JP4550983B2 - ポリカーボネート樹脂組成物およびラミネート物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本願発明は金属ラミネート用フィルムに適したポリカーボネート樹脂組成物、およびそれよりなるフィルムに関する。さらに詳しくは、金属板との接着性に優れ、金属板にラミネートしたときの成形加工性、耐衝撃性の良好な金属ラミネート板を与える樹脂組成物、およびそれよりなるラミネート物、特にフィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、飲料用金属缶の内面および外面の腐蝕防止には熱硬化性塗料を塗布することが多い。一方、熱可塑性樹脂フィルムを金属板に加熱ラミネートし、これを絞り成形加工やしごき成形加工することによって缶状に成形することが提案されている。熱可塑性樹脂フィルムとしてはポリオレフィンフィルム、共重合ポリエステルフィルム、接着剤付ポリエステルフィルムなどが提案されている。たとえば特公平2−58094号公報にはポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを熱ラミネート後急冷することにより金属ラミネート側は無配向に、反対側には二軸配向を残すというフィルム被覆金属板の製造方法が開示されている。しかし、ポリオレフィンフィルムでは耐熱性、耐食性、保香性に劣り、共重合ポリエステルフィルムでは絞り成形やしごき成形時にプラグにフィルムが粘着して均一な成形ができず、その結果フィルムに亀裂が入りやすくなったりプラグが抜けにくくなり成形速度が上がらず、また接着剤によるラミネートではコストが上昇し、接着剤層の絞り成形性・しごき成形性が悪く、亀裂が入り耐食性などに問題があった。またPETフィルムを熱ラミネートする方法ではラミネート温度を高く設定する必要があるために金属板のダメージ、特にブリキ板等のメッキ層の損傷が大きく、またPET単体ではそれ自体の成形性も不良のため一般の飲料用缶のような深絞りに対応する上で大きな問題があった。
【0003】
上記問題点を解決するため、特開平7−228712号公報には、特定の末端水酸基濃度のポリカーボネートフィルムをラミネートすることが提案されている。
【0004】
しかしながら特開平7−228712号公報の方法では、金属へのラミネート時にポリカーボネートの一部が劣化する恐れがあり、ラミネート時の温度を低く保つ必要があった。そのため、ポリマーの溶融粘度を低くするために比較的低分子量のポリカーボネートしか使用できず、力学物性が不足することもあった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本願発明の目的は、金属板との接着性に優れ、かつ金属板にラミネートする温度を高温にすることが可能な、金属ラミネート用フィルムに適したポリカーボネート樹脂を提供することにある。
【0006】
本願発明の他の目的は金属板との接着性に優れ、かつ金属板にラミネートする温度を高温にすることが可能な金属ラミネート用フィルムを提供することにある。
【0007】
本願発明の更に他の目的は接着性に優れたポリカーボネートラミネート物、なかんずく金属とポリカーボネート組成物とのラミネート物を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本願発明の上記目的は下記の本願発明によって達成できる。
【0009】
1. 芳香族ジヒドロキシ化合物1モル当たり10〜1000μ化学当量の含窒素塩基性化合物および/または含リン塩基性化合物、ならびに
芳香族ジヒドロキシ化合物1モル当たり0.05〜5μ化学当量のアルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属化合物
を含有する触媒の存在下、
芳香族ジヒドロキシ化合物と、炭酸ジエステルとを重縮合させることによって得られる下記式(1)
【化2】
(式中のR1およびR2は、それぞれ独立に、炭素数1〜20アルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のシクロアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のシクロアルコキシ基または炭素数6〜20のアリールオキシ基であり、mおよびnは、互いに独立に、0〜4の整数であり、Xは単結合、酸素原子、カルボニル基、炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数2〜20のアルキリデン基、炭素数6〜20のシクロアルキレン基、炭素数6〜20のシクロアルキリデン基または炭素数6〜20のアリーレン基または炭素数6〜20のアルキレンアリーレンアルキレン基である。)
で表される繰り返し単位から実質的になる芳香族ポリカーボネート(A)および
スルホン酸系化合物(B)
よりなる芳香族ポリカーボネート樹脂組成物において、
該樹脂組成物の溶融粘度変化率0.5%以下、末端水酸基量が25〜100eq/ton以下、粘度平均分子量が12,000〜100,000であり、かつ該組成物からなる厚さ50μmのフィルムを300℃、50kg/cm2で20秒保持して鋼板(電解クロム酸処理、厚さ200μm、幅10mm)とラミネートしたときのJISK6854による接着強さが0.5kg/cm以上であることを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物。
【0010】
2. スルホン酸系化合物(B)をアルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属化合物中のアルカリ金属元素とアルカリ土類金属元素との合計量の1化学当量あたり、0.7〜100化学当量使用することを特徴とする、上記1記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【0011】
