンダードアミン系光安定剤は、アクリル樹脂原料100質量部に対して、0.01〜5質量部の範囲で用いることが好ましい。耐光性改良の観点から、より好ましくは0.1質量部、特に好ましくは0.2質量部以上である。製膜時ロール汚れの観点から、より好ましくは2質量部以下、特に好ましくは1質量部以下である。
アクリル樹脂フィルム基体の製造方法としては、溶融流延法、Tダイ法、インフレーション法等の溶融押出法、カレンダー法等の公知の方法が挙げられる。これらのうち、経済性の点からTダイ法が好ましい。
また、Tダイ法等で溶融押出しをする場合は、200メッシュ以上のスクリーンメッシュで溶融状態にあるアクリル樹脂原料を濾過しながら押出しすることも好ましい。
アクリル樹脂フィルム基体の一方の面上に設けられる艶消し層の厚さは、0.1〜5μmであることが必要である。艶消し層の厚さが0.1μm以上であれば、積層体となった場合の耐擦り傷性等、表面物性を発現することができる。より好ましくは0.5μm以上、最も好ましくは0.8μm以上である。艶消し層の厚さが5μm以下であれば、インサート成形またはインモールド成形を施し、深絞り形状に成形した場合でも、艶消し層に割れが発生することを軽減できる。また、塗工の際に用いる単位面積あたりの塗料量が少なくなるため、溶剤によるアクリル樹脂フィルム基体の物性低下を小さくすることができる。また、艶消し層の厚さを5μm以下とすることで、良好な艶消し性を発現することができる。艶消し層の厚さを薄くすることで艶消し性が良好に発現するので、単位体積あたりの艶消し材量を少なくすることができ、艶消し層の物性低下を軽減できる。また、艶消し層の厚みを薄くすることでワックスの添加効果が高まるため良好な耐擦り傷性を発現する。艶消し層の厚さは、好ましくは3μm以下、より好ましくは2μm未満である。
艶消し材としては、0.5〜50μmの質量平均粒子径を有する有機系または無機系粒子を用いることが好ましい。艶消し性、外観の観点から質量平均粒子径は2μm以上がより好ましい。質量平均粒子径を2μm以上とすることで、艶消し性が良好となるばかりか、蛍光灯の映りこみが軽減するため、例えばメタリック調の絵柄と組み合わせた場合、アルミを削り出したような外観に近くなり、高級感にとんだ外観となる。また、艶消し層を形成する際の成形性、外観、艶消し材のバインダー樹脂からの脱落の観点から質量平均粒子径は30μm以下がより好ましく、10μm以下が特に好ましい。10μm以下とすることで、艶消し層の成形性が良くなるばかりか、蛍光灯の映りこみが僅かに見えるため、例えばメタリック調の絵柄と組み合わせた場合、アルミを削り出したような外観に近くなり、高級感にとんだ外観となり工業的利用価値が高い。また、例えばグラビア塗工、グラビアリバース塗工等により熱成形用艶消しアクリル樹脂フィルムを得る場合、ドクター筋を軽減する観点からも質量平均粒子径は30μm以下がより好ましく、10μm以下が特に好ましい。また、塗工の際の塗工抜け発生、ドクター筋発生の観点より、20μm以上の粗粒を含まないものを用いることが好ましい。
バインダー樹脂として、公知の熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂を用いることが、耐擦傷性の観点から好ましい。例えば、アクリル系樹脂、ウレタンアクリレート系樹脂、シリコーンアクリレート系樹脂、エポキシ系樹脂、エステル系樹脂を用いることができる。これらのうち、ウレタンアクリレート系樹脂が物性面から好ましい。
ウレタンアクリレート系樹脂としては、公知のものを用いることができ、特に、メタクリル酸アルキルエステル単位を主成分とし、水酸基価が20〜120mgKOH/gであり、ガラス転移温度が50〜110℃である水酸基含有アクリル樹脂と、ポリイソシアネートとを含有するウレタンアクリレート系熱硬化性樹脂が好ましい。
水酸基含有アクリル樹脂のガラス転移温度は、耐熱性、フィルムブロッキング性、鉛筆硬度、耐擦傷性の観点から、50℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましい。
なお、熱可塑性樹脂をバインダー樹脂に使用した場合は、成形性が良好であるものの、耐薬品性が低下する傾向がある。車輌内装用をとして用いたときに、芳香剤の成分が付着すると、艶消し層が溶けてしまうために艶戻りが発生したような外観不良が発生することがある。
ワックスとしては、カルナバワックス、木ろう、モンタンワックス、パラフィンワックス等の公知の天然ワックス;脂肪酸アミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン等の公知の合成ワックス;アルキル変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル等の公知のシリコーン系ワックス;シリコン系、フッ素系成分を含むブロックコポリマー等が挙げられる。ワックスとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンとポリプロピレンとの複合物等のポリオレフィン系ワックスが好ましい。
ポリオレフィン系ワックスは、通常、乾式粉砕により得られた超微粉末状のものが多いが、本発明では、艶消し層の厚さよりも大きな質量平均粒子径を有するポリオレフィン系ワックスが好ましい。耐擦り傷防止性の観点からは、艶消し層の厚さを2倍にした値よりも大きな質量平均粒子径を有するポリオレフィン系ワックスがより好ましい。また、塗工の際の塗工抜け発生、ドクター筋発生の観点より、20μm以上の粗粒を含まないポリオレフィン系ワックスが好ましい。
艶消し層は、印刷法またはコート法により形成することが好ましい。この場合、艶消し層となる原料を溶剤に溶解または分散して塗料を調製し、これをアクリル樹脂フィルム基体の一方の面に塗布し、溶剤除去のための加熱乾燥を行うことによって、艶消し層が形成される。この方法は、艶消し層とアクリル樹脂フィルム基体との密着性が良好となるため好ましい。
コート法としては、フローコート法、スプレーコート法、バーコート法、グラビアコート法、グラビアリバースコート法、キスリバースコート法、マイクログラビアコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ロッドコート法、ロールドクターコート法、エアナイフコート法、コンマロールコート法、リバースロールコート法、トランスファーロールコート法、キスロールコート法、カーテンコート法、ディッピングコート法等の公知のコート方法が挙げられる。