3. 上記1または2に係るポリカーボネート樹脂組成物よりなるラミネート物。
【0012】
上記の特性を備えたポリカーボネート組成物を、たとえばフィルム状になして、金属等とラミネートすると接着性、耐衝撃性等に優れたラミネート物が得られることが判明した。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下本願発明について詳述する。
【0014】
本願発明で使用される芳香族ジヒドロキシ化合物としては、例えば2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下BPAと略す)、ビス(2−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(2−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)サルファイド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン等およびその芳香環に例えばアルキル基、アリール基等が置換されたものがあげられ、なかでもコスト面からBPAが特に好ましい。これらは単独で用いても2種以上併用しても良い。
【0015】
また、炭酸ジエステルとしては例えばジフェニルカーボネート(以下DPCと略称)、ジナフチルカーボネート、ビス(ジフェニル)カーボネート、ジメチルカーボネート、ジブチルカーボネート等が挙げられ、なかでもコスト面からDPCが好ましい。
【0016】
このような芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとを芳香族ポリカーボネートの原料として用いる場合、不純物として含まれる微量金属元素は、存在化学種の明確な化学構造、寄与形式は不明だが、製造される芳香族ポリカーボネートの耐久性、色調、透明性に悪影響を与えるため制御しておくのが好ましい。
【0017】
本願発明で開示しているポリカーボネート(A)は、溶融法(エステル交換法)で製造される。溶融法は常圧および/または減圧窒素雰囲気下で芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとを加熱しながら撹拌して、生成するアルコールまたはフェノールを留出させることで行われる。その反応温度は生成物の沸点等により異なるが、反応により生成するアルコールまたはフェノールを除去するため通常120〜350℃の範囲であり、好ましくは良好な色相や熱安定性が得られる理由で180〜280℃の範囲である。
【0018】
反応後期には系を減圧にして生成するアルコールまたはフェノールの留出を容易にさせる。反応後期の内圧は、好ましくは133.3Pa(1mmHg)以下であり、より好ましくは66.7Pa(0.5mmHg)以下である。
【0019】
本願発明においては、特定種類の触媒を使用する。すなわち、含窒素塩基性化合物および/または含リン塩基性化合物(以下NCBAと略称)およびアルカリ金属化合物、および/またはアルカリ土類金属化合物(以下AMCと略称)を使用する。
【0020】
NCBAの具体例としては、例えば含窒素塩基性触媒としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシドなどの、アルキル、アリール、アルキルアリール基などを有するアンモニウムヒドロキシド類、テトラメチルアンモニウムアセテート、テトラエチルアンモニウムフェノキシド、テトラブチルアンモニウム炭酸塩、ベンジルトリメチルアンモニウム安息香酸塩などのアルキル、アリール、アルキルアリール基などを有する塩基性アンモニウム塩、トリエチルアミン、ジメチルベンジルアミン、などの第三級アミン、あるいはテトラメチルアンモニウムボロハイドライド、テトラブチルアンモニウムボロハイドライド、テトラメチルアンモニウムテトラフェニルボレートなどの塩基性塩などを挙げることができる。
【0021】
また、含リン塩基性化合物の具体例としては例えばテトラブチルホスホニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルホスホニウムヒドロキシドなどのアルキル、アリール、アルキルアリール基などを有するホスホニウムヒドロキシド類、あるいはテトラメチルホスホニウムボロハイドライド、テトラブチルホスホニウムボロハイドライド、テトラメチルホスホニウムテトラフェニルボレートなどの塩基性塩などを挙げることができる。
【0022】
上記NCBAは、塩基性窒素原子あるいは塩基性リン原子が芳香族ジヒドロキシ化合物1モルに対し、10〜1000μ化学当量となる割合で用いられる。10μより少ないと反応が遅くなり好ましくなく、1000μより多いと着色が激しくなり好ましくない。より好ましい使用範囲は同じ基準に対し、20〜500μ化学当量となる割合である。特に好ましい割合は同じ基準に対し50〜500μ化学当量となる割合である。
【0023】
さらに本願発明においては、原料中不純物を低減させた効果を、ポリマー色調、安定性に実現するために、上記NCBAとともにAMCを併用するが、AMCとしてはアルカリ金属を含有する化合物が好ましく使用される。かかるAMCは、芳香族ジヒドロキシ化合物1モルに対し、アルカリ金属元素および/またはアルカリ土類金属元素として0.05〜5μ化学当量の範囲で使用される。かかる量比の触媒を使用することにより、以下継続する末端の封鎖反応、重縮合反応速度を損なうことなく重縮合反応中に生成しやすい分岐反応、主鎖開裂反応や、成形加工時における装置内での異物の生成、焼けといった好ましくない現象を効果的に抑止できる。
【0024】
上記範囲を逸脱すると、得られるポリカーボネートの諸物性に悪影響を及ぼしたり、またエステル交換反応が十分に進行せず、高分子量のポリカーボネートが得られない等の問題があり、好ましくない。
【0025】
本願発明に使用されるAMCとしては、例えばアルカリ金属、アルカリ土類金属の水酸化物、炭化水素化合物、炭酸塩、酢酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、亜硫酸塩、シアン酸塩、チオシアン酸塩、ステアリン酸塩、水素化硼素塩、安息香酸塩、燐酸水素化合物、ビスフェノール、フェノールの塩等が挙げられる。
【0026】
具体例としては、水酸化ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、酢酸リチウム、亜硝酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、シアン酸ナトリウム、シアン酸カリウム、チオシアン酸ナトリウム、チオシアン酸カリウム、チオシアン酸セシウム、ステアリン酸ナトリウム、水素化硼素ナトリウム、水素化硼素カリウム、水素化硼素リチウム、フェニル化硼素ナトリウム、安息香酸ナトリウム、燐酸水素ジナトリウム、燐酸水素ジカリウム、ビスフェノールAのジナトリウム塩、モノカリウム塩、ナトリウムカリウム塩、フェノールのカリウム塩、等が挙げられる。
【0027】
本願発明の芳香族ポリカーボネート(A)は、主たる繰り返し構造が下記式(1)
【化3】
(式中のR1およびR2は、それぞれ独立に、炭素数1〜20アルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のシクロアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のシクロアルコキシ基または炭素数6〜20のアリールオキシ基であり、mおよびnは、互いに独立に、0〜4の整数であり、Xは単結合、酸素原子、カルボニル基、炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数2〜20のアルキリデン基、炭素数6〜20のシクロアルキレン基、炭素数6〜20のシクロアルキリデン基または炭素数6〜20のアリーレン基または炭素数6〜20のアルキレンアリーレンアルキレン基である。)
で表わされる。
【0028】
本願発明のポリカーボネート樹脂組成物においては、スルホン酸系化合物(B)を用いなければならない。スルホン酸系化合物(B)を用いることにより、ラミネート時のポリカーボネートの劣化が抑制される。
【0029】
かかるスルホン酸系化合物(B)としては、スルホン酸のホスホニウム塩やアンモニウム塩などのスルホン酸塩、スルホン酸、スルホン酸低級エステルを挙げることができる。これらスルホン酸系化合物は組み合わせて用いることができる。
【0030】
スルホン酸ホスホニウム塩、アンモニウム塩としては、下記式(2)、(3)、(4)で表されるものを例示することができる。
【0031】
【化4】
A1−(−SO3X1)m (2)
(ここでA1は置換基を有していてもよいm価の炭化水素基であり、X1はアンモニウム、またはホスホニウムカチオンである。mは1〜4の整数である。アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオンとしては、下記式
【0032】
【化5】
+N(R11)(R12)(R13)(R14) (2A)
+P(R11)(R12)(R13)(R14) (2B)
(式中R11〜R14は互いに独立に水素原子、またはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などのアルキル基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基等の炭素数が1〜30の1価の炭化水素基である。)
で表わされるカチオンを挙げることができる。)
【0033】
【化6】
+X2−A2−SO3 - (3)
(ここでA2はエチレン基、プロピレン基、プチレン基等の2価のアルキレン基等の炭化水素基であり、+X2はアンモニウムカチオンまたはホスホニウムカチオンである。アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオンとしては、下記式
【0034】
【化7】
−N+(R15)(R16)(R17) (3A)
−P+(R15)(R16)(R17) (3B)
(ここでR15〜R17は互いに独立に水素原子、またはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などのアルキル基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基等の炭素数が1〜30の1価の炭化水素基である。)
で表わされるカチオンを挙げることができる。)
【0035】
【化8】
A3−(+X3)N・(R−SO3 -)N (4)
(ここでA3はN価の炭化水素基であり、Rは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基等の炭素数が1〜30の炭化水素基であり、X3はアンモニウムカチオン、またはホスホニウムカチオンである。Nは2〜4の整数である。アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオンとしては上記式(3A)、(3B)で表わされるものを挙げることができる。)
【0036】
上記式(2)で表わされる化合物の具体的な例としては、たとえば;
オクチルスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、デシルスルホン酸テトラホスホニウム塩、ベンゼンスルホン酸テトラメチルホスホニウム塩、ベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラヘキシルホスホニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラオクチルホスホニウム塩、デシルスルホン酸テトラメチルアンモニウム塩、ベンゼンスルホン酸テトラエチルアンモニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルアンモニウム塩を挙げることができる。
【0037】
上記式(3)で表わされる化合物の具体的な例としては、たとえば;
【化9】
ーSO3−(CH2)3−P+(C2H5)3、
ーSO3−(CH2)15−P+(C4H9)3、
ーSO3−(CH2)15−N+(C4H9)3
を挙げることができる。
【0038】
上記式(4)で表わされる化合物の具体的な例としては、たとえば;
【化10】
{(C4H9)3 P+−(CH2)10−P+(C4H9)3}
(CH3−C6H4−SO3 -)2、
等々を挙げることができる。
【0039】
スルホン酸、スルホン酸低級エステルとしては、たとえば;
ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、のごとき芳香族スルホン酸、ドデシルスルホン酸、ヘキサデシルスルホン酸、ノニルスルホン酸、等の脂肪族スルホン酸、ベンゼンスルホン酸メチル、ベンゼンスルホン酸エチル、ベンゼンスルホン酸ブチル、ベンゼンスルホン酸オクチル、ベンゼンスルホン酸フェニル、p−トルエンスルホン酸メチル、p−トルエンスルホン酸エチル、p−トルエンスルホン酸ブチル、p−トルエンスルホン酸オクチル、p−トルエンスルホン酸フェニル、ドデシルスルホン酸メチル、ヘキサデシルスルホン酸エチル、ノニルスルホン酸プロピル、デシルスルホン酸ブチル、等が例示できる。
【0040】
好ましくはスルホン酸低級エステル化合物が使用される。
【0041】
スルホン酸系化合物を添加する方法としては、例えば、反応生成物である芳香族ポリカーボネートが溶融状態にある間に添加しても良いし、また重合後得られた芳香族ポリカーボネートが反応槽から押し出し機を通ってペレタイズされる間に、スルホン酸系化合物を添加して混練することもできる。
【0042】
かかるスルホン酸系化合物は、AMCのアルカリ金属元素とアルカリ土類金属元素との合計量の1化学当量あたり、0.7〜100化学当量使用することが好ましい。0.7化学当量未満ではラミネート時のポリカーボネートの劣化を抑制する効果が不十分となる。また100化学当量を越えるとラミネートフィルムを飲用缶の内面コートに使用したときスルホン酸系化合物が内容物に移行する恐れがある。スルホン酸系化合物の使用量は、好ましくはアルカリ金属元素とアルカリ土類金属元素との合計量の1化学当量あたり、0.8〜30化学当量、さらに好ましくは、0.9〜20化学当量である。
【0043】
本願発明における芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は溶融粘度変化率0.5%以下のものが使用される。ここで、溶融粘度変化率は溶融粘度安定性を示すもので、次のように定義される。
【0044】
レオメトリックス社のRAA型流動解析装置を用い窒素気流下、せん断速度1rad/sec.,270℃で、溶融粘度値の変化を測定し、1分あたりの変化率を求めた。溶融粘度は、通常270℃での溶融後5分程度を過ぎると直線的に変化するので、溶融粘度(単位:ポイズ)の時間変化を記録し、その直線的変化の開始時点における溶融粘度をV1、その30分後の溶融粘度をV2としたときに、
(V1−V2)×100/(V1×30)(%)
を溶融粘度変化率とした。
【0045】
溶融粘度安定性の劣ったポリカーボネート樹脂(すなわち、溶融粘度変化率が0.5%を越えるもの)においては、金属板へのラミネート時の安定性不良に加えて、高湿条件化およびラミネート板長期使用時の機械的物性の低下が著しく、実用性に耐えないものとなってしまう。ここで、安定性不良とはラミネートフィルムの厚みや金属板との接着力などが一定にならないことである。
【0046】
本願発明における芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、末端水酸基濃度が25〜100(eq/ton−ポリマー)のものが使用される。末端水酸基濃度が25eq/ton未満であると金属板へのラミネート時に剥離等の問題が起こり好ましくない。また、100eq/tonを越えるとラミネート板を飲料用金属缶に用いたとき内容物の成分が吸着される恐れがあり、好ましくない。
【0047】
さらに本願発明の目的を達成する好ましい実施態様においては末端水酸基濃度が好ましくは25〜80eq/ton、さらにより好ましくは30〜60eq/tonである。
【0048】
末端水酸基濃度を上記範囲内にするには、例えば、
1)重合原料仕込みモル比制御法;重合反応仕込み時の炭酸ジエステル/芳香族ジヒドロキシ化合物モル比を高めること。たとえば重合反応装置の特徴を考え1.03から1.10の間に設定すること、
2)重合反応収量時点において例えば、USP5,696,222号記載の方法に従い、サリチル酸エステル系化合物により末端水酸基を封止すること
により達成することができる。
【0049】
2)の場合、サリチル酸エステル系化合物の使用量は封止反応前の末端水酸基、1化学当量当たり0.8〜10モル、より好ましくは0.8〜5モル、特に好ましくは0.9〜2モルの範囲がよい。かかる量比で添加することにより、末端水酸基の80%以上を好適に封止することができる。また本封止反応を行う時、上記特許記載の触媒を使用するのが好ましい。
【0050】
これらサリチル酸エステルとしては具体的には;