グラビアコート法で用いるグラビアロールとしては、公知のものを用いることができる。特に、版目の影響を軽減する観点から1インチあたり150線以上の線数の版目を有する斜線型グラビアロールを用いることが好ましい。熱成形用艶消しアクリル樹脂フィルムに、版目が形成されると意匠性が損なわれるため工業的利用価値が低下する。また、斜線状に版目を形成した斜線型グラビアロールを用いると、格子状の版目を有する通常のグラビアロールを用いた場合と比較して版目を軽減できるため好ましい。
また、版目は、ロール軸方向に対して40〜50°の角度で彫刻されていることが好ましい。このような斜線型グラビアロールを使用することで、塗工斑がない均一な艶消し塗工面を有するアクリル樹脂フィルムを得ることができる。
また、グラビアコート法で用いるドクターブレードとしては、鋼鉄製、ステンレス製、セラミック製などの公知のものを用いることができ、ドクター筋の観点からステンレス製のドクターブレードを用いることが好ましい。あるいは、ステンレス製のドクターブレードに、セラミックと滑材とからなる材料をコーティングし、滑り性を改良したドクターブレードを用いることも好ましい。また、プラスチック製のドクターブレードを用いてもよい。
塗料は、公知の濾過装置で濾過することができ、例えば、チッソフィルター(株)製のCPII−10、03、01を用いることが好ましい。
(鉛筆硬度)
本発明の熱成形用艶消しアクリル樹脂フィルムは、鉛筆硬度(JIS K5400に基づく測定)が2B以上であることが好ましい。
鉛筆硬度が2B以上の熱成形用艶消しアクリル樹脂フィルムとすることで、インサート成形またはインモールド成形を施す工程中で、熱成形用艶消しアクリル樹脂フィルム表面に傷がつきにくく、さらに積層体の耐擦傷性も良好となる。
このような鉛筆硬度を有する熱成形用艶消しアクリル樹脂フィルムを得るためには、アクリル樹脂フィルム基体の鉛筆硬度が重要である。アクリル樹脂フィルム基体の鉛筆硬度は2B以上であることが好ましく、HB以上であることがより好ましく、F以上であることが最も好ましい。
本発明の熱成形用艶消しアクリル樹脂フィルムは、空気雰囲気下において、20〜25℃/秒の昇温スピードで艶消し層の表面を200℃になるまで加熱した後の黄色度(以下、YI’(200℃)とする)と、加熱前の熱成形用艶消しアクリル樹脂フィルムの黄色度(以下、YIとする)とが、下記式(i)の関係を満たすことが好ましい。
YI'(200℃)−YI ≦ 1.3 (i)
また、YI'(200℃)−YIは、インサート成形およびインモールド成形を施した際に成形前の意匠を保持する観点から、−2.0以上であることが好ましい。
また、印刷を施した際の意匠性の観点から、加熱前の熱成形用艶消しアクリル樹脂フィルムの黄色度(YI)は低い方が好ましい。具体的にはYIは、6.0以下が好ましい。
加熱前後の熱成形用艶消しアクリル樹脂フィルムの黄色度の差を上記の範囲とすることは、艶消し層を特定の成分から構成させることで達成される。具体的には、艶消し材、硬化剤等の成分は、耐熱黄変色の観点から適したものを選択することが好ましい。
本発明の熱成形用艶消しアクリル樹脂フィルムは、試験速度100mm/分、移動距離10mm、荷重9.8Nの試験条件において、艶消し層表面とブロード60番との動摩擦係数(以下、艶消し層表面の動摩擦係数とする)が、0.23以下であるものが好ましい。艶消し層表面の動摩擦係数が0.23以下の熱成形用艶消しアクリル樹脂フィルムは、インサート成形またはインモールド成形を施す工程中で、熱成形用艶消しアクリル樹脂フィルム表面に傷が付きにくく、さらに積層体の耐擦傷性が良好となる。
本発明の熱成形用艶消しアクリル樹脂フィルムを用いた積層体は、ドアウエストガーニッシュ、フロントコントロールパネル、パワーウィンドウスイッチパネル、エアバッグカバー等、各種車輌用部材に好適に使用することができる。用途拡大の観点から工業上非常に有用である。
艶消し材の種類、添加量、艶消し層の厚さによって、熱成形用艶消しアクリル樹脂フィルムのヘーズ値は変化する。熱成形用艶消しアクリル樹脂フィルムのヘーズ値は、熱成形用艶消しアクリル樹脂フィルムをとおして絵柄層を見たときの意匠性の観点から、5%以下が好ましく、3%以下がより好ましい。また、メタリック調の絵柄層を組み合わせた場合は、ヘーズ値を1〜3%の範囲に設定することが好ましい。熱成形用艶消しアクリル樹脂フィルムのヘーズ値が1〜3%であれば、かすかな白味感のある意匠となり、アルミニウムを削り出したような外観に近くなるため、高級感にとんだ外観となり工業的利用価値が高い。ヘーズ値は、130℃に加熱した鏡面SUS板に熱成形用艶消しアクリル樹脂フィルムを3MPaの条件で熱プレスを施し、表面を鏡面化した後のフィルムについて、JIS K7136の試験方法にて測定した値である。
本発明の熱成形用艶消しアクリル樹脂フィルムには、各種基材に意匠性を付与するために絵柄層を形成してもよい。この場合、艶消し層が設けられた面とは反対側のアクリル樹脂フィルム基体の面上に絵柄層を形成することが好ましい。また、積層体の製造時には、絵柄層を基材との接着面に配することが加飾面の保護および高級感の付与の点から好ましい。
絵柄層は公知の方法で形成することができる。絵柄層としては、印刷法で形成された印刷層、および/または蒸着法で形成された蒸着層が好ましい。
印刷層は、インサートまたはインモールド成形によって得られた積層体表面で模様または文字等となる。印刷柄としては、例えば、木目、石目、布目、砂目、幾何学模様、文字、全面ベタ等からなる絵柄が挙げられる。
印刷層のバインダーとしては、塩化ビニル/酢酸ビニル系共重合体等のポリビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリエステルウレタン系樹脂、セルロースエステル系樹脂、アルキッド樹脂、塩素化ポリオレフィン系樹脂等の樹脂が挙げられる。ポリアクリル系樹脂としては、例えば、前述のゴム含有多段重合体(I)を含むアクリル樹脂組成物(III)を用いてもよい。
顔料としては、例えば、つぎのものが挙げられる。黄色顔料としては、ポリアゾ等のアゾ系顔料、イソインドリノン等の有機顔料;黄鉛等の無機顔料が挙げられる。赤色顔料としては、ポリアゾ等のアゾ系顔料、キナクリドン等の有機顔料;弁柄等の無機顔料が挙げられる。青色顔料としては、フタロシアニンブルー等の有機顔料;コバルトブルー等の無機顔料が挙げられる。黒色顔料としては、アニリンブラック等の有機顔料が挙げられる。白色顔料としては、二酸化チタン等の無機顔料が挙げられる。
染料としては、本発明の効果を損なわない範囲で、各種公知の染料を使用することができる。
印刷層の厚さは、必要に応じて適宜決めればよく、通常、0.5〜30μm程度である。
印刷層は、インサートまたはインモールド成形によって得られた積層体において所望の表面外観が得られるよう、インサートまたはインモールド成形時の伸張度合いに応じて、適宜その厚さを選択すればよい。
蒸着層は、アルミニウム、ニッケル、金、白金、クロム、鉄、銅、インジウム、スズ、銀、チタニウム、鉛、亜鉛等からなる群から選ばれる少なくとも一つの金属、またはこれらの合金、または化合物で形成される。蒸着層の形成方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、メッキ法等の方法が挙げられる。
蒸着層は、インサートまたはインモールド成形によって得られた積層体において所望の表面外観が得られるよう、インサートまたはインモールド成形時の伸張度合いに応じて、適宜その厚みを選択すればよい。
(接着層)
本発明の熱成形用艶消しアクリル樹脂フィルムには、必要に応じて接着層を設けてもよい。接着層は、艶消し層が設けられた面とは反対側の表面に形成することが好ましい。
また、本発明の熱成形用艶消しアクリル樹脂フィルムには、さらにカバーフィルムを設けてもよい。このカバーフィルムは、熱成形用艶消しアクリル樹脂フィルムの表面の防塵に有効である。カバーフィルムは、艶消し層の表面、艶消し層が設けられた面とは反対側の表面のいずれにも設けることができる。少なくとも艶消し層の表面に設けることが好ましい。
本発明の熱成形用艶消しアクリル樹脂フィルムを、さらに熱可塑性樹脂層に積層して、積層フィルムまたはシートとしてもよい。熱成形用艶消しアクリル樹脂フィルムを熱可塑性樹脂層に積層する向きとしては、艶消し層が設けられた面とは反対側の表面が熱可塑性樹脂層に接するように積層することが好ましい。
これらのうち、熱可塑性樹脂層としては、絵柄層の形成性(熱成形用艶消しアクリル樹脂フィルムに形成する代わりに、熱可塑性樹脂層に形成することもできる)、積層フィルムまたはシートの二次成形性の観点から、アクリル樹脂、ABS樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン、ポリカーボネートが好ましい。
熱可塑性樹脂層の厚さは、必要に応じて適宜決めればよく、通常、20〜500μm程度とすることが好ましい。熱可塑性樹脂層は、熱成形用艶消しアクリル樹脂フィルムの外観が完全に円滑な上面を呈する、基材の表面欠陥を吸収する、または射出成形時に絵柄層が消失しない、程度の厚さを有することが好ましい。
本発明の積層体は、本発明の熱成形用艶消しアクリル樹脂フィルム、その積層フィルムまたはシートを、基材に積層したものである。このとき、艶消し層が設けられた面とは反対側の面が基材に接するように、熱成形用艶消しアクリル樹脂フィルムを基材に積層して積層体とすることが好ましい。
基材の材質としては、樹脂;木材単板、木材合板、パーティクルボード、中密度繊維板(MDF)等の木材板;木質繊維板等の水質板;鉄、アルミニウム等の金属等が挙げられる。
ポリオレフィン系樹脂等の熱融着しない樹脂であっても、接着層を設けることで、熱成形用艶消しアクリル樹脂フィルム、その積層フィルムまたはシートからなる群より選ばれる1つと基材とを成形時に接着させることは可能である。
インモールド成形法は、熱成形用艶消しアクリル樹脂フィルム、またはその積層フィルムまたはシートを加熱した後、真空引き機能を持つ金型内で真空成形を行い、ついで、同じ金型内において基材となる樹脂を射出成形することにより、熱成形用艶消しアクリル樹脂フィルム、またはその積層フィルムまたはシートと基材とを一体化させた積層体を得る方法である。インモールド成形法は、フィルムの成形と射出成形を一工程で行えるため、作業性、経済性の点から好ましい。
熱可塑性樹脂層を有する積層フィルムまたはシートは、熱可塑性樹脂層が存在するために絵柄層の消失をより軽減することができる点で好ましい。
真空成形によりフィルムに三次元形状を付与する場合、本発明の熱成形用艶消しアクリル樹脂フィルム、またはその積層フィルムまたはシートは、高温時の伸度に富んでおり、非常に有利である。
ゴム含有重合体(I’)、ゴム含有多段重合体(I)、熱可塑性重合体(II)、および熱可塑性重合体(IV)の物性、作製したアクリル樹脂フィルム基体(A)〜(C)、実施例1〜32および比較例1〜3において得られた熱成形用艶消しアクリル樹脂フィルム、および積層体等の物性は、以下のように測定、評価した。
積層体の評価は、以下の(13)または(14)に示した成形性の評価用に作製した積層体を用いて行った。
乳化重合にて得られたゴム含有重合体(I’)またはゴム含有多段重合体(I)の重合体ラテックスについて、大塚電子(株)製の光散乱光度計DLS−700(商品名)を用い、動的光散乱法で測定した。
(2)ゴム含有重合体(I’)、ゴム含有多段重合体(I)のゲル含有率:
所定量(抽出前質量)のゴム含有重合体(I’)またはゴム含有多段重合体(I)(重合後、得られた凝固粉)をアセトン溶媒中、還流下で抽出処理し、この処理液を遠心分離により分別し、乾燥後、アセトン不溶分の質量を測定し(抽出後質量)、下記式にて算出した。
ゲル含有率(%)=抽出後質量(g)/抽出前質量(g)×100
ポリマーハンドブック〔Polymer HandBook(J.Brandrup,Interscience,1989)〕に記載されている値を用いてFOXの式から算出した。
(4)熱可塑性重合体(II)、熱可塑性重合体(IV)の還元粘度:
重合体0.1gをクロロホルム100mLに溶解し、25℃で測定した。
JIS K0070に従って測定した。
(6)バインダー樹脂の質量平均分子量:
Shimadzu LC−6Aシステム((株)島津製作所製)を用い、GPCカラムとしてKF−805L(昭和電工(株)製)を3本連結したものを用い、溶媒としてTHFを用い、ポリスチレン換算で測定した。
A4サイズに切り出したアクリル樹脂フィルム基体の表面に、MD方向(製膜時の流れ方向)およびTD方向(MD方向と垂直に交わる向き)に、5cm間隔に3本の平行な直線を引いて、その間隔をノギスで正確に計測した。間隔の計測は2箇所で行い、計測した箇所に目印を付けた。その後、130℃雰囲気下に60分放置して、取り出した後、先に計測した箇所と同じ箇所の間隔をもう一度計測した。2箇所の間隔の平均値を用い、下記式より、加熱収縮率を計算した。
加熱収縮率(%)=((加熱前の間隔−加熱後の間隔)/加熱前の間隔)×100
熱成形用艶消しアクリル樹脂フィルムを断面方向に70nmの厚みに切断したサンプルを、透過型電子顕微鏡(日本電子(株)製 J100S)にて観察し、5箇所で厚さを測定し、それらを平均することにより艶消し層の厚さを求めた。艶消し層の厚さは、艶消し材が存在しない部分、つまりバインダー樹脂のみからなる部分を観察して測定した。
(9)熱成形用艶消しアクリル樹脂フィルムの鉛筆硬度:
JIS K5400に従って測定したなお、艶消し層の表面の鉛筆硬度を測定した。