(i)2−メトキシカルボニルフェニル−フェニルカーボネート、2−メトキシカルボニルフェニル−2’−メチルフェニルカーボネート、2−メトキシカルボニルフェニル−4’−エチルフェニルカーボネート、2−メトキシカルボニルフェニル−3’−ブチルフェニルカーボネート、2−メトキシカルボニルフェニル−4’−ドデシルフェニルカーボネート、2−メトキシカルボニルフェニル−4’−ヘキサデシルフェニルカーボネート、2−メトキシカルボニルフェニル−2’、4’−ジブチルフェニルカーボネート、2−メトキシカルボニルフェニル−ジノニルフェニルカーボネート、2−メトキシカルボニルフェニル−シクロヘキシルフェニルカーボネート、2−メトキシカルボニルフェニル−ビフェニルカーボネート、2−メトキシカルボニルフェニル−クミルフェニルカーボネート、2−メトキシカルボニルフェニル−2’−メトキシフェニルカーボネート、2−メトキシカルボニルフェニル−4’−ブトキシフェニルカーボネート、2−メトキシカルボニルフェニル−4’−クミルオキシフェニルカーボネート、ジ(2−メトキシカルボニルフェニル)カーボネート、2−メトキシカルボニルフェニル−2−エトキシフェニルカーボネート、2−メトキシカルボニルフェニル−2’−(O−メトキシカルボニルフェニル)オキシクミルフェニルカーボネートのごとき2−メトキシカルボニルフェニルアリールカーボネート類;
(ii)2−メトキシカルボニルフェニル−メチルカーボネート、2−メトキシカルボニルフェニル−ブチルカーボネート、2−メトキシカルボニルフェニル−セチルカーボネート、2−メトキシカルボニルフェニル−ラウリルカーボネート、2−メトキシカルボニルフェニル−2’−エトキシカルボニルエチルカーボネート、2−メトキシカルボニルフェニル−2’−(O−メトキシカルボニルフェニル)オキシカルボニルエチルカーボネートのごとき2−メトキシカルボニルフェニル−アルキルカーボネート類;
(iii)2−エトキシカルボニルフェニル−フェニルカーボネート、2−エトキシカルボニルフェニル−プロピルフェニルカーボネート,2−エトキシカルボニルフェニル−ヘキシルフェニルカーボネート、2−エトキシカルボニルフェニル−ジブチルフェニルカーボネート、2−エトキシカルボニルフェニル−ジノニルフェニルカーボネート、2−エトキシカルボニルフェニル−シクロヘキシルフェニルカーボネート、2−エトキシカルボニルフェニル−クミルフェニルカーボネート、2−エトキシカルボニルフェニル−4’−エトキシカルボニルフェニルカーボネート、2−エトキシカルボニルフェニル−4’クミルオキシフェニルカーボネート2−エトキシカルボニルフェニル−カーボネート、ジ(2−エトキシカルボニルフェニル)カーボネートのごとき2−エトキシカルボニルフェニル−アリールカーボネート類;
(iv)2−エトキシカルボニルフェニル−メチルカーボネート、2−エトキシカルボニルフェニル−オクチルカーボネート、2−エトキシカルボニルフェニル−2’−メトキシカルボニルエチルカーボネート、2−エトキシカルボニルフェニル−カーボネート、2−エトキシカルボニルフェニル−2−(O−エトキシカルボニルフェニル)オキシカルボニルエチルカーボネートのごとき2−エトキシカルボニルフェニル−アルキルカーボネート類
(v)(2−メトキシカルボニルフェニル)ベンゾエート、 (2−メトキシカルボニルフェニル)−4−メチルベンゾエート、(2−メトキシカルボニルフェニル)−4−ブチルベンゾエート、(2−メトキシカルボニルフェニル)−4−クミルベンゾエート、(2−メトキシカルボニルフェニル)−4−ブトキシベンゾエート、(2−メトキシカルボニルフェニル)−2−メトキシカルボニルベンゾエート、(2−メトキシカルボニルフェニル)−4−メトキシカルボニルベンゾエート、(2−メトキシカルボニルフェニル)−4−エトキシカルボニルベンゾエート、3−(O−メトキシカルボニルフェニル)オキシカルボニル安息香酸(2’−メトキシカルボニルフェニル)エステル、4−(O−エトキシカルボニルフェニル)オキシカルボニル安息香酸(2’−メトキシカルボニルフェニル)エステルのごとき、芳香族カルボン酸の(2’−メトキシカルボニルフェニル)エステル;
(vi)(2−エトキシカルボニルフェニル)ベンゾエート、(2−エトキシカルボニルフェニル)−4−メチルベンゾエート、(2−エトキシカルボニルフェニル)−4−ブチルベンゾエート、(2−エトキシカルボニルフェニル)−4−ノニルベンゾエート、(2−エトキシカルボニルフェニル)−4−クミルベンゾエート、(2−エトキシカルボニルフェニル)−4−メトキシベンゾエート、(2−エトキシカルボニルフェニル)−4−ノニルオキシベンゾエート、(2−エトキシカルボニルフェニル)−4−クミルオキシベンゾエート(2−エトキシカルボニルフェニル)−4−エトキシカルボニルベンゾエートのごとき芳香族カルボン酸の(2’−エトキシカルボニルフェニル)エステル;
(vii)(2−メトキシカルボニルフェニル)アセテート、(2−メトキシカルボニルフェニル)ステアレート、(2−メトキシカルボニルフェニル)オレート、(2−エトキシカルボニルフェニル)シクロヘキサンカルボン酸エステル、ビス(2−メトキシカルボニルフェニル)サクシネート、ビス(2−メトキシカルボニルフェニル)アジペートのごとき脂肪族カルボン酸エステルが挙げられる。
【0051】
本願発明における芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、粘度平均分子量が12,000〜100,000である。粘度平均分子量が12,000未満では、ポリカーボネートフィルムそのものの機械特性が不十分となる。また、粘度平均分子量が100,000を越えると、溶融時の粘度が高くなりすぎ、金属板との濡れ性が不十分となり高い接着力が得られず剥離等の問題が起こる。粘度平均分子量の値としては好ましくは14,000〜80,000である。
【0052】