グロスメーター((株)村上色彩技術研究所製、GM−26D型(商品名))を用い、艶消し層表面の60°での表面光沢を測定した。
(11)熱成形用艶消しアクリル樹脂フィルムのヘーズ:
厚さが約3mm、表面粗度が0.5sの2枚の鏡面SUS板にて熱成形用艶消しアクリル樹脂フィルムを挟み、130℃、3MPaの条件下で3分保持しプレス成形した後、室温以下に冷却した。引き続き、曇価(内部ヘーズ)をJIS K7136に従って評価した。
厚さ約75μmの熱成形用艶消しアクリル樹脂フィルムを、上;350℃、下;500℃にそれぞれ設定した遠赤外線ヒーターパネルが配置された真空圧空成形機((株)浅野研究所製)のクランプ枠に固定した。なお、遠赤外線ヒーターパネルは、クランプにセットした熱成形用艶消しアクリル樹脂フィルムの上下それぞれ100mmの場所の両面に設置した。
熱成形用艶消しアクリル樹脂フィルムの加熱開始前の表面温度は25℃であった。ここから、熱成形用艶消しアクリル樹脂フィルムの艶消し層の表面温度が所定温度になるまで加熱した。なお、艶消し層の表面温度が250℃になるまでに要した時間は約11秒であり、昇温スピードは約20℃/秒であった。また、艶消し層の表面温度が200℃になるまでに要した時間は約7秒であり、昇温スピードは約25℃/秒であった。艶消し層の表面温度は、クランプ上方に配置されている非接触型温度計により測定した。
その後、熱成形用艶消しアクリル樹脂フィルムの表面温度が再び室温になるまで冷却した後、該フィルムのアクリル樹脂フィルム基体側にマンセル記号がN9.5のスノウホワイト油性色紙(標準色カード230、日本色研事業製)を重ね合わせ、分光式色差計SE2000(日本電色製)を用い、標準C光、反射モードの条件にて該フィルムの艶消し層側を測定面とし黄色度YI’を測定した。
一方、加熱前の熱成形用艶消しアクリル樹脂フィルムについても同様にして黄色度YIを測定し、YI’からYIを差し引いた値をもって耐熱黄変性を評価した。
厚さ約75μmの熱成形用艶消しアクリル樹脂フィルムに、絵柄層としてシルバーメタリック層を、グラビア印刷にてアクリル樹脂フィルム基体側に設けた。さらに、熱成形用艶消しアクリル樹脂フィルムに、接着層を有する厚さ1mmのABSシートを、接着層とシルバーメタリック層とが接するように、熱ラミネーションによって積層し、熱成形用艶消しアクリル樹脂フィルムの積層シートを得た。この積層シートを用いて成形を行った。
具体的には、得られた積層シートを、熱成形用艶消しアクリル樹脂フィルム側がキャビティー側になるように、真空引き機能を持つ金型内に配置し、積層シートが190℃に達するまでヒーターで加熱した後、真空成形を行った。ついで、不要部をトリミングした。キャビティー側の金型の底、かつ中央のゲートから横方向に3cmの位置に、1cm2 、深さ1mmの凹みがある金型の底に、真空成形した積層シートを、熱成形用艶消しアクリル樹脂フィルム側がキャビティー側になるように配置した。ついで、積層シートのABSシート側に基材となるABS樹脂(UMG ABS(株)製、商品名「ダイヤペットABSバルクサムTM25」)を射出成形し、インサート成形により積層体を得た。
射出成形は、(株)日本製鋼所製、J85ELII型射出成形機(商品名)を用い、シリンダー温度250℃、射出速度30%、射出圧力43%、金型温度60℃の条件で行った。
(凸部の割れについて)
○:割れなし、
△:艶消し層に僅かに割れが発生、
×:艶消し層に大きな割れが発生。
(コーナー付近の割れについて)
○:割れなし、
△:艶消し層に僅かに割れが発生、
×:艶消し層に大きな割れが発生。
(凸部の白化に関して)
○:フィルム白化なし、
×:フィルム強い白化あり。
(コーナー付近の白化に関して)
○:フィルム白化なし、
×:フィルム強い白化あり。
厚さ約75μmの熱成形用艶消しアクリル樹脂フィルムを用いてインモールド成形を行った。
具体的には、真空引き機能を有し、キャビティー側の金型の底、かつ中央のゲートから横方向に3cmの位置に、1cm2 、深さ1mmの凹みがある金型を用い、J85ELII型射出成形機((株)日本製鋼所製、商品名)およびホットパックシステム(日本写真印刷(株)製、商品名)を組み合わせたインモールド成形装置により、インモールド成形を行った。
詳細な積層体の形状は、縦150mm×横120mm×厚さ2mm、深さ10mmの箱型であり、金型のゲート位置は、積層体中央に1箇所、中央ゲートの上下(積層体縦方向)40mmの位置に各1箇所の計3箇所であり、ゲート形状は、直径1mmのピンポイントゲートである。また、金型のキャビティー側の底面と側面を結ぶ角のコーナーRは約3である。つまり、熱成形用艶消しアクリル樹脂フィルムがラミネートされる側の積層体のコーナーRは約3である。コーナーRは、FUJI TOOL製 RADIUS GAGEで測定した。
また、引き続き同一金型内で実施する射出成形は、シリンダー温度250℃、射出速度30%、射出圧力43%、金型温度60℃の条件で、艶消し層の反対側から基材樹脂を射出した。基材樹脂としては、耐熱性ABS樹脂(UMG ABS(株)製、商品名「バルクサムTM25B」)を用いた。
(凸部の割れについて)
○:割れなし、
△:艶消し層に僅かに割れが発生、
×:艶消し層に大きな割れが発生。
(コーナー付近の割れについて)
○:割れなし、
△:艶消し層に僅かに割れが発生、
×:艶消し層に大きな割れが発生。
(凸部の白化に関して)
○:フィルム白化なし、
×:フィルム強い白化あり。
(コーナー付近の白化に関して)
○:フィルム白化なし、
×:フィルム強い白化あり。
試験速度100mm/min、移動距離10mm、荷重9.8Nの試験条件において、摩擦させる相手材としてブロード60番を用いたときの、艶消しアクリル樹脂フィルムを積層した積層体の艶消し層表面の動摩擦係数を測定した。なお、サンプルは(14)で成形したものを用いて、動摩擦係数は測定点数5点の平均値を用いた。
(条件1)
1枚のブロード60番上に0.01MPaの荷重をかけながら(14)で成形した積層体を押さえ付け、該積層体を、100mmのストロークで、かつ30往復/分の速さで200往復させた。積層体の外観を以下のように評価した。
◎:外観変化なし、
○:僅かに傷つきあり、
△:弱い艶戻りあり、
×:強い艶戻りあり。
5枚重ねのガーゼ上に0.049MPaの荷重をかけながら(14)で成形した積層体を押さえ付け、該積層体を、100mmのストロークで、かつ30往復/分の速さで200往復させた。積層体の外観を以下のように評価した。
◎:外観変化なし、
○:僅かに傷つきあり、
△:弱い艶戻りあり、
×:強い艶戻りあり。
(14)で成形した積層体の試験片表面に内径38mm、高さ15mmのポリエチレン製円筒を置き、圧着器で試験片に強く密着させ、その開口部に自動車用芳香剤((株)ダイヤケミカル製、グレイスメイトポピー柑橘系)を5ml注入した。開口部にガラス板で蓋をした後、55℃に保持した恒温槽に入れ4時間放置した。試験後、圧着器を取り外し、試験片を水洗した後風乾し、試験部の表面の白化状態を観察した。
○:艶消し層の剥がれがない(艶戻りがない)、
△:艶消し層の剥がれが僅かにある(僅かに艶戻りがある)、
×:艶消し層の剥がれがある(艶戻りがある)。
蛍光灯の光の下での積層体の絵柄層の見え方を目視により以下のように評価した。
○:蛍光灯の映りこみが僅かに確認できる、また、インサート成形品では、絵柄層の絵柄が鮮明に見え、極わずかに白味がかっているためシルバーメタリック感が良好である。
△−1:絵柄層の絵柄が鮮明に見える、蛍光灯の映りこみが大きい、シルバーメタリック感が乏しい。
△−2:絵柄層の絵柄が鮮明に見える、蛍光灯の映りこみが確認できない、シルバーメタリック感が乏しい。
×:蛍光灯の映りこみは確認できるが、積層体表面の艶消し層のうねりが成形前の熱成形用艶消しアクリル樹脂フィルムの状態と比較して大きくなったため、映り込み方がぼやけている。
××:強い白味がかかったように絵柄層の絵柄が見える。
積層体の絵柄層の見え方を目視により以下のように評価した。
○:成形前の絵柄層と変化なし。
×:成形前の絵柄層より黄色味が目立ち、意匠が異なって見える。
(ゴム含有多段重合体(I−1)の製造)
攪拌機を備えた容器に脱イオン水10.8部を仕込んだ後、MMA 0.3部、n−BA 4.5部、1,3−BD 0.2部、AMA 0.05部およびCHP 0.025部からなる単量体成分を投入し、室温下にて攪拌混合した。ついで、攪拌しながら、乳化剤(東邦化学工業(株)製、商品名「フォスファノールRS610NA」)1.3部を上記容器内に投入し、攪拌を20分間継続して乳化液を調製した。
つぎに、冷却器付き重合容器内に脱イオン水139.2部を投入し、75℃に昇温した。さらに、イオン交換水5部にソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.20部、硫酸第一鉄0.0001部およびEDTA0.0003部を加えて調製した混合物を重合容器内に一度に投入した。ついで、窒素下で攪拌しながら、調製した乳化液を8分間にわたって重合容器に滴下した後、15分間反応を継続させ、第1の弾性重合体(I−1−A1)の形成を完結した。続いて、MMA 9.6部、n−BA 14.4部、1,3−BD 1.0部およびAMA 0.25部からなる単量体成分を、CHP 0.016部と共に、90分間にわたって重合容器に滴下した後、60分間反応を継続させ、第2の弾性重合体(I−1−A2)を含む弾性重合体(I−1−A)を得た。第1の弾性重合体(I−1−A1)単独のTgは−48℃であり、第2の弾性重合体(I−1−A2)単独のTgは−10℃であった。
続いて、MMA 57部、MA 3部、n−OM 0.264部およびt−BH 0.075部からなる単量体成分を140分間にわたって重合容器に滴下した後、60分間反応を継続させ、硬質重合体(I−1−C)を形成して、ゴム含有多段重合体(I−1)の重合体ラテックスを得た。硬質重合体(I−1−C)単独のTgは99℃であった。また、重合後に測定したゴム含有多段重合体(I−1)の質量平均粒子径は0.11μmであった。
また、得られたゴム含有多段重合体(I−1)214.3gを目開き25μmのナイロンメッシュで濾過したアセトン1500mlに投入し、3時間攪拌して、ゴム含有多段重合体(I−1)のアセトン分散液を調製した。ついで、この分散液を目開き32μmのナイロンメッシュで濾過した後、ナイロンメッシュごとクロロホルム中で15分間超音波洗浄することでメッシュ上の捕捉物をクロロホルム洗浄した。ついで、目開き25μmのナイロンメッシュで濾過したアセトン150mlに上記超音波洗浄後の捕捉物をナイロンメッシュごと投入し、この液を15分間超音波処理した後、ナイロンメッシュを除去して、メッシュ上の捕捉物のアセトン分散液150mlを調製した。ついで、この分散液70mlについて、リオン(株)製、自動式液中微粒子計測器(型式:KL−01)にて25℃下で測定し、直径55μm以上の粒子の数を求めたところ、10個であった。
(ゴム含有重合体(I’−2)の製造)
窒素雰囲気下、還流冷却器付き反応容器内に脱イオン水244部を入れ、80℃に昇温した。そして、表3に示す(イ)を添加し、撹拌しながら、表3に示す第1の弾性重合体(I’−2−A1)用の原料(ロ)の1/15を仕込み、15分間保持した。ついで、残りの原料(ロ)を、水に対する単量体成分[原料(ロ)]の増加率が8%/時間となる速度で、連続的に添加した後、60分間保持し、第1の弾性重合体(I’−2−A1)のラテックスを得た。第1の弾性重合体(I’−2−A1)単独のTgは24℃であった。
続いて、このラテックスにソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.6部を加え、15分間保持した。そして、窒素雰囲気下、80℃で撹拌しながら、表3に示す第2の弾性重合体(I’−2−A2)用の原料(ハ)を、水に対する単量体成分[原料(ハ)]の増加率が4%/時間となる速度で、連続的に添加した後、120分間保持し、第2の弾性重合体(I’−2−A2)を形成し、弾性重合体(I’−2−A)のラテックスを得た。第2の弾性重合体(I’−2−A2)単独のTgは−38℃であった。
得られたゴム含有重合体(I’−2)の重合体ラテックスに酢酸カルシウムを添加し、凝析、凝集、固化反応を行い、ろ過、水洗後、乾燥してゴム含有重合体(I’−2)を得た。ゴム含有重合体(I’−2)のゲル含有率は、90%であった。
(熱可塑性重合体(IV)の製造)
反応容器に窒素置換したイオン交換水200部を仕込み、さらに乳化剤として花王(株)製、商品名「ラテムルASK」1部および過硫酸カリウム0.15部を仕込んだ。
つぎに、MMA 40部、n−BA 2部およびn−OM 0.004部を仕込み、窒素雰囲気下、65℃で3時間攪拌し、重合を完結させた。
続いて、MMA 44部およびn−BA 14部からなる単量体成分を2時間にわたって滴下した後、2時間保持し、重合を完結した。
得られた熱可塑性重合体(IV)の重合体ラテックスを0.25%硫酸水溶液に添加し、重合体を酸析させた後、脱水、水洗、乾燥し、粉体状の熱可塑性重合体(IV)を回収した。得られた熱可塑性重合体(IV)の還元粘度は、0.38L/gであった。
(アクリル樹脂フィルム基体(A)の製造)