本願発明における樹脂組成物は、該組成物からなる厚さ50μmのフィルムを300℃、50kg/cm2で20秒保持して鋼板(電解クロム酸処理、厚さ200μm、幅10mm)とラミネートしたときのJISK6854による接着強さが0.5kg/cm以上でなければならない。
【0053】
ここで該フィルムは上記のポリカーボネート樹脂をTダイなどのスリット状吐出口より溶融押出してキャスティングローラーにより引き取る従来公知の製膜方法により製造することができる。
【0054】
本願発明の接着強さが0.5kg/cm未満では、ラミネートしたとき剥離等の問題が起こる。接着強さは好ましくは0.7kg/cm以上、より好ましくは1kg/cm以上である。
【0055】
本願発明のポリカーボネート樹脂組成物は、本願発明の目的を損なわない限り、所望により他の添加剤を含有することができる。他の添加剤としては亜リン酸エステル系安定剤、フェノール系安定剤、有機チオエーテル系安定剤、ヒンダードアミン系安定剤などを挙げることができる。
【0056】
亜リン酸エステル系安定剤防止剤としては例えば;
(i)ビス(2,3−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリチルジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリチルジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリチルジホスファイト、ジフェニルデシルホスファイト、ジフェニルイソオクチルホスファイト、フェニルジイソオクチルホスファイト、2−エチルヘキシルジフェニルホスファイト、テトラフェニルプロピレングリコールジホスファイト、テトラ(トリデシル)−4,4’−イソプロピリデンジフェニルジホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、
2−{{2,4,8,10−テトラキス(1,1−ジメチルエチル)ジベンゾ{d、f}{1,3,2}ジオキサフォスフェピン6−イル}オキシ}−N,N−ビス{2−{{2,4,8,10−テトラキス(1,1ジメチルエチル)ジベンゾ{d、f}{1,3,2}ジオキサフォスフェピン6−イル}オキシ}−エチル}エタナミン等のアリールアルキルホスファイト類;
(ii)トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリメオクチルホスファイト、トリノニルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジステアリルペンタエリスリチルジホスファイト、ビス(トリデシル)ペンタエリスリチルジホスファイト、トリス(2−クロロエチル)ホスファイト、トリス(2,3−ジクロロプロピル)ホスファイト等のトリアルキルホスファイト類;
(iii)トリシクロヘキシルホスファイト等のトリシクロアルキルホスファイト類;
(iv)トリフェニルホスファイト、トリクレジルホスファイト、トリス(エチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ヒドロキシフェニル)ホスファイト、等のトリアリールホスファイト類。
【0057】
フェノール系安定剤としてはたとえば;
N−オクタデシル−3−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート、テトラキス{メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート}メタン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、ジステアリル(4−ヒドロキシ−3−メチル−5−t−ブチルベンジル)マロネート、
トリエチレングリコール−ビス{3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート}、1,6−ヘキサンジオール−ビス{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート}、2,4−ビス−(N−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシフェニル「3,5−ジ−t−ブチル−アニリノ)−1,3,5−トリアジン、ペンタエリスリチル−テトラキス{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート}、
2,2−チオジエチレンビス{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート}、2,2−チオビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルフォスフォネートジエチルエステル、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルスルホン酸エチル)カルシウム、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレート、2,4−ビス{(オクチルチオ)メチル}−O−クレゾール、イソオクチル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,5,7,8−テトラメチル−2(4’,8’,12’−トリメチルトリデシル)クロマン−6−オール、N,N’−ビス{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルヒドラジン、4−ヒドロキシメチル−2,6−ジ−t−ブチルフェノール、等が挙げられる。
【0058】
チオエーテル系安定剤としては;
ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート、ジトリデシル−3,3’−チオプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス−(β−ラウリル−チオプロピオネート)などを挙げることができる。
【0059】
またヒンダードアミン系安定剤としてはたとえば;
ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、1−〔2−{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}エチル〕−4−{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、8−ベンジル−7,7,9,9−テトラメチル−3−オクチル−1,2,3−トリアザスピロ〔4,5〕ウンデカン−2,4−ジオン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、2−(3,5−ジt−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−N−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、
などを挙げることができる。
【0060】
これらの安定剤は単独で使用してもよいし2種以上を混合して使用してもよい。これらの内亜燐酸エステルが好ましい。
【0061】
これらの耐熱安定剤は樹脂成分100重量部あたり0.0001〜5重量部、好ましくは0.0005〜1重量部、さらに好ましくは0.001〜0.5重量部の量で通常は使用される。
【0062】
更に所望により、従来公知のベンゾトリアゾール系光安定剤、ベンゾフェノン系光安定剤、シアノアクリレート系光安定剤、第4級アンモニウム塩系、アルキルホスフェート系の帯電防止剤等を使用しても良い。
【0063】
【発明の効果】
本願発明によれば、スルホン酸系化合物を用いることにより高温で金属にラミネートすることが可能なポリカーボネート樹脂組成物を得ることが可能である。
【0064】
さらに、金属板との接着性に優れ、かつ金属板にラミネートする温度を高温にすることが可能な金属ラミネート用フィルムを提供することができる。
【0065】
さらに、接着性に優れたポリカーボネートラミネート物、なかんずく金属とポリカーボネート組成物とのラミネート物を提供することができる。
【0066】
【実施例】
以下本願発明を実施例により説明するが、本願発明は、これらの実施例に限定されるものではない。なお、「部」は特に断らない限り「重量部」を意味する。
【0067】
分析方法は下記の方法によった。
【0068】
1)ポリカーボネートの粘度平均分子量
塩化メチレン中、20℃ウベローデ粘度管にて測定した。固有粘度より粘度平均分子量は次式より計算した。
〔η〕=1.23×10-4×MW0.83
【0069】
2)末端基濃度
サンプル、0.02gを0.4mlのクロロホルムに溶解し、20℃で1H−NMR(日本電子社製EX−270)を用いて、末端水酸基濃度を測定した。
【0070】
3)溶融粘度安定性(溶融粘度変化率)
レオメトリックス社のRAA型流動解析装置を用い窒素気流下、剪断速度1rad/sec.270℃で測定した溶融粘度の変化の絶対値を30分間測定し、1分当たりの変化率を求めた。
【0071】
4)接着強さ
厚さ30μmのフィルムを電解クロム酸処理した厚さ200μmの鋼板2枚の間に重ねあわせ、300℃のホットプレス機により50kg/cm2の圧力で30秒間保持することにより鋼板とラミネートした。該ラミネート板を幅25mm、長さ150mmの大きさに切断して試験片を作成した。この試験片は一方の鋼板の片側端部20mmまで予め離型剤が付着されラミネート板も剥れやすいようにしておいた。
【0072】
離型剤のついていない側の鋼板をT型材の上に接着し、JISK6854の推奨方法にて90°剥離力を測定した。
【0073】
5)経時耐衝撃性
4)に記載した方法と同様にして1枚のフィルムと1枚の鋼板からラミネート板を製造した。製造後50℃の水中に48時間保持した。その後、このラミネート板についてJISK5400に記載の方法に従って衝撃変形試験を行った。すなわち、ラミネート板のフィルムがラミネートされていない上面上に、曲率半径5mmの撃ち型をセットし、該撃ち型の上に高さ20cmの位置から質量200gのおもりを自由落下させた。このときラミネート板の下には厚さ5mmのゴム板を施設しておいた。
【0074】
この衝撃変形試験に付した後、ラミネート板のフィルムをラミネートしていない金属面に一方の電極を当て、他方のラミネート板のフィルム面のおもり落下を受けた位置(凸部)に1%の食塩水を溶け込ませた綿を当て、そしてその綿に他方の電極を当てた。6Vの電圧をかけ、その際の電流値を測定した。電流値(mA)の小さいものほど経時耐衝撃性が良好である。
【0075】
[実施例1]
2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン228重量部、ジフェニルカーボネート223重量部およびテトラメチルアンモニウムヒドロキシド0.009重量部およびビスフェノールAジナトリウム塩0.00014重量部を撹拌装置、減圧装置、蒸留塔などを具備した反応装置に仕込み、180℃窒素雰囲気下で25分撹拌し溶解した。次いで同温度で、100mmHgの減圧下、30分間フェノールを留出しつつ反応させた。さらに220℃に昇温しつつ30mmHgに減圧し、同温同圧で30分間反応させた。更に反応系を更に徐々に昇温、減圧し、最終的に270℃、0.5mmHgとし、ポリカーボネート樹脂を得た。さらに得られた樹脂100重量部に対して、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩を0.0012重量部添加し20分間混合した。得られた樹脂の粘度平均分子量は15300で、水酸基末端は55eq/ton、溶融粘度変化率は0.1(%/分)であった。
【0076】
得られたポリマーを30mmφ一軸エクストルーダーを用い、ポリマー温度290℃、平均滞留時間約10分の条件で、巾30mm、スリット厚さ0.1mmのTダイより押出し、該フィルムを温度80℃のキャスティングローラーによって引き取って膜厚約30μmのフィルムを製膜した。
【0077】
得られたフィルムについて上記方法によって接着強さ、経時耐衝撃性を測定した。得られた結果を表1に示す。
【0078】
[実施例2]
2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン228重量部、ジフェニルカーボネート223重量部およびテトラメチルアンモニウムヒドロキシド0.009重量部およびビスフェノールAジナトリウム塩0.00014重量部を撹拌装置、減圧装置、蒸留塔などを具備した反応装置に仕込み、180℃窒素雰囲気下で25分撹拌し溶解した。次いで同温度で、100mmHgの減圧下、30分間フェノールを留出しつつ反応させた。さらに220℃に昇温しつつ30mmHgに減圧し、同温同圧で60分間反応させた。更に反応系を更に徐々に昇温、減圧し、最終的に270℃、0.5mmHgとし、ポリカーボネート樹脂を得た。さらに得られた樹脂100重量部に対して、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩を0.0012重量部添加し20分間混合した。得られた樹脂の粘度平均分子量は22500で、水酸基末端は30eq/ton、溶融粘度変化率は0.1(%/分)であった。
【0079】
得られたポリマーを30mmφ一軸エクストルーダーを用い、ポリマー温度300℃、平均滞留時間約10分の条件で、巾30mm、スリット厚さ0.1mmのTダイより押出し、該フィルムを温度80℃のキャスティングローラーによって引き取って膜厚約30μmのフィルムを製膜した。
【0080】
得られたフィルムについて上記方法によって接着強さ、経時耐衝撃性を測定した。得られた結果を表1に示す。
【0081】
[比較例1]
ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩を加えなかった以外は実施例1と同様にしてポリカーボネート樹脂を得た。得られた樹脂の粘度平均分子量は15300で、水酸基末端は52eq/ton、溶融粘度変化率は0.3(%/分)であった。
【0082】
得られたポリマーを実施例1と同様の方法で膜厚約30μmのフィルムを製膜した。
【0083】
得られたフィルムについて上記方法によって接着強さ、経時耐衝撃性を測定した。得られた結果を表1に示す。
【0084】
[比較例2]
2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン100部、48%水酸化ナトリウム水溶液84.5部、蒸留水661部を撹拌機付き反応容器に仕込み、溶解した。これに塩化メチレン330部を加え、混合溶液が20℃となるように冷却し、ホスゲン49.8部を40分で吹き込んだ。次いで反応液に4−(t−ブチル)フェノール2.0部を塩化メチレンに溶解した溶液を加え、48%水酸化ナトリウム水溶液12.4部およびトリエチルアミン0.15部を加え、2時間撹拌した。反応終了後、反応液から下層のポリカーボネートの塩化メチレン溶液を分液し、この溶液を塩酸水溶液、蒸留水により洗浄後、塩化メチレンを蒸発除去してポリカーボネートを得た。得られた樹脂の粘度平均分子量は15300で、水酸基末端は15eq/ton、溶融粘度変化率は0.1(%/分)であった。
【0085】
得られたポリマーを実施例1と同様の方法で膜厚約30μmのフィルムを製膜した。
【0086】
得られたフィルムについて上記方法によって接着強さ、経時耐衝撃性を測定した。得られた結果を表1に示す。
【0087】
【表1】
Claims (3)
- 金属とラミネートするためのポリカーボネート樹脂組成物において、当該ポリカーボネート樹脂組成物が、
芳香族ジヒドロキシ化合物1モル当たり10〜1000μ化学当量の含窒素塩基性化合物および/または含リン塩基性化合物、ならびに
芳香族ジヒドロキシ化合物1モル当たり0.05〜5μ化学当量のアルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属化合物
を含有する触媒の存在下、
芳香族ジヒドロキシ化合物と、炭酸ジエステルとを重縮合させることによって得られる下記式(1)
で表される繰り返し単位から実質的になる芳香族ポリカーボネート(A)および
スルホン酸系化合物(B)
よりなる芳香族ポリカーボネート樹脂組成物であって、
該樹脂組成物の溶融粘度変化率が0.5%以下、末端水酸基量が25〜100eq/ton以下、粘度平均分子量が12,000〜100,000であり、かつ該組成物からなる厚さ50μmのフィルムを300℃、50kg/cm2で20秒保持して鋼板(電解クロム酸処理、厚さ200μm、幅10mm)とラミネートしたときのJISK6854による接着強さが0.5kg/cm以上であることを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物。 - スルホン酸系化合物(B)をアルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属化合物中のアルカリ金属元素とアルカリ土類金属元素との合計量の1化学当量あたり、0.7〜100化学当量使用することを特徴とする、請求項1記載のポリカーボネート樹脂組成物。
- 請求項1または2に係るポリカーボネート樹脂組成物よりなるラミネート物。
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