ゴム含有多段重合体(I−1)75部および熱可塑性重合体(II)[MMA/MA共重合体(MMA/MA=99/1(質量比)、還元粘度ηsp/c=0.06L/g)]25部に、配合剤としてチバスペシャリティケミカルズ社製、商品名「チヌビン234」1.4部、旭電化工業(株)製、商品名「アデカスタブAO−50」0.1部、および旭電化工業(株)製、商品名「アデカスタブLA−67」0.3部を添加した後、ヘンシェルミキサーを用いて混合した。この混合物[アクリル樹脂組成物(III−1)]を230℃に加熱した脱気式押出機(池貝鉄工(株)製、PCM−30(商品名))に供給し、混練して、300メッシュのスクリーンメッシュで異物を取り除きながら押し出し、ペレット(A)を得た。
(アクリル樹脂フィルム基体(B)の製造)
ゴム含有重合体(I’−2)16部および熱可塑性重合体(II)[MMA/MA共重合体(MMA/MA=90/10(質量比)、還元粘度ηsp/c=0.06L/g)]84部に、配合剤として熱可塑性重合体(IV)1部、チバスペシャリティケミカルズ社製、商品名「チヌビン234」1.4部、旭電化工業(株)製、商品名「アデカスタブAO−50」0.1部、および旭電化工業(株)製、商品名「アデカスタブLA−67」0.3部を添加した後、ヘンシェルミキサーを用いて混合した。この混合物[アクリル樹脂組成物(III−2)]を230℃に加熱した脱気式押出機(池貝鉄工(株)製、PCM−30(商品名))に供給し、混練して、300メッシュのスクリーンメッシュで異物を取り除きながら押し出し、ペレット(B)を得た。
上記の方法で製造したペレット(B)用いる以外は、アクリル樹脂フィルム基体(A)の製膜と同様にして、厚さ75μmのアクリル樹脂フィルム基体(B)を製膜した。アクリル樹脂フィルム基体(B)の鉛筆硬度は、2Hであった。
(アクリル樹脂フィルム基体(C)の製造)
製造例5において、熱可塑性重合体(II)として[MMA/MA共重合体(MMA/MA=99/1(質量比)、還元粘度ηsp/c=0.06L/g)]を用いる以外は同様にして、厚さ75μmのアクリル樹脂フィルム基体(C)を製膜した。アクリル樹脂フィルム基体(C)の鉛筆硬度は、2Hであった。
(アクリル樹脂フィルム基体(D)の製造)
ペレット(A)を80℃で一昼夜乾燥し、300mm巾のTダイを取り付けた40mmφのノンベントスクリュー型押出機(L/D=26)を用いて、シリンダー温度180〜240℃の条件で、500メッシュのスクリーンメッシュで異物を取り除きながら押し出し、Tダイ温度240℃、Tダイのスリット幅0.5mmの条件で押し出しした溶融状態のアクリル樹脂フィルムを2本の金属製冷却ロール間に通し、バンク(樹脂溜まり)が常にある状態で樹脂を挟持し、圧延しながら面転写した後、これを巻き取り機で紙巻に巻き取ることによって厚さ75μmのアクリル樹脂フィルム基体(D)を製膜した。
MMA 85%、HEMA 12%、n−BA 3%の共重合体である水酸基含有アクリル樹脂(水酸基価80mgKOH/g、ガラス転移温度90℃、質量平均分子量約8万)23部と、ヘキサメチレンジイソシアネート(イソシアヌレート型)の3量体4部と、質量平均粒子径が6μmの不定形シリカ4部とを、酢酸エチル48部、酢酸nプロピル16部、および酢酸ブチル10部からなる溶剤に分散させて塗料を得た。この塗料を、岩田カップ粘度計を用いて粘度が14秒になるように酢酸エチルを用いて希釈した。
ヘキサメチレンジイソシアネート(イソシアヌレート型)の3量体を5.6部用いた以外は実施例1と同様に実施した。艶消し層の厚さは1.1μmであった。
ヘキサメチレンジイソシアネート(イソシアヌレート型)の3量体を7.5部用いた以外は実施例1と同様に実施した。艶消し層の厚さは1.1μmであった。
MMA 68%、HEMA 9%、n−BA 9%、メタクリル酸n−ブチル14%の共重合体である水酸基含有アクリル樹脂(水酸基価60mgKOH/g、ガラス転移温度65℃、質量平均分子量約3万)32部と、ヘキサメチレンジイソシアネート(イソシアヌレート型)の3量体5.6部と、質量平均粒子径が6μmの不定形シリカ4.8部とを、酢酸エチル33部、酢酸nプロピル15部、および酢酸ブチル15部からなる溶剤に分散させて塗料を得た。この塗料を、岩田カップ粘度計を用いて粘度が14秒になるように酢酸エチルを用いて希釈した。この希釈塗料を用いた以外は実施例1と同様に実施した。艶消し層の厚さは1.3μmであった。
MMA 44%、HEMA 21%、メタクリル酸n−ブチル35%の共重合体である水酸基含有アクリル樹脂(水酸基価110mgKOH/g、ガラス転移温度60℃、質量平均分子量約2.5万)36部と、ヘキサメチレンジイソシアネート(イソシアヌレート型)の3量体5.6部と、質量平均粒子径が6μmの不定形シリカ4.8部とを、酢酸エチル33部、酢酸nプロピル15部、および酢酸ブチル15部からなる溶剤に分散させて塗料を得た。この塗料を、岩田カップ粘度計を用いて粘度が14秒になるように酢酸エチルを用いて希釈した。この希釈塗料を用いた以外は実施例1と同様に実施した。艶消し層の厚さは1.3μmであった。
ヘキサメチレンジイソシアネート(イソシアヌレート型)の3量体を0.1部用いた以外は実施例1と同様に実施した。艶消し層の厚さは1.1μmであった。
ヘキサメチレンジイソシアネート(イソシアヌレート型)の3量体を1.5部用いた以外は実施例1と同様に実施した。艶消し層の厚さ1.1μmであった。
ヘキサメチレンジイソシアネート(イソシアヌレート型)の3量体を8部用いる以外は実施例1と同様に実施した。艶消し層の厚さ1.1μmであった。
ヘキサメチレンジイソシアネート(イソシアヌレート型)の3量体を13部用いた以外は実施例1と同様に実施した。艶消し層の厚さは1.1μmであった。
水酸基含有アクリル樹脂のMMAとHEMAとの比率を変更して、水酸基含有アクリル樹脂の水酸基価を10mgKOH/gとした以外は実施例1と同様に実施した。艶消し層の厚さは1.3μmであった。
水酸基含有アクリル樹脂のMMAとHEMAとの比率を変更して、水酸基含有アクリル樹脂の水酸基価を140mgKOH/gとした以外は実施例1と同様に実施した。艶消し層の厚さは1.3μmであった。
水酸基含有アクリル樹脂のMMAとn−BAとの比率を変更して、水酸基含有アクリル樹脂のガラス転移温度を40℃とした以外は実施例4と同様に実施した。エージング後に、熱成形用艶消しアクリル樹脂フィルムを紙管から巻き出そうとしたが、部分的に熱成形用艶消しアクリル樹脂フィルムがブロッキングしたため、フィルム切れが発生した。艶消し層の厚さは1.3μmであった。
酢酸エチル、酢酸nプロピル、酢酸ブチルのそれぞれの量を、酢酸エチル10部、酢酸nプロピル10部、酢酸ブチル43部とする以外は、実施例5と同様に実施した。艶消し層の厚さは1.3μmであった。
グラビアコーターのかわりにリバースロールコーターを用いた以外は実施例2と同様に実施した。艶消し層の厚さは3μmであった。
グラビアコーターのかわりにキスリバースコーターを用いた以外は実施例2と同様に実施した。アクリル樹脂フィルム基体の原反巻き形状の少し弛んでいる部分で、塗工抜けが部分的に発生した。艶消し層の厚さは1μmであった。
アクリル樹脂フィルム基体(A)のかわりに、厚さ75μmのアクリル樹脂フィルム基体(C)を用いた以外は実施例2と同様に実施した。
アクリル樹脂フィルム基体(A)のかわりに、アクリル樹脂フィルム基体(D)を用いた以外は実施例2と同様に実施した。インサート成形の際の加熱により、熱成形用艶消しアクリル樹脂フィルムとABSシートとが剥がれる場合があった。
厚さ75μmのアクリル樹脂フィルム基体(A)のかわりに、厚さ125μmのアクリル樹脂フィルム基体(A)を用いた以外は実施例2と同様に実施した。なお、インモールド成形はヒーター設定温度260℃、加熱時間15秒に変更して実施した。
厚さ125μmのアクリル樹脂フィルム基体(C)を用いた以外は実施例18と同様に実施した。
質量平均粒子径が1.5μmの不定形シリカを用いた以外は実施例2と同様に実施した。
質量平均粒子径が14μmの不定形シリカを用いる以外は実施例2と同様に実施した。なお、得られた熱成形用艶消しアクリル樹脂フィルムにドクター筋があるのを確認できた。
塗料を希釈する際の酢酸エチルの量を1.5質量倍にした以外は実施例2と同様に実施した。艶消し層の厚さは0.7μmであった。
ゴム含有多段重合体(I−1)75部および熱可塑性重合体(II)[MMA/MA共重合体(MMA/MA=99/1(質量比)、還元粘度ηsp/c=0.06L/g)]25部に、配合剤として質量平均粒子径が6μmの不定形状のシリカ10質量部、チバスペシャリティケミカルズ社製、商品名「チヌビン234」1.4部、旭電化工業(株)製、商品名「アデカスタブAO−50」0.1部、および旭電化工業(株)製、商品名「アデカスタブLA−67」0.3部を添加した後、ヘンシェルミキサーを用いて混合した。この混合物[アクリル樹脂組成物(III−3)]を230℃に加熱した脱気式押出機(池貝鉄工(株)製、PCM−30(商品名))に供給し、混練して、100メッシュのスクリーンメッシュで異物を取り除きながら押し出し、ペレットを得た。
塗料を希釈する際の酢酸エチルの量を10質量倍にした以外は実施例2と同様に実施した。艶消し層の厚さは0.03μmであった。得られたフィルムを確認したところ、部分的に艶消し層が塗工されていない部分があった。
リバースコーターの塗工部のロールクリアランスを、参考例2の設定の約3倍巾に広げた以外は、参考例2と同様に実施した。艶消し層の厚さは8μmであった。塗工中、アクリル樹脂フィルム基体の物性低下により、頻繁にフィルム切れが発生したため、巻きサンプルとして採取できなかった。
MMA 85%、HEMA 12%、n−BA 3%の共重合体である水酸基含有アクリル樹脂(水酸基価80mgKOH/g、ガラス転移温度90℃、質量平均分子量約8万)23部と、ポリイソシアネートとしてヘキサメチレンジイソシアネート(イソシアヌレート型)の3量体5.6部と、質量平均粒子径が6〜7μmの不定形シリカ4部とを、酢酸エチル48部、酢酸nプロピル16部、および酢酸ブチル10部からなる溶剤に分散させて塗料を得た。この塗料を酢酸エチルで希釈して、岩田カップ粘度計による流下時間が14秒になるように粘度調整した。粘度調整した後に、チッソフィルター(株)製のCPII−10を用いて塗料を濾過した。
MMA 68%、HEMA 9%、n−BA 9%、メタクリル酸n−ブチル14%の共重合体である水酸基含有アクリル樹脂(水酸基価60mgKOH/g、ガラス転移温度65℃、質量平均分子量約3万)32部と、ポリイソシアネートとしてヘキサメチレンジイソシアネート(イソシアヌレート型)の3量体5.6部と、質量平均粒子径が6〜7μmの不定形シリカ4.8部とを、酢酸エチル33部、酢酸nプロピル15部、および酢酸ブチル15部からなる溶剤に分散させて塗料を得た。この塗料を酢酸エチルで希釈して、岩田カップ粘度計による流下時間が14秒になるように粘度調整した。粘度調整した後に、チッソフィルター(株)製のCPII−10を用いて塗料を濾過した。
この希釈塗料をアクリル樹脂フィルム基体(B)に塗布する以外は、実施例23と同様に実施した。得られた熱成形用艶消しアクリル樹脂フィルムの外観は、転写量の低下によるかすれ状あるいは顕著な版目等がなく、良好な艶消し層を形成できていた。
アクリル樹脂フィルム基体(A)のかわりに、厚さ75μmのアクリル樹脂フィルム基体(C)を用いた以外は、実施例23と同様に実施した。得られた熱成形用艶消しアクリル樹脂フィルムの外観は、転写量の低下によるかすれ状あるいは顕著な版目等がなく、良好な艶消し層を形成できていた。
MMA 85%、HEMA 12%、n−BA 3%の共重合体である水酸基含有アクリル樹脂(水酸基価80mgKOH/g、ガラス転移温度90℃、質量平均分子量約8万)27.5部と、ポリイソシアネートとしてヘキサメチレンジイソシアネート(イソシアヌレート型)の3量体6.8部と、質量平均粒子径5〜6μmの不定形シリカ6部、沈殿防止剤として質量平均粒子径0.1μmの不定形シリカ1.5部および質量平均粒子径5μmのポリテトラフロロエチレンワックスSST−3(商品名、SHAMROCK製、融点321℃)1部とを、メチルエチルケトン22部、メチルイソブチルケトン43部および酢酸ブチル40部からなる溶剤に分散させて塗料を得た。なお、この塗料を塗工直前に岩田カップ粘度計で測定したところ、流下時間は18秒であった。粘度調整した後に、チッソフィルター(株)製のCPII−10を用いて塗料を濾過した。
塗工をアクリル樹脂フィルム基体に対して約3000m程度実施したところ、その間に、グラビアロールが沈降したワックスを巻き上げて発生する外観欠陥(流れ方向に断続的に白い筋が転写される)がときどき確認できた。また、塗工終了後、塗料を溜めてあるパンの底を確認したところ、沈殿物が確認できた。
実施例26において、ポリテトラフロロエチレンワックスSST−3(商品名)の代わりに、質量平均粒子径5μmのポリエチレンとポリプロピレンとからなるワックスS−363(商品名、SHAMROCK製、融点142℃)を用いた以外は、実施例26と同様にして、熱成形用艶消しアクリル樹脂フィルムを得た。なお。この塗料を塗工直前に岩田カップ粘度計で測定したところ、流下時間は19秒であった。得られた艶消しアクリル樹脂フィルムの外観は、転写量の低下によるかすれ状あるいは顕著な版目等がなく、良好な艶消し層を形成できていた。
塗工をアクリル樹脂フィルム基体に対して約3000m程度実施したところ、その間に、グラビアロールが沈降したワックスを巻き上げて発生する外観欠陥は発生しなかった。また、塗工終了後、塗工液を溜めてあるパンの底を確認したところ、沈殿物は確認できなかった。
ポリエチレンとポリプロピレンとからなるワックスS−363(商品名)を2部に増やした以外は、実施例27と同様にして、熱成形用艶消しアクリル樹脂フィルムを得た。なお、この塗料を塗工直前に岩田カップ粘度計で測定したところ、流下時間は19秒であった。得られた熱成形用艶消しアクリル樹脂フィルムの外観は、転写量の低下によるかすれ状あるいは顕著な版目等がなく、良好な艶消し層を形成できていた。
ポリエチレンワックスS−395(商品名)を使用しない以外は、実施例26と同様にして、熱成形用艶消しアクリル樹脂フィルムを得た。なお、この塗料を塗工直前に岩田カップ粘度計で測定したところ、流下時間は19秒であった。得られた熱成形用艶消しアクリル樹脂フィルムの外観は、転写量の低下によるかすれ状あるいは顕著な版目等がなく、良好な艶消し層を形成できていた。
MMA 85%、HEMA 12%、n−BA 3%の共重合体である水酸基含有アクリル樹脂(水酸基価80mgKOH/g、ガラス転移温度90℃、質量平均分子量約8万)27.4部と、ポリイソシアネートとしてヘキサメチレンジイソシアネート(イソシアヌレート型)の3量体6.8部と、質量平均粒子径5〜6μmの不定形シリカ7部、沈殿防止剤として質量平均粒子径0.1μmの不定形シリカ1.5部および質量平均粒子径5μmのポリエチレンとポリプロピレンとからなるワックスS−363(商品名、SHAMROCK製、融点142℃)1部とを、メチルエチルケトン22.3部、メチルイソブチルケトン49.6部および酢酸ブチル45.8部からなる溶剤に分散させて塗料を得た。なお、この塗料を塗工直前に岩田カップ粘度計で測定したところ、流下時間は15秒、液温は21℃であった。塗工直前に、チッソフィルター(株)製のCPII−10を用いて塗工液を濾過した。
艶消し層の厚さは1μmであった。また、得られた熱成形用艶消しアクリル樹脂フィルムは、蛍光灯の映りこみがあり、版目がない良好な外観であった。
実施例30において、1インチあたり200線の線数の版目を有する斜線型グラビアロールのかわりに、1インチあたり250線の線数の版目を有する斜線型グラビアロール(ロール軸方向に対する斜線角度は約45°、版目の開口巾80μm、版目の底巾11μm、版深度35μm、セル容量15.6cm3 /m2 、直径120mm)を用い、塗工速度を40m/分とした以外は、実施例30と同様に実施した。
艶消し層の厚さは1μmであった。また、得られた熱成形用艶消しアクリル樹脂フィルムは、蛍光灯の映りこみがあり、版目がない良好な外観であった。
実施例30において、1インチあたり200線の線数の版目を有する斜線型グラビアロールのかわりに、1インチあたり250線の線数の版目を有するロトフロ格子型グラビアロール(版深度34μm、セル容量13.2cm3 /m2 、直径120mm)を用いた以外は、実施例30と同様に実施した。
艶消し層の厚さは0.8μmであった。また、得られた熱成形用艶消しアクリル樹脂フィルムは、蛍光灯の映りこみがあり、版目がない良好な外観であった。
実施例30において、1インチあたり200線の線数の版目を有する斜線型グラビアロールのかわりに、1インチあたり250線の線数の版目を有する斜線型グラビアロール(ロール軸方向に対する斜線角度は約75°、版目の開口巾90μm、版目の底巾8μm、版深度32μm、セル容量15.4cm3 /m2 、直径120mm)を用いる以外は実施例30と同様に実施した。
得られた艶消しアクリル樹脂フィルムの表面光沢度は19.4%であり良好な艶消し性であったが、所々に塗工液が塗布されていない箇所があり、均一な艶消し層を有する熱成形用艶消しアクリル樹脂フィルムは得られなかった。
また、実施例23〜32より、硬化性のバインダー樹脂を使用することにより、良好な耐薬品性を示すことがわかる。また、200℃まで加熱したときの黄色度(YI’(200℃))と加熱前の黄色度(YI)との差が1.3以下である熱成形用艶消しアクリル樹脂フィルムは、成形時の外観変化がないことがわかる。
実施例26〜28、30〜32より、ワックスを添加した熱成形用艶消しアクリル樹脂フィルムは、良好な耐擦り傷性を示すことがわかる。
実施例30〜32、参考例より、1インチあたり150本以上の線数の版目を有し、かつ版目がロール軸方向に対して40〜50°の角度で彫刻された斜線型グラビアロールを使用することで、良好な外観の熱成形用艶消しアクリル樹脂フィルムが得られ、かつ熱成形を行っても外観変化が小さい熱成形用艶消しアクリル樹脂フィルムが得られることがわかる。
Claims (10)
- アクリル樹脂フィルム基体と、
該アクリル樹脂フィルム基体の一方の面上に最外層として設けられた、艶消し材およびバインダー樹脂を含有する、厚さ0.1μm以上2μm未満の艶消し層と
を有する熱成形用艶消しアクリル樹脂フィルム。 - 艶消し層が、さらにポリオレフィン系ワックスを含有する、請求項1に記載の熱成形用艶消しアクリル樹脂フィルム。
- 艶消し層の表面温度を200℃になるまで加熱した後の熱成形用艶消しアクリル樹脂フィルムの黄色度(YI'(200℃))と、加熱前の熱成形用艶消しアクリル樹脂フィルムの黄色度(YI)とが、下記式(i)の関係を満たす、請求項1または2に記載の熱成形用艶消しアクリル樹脂フィルム。
YI'(200℃)−YI ≦ 1.3 (i) - 艶消し層表面の動摩擦係数が、0.23以下である、請求項1〜3のいずれかに記載の熱成形用艶消しアクリル樹脂フィルム。
- 艶消し層が設けられた面とは反対側のアクリル樹脂フィルム基体の面上に、さらに絵柄層を有する、請求項1〜4のいずれかに記載の熱成形用艶消しアクリル樹脂フィルム。
- アクリル樹脂フィルム基体と、該アクリル樹脂フィルム基体の一方の面上に最外層として設けられた、艶消し材およびバインダー樹脂を含有する、厚さ0.1μm以上2μm未満の艶消し層とを有する熱成形用艶消しアクリル樹脂フィルムの製造方法であって、
艶消し層を印刷法またはコート法により形成する熱成形用艶消しアクリル樹脂フィルムの製造方法。 - 1インチあたり150本以上の線数の版目を有し、かつ該版目がロール軸方向に対して40〜50°の角度で彫刻された斜線型グラビアロールを用いて艶消し層を形成する、請求項6に記載の熱成形用艶消しアクリル樹脂フィルムの製造方法。
- 請求項1または請求項2に記載の熱成形用艶消しアクリル樹脂フィルムを、艶消し層とは反対側の面が接するように、基材に積層した積層体。
- 艶消し層表面の動摩擦係数が、0.23以下である、請求項8に記載の積層体。
- インモールド成形法またはインサート成形法により熱成形用艶消しアクリル樹脂フィルムを基材に積層した、請求項8または9に記載の積層体。
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